(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084675
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】導電性高分子組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
C08L 65/00 20060101AFI20240618BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20240618BHJP
C09D 11/52 20140101ALI20240618BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240618BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C08L65/00
C09D11/30
C09D11/52
C08K5/17
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110778
(22)【出願日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2022198892
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】川上 淳一
(72)【発明者】
【氏名】箭野 裕一
【テーマコード(参考)】
2H186
4J002
4J039
【Fターム(参考)】
2H186AB04
2H186AB12
2H186BA08
2H186DA18
2H186FB07
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB48
4J002CE001
4J002CP032
4J002EU116
4J002FD202
4J002GQ00
4J002HA01
4J039BC07
4J039BC13
4J039BC33
4J039BC55
4J039BC79
4J039BE16
4J039EA24
4J039EA46
4J039EA48
4J039FA07
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】インクジェット等の印刷方式によって容易に印刷でき、表面抵抗率の低い導電性高分子膜を作製できる導電性高分子組成物を実現する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される構造単位を2つ以上含むポリチオフェン(A)と、グリコールエーテル系溶媒(B)と、ジオール系溶媒(C)と、消泡剤(D)とを含む導電性高分子組成物を用いる。
【化1】
[一般式(1)において、Rは、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有する、総炭素数が1~10の有機基を表す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造単位を2つ以上含むポリチオフェン(A)と、グリコールエーテル系溶媒(B)と、ジオール系溶媒(C)と、消泡剤(D)とを含む、導電性高分子組成物。
【化1】
[一般式(1)において、Rは、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有する、総炭素数が1~10の有機基を表す。]
【請求項2】
前記グリコールエーテル系溶媒(B)が、エチレングリコールモノエーテル、及びジエチレングリコールモノエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種からなる、請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項3】
前記ジオール系溶媒(C)が、沸点180℃以上である、請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項4】
前記ポリチオフェン(A)が、下記一般式(3)で表される構造単位及び下記一般式(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を2つ以上含む、請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【化2】
[一般式(3)及び(4)において、R
1は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは独立して1~10の整数を表し、nは独立して0又は1を表す。]
【請求項5】
水、を更に含む、請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項6】
アミン化合物(E)を更に含む、請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項7】
前記ポリチオフェン(A)の含有量が、前記導電性高分子組成物の全量を100質量%として、0.01~5質量%である、請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項8】
前記グリコールエーテル系溶媒(B)の含有量が、前記導電性高分子組成物の全量を100質量%として、0.01~10質量%である、請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項9】
前記ジオール系溶媒(C)の含有量が、前記導電性高分子組成物の全量を100質量%として、0.1~20質量%である、請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項10】
前記消泡剤(D)の含有量が、前記導電性高分子組成物の全量を100質量%として、0.001~5質量%である、請求項1に記載の導電性高分子組成物。
【請求項11】
前記水の含有量が、前記導電性高分子組成物の全量を100質量%として、60~99.9質量%である、請求項5に記載の導電性高分子組成物。
【請求項12】
前記アミン化合物(E)の含有量が、前記導電性高分子組成物の全量を100質量%として、0.01~10質量%である、請求項6に記載の導電性高分子組成物。
【請求項13】
下記一般式(1)で表される構造単位を2つ以上含むポリチオフェン(A)と消泡剤(D)とを含む、導電性高分子膜。
【化3】
[一般式(1)において、Rは、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有する、総炭素数が1~10の有機基を表す。]
【請求項14】
請求項1に記載の導電性高分子組成物を、インクジェット印刷により基材上に塗布し、次いで乾燥させることを特徴とする、導電性高分子膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、導電性高分子を含む導電性高分子組成物を用いてインクジェット印刷によって形成された導電性高分子膜が、固体電解コンデンサ等の電子部品等に用いられている。
【0003】
インクジェット印刷については、ノズルヘッドからの分離性が良いこと、気泡による吐出不良を起こさないこと、及びノズルの閉塞を起こさないことが求められる。すなわち、インクジェット印刷用のインクとして用いられる導電性高分子組成物については、低表面張力、低発泡性、及び低凝固性が求められている。
【0004】
これに対して、従来技術として、消泡剤を含む導電性塗料が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の先行技術に開示された発明については、低表面張力、低発泡性、及び低凝固性を兼ね備えておらず、インクジェット装置に使用した場合、吐出不良やノズル閉塞が発生する虞がある。
【0007】
本発明の一態様は、低表面張力、低発泡性、及び低凝固性を兼ね備えた導電性高分子組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、下記導電性高分子組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一態様は以下に示す通りの導電性高分子組成物に関するものである。
【0010】
[1]
下記一般式(1)で表される構造単位を2つ以上含むポリチオフェン(A)と、グリコールエーテル系溶媒(B)と、ジオール系溶媒(C)と、消泡剤(D)とを含む導電性高分子組成物。
【0011】
【0012】
[一般式(1)において、Rは、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有する、総炭素数が1~10の有機基を表す。]
[2]
前記グリコールエーテル系溶媒(B)が、エチレングリコールモノエーテル、及びジエチレングリコールモノエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種からなる、[1]に記載の導電性高分子組成物。
