(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084694
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】アルミノケイ酸塩ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 3/087 20060101AFI20240618BHJP
C03C 3/089 20060101ALI20240618BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20240618BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20240618BHJP
C03C 3/11 20060101ALI20240618BHJP
C03B 17/06 20060101ALI20240618BHJP
C03B 18/02 20060101ALI20240618BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C03C3/087
C03C3/089
C03C3/091
C03C3/093
C03C3/11
C03B17/06
C03B18/02
A61J1/05 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023187677
(22)【出願日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】22213060
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルテ グリム
(72)【発明者】
【氏名】ライナー エルヴィン アイヒホルツ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ホーホライン
(72)【発明者】
【氏名】ズザンネ クリューガー
【テーマコード(参考)】
4C047
4G062
【Fターム(参考)】
4C047AA02
4C047AA05
4C047AA27
4C047BB01
4C047FF10
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4G062NN34
(57)【要約】
【課題】医薬品の一次包装として使用するために適しており、中性的な白色の印象を有する高い透明性を示し、あまり費用のかからない原料を用いて製造可能であるガラスを提供する。
【解決手段】以下の成分: SiO2 64.5~73.0; Al2O3 4.0 11.0; B2O3 0~0.2; Na2O 0~3.5; K2O 0~4.0; MgO 0.1~7.0; CaO 3.0~15.0; SrO 0~10.0; BaO 0~5.0; ZnO 0~0.5; R2O 0.1~7.5; RO >15.0~22.5を示された量(モル%)で含むガラスであって、ここでR2OはNa2OおよびK2Oのモル量の合計を示し、且つROはMgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOのモル量の合計を示す、前記ガラス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
成分 最小 最大
SiO2 64.5 73.0
Al2O3 4.0 11.0
B2O3 0 0.2
Na2O 0 3.5
K2O 0 4.0
MgO 0.1 7.0
CaO 3.0 15.0
SrO 0 10.0
BaO 0 5.0
ZnO 0 0.5
R2O 0.1 7.5
RO >15.0 22.5
を示された量(モル%)で含むガラスであって、ここでR2OはNa2OおよびK2Oのモル量の合計を示し、且つROはMgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOのモル量の合計を示す、前記ガラス。
【請求項2】
ROのモル量とAl2O3のモル量との比が1.4:1~5:1の範囲である、請求項1に記載のガラス。
【請求項3】
SiO2のモル量のROのモル量に対する比が3:1~4.5:1の範囲である、請求項1または2に記載のガラス。
【請求項4】
Al2O3のモル量とCaOのモル量との比が0.3:1~3:1の範囲である、請求項1から3までのいずれか1項に記載のガラス。
【請求項5】
