(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084670
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ミガラスタットの薬物動態を改善する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/445 20060101AFI20240618BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
A61K31/445
A61P9/00 ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023090210
(22)【出願日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】63/432,235
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/315,928
(32)【優先日】2023-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507170099
【氏名又は名称】アミカス セラピューティックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, フランクリン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA11
4C086NA14
4C086ZA36
(57)【要約】
【課題】 ミガラスタットの薬物動態を改善する方法を提供する。
【解決手段】 ミガラスタット療法の間、ミガラスタットの薬物動態をカフェイン摂取を制限することによって改善する方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とするヒト患者におけるファブリー病の治療において使用するための治療有効用量のミガラスタット又はその塩を含む製剤であって、ミガラスタット又はその塩含む前記製剤がカフェインの同時投与を伴わずに投与される、製剤。
【請求項2】
ミガラスタット又はその塩を含む前記製剤が、前記患者に経口投与される、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記患者が、ミガラスタット又はその塩を含む前記製剤を投与する特定の時間間隔内にカフェインを消費しないことで、ミガラスタットにおけるAUC及びCmaxそれぞれの約57%及び約60%の減少を回避する、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
前記患者が、ミガラスタット又はその塩を含む前記製剤を投与する前の少なくとも2時間から投与後の少なくとも2時間の時間間隔内にカフェインを消費しない、請求項1~3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
前記患者が、ミガラスタット又はその塩を含む前記製剤を投与する前の少なくとも3時間から投与後の少なくとも2時間の時間間隔内にカフェインを消費しない、請求項1~4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
前記患者が、ミガラスタット又はその塩を含む前記製剤を投与する前の少なくとも3時間から投与後の少なくとも3時間の時間間隔内にカフェインを消費しない、請求項1~5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
前記患者が、カフェインを控えるための前記時間間隔外にカフェインを消費する、請求項1~6のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
ミガラスタット又はその塩を含む前記製剤を投与する少なくとも4時間前に、前記患者にカフェインを投与することを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
ミガラスタット又はその塩を含む前記製剤を投与した少なくとも4時間後に、前記患者にカフェインを投与することを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
前記患者が、カフェインを控えるための前記時間間隔の間、非カフェイン飲料を消費する、請求項1~9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
前記患者が、カフェインを控えるための前記時間間隔の間、絶食する、請求項1~10のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
前記患者が、ミガラスタット又はその塩を含む前記製剤を投与する前の少なくとも2時間からその後の2時間にわたる時間間隔内に絶食する、請求項1~11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
ミガラスタットの前記塩が、ミガラスタット塩酸塩である、請求項1~12のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項14】
ミガラスタット又はその塩の前記治療有効用量が、1日おきで100mg~150mgの範囲内である、請求項1~13のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項15】
ミガラスタット又はその塩の前記治療有効用量が、1日おきで約123mgの遊離塩基当量(FBE)である、請求項1~14のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項16】
ミガラスタット塩酸塩の前記治療有効用量が、1日おきで約150mgである、請求項1~15のいずれか一項に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の原理及び実施形態は、概してミガラスタットの薬物動態を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのヒト疾患は、突然変異が引き起こすタンパク質のアミノ酸配列の変化によりタンパク質の安定性が低下し、その適切な折り畳みが妨げられ得ることに起因する。タンパク質は概して、小胞体、又はERとして知られる細胞の特異的な領域内で折り畳まれる。細胞は、概してタンパク質トラフィッキングと称されるプロセスである、タンパク質がその正しい三次元形状に折り畳まれた後にERから細胞内の適切な行き先へと移動できることを確実にする品質管理機構を有する。誤って折り畳まれたタンパク質は、当初ERに保持された後に品質管理機構によって排除されることが多い。場合によっては、誤って折り畳まれたタンパク質が排除される前にERに蓄積し得る。誤って折り畳まれたタンパク質がERに保持されていると、その適切なトラフィッキングの妨げになり、結果として生物学的活性が低下することにより細胞機能が損なわれ、最終的に疾患につながり得る。加えて、誤って折り畳まれたタンパク質がERに蓄積すると、細胞に各種のストレスがかかることになる可能性もあり、これもまた細胞機能不全及び疾患の一因となり得る。
【0003】
かかる突然変異は、リソソーム酵素をコードする遺伝子の突然変異に起因するリソソーム酵素の欠損を特徴とするリソソーム蓄積障害(LSD)につながり得る。結果として生じる疾患が、脂質、炭水化物、及び多糖類を含めたこの酵素の基質の病的蓄積を引き起こす。それぞれのLSDに関連して多くの異なる突然変異遺伝子型が存在するが、これらの突然変異の多くは、安定性の低い酵素の産生につながり得るミスセンス突然変異である。こうした安定性の低い酵素は、時にER関連分解経路によって早まって分解される。その結果、リソソームに酵素欠損が起こり、基質が病的に蓄積する。かかる突然変異酵素は、時に関連技術分野において「フォールディング突然変異体」又は「コンホメーション突然変異体」と称される。
【0004】
LSDであるファブリー病は、α-Gal A遺伝子(GLA)における突然変異の結果としてのリソソーム酵素α-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)の欠損に起因するスフィンゴ糖脂質代謝の進行性のX連鎖性先天異常である。女性は、X連鎖性障害であるにもかかわらず、様々な程度の臨床症状を発現し得る。
【0005】
ファブリー病は、臨床症状によって、3つのグループ:全身性脈管障害を伴う古典的形態、心臓組織に限られた臨床症状を伴う非定型な変異形態、及び遅発型疾患に分類され、これは疾患の軽度から重度の形態を有する女性保因者を含む。臨床症状は、被角血管腫(皮膚上の小さく隆起した赤紫色のしみ)、肢端触覚異常(手足のヒリヒリ)、発汗低下(汗をかく能力の減少)、並びに特徴的な角膜及び水晶体混濁を含む(非特許文献1)。
【0006】
ファブリーは、発生率が一般集団において男性40,000名のうち1名~117,000名のうち1名の間と推定されるまれな疾患である。更に、彼らが古典的な徴候及び症状を呈しないことから不十分な診断がなされ得る、ファブリー病の遅発型表現型の変異体が存在する。この新生児のファブリー病についてのスクリーニングは、ファブリー病の実際の発生率が現在評価されているよりも高い可能性があることを示唆する。
【0007】
ファブリー患者が治療されない場合の平均余命は低下し、腎臓、心臓及び/又は中枢神経系を冒す血管病が原因で、通常は30歳代又は40歳代で死亡が発生する。酵素欠損は、身体全体にわたる血管内皮及び内臓組織において基質グロボトリアオシルセラミド(GL-3)の細胞内蓄積を引き起こす。心臓は肥大を招くこともあり、腎臓は進行性に障害を招くことがある。スフィンゴ糖脂質沈着に起因する、腎機能の緩徐な悪化及び高窒素血症の発現は、通常は人生の20歳代から40歳代で生じるが、早ければ10歳代で生じ得る。腎病変は、ヘミ接合性(男性)及びヘテロ接合性(女性)患者の両方で見いだされる。罹患した男性の平均余命は低下し、心臓、脳、及び/又は腎臓の血管病の結果として、通常は30歳代又は40歳代で死亡が発生する。他の症状は、特に食事後の発熱及び胃腸障害を含む。
【0008】
ファブリー病の結果としての心臓病は、大部分の男性及び多くの女性において発生する。早期の心臓所見は左室肥大、弁膜症及び伝導異常を含む。僧帽弁閉鎖不全は、典型的に小児期又は青年期に最も頻繁にみられる弁病変である。脳血管症状は、主に多巣性小血管障害に起因し、血栓症、一過性脳虚血発作、脳底動脈虚血及び動脈瘤、てんかん発作、片麻痺、片側感覚消失、失語、迷路障害、又は脳出血を含み得る。脳血管症状の発症の平均年齢は33.8年である。人格変化及び精神病的行動は、加齢とともに出現し得る。
【0009】
遅発型ファブリー病を有する個人は、男性又は女性であり得る。遅発型ファブリー病は、非定型な変異形態として現れ、証拠が増えることにより、世界中で説明がなされていない有意な数の「非定型変異体」が存在し得ることが示される。a-GAL突然変異を含むX染色体を受け継ぐ女性は、人生後期に症状を呈し、この疾患の有病率を有意に増加させ得る。これらの患者は、典型的には成人期に最初に病徴を経験し、単一臓器に集中した病徴を有することが多い。例えば、遅発型ファブリー病を有する多くの男性及び女性は、心臓の左室の肥大を有する。また、遅発型ファブリー病は、原因不明の脳卒中の形態で現れることがある。患者の年齢が進むと、疾患の心臓合併症が進行し、死亡を引き起こし得る。
【0010】
ファブリー病のより軽度の「心変異型」を有する患者は、通常は正常なa-Gal活性の5~15%を有し、左室肥大又は心筋症を呈する。これらの心変異型患者は、彼らの古典的に冒された対応部分が著しく損なわれるとき、本質的に無症候性を維持する。心変異型は、未解明の左室肥大型心筋症を有する成人男性患者の11%に見いだされ、ファブリー病が以前の評価よりも頻繁にみられ得ることが示唆される(非特許文献2)。
【0011】
ファブリー病の治療手法は幾つか存在している。ファブリー病の治療に承認されている一つの療法は酵素補充療法(ERT)であり、これは典型的には精製された形態の対応する野生型タンパク質の静脈内注入を伴う(Fabrazyme(登録商標),Genzyme Corp.)。しかしながら、ERTには幾つかの欠点がある。酵素補充療法が複雑化する主な要因の一つは、注入されたタンパク質の急速な分解であり、これは何回もの高額な費用のかかる高用量注入の必要性につながる。ERTには更に注意しておくべき点が幾つかあり、例えば、適切に折り畳まれたタンパク質の大規模な産生、精製、及び貯蔵が困難;グリコシル化された天然タンパク質の入手;抗タンパク質免疫応答の発生;及びタンパク質が血液脳関門を通過できず、中枢神経系の病変を軽減できないこと(即ち、低いバイオアベイラビリティ)などである。加えて、補充酵素は、ファブリー病変に顕著にみられる腎タコ足細胞又は心筋細胞における基質蓄積を減少させるのに十分な量を心臓又は腎臓に浸透させることができない。