【0013】
[3]
前記ジオール系溶媒(C)が、沸点180℃以上である、[1]又は[2]に記載の導電性高分子組成物。
【0014】
[4]
前記ポリチオフェン(A)が、下記一般式(3)で表される構造単位及び下記一般式(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を2つ以上含む、[1]から[3]のいずれかに記載の導電性高分子組成物。
【0015】
【0016】
[一般式(3)及び(4)において、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは独立して1~10の整数を表し、nは独立して0又は1を表す。]
[5]
水、を更に含む、[1]から[4]のいずれかに記載の導電性高分子組成物。
【0017】
[6]
アミン化合物(E)を更に含む、[1]から[5]のいずれかに記載の導電性高分子組成物。
【0018】
[7]
前記ポリチオフェン(A)の含有量が、前記導電性高分子組成物の全量を100重量%として、0.01~5質量%である、[1]から[6]のいずれかに記載の導電性高分子組成物。
【0019】
[8]
前記グリコールエーテル系溶媒(B)の含有量が、前記導電性高分子組成物の全量を100重量%として、0.01~10質量%である、[1]から[7]のいずれかに記載の導電性高分子組成物。
【0020】
[9]
前記ジオール系溶媒(C)の含有量が、前記導電性高分子組成物の全量を100重量%として、0.1~20質量%である、[1]から[8]のいずれかに記載の導電性高分子組成物。
【0021】
[10]
前記消泡剤(D)の含有量が、前記導電性高分子組成物の全量を100重量%として、0.001~5質量%である、[1]から[9]のいずれかに記載の導電性高分子組成物。
【0022】
[11]
前記水の含有量が、前記導電性高分子組成物の全量を100重量%として、60~99.9質量%である、[5]に記載の導電性高分子組成物。
【0023】
[12]
前記アミン化合物(E)の含有量が、前記導電性高分子組成物の全量を100重量%として、0.01~10質量%である、[6]に記載の導電性高分子組成物。
【0024】
[13]
下記一般式(1)で表される構造単位を2つ以上含むポリチオフェン(A)と消泡剤(D)とを含む、導電性高分子膜。
【0025】
【0026】
[一般式(1)において、Rは、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有する、総炭素数が1~10の有機基を表す。]
[14]
[1]から[12]のいずれかに記載の導電性高分子組成物を、インクジェット印刷により基材上に塗布し、次いで乾燥させることを特徴とする、導電性高分子膜の製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によれば、低表面張力、低発泡性、及び低凝固性を兼ね備えた導電性高分子組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態を詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその両端の数値を含む以上以下の数値範囲を意味する。
【0029】
[導電性高分子組成物]
本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物は、下記一般式(1)で表される構造単位を2つ以上含むポリチオフェン(A)と、グリコールエーテル系溶媒(B)と、ジオール系溶媒(C)と、消泡剤(D)とを含む。
【0030】
【0031】
[一般式(1)において、Rは、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有する、総炭素数が1~10の有機基を表す。]
<ポリチオフェン(A)>
ポリチオフェン(A)は、上記一般式(1)で表される構造単位を2つ以上含む。上記の一般式(1)において、Rは、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有する、総炭素数が1~10の有機基を表す。少なくとも一つの置換基を有していない状態における、総炭素数が1~10の有機基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロプル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、イソブトキシメチル基、tert-ブトキシメチル基、ヘキシルオキシメチル基、イソヘキシルオキシメチル基、ヘプチルオキシメチル基、又はオクチルオキシメチル基等が挙げられる。
【0032】
上記の一般式(1)において、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有する総炭素数が1~10の有機基としては、特に限定するものではないが、例えば、スルホン酸メチル基、ホスホン酸メチル基、2-スルホン酸エチル基、2-ホスホン酸エチル基、3-スルホン酸プロプル基、3-ホスホン酸プロプル基、2-スルホン酸プロプル基、2-ホスホン酸プロプル基、4-スルホン酸ブチル基、4-ホスホン酸ブチル基、3-スルホン酸ブチル基、3-ホスホン酸ブチル基、6-スルホン酸ヘキシル基、6-ホスホン酸ヘキシル基、5-スルホン酸ヘキシル基、5-ホスホン酸ヘキシル基、スルホン酸メトキシメチル基、ホスホン酸メトキシメチル基、2-スルホン酸エトキシメチル基、2-ホスホン酸エトキシメチル基、3-スルホン酸プロポキシメチル基、3-ホスホン酸プロポキシメチル基、2-スルホン酸プロポキシメチル基、2-ホスホン酸プロポキシメチル基、4-スルホン酸ブトキシメチル基、4-ホスホン酸ブトキシメチル基、3-スルホン酸ブトキシメチル基、3-ホスホン酸ブトキシメチル基、6-スルホン酸ヘキシルオキシメチル基、6-ホスホン酸ヘキシルオキシメチル基、5-スルホン酸ヘキシルオキシメチル基、又は5-ホスホン酸ヘキシルオキシメチル基等が挙げられる。
【0033】
上記のポリチオフェン(A)については、例えば、下記一般式(3)で表される構造単位及び下記一般式(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を2つ以上含むポリチオフェン(A)、又は下記一般式(6)で表される構造単位及び下記一般式(7)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を2つ以上含むポリチオフェン(A)を挙げることができる。
【0034】
【0035】
[一般式(3)及び(4)において、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは独立して1~10の整数を表し、nは独立して0又は1を表す。]
【0036】
【0037】
上記一般式(4)で表される構造単位は、上記一般式(3)で表される構造単位のドーピング状態を表し、そのドーピング状態は、上記一般式(3)で表される構造単位中のスルホ基又はスルホナート基がp型ドーパントとして作用することにより発現する。
【0038】
また、上記一般式(7)で表される構造単位は、上記一般式(6)で表される構造単位のドーピング状態を表し、そのドーピング状態は、上記一般式(6)で表される構造単位中のホスホン酸基がp型ドーパントとして作用することにより発現する。
【0039】
上記のポリチオフェン(A)については、成膜性の点で、上記一般式(3)で表される構造単位及び上記一般式(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を2つ以上含むポリチオフェン(A)であることが好ましい。
【0040】
上記一般式(3)及び(4)中の、R1で示される炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、2-エチルブチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0041】
R1については、成膜性に優れる点で、水素原子、メチル基、エチル基、又はフッ素原子であることが好ましく、水素原子、メチル基、又はフッ素原子であることがより好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0042】
上記一般式(3)及び(4)中、mは独立して1~10の整数を表し、nは独立して0又は1を表す。mについては、導電性高分子組成物の溶解性及び塗布性の観点から、2~6の整数であることが好ましく、2、3、4、又は5であることがより好ましく、2、又は3であることがより好ましい。また、nについては、導電性高分子組成物の溶解性及び塗布性の観点から、1であることが好ましい。
【0043】
