(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084591
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】果汁入り炭酸飲料缶詰及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 51/16 20060101AFI20240618BHJP
B65D 43/04 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B65D51/16 300
B65D43/04 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198940
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】宮下 凱生
(72)【発明者】
【氏名】大森 順治
(72)【発明者】
【氏名】木所 佑介
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA23
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CB01
3E084CC02
3E084DA01
3E084DB02
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA04
3E084GB04
3E084KA04
3E084KA12
3E084KB01
3E084LA01
3E084LB02
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】防爆機能を有するキャップを用いながら、殺菌時にも漏れが生じない炭酸飲料缶詰を提供する。
【解決手段】円筒状の胴部に縮径部を介して形成された口部にねじ部を有するボトル缶と、該ボトル缶のねじ部に装着されるキャップとを有し、ボトル缶内にアルコールを含まない果汁入り炭酸飲料が充填されてキャップにより密封された炭酸飲料缶詰であり、キャップに、ボトル缶のねじ部に装着された状態で内圧が610kPa以上800kPa以下で開放する圧力開放用スリットが形成されており、炭酸飲料は、ボトル缶の入味容積に対する入味率が90%以下、ガス圧が2.6ガスボリューム以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴部に縮径部を介して形成された口部にねじ部を有するボトル缶と、該ボトル缶の前記ねじ部に装着されるキャップとを有し、前記ボトル缶内にアルコールを含まない果汁入り炭酸飲料が充填されて前記キャップにより密封された炭酸飲料缶詰であり、
前記キャップに、前記ボトル缶のねじ部に装着された状態で内圧が610kPa以上850kPa以下で開放する圧力開放用スリットが形成されており、
前記アルコールを含まない果汁入り炭酸飲料は、前記ボトル缶の入味容積に対する入味率が90%以下、ガス圧が2.6ガスボリューム以下であることを特徴とする炭酸飲料缶詰。
【請求項2】
円筒状の胴部に縮径部を介して形成された口部にねじ部を有するボトル缶と、該ボトル缶の前記ねじ部に装着されるキャップとを有し、前記ボトル缶内にアルコールを含む果汁入り炭酸飲料が充填されて前記キャップにより密封された炭酸飲料缶詰であり、
前記キャップに、前記ボトル缶のねじ部に装着された状態で内圧が610kPa以上850kPa以下で開放する圧力開放用スリットが形成されており、
前記アルコールを含む果汁入り炭酸飲料は、前記ボトル缶の入味容積に対する入味率が90%以下でガス圧が2.7ガスボリューム以下、あるいは、入味率が91.3%以下でガス圧が2.6ガスボリューム以下であることを特徴とする炭酸飲料缶詰。
【請求項3】
円筒状の胴部に縮径部を介して形成された口部にねじ部を有するボトル缶と、該ボトル缶の前記ねじ部に装着されるキャップとを有し、前記ボトル缶内にアルコールを含まない果汁入り炭酸飲料が充填され前記キャップにより密封された炭酸飲料缶詰を製造する方法であって、
前記キャップに、前記ボトル缶のねじ部に装着された状態で内圧が610kPa以上850kPa以下で開放する圧力開放用スリットを形成しておき、
前記ボトル缶に前記アルコールを含まない果汁入り炭酸飲料を、前記ボトル缶の入味容積に対する入味率が90%以下、ガス圧が2.6ガスボリューム以下となるように充填した後に前記キャップを装着して密封し、
