(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084668
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ポリプロピレン生地構造、その製造方法及び防護服
(51)【国際特許分類】
D04H 3/16 20060101AFI20240618BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20240618BHJP
A41D 31/02 20190101ALI20240618BHJP
A41D 31/04 20190101ALI20240618BHJP
A41D 31/30 20190101ALI20240618BHJP
A41D 13/12 20060101ALI20240618BHJP
D04H 3/007 20120101ALI20240618BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20240618BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20240618BHJP
【FI】
D04H3/16
A41D31/00 502E
A41D31/00 504C
A41D31/02 D
A41D31/04 C
A41D31/30
A41D13/12
D04H3/007
B32B5/26
B32B7/027
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023039490
(22)【出願日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】111147875
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】518305565
【氏名又は名称】臺灣塑膠工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 光明
(72)【発明者】
【氏名】高 榮鴻
(72)【発明者】
【氏名】謝 坤沛
(72)【発明者】
【氏名】廖 漢中
(72)【発明者】
【氏名】陳 群聰
(72)【発明者】
【氏名】張 朝順
(72)【発明者】
【氏名】謝 曜聰
(72)【発明者】
【氏名】魏 嘉儀
【テーマコード(参考)】
3B211
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
3B211AB06
3B211AC08
3B211AC26
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK07B
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4F100JK03
4F100JK06
4F100YY00A
4F100YY00B
4L047AA14
4L047AB03
4L047BA08
4L047BA09
4L047BB02
4L047CA05
4L047CA19
4L047CB01
4L047CC01
(57)【要約】
【課題】ポリプロピレン生地構造、その製造方法及び防護服を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン生地構造は、ポリプロピレンスパンボンド不織布と、ポリプロピレンメルトブロー不織布と、を含む。ポリプロピレンメルトブロー不織布は、ポリプロピレンスパンボンド不織布と直接に相互接着される。ポリプロピレンメルトブロー不織布は、メルトフローインデックスが1700g/10min~2000g/10minで且つ融点が155℃~165℃のポリプロピレンを含む原料から作製される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンスパンボンド不織布と、
前記ポリプロピレンスパンボンド不織布と直接に相互接着され、メルトフローインデックスが1700g/10min~2000g/10minで且つ融点が155℃~165℃のポリプロピレンを含む原料から作製されるポリプロピレンメルトブロー不織布と、
を含むポリプロピレン生地構造。
【請求項2】
前記原料は、更に、融点が129℃~135℃である低融点ポリプロピレンを含む請求項1に記載のポリプロピレン生地構造。
【請求項3】