上記の一般式(3)で表される構造単位及び一般式(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を少なくとも2つ以上含むポリチオフェン(A)については、高い導電率が得られる点で、ゲル浸透クロマトグラフィー測定におけるポリスチレンスルホン酸換算数平均分子量が、3,500以上であることが好ましく、4,000以上であることがより好ましく、5,000以上であることがより好ましい。なお、上記導電性高分子組成物の操作性の点で、上記ポリチオフェン(A)のゲル浸透クロマトグラフィー測定におけるポリスチレンスルホン酸換算数平均分子量は、30,000以下であることが好ましく、20,000以下であることがより好ましく、15,000以下であることがより好ましい。そのため、上記ポリチオフェン(A)のポリスチレンスルホン酸換算数平均分子量は、3,500~30,000であることが好ましく、4,000~20,000であることがより好ましく、5,000~15,000であることが更に好ましい。
【0044】
上記のポリチオフェン(A)のゲル浸透クロマトグラフィー法による分子量測定の方法及び条件については、ISO 16014-3:2012(JIS K 7252-3:2016)に従う。また詳細条件は実施例に記載の通りである。
【0045】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物については、導電性向上の観点から、ポリチオフェン(A)の含有量が、上記の導電性高分子組成物の全量を100質量%として、0.01~5質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましく、0.1~4質量%であることがより好ましく、1~3質量%であることが更に好ましい。
【0046】
<グリコールエーテル系溶媒(B)>
上記のグリコールエーテル系溶媒(B)としては、エチレングリコールモノエーテル(例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテル、又はエチレングリコールモノアリールエーテル)、ジエチレングリコールモノエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、又はジエチレングリコールモノアリールエーテル)、プロピレングリコールモノエーテル(例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、又はプロピレングリコールモノアリールエーテル)、及びジプロピレングリコールモノエーテル(例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、又はプロピレングリコールモノアリールエーテル)からなる群より選ばれる少なくとも1種からなるグリコールエーテル系溶媒(B)を挙げることができ、このうち、エチレングリコールモノエーテル、及びジエチレングリコールモノエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種からなるグリコールエーテル系溶媒(B)であることが好ましく、総炭素数が3~10のエチレングリコールモノエーテル、及び総炭素数が5~12のジエチレングリコールモノエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種からなるグリコールエーテル系溶媒(B)であることがより好ましい。
【0047】
当該グリコール系溶媒(B)としては、例えば、エチレングリコール モノn-エチルエーテル、エチレングリコール モノn-プロピルエーテル、エチレングリコール モノn-ブチルエーテル、エチレングリコール モノn-ヘキシルエーテル、エチレングリコール モノフェニルエーテル、エチレングリコール モノベンジルエーテル、プロピレングリコール モノn-プロピルエーテル、プロピレングリコール モノn-ブチルエーテル、プロピレングリコール モノフェニルエーテル、プロピレングリコール モノベンジルエーテル、ジエチレングリコール モノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコール モノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコール モノフェニルエーテル、ジエチレングリコール モノベンジルエーテル、ジプロピレングリコール モノn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコール モノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコール モノフェニルエーテル、又はジプロピレングリコール モノベンジルエーテル等が挙げられ、これらのうち、エチレングリコール モノn-ブチルエーテル、エチレングリコール モノn-ヘキシルエーテル、エチレングリコール モノフェニルエーテル、ジエチレングリコール モノフェニルエーテル、又はジエチレングリコール モノベンジルエーテルが特に好ましい。
【0048】
グリコールエーテル系溶媒(B)は1種を単独で用いることができるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0049】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物において、グリコールエーテル系溶媒(B)の含有量については、低凝固性及び低表面張力の点で、導電性高分子組成物の全量を100質量%として、0.01~10質量%であることが好ましく、0.01~5質量%であることがより好ましい。
【0050】
<ジオール系溶媒(C)>
上記のジオール系溶媒(C)については、低凝固性の観点から、沸点180℃以上のジオール系溶媒であることが好ましい。
【0051】
上記のジオール系溶媒(C)の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、又は2-エチル-1,3-ヘキサンジオール等が挙げられ、これらのうち、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、又はジエチレングリコールが特に好ましい。
【0052】
上記のジオール系溶媒(C)は1種を単独で用いることができるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0053】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物において、ジオール系溶媒(C)の含有量については、低凝固性の点で、導電性高分子組成物の全量を100質量%として、0.1~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましい。
【0054】
<消泡剤(D)>
上記の消泡剤(D)としては、例えば、シリコーン系消泡剤、又は非シリコーン系消泡剤等を挙げることができる。少量で消泡効果を得るためにはシリコーン系消泡剤であることが好ましい。
【0055】
上記のシリコーン系消泡剤としては、例えば、信越化学工業製、商品名:KS-530、信越化学工業製、商品名:KS-531、信越化学工業製、商品名:KF-6701、信越化学工業製、商品名:KS-66、信越化学工業製、商品名:FA-600、信越化学工業製、商品名:KM-85、共栄社化学製、商品名:アクアレンSB-520、共栄社化学製、商品名:アクアレンSB-630、共栄社化学製、商品名:フローレン AO-5、サンノプコ製、商品名:SN デフォーマー 121N、又はサンノプコ製、商品名:SN デフォーマー 1315等が商業的に容易に入手することができる。
【0056】
上記の非シリコーン系消泡剤としては、高級アルコール系消泡剤、脂肪酸誘導体系消泡剤等が挙げられ、例えば、日新化学研究所社製、ビスマ-FSシリーズ、ビスマ-TSシリーズ、ビスマ-CSシリーズ、ビスマ-ECシリーズ、又は花王ケミカル社製、消泡剤No.8等が挙げられる。
【0057】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物において、消泡剤(D)の含有量については、低発泡性の点で、導電性高分子組成物の全量を100質量%として、0.001~5質量%であることが好ましく、0.01~1質量%であることがより好ましい。
【0058】
<その他の成分>
本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物は、水を更に含むことが好ましい。
【0059】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物において、水の含有量については、低凝固性の点で、導電性高分子組成物の全量を100質量%として、60~99.9質量%であることが好ましく、70~99.9質量%であることがより好ましく、75~99質量%であることがより好ましい。