【0012】
加えて、ERTは、典型的には精製された形態の対応する野生型タンパク質の静脈内注入を伴う。ファブリー病の治療には、現在2つのα-Gal A製剤:アガルシダーゼアルファ(Replagal(登録商標)、Shire Human Genetic Therapies)及びアガルシダーゼベータ(Fabrazyme(登録商標);Sanofi Genzyme Corporation)が利用可能である。ERTは多くの状況下で有効であるが、この治療は制限も有する。ERTが脳卒中のリスクを低減することは実証されておらず、心筋は緩徐に応答し、及び腎臓の細胞型の一部からのGL-3の除去は制限される。また、一部の患者はERTに対する免疫反応を発現する。
【0013】
ある種の酵素欠損についての別の治療手法は、小分子阻害薬を使用して欠損酵素タンパク質の天然基質の産生を抑え、それにより病変を軽減することを伴う。この「基質抑制」手法は、特にスフィンゴ糖脂質貯蔵障害を含む、リソソーム蓄積障害と呼ばれる約40の関連酵素障害のクラスについて記載されている。療法として使用が提案されている小分子阻害薬は、糖脂質の合成に関わる酵素の阻害に特異的であり、欠損酵素によって分解される必要のある細胞性糖脂質の量を減少させる。
【0014】
3つ目のファブリー病治療手法は、薬理学的シャペロン(PC)と呼ばれるものによる治療となっている。かかるPCはα-Gal Aの小分子阻害薬を含み、これはα-Gal Aに結合して突然変異酵素及び対応する野生型の両方の安定性を増加させることができる。α-Gal Aに対する一つのかかるPCはミガラスタットである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0113517号明細書
【特許文献2】米国特許第8,592,362号明細書
【特許文献3】米国特許第8,592,362号明細書
【特許文献4】米国特許第6,274,597号明細書
【特許文献5】米国特許第6,583,158号明細書
【特許文献6】米国特許第6,589,964号明細書
【特許文献7】米国特許第6,599,919号明細書
【特許文献8】米国特許第6,916,829号明細書
【特許文献9】米国特許第7,141,582号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease,8th Edition 2001,Scriver et al.,ed.,pp.3733-3774,McGraw-Hill,New York
【非特許文献2】Nakao et al.,N.Engl.J.Med.1995;333:288-293
【非特許文献3】www.galafoldamenabilitytable.com
【非特許文献4】www.fabrygenevariantsearch.com
【非特許文献5】“Remington’s Pharmaceutical Sciences” by E.W.Martin,18th Edition
【非特許文献6】Ishii et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.1996;220:812-815
【非特許文献7】Hamler,Rick,et al.“Accurate quantitation of plasma globotriaosylsphingosine(lyso-Gb3)in normal individuals and Fabry disease patients by liquid chromatography-tandem mass spectrometry(LC-MS/MS).”Molecular Genetics and Metabolism,Volume 114.2(2015):S51
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、ファブリー病を治療するための療法に対する必要が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の様々な態様は、ミガラスタットの薬物動態を改善するための方法に関する。
【0019】
本発明の一態様は、ミガラスタットを患者に投与する方法であって、治療有効用量のミガラスタット又はその塩を含む製剤を患者に経口投与することを含み、ここで患者は、ミガラスタット又はその塩を含む製剤を投与する特定の時間間隔内にカフェインを消費しない、方法に関する。様々な実施形態では、この時間間隔は、ミガラスタット又はその塩を投与する前、少なくとも30分、少なくとも60分(1時間)、少なくとも90分(1.5時間)、少なくとも2時間、少なくとも2.5時間、少なくとも3時間又は少なくとも4時間、並びに、ミガラスタット又はその塩を投与した後、少なくとも30分、少なくとも60分(1時間)、少なくとも90分(1.5時間)、少なくとも2時間、少なくとも2.5時間、少なくとも3時間又は少なくとも4時間、カフェインを控えることを含む。
【0020】
一部の実施形態では、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも1時間からその後の少なくとも1時間の時間間隔内にカフェインを消費しない、即ち、患者は、ミガラスタット又はその塩を含む製剤の投与の約1時間以内にカフェインを消費しない。
【0021】
一部の実施形態では、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも2時間からその後の少なくとも1時間の時間間隔内にカフェインを消費しない。
【0022】
一部の実施形態では、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも2時間からその後の少なくとも2時間の時間間隔内にカフェインを消費しない、即ち、患者は、ミガラスタット又はその塩を含む製剤の投与の約2時間以内にカフェインを消費しない。
【0023】
一部の実施形態では、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも3時間からその後の少なくとも2時間の時間間隔内にカフェインを消費しない。
【0024】
一部の実施形態では、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも3時間からその後の少なくとも3時間の時間間隔内にカフェインを消費しない、即ち、患者は、ミガラスタット又はその塩を含む製剤の投与の約3時間以内にカフェインを消費しない。
【0025】
一部の実施形態では、患者は、カフェインを控えるための時間間隔外にカフェイン消費する。例えば、カフェインを控えるための時間間隔がミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも2時間からその後の少なくとも2時間である場合、一部の実施形態において、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも2時間及び/又はその後の少なくとも2時間にカフェインを消費する。様々な実施形態では、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与する前、少なくとも30分、少なくとも60分(1時間)、少なくとも90分(1.5時間)、少なくとも2時間、少なくとも2.5時間、少なくとも3時間又は少なくとも4時間、カフェインを消費する。様々な実施形態では、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与した後、少なくとも30分、少なくとも60分(1時間)、少なくとも90分(1.5時間)、少なくとも2時間、少なくとも2.5時間、少なくとも3時間又は少なくとも4時間、カフェインを消費する。
【0026】
一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩を含む製剤を投与する特定の時間間隔内にカフェインを消費しないことは、ミガラスタットの曲線下面積(AUC)及び/又は最大血漿濃度(Cmax)の減少を回避すること等といったミガラスタットの薬物動態の改善をもたらす。一部の実施形態では、患者は、ミガラスタット又はその塩を含む製剤の投与の2時間以内にカフェインを消費しないことで、ミガラスタットにおけるAUC及びCmaxそれぞれの、約57%及び約60%の減少が回避される。
【0027】
一部の実施形態では、患者は、カフェインを控えるための時間間隔の間、絶食する。一部の実施形態では、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも2時間及びその後の少なくとも2時間にわたって食品を消費せず、また患者は、ミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも2時間及びその後の少なくとも2時間にわたってカフェインを消費しない。
【0028】
一部の実施形態では、患者は、カフェインを控えるための時間間隔と異なる時間間隔にわたって絶食する。
【0029】
一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩も治療有効用量は、1日おきで約100mg~約150mgの範囲内である。
【0030】
一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩の治療有効用量は、1日おきで約123mg遊離塩基当量(FBE)である。
【0031】
一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩の治療有効用量は、1日おきで約150mgのミガラスタット塩酸塩である。
【0032】
1つ以上の実施形態では、製剤は経口剤形を含む。一部の実施形態では、経口剤形は錠剤、カプセル剤又は溶液を含む。
【0033】
本発明の別の態様は、それを必要とするヒト患者におけるファブリー病の治療方法であって、治療有効用量のミガラスタット又はその塩を含む製剤を患者に経口投与することを含み、ここで患者は、ミガラスタット又はその塩を含む製剤を投与する特定の時間間隔内にカフェインを消費しない、方法に関する。この治療方法は、ミガラスタットを投与する方法に関する本明細書に記載の特徴のいずれかを有し得る。
【0034】
1つ以上の実施形態では、患者はα-ガラクトシダーゼAにおけるHEKアッセイ適用可能突然変異を有する。1つ以上の実施形態では、突然変異は薬理学的参照表に開示される。1つ以上の実施形態では、薬理学的参照表は、ファブリー病の治療に対して承認されたミガラスタット製品の添付文書で提供される。1つ以上の実施形態では、薬理学的参照表は、GALAFOLD(登録商標)の添付文書で提供される。1つ以上の実施形態では、薬理学的参照表は、あるウエブサイトで提供される。1つ以上の実施形態では、ウエブサイトは、(非特許文献3)又は(非特許文献4)の1つ以上である。
【0035】
本発明の更なる特徴は、以下の書面の説明及び添付図面から明白になろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】ヒト野生型GLA遺伝子の完全なDNA配列(配列番号1)を示す。
【
図1B】ヒト野生型GLA遺伝子の完全なDNA配列(配列番号1)を示す。
【
図1C】ヒト野生型GLA遺伝子の完全なDNA配列(配列番号1)を示す。
【
図1D】ヒト野生型GLA遺伝子の完全なDNA配列(配列番号1)を示す。
【
図1E】ヒト野生型GLA遺伝子の完全なDNA配列(配列番号1)を示す。
【
図2】野生型α-Gal Aタンパク質(配列番号2)を示す。
【
図3】野生型α-Gal Aタンパク質をコードする核酸配列(配列番号3)を示す。
【
図4】ミガラスタット薬物動態に対するカフェイン及び甘味剤の効果を調査する試験についての試験模式図を示す。
【
図5】カフェイン及び様々な甘味剤とともに投与されるときのミガラスタット濃度-時間特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の幾つかの例示的な実施形態を説明する前に、本発明が以下の説明に示される構築又は方法ステップの詳細に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、及び様々な方法で実施されること又は実行されることが可能である。
