(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084673
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】レーザー焼結ペロブスカイト太陽電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20240618BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20240618BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/40
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101041
(22)【出願日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】202211602197.7
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523236641
【氏名又は名称】武漢万度光能研究院有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】盛 余松
(72)【発明者】
【氏名】徐 当
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA11
5F251BA12
5F251BA14
5F251CB13
5F251CB24
5F251XA01
5F251XA61
(57)【要約】 (修正有)
【課題】極めて短い時間で大面積のメソポーラス膜の製造を実現し、エネルギー消費を大幅に低減し、加工時間を短縮し、製造効率を向上させ、製品製造の再現性を向上させ、加工環境の要件を低減する、レーザー焼結ペロブスカイト太陽電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】導電ベース1上に正孔ブロッキング層2を製造するステップと、正孔ブロッキング層2上にメソポーラスナノ結晶層3を製造し、レーザーでメソポーラスナノ結晶層3を焼結するステップと、メソポーラスナノ結晶層3上に絶縁スペーサー層4を製造するステップと、絶縁スペーサー層4上に対電極層5を製造し、絶縁スペーサー層4及び対電極層5を焼結するステップと、対電極層5上にペロブスカイト前駆体溶液を塗布して、レーザー焼結ペロブスカイト太陽電池を得るステップとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法であって、
(1)導電ベース上に正孔ブロッキング層を製造するステップと、
(2)ステップ(1)で得られた前記正孔ブロッキング層上にメソポーラスナノ結晶層を製造し、レーザーで前記メソポーラスナノ結晶層を焼結するステップと、
(3)ステップ(2)で得られた前記メソポーラスナノ結晶層上に絶縁スペーサー層を製造するステップと、
(4)ステップ(3)で得られた前記絶縁スペーサー層上に対電極層を製造し、前記絶縁スペーサー層及び前記対電極層を焼結するステップと、
(5)ステップ(4)で得られた前記対電極層上にペロブスカイト前駆体溶液を塗布して、レーザー焼結ペロブスカイト太陽電池を得るステップと
を含むことを特徴とするレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【請求項2】
ステップ(2)において、紫外線レーザ、赤外線レーザ、可視光レーザのいずれか1つを用いてレーザー焼結を行うことを特徴とする請求項1に記載のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【請求項3】
ステップ(2)において、前記レーザー焼結のレーザー波長は0.35~10.8μmであり、
任意選択的に、前記レーザー焼結のレーザ電力は0.08~275Wであり、
任意選択的に、前記レーザー焼結の焦点距離は600±40mmであり、
任意選択的に、前記レーザー焼結のレーザーエッチング線の充填方式は、平行同方向、平行逆方向、弓形連結、交差連結のいずれか1つであり、
任意選択的に、前記レーザー焼結のレーザーエッチング線の充填間隔は0.008~0.05mmであり、
任意選択的に、前記レーザー焼結のレーザ出力電力百分率は25~75%であり、
任意選択的に、前記レーザー焼結のレーザー周波数は10~85kHzであり、
任意選択的に、前記レーザー焼結のレーザー走査速度は20~8000mm/sであり、
任意選択的に、前記レーザー焼結のレーザー走査回数は1~10回であり、
任意選択的に、前記レーザー焼結のレーザー走査面積は0.8~1024cm2であることを特徴とする請求項2に記載のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【請求項4】
ステップ(2)において、酸素又はオゾンの体積分率45~99%でレーザー焼結を行うことを特徴とする請求項1に記載のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【請求項5】
ステップ(1)において、スプレー塗布の方式により導電ベース上に正孔ブロッキング層を製造し、
前記導電ベースは、導電性ガラス、金属酸化物、カーボンナノ材料及び導電性ポリマーのうちの1つ又は複数であり、前記正孔ブロッキング層は、二酸化チタン、酸化アルミニウムのうちの1つ又は複数であり、