【0060】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物が水を含む場合、導電性高分子組成物の均一な状態を長期間維持することができ、導電性高分子組成物をインクジェット印刷する場合に、インクジェットノズルの目詰まりを低減することができる。
【0061】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物は、アミン化合物(E)を更に含むことが好ましい。
【0062】
上記のアミン化合物(E)としては、アンモニア、又は総炭素数が1~16の1級、2級、若しくは3級の有機アミン化合物であることが好ましい。
【0063】
上記の総炭素数が1~16の1級、2級、若しくは3級の有機アミン化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、ノルマル-プロピルアミン、イソプロピルアミン、ノルマルブチルアミン、ヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、メチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、3-メチルアミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジメチルアミノ-1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジアミン、トリイソブチルアミン、トリイソペンチルアミン、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、1、2-ジメチルイミダゾール、ピリジン、ピコリン、又はルチジンを例示することができる。
【0064】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物において、アミン化合物(E)の含有量については、低凝固性の点で、導電性高分子組成物全量を100質量%として、0.01~10質量%であることが好ましく、0.01~5質量%であることがより好ましく、0.1~3質量%であることがより好ましい。
【0065】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物は、上記以外の成分を含んでいてもよい、上記以外の成分としては、例えば、バインダー(F)を挙げることができる。
【0066】
上記のバインダー(F)としては、例えば、オキサゾリン基含有ポリマー、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、スチレンブタジエン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド、ニトロセルロース樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレンスルホン酸樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、又はポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0067】
これらのバインダー(F)は、単独で用いてもよく、あるいは2種類以上を用いてもよい。
【0068】
上記のオキサゾリン基含有ポリマーは、下記一般式(8)で表される構造単位を少なくとも2つ以上含むポリマーを挙げることができる。
【0069】
【0070】
[上記一般式(8)において、R6は、水素原子、若しくはフェニル基で置換されていてもよい炭素数1~10の直鎖状、又は分岐鎖状アルキル基を表す。]
一般式(8)中、R6は、水素原子、若しくはフェニル基で置換されていてもよい炭素数1~10の直鎖状、又は分岐鎖状アルキル基を表す。
【0071】
水素原子、若しくはフェニル基で置換されていてもよい炭素数1~10の直鎖状、又は分岐鎖状アルキル基における、炭素数1~10の直鎖状、又は分岐鎖状アルキル基については、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、2-エチルブチル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基,n-ノニル基、又はn-デシル基等が挙げられる。
【0072】
上記のオキサゾリン基含有ポリマーとしては、例えば、(株)日本触媒製、商品名:エポクロス(登録商標、以下同様)WS-300、エポクロスWS-500、エポクロスWS-700、エポクロスK-2010、エポクロスK-2020、又はエポクロスK-2030等として商業的に容易に入手することができる。これらのなかでは、反応性を向上させる観点から、(株)日本触媒製、商品名:エポクロスWS-300、エポクロスWS-500、又はエポクロスWS-700が好ましい。
【0073】
上記のポリエステル樹脂は、例えば、水溶性ポリエステル樹脂化合物であってよい。水溶性ポリエステル樹脂化合物としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、又はポリトリメチレンテレフタラート等を挙げることができる。当該水溶性ポリエステル樹脂化合物については、自己乳化型であってもよいし、強化乳化型であってもよいが、耐水性及び耐溶剤性の観点から自己乳化型水溶性ポリエステル樹脂化合物であることが好ましい。
【0074】
上記の水溶性ポリエステル樹脂化合物としては、例えば、東洋紡株式会社製、商品名:バイロナール(登録商標)、高松油脂株式会社製、商品名:ペスレジン、互応化学株式会社製、商品名:プラスコート(登録商標)、東亞合成株式会社製、商品名:アロンメルト(登録商標)、高松油脂株式会社製、商品名:ぺスレジンA、又はDIC株式会社製、商品名:ウォーターゾール(登録商標)等が商業的に容易に入手することができる。
【0075】
上記の水溶性ポリエステル樹脂化合物は、1種を単独で用いることができるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0076】
上記のポリウレタン樹脂は、例えば、水溶性ポリウレタン樹脂化合物であってよい。水溶性ポリウレタン樹脂化合物は、ウレタン樹脂エマルションとして主に産業用途に用いられており、自己乳化型であってもよいし、強化乳化型であってもよいが、耐水性及び耐溶剤性の観点から自己乳化型水溶性ポリウレタン樹脂化合物であることが好ましい。自己乳化型としては、アニオン型、カチオン型、又は非イオン型等が挙げられるが、いずれであってもよい。また、当該水溶性ポリウレタン樹脂化合物については、特に限定するものではないが、ポリエーテル型、ポリエステル型、又はポリカーボネート型等が挙げられる。
【0077】
水溶性ポリウレタン樹脂化合物は、例えば、三洋化成工業株式会社製、商品名:ユーコート(登録商標)、パーマリン(登録商標)、ユープレン(登録商標)、楠本化成株式会社製、商品名:NeoRez(登録商標)、株式会社ADEKA製、商品名:アデカボンタイター(登録商標)、明成化学工業株式会社製、商品名:パスコール(登録商標)、又はDIC株式会社製、商品名:ハイドラン(登録商標)等が商業的に容易に入手することができる。
【0078】
上記の水溶性ポリウレタン樹脂化合物は、1種を単独で用いることができるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0079】
[導電性高分子組成物の製造方法]
本実施形態の導電性高分子組成物を調製する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、本実施形態のポリチオフェン(A)の溶液又は固体と、グリコールエーテル系溶媒(B)と、ジオール系溶媒(C)と、消泡剤(D)と、必要に応じて水、アミン化合物(E)、及び/又はその他の成分とを混合し、撹拌等によって均一化する方法が挙げられる。
【0080】
上記の混合・撹拌操作については、例えば、スターラーチップ、又は攪拌羽根等による一般的な混合溶解操作であってもよいし、超音波照射、又はホモジナイズ処理(例えば、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、又は高圧ホモジナイザー等の使用)によって行ってもよい。
【0081】
なお、当該混合については、適度に温調して行うこともでき、特に限定するものではないが、例えば、10~80℃の範囲で混合することができ、15~60℃の範囲が好ましく、20~50℃の範囲がより好ましい。
【0082】
また、当該混合については、酸素脱気した後に行うことが好ましく、当該酸素脱気の方法としては、特に限定するものではないが、例えば、減圧処理又は窒素バブリング等が挙げられる。
【0083】
当該混合の時間については、特に限定するものではないが、例えば、1分~12時間の範囲であることが好ましく、1分~6時間の範囲であることがより好ましい。
