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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084677
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】室内空間環境制御方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20240618BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20240618BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240618BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B05D1/36 Z
B05D5/06 C
B05D3/00 D
B05D5/06 Z
B05D7/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122898
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2022198837
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522497386
【氏名又は名称】竹内 隆介
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】竹内 隆介
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AC57
4D075AD06
4D075AE04
4D075BB13X
4D075BB16X
4D075BB20Z
4D075CA17
4D075CA18
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB01
4D075CB06
4D075DA06
4D075DB13
4D075DC01
4D075EA10
4D075EC10
4D075EC23
4D075EC30
(57)【要約】
【課題】容易に太陽光の透過量を制御することのできる室内空間環境制御方法を提供する。
【解決手段】透光性透明部材10の所定部位に遮熱性塗料20を繰り返し塗布し、遮熱性塗料20が厚く塗られた厚層部50と厚層部50よりも薄く塗布された薄層部70又は当該透光性透明部材10に当該遮熱性塗料20が塗布されない非遮熱部60と、を形成することで、室内空間βの温度環境を制御したり、例えば外から見た室内空間β内の視認性を制御したりする。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光が外部空間から所定の室内空間に到達する際に透過することとなる、当該室内空間に臨む透光性透明部材における外部空間側又は室内空間側の表面の所望位置に、着色された透光性を有する遮熱性材料を薄膜状に配して、前記透光性透明部材を透過する太陽光の透過量を制御して前記室内空間の室内環境を制御する室内空間環境制御方法であって、
前記透光性透明部材における外部空間側又は室内空間側の表面の所定部位に前記遮熱性材料を薄膜状に配する薄膜形成工程を含み、
前記薄膜形成工程を繰り返し実行することにより、前記透光性透明部材に前記遮熱性材料が積層状に配された厚層部と、当該透光性透明部材に当該遮熱性材料が前記厚層部よりも薄く配されてなる積層状の薄層部と、が形成されてなる
ことを特徴とする室内空間環境制御方法。
【請求項2】
太陽光が外部空間から所定の室内空間に到達する際に透過することとなる、当該室内空間に臨む透光性透明部材における外部空間側又は室内空間側の表面の所望位置に、着色された透光性を有する遮熱性材料を薄膜状に配して、前記透光性透明部材を透過する太陽光の透過量を制御して前記室内空間の室内環境を制御する室内空間環境制御方法であって、
前記透光性透明部材における外部空間側又は室内空間側の表面の所定部位に前記遮熱性材料を薄膜状に配する薄膜形成工程を含み、
前記薄膜形成工程を繰り返し実行することにより、前記透光性透明部材に前記遮熱性材料が積層状に配された厚層部と、当該透光性透明部材に当該遮熱性材料が配されない非遮熱部と、が形成されてなる
ことを特徴とする室内空間環境制御方法。
【請求項3】
前記遮熱性材料で構成される厚層部は断熱性能を有する