その後、大気圧雰囲気下で55℃以上65℃以下の温度に加熱して炭酸飲料缶詰を製造することを特徴とする炭酸飲料缶詰の製造方法。
【請求項4】
円筒状の胴部に縮径部を介して形成された口部にねじ部を有するボトル缶と、該ボトル缶の前記ねじ部に装着されるキャップとを有し、前記ボトル缶内にアルコールを含む果汁入り炭酸飲料が充填され前記キャップにより密封された炭酸飲料缶詰を製造する方法であって、
前記キャップに、前記ボトル缶のねじ部に装着された状態で内圧が610kPa以上850kPa以下で開放する圧力開放用スリットを形成しておき、
前記ボトル缶に前記アルコールを含む果汁入り炭酸飲料を、前記ボトル缶の入味容積に対する入味率が90%以下でガス圧が2.7ガスボリューム以下、あるいは、入味率が91.3%以下でガス圧が2.6ガスボリューム以下となるように充填した後に前記キャップを装着して密封し、
その後、大気圧雰囲気下で55℃以上65℃以下の温度に加熱して炭酸飲料缶詰を製造することを特徴とする炭酸飲料缶詰の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトル形状のボトル缶に果汁入り炭酸飲料を充填してキャップにより密封してなる果汁入り炭酸飲料缶詰及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボトル形状のボトル缶は、飲料が充填された後、その口部にキャップが装着されて内部が密封される。このキャップは、ボトル缶の口部に形成したねじ部により、再封止可能であるが、一旦開栓され、再封止した後に、内容物の腐敗、発酵等によって内圧が過剰に上昇した際には、ボトル缶内部のガスを放出して内圧を低下させることで、ボトル缶の破裂を防止する、いわゆる防爆機能を有するものが知られている。
【0003】
特許文献1では、キャップ本体の側部にスリット状の弱化部(圧力開放用スリット)が形成されており、内圧が所定値以上に上昇した際に、弱化部(スリット部)が開口して内部のガスが外部に排出されるようになっている。これにより、ボトル缶の内圧を低下させ、破裂を防ぐことができる。また、この弱化部とは別に、開栓時にボトル缶の圧力を外部に排出するベントホールも周方向に複数形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の防爆機能を有するキャップを用いたボトル缶は、コーヒー飲料等に多く用いられている。コーヒー飲料の場合、充填後に100℃を超える高温高圧下で殺菌(レトルト殺菌)処理される。このレトルト殺菌時に内圧が上昇するが、高圧下の環境であるため、キャップに漏れが生じることはない。
一方、果汁飲料等の場合は、例えば65℃程度の温度で殺菌処理がなされるが、大気雰囲気での殺菌であるため、キャップには、内圧の上昇に対する耐圧性が求められる。この場合、炭酸飲料である場合には、特許文献1に記載のような防爆機能を有するスリット部が形成されたキャップでは、内圧の上昇によってスリット部が開いて漏れが生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、防爆機能を有するキャップを用いながら、殺菌時にも漏れが生じない果汁入り炭酸飲料缶詰を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の果汁入り炭酸飲料缶詰は、円筒状の胴部に縮径部を介して形成された口部にねじ部を有するボトル缶と、該ボトル缶の前記ねじ部に装着されるキャップとを有し、前記ボトル缶内にアルコールを含まない果汁入り炭酸飲料が充填されて前記キャップにより密封された炭酸飲料缶詰であり、
前記キャップに、前記ボトル缶のねじ部に装着された状態で内圧が610kPa以上850kPa以下で開放する圧力開放用スリットが形成されており、
前記アルコールを含まない果汁入り炭酸飲料は、前記ボトル缶の入味容積に対する入味率が90%以下、ガス圧が2.6ガスボリューム以下である。
【0008】
圧力開放用スリットが作動する開放圧力として設定される610kPa以上850kPa以下の圧力は、再封止時のボトル缶の破裂防止のために必要である。この圧力開放用スリットを有するキャップを用いて炭酸飲料を充填して、パストライザー等により加熱したときに内圧が開放圧力(610kPa)に達してしまうと漏れが生じる。