【0038】
本発明の様々な態様は、例えばファブリー病を治療するためのミガラスタットの投与に関連する。意外にも、カフェインとミガラスタットとの同時投与が、ミガラスタットの薬物動態に対する食品効果と無関係に、ミガラスタットの薬物動態に対する負の効果を有することが発見されている。従って、本発明の様々な実施形態は、カフェインの同時投与を伴わないミガラスタット又はその塩の投与に関する、即ち、患者はミガラスタット又はその塩を投与する特定の時間間隔内にカフェインを消費しない。
【0039】
定義
本明細書で使用される用語は、本発明の文脈の中で、及び各用語が使用される具体的な文脈において、概して当該技術分野におけるその通常の意味を有する。本発明の組成物及び方法並びにそれをどのように作成及び使用すればよいかを説明することにおいて実施者に更なる手引きを与えるため、特定の用語を以下で、又は本明細書中の他の箇所で考察する。
【0040】
本明細書で使用されるとき、語句「患者はカフェインを消費しない」及び類似用語は、カフェインを含有する食品、飲料又は他の製品を消費しない(例えば、食しない又は飲まない)患者を指す。一部の実施形態では、食品、飲料又は製品は、特定量のカフェイン、例えば、1mg、2mg、5mg又は10mgを超えるカフェインを含む場合、カフェインを含有すると考えられる。一部の実施形態では、カフェイン含有飲料の例として、コーヒー、エスプレッソ、ティー、カフェインエナジードリンク及びカフェインソーダが挙げられる。
【0041】
用語「ファブリー病」は、リソソームα-Gal A活性欠損に起因するスフィンゴ糖脂質異化作用のX連鎖性先天異常を指す。この欠陥により、心臓、腎臓、皮膚、及び他の組織の血管内皮リソソームに基質グロボトリアオシルセラミド(「GL-3」、別名Gb3又はセラミドトリヘキソシド)及び関連するスフィンゴ糖脂質の蓄積が引き起こされる。この酵素の別の基質は血漿グロボトリアオシルスフィンゴシン(「血漿lyso-Gb3」)である。
【0042】
用語「非定型ファブリー病」は、主にα-Gal A欠損の心徴候、即ち、心臓、特に左室の有意な肥大を引き起こす心筋細胞内の進行性GL-3蓄積を有する患者を指す。
【0043】
「保因者」は、一方のX染色体が欠陥α-Gal A遺伝子を含んで一方のX染色体が正常な遺伝子を含む、且つ1つ以上の細胞型に正常な対立遺伝子のX染色体不活性化が存在する女性である。保因者は多くの場合にファブリー病と診断される。
【0044】
「患者」は、特定の疾患と診断されているか、又はそれを有する疑いがある対象を指す。患者はヒト又は動物であってよい。
【0045】
「ファブリー患者」は、ファブリー病と診断されているか、又はそれを有する疑いのある、以下に更に定義するとおりの突然変異型α-Gal Aを有する個体を指す。ファブリー病の特徴マーカーはヘミ接合男性及び女性保因者に同じ有病率で出現し得るが、典型的には女性の方が発症しても重症度が低い。
【0046】
ヒトα-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)は、ヒトGLA遺伝子によってコードされる酵素を指す。イントロン及びエクソンを含むα-Gal Aの完全DNA配列はGenBank受託番号X14448.1で利用可能であり、
図1A~E(配列番号1)に示される。ヒトα-Gal A酵素は429アミノ酸からなり、GenBank受託番号X14448.1及びU78027.1で利用可能であり、
図2に示した(配列番号2)。配列番号1のコーディング領域(即ち、エクソン)だけを含む核酸配列は、
図3に示した(配列番号3)。
【0047】
用語「突然変異タンパク質」は、タンパク質をコードする遺伝子に、小胞体(ER)に通常存在する条件下ではそのタンパク質が安定したコンホメーションを実現できなくなるような突然変異を有するタンパク質を含む。安定したコンホメーションを実現できないと、相当量の酵素がリソソームに輸送されず、むしろ分解されることになる。かかる突然変異は時に「コンホメーション突然変異体」と呼ばれる。かかる突然変異としては、限定はされないが、ミスセンス突然変異、及びインフレーム小欠失及び挿入が挙げられる。
【0048】
本明細書で一実施形態において使用されるとき、用語「突然変異α-Gal A」は、α-Gal Aをコードする遺伝子に、ERに通常存在する条件下ではその酵素が安定したコンホメーションを実現できなくなるような突然変異を有するα-Gal Aを含む。安定したコンホメーションを実現できないと、相当量の酵素がリソソームに輸送されず、むしろ分解されることになる。
【0049】
本明細書で使用されるとき、用語「薬理学的シャペロン」(「PC」)又は「特異的薬理学的シャペロン」(「SPC」)は、タンパク質に特異的に結合する、且つ以下の効果のうちの1つ以上を有する:(i)タンパク質の安定した分子コンホメーションの形成を増進する;(ii)ERから別の細胞部位、好ましくは天然の細胞部位へのタンパク質のトラフィッキングを誘導し、即ちタンパク質のER関連分解を防止する;(iii)誤って折り畳まれたタンパク質の凝集を防止する;及び/又は(iv)タンパク質に少なくとも一部の野生型機能及び/又は活性を回復させる又は増強する、小分子、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物等を含めた任意の分子を指す。例えばα-Gal Aに特異的に結合する化合物とは、それが一般的な関連する又は無関係の酵素群でなく、その酵素に結合してシャペロン効果を及ぼすことを意味する。より具体的には、この用語は、BiPなどの内因性シャペロン、又はグリセロール、DMSO若しくは重水など、様々なタンパク質に対する非特異的シャペロン活性を実証している非特異的作用物質、即ち化学的シャペロンは指さない。本発明の1つ以上の実施形態において、PCは可逆的競合阻害薬であってもよい。1つ以上の実施形態において、PCは、ミガラスタット又はその塩である。別の実施形態において、PCは、ミガラスタット遊離塩基(例えば、123mgのミガラスタット遊離塩基)である。更に別の実施形態において、PCは、ミガラスタットの塩(例えば、150mgのミガラスタットHCl)である。
【0050】
酵素の「競合阻害薬」は、酵素基質の化学構造及び分子構造に構造的に類似していて、基質とほぼ同じ位置でその酵素に結合する化合物を指し得る。従って、阻害薬は基質分子と同じ活性部位に関して競合し、ひいてはKmを増加させる。競合阻害は、通常、阻害薬に取って代わるのに十分な基質分子が利用可能であるならば可逆的であり、即ち競合阻害薬は可逆的に結合することができる。従って、酵素阻害の量は、阻害薬濃度、基質濃度、並びに活性部位に対する阻害薬及び基質の相対的親和性に依存する。
【0051】
本明細書で使用されるとき、用語「特異的に結合する」は、薬理学的シャペロンとα-Gal Aなどのタンパク質との相互作用、具体的には、薬理学的シャペロンとの接触に直接関与するタンパク質中のアミノ酸残基との相互作用を指す。薬理学的シャペロンは標的タンパク質、例えばα-Gal Aに特異的に結合して、一般的な関連する又は無関係のタンパク質群でなく、そのタンパク質にシャペロン効果を及ぼす。所与の薬理学的シャペロンと相互作用するタンパク質中のアミノ酸残基は、タンパク質の「活性部位」の範囲内にあっても、又はなくてもよい。特異的結合は、ルーチンの結合アッセイによるか、又は構造研究、例えば共結晶化、NMRなどによって評価することができる。α-Gal Aの活性部位は基質結合部位である。
【0052】
「α-Gal A活性欠損」は、ファブリー病又は任意の他の疾患(特に血液疾患)を有しない又はそれを有する疑いがない正常な個体の活性と(同じ方法を用いて)比較したとき正常範囲を下回る患者からの細胞のα-Gal A活性を指す。
【0053】
本明細書で使用されるとき、用語「α-Gal A活性を増強する」又は「α-Gal A活性を増加させる」は、α-Gal Aに特異的な薬理学的シャペロンと接触していない細胞(好ましくは同じ細胞型のもの、又は同じ細胞であって、例えばより早い時期のもの)における量と比べて、α-Gal Aに特異的な薬理学的シャペロンと接触した細胞において安定したコンホメーションをとるα-Gal Aの量を増加させることを指す。この用語はまた、そのタンパク質に特異的な薬理学的シャペロンと接触していないα-Gal Aのトラフィッキングと比べて、α-Gal Aに特異的な薬理学的シャペロンと接触した細胞においてリソソームへのα-Gal Aのトラフィッキングを増加させることも指す。これらの用語は、野生型及び突然変異体の両方のα-Gal Aを指す。一実施形態において、細胞におけるα-Gal A量の増加は、PCで処理した細胞からのライセート中の人工基質の加水分解を測定することにより測定される。加水分解の増加がα-Gal A活性の増加の指標である。
【0054】
用語「α-Gal A活性」は、細胞における野生型α-Gal Aの正常な生理学的機能を指す。例えば、α-Gal A活性にはGL-3の加水分解が含まれる。
【0055】
「奏効例」は、例えばファブリー病など、リソソーム蓄積障害(LSD)と診断された、又はそれ有する疑いがある個体であって、その細胞がPCとの接触に応答して、それぞれ、α-Gal A活性の十分な増加、及び/又は症状の軽減又は代用マーカーの増強を呈する個体である。ファブリーの代用マーカーの増強の非限定的な例は、lyso-GB3及び(特許文献1)(本明細書によって全体として参照により援用される)に開示されるものである。
【0056】
(特許文献1)に開示されるファブリー病の代用マーカーの改善の非限定的な例としては、細胞(例えば、線維芽細胞)及び組織におけるα-Gal Aレベル又は活性の増加;GL-3蓄積の減少;ホモシステイン及び血管細胞接着分子-1(VCAM-1)の血漿濃度の低下;心筋細胞及び弁線維細胞内におけるGL-3蓄積の低下;血漿lyso-Gb3の減少;心肥大(特に左心室)の減少、弁閉鎖不全、及び不整脈の軽減;タンパク尿の軽減;CTH、ラクトシルセラミド、セラミドなどの脂質の尿中濃度の低下、並びにグルコシルセラミド及びスフィンゴミエリンの尿中濃度の増加;糸球体上皮細胞に層状封入体(ゼブラ小体)なし;腎機能の改善;発汗低下の緩和;被角血管腫なし;及び高周波感音難聴、進行性難聴、突発性難聴、又は耳鳴りなどの聴力異常の改善が挙げられる。神経症状の改善としては、一過性脳虚血発作(TIA)又は脳卒中の予防;及び先端感覚異常(肢端の灼熱痛又は刺痛)として現れる神経因性疼痛の軽減が挙げられる。ファブリー病を判定し得る別種の臨床マーカーは、有害心血管症状の有病率である。ファブリー病によく見られる心臓関連の徴候及び症状としては、左室肥大、弁膜症(特に僧帽弁逸脱及び/又は逆流)、早期冠動脈疾患、アンギナ、心筋梗塞、伝導異常、不整脈、うっ血性心不全が挙げられる。
【0057】
前述の応答のうちの1つ以上を実現する用量が、「治療有効用量」である。
【0058】
語句「薬学的に許容可能」は、生理学的に忍容可能な、且つ典型的にはヒトへの投与時に有害な反応を生じさせない分子実体及び組成物を指す。一部の実施形態において、本明細書で使用されるとき、用語「薬学的に許容可能」は、動物、より詳細にはヒトにおける使用が連邦政府若しくは州政府の規制機関によって承認されている、又は米国薬局方若しくは他の一般に認められている薬局方に掲載されていることを意味する。医薬担体に関して用語「担体」は、化合物がそれと共に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、又は媒体を指す。かかる医薬担体は、水及び油などの滅菌液であってもよい。担体としては好ましくは、特に注射溶液用に、水又は水溶液、生理食塩溶液並びにデキストロース及びグリセロール水溶液が利用される。好適な医薬担体については、(非特許文献5)、又は他の版に記載されている。
【0059】