【0084】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物の粘度(20℃)については、特に限定するものではないが、100mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは30mPa・s以下であり、さらに好ましくは20mPa・s以下である。
【0085】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物の表面張力(20℃)は、特に限定するものではないが、10~80mN/mであることが好ましく、20~70mN/mであることがより好ましく、30~70mN/mであることがより好ましい。
【0086】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物のpHは、10以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましい。さらに、本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物のpHは、1.5以上9.5以下の範囲が好ましく、1.5以上9以下の範囲がより好ましく、1.5以上6以下の範囲がより好ましい。ここで、pHを調整する手順としては、特に限定されないが、例えば、導電性高分子組成物に予め上記したアミン化合物(E)、又は塩基性化合物、若しくは酸性化合物を添加する方法が挙げられる。また、本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物をpH2以下の酸性領域で使用する場合には、必ずしも上記のアミン化合物(E)、又は塩基性化合物を添加する必要はない。
【0087】
上記の塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属水酸化物、又はアルカリ土類金属水酸化物等が挙げられる。
【0088】
上記の酸性化合物としては、例えば、硫酸、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、又はポリスチレンスルホン酸等を挙げることができる。
【0089】
<ポリチオフェン(A)の製造方法>
上記の一般式(1)で表される構造単位を少なくとも2つ以上含むポリチオフェン(A)については、下記一般式(2)で表されるチオフェンモノマーを、水又はアルコール溶媒中、鉄塩及び/又は過硫酸等の酸化剤の存在下に重合させることによって製造することができる。なお、必要に応じて、溶媒洗浄、再沈殿、遠心沈降、限外ろ過、透析、又はイオン交換樹脂処理等の操作を組み合わせることもできる。
【0090】
【0091】
[一般式(2)において、Rは、スルホン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも一つの置換基を有する総炭素数が1~10の有機基を表す。なお、上記のスルホン酸基、及び/又はホスホン酸基については、アルカリ金属塩であってもよい。]
一般式(2)中、Rは、上記一般式(1)のRと同じ定義である。
【0092】
一般式(2)中のアルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、又はセシウム塩が挙げられる。
【0093】
また、上記の一般式(3)で表される構造単位及び一般式(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を少なくとも2つ以上含むポリチオフェン(A)については、下記一般式(5)で表されるチオフェンモノマーを、水又はアルコール溶媒中、鉄塩及び/又は過硫酸等の酸化剤の存在下に重合させることによって製造することができる。なお、必要に応じて、溶媒洗浄、再沈殿、遠心沈降、限外ろ過、透析、又はイオン交換樹脂処理等の操作を組み合わせることもできる。
【0094】
【0095】
上記一般式(5)中、R1、m、nは、上記一般式(3)及び(4)のR1、m、nと同じ定義である。上記一般式(5)中、M+は、水素イオン又はアルカリ金属イオンを表す。
【0096】
上記一般式(5)で表されるチオフェンモノマーとしては、特に限定されないが、具体的には、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロパンスルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-エチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロピル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ペンチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ヘキシル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソプロピル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソブチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソペンチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸アンモニウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸トリエチルアンモニウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブタンスルホン酸ナトリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブタンスルホン酸カリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸ナトリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸カリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-ブタンスルホン酸ナトリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-ブタンスルホン酸カリウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸ナトリウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸リチウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸カリウム、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸ナトリウム、及び8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸カリウム等が例示される。
【0097】
上記一般式(5)中、上記のM+で表されるアルカリ金属イオンとしては、特に限定されないが、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はセシウムイオンを挙げることができる。
【0098】
上記一般式(2)又は(5)で表されるチオフェンモノマーの重合反応に用いる溶媒は、水、アルコール、又はアルコール水溶液であることが好ましい。水としては、例えば、純水が挙げられ、蒸留水、又はイオン交換水でもよい。アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノール等のアルコール類が挙げられる。これらのアルコール溶媒は、単独で使用しても、水と併用してもよい。これらの溶媒のうち、好ましくは水又はメタノールであり、より好ましくは水である。また、溶媒を脱気してもよく、窒素等の不活性ガスで置換していてもよい。
【0099】
上記のチオフェンモノマーの重合反応に用いる溶媒量は、例えば、チオフェンモノマーが溶解する量であり、特に限定されないが、本発明の一実施形態に係るチオフェンモノマーの仕込量に対して0.1~100質量倍の範囲が好ましく、1~20質量倍の範囲がより好ましい。
【0100】
上記のチオフェンモノマーの重合反応に用いる酸化剤は、酸化的脱水素化反応による酸化重合を進行させる。当該酸化剤は、特に限定されないが、例えば、過硫酸類、鉄塩(II又はIII)、過酸化水素、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、硫酸セリウム(IV)、又は酸素等が挙げられ、これらを単独で又は二種以上を混合して使用してもよい。
【0101】
ここで、過硫酸類としては、具体的には、過硫酸、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、又は過硫酸カリウム等が例示される。
【0102】
