(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084597
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】接触推定方法、接触推定プログラム、及び接触推定装置
(51)【国際特許分類】
F15B 15/10 20060101AFI20240618BHJP
B25J 19/02 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
F15B15/10 H
B25J19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198948
(22)【出願日】2022-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 勝也
(72)【発明者】
【氏名】戸▲崎▼ 博之
(72)【発明者】
【氏名】城 健智
【テーマコード(参考)】
3C707
3H081
【Fターム(参考)】
3C707BS09
3C707ES05
3C707EV12
3C707KS31
3H081AA18
3H081BB03
3H081CC29
3H081DD07
3H081DD12
3H081GG07
3H081HH10
(57)【要約】
【課題】本開示は、流体圧アクチュエータが対象物に接触したことを推定することを目的とする。
【解決手段】接触推定方法は、流体の流入に基づいて湾曲可能な流体圧アクチュエータの内部の圧力変化による前記流体圧アクチュエータの曲がり具合を測定している実測情報を取得し、前記流体圧アクチュエータが対象物に接触していない場合の前記圧力変化による前記曲がり具合を予め規定した基準情報と、取得した前記実測情報とを比較して、前記実測情報が前記基準情報から所定量乖離した場合に前記流体圧アクチュエータが前記対象物に接触したと推定する、処理をコンピュータが実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入に基づいて湾曲可能な流体圧アクチュエータの内部の圧力変化による前記流体圧アクチュエータの曲がり具合を測定している実測情報を取得し、
前記流体圧アクチュエータが対象物に接触していない場合の前記圧力変化による前記曲がり具合を予め規定した基準情報と、取得した前記実測情報とを比較して、前記実測情報が前記基準情報から所定量乖離した場合に前記流体圧アクチュエータが前記対象物に接触したと推定する、
処理をコンピュータが実行する接触推定方法。
【請求項2】
前記基準情報から乖離した前記実測情報の乖離度合に応じて、前記対象物の硬さを推定する、
処理をコンピュータが実行する請求項1に記載の接触推定方法。
【請求項3】
コンピュータに、
流体の流入に基づいて湾曲可能な流体圧アクチュエータの内部の圧力変化による前記流体圧アクチュエータの曲がり具合を測定している実測情報を取得し、
前記流体圧アクチュエータが対象物に接触していない場合の前記圧力変化による前記曲がり具合を予め規定した基準情報と、取得した前記実測情報とを比較して、前記実測情報が前記基準情報から所定量乖離した場合に前記流体圧アクチュエータが前記対象物に接触したと推定する、
処理を実行させるための接触推定プログラム。
【請求項4】
流体の流入に基づいて湾曲可能な流体圧アクチュエータの内部の圧力変化による前記流体圧アクチュエータの曲がり具合を測定している実測情報を取得する取得部と、
前記流体圧アクチュエータが対象物に接触していない場合の前記圧力変化による前記曲がり具合を予め規定した基準情報と、取得した前記実測情報とを比較して、前記実測情報が前記基準情報から所定量乖離した場合に前記流体圧アクチュエータが前記対象物に接触したと推定する推定部と、
を備える、
接触推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接触推定方法、接触推定プログラム、及び接触推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体圧アクチュエータとして、ゴムチューブと、その外面を覆うスリーブ(高張力繊維を編み込んだもの)とを有する、マッキベン型のものが知られている。このようなマッキベン型の流体圧アクチュエータは、ゴムチューブ及びスリーブの軸方向に沿った長さを変化させることができる。また、ゴムチューブの軸方向における一端側から他端側に亘って、周方向の一部に拘束部材を設けることにより、流体圧アクチュエータの拘束部材が設けられていない側を短縮させ、湾曲変形させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、上記の流体圧アクチュエータを複数組み合わせることで、湾曲変形により対象物を把持する指として利用することを提案している。この場合、流体圧アクチュエータが対象物に接触したか否かを求める必要が生じる。