任意選択的に、前記正孔ブロッキング層の厚さは1~50nmであることを特徴とする請求項1に記載のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【請求項6】
ステップ(2)において、メソポーラスナノ結晶層を製造することは、メソポーラスナノ結晶層ペーストをシルクスクリーンにより正孔ブロッキング層上に印刷し、乾燥させてメソポーラスナノ結晶層を得るステップを含み、
前記メソポーラスナノ結晶層ペーストは、二酸化チタン、二酸化スズ、酸化亜鉛、スズ酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化ニッケルのうちの1つ又は複数であり、
任意選択的に、前記メソポーラスナノ結晶層の厚さは100~8000nmであることを特徴とする請求項1に記載のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【請求項7】
ステップ(3)において、絶縁スペーサー層を製造することは、絶縁スペーサー層ペーストをシルクスクリーンによりメソポーラスナノ結晶層上に印刷し、乾燥させて絶縁スペーサー層を得るステップを含み、
前記絶縁スペーサー層ペーストは、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素のうちの1つ又は複数であり、
任意選択的に、前記絶縁スペーサー層の厚さは2~100μmであることを特徴とする請求項1に記載のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【請求項8】
ステップ(4)において、対電極層を製造することは、対電極層ペーストをシルクスクリーンにより絶縁スペーサー層上に印刷し、乾燥させて対電極層を得るステップを含み、
前記対電極層ペーストは、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、活性炭、グラフェン、グラフディインのうちの1つ又は複数であり、
任意選択的に、前記対電極層の厚さは10~80μmであり、
任意選択的に、ステップ(4)において、前記絶縁スペーサー層及び前記対電極層は、300~400℃で30~50分間焼結されることを特徴とする請求項1に記載のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法により得られるレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池。
【請求項10】
順次設置された導電ベースと、正孔ブロッキング層と、メソポーラスナノ結晶層と、絶縁スペーサー層と、対電極層とを含み、ペロブスカイト結晶は、メソポーラスナノ結晶層、絶縁スペーサー層、対電極層内に位置することを特徴とする請求項9に記載のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池製造の技術分野に関し、特にレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メゾスコピックペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト型有機金属ハロゲン化物半導体を光吸収材料として利用する太陽電池であるが、その動作原理は大まかに次の通りである。先ず、太陽光線がガラス及び導電ベース薄膜を透過して電池内部に入り込む。次に、ペロブスカイト活性光吸収材料が光子を吸収して励起子を形成する。励起子解離には一定の励起子解離エネルギーが必要であるため、一部の励起子は励起されて電子正孔対を生成し、自由キャリアになる。電子はペロブスカイト層を介してメソポーラスナノ結晶層に輸送され、最終的に導電ベースに収集される一方、正孔はペロブスカイト材料を介して対電極層に導入されて収集される。最後に、キャリアの輸送と転送により、電池の両端に電圧が形成されて、外部回路に電流が生成される。
【0003】
現在、メゾスコピックペロブスカイト太陽電池の製造過程は主に次の通りである。先ず、導電性ガラス上に正孔ブロッキング層をスプレー塗布してから、正孔ブロッキング層上にソポーラスナノ結晶層、絶縁スペーサー層、対電極層を順次印刷する。印刷の後、順次に高温焼結により各層の薄膜で必要なメソポーラス構造を得るべきである。最後に、対電極層表面にペロブスカイト前駆体溶液をドロップコートし、ペロブスカイト前駆体溶液が毛細管作用により電池内部の各層のメソポーラス構造に入り込んで、ペロブスカイト結晶が完成され、デバイスの製造が実現される。
【0004】
上記の製造過程において、メソポーラス構造の形成は、高温焼結によって実現されるが、現在の薄膜のメソポーラ化工程には多くの限界がある。メソポーラスナノ結晶層二酸化チタン層を例として、従来の高温ホットステージ焼結は造孔剤、溶剤等の有機成分のみが除去されるが、二酸化チタン粒子間に高品質の結晶格子連結が形成されていない。また、薄膜を高温で長時間焼結して初めて必要なメソポーラス構造を得ることができ、エネルギー消費が大きく、製造効率が低く、焼結炉の温度の上昇と下降に必要な工程時間が長い。なお、高温焼結は長時間内で温度の安定を維持すべきであるため、加工環境に対する要求が比較的高い。絶対的な温度安定状態を実現することは比較的難しく、温度の変動により薄膜アニール時に熱を不均一に受けて内部応力を発生させ、ひいてはデバイス製造の再現性に影響を与える。また、薄膜自体は空気中の水分や酸素と反応しやすく、長時間の高温状態でその反応が激しくなり、デバイスの効率向上を大きく阻害する。このような問題は、デバイスの面積が拡大された後により顕著になり、メゾスコピックペロブスカイト太陽電池のデバイスを産業規模へ移行するにあたって早急に解決しなければならない課題である。