鉄塩としては、具体的には、FeCl3、FeBr3、Fe2(SO4)3、Fe(NO3)3・9H2O、過塩素酸鉄、又はパラ-トルエンスルホン酸鉄(III)等の3価の鉄塩;FeCl2、FeBr2、又はFeSO4・7H2O、酢酸鉄(II)等の2価の鉄塩が例示される。これらは無水物を使用しても、水和物を使用してもよい。
【0103】
また、過マンガン酸塩としては、具体的には、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、又は過マンガン酸マグネシウム等が例示される。
【0104】
また、重クロム酸塩としては、具体的には、重クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウム等が例示される。
【0105】
これらの酸化剤のうち、FeCl3、Fe2(SO4)3、Fe2(SO4)3、又は過硫酸塩と鉄塩(II又はIII)との併用系が特に好ましい。
【0106】
上記のチオフェンモノマーの重合反応に用いる酸化剤の量としては、特に限定されないが、チオフェンモノマーの仕込モル数に対して0.5~50倍モルが好ましい。より好ましくは、1~20倍モルである。更に好ましくは、1~10倍モルである。
【0107】
上記のチオフェンモノマーの重合反応に用いる酸化剤が、例えば、鉄塩(III)単独系の場合、原料として用いられるチオフェンモノマーの仕込モル数に対して、鉄塩(III)が等倍モル以上であり、且つ溶媒に対する鉄濃度が10質量%以上になるように用いて重合させることが好ましい。より良好な導電性を発現させるためには、溶媒に対する鉄濃度が20質量%以上であることが更に好ましい。なお、ここでいう鉄濃度とは、鉄塩/(鉄塩+水)×100(質量%)で表される値であり、鉄塩は無水物として計算する。
【0108】
また、上記のチオフェンモノマーの重合反応に用いる酸化剤が、過硫酸塩と鉄塩(II又はIII)との併用系である場合には、チオフェンモノマーの仕込モル数に対して、過硫酸塩が0.5~20倍モルの範囲であり、且つ鉄塩(II又はIII)が0.01~10倍モルの範囲であることが好ましく、過硫酸塩が1.5~10倍モルの範囲であり、且つ、鉄塩(II又はIII)が0.05~5倍モルの範囲であることがより好ましい。
【0109】
上記のチオフェンモノマーの重合反応の圧力は、常圧、減圧、又は加圧のいずれであってもよい。
【0110】
上記のチオフェンモノマーの重合反応の反応雰囲気は、大気中であっても、窒素又はアルゴン等の不活性ガス中であってもよい。より好ましくは不活性ガス中である。
【0111】
上記のチオフェンモノマーの重合反応の反応温度は、特に限定されないが、-10~100℃の範囲が好ましく、0~50℃の範囲が更に好ましい。
【0112】
上記のチオフェンモノマーの重合反応の反応時間は、酸化重合が十分進行する時間であり、特に限定されないが、0.5~200時間の範囲が好ましく、0.5~80時間の範囲が更に好ましい。
【0113】
上記の重合反応の反応方法は、特に限定されないが、例えば、上記一般式(2)又は(5)で表されるチオフェンモノマーをあらかじめ水に溶解させ、これに酸化剤を一度に又はゆっくりと滴下してもよく、逆に酸化剤の固体又は水溶液に上記一般式(2)又は(5)で表されるチオフェンモノマーの水溶液を一度に又はゆっくりと滴下してもよい。また、2種以上の酸化剤を用いる場合には、各酸化剤を順次添加してもよい。
【0114】
なお、上記の重合反応は、酸化剤の添加に伴い液粘度が上昇する傾向があるため、液全体を均一に撹拌する必要がある。撹拌翼については、プロペラ翼、パドル翼、マックスブレンド(登録商標)翼(住友重機械プロセス機器社製)、フルゾーン(登録商標)翼(神鋼環境ソリューション社製)、又はディスクタービン等が使用でき、反応容器内をより均一に混合するためにはマックスブレンド翼、又はフルゾーン翼等の大型翼が好ましい。その他として、乳化又は分散に使用されるホモミキサー、又はホモジナイザー等も組み合わせて使用してもよい。一般的な撹拌翼を使用する撹拌法を用いる場合は、反応液に反応容器の気相部のガスが多量に取り込まれて撹拌効率が低下することがない範囲で、撹拌翼の回転速度をできるだけ速くすることが好ましい。
【0115】
上記のポリチオフェン(A)の典型的な単離精製方法は、例えば、以下の通りである。
【0116】
まず、重合反応後の水溶液を、そのまま限外ろ過、又は透析等の膜分離法を用いて脱塩精製し、その後、陽イオン及び陰イオン交換樹脂に通液することにより、上記の一般式(3)で表される構造単位及び一般式(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を少なくとも2つ以上含むポリチオフェン(A)水溶液を得ることができる。
【0117】
更に、必要に応じて、得られた水溶液を粗濃縮し、アセトン等の貧溶媒に添加して沈殿させることにより粉末としてポリチオフェン(A)を得ることもできる。
【0118】
[導電性高分子膜]
本発明の一実施形態に係る導電性高分子膜は、特に限定されないが、例えば、本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物を、基材上に塗布し、次いで乾燥させることによって製造することができる。
【0119】
このように製造される導電性高分子膜は、上記一般式(1)で表される構造単位を2つ以上含むポリチオフェン(A)と、消泡剤(D)とを含む。
【0120】
上記の基材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、プラスチック、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、又はレジスト基板等が挙げられる。
【0121】
塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、スクリーン印刷法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、インクジェット印刷法等が挙げられる。これらのうち、高性能の固体電解コンデンサ製造に適する点で、インクジェット印刷法が好ましい。
【0122】
乾燥温度としては、均一な乾燥状態の導電性高分子膜が得られる温度及び基材の耐熱温度以下であれば特に限定されないが、室温(15~25℃)~300℃の範囲が好ましく、より好ましくは室温~200℃の範囲であり、さらに好ましくは90~200℃の範囲である。
【0123】
乾燥雰囲気は、大気中、不活性ガス中、真空中、又は減圧下のいずれであってもよい。導電性高分子膜の劣化抑制の観点からは、窒素、又はアルゴン等の不活性ガス中が好ましい。
【0124】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子膜の膜厚としては、特に限定されないが、1×10-2~1×102μmの範囲が好ましい。
【0125】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子膜は、表面抵抗率が1000Ω/□以下であることが好ましく、500Ω/□以下であることがより好ましい。また、本発明の一実施形態に係る導電性高分子膜は、以下の式に基づいて算出される導電率が0.5S/cm以上であることが好ましく、1S/cm以上であることがより好ましい。
【0126】
導電率[S/cm]=104/(表面抵抗率[Ω/□]×膜厚[μm])
本実施形態の導電性高分子膜は、例えば、帯電防止剤、電解コンデンサの固体電解質、導電性塗料、エレクトロクロミック素子、電極材料、熱電変換材料、透明導電膜、化学センサ、又はアクチュエータ等に使用できる。特に、電解コンデンサの固体電解質として極めて有用である。本実施形態の導電性高分子膜を電解コンデンサに用いた場合、高い容量を維持したまま、低ESRの優れた特性を有する電解コンデンサを提供することができる。
【0127】
また、本実施形態の導電性高分子膜は、長寿命である電解コンデンサ等を提供できるため、エネルギー効率の改善に貢献し得る。これにより、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0128】
[電解コンデンサ]
本実施形態の電解コンデンサについては、本実施形態の導電性高分子膜を用いて形成することができる。本実施形態の電解コンデンサを製造する方法としては、例えば、誘電体酸化膜が形成された陽極体の誘電体酸化膜の表面に、本実施形態の導電性高分子組成物を塗布し、加熱乾燥させる工程を含む方法が挙げられる。
【0129】
本実施形態において、陽極体は誘電体酸化膜(誘電体層)および陽極を含むことが好ましい。誘電体層は酸化被膜からなるとも言える。
【0130】
本実施形態において、陽極としては、特に限定されないが、誘電体層の形成が容易である点から、アルミニウム、タンタル、ニオブ、及びチタンからなる群から選択される1種以上であることが好ましく、アルミニウムからなることがより好ましい。
【0131】
本実施形態において、誘電体層を構成する酸化被膜は、陽極の表面が酸化されて生じることが好ましい。当該酸化被膜を陽極の表面に形成させる方法(すなわち、陽極体の製造方法)としては、特に限定されないが、緩衝液中で電圧印加により陽極を酸化する方法等が挙げられる。