前記原料の総重量を100wt%とし、前記低融点ポリプロピレンが1wt%~10wt%である請求項2に記載のポリプロピレン生地構造。
【請求項4】
前記ポリプロピレンスパンボンド不織布の坪量は30gsm~60gsmであり、前記ポリプロピレンメルトブロー不織布の坪量は30gsm~60gsmである請求項1に記載のポリプロピレン生地構造。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のポリプロピレン生地構造を含む防護服。
【請求項6】
ポリプロピレンスパンボンド不織布、及び、メルトフローインデックスが1700g/10min~2000g/10minで且つ融点が155℃~165℃のポリプロピレンを含む原料から作製されるポリプロピレンメルトブロー不織布を、70℃より高い熱プレス温度で熱プレスすることを含むポリプロピレン生地構造の製造方法。
【請求項7】
前記ポリプロピレンスパンボンド不織布及び前記ポリプロピレンメルトブロー不織布を熱プレスすることは、
重ね合わせた前記ポリプロピレンスパンボンド不織布及び前記ポリプロピレンメルトブロー不織布を、上ローラと下ローラとの間に通すことを含み、
また、前記上ローラと前記下ローラに25kg/cm~120kg/cmの線圧が付与される請求項6に記載のポリプロピレン生地構造の製造方法。
【請求項8】
前記上ローラと前記下ローラのホイール温度は、それぞれ独立して70℃~130℃である請求項7に記載のポリプロピレン生地構造の製造方法。
【請求項9】
前記上ローラと前記下ローラとの間のホイールギャップは、0.04mm~0.5mmである請求項7に記載のポリプロピレン生地構造の製造方法。
【請求項10】
前記原料は、更に、融点が129℃~135℃である低融点ポリプロピレンを含む請求項6~9の何れか1項に記載のポリプロピレン生地構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、ポリプロピレン生地構造及びその製造方法、並びにポリプロピレン生地構造を含む防護服に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な種類の防護服が市販されてユーザが様々な作業場所で自分を保護することができる。医療機関における医療用防護服は生物感染源又は患者体液が医療者に接触することによる疾患伝播を回避することができる。手術室、集中治療室及び救急室では、病原菌がかなり広がりやすいため、医療用防護服はこれらの場所に基本的に配備される。また、一般の人々は集中治療室に入って見舞う時に病原菌を患者に感染させないように、医療機関も感染リスクを低減するために人々に防護服を着用することを求める。
【0003】
医療用防護服は、使用後に洗濯することにより防護服の病原菌の数を減少させることができるが、防護服は依然として洗濯中に汚染される可能性があり、そのため、使い捨て医療用防護服は広く使用されている。一般的な使い捨て医療用防護服は防護効果を向上させるために、通常材質の異なる複数種類の生地及び/又はコーティングを含み、しかしながら、これは防護服を回収しにくいという問題を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示内容は、ポリプロピレンスパンボンド不織布と、ポリプロピレンメルトブロー不織布と、を含むポリプロピレン(polypropylene;PP)生地構造を提供する。
本開示内容は、ポリプロピレン生地構造を含む防護服、及び、ポリプロピレン生地構造の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
幾つかの実施形態において、ポリプロピレン(polypropylene;PP)生地構造は、ポリプロピレンスパンボンド不織布と、ポリプロピレンスパンボンド不織布と直接に相互接着され、メルトフローインデックス(melt flow index;MI)が1700g/10min~2000g/10minで且つ融点が155℃~165℃のポリプロピレンを含む原料から作製されるポリプロピレンメルトブロー不織布と、を含む。
【0006】
幾つかの実施形態において、原料は、更に、融点が129℃~135℃である低融点ポリプロピレンを含む。
【0007】
幾つかの実施形態において、原料の総重量を100wt%とし、低融点ポリプロピレンが1wt%~10wt%である。
【0008】