【0005】
そこで、本開示は、流体圧アクチュエータが対象物に接触したことを推定することができる接触推定方法、接触推定プログラム、及び接触推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の接触推定方法は、流体の流入に基づいて湾曲可能な流体圧アクチュエータの内部の圧力変化による前記流体圧アクチュエータの曲がり具合を測定している実測情報を取得し、前記流体圧アクチュエータが対象物に接触していない場合の前記圧力変化による前記曲がり具合を予め規定した基準情報と、取得した前記実測情報とを比較して、前記実測情報が前記基準情報から所定量乖離した場合に前記流体圧アクチュエータが前記対象物に接触したと推定する、処理をコンピュータが実行する。これにより、当該接触推定方法では、流体圧アクチュエータが対象物に接触したことを推定することができる。
【0007】
第2の態様の接触推定方法は、前記基準情報から乖離した前記実測情報の乖離度合に応じて、前記対象物の硬さを推定する、処理をコンピュータが実行する。これにより、当該接触推定方法では、流体圧アクチュエータが接触した対象物の硬さを推定することができる。
【0008】
第3の態様の接触推定プログラムは、コンピュータに、流体の流入に基づいて湾曲可能な流体圧アクチュエータの内部の圧力変化による前記流体圧アクチュエータの曲がり具合を測定している実測情報を取得し、前記流体圧アクチュエータが対象物に接触していない場合の前記圧力変化による前記曲がり具合を予め規定した基準情報と、取得した前記実測情報とを比較して、前記実測情報が前記基準情報から所定量乖離した場合に前記流体圧アクチュエータが前記対象物に接触したと推定する、処理を実行させる。これにより、当該接触推定プログラムでは、流体圧アクチュエータが対象物に接触したことを推定することができる。
【0009】
第4の態様の接触推定装置は、流体の流入に基づいて湾曲可能な流体圧アクチュエータの内部の圧力変化による前記流体圧アクチュエータの曲がり具合を測定している実測情報を取得する取得部と、前記流体圧アクチュエータが対象物に接触していない場合の前記圧力変化による前記曲がり具合を予め規定した基準情報と、取得した前記実測情報とを比較して、前記実測情報が前記基準情報から所定量乖離した場合に前記流体圧アクチュエータが前記対象物に接触したと推定する推定部と、を備える。これにより、当該接触推定装置では、流体圧アクチュエータが対象物に接触したことを推定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、流体圧アクチュエータが対象物に接触したことを推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るロボットアームを説明する説明図である。
【
図2】本実施形態に係る流体圧アクチュエータを説明する第1の説明図である。
【
図3】本実施形態に係る接触推定システムの概略構成を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る接触推定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態に係る接触推定装置の機能構成の例を示すブロック図である。
【
図6】本実施形態に係る推定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】アクチュエータ本体部の内圧とセンサの抵抗値との関係を示す説明図である。
【
図8】本実施形態に係る流体圧アクチュエータを説明する第2の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において、同一又は等価な構成要素及び部品には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
なお、以下の説明において、「矢印X方向」、「矢印Y方向」、「矢印Z方向」とは、互いに直交する3つの方向を指す。矢印X方向及び矢印Y方向は、一例としてそれぞれ水平方向であり、矢印Z方向は、鉛直方向である。また、各方向の一方及び他方を限定しない場合は、それぞれ「矢印X方向」、「矢印Y方向」、及び「矢印Z方向」と称す場合がある。
【0014】
まず、本実施形態に係るロボットアーム10について説明する。
図1は、本実施形態に係るロボットアーム10を説明する説明図である。
【0015】