【0132】
本実施形態において、導電性高分子膜は、上記の陽極上に形成されることが好ましく、陽極と陰極とに挟まれた状態で存在していてもよい。
【0133】
本実施形態において、陰極としては、特に限定されないが、誘電体層の形成が容易である点から、アルミニウム、銀、タンタル、ニオブ、及びチタンからなる群から選択される1種以上であることが好ましく、アルミニウムからなることがより好ましい。
【0134】
本実施形態の電解コンデンサを製造する方法における乾燥温度は、本実施形態の導電性高分子膜を形成する方法(製造方法)における塗膜の乾燥温度の記載を援用できる。
【0135】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0136】
以下に本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物、及び導電性高分子膜に関する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されない。後述する各実施例及び各比較例の導電性高分子を含む溶液について、以下の方法に従って導電性高分子を含む膜を作製し、表面抵抗率を測定した。
【0137】
[発泡性評価]
10mlの試験管に3mlの導電性高分子を含む溶液を入れ、上下に攪拌。消泡に至るまでの時間の測定を行った。
【0138】
[表面張力測定]
接触角計(協和界面科学製DMo-602)を用いて測定を行った。
【0139】
[乾燥性評価]
25mm角の無アルカリガラス板上に、マイクロシリンジを使用して、導電性高分子の溶液を1μl滴下した。室温25℃にて放置を行い、乾燥に至る時間の測定を行った。
【0140】
[導電性高分子を含む膜の作製方法]
インクジェット装置(EPSON製R&D用インクジェット装置)にPrecisionCore(登録商標)ヘッドを取り付け、インクタンクに、導電性高分子を含む溶液を充填した。室温25℃にて、インクである前記の導電性高分子を含む溶液を、UVオゾン処理を行った50mm角の無アルカリガラス板に対して、その全面に、1200dpiの条件で均一に印刷した後、120℃に設定した恒温槽中で、大気下、2分間加熱して乾燥させ、導電性高分子を含む膜を得た。
【0141】
[導電性高分子を含む膜の表面抵抗率の測定方法]
表面抵抗測定器(三菱化学社製ロレスタGP MCP-T600)を用いて、測定プローブをASPとして、上記の[導電性高分子を含む膜の作製方法]で作製した導電性高分子を含む膜の表面抵抗率を25℃、50%RH雰囲気で測定した。測定は、x方向に6.25mm、y方向に6.25mmの間隔で、9箇所で行い、9箇所での表面抵抗率の平均値を算出した。
【0142】
[固体電解コンデンサの作製]
インクジェット装置(EPSON製R&D用インクジェット装置)にPrecisionCoreヘッドを取り付け、インクタンクに、導電性高分子を含む溶液を充填した。室温25℃にて、インクである前記の導電性高分子を含む溶液を日本蓄電器工業社製アルミ箔(品名:110LJB23B―6.5VP)の全面に対して印刷した後、120℃に設定した恒温槽中で、大気下、30分間加熱して乾燥し、導電性高分子を含む膜を得た。
【0143】
上記のアルミ箔と導電性高分子を含む膜とからなる積層体について、打ち抜きを行い、1cm×1cmの積層体サンプルを作製した。上記積層体サンプルの導電性高分子を含む膜上にカーボンペースト(日本黒鉛社製エブリオームT-30PLB-U)を塗工後、120℃に設定した恒温槽中で、大気下、30分間加熱し乾燥させて、カーボン膜を積層させた。
【0144】
上記カーボン膜の上に銀ペースト(藤倉化成製ドータイト(登録商標)FA―323)を塗工後、120℃に設定した恒温槽中で、大気下、30分間加熱して乾燥させ、銀膜を積層させた。
【0145】
得られた積層体のアルミ箔表面と銀膜表面とにそれぞれ導線を取り付け、固体電解コンデンサを作製した。
【0146】
[固体電解コンデンサの特性測定]
上記の方法で作製した固体電解コンデンサの特性については、LCRメーター(日置電機社製IM3536)を用い、初期120Hzの初期容量[μF]、初期100kHzのESR[mΩ]を評価した。
【0147】
合成例1 ポリチオフェン(PT)の合成
従来公知の製造方法に従って、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ポリマー(下記一般式(3a)及び(4a)で表される構造単位を2つ以上含む導電性高分子、数平均分子量約7千、以下「PT」と略記)を合成した。PTは、上記のポリチオフェン(A)に該当する。
【0148】
【0149】
実施例1 (導電性高分子組成物の調製と評価)
92.8gの純水に、PT 1.5gと、エチレングリコール モノn-ヘキシルエーテル(東京化成工業製、製品コードH0343、上記のグリコールエーテル系溶媒(B)に該当) 0.4gと、エチレングリコール(東京化成工業製、製品コードE0105、上記のジオール系溶媒(C)に該当)5gと、KS-530(信越化学工業製、上記の消泡剤(D)に該当)0.1gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508、上記のアミン化合物(E)に該当)0.2gとを加え、撹拌を行って、実施例1に係る導電性高分子組成物を調製した。当該導電性高分子組成物から、上記の[発泡性評価]、[表面張力測定]、[乾燥性評価]、[導電性高分子を含む膜の作製方法]、及び[導電性高分子を含む膜の表面抵抗率の測定方法]に従って評価した。評価の結果を表2に示す。
【0150】
実施例2 (導電性高分子組成物の調製と評価)
92.8gの純水に、PT 1.5gと、エチレングリコール モノn-ヘキシルエーテル(東京化成工業製、製品コードH0343) 0.4gと、ジエチレングリコール(東京化成工業製、製品コードD0495、上記のジオール系溶媒(C)に該当)5gと、KS-530(信越化学工業製)0.1gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508)0.2gとを加え、撹拌を行って、実施例2に係る導電性高分子組成物を調製した。当該導電性高分子組成物について、実施例1と同様に評価した。評価の結果を表2に示す。
【0151】
実施例3 (導電性高分子組成物の調製と評価)
88.2gの純水に、PT 1.5gと、エチレングリコール モノn-ブチルエーテル(東京化成工業製、製品コードB0698、上記のグリコールエーテル系溶媒(B)に該当) 5gと、ジエチレングリコール(東京化成工業製、製品コードE0105、上記のジオール系溶媒(C)に該当)5gと、KS-530(信越化学工業製)0.1gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508)0.2gとを加え、撹拌を行って、実施例3に係る導電性高分子組成物について、実施例1と同様に評価した。評価の結果を表2に示す。
【0152】
実施例4 (導電性高分子組成物の調製と評価)
92.8gの純水に、PT 1.5gと、エチレングリコール モノn-ヘキシルエーテル(東京化成工業製、製品コードH0343) 0.4gと、エチレングリコール(東京化成工業製、製品コードE0105)5gと、SN デフォーマー 121N(サンノプコ製、上記の消泡剤(D)に該当)0.1gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508)0.2gとを加え、撹拌を行って、実施例4に係る導電性高分子組成物を調製した。当該導電性高分子組成物について、実施例1と同様に評価した。評価の結果を表2に示す。
【0153】
実施例5 (導電性高分子組成物の調製と評価)
92.8gの純水に、PT 1.5gと、エチレングリコール モノn-ヘキシルエーテル(東京化成工業製、製品コードH0343) 0.4gと、1,2―プロパンジオール(東京化成工業製、製品コードP0485、上記のグリコールエーテル系溶媒(B)に該当)5gと、KS-530(信越化学工業製)0.1gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508)0.2gとを加え、撹拌を行って、実施例5に係る導電性高分子組成物を調製した。当該導電性高分子組成物について、実施例1と同様に評価した。評価の結果を表2に示す。
【0154】
実施例7 (導電性高分子組成物の調製と評価)
92.8gの純水に、PT 1.5gと、エチレングリコール モノフェニルエーテル(東京化成工業製、製品コードP0115、上記のグリコールエーテル系溶媒(B)に該当) 0.4gと、エチレングリコール(東京化成工業製、製品コードE0105)5gと、KS-530(信越化学工業製)0.1gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508)0.2gとを加え、撹拌を行って、実施例7に係る導電性高分子組成物を調製した。当該導電性高分子組成物について、実施例1と同様に評価した。評価の結果を表2に示す。