本明細書で使用されるとき、用語「単離された」は、言及されている材料が、それが通常見出される環境から取り出されることを意味する。従って、単離された生物学的材料は、細胞成分、即ちその材料が見出される又は産生される細胞の構成成分を含まないものであり得る。核酸分子の場合、単離核酸には、PCR産物、ゲル上のmRNAバンド、cDNA、又は制限酵素断片が含まれる。別の実施形態において、単離核酸は、好ましくは、それが見出され得る染色体から切り出され、より好ましくは、染色体中に見出されるときその単離核酸分子に含まれる遺伝子の上流又は下流に位置する非調節領域、非コード領域、又は他の遺伝子ともはやつながっていない。更に別の実施形態において、単離核酸は1つ以上のイントロンを欠いている。単離核酸は、プラスミド、コスミド、人工染色体などに挿入される配列を含む。従って、具体的な実施形態において、組換え核酸は単離核酸である。単離タンパク質は、他のタンパク質又は核酸、又は両方と、細胞においてそれが結び付いているものと、又はそれが膜結合性タンパク質である場合には細胞膜と結び付いていてもよい。単離細胞小器官、細胞、又は組織は、生物においてそれが見出される解剖学的部位から取り出される。単離材料は、必須ではないが、精製されてもよい。
【0060】
用語「酵素補充療法」又は「ERT」は、非天然の精製酵素をかかる酵素が欠損した個体に導入することを指す。投与されるタンパク質は、天然の供給源から又は組換え発現によって(以下に更に詳細に記載するとおり)入手されてもよい。この用語はまた、本来であれば精製酵素の投与が必要な、又はそれから利益を得る個体、例えば酵素欠乏を患っている個体において精製酵素を導入することも指す。導入される酵素は、インビトロで作製された精製組換え酵素であってもよく、又は単離された組織又は体液、例えば胎盤又は動物乳等から精製された、又は植物から精製されたタンパク質であってもよい。
【0061】
用語「ERTナイーブな患者」は、ミガラスタット療法を開始する前に、ERTを決して受けていない、又は少なくとも6か月にわたってERTを受けていないファブリー患者を指す。
【0062】
用語「ERTを経験した患者」は、ミガラスタット療法を開始する直前にERTを受けていたファブリー患者を指す。一部の実施形態では、ERTを経験した患者は、ミガラスタット療法を開始する直前に少なくとも12か月のERTを受けている。
【0063】
本明細書で使用されるとき、用語「遊離塩基当量」又は「FBE」は、ミガラスタット又はその塩に存在するミガラスタットの量を指す。換言すれば、用語「FBE」は、ミガラスタット遊離塩基の量、又はミガラスタットの塩によって提供されるミガラスタット遊離塩基の当量のいずれかを意味する。例えば、塩酸塩の重量に起因して、僅か150mgのミガラスタット塩酸塩が、123mgの遊離塩基形態のミガラスタットと同程度のミガラスタットを提供する。他の塩は、塩の分子量に応じて異なる換算係数を有することが予想される。
【0064】
用語「ミガラスタット」は、具体的に反する旨が指示されない限り、ミガラスタット遊離塩基又はその薬学的に許容可能な塩(例えば、ミガラスタットHCl)を包含する。
【0065】
用語「突然変異」及び「変異体」(例えば、「適用可能突然変異又は変異体」におけるような)は、遺伝子又は染色体のヌクレオチド配列の変化を指す。本明細書で言及した2つの用語は、典型的には一緒に-例えば、穿孔配列において言及したヌクレオチド配列の変化を言及する「突然変異又は変異体」として使用される。これら2つの用語の一方だけが何らかの理由から言及される場合は、欠けている用語は含まれており、かかるものとして理解すべきである。更に、用語「適用可能突然変異」及び「適用可能変異体」は、PC療法に適用可能である、例えばミガラスタット療法に適用可能である突然変異又は変異体を指す。特定タイプの適用可能突然変異又は変異体は、本明細書及びこれにより全体として参照により組み込まれる(特許文献2)に記載されるインビトロHEKアッセイにおける基準に従ってミガラスタット療法に適用可能であると決定された突然変異又は変異体である「HEKアッセイ適用可能突然変異又は変異体」である。
【0066】
用語「約」及び「近似的に」は、概して、計測の性質又は精度を所与として、計測した量の許容可能な誤差程度を意味するものとする。典型的な例示的誤差程度は、所与の値又は値の範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、及びより好ましくは5%以内である。或いは、特に生体系において、用語「約」及び「近似的に」は、所与の値のオーダー内、好ましくは10倍又は5倍以内、及びより好ましくは2倍以内の値を意味し得る。本明細書に提供される数量は、特に明記しない限り近似であり、つまり、明示的に記載されないときも用語「約」又は「近似的に」が暗示され得る。
【0067】
ファブリー病
ファブリー病は、まれな進行性の重篤なX連鎖性リソソーム蓄積障害(LSD)である。GLA遺伝子の突然変異が、スフィンゴ糖脂質代謝に必要なリソソーム酵素α-Gal Aの欠損を引き起こす。幼児期に始まるα-Gal A活性の低下が、GL-3及び血漿lyso-Gb3を含めたスフィンゴ糖脂質の蓄積を引き起こし、疼痛、胃腸症状、腎不全、心筋症、脳血管イベント、及び早期の死亡を含めたファブリー病の症状及び致死的続発症につながる。早期の療法開始及び生涯にわたる治療が、疾患の進行を遅らせ、平均余命を延ばす機会を提供する。
【0068】
ファブリー病は様々な疾患重症度及び発症年齢を包含するが、従来、2つの主要な表現型、「古典型」及び「遅発型」に分けられている。古典型表現型は主に、α-Gal A活性が検出不能乃至低く、且つ腎臓、心臓及び/又は脳血管症状の発症が早い男性のものと見なされている。遅発型表現型は主に、残存α-Gal A活性がより高く、これらの疾患症状の発症がより遅い男性のものと見なされている。ヘテロ接合女性保因者は、典型的には遅発型表現型を発現するが、X染色体不活性化のパターンに応じて古典型表現型もまた呈し得る。
【0069】
ファブリー病の原因となるGLA突然変異は1,000超同定されている。GLA突然変異は、小規模な欠失及び挿入、及びより大規模な遺伝子再構成に加えて、限定はされないが、ミスセンス、ナンセンス、及びスプライシング突然変異を含む。約60%が、α-Gal A酵素に単一アミノ酸置換をもたらすミスセンス突然変異である。ミスセンスGLA突然変異は、多くの場合に、異常に折り畳まれた不安定な形態のα-Gal Aの産生をもたらし、その大部分が古典型表現型に関連している。ERにおける正常な細胞品質管理機構は、これらの異常なタンパク質がリソソームに移動するのを阻止し、それらを早期分解及び除去の標的とする。多くのミスセンス突然変異形態が、α-Gal A特異的薬理学的シャペロンであるミガラスタットの標的である。
【0070】
ファブリー病の臨床症状は幅広い重症度にわたり、患者の残存α-Gal Aレベルとおおよそ相関している。現在治療を受けている患者の大多数は古典型ファブリー患者と称され、そのほとんどが男性である。これらの患者は、腎臓、心臓及び脳を含む様々な器官に疾患を生じ、疾患症状は初め青年期に出現し、典型的には30歳代又は40歳代に死亡するまで重症度が進行する。幾つもの最近の研究から、心機能又は腎機能障害及び脳卒中など、通常は成人期に初めて出現する様々なファブリー病症状を有する診断未確定の男性及び女性が多数いることが示唆される。遅発型ファブリー病と称されるこの種のファブリー病者は、古典型ファブリー患者よりも残存α-Gal Aレベルが高い傾向がある。遅発型ファブリー病者は、典型的には成人期に初めて疾患症状を経験し、左心室の肥大又は進行性腎不全など、単一の器官に集中した疾患症状を有することが多い。加えて、遅発型ファブリー病はまた、原因不明の脳卒中の形でも見られ得る。
【0071】
ファブリー病はまれであり、多くの臓器が関わり、発症年齢の範囲が幅広く、及び不均一であるため、適切な診断は難題である。例えば、ファブリー患者は進行性腎臓機能障害を有し、未治療の患者は40歳代までに末期腎機能障害を呈する。α-Gal A活性の欠損は、腎臓の細胞を含め、多くの細胞型におけるグロボトリアオシルセラミド(Gb3)及び関連するスフィンゴ糖脂質の蓄積につながる。Gb3は、タコ足細胞、遠位尿細管及びヘンレ係締の上皮細胞及び尿細管細胞に蓄積する。腎機能の機能障害はタンパク尿及び糸球体濾過率の低下として現れ得る。
【0072】
更に、医療専門家の間でも認知度が低く、誤診が頻繁に起こる。ファブリー病の診断は、ほとんどの場合、患者が症状を示した後に、突然変異解析と併せて血漿又は末梢白血球(WBC)におけるα-Gal A活性の低下に基づき確認される。女性では、保因者の一部の細胞におけるランダムなX染色体不活性化に起因して保因者女性の酵素的同定の信頼性が低いため、診断は更に一層難題である。例えば、一部の絶対的保因者(古典型罹患男性の娘)は、正常から極めて低い活性にまで及ぶα-Gal A酵素活性を有する。保因者は白血球では正常なα-Gal A酵素活性を有し得るため、正確な保因者同定及び/又は診断を与えるのは、遺伝子検査によるα-Gal A突然変異の同定のみである。
【0073】
1つ以上の実施形態において、ミガラスタットが適用可能と見なされるα-Gal Aの突然変異形態は、優良試験所基準(GLP)でバリデーションされたインビトロアッセイ(GLP HEK又はミガラスタット適用可能性アッセイ)に従いHEK-293細胞で突然変異形態のα-Gal Aを発現させたとき(「HEKアッセイ」と称される)、野生型(WT)の≧1.20倍の相対的増加(+10μMミガラスタット)及び≧3.0%の絶対的増加(+10μMミガラスタット)を示すものとして定義される。かかる突然変異は、本明細書では「HEKアッセイ適用可能」突然変異とも称される。
【0074】
治療開始前に酵素の増強を判定する先行のスクリーニング方法が提供されている。例えば、HEK-293細胞を使用したアッセイが、所与の突然変異が薬理学的シャペロン(例えばミガラスタット)治療に応答性かどうかを予測するため臨床試験において利用されている。このアッセイでは、cDNAコンストラクトを作成する。HEK-293細胞において対応するα-Gal A突然変異形態を一過性に発現させる。次に細胞を±ミガラスタット(17nM~1mM)で4~5日間インキュベートする。その後、合成蛍光発生基質(4-MU-α-Gal)を使用するか、又はウエスタンブロットにより、細胞ライセート中のα-Gal Aレベルを測定する。これは、疾患を引き起こす公知のミスセンス又は小型インフレーム挿入/欠失突然変異について行われている。これまでにこれらの方法を用いてPC(例えばミガラスタット)に応答性であると同定されている突然変異が、(特許文献3)(本明細書によって全体として参照により援用される)に列挙されている。
【0075】
薬理学的シャペロン
LSDに関連する酵素の小分子阻害薬の結合は、突然変異酵素及び対応する野生型酵素の両方の安定性を増加させることができる((特許文献4);(特許文献5);(特許文献6);(特許文献7);(特許文献8)、及び(特許文献9)を参照のこと、全て参照により本明細書に援用される)。詳細には、幾つかの標的リソソーム酵素の特異的で選択的な競合阻害薬であるグルコース及びガラクトースの小分子誘導体を投与すると、インビトロで細胞内の酵素の安定性が有効に増加し、ひいてはリソソームへの酵素のトラフィッキングが増加した。従って、リソソーム内の酵素量が増加することにより、酵素基質の加水分解が増加するものと予想される。この戦略の背後にあった当初の理論は以下のとおりであった:突然変異酵素タンパク質はERにおいて不安定であるため((非特許文献6))、酵素タンパク質は正常な輸送経路(ER→ゴルジ体→エンドソーム→リソソーム)において遅れ、早まって分解される。従って、突然変異酵素に結合してその安定性を増加させる化合物が酵素の「シャペロン」として働き、ERを出てリソソームに移ることのできる量を増加させ得る。加えて、一部の野生型タンパク質のフォールディング及びトラフィッキングは不完全で、場合によっては一部の野生型タンパク質の最大70%がその最終的な細胞部位に到達する前に分解されるため、シャペロンを野生型酵素の安定化に使用して、ERを出てリソソームに輸送されることのできる酵素の量を増加させることができる。
【0076】
1つ以上の実施形態において、薬理学的シャペロンはミガラスタット又はその塩を含む。1-デオキシガラクトノジリマイシン(1-DGJ)又は(2R,3S,4R,5S)-2-(ヒドロキシメチル)ピペリジン(piperdine)-3,4,5-トリオールとしても知られる化合物ミガラスタットは、以下の化学式を有する化合物である:
【化1】
【0077】
本明細書で考察するとおり、ミガラスタットの薬学的に許容可能な塩もまた本発明において使用し得る。ミガラスタットの塩が使用されるとき、塩の投薬量は、ミガラスタット遊離塩基が使用されたならば受け取ったであろう量と等価な用量のミガラスタットを患者が受け取るように調整されることになる。ミガラスタットの薬学的に許容可能な塩の一例は、ミガラスタットHClである:
【化2】
【0078】