図1に示すように、ロボットアーム10は、図示しない基礎に取り付けられたベース14、アーム部材16、アーム部材16同士又はアーム部材16とベース14とを繋ぐ関節18、及びロボットハンド20を備えている。
【0016】
ロボットハンド20は、接続されたアーム部材16の先端に関節18を介して装着されており、ロボットハンド20を支持する支持部21を備えている。支持部21は、複数の取付部22及び複数の流体圧アクチュエータ40を備えている。一例として、
図1では、4つの流体圧アクチュエータ40が示されているが、ロボットハンド20が備える流体圧アクチュエータ40の数はこれに限らず、これより多くても少なくてもよい。
【0017】
次に、本実施形態に係る流体圧アクチュエータ40について説明する。
図2は、本実施形態に係る流体圧アクチュエータ40を説明する第1の説明図である。
【0018】
図2に示すように、流体圧アクチュエータ40は、所謂、マッキベン型アクチュエータであり、アクチュエータ本体部42及びキャップ44を備えている。
【0019】
アクチュエータ本体部42は、円筒状のゴムチューブと、ゴムチューブの外周を覆う円筒状のスリーブとを備えている。
【0020】
ゴムチューブは、弾性変形により伸縮可能であり、内部の流体の圧力変化によって膨張及び収縮する。ここで、ゴムチューブへ供給する流体としては、空気を用いることができ、この場合には、流体圧アクチュエータ40は空気式アクチュエータとなる。
【0021】
スリーブは、高張力繊維を編み込んだ構造体である。スリーブは、このような構造によって、ゴムチューブの収縮及び膨張を規制しつつこの収縮及び膨張に追従する。
【0022】
また、アクチュエータ本体部42内の背側(図中矢印Y-方向側)には、矢印Z方向における一端側から他端側に亘って拘束部材が設けられている。拘束部材は、加圧により膨張及び収縮のない材料で形成されており、端部同士が近づく方向に撓み変形可能とされている。拘束部材としては、所謂、板バネを用いることができる。
【0023】
さらに、アクチュエータ本体部42内の背側には、流体圧アクチュエータ40の曲がり具合を測定可能なセンサ46が設けられている。センサ46としては、曲げに応じて抵抗値が変化する曲げセンサを用いることができる。一例として、センサ46は、曲げが大きくなるほど、抵抗値が上昇する構成である。
【0024】
ここで、上記の「背側」は、流体圧アクチュエータ40において対象物と接触しない側と言うこともできる。また、「背側」の反対側は「腹側」と言える。この「腹側」は、流体圧アクチュエータ40において対象物と接触する側と言うこともできる。
【0025】
キャップ44は、アクチュエータ本体部42の矢印Z-方向の端部(先端部)において、アクチュエータ本体部42に対して着脱可能に取り付けられている。
【0026】
次に、本実施形態に係る接触推定システム100について説明する。
図3は、本実施形態に係る接触推定システム100の概略構成を示す図である。
【0027】
図3に示すように、接触推定システム100は、流体圧アクチュエータ40、エア源50、電空レギュレータ60、及び接触推定装置70を備えている。
【0028】
エア源50は、電空レギュレータ60を介して流体圧アクチュエータ40の流入口48に空気を供給するものである。
【0029】
電空レギュレータ60は、流体圧アクチュエータ40に供給する空気の圧力を制御するものである。電空レギュレータ60は、接触推定装置70により指定された圧力の空気を流入口48に供給する。
【0030】
接触推定装置70は、電空レギュレータ60が流体圧アクチュエータ40に供給する空気の圧力を制御したり、流体圧アクチュエータ40が対象物に接触したか否かを推定したりする。ここで、接触推定システム100は、流体圧アクチュエータ40の内部の圧力、すなわち、アクチュエータ本体部42の内圧を測定可能な図示しない圧力センサを備えている。詳細は後述するが、接触推定装置70は、圧力センサにより測定されたアクチュエータ本体部42の内圧とセンサ46により測定された抵抗値とに基づいて、流体圧アクチュエータ40が対象物に接触したか否かを推定する。
【0031】
ここで、流体圧アクチュエータ40は、流入口48に空気が流入するとアクチュエータ本体部42の内圧が上昇する。流体圧アクチュエータ40は、当該内圧の上昇によりゴムチューブが弾性変形してアクチュエータ本体部42の長さが短縮する方向に力が作用する。このとき、拘束部材が配置されたアクチュエータ本体部42の背側は短縮が規制されているため、アクチュエータ本体部42の腹側のみが短縮する。これにより、拘束部材が撓み変形し、
図2において二点鎖線で示すように流体圧アクチュエータ40が湾曲する。そして、アクチュエータ本体部42が湾曲することで、センサ46の抵抗値は上昇する。