幾つかの実施形態において、ポリプロピレンスパンボンド不織布の坪量は30gsm~60gsmであり、ポリプロピレンメルトブロー不織布の坪量は30gsm~60gsmである。
【0009】
幾つかの実施形態において、防護服は、上記の何れか1項に記載のポリプロピレン生地構造を含む。
幾つかの実施形態において、ポリプロピレン生地構造の製造方法は、ポリプロピレンスパンボンド不織布、及びメルトフローインデックスが1700g/10min~2000g/10minで且つ融点が155℃~165℃のポリプロピレンを含む原料から作製されるポリプロピレンメルトブロー不織布を、70℃より高い熱プレス温度で熱プレスすることを含む。
【0010】
幾つかの実施形態において、ポリプロピレンスパンボンド不織布及びポリプロピレンメルトブロー不織布を熱プレスすることは、重ね合わせたポリプロピレンスパンボンド不織布及びポリプロピレンメルトブロー不織布を、上ローラと下ローラとの間に通すことを含み、また、上ローラと下ローラに25kg/cm~120kg/cmの線圧が付与される。
【0011】
幾つかの実施形態において、上ローラと下ローラのホイール温度は、それぞれ独立して70℃~130℃である。
【0012】
幾つかの実施形態において、上ローラと下ローラとの間のホイールギャップは0.04mm~0.5mmである。
【0013】
幾つかの実施形態において、原料は、更に、融点が129℃~135℃である低融点ポリプロピレンを含む。
【0014】
上記の一般的な説明及び以下の具体的な説明は例示的及び説明的なものに過ぎず、且つ要求される本開示内容の更なる説明を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示内容の種々の実施形態によるポリプロピレン生地構造の断面模式図である。
【
図2】本開示内容の種々の実施形態によるポリプロピレン生地構造の製造の途中過程の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照し、以下の実施形態の詳細な説明を読むことにより本開示の内容をより十分に理解することができる。
以下、本開示内容の実施形態によるポリプロピレン生地構造、その製造方法及び防護服を、図面に基づいて説明する。可能な場合、図面及び説明において同一の符号を用いて同一又は類似の部材を示す。
【0017】
以下、複数の実施形態を図面で詳細に説明し、開示する。明らかに説明するために、多くの実際の細部を下記の叙述で合わせて説明する。しかしながら、これらの実際の細部が、本開示内容を制限するものではないことを理解すべきである。つまり、本開示内容の一部の実施形態においては、これらの実際の細部は、必要なものではない。また、図面を簡略化するために、ある従来慣用の構造及び素子は、図面において簡単で模式的に示される。
【0018】
一般的に、防護服は、防護効果を向上させるために複数の材質の異なる生地及び/又はコーティングを含み、これにより防護服の仕様基準を満たす。例えば、使い捨て医療用防護服はポリプロピレン(PP)層及びポリエチレン(polyethylene、PE)層を同時に含み、二種類の材質の組み合わせにより防護服が医療用防護服の需要を満たすようにする。しかしながら、材質が異なるため、この医療用防護服は容易に回収することができない。本開示内容は、ポリプロピレンスパンボンド不織布とポリプロピレンメルトブロー不織布とを含むポリプロピレン生地構造を提供する。このポリプロピレン生地構造はポリエチレン生地及び/又はポリエチレンコーティングを含まない場合、P1からP3レベルの防護服の仕様基準を満たす物性及び防護服として適する生地の強度を有することができる。また、本開示内容のポリプロピレン生地構造はポリエチレン材料を含まなくてもよいため、このポリプロピレン生地構造により作製された防護服は回収しやすく、環境に優しいという利点を有する。
【0019】
本開示内容の種々の実施形態によるポリプロピレン生地構造100の断面模式図である
図1を参照する。ポリプロピレン生地構造100はポリプロピレンスパンボンド不織布110とポリプロピレンメルトブロー不織布120とを含む。ポリプロピレンメルトブロー不織布120はポリプロピレンスパンボンド不織布110と直接に相互接着される。ポリプロピレンメルトブロー不織布120は、メルトフローインデックス(MI)が1700g/10min~2000g/10minで且つ融点が155℃~165℃のポリプロピレンを含む原料から作製される。幾つかの実施形態において、ポリプロピレンのメルトフローインデックスは1700、1750、1800、1850、1900、1950又は2000g/10minである。幾つかの実施形態において、ポリプロピレンの融点は155、157、159、161、163又は165℃である。