本発明では、アルコールを含まない果汁入り炭酸飲料の場合、ボトル缶に対する果汁入り炭酸飲料の入味率を90%以下、ガス圧を2.6ガスボリューム以下に設定したことにより、充填後の大気圧雰囲気下での加熱殺菌時にも圧力開放用スリットを開放させることはなく、適切に殺菌処理を行うことができる。
この場合、圧力開放用スリットの開放内圧は610kPa未満では加熱殺菌時に開放するおそれがあり、850kPaを超えると、再栓後に内圧が高くなり過ぎて、破裂等が生じるおそれがある。
そして、果汁入り炭酸飲料の入味率が90%を超える、あるいはガス圧が2.6ガスボリュームを超えると、加熱殺菌時の内圧が高くなって圧力開放スリットが開放するおそれがある。
【0009】
果汁入り炭酸飲料がアルコールを含む場合は、前記ボトル缶の入味容積に対する入味率が90%以下でガス圧が2.7ガスボリューム以下、あるいは、入味率が91.3%以下でガス圧が2.6ガスボリューム以下である。
【0010】
本発明の果汁入り炭酸飲料缶詰の製造方法は、円筒状の胴部に縮径部を介して形成された口部にねじ部を有するボトル缶と、該ボトル缶の前記ねじ部に装着されるキャップとを有し、前記ボトル缶内に炭酸飲料が充填され前記キャップにより密封されたアルコールを含まない果汁入り炭酸飲料缶詰を製造する方法であって、
前記キャップに、前記ボトル缶のねじ部に装着された状態で内圧が610kPa以上850MPa以下で開放する圧力開放用スリットを形成しておき、
前記ボトル缶に前記果汁入り炭酸飲料を、前記ボトル缶の入味容積に対する入味率が90%以下、ガス圧が2.6ガスボリューム以下となるように充填した後に前記キャップを装着して密封し、
その後、大気圧雰囲気下で55℃以上65℃以下の温度に加熱して果汁入り炭酸飲料缶詰を製造する。
【0011】
このような条件で加熱殺菌処理することにより、適切に殺菌処理を行うことが可能であるとともに、その殺菌処理の間に圧力開放用スリットが開放してしまうこともなく、確実に密封性を維持することができる。
【0012】
果汁入り炭酸飲料がアルコールを含む場合は、前記ボトル缶に前記アルコールを含む果汁入り炭酸飲料を、前記ボトル缶の入味容積に対する入味率が90%以下でガス圧が2.7ガスボリューム以下、あるいは、入味率が91.3%以下でガス圧が2.6ガスボリューム以下となるように充填した後に前記キャップを装着して密封し、その後、大気圧雰囲気下で55℃以上65℃以下の温度に加熱して炭酸飲料缶詰を製造する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、防爆機能を有するキャップを用いながら、大気圧雰囲気下での加熱殺菌時に圧力開放用スリットを開放させることがないので、適切な殺菌処理を実施して果汁入り炭酸飲料の缶詰を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態のボトル缶及びキャップを示す正面図である。
【
図2】(a)が
図1に示すボトル缶の口部にキャップを被せた状態を示す要部の拡大断面図、(b)がキャップにねじ加工して密封した状態を示す拡大断面図である。
【
図4】果汁入り炭酸飲料缶詰の製造工程を示す工程図である。
【
図5】内圧開放用スリットの開放圧力確認試験を実施している状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る果汁入り炭酸飲料缶詰の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
この果汁入り炭酸飲料缶詰(以下、単に炭酸飲料缶詰と称す)1は、
図4に示すように、ボトル缶2とキャップ3とをそれぞれ形成した(ボトル缶成形工程、キャップ成形工程)後、ボトル缶2内に果汁入り炭酸飲料(以下、単に炭酸飲料と称す)を充填する(充填工程)とともに、そのボトル缶2にキャップ3を装着した(キャッピング工程)後、加熱して殺菌処理する(殺菌工程)ことにより、製造される。この場合、炭酸飲料はアルコールを含まないものとする。
まず、この炭酸飲料缶詰1に用いられているボトル缶2及びキャップ3について説明する。
【0016】
ボトル缶2は、アルミニウム又はアルミニウム合金製(金属製)とされ、