ミガラスタットは低分子量イミノ糖であり、GL-3の末端ガラクトースの類似体である。インビトロ及びインビボでの薬理学的研究から、ミガラスタットが薬理学的シャペロンとして働き、野生型α-Gal A及び特異的突然変異形態のα-Gal Aの活性部位に高親和性で選択的且つ可逆的に結合することが実証されており、それらの遺伝子型は、HEKアッセイ適用可能突然変異と称される。ミガラスタットが結合すると、これらの突然変異形態のα-Gal Aが小胞体において安定し、リソソームへのその適切なトラフィッキングが促進され、ミガラスタットが解離することにより、α-Gal AがGL-3及び他の基質レベルを低下させることが可能になる。ファブリー病を有する患者の約30~50%がHEKアッセイ適用可能突然変異を有し;その大半が疾患の古典的表現型に関連する。
【0079】
HEKアッセイ適用可能突然変異としては、薬理学的参照表に列挙した少なくともそれらの突然変異(例えば、GALAFOLD(登録商標)等のミガラスタット製品に対する米国若しくは国際添付文書に列挙されたもの)が挙げられる。本明細書で使用されるとき、「薬理学的参照表」は、ミガラスタット製品(例えば、GALAFOLD(登録商標))の包装内又は医療提供者であればアクセス可能な特定の突然変異又は変異体がミガラスタット(例えば、GALAFOLD(登録商標))PC療法に応答性であるかどうかを伝える、及び表の形式で提示される文書記録に必ずしも限定されないウエブサイト内の添付文書のいずれかに含まれる任意の公的にアクセス可能な文書記録若しくは電子記録を指す。従って、本発明の一実施形態において、「薬理学的参照表」は、1つ以上の適用可能突然変異又は変異体を含む任意の情報の保管場所を指す。HEKアッセイ適用可能突然変異についての例示的な薬理学的参照表は、GALAFOLD(登録商標)が使用のために承認されている様々な国において、又はそれぞれがこれにより全体として参照により組み込まれる、(非特許文献3)又は(非特許文献4)等のウエブサイトでGALAFOLD(登録商標)についての製品特徴及び/又は処方情報の概要において見いだすことができる。
【0080】
a-Gal突然変異の大多数がミスセンス変異であるが、ほとんどが触媒部位の外側に存在し、いずれの突然変異が酵素を安定化する薬理学的シャペロン(PC)であれば「救済」可能である不安定な酵素を生じさせるか、及びいずれがPCを用いて安定化できないかを予測することは困難である。
【0081】
HEKアッセイ適用可能突然変異についての例示的な薬理学的参照表は下の表1に提供される。1つ以上の実施形態では、二重変異が同じ染色体(男性及び女性)に存在する場合、その患者は、二重変異が表1の1つの項目に存在する場合(例えば、D55V/Q57L)にHEKアッセイ適用可能と考えられる。一部の実施形態では、二重変異が異なる染色体(女性のみ)に存在する場合、その患者は、個別の突然変異のいずれか1つが表1に存在する場合にHEKアッセイ適用可能と考えられる。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
用量設定、製剤化及び投与
1つ以上の実施形態において、ファブリー患者にミガラスタット又はその塩が1日おきに1回(「QOD」とも称される)の頻度で投与される。様々な実施形態において、本明細書に記載される用量は、ミガラスタット塩酸塩又は等価な用量のミガラスタット若しくは塩酸塩以外のその塩に関する。一部の実施形態において、これらの用量はミガラスタットの遊離塩基に関する。代替的実施形態において、これらの用量はミガラスタットの塩に関する。更なる実施形態において、ミガラスタットの塩はミガラスタット塩酸塩である。ミガラスタット又はミガラスタットの塩の投与は、本明細書では「ミガラスタット療法」と称される。
【0115】
従って、1つ以上の実施形態では、ファブリー患者は、約15mg~約300mg、約15mg~約250mg、約15mg~約200mg、約15mg~約150mg又は約15mg~約123mgの範囲内のミガラスタット又はその塩が、1日おきに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回又は7日ごとに1回の頻度で投与される。1つ以上の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、1日おきに1回(「QOD」又は「Q48H」とも称される)、4日ごとに1回(「Q4D」又は「Q96H」とも称される)又は7日ごとに1回(「Q7D」又は「Q168H」とも称される)の頻度で投与される。一部の実施形態では、投与間隔は、投与間に48時間を超える任意の投与間隔を含んでもよい。例えば、投与間隔は、72、96、120、144、又は168時間ごとの投与を含んでもよい。
【0116】
1つ以上の実施形態では、ファブリー患者は、約15mg~約300mg、約15mg~約250mg、約15mg~約200mg、約15mg~約150mg、約15mg~約123mg、約15mg~約100mg、約15mg~約50mg、約50mg~約300mg、約50mg~約250mg、約50mg~約200mg、約50mg~約150mg、約50mg~約123mg、約50mg~約100mg、約100mg~約300mg、約100mg~約250mg、約100mg~約200mg、約100mg~約150mg、約100mg~約123mg、約150mg~約300mg、約150mg~約250mg、約150mg~約200mg、約200mg~約300mg、約200mg~約250mg又は約250mg~約300mgの範囲内のミガラスタットFBEが、1日おきに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回又は7日ごとに1回の頻度で投与される。
【0117】
1つ以上の実施形態では、ファブリー患者は、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約105mg、約110mg、約115mg、約120mg、約123mg、約125mg、約130mg、約135mg、約140mg、約145mg、約150mg、約155mg、約160mg、約165mg、約170mg、約175mg、約180mg、約185mg、約190mg、約195mg、約200mg、約205mg、約210mg、約215mg、約220mg、約225mg、約230mg、約235mg、約240mg、約245mg、約250mg、約255mg、約260mg、約265mg、約270mg、約275mg、約280mg、約285mg、約290mg、約295mg又は約300mgのミガラスタットFBEが、1日おきに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回又は7日ごとに1回の頻度で投与される。
【0118】
再び、150mgのミガラスタット塩酸塩が、123mgのミガラスタットの遊離塩基形態に等価であることが注目される。従って、1つ以上の実施形態では、用量は、1日おきに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回又は7日ごとに1回の頻度で投与される、150mgのミガラスタット塩酸塩又は等価用量のミガラスタット若しくは塩酸塩以外のその塩である。更なる実施形態では、用量は、1日おきに1回の頻度で投与される、150mgのミガラスタット塩酸塩である。他の実施形態では、用量は、1日おきに1回の頻度で投与される、123mgのミガラスタット遊離塩基である。
【0119】
1つ以上の実施形態では、ファブリー患者は、約15mg~約300mg、約15mg~約250mg、約15mg~約200mg、約15mg~約150mg、約15mg~約123mg、約15mg~約100mg、約15mg~約50mg、約50mg~約300mg、約50mg~約250mg、約50mg~約200mg、約50mg~約150mg、約50mg~約123mg、約50mg~約100mg、約100mg~約300mg、約100mg~約250mg、約100mg~約200mg、約100mg~約150mg、約100mg~約123mg、約150mg~約300mg、約150mg~約250mg、約150mg~約200mg、約200mg~約300mg、約200mg~約250mg又は約250mg~約300mgの範囲内のミガラスタット塩酸塩が、1日おきに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回又は7日ごとに1回の頻度で投与される。
【0120】
1つ以上の実施形態では、ファブリー患者は、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約42mg、約45mg、約50mg、約55mg、約57mg、約60mg、約65mg、約67mg、約70mg、約75mg、約77mg、約79mg、約80mg、約85mg、約90mg、約94mg、約95mg、約97mg、約100mg、約105mg、約110mg、約115mg、約120mg、約125mg、約128mg、約130mg、約135mg、約140mg、約144mg、約145mg、約150mg、約155mg、約160mg、約165mg、約170mg、約175mg、約180mg、約185mg、約190mg、約195mg、約200mg、約205mg、約210mg、約215mg、約220mg、約225mg、約230mg、約235mg、約240mg、約245mg、約250mg、約255mg、約260mg、約265mg、約270mg、約275mg、約280mg、約285mg、約290mg、約295mg又は約300mgのミガラスタット塩酸塩が、1日おきに1回、3日ごとに1回、4日ごとに1回、5日ごとに1回、6日ごとに1回又は7日ごとに1回の頻度で投与される。
【0121】
一部の実施形態では、患者は、約10kg~約≧50kg、約10kg~約≦50kg、約10kg~約≦45kg、約10kg~約≦40kg、約10kg~約≦35kg、約10kg~約≦30kg、約10kg~約≦25kg、約10kg~約≦20kg、約10kg~約≦15kg、約15kg~約≧50kg、約15kg~約≦50kg、約15kg~約≦45kg、約15kg~約≦40kg、約15kg~約≦35kg、約15kg~約≦30kg、約15kg~約≦25kg、約20kg~約≧50kg、約20kg~約≦50kg、約20kg~約≦45kg、約20kg~約≦40kg、約20kg~約≦35kg、約20kg~約≦30kg、約20kg~約≦25kg、約25kg~約≧50kg、約25kg~約≦50kg、約25kg~約≦45kg、約25kg~約≦40kg、約25kg~約≦35kg、約25kg~約≦30kg、約30kg~約≧50kg、約30kg~約≦50kg、約30kg~約≦45kg、約30kg~約≦40kg、約30kg~約≦35kg、約35kg~約≧50kg、約35kg~約≦50kg、約35kg~約≦45kg、約35kg~約≦40kg、約40kg~約≧50kg、約40kg~約≦50kg、約40kg~約≦45kg、約45kg~約≧50kg又は約45kg~約≦50kgの範囲内の体重である。
【0122】
本発明に従うミガラスタット又はその塩の投与は、任意の投与経路に適した製剤であってもよいが、好ましくは、錠剤、カプセル剤又は溶液等の経口剤形で投与される。例えば、患者は、それぞれが25mg、40mg、50mg、60mg、75mg、80mg、100mg又は150mgのミガラスタット塩酸塩(即ち、1-デオキシガラクトノジリマイシン塩酸塩)又は等価用量のミガラスタット若しくは塩酸塩以外のその塩を含有する、経口投与されるカプセル剤である。別の例では、患者は、それぞれが150mgのミガラスタット塩酸塩又は等価用量のミガラスタット若しくは塩酸塩以外のその塩を含有する、経口投与されるカプセル剤である。
【0123】
様々な実施形態では、本明細書に記載の用量は、ミガラスタット塩酸塩又は等価用量のミガラスタット若しくは塩酸塩以外のその塩に関連する。一部の実施形態では、これらの用量は、ミガラスタットの遊離塩基に関連する。代替的な実施形態では、これらの用量は、ミガラスタットの塩に関連する。更なる実施形態では、ミガラスタットの塩は、ミガラスタット塩酸塩である。ミガラスタット又はミガラスタットの塩の投与は、本明細書では「ミガラスタット療法」と称される。
【0124】