【0020】
ポリプロピレンのメルトフローインデックスの検出方法は230℃でポリプロピレンを加熱し、240秒後、2.16kgの荷重で、10分間ごとに金型穴を通過するポリプロピレンの重量を測定することである。金型の直径は9.5504±0.0076mm、高さは8.000±0.025mm、穴は2.095±0.005mmである。
【0021】
一般的なポリプロピレンはメルトフローインデックスが1000g/10min未満である。しかしながら、本開示内容によるポリプロピレンメルトブロー不織布120を製造するためのポリプロピレンはメルトフローインデックスが高く、そのため流動性に優れ、これによりメルトブロー製造プロセスを利用してポリプロピレンを小径のポリプロピレン繊維に作製し、更にポリプロピレンメルトブロー不織布120に作製することができる。本開示内容のポリプロピレンメルトブロー不織布120は小径のポリプロピレン繊維からなるので、サブミクロン粒子の濾過効率が良い。幾つかの実施形態において、ポリプロピレンメルトブロー不織布120は直径が4μm未満のポリプロピレン繊維を複数含み、ポリプロピレン繊維はメルトフローインデックスが1700g/10min~2000g/10minで且つ融点が155℃~165℃のポリプロピレンから作製される。幾つかの実施形態において、ポリプロピレン繊維の直径は1.5μm~4μmであり、例えば、1.5、2、2.5、3、3.5又は4μmである。幾つかの実施形態において、ポリプロピレンメルトブロー不織布120は上記ポリプロピレン繊維からなる。
【0022】
図1を参照すると、幾つかの実施形態において、ポリプロピレンスパンボンド不織布110はポリプロピレンメルトブロー不織布120と直接接触し、且つポリエチレン層が両者の間に挟まれない。幾つかの実施形態において、ポリプロピレン生地構造100内にポリエチレン材料を含まない。幾つかの実施形態において、ポリプロピレンメルトブロー不織布120の上面はポリエチレンに接触していない。幾つかの実施形態において、ポリプロピレンスパンボンド不織布110の下面はポリエチレンに接触していない。本開示内容のポリプロピレン生地構造100は、ポリエチレン生地及び/又はポリエチレンコーティング層と併用することなく、優れたサブミクロン粒子の濾過効率及び耐水圧性を有することができ、且つ、防護服として作製するのに適した物性を有する。
【0023】
幾つかの実施形態において、ポリプロピレンメルトブロー不織布120を製造するためのポリプロピレンはプロピレンモノマーから重合され、重合過程は選択的にコモノマーを添加することができる。換言すれば、ポリプロピレンはプロピレンモノマーのみから重合されてもよいし、プロピレンモノマー及び他のコモノマーから重合されてもよい。以下、異なる実施形態で更に説明する。幾つかの実施形態において、ポリプロピレンを重合して形成する過程において、プロピレンモノマーと共重合させる他のコモノマーが添加されていない。幾つかの実施形態において、ポリプロピレンメルトブロー不織布120を製造するためのポリプロピレンはプロピレンモノマーのみから重合される。別の幾つかの実施形態において、ポリプロピレンメルトブロー不織布120を製造するためのポリプロピレンはプロピレンモノマー及びコモノマーから重合されてなり、コモノマーはプロピレン以外のα-オレフィン系化合物、例えば炭素数2~8のα-オレフィン系化合物であり、好ましくは例えば炭素数2又は4のα-オレフィン系化合物であり、より好ましくは炭素数2のα-オレフィン系化合物である。炭素数は例えば2、3、4、5、6、7又は8である。幾つかの実施形態において、プロピレンモノマーが100重量部である場合、コモノマーは5重量部以下であり、例えば2、3、4又は5重量部である。コモノマーはポリプロピレンの結晶性を低下させ、更にそれに比較的柔軟な機械的性質を備えさせることができる。
【0024】