請求項1又は請求項2に記載の室内空間環境制御方法。
【請求項4】
前記遮熱性材料が、遮熱性塗料であり、
前記薄膜形成工程を繰り返し実行することにより、前記透光性透明部材に前記遮熱性塗料が厚く積層状に塗布された厚層部と、当該透光性透明部材に当該遮熱性塗料が前記厚層部よりも薄く塗布されてなる積層状の薄層部と、が形成されてなり、
さらに、一の薄膜形成工程とその次の薄膜形成工程との間に、薄層部用シール部材によって前記薄層部となる部位を被覆する薄層部用シール部材形成工程と、
前記薄層部用シール部材形成工程の後に、前記薄層部用シール部材を除去して、除去した部分を、当該透光性透明部材に当該遮熱性塗料が前記厚層部よりも薄く塗布されてなる積層状の薄層部とする薄層部用シール部材除去工程と、
を含む
請求項1に記載の室内空間環境制御方法。
【請求項5】
前記遮熱性材料が、遮熱性塗料であり、
前記薄膜形成工程を繰り返し実行することにより、前記透光性透明部材に前記遮熱性塗料が厚く積層状に塗布された厚層部と非遮熱部と、が形成されてなり、
さらに、前記薄膜形成工程の前に、非遮熱部用シール部材によって前記非遮熱部となる部位を被覆する非遮熱部用シール部材形成工程と、
前記非遮熱部用シール部材形成工程の後に、前記非遮熱部用シール部材を除去して、除去した部分を非遮熱部とする非遮熱部用シール部材除去工程と、
を含む
請求項2に記載の室内空間環境制御方法。
【請求項6】
太陽光が外部空間から所定の室内空間に到達する際に透過することとなる、当該室内空間に臨む透光性透明部材における外部空間側又は室内空間側の表面の所望位置に、着色された透光性を有する遮熱性材料を薄膜状に配して、前記透光性透明部材を透過する太陽光の透過量を制御して前記室内空間の室内環境を制御する室内空間環境制御方法であって、
前記透光性透明部材における外部空間側又は室内空間側の表面の所定部位に前記遮熱性材料を薄膜状に配する薄膜形成工程と、
前記薄膜形成工程の次に、前記遮熱性材料を薄膜状に配した部位に透光性を有する意匠性材料を配置する意匠性材料配置工程と、
を含む
ことを特徴とする室内空間環境制御方法。
【請求項7】
前記意匠性材料配置工程の次に、前記意匠性材料の上に再度前記遮熱性材料を薄膜状に配する薄膜再形成工程を含む
ことを特徴とする請求項6に記載の室内空間環境制御方法。
【請求項8】
太陽光が外部空間から所定の室内空間に到達する際に透過することとなる、当該室内空間に臨む透光性透明部材における外部空間側又は室内空間側の表面の所望位置に、着色された透光性を有する遮熱性材料を薄膜状に配して、前記透光性透明部材を透過する太陽光の透過量を制御して前記室内空間の室内環境を制御する室内空間環境制御方法であって、
前記透光性透明部材における外部空間側又は室内空間側の表面の所定部位に前記遮熱性材料を薄膜状に配する薄膜形成工程を含み、
前記遮熱性材料には、予め透光性を有する意匠性材料が含有されている
ことを特徴とする室内空間環境制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光が透過する透光性透明部材に、着色された透光性を有する遮熱性材料を配して透光性透明部材における太陽光の透過量を制御する室内空間環境制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、既設の窓ガラス等に塗布することによって当該窓ガラス等に紫外線・近赤外線の遮断機能を付与する塗料(遮熱性塗料)が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-87228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の遮熱性塗料にあっては、無色透明であるために可視光線の遮断性能は皆無である。窓ガラスを透過する太陽光線の45%~49%が可視光線であると言われており、可視光線を所定の量だけ不透過とすることができれば相当な遮熱性が得られると考えられる。また、従来の遮熱性塗料にあっては、無色透明であるために施工済の部位と未施工の部位との判別がつきにくく、ムラなく塗装を行なおうとすると大変な手間のかかるものであった。
【0005】