ミガラスタット又はその塩の投与は、特定期間にわたってもよい。1つ以上の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、少なくとも28日、例えば少なくとも30、60若しくは90日又は少なくとも4、6、8、12、16、26若しくは52週又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、16、20、24、30若しくは36か月又は少なくとも1、2、3、4若しくは5年の継続期間にわたって投与される。一部の実施形態では、ミガラスタット療法は、少なくとも約4週間である。様々な実施形態では、ミガラスタット療法は、少なくとも約2、3、4又は5年の長期ミガラスタット療法である。
【0125】
一部の実施形態において、PC(例えば、ミガラスタット又はその塩)は経口投与される。1つ以上の実施形態において、PC(例えば、ミガラスタット又はその塩)は注射によって投与される。PCは薬学的に許容可能な担体を伴うこともあり、これは投与方法に依存し得る。
【0126】
1つ以上の実施形態において、PC(例えば、ミガラスタット又はその塩)は単剤療法として投与され、例えば、錠剤又はカプセル又は液体の形態で経口的に、又は注射用に滅菌水溶液でなど、任意の投与経路に好適な形態であり得る。他の実施形態において、PCは、投与前にインビトロで酵素凝集を防ぐため再構成中又は再構成直後に補充酵素の製剤に加えられる凍結乾燥粉末で提供される。
【0127】
PC(例えば、ミガラスタット又はその塩)が経口投与用に製剤化される場合、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース又はリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容可能な賦形剤と共に従来手段によって錠剤又はカプセルが調製されてもよい。錠剤は当該技術分野において周知の方法によってコーティングされてもよい。経口投与用の液体調合物は、例えば、溶液、シロップ又は懸濁液の形態をとってもよく、又は使用前に水又は別の好適な媒体で構成するための乾燥製剤として調製されてもよい。かかる液体調合物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は硬化食用脂);乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア);非水性媒体(例えば、扁桃油、油性エステル類、エチルアルコール又は分画植物油);及び保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはプロピル又はソルビン酸)などの薬学的に許容可能な添加剤と共に従来手段によって調製されてもよい。調合物はまた、緩衝塩、香味剤、着色剤及び甘味剤も適宜含有し得る。経口投与用の調合物は、活性シャペロン化合物の制御放出をもたらすように好適に製剤化されてもよい。
【0128】
非経口/注射使用に好適なPC(例えば、ミガラスタット又はその塩)の医薬製剤としては、概して、滅菌水溶液(水溶性の場合)、又は滅菌注射用溶液若しくは分散液の即時調製用の分散液及び滅菌粉末が挙げられる。いずれの場合にも、形態は無菌でなければならず、及び易注射針通過性が存在する程度の流動性がなければならない。これは製造及び保管条件下で安定していなければならず、且つ細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されていなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールなど)、これらの好適な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合に必要な粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物作用の防止は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、ソルビン酸などによってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば糖類又は塩化ナトリウムを含めることが妥当となり得る。吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に使用することにより、注射用組成物の持続的吸収をもたらすことができる。
【0129】
滅菌注射用溶液は、適切な溶媒中に必要な量の精製酵素(存在する場合)及びPC(例えば、ミガラスタット又はその塩)を、必要に応じて上記に列挙される種々の他の成分と共に配合し、続いてろ過又は最終滅菌することにより調製される。概して、分散液は、基礎分散媒及び上記に列挙されるものからの他の必要な成分を含有する滅菌媒体中に様々な滅菌活性成分を配合することにより調製される。滅菌注射用溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分+任意の追加的な所望の成分の粉末を予め滅菌ろ過されたその溶液から生じさせる真空乾燥法及び凍結乾燥法である。
【0130】
製剤は賦形剤を含有し得る。製剤に含まれ得る薬学的に許容可能な賦形剤は、緩衝液、例えば、クエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、重炭酸塩緩衝液、アミノ酸、尿素、アルコール類、アスコルビン酸、及びリン脂質;血清アルブミン、コラーゲン、及びゼラチンなどのタンパク質;EDTA又はEGTAなどの塩、及び塩化ナトリウム;リポソーム;ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrollidone);デキストラン、マンニトール、ソルビトール、及びグリセロールなどの糖類;プロピレングリコール及びポリエチレングリコール(例えば、PEG-4000、PEG-6000);グリセロール;グリシン又は他のアミノ酸;及び脂質である。製剤と使用する緩衝液系としては、クエン酸塩;酢酸塩;重炭酸塩;及びリン酸塩緩衝液が挙げられる。リン酸塩緩衝液が好ましい実施形態である。
【0131】
シャペロン化合物の投与経路は、静脈内、皮下、動脈内、腹腔内、眼内、筋肉内、頬側、直腸、腟内、眼窩内、脳内、皮内、頭蓋内、脊髄内、脳室内、髄腔内、大槽内、嚢内、肺内、鼻腔内、経粘膜、経皮、又は吸入によることを含め、経口又は非経口であってよい。
【0132】
上述の非経口製剤のシャペロン化合物の投与は、調合物のボーラスの定期的注射によってもよく、又は外部(例えば、点滴静注バッグ)若しくは内部(例えば、生体内分解性インプラント)のリザーバからの静脈内若しくは腹腔内投与によって投与されてもよい。
【0133】
医薬製剤及び投与に関する実施形態は、本発明の他の実施形態のいずれかと、例えばファブリー病を有する患者を治療する方法、ERTナイーブなファブリー患者を治療する方法、ERTを経験したファブリー患者を治療する方法、CBV事象のリスクを低減する方法、複合臨床アウトカムのリスクを低減する方法、患者又は患者の集団の症状又は転帰を評価する方法、治療法を評価する方法、ファブリー病と診断されたか、又はそれを有する疑いのある患者においてα-Gal Aを増強する方法、ファブリー病と診断された患者を治療するための薬剤の製造におけるα-Gal Aに対する薬理学的シャペロンの使用又はファブリー病と診断された患者の治療において使用するためのα-Gal Aに対する薬理学的シャペロンに関する実施形態、並びに適用可能突然変異、PC及びそれらの好適な用量に関する実施形態と組み合わされてもよい。
【0134】
1つ以上の実施形態において、PC(例えば、ミガラスタット又はその塩)はERTと併用して投与される。ERTは、野生型酵素又は生物学的に機能性の酵素を注入によって外因的に導入することによりタンパク質の量を増加させる。この療法は、上述のとおり、ファブリー病などのLSDを含めた多くの遺伝的障害向けに開発された。注入後、外因性酵素は非特異的又は受容体特異的機構を介して組織により取り込まれるものと想定される。一般に、取込み効率は高くなく、外因性タンパク質の循環時間は短い。加えて、外因性タンパク質は不安定で、急速な細胞内分解を受けるとともに、続く治療との有害な免疫反応の可能性もある。1つ以上の実施形態において、シャペロンは補充酵素(例えば、補充α-Gal A)と同時に投与される。一部の実施形態において、シャペロンは補充酵素(例えば、補充α-Gal A)と共に製剤化される。
【0135】
1つ以上の実施形態では、患者は、ERTからミガラスタット療法に切り替えられる。一部の実施形態では、ERTに対する患者が同定され、患者のERTが中断され、患者は、ミガラスタット療法を受け始める。ミガラスタット療法は、本明細書に記載の方法のいずれかに従い得る。様々な実施形態では、患者は、幾つかの程度の腎臓機能障害、例えば軽度、中等度又は重度の腎臓機能障害を有する。
【0136】
ミガラスタットの投与
一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、成人患者に投与される。一部の実施形態では、成人患者の年齢は、≧18歳である。一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、青年患者に投与される。一部の実施形態では、青年患者の年齢は、12歳~<18歳、13歳~<18歳、14歳~<18歳、15歳~<18歳、16歳~<18歳、17歳~<18歳、12歳~≦17歳、13歳~≦17歳、14歳~≦17歳、15歳~≦17歳、16歳~≦17歳、12歳~≦16歳、13歳~≦16歳、14歳~≦16歳、15歳~≦16歳、12歳~≦15歳、13歳~≦15歳、14歳~≦15歳、12歳~≦14歳、13歳~≦14歳、又は12歳~≦13歳の範囲内である。
【0137】
一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、<15kg~≧45kg、15kg~<25kg、25kg~<35kg、又は35kg~<45kgの範囲の体重を有する患者に投与される。一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、体重<15kgを有する患者に投与される。一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、体重≧45kgを有する患者に投与される。
【0138】
一部の実施形態では、約25mgのミガラスタット又はその塩は、<15kgの体重を有する患者に投与される。一部の実施形態では、約50mgのミガラスタット又はその塩は、15kg~<25kgの範囲内の体重を有する患者に投与される。一部の実施形態では、約75mgのミガラスタット又はその塩は、25kg~<35kgの範囲内の体重を有する患者に投与される。一部の実施形態では、約75mgのミガラスタット又はその塩は、35kg~<50kgの範囲内の体重を有する患者に投与される。
【0139】
一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、第1の頻度で第1の期間にわたって投与され、次に第2の頻度で第2の期間にわたって投与される。第1の頻度は、第2の頻度より大きい(即ち、より頻繁である)。第1の頻度及び第2の頻度は、本明細書で開示される任意の投与間隔であってもよい。一部の実施形態では、第1の頻度は、1日おきであり、且つ第2の頻度は、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと又は7日ごとである。一部の実施形態では、第1の頻度は、4日ごとであり、且つ第2の頻度は、5日ごと、6日ごと、又は7日ごとである。
【0140】
一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、第1の頻度で第1の期間にわたって投与され、次に第2の頻度で第2の期間にわたって投与され、次に第3の頻度で第3の期間にわたって投与される。第1の頻度は、第2の頻度より大きい(即ち、より頻繁であり)、且つ第2の頻度は、第3の頻度より大きい。例えば、一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩は、1日おきに1回の第1の頻度で第1の期間にわたって投与され、次にミガラスタット又はその塩は、4日ごとに1回の第2の頻度で第2の期間にわたって投与され、次にミガラスタット又はその塩は、7日ごとに1回の第3の頻度で第3の期間にわたって投与される。
【0141】
カフェインを伴わないミガラスタットの投与