【発明の概要】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、レーザー焼結ペロブスカイト太陽電池及びその製造方法を提供することで、レーザーの高エネルギービームにより二酸化チタン結晶粒間の溶融及び接合を促進し、二酸化チタンのより良好な結晶格子連結を実現し、ひいては結晶粒子間の電気的相互接続構造を構築し、キャリアの効率的な転送を促進すると同時に、レーザー焼結によりペーストに存在する溶剤及びバインダー等の有機成分を除去し、薄膜のメソポーラス構造を確保しようとするものである。これにより、既存の高温焼結工程における薄膜焼結時間が長く、エネルギー消費が大きく、製造効率が低く、加工環境要件が高く、製造再現性が劣り、デバイス電荷再結合が深刻であるといった技術的課題を解決する。
【0006】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の技術方案は以下の通りである。
【0007】
レーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法であって、
(1)導電ベース上に正孔ブロッキング層を製造するステップと、
(2)ステップ(1)で得られた前記正孔ブロッキング層上にメソポーラスナノ結晶層を製造し、レーザーで前記メソポーラスナノ結晶層を焼結するステップと、
(3)ステップ(2)で得られた前記メソポーラスナノ結晶層上に絶縁スペーサー層を製造するステップと、
(4)ステップ(3)で得られた前記絶縁スペーサー層上に対電極層を製造し、前記絶縁スペーサー層及び前記対電極層を焼結するステップと、
(5)ステップ(4)で得られた前記対電極層上にペロブスカイト前駆体溶液を塗布して、レーザー焼結ペロブスカイト太陽電池を得るステップとを含み、
好ましくは、ステップ(2)において、紫外線レーザ、赤外線レーザ、可視光レーザのいずれか1つを用いてレーザー焼結を行う。
【0008】
好ましくは、ステップ(2)において、前記レーザー焼結のレーザー波長は0.35~10.8μmであり、
任意選択的に、前記レーザー焼結のレーザ電力は0.08~275Wであり、
任意選択的に、前記レーザー焼結の焦点距離は600±40mmであり、
任意選択的に、前記レーザー焼結のレーザーエッチング線の充填方式は、平行同方向、平行逆方向、弓形連結、交差連結のいずれか1つであり、
任意選択的に、前記レーザー焼結のレーザーエッチング線の充填間隔は0.008~0.05mmであり、
任意選択的に、前記レーザー焼結のレーザ出力電力百分率は25~75%であり、
任意選択的に、前記レーザー焼結のレーザー周波数は10~85kHzであり、
任意選択的に、前記レーザー焼結のレーザー走査速度は20~8000mm/sであり、
任意選択的に、前記レーザー焼結のレーザー走査回数は1~10回であり、
任意選択的に、前記レーザー焼結のレーザー走査面積は0.8~1024cm2である。
【0009】
なお、前記レーザー波長、レーザ電力、焦点距離、レーザ出力電力百分率、充填間隔、走査速度、レーザー周波数は、レーザー焼結の効果に比較的大きな影響を与える。
【0010】
好ましくは、ステップ(2)において、酸素又はオゾンの体積分率45~99%でレーザー焼結を行う。
【0011】
好ましくは、ステップ(1)において、スプレー塗布の方式により導電ベース上に正孔ブロッキング層を製造し、
前記導電ベースは、導電性ガラス、金属酸化物、カーボンナノ材料及び導電性ポリマーのうちの1つ又は複数であり、前記正孔ブロッキング層は、二酸化チタン、酸化アルミニウムのうちの1つ又は複数であり、
任意選択的に、前記正孔ブロッキング層の厚さは1~50nmである。
【0012】
好ましくは、ステップ(2)において、メソポーラスナノ結晶層を製造することは、メソポーラスナノ結晶層ペーストをシルクスクリーンにより正孔ブロッキング層上に印刷し、乾燥させてメソポーラスナノ結晶層を得るステップを含み、
前記メソポーラスナノ結晶層ペーストは、二酸化チタン、二酸化スズ、酸化亜鉛、スズ酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化ニッケルのうちの1つ又は複数であり、
任意選択的に、前記メソポーラスナノ結晶層の厚さは10~8000nmである。
【0013】
好ましくは、ステップ(3)において、絶縁スペーサー層を製造することは、絶縁スペーサー層ペーストをシルクスクリーンによりメソポーラスナノ結晶層上に印刷し、乾燥させて絶縁スペーサー層を得るステップを含み、
前記絶縁スペーサー層ペーストは、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素のうちの1つ又は複数であり、
任意選択的に、前記絶縁スペーサー層の厚さは1~100μmである。
【0014】
好ましくは、ステップ(4)において、対電極層を製造することは、対電極層ペーストをシルクスクリーンにより絶縁スペーサー層上に印刷し、乾燥させて対電極層を得るステップを含み、
前記対電極層ペーストは、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、活性炭、グラフェン、グラフディインのうちの1つ又は複数であり、