TiO2のモル量が最大0.5モル%であり、且つ/またはLi2Oのモル量が最大0.5モル%である、請求項1から4までのいずれか1項に記載のガラス。
【請求項6】
ZrO2のモル量が最大6.0モル%である、請求項1から5までのいずれか1項に記載のガラス。
【請求項7】
R2Oのモル量とAl2O3のモル量との比が最大1:1である、請求項1から6までのいずれか1項に記載のガラス。
【請求項8】
ROのモル量とR2Oのモル量との比が少なくとも2.5:1である、請求項1から7までのいずれか1項に記載のガラス。
【請求項9】
R2OおよびBaOのモル量の合計が0.75~7.0モル%の範囲である、請求項1から8までのいずれか1項に記載のガラス。
【請求項10】
MoO3のモル量が100ppm未満である、請求項1から9までのいずれか1項に記載のガラス。
【請求項11】
前記ガラスが、以下の成分:
成分 最小 最大
SiO2 66.5 71.0
Al2O3 7.0 10.5
B2O3 0 0.1
Na2O 0.1 3.0
K2O 0 3.0
MgO 1.0 4.0
CaO 4.0 14.0
SrO 0 9.0
BaO 0 4.5
ZnO 0 0.1
R2O 0.1 5.5
RO 15.5 21.5
を示された量(モル%)で含む、請求項1から10までのいずれか1項に記載のガラス。
【請求項12】
前記ガラスが、ISO 720-1985(E)に準拠するHGA1限界の75%未満に相応する耐加水分解性を有する、請求項1から11までのいずれか1項に記載のガラス。
【請求項13】
前記ガラスが勾配炉内で60分間、昇温レジームで熱処理される場合、最大結晶化速度KGmaxが、1035℃~1405℃の温度範囲で最大0.75μm/分である、請求項1から12までのいずれか1項に記載のガラス。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載のガラスの製造方法であって、ガラス溶融物をダウンドロー、オーバーフローフュージョン、リドロー、フローティング、または管引き抜き法によって加工する段階を含む、前記方法。
【請求項15】
医薬品の一次包装としての、請求項1から13までのいずれか1項に記載のガラスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は優れた耐加水分解性および低い失透傾向を有するアルミノケイ酸塩ガラスに関する。本発明は前記ガラスの製造方法、および特に医薬品包装のための前記ガラスの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野、特に医薬品分野において使用されるガラス物品は厳しい品質基準を満たさなければならない。医薬品の一次包装のための物品、例えばバイアル、アンプル、カートリッジおよびシリンジは高い透明性、良好な滅菌性および優れた化学的耐久性を示さなければならない。さらに、前記ガラスは、それに含まれるかまたはそれと接触する材料の品質が、規定された閾値を超えるように変化してはならず、つまり、ガラス材料は、例えば含有される薬剤の有効性および安定性を損なうかまたはさらにはそれを有毒にする量でいかなる物質も放出してはならない。
【0003】
従って、医薬品容器のために改善された耐加水分解性を有するガラスを提供することが望まれる。望まれるそのようなガラスは特に、高い透明性を示すべきであると共に費用効率良く製造可能であるべきである。
【0004】
医薬品産業においてよく使用されるガラスはホウケイ酸ガラス(いわゆる中性ガラス)であり、主成分は酸化ケイ素および酸化ホウ素であるが、アルミニウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属も含有することがある。
【0005】
アルミノケイ酸塩ガラスも知られている。しかしながら、従来技術から知られているアルミノケイ酸塩ガラスの欠点は、それらが例えばホウケイ酸ガラスに比して低い耐加水分解性を提供することである。従来技術のアルミノケイ酸塩ガラスの他の欠点は、高い透明性を有するガラスを提供するために、費用のかかる原料が必要とされることである。あまり費用のかからない原料が使用される場合、ガラスは望ましくない色合いを示すことが多い。
【0006】