本発明は、太陽光の透過量を制御することのできる室内空間環境制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、太陽光が外部空間から所定の室内空間に到達する際に透過することとなる、当該室内空間に臨む透光性透明部材における外部空間側又は室内空間側の表面の所望位置に、着色された透光性を有する遮熱性材料を薄膜状に配して、前記透光性透明部材を透過する太陽光の透過量を制御して前記室内空間の室内環境を制御する室内空間環境制御方法であって、前記透光性透明部材における外部空間側又は室内空間側の表面の所定部位に前記遮熱性材料を薄膜状に配する薄膜形成工程を含み、前記薄膜形成工程を繰り返し実行することにより、前記透光性透明部材に前記遮熱性材料が積層状に配された厚層部と、当該透光性透明部材に当該遮熱性材料が前記厚層部よりも薄く配されてなる積層状の薄層部と、が形成されてなることを特徴とする室内空間環境制御方法である。
【0007】
また、本発明は、太陽光が外部空間から所定の室内空間に到達する際に透過することとなる、当該室内空間に臨む透光性透明部材における外部空間側又は室内空間側の表面の所望位置に、着色された透光性を有する遮熱性材料を薄膜状に配して、前記透光性透明部材を透過する太陽光の透過量を制御して前記室内空間の室内環境を制御する室内空間環境制御方法であって、前記透光性透明部材における外部空間側又は室内空間側の表面の所定部位に前記遮熱性材料を薄膜状に配する薄膜形成工程を含み、前記薄膜形成工程を繰り返し実行することにより、前記透光性透明部材に前記遮熱性材料が積層状に配された厚層部と、当該透光性透明部材に当該遮熱性材料が配されない非遮熱部と、が形成されてなることを特徴とする室内空間環境制御方法である。
【0008】
ここで、本発明における着色された透光性を有する遮熱性材料とは、着色された材料で構成されるものであり、あるいは、透明な材料を指すのではなくいわゆる濁った色の材料で構成されるものも含まれる。すなわち、本発明における着色された透光性を有する遮熱性材料は、透光性透明部材にごく薄く配されただけではその透明性はほぼ失われないが、当該遮熱性材料全体の膜厚が増すことによって透光性が減少して一定の限度を超えると可視光線の一部又は全部が不透過となる性質を有する。
【0009】
かかる構成にあっては、前記遮熱性材料が厚く配された積層状の厚層部によって前記透光性透明部材の遮熱性能が向上する。一方、透光性透明部材を介して外部空間側から室内空間内を視認しようとした場合あるいは室内空間側から外部空間を視認しようとした場合にも、厚層部が配された部位は視認性が劣ることになるが、前記薄層部又は前記非遮熱部は相対的に視認性に優れるため、遮熱効果を確保しつつ視認性も確保できることとなる。すなわち、厚層部と、薄層部又は非遮熱部との面積比率や柄(デザイン)を適宜定めることにより、所望の遮熱性能を確保しつつ視認性も確保できることとなる。例えば厚層部の面積比率を大きくしたり小さくしたりすることで、透光性透明部材を透過する太陽光の透過量を適切に制御することができる。また、当然ながら、厚層部と、薄層部又は非遮熱部とから構成されるデザインが特異なものとなれば、有意な意匠性を付与することができる。さらに、本発明の遮熱性材料は上記のように着色されているため、透光性透明部材に対して施工した際に、施工済の部位と未施工の部位との判別が容易であり、遮熱性材料を配する作業が容易となるし、施工依頼者も施工済みであることを容易に把握することができる。
【0010】
また、前記遮熱性材料で構成される厚層部は断熱性能を有する構成であってもよい。
【0011】
また、前記遮熱性材料が、遮熱性塗料であり、前記薄膜形成工程を繰り返し実行することにより、前記透光性透明部材に前記遮熱性塗料が厚く積層状に塗布された厚層部と、当該透光性透明部材に当該遮熱性塗料が前記厚層部よりも薄く塗布されてなる積層状の薄層部と、が形成されてなり、さらに、一の薄膜形成工程とその次の薄膜形成工程との間に、薄層部用シール部材によって前記薄層部となる部位を被覆する薄層部用シール部材形成工程と、前記薄層部用シール部材形成工程の後に、前記薄層部用シール部材を除去して、除去した部分を、当該透光性透明部材に当該遮熱性塗料が前記厚層部よりも薄く塗布されてなる積層状の薄層部とする薄層部用シール部材除去工程と、を含む構成としてもよい。
【0012】
また、前記遮熱性材料が、遮熱性塗料であり、前記薄膜形成工程を繰り返し実行することにより、前記透光性透明部材に前記遮熱性塗料が厚く積層状に塗布された厚層部と非遮熱部と、が形成されてなり、さらに、前記薄膜形成工程の前に、非遮熱部用シール部材によって前記非遮熱部となる部位を被覆する非遮熱部用シール部材形成工程と、前記非遮熱部用シール部材形成工程の後に、前記非遮熱部用シール部材を除去して、除去した部分を非遮熱部とする非遮熱部用シール部材除去工程と、を含む構成としてもよい。