任意選択的に、前記対電極層の厚さは1~100μmであり、
任意選択的に、ステップ(4)において、前記絶縁スペーサー層及び前記対電極層は、300~400℃で30~50分間焼結される。
【0015】
本発明は、前記レーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法によって得られるレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池をさらに提供する。
【0016】
好ましくは、前記レーザー焼結ペロブスカイト太陽電池は、順次設置された導電ベースと、正孔ブロッキング層と、メソポーラスナノ結晶層と、絶縁スペーサー層と、対電極層とを含み、ペロブスカイト結晶は、メソポーラスナノ結晶層、絶縁スペーサー層、対電極層内に位置する。
【0017】
本発明の上記の方案は、少なくとも以下の有益な効果を含む。
【0018】
(1)本発明のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法は、導電ベース上に正孔ブロッキング層を製造するステップと、前記正孔ブロッキング層上にメソポーラスナノ結晶層を製造し、レーザーで前記メソポーラスナノ結晶層を焼結するステップと、前記メソポーラスナノ結晶層上に絶縁スペーサー層を製造するステップと、前記絶縁スペーサー層上に対電極層を製造し、前記絶縁スペーサー層及び前記対電極層を焼結するステップと、前記対電極層上にペロブスカイト前駆体溶液を塗布して、レーザー焼結ペロブスカイト太陽電池を得るステップとを含む。本発明のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法は、レーザーによって生成される瞬間的な高温を利用して、メソポーラスナノ結晶間の界面接着を促進し、それによって結晶粒子間の結晶格子連結構造を実現すると同時に、ペーストに存在する溶剤及び有機バインダーを除去し、極めて短い時間で大面積のメソポーラス膜の製造を実現でき、高温焼結の置き換えを実現し、これによりエネルギー消費を大幅に低減し、加工時間を短縮し、調製効率を向上させ、製品製造の再現性を向上させ、加工環境要件を低減し、デバイスの大面積及びフレキシブル化製造をより助長し、メゾスコピックペロブスカイト太陽電池の産業化発展をさらに促進する。
【0019】
具体的には、レーザーの励起・発生に必要な消費エネルギーが少なく、比較的低いエネルギーで高エネルギーのレーザーを発生させることができ、エネルギー利用率が高く、レーザーの励起・発生及び遮断オフにウォームアップ及び準備時間が不要で、レーザーの瞬間的な高温により極めて短い時間でメソポーラス膜の充分な焼結を実現できるため、必要な加工時間を大幅に短縮させる。レーザーの出力安定性が強く、製造速度が速いため、製品の製造再現性が保証される。レーザー焼結の方式は、従来の高温ホットステージの使用を捨て去り、レーザーにより瞬間的な高温を発生させることができ、製造速度が速いため、デバイス製造の環境の温度や湿度に対する操作可能範囲が増大され、ペロブスカイト太陽電池の固体ベースの限界を打ち破り、熱の影響を受ける範囲が小さく、加工に対する環境要件が低減されるため、フレキシブルベースデバイスの応用及び製造に非常に適しており、したがって全低温フレキシブルデバイスの製造をブレークスルー的に実現でき、レーザービームの集中及び高い加工精度は、薄膜の処理により適しており、レーザー焼結は、クリーンで、エネルギーを省き、時間を節約し、効率が高く、非接触の方法であるため、焼結時の汚染物質との接触を避けることができる。
【0020】
(2)本発明のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法は、レーザーによって前記メソポーラスナノ結晶層が焼結され、レーザーの瞬間性により、前記メソポーラスナノ結晶層の結晶粒子が急速に焼結されて酸素欠乏状態(金属化)が形成され、結晶粒の電子雲密度を増加させ、キャリアの輸送を促進する。
【0021】
(3)本発明のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法は、前記メソポーラスナノ結晶層が二酸化チタンである場合、レーザーが一つの光点を横切って掃く時、二酸化チタンTiO2結晶粒子が完全に溶融されず、これにより、TiO2結晶粒子が未溶融(結晶状態)の粒子核構造を含む固化体(酸素欠乏状態)を形成するため、TiO2結晶粒子のエネルギー準位位置の調整を実現する。レーザー焼結時に酸素又はオゾンを通気させる場合、酸素/オゾン分圧を制御することにより、粒子核構造の最外層が初期の結晶状態に戻り、したがってTiO2粒子シェル層の酸素欠乏状態の位置分布を変化させ、理想的なTiO2結晶粒子の内部結晶状態、中間酸素欠乏状態、外部結晶状態の多層球殻構造を形成する。
【0022】
(4)本発明のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法は、レーザーによって前記メソポーラスナノ結晶層が焼結され、レーザーの透過能力が小さく、レーザー焼結はその焼結対象に対して選択性を有し、異なる物質の特定波長レーザーに対する吸収能力が異なり、他の部分に影響を与えることなく、パラメータ調整により指定された領域の焼結を実現できる。したがって、上層の焼結製造時に下層薄膜に影響を与えず、メゾスコピックペロブスカイト太陽電池デバイスの3層メソポーラス膜構造の構築に有益である。同時に、高エネルギービームは、TiO2結晶粒子間(外部結晶状態)の溶融接着を実現でき、メソポーラスTiO2層の電子抽出及び輸送能力を向上させ、キャリアの転送に役立つ。本発明は、レーザー点走査制御の方式を適用して、薄膜波状表面のトポロジー構造の形成を実現でき、これは、膜層間の三次元界面接触を実現するのに有益であり、メソポーラスTiO2層の電子抽出及び伝送能力を向上させ、したがって高メソポーラス性及び高導電性のTiO2薄膜が得られ、デバイス効率の向上に有益である。