従来技術において頻繁に遭遇する他の問題は、耐加水分解性を改善する手段が同時に、ガラスの失透傾向の増加と関連することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、従来技術の上述の欠点を回避し、医療分野、特に医薬品分野における厳しい品質基準を満たすガラスを提供することである。特に、前記ガラス物品は医薬品の一次包装として使用するために適しており、中性的な白色の印象を有する高い透明性を示すと共に、あまり費用のかからない原料を用いて製造可能であるべきである。前記ガラスは管引き抜き法によって良好に加工可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題は、本願内に開示される主題によって解決される。
【0009】
発明の詳細
本発明は優れた耐加水分解性を有するガラスを提供する。従って、前記ガラスは医療分野、特に医薬品分野における厳しい品質基準を満たす。本発明のガラスは、非常に低い失透傾向を有する。従って、前記ガラスは管引き抜き法によって良好に加工され得る。本発明のガラスはあまり費用のかからない原料を用いて製造されることができ、且つ依然として非常に低い色合いを提供して中性的な白色の印象をもたらす。
【0010】
好ましくは、本発明のガラスは、以下の成分を示された量(酸化物に基づくモル%)で含む:
【表1】
ここで、R
2OはNa
2OおよびK
2Oのモル量の合計を示し、且つROはMgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOのモル量の合計を示す。
【0011】
本発明のガラスはアルミノケイ酸塩ガラスであり、つまりそれは本質的な量のSiO2およびAl2O3を含有する。前記ガラスはさらにアルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物を含む。他の成分は任意に存在する。前記ガラスは非常に限られた量のB2O3のみを含むか、または好ましくはB2O3不含である。
【0012】
SiO2の量が非常に少ない場合、化学的耐久性、特に耐加水分解性が低下することがある。SiO2の量が非常に多い場合、加工温度(ドイツ語の「Verarbeitungstemperatur(VA)」)が上昇するので、製造が損なわれることがある。好ましくは、SiO2の量は64.5~73.0モル%、より好ましくは65.0~72.5モル%、より好ましくは66.0~72.0モル%、より好ましくは66.5~71.0モル%、より好ましくは67.0~70.0モル%の範囲である。SiO2の量は好ましくは少なくとも64.5モル%、より好ましくは少なくとも65.0モル%、より好ましくは少なくとも66.0モル%、より好ましくは少なくとも66.5モル%、より好ましくは少なくとも67.0モル%である。SiO2の量は好ましくは最大73.0モル%、より好ましくは最大72.5モル%、より好ましくは最大72.0モル%、より好ましくは最大71.0モル%、より好ましくは最大70.0モル%である。
【0013】
Al2O3の量は非常に多くてはならず、なぜなら、アルミノケイ酸塩ガラスはホウケイ酸ガラスに比して高い溶融温度を有することが多いからである。Al2O3の量が非常に多いと、特に、ガラスが溶融困難になることがあり、より高いエネルギー入力が必要となることがあり、且つ/または高められた加工温度に起因して成形が困難になることがある。さらには、Al2O3の量が非常に多いと、失透傾向が高められることがある。対照的に、Al2O3の量が非常に少ないと、化学的耐久性が損なわれることがある。好ましくは、Al2O3の量は4.0~11.0モル%、より好ましくは5.0~10.8モル%、より好ましくは6.0~10.6モル%、より好ましくは6.5~10.5モル%、より好ましくは7.0~10.5モル%、より好ましくは7.0~10.4モル%、より好ましくは8.0~10.2モル%の範囲である。好ましくは、Al2O3の量は少なくとも4.0モル%、より好ましくは少なくとも5.0モル%、より好ましくは少なくとも6.0モル%、より好ましくは少なくとも6.5モル%、より好ましくは少なくとも7.0モル%、より好ましくは少なくとも8.0モル%である。好ましくは、Al2O3の量は最大11.0モル%、より好ましくは最大10.8モル%、より好ましくは最大10.6モル%、より好ましくは最大10.5モル%、より好ましくは最大10.4モル%、より好ましくは最大10.2モル%である。
【0014】
本発明のガラスは非常に限られた量のB2O3を含む。B2O3のモル量は好ましくは最大0.2モル%、より好ましくは最大0.15モル%、より好ましくは最大0.1モル%、より好ましくは最大0.05モル%である。さらにより好ましくは、本発明のガラスはB2O3不含である。
【0015】