上で言及し、下の実施例において更に詳細に説明される通り、カフェインは、意外にも、ミガラスタットの薬物動態に対する有意な効果を有することが見いだされた。従って、一部の実施形態において、患者は、ミガラスタット又はその塩を含む製剤を投与する特定の時間間隔内にカフェインを消費しない。様々な実施形態では、この時間間隔は、ミガラスタット又はその塩を投与する前、少なくとも30分、少なくとも60分(1時間)、少なくとも90分(1.5時間)、少なくとも2時間、少なくとも2.5時間、少なくとも3時間又は少なくとも4時間、並びに、ミガラスタット又はその塩を投与した後、少なくとも30分、少なくとも60分(1時間)、少なくとも90分(1.5時間)、少なくとも2時間、少なくとも2.5時間、少なくとも3時間又は少なくとも4時間にわたってカフェインを控えることを含む。
【0142】
一部の実施形態では、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも1時間からその後の少なくとも1時間の時間間隔内にカフェインを消費しない、即ち、患者は、ミガラスタット又はその塩を含む製剤の投与の約1時間以内にカフェインを消費しない。
【0143】
一部の実施形態では、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも2時間からその後の少なくとも1時間の時間間隔内にカフェインを消費しない。
【0144】
一部の実施形態では、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも2時間からその後の少なくとも2時間の時間間隔内にカフェインを消費しない、即ち、患者は、ミガラスタット又はその塩を含む製剤の投与の約2時間以内にカフェインを消費しない。
【0145】
一部の実施形態では、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも3時間からその後の少なくとも2時間の時間間隔内にカフェインを消費しない。
【0146】
一部の実施形態では、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも3時間からその後の少なくとも3時間の時間間隔内にカフェインを消費しない、即ち、患者は、ミガラスタット又はその塩を含む製剤の投与の約3時間以内にカフェインを消費しない。
【0147】
一部の実施形態では、患者は、カフェインを控えるための時間間隔外にカフェインを消費する。例えば、カフェインを控えるための時間間隔がミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも2時間及びその後の少なくとも2時間である場合、一部の実施形態において、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも2時間及び/又はその後の少なくとも2時間、カフェインを消費する。様々な実施形態では、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも30分、少なくとも60分(1時間)、少なくとも90分(1.5時間)、少なくとも2時間、少なくとも2.5時間、少なくとも3時間又は少なくとも4時間、カフェインを消費する。様々な実施形態では、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与した後の少なくとも30分、少なくとも60分(1時間)、少なくとも90分(1.5時間)、少なくとも2時間、少なくとも2.5時間、少なくとも3時間又は少なくとも4時間、カフェインを消費する。
【0148】
一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩を含む製剤を投与する特定の時間間隔内にカフェインを消費しないことは、例えばミガラスタットの曲線下面積(AUC)及び/又は最大血漿濃度(Cmax)の減少を回避するといった、ミガラスタットの薬物動態の改善をもたらす。一部の実施形態では、患者は、ミガラスタット又はその塩を含む製剤の投与の2時間以内にカフェインを消費しないことで、ミガラスタットにおけるAUC及びCmaxそれぞれの、約57%及び約60%の減少が回避される。
【0149】
一部の実施形態では、患者は、カフェインを控えるための時間間隔の間、絶食する。一部の実施形態では、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも2時間及びその後の少なくとも2時間にわたって食品を消費せず、患者は、ミガラスタット又はその塩を投与する前の少なくとも2時間及びその後の少なくとも2時間にわたってカフェインを消費しない。
【0150】
一部の実施形態では、患者は、カフェインを控えるための時間間隔と異なる時間間隔にわたって絶食する。
【0151】
一部の実施形態では、患者は、その時間間隔の間、カフェイン飲料を消費しない。一部の実施形態では、カフェイン飲料は、コーヒー、エスプレッソ、ティー、カフェインエナジードリンク及びカフェインソーダを含む。
【0152】
一部の実施形態では、患者は、カフェインが消費されない時間間隔の間、非カフェイン飲料を消費する。好適な非カフェイン飲料の例として、限定はされないが、水(通常水、フレーバー水、甘味水)、果肉を有しないフルーツジュース、及びカフェインを含まない炭酸飲料が挙げられる。一部の実施形態では、非カフェイン飲料は、甘味飲料を含む。一部の実施形態では、非カフェイン飲料は、人工甘味飲料を含む。一部の実施形態では、人工甘味剤は、アスパルテーム又はアセスルファムカリウムを含む。他の人工甘味剤及び/又は糖代替物として、限定はされないが、スクラロース、ステビア及びサッカリンが挙げられる。一部の実施形態では、非カフェイン及び/又は低カフェイン飲料は、脱カフェインコーヒー又は脱カフェインティーを含む。
【0153】
一部の実施形態では、患者は、カフェインが消費されない時間間隔の間、カフェインの完全な節制よりむしろ、あくまで少量のカフェインを消費する。様々な実施形態では、患者は、カフェインが消費されない時間間隔の間、総カフェイン摂取量を、200mg未満、190mg未満、180mg未満、170mg未満、160mg未満、150mg未満、140mg未満、130mg未満、120mg未満、110mg未満、100mg未満、95mg未満、90mg未満、85mg未満、80mg未満、75mg未満、70mg未満、65mg未満、60mg未満、55mg未満、50mg未満、45mg未満、40mg未満、35mg未満、30mg未満、25mg未満、20mg未満、15mg未満、10mg未満、5mg未満、4mg未満、3mg未満、2mg未満又は1mg未満に制限する。
【0154】
本発明の他の態様は、患者にミガラスタット薬物動態(例えば、AUC及びCmax)に対するカフェイン消費の効果について通知すること、及び/又はカフェインがミガラスタット投与の特定の時間間隔内に消費されるべきでないことを患者に指示することに関する。一部の実施形態では、この情報及び/又は指示は、医療提供者によって患者に経口的に提供される。一部の実施形態では、この情報及び/又は指示は、書面形式で、例えば処方情報、製品ラベル、製品特徴、製品モノグラフ、患者情報等において患者に提供される。様々な実施形態では、この情報及び/又は指示は、GALAFOLD(登録商標)が使用のために承認されている様々な国家において、又はそれぞれがこれにより全体として参照により組み込まれる、(非特許文献3)又は(非特許文献4)等のウエブサイトでGALAFOLD(登録商標)についての製品特徴及び/又は処方情報において提供される。
【0155】
一部の実施形態では、情報及び/又は指示は、以下:
・薬物動態試験では、約190mgのカフェインを含有するコーヒーの投与により、ミガラスタットの全身曝露において、水と比較すると、有意な減少(AUC0-∞における57%の平均減少及びCmaxにおける60%の平均減少)がもたらされることが示された。
・単回用量の6ウェイクロスオーバー薬物動態試験が、20名の健常対象において実施され、コーヒー及び甘味飲料とともに投与されるときの150mgのミガラスタットHClカプセルの血漿バイオアベイラビリティが、水との投与と比較して評価された。ミガラスタットの吸収速度(tmax)が、コーヒー又は甘味飲料の投与による影響を水と比較して受けなかった。しかし、約190mgのカフェインを含有する280mLのコーヒーの投与時の消費により、ミガラスタット全身曝露において、水と比較すると、有意な減少(AUC0-∞における57%の平均減少及びCmaxにおける60%の平均減少)がもたらされた。ミガラスタットのバイオアベイラビリティは、天然(スクロース:8027ng・h/mLのAUC0-∞及び1265ng/mLのCmax)甘味剤及び人工(アスパルテーム又はアセスルファムK:それぞれ、9075ng.h/mL、8641ng.h/mLのAUC0-∞及び1374ng/mL、1225ng/mLのCmax)甘味剤とともに投与されるとき、水(8613ng.h/mLのAUC0-∞及び1328ng/mLのCmax)と比較すると、大して差がなかった。
・ミガラスタットの摂取の少なくとも2時間前及び2時間後に食品を消費しないことに加えて、カフェインはこの期間中に消費されるべきでない。
・任意の形態のカフェインは、4時間の絶食期間中に消費されるべきでない。
・カフェイン含有飲料又はカフェインを含有する他の製品の消費は、ミガラスタットの機能様式に影響し得なかった。
・水(通常水、フレーバー水、甘味水)、果肉を有しないフルーツジュース、及びカフェインを含まない炭酸飲料は、4時間の絶食期間中、消費できない。
・ミガラスタットの曝露は、食品とともに摂取されると、約40%減少し、それ故、それは空腹胃に対して摂取されるべきである。最低4時間の絶食をもたらすように、食品はミガラスタットの摂取の少なくとも2時間前及び2時間後に消費されるべきでない。清澄流動食、例えば、水、果肉を有しないフルーツジュース、炭酸飲料、ティー又はコーヒー(ミルク又はクリームを含まない)は、この期間中に消費できる。
の1つ以上を含む。
【0156】
Lyso-Gb3及びミガラスタットレベルの監視
Lyso-Gb3(グロボトリアオシルスフィンゴシン)を監視し、基質がファブリー患者の身体から除去されているかどうかを判定することができる。より高レベルのlyso-Gb3は、より高レベルの基質と相関する。患者の治療が成功している場合、lyso-Gb3レベルは低下することが予想される。ファブリー病についての1つの投与計画は、約20mg~約300mgFBEのミガラスタット又はその塩を、1日おきに1回の頻度で患者に投与することである。
【0157】
一部の実施形態では、該方法は、ミガラスタットレベルを測定することを更に含む。1つ以上の実施形態では、ミガラスタット濃度(例えば、ng/mL)が測定される。一部の実施形態では、全曲線下面積(AUC0-∞)が測定される。1つ以上の実施形態では、ミガラスタットが次回投与前に達する最低濃度(Ctrough)が測定される。
【0158】
ミガラスタットレベルは、当該技術分野で公知の方法を介して測定することができる。例えば、組織サンプルからミガラスタットを測定する場合、組織アリコートは、ホモジナイザー(例えば、MP Biomedical,Irvine,CA製のFastPrep-24)を用いて均質化されてもよい(1mgの組織あたり7μLの水)。次に、100μlの組織ホモジネート又は50μlの血漿を含むマイクロ遠心チューブに、500ng/mLの13C d2-AT1001 HCl内部標準(MDS Pharma Services製)が添加されてもよい。次に、95/5のMeOH:H2Oにおける体積600μlの5mM HClが添加され、チューブが2分間ボルテックスされ、その後、室温、21000×gで10分間かけて遠心分離され得る。次に、上清は、透明な96ウェルプレートに収集され、dH2O中の5mM HClで希釈され、96ウェルの固相抽出(SPE)プレート(Waters Corp.,Milford MA)に適用されてもよい。数回の洗浄ステップ及び透明な96ウェルプレートへの溶出後、抽出物はN2下でドライダウンされ、移動相Aで再構成されてもよい。次に、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)(例えば、LC:島津製作所;MS/MS:ABSciex API 5500 MS/MS)によって、ミガラスタットレベルを測定することができる。液体クロマトグラフィーは、Halo HILICカラム(150×4.6mm、2.7μm)(Advanced Materials Technology,Inc.)上、0.7mL/分の流速で、ACN:水:ギ酸塩の二成分移動相系(移動相A:5mMのギ酸アンモニウム、0.5%ギ酸、95:5のACN:水;移動相B:5mMのギ酸アンモニウム、0.5%ギ酸、5:47.5:47.5のACN:MeOH:水)を用いて実施することができる。MS/MS分析は、APCi正イオンモード下で実施されてもよい。血漿中のミガラスタット測定の場合、均質化を伴わない場合を除き、同じ手順に従ってもよい。以下の前駆体イオン→生成物イオンへの遷移が監視されてもよく、ミガラスタットの場合、質量/電荷(m/z)164.1→m/z 80.1であり、内部標準の場合、m/z 167.1→m/z 83.1である。12点較正曲線及び品質管理サンプルが調製されてもよい。次に、ミガラスタットの曲線下面積の内部標準の場合に対する比が決定され、各サンプル中のミガラスタットの最終濃度が、較正曲線に適用される線形最小二乗近似式(linear least squares fit equation)を用いて計算される。およそのモル濃度を導き出すため、1gの組織が1mLの体積として評価されてもよい。