図1に示すように、底部11と、底部11の周縁から連続する円筒状の胴部12と、胴部12の上端から上方に向けて漸次縮径するテーパ状の縮径部13と、この縮径部13の上端から上方に延びる筒状小径の首部14と、この首部14よりも上方部分に形成され、キャップ3が装着される口部15と、を有するボトル状に形成されている。また、口部15は、その下端部に半径方向外方に突出する膨出部16が形成され、その上方に雄ねじ部17、雄ねじ部17の上方に開口端部を丸めてなるカール部18が形成されている。
【0017】
この場合、膨出部16及びカール部18は周方向に沿って全周形成され、雄ねじ部17は、膨出部16とカール部18との間に一条形成される。
底部11、胴部12、縮径部13、首部14、口部15は互いに同軸に配置されており、本実施形態において、これらの共通軸を缶軸Sと称して説明を行う。
【0018】
本実施形態において、諸寸法は限定されないが、円筒状の胴部12は、外径が公称21径であり、64.25mm以上68.24mm以下の外径に形成される。口部15は、公称38mmの外径である。底部11の底面からカール部18の上端面までの総高さは133.15mm以上203.00mm以下であり、底面から縮径部13の下端までの高さは81.9mm以上187.25mm以下である。
また、雄ねじ部17は、カール部18のl若干下方位置から膨出部16にかけて、例えば2.2巻きのねじ山が形成されている。
【0019】
このボトル缶2は、胴部12の外径を変えずに、総高さの相違に応じて内容量が設定される。総高さが133.15mmで公称310ml(310ml缶)、総高さ164.55mmで公称410ml(410ml缶)、総高さ203.00mmで公称500ml(500ml缶)である。なお、いずれの場合も、縮径部13から上方の部位はいずれも同じ形状に形成され、したがって、縮径部13の下端からカール部18の上端面までの高さは同じで、底面から縮径部13の下端までの高さが異なっている。
【0020】
また、このボトル缶2は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる平板状の金属板をプレス加工してカップを成形した後、そのカップをさらに絞りしごき加工することにより、有底円筒状の筒体を成形し、その筒体の上端部を加工して、縮径部13、首部14、口部15を形成することにより、成形される。このボトル缶2の底部11の中心部分は、ほぼ元の金属板の板厚のままであるが、胴部12等は元の板厚から変化する。特に、成形途中の筒体では、底部(ボトル缶2の底部11となる)付近が最も薄肉に形成され、上端部(縮径部13となる部位より上方部分)では厚肉に形成される。
【0021】
このため、ボトル缶2の耐圧強度を保証する上で、元板厚、筒体の最薄部の厚さ(ウォール厚)、縮径部となる部位より上方に形成される厚肉部の厚さ(フランジ厚)を適切に管理することが重要となっており、これらの数値例を表1に示す。なお、各厚さは、±0.02mm程度のバラつきを有しており、その中心値を示している。缶種はボトル缶の内容積の公称を用いて示している。
【0022】
【0023】
表1において、耐圧保証値とは、ボトル缶のみを治具により閉止して内圧をかけたときに、底部にバックリング等の変形が生じない最大圧力をいう。この耐圧保証値は、キャップの圧力開放用スリットが開放する圧力よりも大きいことが求められる。
【0024】
キャップ3は、アルミニウム又はアルミニウム合金製の板材をカップ状に成形したもので、天面部21と、その天面部21の周縁から略垂下されてなる円筒部22とを備えるキャップ本体23と、そのキャップ本体23の内面に設けたライナ24とを有する。このキャップ3においては、前述したように内容積が異なるボトル缶において縮径部13より上方部分は同じ形状であるため、いずれのボトル缶にも同じキャップ3が装着される。
【0025】
キャップ本体23の円筒部22は、その下端部に、周方向に断続的に形成されたスリット25と、スリット25間に形成される複数のブリッジ26とを有している。
そして、ボトル缶2の口部15に被せられたキャップ1は、膨出部16、雄ねじ部17、カール部18の形状に沿うように、例えば、ねじ部形成ローラ(図示略)で円筒部22を半径方向内方に押圧することにより塑性変形され、これにより、口部15の雄ねじ部17を倣うようにキャップ側ねじ部27が形成され(
図2(b)参照)、円筒部22の下端部が、膨出部16の下面に係止され、ライナ24がカール部18に圧接されて、ボトル缶2を密封状態する。
【0026】