【0023】
(5)本発明のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法は、レーザー焼結によって前記メソポーラスナノ結晶層が焼結され、レーザー焼結時に半導体材料の独特の異方性収縮挙動により薄膜内の残留応力を低減でき、ひいては薄膜の厚さを低減し、薄膜孔隙率を大幅に増加させ、ペロブスカイト材料の効果的な充填及び附着を促進する。
【0024】
(6)本発明のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法は、ステップ(1)で前記正孔ブロッキング層を製造し、ステップ(4)で前記絶縁スペーサー層を焼結し、前記対電極層はいずれもレーザーによって焼結され得、これにより、低温及び全レーザー焼結によるフレキシブルフレキシブルペロブスカイト太陽電池の製造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の構造概略図である。
【
図2】本発明の比較例2で得られた高温ホットステージ焼結ペロブスカイト太陽電池のメソポーラスナノ結晶層の局部拡大概略図である。
【
図3】本発明の実施例1で得られたレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池のメソポーラスナノ結晶層の局部拡大概略図である。
【
図4】本発明の実施例1で得られたレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池のメソポーラスナノ結晶層の粒子の局部拡大概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照して、本開示の例示的な実施例をより詳細に説明する。理解すべきことは、本開示の例示的な実施例が図面に示されているが、本開示は様々な形態で具現され得、本明細書に記載の実施例によって限定されるべきではない。むしろ、これらの実施例は、本開示をより徹底的に理解でき、本開示の範囲を当業者に完全に伝達できるようにするために提供される。
【0027】
<実施例1>
本実施例のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法は、以下のステップを含む。
【0028】
(1)導電ベースを取って、高温ホットステージに置き、450℃に加熱し、スプレー塗布の方式により導電ベース上に正孔ブロッキング層を製造する。前記導電ベースは、FTO導電性ガラスである。前記正孔ブロッキング層は、二酸化チタンであり、厚さは1nmである。
【0029】
(2)ステップ(1)で得られた前記正孔ブロッキング層上にメソポーラスナノ結晶層を製造し、メソポーラスナノ結晶層ペーストを正孔ブロッキング層上に印刷し、乾燥させてメソポーラスナノ結晶層を得る。そして、酸素の体積分率45%で、前記メソポーラスナノ結晶層をレーザー焼結する。
【0030】
前記メソポーラスナノ結晶層ペーストは、二酸化チタンである。前記レーザー焼結のレーザー波長は9.2μmである。前記レーザー焼結のレーザ電力は275Wであり、前記レーザー焼結の焦点距離は600±40mmであり、前記レーザー焼結のレーザーエッチング線の充填方式は平行逆方向である。前記レーザー焼結のレーザーエッチング線の充填間隔は0.008mmであり、前記レーザー焼結のレーザ出力電力百分率は25%である。前記レーザー焼結のレーザー周波数は60kHzであり、前記レーザー焼結のレーザー走査速度は3000mm/sである。前記レーザー焼結のレーザー走査回数は2回である。前記レーザー焼結のレーザー走査面積は0.8cm2である。
【0031】
なお、レーザー焼結は、紫外線レーザ、赤外線レーザ、可視光レーザのうちのいずれか1つを用いて行われ得る。本発明の目的の実現から言って、前記レーザー焼結のレーザーエッチング線の充填方式、前記レーザー焼結のレーザー走査回数、前記レーザー焼結のレーザー走査面積は唯一のものではなく、当業者は状況に応じて適切な実現方式を選択し得る(以下では、繰り返し説明しない)。
【0032】
(3)ステップ(2)で得られた前記メソポーラスナノ結晶層上に絶縁スペーサー層を印刷製造し、前記絶縁スペーサー層ペーストは、二酸化ジルコニウムである。
【0033】
(4)ステップ(3)で得られた前記絶縁スペーサー層上に対電極層を印刷製造し、乾燥させてから、それを300℃で50分間焼結して、前記絶縁スペーサー層と、前記対電極層とにメソポーラス構造を形成させる。
【0034】
前記対電極層ペーストは、カーボンブラックとグラファイトとの混合物であり、カーボンブラックとグラファイトとは、1:1の質量比で混合される。
【0035】
(5)ステップ(4)で得られた前記対電極層上にペロブスカイト前駆体溶液を塗布し、前記ペロブスカイト前駆体溶液は、毛細作用によりメソポーラス構造を有するメソポーラスナノ結晶層、絶縁スペーサー層、対電極層に入り込み、成長して結晶化され、これによりレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池が得られる。