【0032】
上記のようにして複数の流体圧アクチュエータ40が湾曲することでロボットアーム10は、対象物を把持することができる。
【0033】
次に、本実施形態に係る接触推定装置70のハードウェア構成について説明する。
図4は、本実施形態に係る接触推定装置70のハードウェア構成を示すブロック図である。接触推定装置70は、一例として、PC(Personal Computer)である。
【0034】
図4に示すように、接触推定装置70は、CPU(Central Processing Unit)71、ROM(Read Only Memory)72、RAM(Random Access Memory)73、記憶部74、入力部75、表示部76、及び通信部77を備えている。各構成は、バス78を介して相互に通信可能に接続されている。
【0035】
CPU71は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU71は、ROM72又は記憶部74からプログラムを読み出し、RAM73を作業領域としてプログラムを実行する。CPU71は、ROM72又は記憶部74に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0036】
ROM72は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM73は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0037】
記憶部74は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリ等の記憶装置により構成され、各種プログラム及び各種データを格納する。記憶部74は、各種プログラムとして、CPU71に後述する推定処理を実行させるための接触推定プログラム74Aを格納している。また、記憶部74は、各種データとして、流体圧アクチュエータ40が対象物に接触していない場合のアクチュエータ本体部42の内圧変化による流体圧アクチュエータ40の曲がり具合を予め規定した基準情報を格納している。一例として、基準情報は、所定範囲のアクチュエータ本体部42の内圧と、所定範囲のアクチュエータ本体部42の内圧毎に応じて設定されたセンサ46の抵抗値とを含む。
【0038】
入力部75は、マウス等のポインティングデバイス、キーボード、マイク、及びカメラ等を含み、各種の入力を行うために使用される。
【0039】
表示部76は、例えば、液晶ディスプレイであり、種々の情報を表示する。表示部76は、タッチパネル方式を採用して、入力部75として機能してもよい。
【0040】
通信部77は、他の機器と通信するためのインターフェースである。当該通信には、例えば、イーサネット(登録商標)若しくはFDDI等の有線通信の規格、又は、4G、5G、Bluetooth(登録商標)、若しくはWi-Fi(登録商標)等の無線通信の規格が用いられる。
【0041】
次に、本実施形態に係る接触推定装置70の機能構成について説明する。
図5は、本実施形態に係る接触推定装置70の機能構成の例を示すブロック図である。
【0042】
図5に示すように、接触推定装置70のCPU71は、機能構成として、取得部71A及び推定部71Bを有する。各機能構成は、CPU71が記憶部74に記憶された接触推定プログラム74Aを読み出し、実行することにより実現される。
【0043】
取得部71Aは、アクチュエータ本体部42の内圧変化による流体圧アクチュエータ40の曲がり具合を測定している実測情報を取得する。具体的には、取得部71Aは、実測情報として、圧力センサが測定しているアクチュエータ本体部42の現在の内圧と、当該現在の内圧に応じたセンサ46の抵抗値とを取得する。
【0044】
推定部71Bは、記憶部74に記憶された基準情報と、取得部71Aが取得した実測情報とを比較して、実測情報が基準情報から所定量乖離した場合に流体圧アクチュエータ40が対象物に接触したと推定する。
【0045】
また、推定部71Bは、基準情報から乖離した実測情報の乖離度合に応じて、対象物の硬さを推定する。なお、推定部71Bによる具体的な推定方法については、後述する。
【0046】
次に、本実施形態に係る接触推定装置70により行われる処理の流れについて説明する。
図6は、本実施形態に係る接触推定装置70により、流体圧アクチュエータ40が対象物に接触したか否かが推定される推定処理の流れを示すフローチャートである。CPU71が記憶部74から接触推定プログラム74Aを読み出して、RAM73に展開して実行することにより、推定処理が行われる。一例として、推定処理は、ロボットアーム10がロボットハンド20で対象物を把持する把持動作の開始に伴って行われる。