また、キャップ3の円筒部22は、天面部21近傍に、周方向に複数並べられたナール凹部31と、開栓時に内圧を開放する開口32aを形成した複数のフック部32と、所定の内圧(610kPa以上850kPa以下)になると開口する圧力開放用スリット33とが形成されている。
【0027】
フック部32は、周方向に沿って形成した切り込みより下方部分を半径方向内方に押し込むことにより形成されており、半径方向内方に山形(V字状)に突出形成されている。また、切り込みが開くことにより、開口32aが形成される。開口32aは、キャップ3がブリッジ25を破断しつつ回転操作された際、ボトル缶2内部のガスを外部に放出するためのベントホールとして機能する。
【0028】
圧力開放用スリット33は、円筒部22の周方向に沿って線状に設けられており、再封止後に内容物が発酵する等してボトル缶2の内圧が過剰に上昇した際に、所定の内圧開放置(610kPa以上850kPa以下)で開口して内部のガスを放出する、いわゆる防爆機能の役目を果たす。
【0029】
なお、フック部32にも開口32aが形成されているが、圧力開放用スリット33に比べて相当に小さく、かつフック部32が屈曲形成されていることから強度的に変形しにくいのに対して、圧力開放用スリット33は、線状で長く形成され、フック部32のように屈曲形成されたものではないため強度的にもフック部32より弱く、再封止後の異常内圧発生時に、キャップ3の天面部21が膨らんだ際に、天面部21と圧力開放用スリット33との間の部分が変形して、ライナ24とカール部18との間に隙間が形成され、その隙間を介して圧力開放用スリット33からガスが放出され、防爆機能が果たされる。
【0030】
この圧力開放用スリット33の内圧開放値を610kPa以上850kPa以下に設定したのは、610kPa未満では加熱殺菌時に開放するおそれがあり、850kPaを超えると、再封止後に内圧が高くなり過ぎて、破裂等が生じるおそれがあるからである。
【0031】
そして、これらナール凹部31、フック部32、圧力開放用スリット33は、円筒部22の概ね同じ高さ位置に設けられる。この場合、フック部31は、開栓時に適切にベント機能を確保するために、1つのキャップ1に12~16個設けることが好ましい。圧力開放用スリット33は、口径38mmのキャップでは、円筒部22の周方向に沿って10.5mmの長さLに形成される。
【0032】
ライナ24は、閉止時にカール部18に当接し、ボトル缶2の内部を密封し得るように形成される。例えば、
図2(a)の鎖線の円内に拡大して示したように、天板部21の内面に接して配された摺動層35と、該摺動層35に積層され摺動層35よりも柔軟な密封層36と、摺動層35と密封層36との間に配されガスバリアー性を有する中間層37と、該中間層37と密封層36との間に設けられこれらを接着させる接着層38と、を備えている。
【0033】
中間層37は、摺動層35よりも密封層36との接着強度が低い材料であって、摺動層35及び密封層36よりも高いガスバリアー性を有する材料、例えば金属箔又はガスバリアー性樹脂で形成されている。
例えば、中間層37としては、EVOH樹脂(エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂)、PA(ナイロン)、PAN(ポリアクリロニトリル)等の有機ガスバリアー樹脂が好ましいが、アルミ、鉄、スズ等の金属シート(金属箔)でもよい。
【0034】
なお、接着層38は、摺動層35と同じ材料で形成されていることが好ましい。また、密封層36は、モールド成形で形成され、スチレン系エラストマーで形成されていることが好ましい。
このライナ24は、キャップ本体23のフック部32の内方端が形成する内接円の直径より大きい直径に形成され、キャップ本体23の開口端部から押し込んでライナ24の外周縁がフック部32の内方端を乗り越えた状態に組み付けられる。
【0035】
このように構成されたボトル缶2及びキャップ3は、ボトル缶2内に飲料が充填された後にキャップ3が装着されて缶詰1となる。
本実施形態では、充填される飲料が果汁入り炭酸飲料であり、果汁を含有するため、充填後に殺菌処理がなされる。
殺菌処理は、ボトル缶2に飲料を充填してキャップ3により密封した後、例えば、65℃以上85℃以下の温水によるシャワーの中を10分以上30分以下の時間かけて通すことにより行われる。
【0036】