【0155】
実施例8 (導電性高分子組成物の調製と評価)
92.8gの純水に、PT 1.5gと、ジエチレングリコール モノフェニルエーテル(東京化成工業製、製品コードD5139、上記のグリコールエーテル系溶媒(B)に該当) 0.4gと、エチレングリコール(東京化成工業製、製品コードE0105)5gと、KS-530(信越化学工業製)0.1gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508)0.2gとを加え、撹拌を行って、実施例8に係る導電性高分子組成物を調製した。当該導電性高分子組成物について、実施例1と同様に評価した。評価の結果を表2に示す。
【0156】
実施例9 (導電性高分子組成物の調製と評価)
92.8gの純水に、PT 1.5gと、ジエチレングリコール モノベンジルエーテル(東京化成工業製、製品コードD3408、上記のグリコールエーテル系溶媒(B)に該当) 0.4gと、エチレングリコール(東京化成工業製、製品コードE0105)5gと、KS-530(信越化学工業製)0.1gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508)0.2gとを加え、撹拌を行って、実施例9に係る導電性高分子組成物を調製した。当該導電性高分子組成物について、実施例1と同様に評価した。評価の結果を表2に示す。
【0157】
実施例10 (導電性高分子組成物の調製と評価)
92.8gの純水に、PT 1.5gと、ジエチレングリコール モノベンジルエーテル(東京化成工業製、製品コードD3408) 0.4gと、ジエチレングリコール(東京化成工業製、製品コードD0495、上記のジオール系溶媒(C)に該当)5gと、KS-530(信越化学工業製)0.1gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508)0.2gとを加え、撹拌を行って、実施例10に係る導電性高分子組成物を調製した。当該導電性高分子組成物について、実施例1と同様に評価した。評価の結果を表2に示す。
【0158】
比較例1 (導電性高分子を含む溶液の調製と評価)
92.8gの純水に、PT 1.5gと、エチレングリコール モノn-ヘキシルエーテル(東京化成工業製、製品コードH0343) 0.4gと、エタノール(キシダ化学製、製品コード000-28555)5gと、SN デフォーマー 121N(サンノプコ製)0.1gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508)0.2gとを加え、撹拌を行って、比較例1に係る混合溶液を調製した。当該混合溶液について、実施例1に係る導電性高分子組成物と同様に評価した。評価の結果を表2に示す。
【0159】
比較例2 (導電性高分子を含む溶液の調製と評価)
92.8gの純水に、PT 1.5gと、エチレングリコール モノn-ヘキシルエーテル(東京化成工業製、製品コードH0343) 0.4gと、1-メトキシ-2-プロパノール(東京化成工業製、製品コードM0126)5gと、KS-530(信越化学工業製)0.1gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508)0.2gとを加え、撹拌を行って、比較例2に係る混合溶液を調製した。当該混合溶液について、実施例1に係る導電性高分子組成物と同様に評価した。評価の結果を表2に示す。
【0160】
参考例1 (導電性高分子を含む溶液の調製と評価)
98.5gの純水に、PT 1.5gを加え、撹拌を行って、参考例1に係る混合溶液を調製した。当該混合溶液について、実施例1に係る導電性高分子組成物と同様に評価した。評価の結果を表2に示す。
【0161】
参考例1に係る混合溶液は、インクジェットに必要な発泡性、表面張力、及び乾燥性を兼ね備えておらず、インクジェット装置に不具合が発生する可能性があるために導電性高分子を含む膜は作製が出来なかった。
【0162】
参考例2 (導電性高分子を含む溶液の調製と評価)
98.2gの純水に、PT 1.5gと、KS-530(信越化学工業製)0.1gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508)0.2gとを加え、撹拌を行って、参考例2に係る混合溶液を調製した。当該混合溶液について、実施例1に係る導電性高分子組成物と同様に評価した。評価の結果を表2に示す。
【0163】
参考例2に係る混合溶液は、インクジェットに必要な表面張力、及び固着性を抑える効果がなく、インクジェット装置のノズルが固着する不具合が発生する可能性があるために導電性高分子を含む膜は作製が出来なかった。
【0164】
参考例3 (導電性高分子を含む溶液の調製と評価)
92.8gの純水に、PT 1.5gと、エチレングリコール(東京化成工業製、製品コードE0105)5gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508)0.2gとを加え、撹拌を行って、参考例3に係る混合溶液を調製した。当該混合溶液について、実施例1に係る導電性高分子組成物と同様に評価した。評価の結果を表2に示す。
【0165】
参考例3に係る混合溶液は、インクジェットに必要な表面張力、及び発泡性を抑える効果がなく、泡を含むことで吐出不良が発生する可能性があるために導電性高分子を含む膜は作製が出来なかった。
【0166】
参考例4 (導電性高分子を含む溶液の調製と評価)
92.9gの純水に、PT 1.5gと、エチレングリコール モノn-ヘキシルエーテル(東京化成工業製、製品コードH0343) 0.4gと、エチレングリコール(東京化成工業製、製品コードE0105)5gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508)0.2gとを加え、撹拌を行って、参考例4に係る混合溶液を調製した。当該混合溶液について、実施例1に係る導電性高分子組成物と同様に評価した。評価の結果を表2に示す。
【0167】
参考例4に係る混合溶液は、インクジェットに必要な発泡性を抑える効果がなく、泡を含むことで吐出不良が発生する可能性があるために導電性高分子を含む膜は作製が出来なかった。
【0168】
参考例5 (導電性高分子を含む溶液の調製と評価)
97.8gの純水に、PT 1.5gと、エチレングリコール モノn-ヘキシルエーテル(東京化成工業製、製品コードH0343) 0.4gと、KS-530(信越化学工業製)0.1gと、1-メチルイミダゾール(東京化成工業製、製品コードM0508)0.2gとを加え、撹拌を行って、参考例5に係る混合溶液を調製した。当該混合溶液について、実施例1に係る導電性高分子組成物と同様に評価した。評価の結果を表2に示す。
【0169】
参考例5に係る混合溶液は、インクジェットに必要な固着性を抑える効果がなく、インクジェット装置のノズルが固着する不具合が発生する可能性があるために導電性高分子を含む膜は作製が出来なかった。
【0170】
各実施例、参考例及び比較例の要約を、表1及び表2に示す。表1において、比較例1及び比較例2には、ジオール系溶媒(C)の代わりに添加した有機溶媒について、カッコ書きにより示している。
【0171】
【0172】
【0173】
表2に示すように、実施例1~5、及び7~10では、発泡性が低く、乾燥し難いためにノズルに詰まる可能性が低く、表面張力も高すぎないためにインクジェットの吐出が可能であり、更に表面張力が低すぎないために液だれの可能性も低いことが示された。
【0174】
比較例1~2で使用した有機溶媒は沸点が低いため、乾燥性が高いことが示された。混合溶液の乾燥性が高いと、インクジェットに使用した際にノズル詰まりが発生する恐れがある。
【0175】
一方、参考例1~3では、発泡性、乾燥性、及び表面張力のすべての基準を満たすことができず、インクジェット装置にて連続的に使用ができる材料とは判断できなかった。
【0176】
実施例6 (コンデンサの作製と評価)
実施例1に記載の導電性高分子組成物を用い、[コンデンサの作製]、及び[固体電解コンデンサの特性測定]に従って評価した。評価の結果を表3に示す。
【0177】
【0178】
表3に示すように、本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物によれば、インクジェット装置を使用したコンデンサが作製可能である。
本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物は、固体電解コンデンサの材料として使用可能である。また、本発明の一実施形態に係る導電性高分子組成物については、その特性を利用して、固体電解コンデンサ以外にも、例えば帯電防止材、LCD用材料、有機EL素子用材料、又は透明電極等に利用することができる。