【0013】
また本発明は、太陽光が外部空間から所定の室内空間に到達する際に透過することとなる、当該室内空間に臨む透光性透明部材における外部空間側又は室内空間側の表面の所望位置に、着色された透光性を有する遮熱性材料を薄膜状に配して、前記透光性透明部材を透過する太陽光の透過量を制御して前記室内空間の室内環境を制御する室内空間環境制御方法であって、前記透光性透明部材における外部空間側又は室内空間側の表面の所定部位に前記遮熱性材料を薄膜状に配する薄膜形成工程と、前記薄膜形成工程の次に、前記遮熱性材料を薄膜状に配した部位に透光性を有する意匠性材料を配置する意匠性材料配置工程と、を含むことを特徴とする室内空間環境制御方法である。
【0014】
かかる構成にあっては、前記透光性透明部材に、透光性を有する意匠性材料が配置されることによって太陽光の透過量を制御するだけでなく、当該透光性透明材料に装飾を施して見栄えをよくすることができる。
【0015】
さらに本発明は、前記意匠性材料配置工程の次に、前記意匠性材料の上に再度前記遮熱性材料を薄膜状に配する薄膜再形成工程を含むようにしてもよい。
【0016】
かかる構成にあっては、意匠性材料を遮熱性材料で保護することができる。
【0017】
また本発明は、太陽光が外部空間から所定の室内空間に到達する際に透過することとなる、当該室内空間に臨む透光性透明部材における外部空間側又は室内空間側の表面の所望位置に、着色された透光性を有する遮熱性材料を薄膜状に配して、前記透光性透明部材を透過する太陽光の透過量を制御して前記室内空間の室内環境を制御する室内空間環境制御方法であって、前記透光性透明部材における外部空間側又は室内空間側の表面の所定部位に前記遮熱性材料を薄膜状に配する薄膜形成工程を含み、前記遮熱性材料には、予め透光性を有する意匠性材料が含有されていることを特徴とする室内空間環境制御方法である。
【0018】
かかる構成にあっては、前記遮熱性材料に含有される透光性を有する意匠性材料が、前記透光性透明部材に配されることによって太陽光の透過量を制御するだけでなく、当該透光性透明材料に装飾を施して見栄えをよくすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の室内空間環境制御方法は、太陽光の透過量を容易に制御することのできる優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1にかかる透光性透明部材における塗布部分の縦断面を示す説明図である。
図2】薄膜形成工程を順に説明する説明図である。
図3】太陽光の透過態様と視認性の態様を説明する説明図である。
図4】実施例2にかかる薄膜形成工程を順に説明する説明図である。
図5】太陽光の透過態様と視認性の態様を説明する説明図である。
図6】実施例3にかかる透光性透明部材に遮熱性塗料を塗布する手順を示し、(a)は窓ガラスとしての透光性透明部材の正面を示し、(b)は塗布態様を示す説明図である。
図7図6から続く説明図であって、使用状態における透光性透明部材の正面を示している。
図8】実施例4にかかる透光性透明部材に遮熱性塗料を塗布する手順を示す説明図である。
図9】(a)は実施例5にかかる透光性透明部材の正面を示し、(b)は塗布部分の縦断面を示す説明図である。
図10】(a)は実施例6にかかる透光性透明部材の正面を示し、(b)は塗布部分の縦断面を示す説明図である。
図11】(a)は実施例7にかかる透光性透明部材の正面を示し、(b)は塗布部分の縦断面を示す説明図である。
図12】他の実施例にかかる遮熱性塗料の塗布手順を示す説明図である。
図13図12から続く、遮熱性塗料の塗布手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を、以下の実施例に従って説明する。なお本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜、設計変更が可能である。また、各図面において、本発明の理解を容易とするために、各部材の厚み等を実際のものから変更して記載してある。
【0022】
〔実施例1〕