幾つかの実施形態において、ポリプロピレンはZiegler-Natta触媒又はメタロセン触媒(metallocene catalyst)により調製されることができる。幾つかの実施形態において、Ziegler-Natta触媒で調製されたポリプロピレンの分子量分布が比較的広く、例えば4~5である。幾つかの実施形態において、メタロセン触媒で調製されたポリプロピレンの分子量分布が比較的狭く、例えば3~4である。幾つかの実施形態において、ポリプロピレンの製造方法はプロピレンモノマー、Ziegler-Natta触媒、有機アルミニウム化合物を電子供与体と重合反応を行い、ポリプロピレンを得ることを含む。ポリプロピレンを形成する重合プロセスでは、反応系にコモノマーを選択的に添加することができる。幾つかの実施形態において、Ziegler-Natta触媒は塩化マグネシウムに担持されたチタン化合物とフタル酸エステル系化合物、グリコールエステル系化合物、ジエーテル系化合物及び/又はコハク酸エステル系化合物と反応して製造される。例えば、フタル酸エステル系化合物はフタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-n-プロピル、フタル酸ジイソオクチル、他の適切なフタル酸エステル系化合物、又は上記化合物の任意の混合物を含むことができるが、これらに限定されない。Ziegler-Natta触媒の調製方法及びプロセスは当業者によく知られているため、また繰り返して説明しない。幾つかの実施形態において、電子供与体はアミノシラン化合物を含み、例えばジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン(dicyclopentylbis(ethylamino)silane)、ジイソプロピルジメトキシシラン(diisopropyl dimethoxy silane)、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(cyclohexyl methyl dimethoxy silane)、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン(isobutyl isopropyl dimethoxy silane)、又はジシクロペンチルジメトキシシラン(dicyclopentyl dimethoxy silane)である。
【0025】
幾つかの実施形態において、本開示内容のポリプロピレンの分子量分布は2.5以上であり、そのため広いプロセスウィンドを有し、良好な応用性を有し、且つポリプロピレンメルトブロー不織布120の機械的強度を向上させることができる。幾つかの実施形態において、ポリプロピレンの分子量分布は2.5以上5.5以下である。
【0026】
幾つかの実施形態において、ポリプロピレンスパンボンド不織布110の坪量は30gsm~60gsmであり、例えば30、35、40、45、50、55又は60gsmであり、ポリプロピレンメルトブロー不織布120の坪量は30gsm~60gsmであり、例えば30、35、40、45、50、55又は60gsmである。坪量の小さい不織布は小径の繊維を含むため、ポリプロピレン生地構造100の耐水圧性の向上により有利である。
【0027】
幾つかの実施形態において、原料は、更に、融点が129℃~135℃である低融点ポリプロピレンを含む。幾つかの実施形態において、原料の総重量を100wt%とし、低融点ポリプロピレンは1wt%~10wt%であり、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10wt%である。低融点ポリプロピレンはポリプロピレン生地構造100のミクロン粒子の濾過効率を向上させることに有利であり、且つポリプロピレン生地構造100の耐水圧性を大幅に向上させることができる。
【0028】
使い捨て医療用防護服標準CNS147982に基づいてポリプロピレン生地構造100の物性を測定する。幾つかの実施形態において、ポリプロピレン生地構造100のサブミクロン粒子の濾過効率は45%~98%であり、例えば45、50、60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97又は98%である。幾つかの実施形態において、ポリプロピレン生地構造100の静水圧は460mm-Aq~1700mm-Aqであり、例えば460、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600又は1700mm-Aqである。幾つかの実施形態において、ポリプロピレン生地構造100の引張強さ(MD)は90N~200Nであり、例えば90、100、120、140、160、180又は200Nである。