【0047】
図6に示すステップS10において、CPU71は、記憶部74に記憶された基準情報を取得する。そして、CPU71は、ステップS11に進む。
【0048】
ステップS11において、CPU71は、実測情報として、圧力センサが測定しているアクチュエータ本体部42の現在の内圧と、当該現在の内圧に応じたセンサ46の抵抗値とを取得する。そして、CPU71は、ステップS12に進む。
【0049】
ステップS12において、CPU71は、ステップS10で取得した基準情報とステップS11で取得した実測情報とを比較する。そして、CPU71は、実測情報が基準情報から所定量乖離したと判定した場合(ステップS12:YES)、ステップS13に進む。一方、CPU71は、実測情報が基準情報から所定量乖離していないと判定した場合(ステップS12:NO)、ステップS11に戻る。
【0050】
ステップS13において、CPU71は、流体圧アクチュエータ40が対象物に接触したと推定する。そして、CPU71は、ステップS14に進む。
【0051】
ステップS14において、CPU71は、アクチュエータ本体部42の内圧の上昇に伴って角度又は角度に相当する情報が変化するか否かを判定する。本実施形態では、当該判定の一例として、CPU71は、アクチュエータ本体部42の内圧の上昇に伴ってセンサ46の抵抗値が上昇するか否かを判定する。そして、CPU71は、アクチュエータ本体部42の内圧の上昇に伴ってセンサ46の抵抗値が上昇しないと判定した場合(ステップS14:YES)、ステップS15に進む。一方、CPU71は、アクチュエータ本体部42の内圧の上昇に伴ってセンサ46の抵抗値が上昇すると判定した場合(ステップS14:NO)、ステップS16に進む。
【0052】
ステップS15において、CPU71は、対象物の硬さを推定し、当該対象物は「硬質」であると推定する。そして、CPU71は、推定処理を終了する。
【0053】
ステップS16において、CPU71は、対象物の硬さを推定し、当該対象物は「軟質」であると推定する。そして、CPU71は、推定処理を終了する。
【0054】
次に、アクチュエータ本体部42の内圧とセンサ46の抵抗値との関係について説明する。
図7は、アクチュエータ本体部42の内圧とセンサ46の抵抗値との関係を示す説明図である。
【0055】
ここで、
図7に示すグラフの横軸はアクチュエータ本体部42の内圧(MPa)を示し、グラフの縦軸はセンサ46の抵抗値を示す。また、グラフ内において実線で示される線L1は、流体圧アクチュエータ40が対象物に接触していない場合におけるアクチュエータ本体部42の内圧変化によるセンサ46の抵抗値の変化を示している。換言すると、線L1は、流体圧アクチュエータ40が対象物に接触していない場合におけるアクチュエータ本体部42の内圧変化による流体圧アクチュエータ40の曲がり具合を示すものと言える。さらに、グラフ内において破線で示される線L2及び一点鎖線で示される線L3は、流体圧アクチュエータ40が対象物に接触した場合におけるアクチュエータ本体部42の内圧変化によるセンサ46の抵抗値の変化を示している。換言すると、線L2及び線L3は、流体圧アクチュエータ40が対象物に接触した場合におけるアクチュエータ本体部42の内圧変化による流体圧アクチュエータ40の曲がり具合を示すものと言える。
【0056】
図7において、アクチュエータ本体部42の内圧が0MPaから0.2MPa付近の点Pまでは、線L1、線L2、及び線L3が重なっている。これは、いずれの線においても0MPaから点Pまでの間は、アクチュエータ本体部42の内圧変化による流体圧アクチュエータ40の曲がり具合が同程度であることを示している。
【0057】
図7において、アクチュエータ本体部42の内圧が点Pよりも上昇した後は線L2及び線L3が線L1から離間して、線L2及び線L3の傾きが線L1の傾きより小さくなっている。このとき、線L2は、線L1からの離間後もアクチュエータ本体部42の内圧上昇に伴ってセンサ46の抵抗値が上昇している。これは、流体圧アクチュエータ40が接触した対象物を押し込んで変形させているため、流体圧アクチュエータ40が湾曲し続けていることを示している。一方、線L3は、線L1からの離間後はアクチュエータ本体部42の内圧が上昇してもセンサ46の抵抗値は一定となっている。これは、流体圧アクチュエータ40が接触した対象物を押し込んで変形させられないため、流体圧アクチュエータ40の湾曲が停止したことを示している。
【0058】