窓ガラス等を含む透光性を有する部材で構成された透光性透明部材10が臨む所定の室内空間βにおいて、外部空間である屋外αから太陽光が透光性透明部材10を介して室内空間βに到達しうる構成にあって、透光性透明部材10における屋外α側の面に、着色された透光性を有する遮熱性塗料20(以下、単に遮熱性塗料20ともいう)を遮熱目的で塗布する手順を図1図3に従って説明する。特に本発明は、遮熱対象である単一の領域を有する透光性透明部材10に対して、遮熱性塗料20を塗布する部分と塗布しない部分とを設けることを特徴としている。ここで、遮熱性塗料20は、透光性を有しながらも白濁しており、一定以上の厚みになるように塗り重ねると可視光線の透過が低減される性質を有している。また、遮熱性塗料20は、断熱性能も有している。なお、本実施例の着色された透光性を有する遮熱性塗料20により、本発明にかかる着色された透光性を有する遮熱性材料が構成される。
【0023】
まず、図1に示すように、透光性透明部材10の屋外α側の表面に、遮熱性塗料20を塗布しない部位をマスキングテープや型枠等の非遮熱部用シール部材30によって被覆する(非遮熱部用シール部材形成工程)。
【0024】
次に、図2(a)に示すように、透光性透明部材10に遮熱性塗料20を塗布する(薄膜形成工程)。遮熱性塗料20を塗布するには、スポンジローラーや刷毛、あるいはこてを用いることができ、あるいは、スプレー塗布などのその他の手法が適宜提案されうる。なお、一般的に遮熱性塗料20は、透明な溶媒に微細な粒子が混ざることによって縣濁したものであり、使用前に撹拌して粒子を分散させるが、この際、超音波を用いて撹拌すると良好に粒子を分散させることができる。
【0025】
そして、1回目の遮熱性塗料20の塗布が完了して遮熱性塗料20が薄膜状となって乾燥したら(塗布乾燥工程)、図2(b)に示すように、その上から再度遮熱性塗料20を塗布する。これを、図2(c)に示すように、遮熱性塗料20が所定の厚みとなるまで繰り返す。
【0026】
遮熱性塗料20が所定の厚みとなり、透光性透明部材10に遮熱性塗料20が所定の厚みを有して塗布された積層状の厚層部50が形成されたところで、図3に示すように、非遮熱部用シール部材30を除去する(非遮熱部用シール部材除去工程)。これにより、透光性透明部材10には、遮熱性塗料20が厚く塗布された厚層部50と、遮熱性塗料20が塗布されない非遮熱部60と、が隣接して形成される。
【0027】
遮熱性塗料20が塗布された透光性透明部材10にあっては、厚層部50によって紫外線や赤外線のみならず可視光線までが遮断されるため、極めて遮熱効果の高いものとすることができる。さらに、厚層部50においては断熱性能をも備え、室内空間βの室内環境を好適に制御することができる。また、非遮熱部60によって透光性透明材料10を介した視認性も確保することができる。なお、厚層部50と非遮熱部60との面積比率によって遮熱性能及び断熱性能を変化させるとともに、適正な視認性を確保しながら室内空間βの室内環境を適正に制御することができる。さらに、厚層部50と非遮熱部60とでは、厚みの相違によって色の濃さが異なってくるため、例えば規則性を有する塗工形態とすることにより、透光性透明部材10に対して所望の意匠性を付与することができる。
【0028】
〔実施例2〕
実施例2における塗布手順を説明する。
図4(a)に示すように、透光性透明部材10に非遮熱部用シール部材30を取り付けた状態で遮熱性塗料20を繰り返し塗布し、図4(b)に示すように、遮熱性塗料20を塗布した部位の一部をさらに薄層部用シール部材31で被覆する(薄層部用シール部材形成工程)。その後、さらに非遮熱部用シール部材30及び薄層部用シール部材31で被覆されていない部位に遮熱性塗料20を塗布する。
【0029】
そして、遮熱性塗料20を塗布する工程が完了したら、図5に示すように、非遮熱部用シール部材30及び薄層部用シール部材31を除去する(非遮熱部用シール部材除去工程及び薄層部用シール部材除去工程)。
【0030】
これにより、図5に示すように、可視光線を遮断する厚層部50と可視光線をほぼ完全に透過させる非遮熱部60とを形成するだけでなく、厚層部50に対して相対的に可視光線が透過可能な薄層部70をも形成することができる。これにより、3種の見栄えが異なる部位を形成することで、透光性透明部材10にさらに意匠性を付与することができる。また、当然ながら厚層部50及び薄層部70によって断熱性能を得ることもできる。
【0031】
勿論、透光性透明部材10に遮熱性塗料20を塗布することによって、透光性透明部材10を透過する太陽光の透過量を適量に制御することができる効果も奏する。
【0032】
〔実施例3〕
実施例3における塗布手順を説明する。