この殺菌処理により、加熱されるためボトル缶2の内圧が上昇する。特に炭酸飲料であることから、大きく内圧上昇し易い。前述の防爆のためにキャップ1に設けられた圧力開放用スリット33は、一旦開栓し、再封止した後の内圧の異常上昇に応答して開くように設定されているが、この殺菌処理時の内圧上昇で開いてしまわないようにする必要があり、本実施形態のように炭酸飲料である場合には厳密な管理が必要である。
【0037】
前述したようにキャップ3の圧力開放用スリット33は、内圧開放値を610kPa以上850kPa以下に設定されている。この開放内圧の設定値を踏まえて、本実施形態では、ボトル缶2の入味容積に対する炭酸飲料の入味率を90%以下、炭酸飲料のガス圧を2.6ガスボリューム(2.6GV)以下としている。
【0038】
入味とは、ボトル缶2の内容積のことであり、前述の410mlボトル缶の場合、443.6mlである。そして、炭酸飲料の入味率は、ボトル缶2の内容積(443.6ml)に対して炭酸飲料を90%以下、すなわち400ml以下の充填量となるように充填することを意味している。この場合、
図1のAの鎖線矢印で示される高さまで炭酸飲料が充填され、ボトル缶2の上部に残る空き容量(ヘッドスペース)は43.6ml以上となる。
【0039】
炭酸水においては、1気圧、15.6℃において純水1L中にほぼ1Lの炭酸ガスがとけ込むため、これをガス圧の尺度として1ガスボリュームとしている。したがって、ガスボリュームは、この標準状態(1気圧、15.6℃)において炭酸飲料中に溶解している炭酸ガスの容積と炭酸飲料の容積との比率(容積比)を表しており、ガスボリューム測定装置(例えば、京都電子工業株式会社製GVA-500)を用いて測定される。
【0040】
ボトル缶2の入味容積に対する炭酸飲料の入味率が90%を超えると、加熱殺菌時の内圧が高くなって圧力開放用スリット33が開放するおそれがある。また、炭酸飲料のガス圧が2.6ガスボリュームを超えても、同様に、加熱殺菌時の内圧が高くなって圧力開放用スリット33が開放するおそれがある。つまり、入味率、あるいは、炭酸飲料のガス圧のいずれかが設定値を超えると、加熱殺菌時の内圧によって防爆スリットが開放するおそれがある。
したがって、65℃以上85℃以下の殺菌処理を実施するには、入味率及び炭酸ガスのガス圧の両方を設定値内に収めて充填することが重要である。
【0041】
このようにして製造された炭酸飲料缶詰1は、キャップ3を開栓するために回転させると、キャップ3がボトル缶2の雄ねじ部17に沿って上方へ持ち上がりながら回転し、膨出部16に係止されている円筒部22の下端部で各ブリッジ25が順次破断していくことにより、スリット24の下方部分と上方部分とが分断され、その上方部分がボトル缶2から外れて開栓させることができる。一方、キャップ3のスリット25から下方部分は、リング状のピルファープルーフ部としてボトル缶2に残される。
この開栓操作において、ボトル缶2の内部のガスがキャップ3の天面部21の内側のライナ24とカール部18との間を経て、フック部32の開口32aから外部に放出される。
【0042】
また、キャップ3が一旦開栓され、再度ボトル缶2に装着されて再封止した後に内容物の腐敗・発酵等によって内圧が異常に上昇した際には、内圧が610kPa以上になると、円筒部23に形成された圧力開放用スリット33が開口して内部のガスを速やかに放出して内圧を開放させる。これにより、内圧の異常上昇によるキャップ3の飛び出し等を防ぐことができる。
【0043】
以上説明したように、この炭酸飲料缶詰は、充填後の殺菌工程において内圧が上昇する場合でもキャップ3の内圧開放用スリット33が開放せず、また、開栓後の再封止状態において、内容物の腐敗等により内圧が610kPa以上になると、内圧開放用スリット33が作動することが確実に保証できる。
そして、このように充填殺菌工程において確実に密封し、開栓後の再封止状態で適切に内圧開放用スリット33が作動できるので、ボトル缶としての表1に示す耐圧保証値の低減を図ることも可能になり、薄肉化、コスト低減に寄与することができる。
【0044】
なお、前述した炭酸飲料の入味率及びガスボリュームは、アルコールを含まないソフトドリンク系の値であり、アルコールを含む果汁入り炭酸飲料を充填する場合は、炭酸ガス吸収係数が水の場合とは異なるため、ガスボリュームの設定値を若干高く変更することが可能である。アルコール含有量が2.5%~9%など、10%以下であれば、ガスボリュームは、アルコールを含まない飲料の2.6ガスボリューム以下に対して、例えば、2.68ガスボリューム以下に設定することができる。