上記の点を踏まえると、線L2の場合は、対象物が弾性変形可能なゴムボール等の軟質なものであると推定でき、線L3の場合は、対象物が弾性変形不可能な鉄球等の硬質なものであると推定できる。
【0059】
上記のように、本実施形態に係る接触推定装置70では、CPU71は、アクチュエータ本体部42の内圧変化による流体圧アクチュエータ40の曲がり具合を測定している実測情報を取得する。そして、CPU71は、流体圧アクチュエータ40が対象物に接触していない場合のアクチュエータ本体部42の内圧変化による流体圧アクチュエータ40の曲がり具合を予め規定した基準情報と、取得した実測情報とを比較して、実測情報が基準情報から所定量乖離した場合に流体圧アクチュエータ40が対象物に接触したと推定する。これにより、当該接触推定装置70では、流体圧アクチュエータ40が対象物に接触したことを推定することができる。また、本実施形態に係るロボットハンド20は、複数(4つ)の流体圧アクチュエータ40を備えているため、当該接触推定装置70は、複数の流体圧アクチュエータ40における対象物への接触の有無を推定することで、ロボットハンド20が対象物を把持したか否かを推定することもできる。
【0060】
なお、上記実施形態では、上記の所定量として、実測情報が基準情報から少しでも乖離した場合に流体圧アクチュエータ40が対象物に接触したと推定したが、所定量はこれに限定されない。例えば、上記の所定量として、実測情報が基準情報から所定範囲以上乖離した場合に流体圧アクチュエータ40が対象物に接触したと推定してもよい。
【0061】
また、本実施形態に係る接触推定装置70では、CPU71は、基準情報から乖離した実測情報の乖離度合に応じて、対象物の硬さを推定する。これにより、当該接触推定装置70では、流体圧アクチュエータ40が接触した対象物の硬さを推定することができる。
【0062】
(その他)
上記実施形態では、接触推定装置70をPCとして、接触推定システム100においてロボットアーム10とは異なる構成に接触推定装置70を設けた。しかし、これに限らず、接触推定装置70をマイコンとして、当該マイコンをロボットハンド20に搭載してもよい。
【0063】
上記実施形態では、センサ46を曲げセンサとして流体圧アクチュエータ40の曲がり具合を測定した。しかし、流体圧アクチュエータ40の曲がり具合を測定可能であれば、センサ46は曲げセンサに限られず、例えば、他のセンサとしてもよいし、曲げセンサ及び他のセンサ等の複数のセンサを組み合わせたものであってもよい。また、流体圧アクチュエータ40の曲がり具合を測定する構成として、センサに代えて又は加えてカメラを設けてもよい。この場合は、カメラにより撮影された画像に基づいて流体圧アクチュエータ40の曲がり具合を測定することができる。
【0064】
上記実施形態では、アクチュエータ本体部42内の背側にセンサ46が設けられていたが(
図2参照)、流体圧アクチュエータ40におけるセンサ46の搭載位置はこれに限定されない。ここで、
図8は、本実施形態に係る流体圧アクチュエータ40を説明する第2の説明図である。
図8に示すように、センサ46は、アクチュエータ本体部42内の腹側に設けられていてもよい。
【0065】
上記実施形態において、接触推定装置70は、推定した対象物の硬さの種類を示す情報を外部に提供してもよい。これにより、提供した情報に基づいてロボットハンド20の把持力を調整させることが可能となる。
【0066】
なお、上記実施形態でCPU71がソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した推定処理をCPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、推定処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0067】
また、上記実施形態では、接触推定プログラム74Aが記憶部74に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。接触推定プログラム74Aは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、接触推定プログラム74Aは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献】
【0068】
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本発明の一実施形態は「No.9_産業と技術革新の基盤を作ろう」などに貢献する技術となり得ると考えられる。
【符号の説明】
【0069】
40 流体圧アクチュエータ
70 接触推定装置
71A 取得部
71B 推定部
74A 接触推定プログラム