【0036】
前記ペロブスカイト前駆体溶液の溶質は、以下の一般式を有する。即ち、ABX3、前記Aはメチルアミンであり、前記Bは鉛であり、前記Xはヨウ素である。
【0037】
本実施例に記載のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法により得られるレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池は、
図1に示すように、順次設置された導電ベース1と、正孔ブロッキング層2と、メソポーラスナノ結晶層3と、絶縁スペーサー層4と、対電極層5とを含み、ペロブスカイト結晶は、メソポーラスナノ結晶層、絶縁スペーサー層、対電極層のメソポーラス内に位置する。
【0038】
<実施例2>
本実施例のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法は、以下のステップを含む。
【0039】
(1)導電ベースを取って、高温ホットステージ上に置き、450℃に加熱し、スプレー塗布の方式により導電ベース上に正孔ブロッキング層を製造する。前記導電ベースは、ITO導電性ガラスであり、前記正孔ブロッキング層は酸化アルミニウムである。
【0040】
(2)ステップ(1)で得られた前記正孔ブロッキング層上にシルクスクリーン印刷によってメソポーラスナノ結晶層を製造し、乾燥させた後、オゾンの体積分率99%で、前記メソポーラスナノ結晶層をレーザー焼結する。
【0041】
前記メソポーラスナノ結晶層ペーストは二酸化チタンであり、前記レーザー焼結のレーザー波長は10.8μmであり、前記レーザー焼結のレーザ電力は0.08Wであり、前記レーザー焼結の焦点距離は600±40mmであり、前記レーザー焼結のレーザーエッチング線の充填方式は平行同方向であり、前記レーザー焼結のレーザーエッチング線の充填間隔は0.05mmであり、前記レーザー焼結のレーザ出力電力百分率は35%であり、前記レーザー焼結のレーザー周波数は20kHzであり、前記レーザー焼結のレーザー走査速度は3000mm/sであり、前記レーザー焼結のレーザー走査回数は10回であり、前記レーザー焼結のレーザー走査面積は1024cm2である。
【0042】
なお、レーザー焼結は、紫外線レーザ、赤外線レーザ、可視光レーザのうちのいずれか1つを用いて行われ得る。
【0043】
(3)ステップ(2)で得られた前記メソポーラスナノ結晶層上にシルクスクリーン印刷によって絶縁スペーサー層を製造し、乾燥させ、前記絶縁スペーサー層ペーストは酸化アルミニウムである。
【0044】
(4)ステップ(3)で得られた前記絶縁スペーサー層上にシルクスクリーン印刷によって対電極層を製造し、乾燥させてから、それを400℃で30分間焼結して、前記絶縁スペーサー層と、前記対電極層とにメソポーラス構造を形成させる。
【0045】
前記対電極層ペーストは、活性炭と、グラファイトとの混合物であり、カーボンブラックとグラファイトとは、2:1の質量比で混合される。
【0046】
(5)ステップ(4)で得られた前記対電極層上にペロブスカイト前駆体溶液を塗布し、前記ペロブスカイト前駆体溶液は、毛細作用によりメソポーラス構造を有するメソポーラスナノ結晶層、絶縁スペーサー層、対電極層に入り込み、成長して結晶化され、これによりレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池が得られる。
【0047】
前記ペロブスカイト前駆体溶液の溶質は、以下の一般式を有する。即ち、ABX3、前記Aはホルムアミジンであり、前記Bは鉛であり、前記Xはヨウ素である。
【0048】
<実施例3>
本実施例のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法は、以下のステップを含む。
【0049】
(1)導電ベースを取って、高温ホットステージに置き、450℃に加熱し、スプレー塗布の方式により導電ベース上に正孔ブロッキング層を製造する。前記導電ベースは、FTO導電性ガラスであり、前記正孔ブロッキング層は、二酸化チタンである。
【0050】
(2)ステップ(1)で得られた前記正孔ブロッキング層上にシルクスクリーン印刷によってメソポーラスナノ結晶層を製造し、乾燥させた後、酸素の体積分率72%で、前記メソポーラスナノ結晶層をレーザー焼結する。
【0051】
前記メソポーラスナノ結晶層ペーストは酸化亜鉛であり、前記レーザー焼結のレーザー波長は0.35μmであり、前記レーザー焼結のレーザ電力は142Wであり、前記レーザー焼結の焦点距離は600±40mmであり、前記レーザー焼結のレーザーエッチング線の充填方式は弓形連結であり、前記レーザー焼結のレーザーエッチング線の充填間隔は0.03mmであり、前記レーザー焼結のレーザ出力電力百分率は45%であり、前記レーザー焼結のレーザー周波数は50kHzであり、前記レーザー焼結のレーザー走査速度は4000mm/sであり、前記レーザー焼結のレーザー走査回数は5回であり、前記レーザー焼結のレーザー走査面積は512cm2である。
【0052】
なお、レーザー焼結は、紫外線レーザ、赤外線レーザ、可視光レーザのうちのいずれか1つを用いて行われ得る。
【0053】
(3)ステップ(2)で得られた前記メソポーラスナノ結晶層上にシルクスクリーン印刷によって絶縁スペーサー層を製造し、乾燥させ、前記絶縁スペーサー層ペーストは、二酸化ケイ素である。