図6(a)に示す透光性透明部材100の屋外α側の表面に対して、図6(b)に示すように、所定間隔で非遮熱部用シール部材110を縦向きに貼着する。そしてその上で、透光性透明部材100の屋外α側の表面(全領域)に遮熱性塗料20を塗布する。
【0033】
遮熱性塗料20の塗布及び乾燥が完了したら非遮熱部用シール部材110を除去すれば、図7に示すように、厚層部120と非遮熱部130とがゼブラ模様のように交互に現れる縦縞調の透光性透明部材100とすることができる。
【0034】
この場合、厚層部120及び非遮熱部130の縦長や横幅、あるいは間隔等によって透光性透明部材100における太陽光の透過量を適正に制御することができる。
【0035】
ここで、透光性透明部材100にさらに遮熱性塗料20を塗布することで、非遮熱部130の全部または一部を薄層部としてもよい。
【0036】
〔実施例4〕
実施例4における塗布手順を説明する。
図8(a)に示すように、透光性透明部材150にレンガ積み壁調の目地のような薄板状の型枠シートとして機能する非遮熱部用シール部材160を貼着する。そして透光性透明部材150に遮熱性塗料20を塗布する。
【0037】
遮熱性塗料20の塗布及び乾燥が完了したら、薄板状の型枠シートとして機能する非遮熱部用シール部材160を除去すれば、図8(b)に示すように、厚層部170と非遮熱部180とによってレンガ模様のように着色された透光性透明部材150とすることができる。なお、透光性透明部材150が臨む室内空間β内の様子は、非遮熱部180を介して視認することができる。
【0038】
この場合もまた、厚層部170及び非遮熱部180の縦長や横幅、あるいは間隔等によって透光性透明部材150における太陽光の透過量を適正に制御することができる。
【0039】
上記実施例において、厚層部50や薄層部70は均一な厚みである必要はなく、部分的により厚みが増したり減少したりした状態であっても構わない。また、意匠性の付与のために、例えば遮熱性塗料20の塗布の際に意図的に凹凸を設けるといった構成であっても構わない。
【0040】
また、透光性透明部材10には、居室や工場や倉庫に設けられた窓ガラス(網入りも含む)や、天窓やカーポート等の屋根や庇に使用される透明性の樹脂部材も含まれる。
【0041】
また、遮熱性塗料20には、ガラス等の割れ防止の材料をあらかじめ添加してもよい。かかる構成とすることにより、遮熱性塗料20を塗布することで新たな機能を透光性透明部材10に付加することができるため、透光性透明部材全体を新しいものに交換する必要がなくなる利点がある。
【0042】
また、透光性透明部材10において、例えば窓ガラスで構成される場合にあらかじめブラスト処理や削り加工が施されていてもよい。
【0043】
厚層部50や薄層部70は、窓枠から外して平置きした窓ガラス等の透光性透明部材10の屋外α側の面に遮熱性塗料20を垂れ流して延展させてこれにより薄膜を形成し、それを乾燥させる手法でもよい。
【0044】
また、透光性透明部材10に形成する厚層部50と薄層部70とで構成されるデザインとしては、横縞調、縦縞調、格子調、あるいはレンガ積み壁調のものが提案され、もちろんその他のものであってもよい。
【0045】
なお、遮熱性材料を薄膜状に配することには、遮熱性塗料を薄膜状に塗布することも、薄板状の遮熱性シートを配することも含まれる。
【0046】
〔実施例5〕
実施例5における塗布手順を説明する。
図9に示すように、透光性透明部材200に遮熱性塗料20を塗布し、遮熱性塗料20を薄膜状に配する(薄膜形成工程)。
【0047】
そして再度、薄膜状に配された遮熱性塗料20の上から遮熱性塗料20を塗布し、当該遮熱性塗料20に対して、透光性を有する意匠性材料としての和紙210を所定部位に貼着する(意匠性材料配置工程)。なお、和紙210は、当該遮熱性塗料20が接着成分となって良好に貼着することができるが、遮熱性塗料20が乾燥する前に和紙210が当該遮熱性塗料20に配されると、和紙210が遮熱性塗料20に貼着されやすい。
【0048】
かかる構成にあって、透光性透明部材200に遮熱性塗料20及び和紙210を配することにより、透光性透明部材200における太陽光の透過量を適正に制御することができ、透光性透明部材200に意匠性を施すこともできる。
【0049】
ここで、透光性を有する意匠性材料としては、和紙以外にも、布等の人工物、貝殻等の自然物、金箔や銀箔等の金属箔等が提案される。また、意匠性材料はそのまま使用されてもよいし、所定形状に成形されたものであっても構わない。