【実施例0045】
本発明の効果確認のために、パストライザーを用いた殺菌処理での漏れ確認試験、内圧開放用スリットの開放圧力確認試験を実施した。
【0046】
(パストライザー殺菌処理での漏れ確認試験)
前述した410ml(内容積443.6ml)の口部径38mmのボトル缶100缶に、それぞれ炭酸水を入味率が81.2%(入味量360ml)でガス圧が平均2.34ガスボリューム(21.2℃)、入味率が91.3%(入味量405ml)でガス圧が平均2.22ガスボリューム(17.4℃)の二種類について、充填し、キャップを装着して密封した(キャッピング)。キャップは38mm口径、内圧開放用スリットは、周方向に沿う長さLを10.5mmとした。
キャッピング後に、全体にエアを吹き付けて水滴を落とし、37℃の恒温室で1日(24時間)乾燥させた後、重量を測定した。
【0047】
次いで、パストライザーで65℃×40分の殺菌処理を施した。
殺菌処理後、殺菌処理前と同様に、全体にエアを吹き付けて水滴を落とし、37℃の恒温室で1日(24時間)乾燥させた後、重量を測定した。
そして、パストライザー殺菌処理の前後の重量の差を算出した。
各100缶試験した結果、重量の差は、すべてが±0.1gであった。この結果により、内圧開放用スリットの変形による漏れは発生しなかったことが確認された。
【0048】
(内圧開放用スリットの開放圧力確認試験)
内容積410mlの口部径38mmのボトル缶に、入味率81.2%(入味量360ml)でガス圧が平均2.34ガスボリューム(21.2℃)、入味率91.3%(入味量405ml)でガス圧が平均2.22ガスボリューム(17.4℃)で、炭酸水を充填し、キャップを装着して密封した(キャッピング)。キャップは38mm口径、内圧開放用スリットは、周方向に沿って10.5mmとした。
キャッピング後に、キャップを回転させて開栓し、炭酸水を2/3の容量分捨てて、入味率81.2%(入味量360ml)であったボトル缶については120ml残し、入味率91.3%(入味量405ml)であったボトル缶については135ml残して、それぞれ10缶ずつ作製し、取外したキャップを再び装着して封止した(ピルファープルーフ部が切断されており、再封止された状態となる)。
【0049】
次いで、
図5に示すように缶詰1のボトル缶2の底に穴をあけ、その穴から窒素(N
2)ガスタンク41に接続されたノズル42を挿入して、缶内圧測定器43で缶詰1の内圧を計測しながら、ノズル42から昇圧速度520kPa/分で窒素(N
2)ガスを缶詰1内に注入して内圧を上昇させる。
図5の鎖線の円内のグラフに示すように、圧力開放用スリット33が開放すると内圧が低下するので、そのときの内圧のピーク値Pを測定した。
これらの結果を表2に示す。
【0050】
【0051】
表2に示す結果より、この缶詰を再封止した後のキャップの圧力開放用スリットが変形する内圧開放圧力は610kPa以上850kPa以下であることがわかる。
【0052】
次に、410mlボトル缶及び310ml(内容積337.1ml)ボトル缶に、それぞれ複数の入味量(入味率)で充填した缶詰について、殺菌処理時に炭酸水が65℃に到達したときの内圧を炭酸水のガス圧(GV)ごとに計算した。炭酸水はアルコールを含まないものとした。
410mlボトル缶を用いた場合を表3、310mlボトル缶を用いた場合を表4に示す。
【0053】
【0054】
【0055】
これらの結果から、アルコールを含まない炭酸飲料の場合、圧力開放用スリットの開放圧を610kPa以上850kPa以下に設定したキャップを用いて、入味率が90%以下、ガス圧が2.6ガスボリューム以下となるように充填した缶詰は、圧力開放用スリットが開放せずに確実に密封状態を維持できることがわかる。
【0056】
また、アルコールを5%以上含む炭酸水についても、65℃に到達したときの内圧を同様に計算した。
410mlボトル缶を用いた場合を表5、310mlボトル缶を用いた場合を表6に示す。
【0057】
【0058】
【0059】
これらの結果から、アルコールを含む炭酸飲料の場合、圧力開放用スリットの開放圧を610kPa以上850kPa以下に設定したキャップを用いて、入味率が90%以下でガス圧が2.7ガスボリューム以下、あるいは、入味率が91.3%以下でガス圧が2.6ガスボリューム以下、となるように充填した缶詰は、圧力開放用スリットが開放せずに確実に密封状態を維持できることがわかる。