【0054】
(4)ステップ(3)で得られた前記絶縁スペーサー層上にシルクスクリーン印刷によって対電極層を製造し、乾燥させてから、それを350℃で40分間焼結して、前記絶縁スペーサー層と、前記対電極層とにメソポーラス構造を形成させる。
【0055】
前記対電極層ペーストは、カーボンブラックと、グラフェンとの混合物であり、カーボンブラックとグラファイトとは、1:3の質量比で混合される。
【0056】
(5)ステップ(4)で得られた前記対電極層上にペロブスカイト前駆体溶液を塗布し、前記ペロブスカイト前駆体溶液は、毛細作用によりメソポーラス構造を有するメソポーラスナノ結晶層、絶縁スペーサー層、対電極層に入り込み、成長して結晶化され、これによりレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池が得られる。
【0057】
前記ペロブスカイト前駆体溶液の溶質は、以下の一般式を有する。即ち、ABX3、前記Aはセシウムであり、前記Bは鉛であり、前記Xは塩素である。
【0058】
<実施例4>
本実施例のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法は、以下のステップを含む。
【0059】
(1)導電ベースを取って、高温ホットステージに置き、450℃に加熱し、スプレー塗布の方式により導電ベース上に正孔ブロッキング層を製造する。前記導電ベースは、FTO導電性ガラスであり、前記正孔ブロッキング層は、二酸化チタンである。
【0060】
ステップ(1)で得られた前記正孔ブロッキング層上にメソポーラスナノ結晶層を製造し、メソポーラスナノ結晶層ペーストを、200メッシュ板を介して正孔ブロッキング層上にシルクスクリーン印刷し、乾燥させてメソポーラスナノ結晶層を得た後、酸素の体積分率72%で前記メソポーラスナノ結晶層をレーザー焼結する。
【0061】
前記メソポーラスナノ結晶層ペーストは二酸化チタンであり、前記レーザー焼結のレーザー波長は10μmであり、前記レーザー焼結のレーザ電力は142Wであり、前記レーザー焼結の焦点距離は600±40mmであり、前記レーザー焼結のレーザーエッチング線の充填方式は弓形連結であり、前記レーザー焼結のレーザーエッチング線の充填間隔は0.03mmであり、前記レーザー焼結のレーザ出力電力百分率は50%であり、前記レーザー焼結のレーザー周波数は50kHzであり、前記レーザー焼結のレーザー走査速度は1000mm/sであり、前記レーザー焼結のレーザー走査回数は3回であり、前記レーザー焼結のレーザー走査面積は1.3cm2である。
【0062】
なお、レーザー焼結は、紫外線レーザ、赤外線レーザ、可視光レーザのうちのいずれか1つを用いて行われ得る。
【0063】
(3)ステップ(2)で得られた前記メソポーラスナノ結晶層上にシルクスクリーン印刷によって絶縁スペーサー層を製造し、乾燥させ、前記絶縁スペーサー層ペーストは、二酸化ジルコニウムである。
【0064】
(4)ステップ(3)で得られた前記絶縁スペーサー層上にシルクスクリーン印刷によって対電極層を製造し、乾燥させてから、それを350℃で40分間焼結して、前記絶縁スペーサー層と、前記対電極層とにメソポーラス構造を形成させる。
【0065】
前記対電極層ペーストは、カーボンブラックと、グラファイトと、活性炭との混合物であり、カーボンブラックと、グラファイトと、活性炭とは1:3:1の質量比で混合される。
【0066】
(5)ステップ(4)で得られた前記対電極層上にペロブスカイト前駆体溶液を塗布し、前記ペロブスカイト前駆体溶液は、毛細作用によりメソポーラス構造を有するメソポーラスナノ結晶層、絶縁スペーサー層、対電極層に入り込み、成長して結晶化され、これによりレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池が得られる。
【0067】
前記ペロブスカイト前駆体溶液的溶質は、以下の一般式を有する。即ち、ABX3、前記Aはメチルアミンであり、前記Bは鉛であり、前記Xはヨウ素である。
【0068】
図3に示すように、本実施例のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池のメソポーラスナノ結晶層の粒子の局部拡大概略図である。
図4に示すように、本実施例で得られたレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池のメソポーラスナノ結晶層の粒子の局部拡大概略図である。
【0069】
<実施例5>
本実施例は、実施例4と同じ方法を使用してレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池を製造するが、唯一の違いは、ステップ(1)において、導電ベースを取って、スプレー塗布の方式により導電ベース上に正孔ブロッキング層を製造した後、レーザー焼結を行うことである。
【0070】
ステップ(1)におけるレーザー焼結の具体的な条件は以下の通りである。前記レーザー焼結のレーザー波長は10μmであり、前記レーザー焼結のレーザ電力は142Wであり、前記レーザー焼結の焦点距離は600±40mmであり、前記レーザー焼結のレーザーエッチング線の充填方式は弓形連結であり、前記レーザー焼結のレーザーエッチング線の充填間隔は0.03mmであり、前記レーザー焼結のレーザ出力電力百分率は50%であり、前記レーザー焼結のレーザー周波数は50kHzであり、前記レーザー焼結のレーザー走査速度は1000mm/sであり、前記レーザー焼結のレーザー走査回数は3回であり、前記レーザー焼結のレーザー走査面積は1.3cm2である。