幾つかの実施形態において、ポリプロピレン生地構造100の引張強さ(MD)は100N~180Nであり、例えば100、120、140、160又は180Nである。MDは試料の縦方向に沿って測定したものを示し、CDは試料の横方向に沿って測定したものを示す。幾つかの実施形態において、ポリプロピレン生地構造100の破断強度は200kPa~1000kPaであり、例えば200、300、400、500、600、700、800、900又は1000kPaである。幾つかの実施形態において、ポリプロピレン生地構造100の引裂強さ(MD)は15N~75Nであり、例えば15、20、30、40、50、60、70又は75Nである。幾つかの実施形態において、ポリプロピレン生地構造100の透湿度は2500g/m2/24hr~12000g/m2/24hrであり、例えば2500、5000、7500、10000、11000又は12000g/m2/24hrである。幾つかの実施形態において、ポリプロピレン生地構造100の縫合強さは50N~100Nであり、例えば50、60、70、80、90又は100Nである。幾つかの実施形態において、ポリプロピレン生地構造100の衝撃浸透は0.09g~1.2gであり、例えば0.09、0.1、0.5、1、1.1又は1.2gである。
【0029】
本開示内容は、前記何れかの実施形態のポリプロピレン生地構造を含む防護服を提供する。防護服は例えば使い捨て医療用防護服又は繰り返し使用可能な医療用防護服である。防護服はガウン、靴スリーブ、袖スリーブ又は患者服を含む。
【0030】
本開示内容は、ポリプロピレンスパンボンド不織布、及びポリプロピレンメルトブロー不織布を、70℃より高い熱プレス温度で熱プレスすることを含むポリプロピレン生地構造の製造方法を提供する。ポリプロピレンメルトブロー不織布は、メルトフローインデックスが1700g/10min~2000g/10minで且つ融点が155℃~165℃のポリプロピレンを含む原料から作製される。幾つかの実施形態において、熱プレス温度は70℃~130℃であり、例えば70、80、90、100、110、120又は130°Cである。幾つかの実施形態において、原料は、更に、融点が129℃~135℃である低融点ポリプロピレンを含む。本開示内容によるポリプロピレン生地構造を製造する方法はフローが簡単で、防護服の量産に有利である。
【0031】
幾つかの実施形態において、ポリプロピレンスパンボンド不織布及びポリプロピレンメルトブロー不織布の熱プレスは二つの熱プレスホイールによって両者を熱プレスして相互接着させることである。この両者は、熱プレス中に直接接触する。本開示内容の種々の実施形態によるポリプロピレン生地構造の製造の途中過程の断面模式図である
図2を参照する。重ね合わせたポリプロピレンスパンボンド不織布210及びポリプロピレンメルトブロー不織布220を、上ローラ230と下ローラ240との間に通し、また、上ローラ230と下ローラ240に25kg/cm~120kg/cmの線圧が付与される。幾つかの実施形態において、線圧は、25、30、40、50、60、70、80、90、100、110又は120kg/cmである。
【0032】
幾つかの実施形態において、上ローラ230と下ローラ240のホイール温度はそれぞれ独立して70℃~130℃である。幾つかの実施形態において、上ローラ230と下ローラ240のホイール温度は異なる。上ローラ230のホイール温度は例えば70、80、90、100、110、120又は130℃である。下ローラ240のホイール温度は例えば70、80、90、100、110、120又は130℃である。ホイール温度が高いほど、熱プレス時にポリプロピレンスパンボンド不織布210及びポリプロピレンメルトブロー不織布220をより緊密に圧着することができ、これによりポリプロピレン生地構造の緻密度及びミクロン粒子の濾過効率が向上される。
【0033】
幾つかの実施形態において、上ローラ230と下ローラ240との間のホイールギャップは0.04mm~0.5mmである。ホイールギャップは例えば、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4又は0.5mmである。ホイールギャップが小さいほど、ポリプロピレンスパンボンド不織布210及びポリプロピレンメルトブロー不織布220をより緊密に圧着することができ、これによりポリプロピレン生地構造の緻密度及びミクロン粒子の濾過効率が向上される。
【0034】