【0159】
一部の実施形態では、サンプルは、投与から0、1、2、3、4、6、8、12、24、48、72、96、120、144及び/又は168時間後、採取されてもよい。一部の実施形態では、投与から48時間後のミガラスタット濃度が測定される。一部の実施形態では、第2の期間の投与は、約5、10、15、20、25、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175又は200ng/mLを超えるミガラスタットがミガラスタットの第1の期間中の投与が測定されてから48時間後に測定された後、開始される。
【0160】
一部の実施形態では、Lyso-Gb3は、当該技術分野で公知の方法を介し、検証されたアッセイを用いて測定することができる。ミガラスタットの場合と同様、lyso-Gb3レベルは、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)(例えば、LC:島津製作所;MS/MS:ABSciex API 5500 MS/MS)を用いて測定されてもよい。例えば、血漿lyso-Gb3を測定する1つのプロセスは、(非特許文献7)に記載されている。1つ以上の実施形態では、lyso-Gb3は、患者の尿からのサンプル中で測定される。
【0161】
用量調節
一部の実施形態では、ミガラスタット又はその塩の投与頻度は、患者のeGFRの変化に応答して調節される。例示的な実施形態では、患者のeGFRが60mL/分/1.73m2未満、45mL/分/1.73m2未満、30mL/分/1.73m2未満又は15mL/分/1.73m2未満に低下するとき、投与頻度を低減することができる。一部の実施形態では、患者のeGFRが60mL/分/1.73m2未満、45mL/分/1.73m2未満、30mL/分/1.73m2未満又は15mL/分/1.73m2未満に低下するとき、患者にミガラスタット又はその塩が投与されない。
【0162】
ミガラスタット濃度は、様々な時点で血漿サンプルから測定し、身体からのクリアランスを監視することができる。Ctroughの臨床的に関連する増加は、血漿ミガラスタット濃度の有意な蓄積を示唆する。ミガラスタットが次の用量投与前に身体から十分に除去されない場合、ミガラスタットのレベルは蓄積し、おそらくは阻害効果を引き起こし得る。従って、1つ以上の実施形態では、正常な腎機能のCtroughと比較して、Ctroughにおける1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9又は3.0倍の増加後、投与頻度の変更がなされる。
【0163】
1つ以上の実施形態では、正常な腎機能のAUC0-∞と比較して、AUC0-∞における1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9又は3.0倍の増加後、投与頻度の変更がなされる。
【0164】
一部の実施形態では、該方法は、患者からの1つ以上の血漿サンプル中のlyso-Gb3を測定することを更に含む。第1のベースラインlyso-Gb3レベルは、第1の期間中に測定されてもよい。本明細書で使用されるとき、「ベースラインlyso-Gb3レベル」は、所与の期間又は投与計画の間に測定される最低血漿lyso-Gb3値を指す。従って、lyso-Gb3レベルがベースラインlyso-Gb3レベルから有意に増加する場合、これは腎疾患の進行及び/又はミガラスタットの不適当な排除を示し得る。従って、更なる実施形態では、第2の期間の投与は、第1のベースラインlyso-Gb3レベルを超える(例えば、少なくとも約20、25、30、33、35、40、45若しくは50%及び/又は1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5若しくは3nMの)増加が測定された後、開始される。血漿lyso-Gb3におけるベースラインからの33%及び/又は2nMの増加は、腎機能の低下及び/又は病状の進行からのいずれかの阻害誘導性のミガラスタット曝露をシグナル伝達するファブリー患者における第3相データに基づき、臨床的に関連するとみなされている。Lyso-Gb3レベルは、様々な頻度で(例えば、2、3、4又は5か月ごとに約1回)測定されてもよい。ベースラインlyso-Gb3レベルが一旦投与計画が開始されてから確立されるのに約3か月かかると考えられる。
【0165】
一部の実施形態では、第2の期間の投与は、少なくとも約30%若しくは33%及び/又は2nM及び/又は約50ng/mL超のミガラスタットである第1のベースラインlyso-Gb3レベルを上回る増加が、第1の期間中のミガラスタットの投与が測定されてから48時間後に測定された後、開始してもよい。一部の実施形態では、第2の期間の投与は、少なくとも約30%若しくは33%及び/又は2nM及び/又は約50ng/mL超のミガラスタットである第1のベースラインlyso-Gb3レベルを上回る増加が、第1の期間中のミガラスタットの投与が測定されてから48時間後に測定された後、又はAUC0-∞及び/若しくはCtroughにおいて第1の期間中の正常な腎機能と比較して1.5倍より大きい増加が認められた後、開始してもよい。
【実施例0166】
実施例1:ミガラスタットの薬物動態に対するカフェイン及び甘味剤の効果の試験
本実施例では、カフェイン及び甘味剤と組み合わせたミガラスタットのバイオアベイラビリティ、安全性及び忍容性の非盲検試験であった、AT1001-045試験を説明する。
【0167】
目的及びエンドポイント
主要目的は、健常対象における、水に対する、カフェイン飲料、スクロース飲料、カフェイン及びスクロース飲料の組み合わせ、アスパルテーム人工甘味飲料、及びアセスルファムカリウム人工甘味飲料の中の150mgのミガラスタットHClカプセルの血漿ミガラスタットのバイオアベイラビリティを評価することであった。
【0168】
副次的目的は、健常対象における、ミガラスタットHClの安全性及び忍容性を評価することであった。
【0169】
一次エンドポイントは、Cmax、AUC0-t及びAUC0-∞についての各試験治療と参照治療との間の目的の分散分析比較であった。目的の比較は、点推定比及び下位/上位の90%信頼区間であった。
【0170】
試験設計
これは単施設単回用量無作為化非盲検6ウェイクロスオーバー試験であった。各対象は、6つの期間のそれぞれについてミガラスタットHCl150mgの単回経口用量を受けた。試験の模式図を
図4に示す。
【0171】
無作為化シーケンスでは、各対象は、150mgのミガラスタットHClカプセルを、カフェイン飲料、スクロース飲料、カフェイン及びスクロース飲料の組み合わせ、アスパルテーム人工甘味飲料、アセスルファムカリウム人工甘味飲料、又は水とともに受けた。
【0172】
全ての試験治療薬を、絶食状態(投与後、一晩+4時間)で投与した。
【0173】
各単回用量投与後に、治療間の休薬間隔としても役立つ、72時間のPKサンプリング期間を設けた。
【0174】
第6の期間の72時間の血液サンプルを通じた、6つの治療期間の継続期間にわたって対象を住ませた(約19日、-1日目を含む)。
【0175】
第6の投与期間から約7日後(23日目)、フォローアップ訪問のため、対象を診療所に戻した。
【0176】
スクリーニングを含む試験の全継続期間は、約7.5週であった。
【0177】
試験を中断する対象の交換はしなかった。
【0178】
対応する90%信頼区間での適切なミガラスタットの曝露比(Cmax及びAUC)を用いて、目的の比較:
・カフェイン(試験)対水(参照)
・スクロース(試験)対水(参照)
・カフェイン+スクロース(試験)対水(参照)
・アスパルテーム(試験)対水(参照)
・アセスルファムK(試験)対水(参照)
に対処することになる。
【0179】
試験集団、サンプルサイズ及び用量
試験集団:18~45歳の男性及び女性健常対象。
サンプルサイズ:性別調整された20名の対象。
用量:GALAFOLD(登録商標)として提供される、ミガラスタット塩酸塩の単回150mgカプセル。
【0180】
試験治療薬の調製
以下の試験治療薬を調製した:
カフェイン飲料:8オンスのカフェインティー;何も添加されない;加温(40~50℃)投与され、10分以内に消費される
スクロース飲料:26グラムのスクロースで調製され、薬剤投与前に冷却され、10分以内に消費される、8オンスのスクロース溶液
・一人前の8オンスのショ糖含有Coca-Cola(登録商標)中のスクロース含量と等価
カフェイン+スクロース飲料:薬剤投与前に冷却され、10分以内に消費される、8オンスのカフェイン/スクロース飲料(例えば、Jolt(登録商標))
アスパルテーム:125mgのアスパルテームで調製され、薬剤投与前に冷却され、10分以内に消費される、8オンスのアスパルテーム溶液
・一人前の8オンスのDiet Coke(登録商標)缶中のアスパルテーム含量と等価
アセスルファムK:30mgのアセスルファムKで調製され、薬剤投与前に冷却され、10分以内に消費される、8オンスのアセスルファムK溶液
・一人前の8オンスのDietCoke(登録商標)又はCoca-Cola(登録商標)Zero Sugar缶中のアセスルファムK含量と等価
【0181】
結果
各治療におけるミガラスタットの薬物動態を
図5及び下の表2に示す。水と生物学的同等性であると考えられる治療の場合、90%信頼区間は、水での値の80%~125%以内でなければならない。
【0182】
【0183】
図5及び表2から明らかであるように、人工甘味剤アセスルファムK及びアスパルテームは、水と生物学的同等性である。従って、一部の実施形態では、これらの人工甘味剤を含有する飲料は、ミガラスタットとともに投与してもよい。
【0184】
スクロースは、極めて生物学的同等性に近く;臨床的に関連すると考えられないスクロースの場合、AUCにおける平均差は8%の減少にすぎなかった。従って、一部の実施形態では、スクロースを含有する飲料は、ミガラスタットとともに投与してもよい。
【0185】
主要なカフェイン-ミガラスタット相互作用が認められ;カフェイン単独の場合、Cmaxは60%減少し、且つAUCは57%減少し;カフェイン+スクロースの場合、同様の減少が認められた。従って、一部の実施形態では、ミガラスタットは、カフェイン飲料とともに投与するべきでない。
【0186】
本明細書において言及される特許及び科学論文は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書に引用される全ての米国特許及び公開されている又は未公開の米国特許出願は、参照によって援用される。本明細書に引用される全ての公開されている外国特許及び特許出願は、本明細書によって参照により援用される。本明細書に引用される他の全ての公開されている参考文献、文書、論稿及び科学論文は、本明細書によって参照により援用される。
【0187】
本発明は特にその好ましい実施形態を参照して図示及び説明されているが、当業者は、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなくそれらにおいて形態及び詳細の様々な変更を行い得ることを理解するであろう。
【0188】
本明細書に記載の実施形態は、本組成物及び本方法を例示することが意図され、本発明の範囲を限定することは意図されない。全体として記載に一致し、当業者に容易に理解される様々な修飾及び変更は包含されることが意図される。添付の特許請求の範囲は、例の中で示される具体的な実施形態によって限定されるべきでないが、全体として記載に一致する最も広い解釈が与えられるべきである。
【0189】
特許、特許出願、出版物、製品説明、GenBank受入番号、及びプロトコルは、本願全体を通じて引用され、それらの開示は、あらゆる目的でそれら全体として参照により本明細書に組み込まれる。