【0071】
<実施例6>
本実施例は、実施例4と同じ方法を使用してレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池を製造するが、唯一の違いは、ステップ(4)において、高温焼結の代わりにレーザー焼結を適用して、前記絶縁スペーサー層と、前記対電極層とにメソポーラス構造を形成させることである。
【0072】
ステップ(4)におけるレーザー焼結の具体的な条件は以下の通りである。前記レーザー焼結のレーザー波長は10μmであり、前記レーザー焼結のレーザ電力は142Wであり、前記レーザー焼結の焦点距離は600±40mmであり、前記レーザー焼結のレーザーエッチング線の的充填方式は弓形連結であり、前記レーザー焼結のレーザーエッチング線の充填間隔は0.03mmであり、前記レーザー焼結のレーザ出力電力百分率は50%であり、前記レーザー焼結のレーザー周波数は50kHzであり、前記レーザー焼結のレーザー走査速度は1000mm/sであり、前記レーザー焼結のレーザー走査回数は3回であり、前記レーザー焼結のレーザー走査面積は1.3cm2である。
【0073】
<実施例7>
本実施例は、実施例4と同じ方法を使用してレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池を製造するが、唯一の違いは、ステップ(1)及びステップ(4)のいずれにおいてもレーザー焼結を適用することであるが、
ステップ(1)におけるレーザー焼結は、実施例5のステップ(1)と同じであり、ステップ(4)におけるレーザー焼結は、実施例6のステップ(4)と同じである。
【0074】
<実施例8>
本実施例は、実施例7と同じ方法を使用してレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池を製造するが、唯一の違いは、ステップ(1)における導電ベースは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸塩材料を適用することである。
【0075】
<比較例1>
本比較例のペロブスカイト太陽電池の製造方法は、実施例4と同じであるが、唯一の違いは、ステップ(2)において、レーザー焼結を適用しないことである。
【0076】
ステップ(2)は、具体的には、次の通りである。ステップ(1)で得られた前記正孔ブロッキング層上にシルクスクリーン印刷によってメソポーラスナノ結晶層を製造し、乾燥させばよい。
【0077】
<比較例2>
本比較例のペロブスカイト太陽電池の製造方法は、実施例4と同じであるが、唯一の違いは、ステップ(2)において、レーザー焼結を適用せず、高温で前記メソポーラスナノ結晶層を焼結することである。
【0078】
ステップ(2)は、具体的には、次の通りである。ステップ(1)で得られた前記正孔ブロッキング層上にシルクスクリーン印刷によってメソポーラスナノ結晶層を製造し、乾燥させた後、500℃で45分間高温焼結する。
【0079】
図2に示すように、本比較例の高温焼結ペロブスカイト太陽電池のメソポーラスナノ結晶層の局部拡大概略図である。
図3の局部拡大図と比較すると、
図3の二酸化チタン結晶粒子はより融合するが、
図2の二酸化チタン結晶粒子の融合効果は比較的劣る。二酸化チタン結晶粒子の融合効果が良好な場合、導電性を向上させることができ、電荷輸送に有利である。レーザー焼結は、粒子間の界面接着を促進し、結晶体粒子間のより良い電気的相互接続を実現できることが分かる。また、二酸化チタン結晶粒子の融合効果が良好であることは、焼結過程でペーストに存在する溶剤及び有機バインダーがより良好に除去されることも表している。
【0080】
<効果比較例>
本発明に記載のレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池の製造方法の技術効果を検証するために、以下の試験を行う。
【0081】
実施例1~8、比較例1~2で製造して得られたレーザー焼結ペロブスカイト太陽電池を取り、室温25℃、光強度100mW/cm-2で、AM1.5日射下でのJ-V曲線(電流密度―光電圧曲線)をシミュレーションし、J-V曲線に基づいて、開路電圧(Voc/V)、短絡光電流(Jsc/mA.cm-2)、充填因子(FF)、光電変換効率(η/%)を得る。
【0082】
【0083】
実施例1~4と比較例1~2の比較によれば、レーザーによって前記メソポーラスナノ結晶層を焼結することで、得られたペロブスカイト太陽電池の光電変換効率を大幅に向上できることが分かる。実施例4~6の比較によれば、前記メソポーラスナノ結晶層だけでなく、前記正孔ブロッキング層、前記絶縁スペーサー層、前記対電極層もレーザー焼結を適用してペロブスカイト太陽電池の光電変換効率をある程度向上できることが分かる。実施例8と比較例1~2の比較によれば、全レーザー焼結フレキシブルペロブスカイト電池の製造を実現できることが分かる。
【0084】
上記の説明は、本発明の好ましい実施形態であり、当業者であれば、本発明の原理から逸脱することなく、いくつかの改良及び潤色をさらに行うことができ、これらの改良及び潤色も本発明の保護範囲とみなされるべきであることを指摘しておくべきである。
【符号の説明】
【0085】
1 導電ベース
2 正孔ブロッキング層
3 メソポーラスナノ結晶層
4 絶縁スペーサー層
5 対電極層