以下、ポリプロピレン生地構造の製造及び性質試験の試験例を参照し、本開示内容の特徴をより具体的に説明する。以下の実施例を説明したが、本開示内容の範囲を超えない場合に、用いられる材料、その含有量及び比率、処理細部ならびに処理フローなどを適宜変更することができる。したがって、本開示内容は下記に記載の実施例によって限定的に解釈されるべきではない。
【0035】
本試験例では、互いに接触させたポリプロピレン(PP)スパンボンド不織布とポリプロピレン(PP)メルトブロー不織布とを上ロール及び下ロールの間に通し、熱プレスにより比較例1~2、実施例1-A~1-C、実施例2-A~2-C及び実施例3-A~3-Eのポリプロピレン生地構造を製造し、更にポリプロピレン生地構造の性質をそれぞれ測定した。生地構造を形成するための生地の材料及び坪量は下記の表1を参照し、生地MB1~MB3は何れもメルトフローインデックス(MI)が約1700~1900g/10minのPPを含む。このPPはプロピレンモノマーから重合されてもよく、重合過程において選択的にコモノマーを添加してプロピレンモノマーと共重合されてもよく、コモノマーは例えば、プロピレン以外の炭素数2~8のα‐オレフィン化合物である。生地MB2及びMB3は、更に129℃~135℃の低融点PPを含む。生地構造を製造するための熱プレス条件は以下の表2を参照する。
【表1】
【表2】
【0036】
比較例1~2及び実施例1-A~1-Cのポリプロピレン生地構造の性質試験は下記の表3を参照する。実施例2-A~2-Cのポリプロピレン生地構造の性質試験は下記の表4を参照する。実施例3-A~3-Eのポリプロピレン生地構造の性質試験は下記の表5を参照し、そのうちMDは試料の縦方向に沿って測定したものを示し、CDは試料の横方向に沿って測定したものを示す。また、使い捨て医療用防護服規格CNS14798は防護服を3レベルのP1、P2及びP3に区分しているので、以下、表3、表4及び表5に、P1、P2及びP3の試験項目及び仕様を、本開示内容のポリプロピレン生地構造の物性と比較して示す。
【表3】
【表4】
【表5】
【0037】
表3~5を参照し、比較例1~2及び実施例1-A~実施例3-Eの試験結果から見ると、本開示内容に使用される熱プレス条件A~Eは、ポリプロピレン生地構造の緻密度を効果的に向上させ、サブミクロン粒子の濾過効率を向上させることが分かる。実施例1-A~実施例3-Cのポリプロピレン生地構造はP1レベルの防護服の規定に合致することができる。実施例3-Dのポリプロピレン生地構造はP2レベルの防護服の規定に合致することができる。実施例3-Eのポリプロピレン生地構造はP3レベルの防護服の規定に合致することができる。
【0038】
実施例1-A~実施例1-C、実施例2-A~実施例2-C及び実施例3-A~実施例3-Eの試験結果から見ると、本開示内容はホイール温度を上昇させ、ホイールギャップを減少させ及び線圧を向上させることにより、ポリプロピレン生地構造のサブミクロン粒子の濾過効率を向上させることが分かる。
【0039】
実施例1-A~実施例1-Cの生地MB1は低融点PPを含まず、実施例2-A~実施例2-Cの生地MB2及び実施例3-A~実施例3-Eの生地MB3は何れも低融点PPを5wt%含んでおり、表3~5の試験結果から見ると、低融点PPの添加は生地構造のミクロン粒子の濾過効率の向上に寄与し、生地構造の耐水圧性を大幅に向上できることが分かる。
【0040】
以上説明したように、本開示内容のポリプロピレン生地構造の性質はP1~P3レベルの医療用防護服の要求を満たすことができる。且つ、医療用防護服全体の生地は本開示内容のポリプロピレン生地構造からなるため、使用後の防護服を回収することに有利であり、環境に優しいという利点を有する。かつ、本開示内容によるポリプロピレン生地構造を製造する方法はフローが簡単で、防護服の量産にも有利である。
【0041】
幾つかの実施例を参照しながら本開示内容を詳細に説明したが、他の実施形態があることも可能である。したがって、特許請求の範囲の精神と範囲はここに含まれる実施形態の説明に限定されるべきではない。
【0042】
以上、本開示内容は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。上記内容に基づき、本開示内容は、特許請求の範囲内に入る本開示内容に対する修正及び変更を包含する。
【符号の説明】
【0043】
100 ポリプロピレン生地構造
110、210 ポリプロピレンスパンボンド不織布
120、220 ポリプロピレンメルトブロー不織布
230 上ローラ
240 下ローラ