【0050】
なお、薄膜形成工程は1回でもよいし、薄膜状に配された遮熱性塗料20が所定の厚みとなるまで複数回繰り返し実行されても構わない。また、和紙210を貼着した後に更に遮熱性塗料20を塗布することを繰り返してもよい。
【0051】
〔実施例6〕
実施例6における塗布手順を説明する。
図10に示すように、透光性透明部材220に遮熱性塗料20を塗布し、遮熱性塗料20を薄膜状に配する(薄膜形成工程)。
【0052】
次に、遮熱性塗料20が配された所定の部位に透光性を有する意匠性材料としての和紙210を配置する(意匠性材料配置工程)。それとともに、和紙210の上から再度遮熱性塗料20を塗布して遮熱性塗料20を薄膜状に配する(薄膜再形成工程)とともに、和紙210を遮熱性透明部材220の上に貼着する。
【0053】
かかる構成とすることにより、和紙210は、薄膜再形成工程において配される遮熱性塗料20によって透光性透明部材220上に配されることとなる。
【0054】
透光性透明部材220に遮熱性塗料20及び和紙210を配することにより、透光性透明部材220における太陽光の透過量を適正に制御することができ、透光性透明部材220に意匠性を施すこともできる。
【0055】
なお、薄膜形成工程は1回でもよいし、薄膜状に配された遮熱性塗料20が所定の厚みとなるまで複数回繰り返し実行されても構わない。
【0056】
〔実施例7〕
実施例7における塗布手順を説明する。
図11に示すように、透光性透明部材230に遮熱性塗料20を一度塗布し、遮熱性塗料20を薄膜状に配する。
【0057】
次に、遮熱性塗料20が配された部位のうち、所定の部位に再度遮熱性塗料20を塗布する(薄膜形成工程)。なお、かかる遮熱性塗料20には、透光性を有する意匠性材料としての金箔240が含有されている。
【0058】
これにより、透光性透明部材230の所定部位に金箔240が配され、透光性透明部材230における太陽光の透過量を適正に制御することができ、透光性透明部材230に意匠性を施すこともできる。
【0059】
なお、金箔240は透光性透明部材230の所定部位のみに配されてもよいし、全面に配されていても構わない。
【0060】
また、薄膜形成工程は1回でもよいし、薄膜状に配された遮熱性塗料20が所定の厚みとなるまで複数回繰り返し実行されても構わない。
【0061】
次に、遮熱性塗料20の塗工手順において、隣り合う塗工部分の重なり部位が生じてしまわない手法について説明する。
例えば上述の各実施例1~7において、スポンジローラーや刷毛を用いて透光性透明部材320に遮熱性塗料20を配する場合にあっては、スポンジローラーや刷毛の両端部において遮熱性塗料が重複して塗布されてしまう場合がある。本発明においては透明な透光性透明部材320に濁って着色された遮熱性塗料20を配するために、このように重複された部位で重ね塗りムラが生じて意図しない汚れた配色・デザインとなってしまう原因となる。
【0062】
そこで、図12(a)に示すように、既に形成されている遮熱性塗料20に、重ねムラが生じないようにすべく、既に形成された遮熱性塗料20の端縁を基準として幅L2の間隔をおいてシール部材310,310をまず配する。そして、図12(b)に示すように、幅L2の幅よりも広い幅L1のスポンジローラー300で、未塗装部分に遮熱性塗料20を塗布する。そして、かかる手順を繰り返し実行することにより、図12(c)および図13(d)~(g)に示すように、透光性透明部材320に対して、重ね塗りムラを生じさせることなく、遮熱性塗料20の層を順次、隣接して塗工していくことが可能となる。
【0063】
また、上述した各実施例において、遮熱性塗料20を薄膜状に配する場合、透光性透明部材の屋外α側に限らず、室内空間β側に配しても構わない。
【符号の説明】
【0064】
10,100,150 透光性透明部材
20 遮熱性塗料(遮熱性材料)
30 非遮熱部用シール部材
31 薄層部用シール部材
50,120,170 厚層部
60,130,180 非遮熱部
70 薄層部
α 屋外(外部空間)
β 室内空間
図1
図2
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図6
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図10
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図13