アルカリ金属酸化物は、限られた量で使用される場合、耐失透性を改善する。多量のアルカリ金属酸化物は好ましくなく、逆効果を有することがある。これは特にNa2Oについて該当する。さらに、多量のアルカリ金属酸化物によって耐加水分解性が損なわれることがある。ガラス中で一般に使用されるアルカリ金属酸化物はLi2O、Na2OおよびK2Oである。しかしながら、本発明のガラスはLi2Oを例えば0.1モル%~0.5モル%の量で含み得る一方で、前記ガラスは好ましくはLi2O不含である。Li2Oは費用の増加と関連し、特にリチウムイオン電池などの代替用途に起因して、その利用可能性が限られていることがある。好ましくは、Li2Oの量は最大0.5モル%、より好ましくは最大0.2モル%、より好ましくは最大0.1モル%である。より好ましくは、前記ガラスはLi2O不含である。
【0016】
上記に鑑み、本開示内で使用される「R2O」との用語は、Na2OおよびK2Oのモル量の合計に関する。好ましくは、R2Oの量は0.1~7.5モル%、より好ましくは0.1~7.0モル%、より好ましくは0.1~6.5、より好ましくは0.1~6.0モル%、より好ましくは0.1~5.5モル%、より好ましくは0.2~5.0モル%、例えば0.5~5.0モル%、1.0~5.0モル%、1.5~5.0モル%、2.0~5.0モル%、2.5~5.0モル%、3.0~5.0モル%、3.5~5.0モル%、または0.2~3.5モル%、0.2~3.0モル%、0.2~2.5モル%、0.2~2.0モル%、0.2~1.5モル%、0.2~1.0モル%、または0.2~0.5モル%の範囲である。R2Oの量は好ましくは少なくとも0.1モル%、より好ましくは少なくとも0.2モル%、例えば少なくとも0.5モル%、少なくとも1.0モル%、少なくとも1.5モル%、少なくとも2.0モル%、少なくとも2.5、少なくとも3.0モル%、または少なくとも3.5モル%である。R2Oの量は好ましくは最大7.5モル%、より好ましくは最大7.0モル%、より好ましくは最大6.5モル%、より好ましくは最大6.0モル%、より好ましくは最大5.5モル%、より好ましくは最大5.0モル%、例えば最大3.5モル%、最大3.0モル%、最大2.5モル%、最大2.0モル%、最大1.5モル%、最大1.0モル%、または最大0.5モル%である。
【0017】
好ましくは、Na2Oの量は0~3.5モル%、より好ましくは0.1~3.0モル%、より好ましくは0.2~2.75モル%、例えば0.5~2.75モル%、1.0~2.75モル%、1.5~2.75モル%、または0.2~1.5モル%、0.2~1.0モル%、または0.2~0.5モル%の範囲である。好ましくは、Na2Oの量は少なくとも0.1モル%、より好ましくは少なくとも0.2モル%、例えば少なくとも0.5モル%、少なくとも1.0モル%、または少なくとも1.5モル%である。好ましくは、Na2Oの量は最大3.5モル%、より好ましくは最大3.0モル%、より好ましくは最大2.75モル%、例えば最大1.5モル%、最大1.0モル%、または最大0.5モル%である。いくつかの実施態様において、本発明のガラスはNa2O不含であってよい。
【0018】
好ましくは、K2Oの量は0~4.0モル%、より好ましくは0~3.5モル%、より好ましくは0~3.0モル%、例えば0.1~3.0モル%、0.2~3.0モル%、0.5~3.0モル%、1.0~3.0モル%、1.5~3.0モル%、または0~1.5モル%、0~1.0モル%、0~0.5モル%、0~0.2モル%、または0~0.1モル%の範囲である。K2Oの量は例えば少なくとも0.1モル%、少なくとも0.2モル%、少なくとも0.5モル%、少なくとも1.0モル%、または少なくとも1.5モル%であってよい。好ましくは、K2Oの量は最大4.0モル%、より好ましくは最大3.5モル%、より好ましくは最大3.0モル%、例えば最大1.5モル%、最大1.0モル%、最大0.5モル%、最大0.2モル%、または最大0.1モル%である。いくつかの実施態様において、本発明のガラスはK2O不含である。
【0019】
耐失透性をさらに改善するために、Na2OとK2Oとの比を最適化することができる。いくつかの実施態様において、Na2Oは唯一のアルカリ金属酸化物であり、且つ前記ガラスはK2O不含である。そのような実施態様において、Na2Oのモル量のR2Oのモル量に対する比は1:1である。他の実施態様において、Na2OとK2Oとの両方がガラス中に存在する。そのような実施態様において、Na2OとK2Oとが同等の量で存在して、Na2Oのモル量のR2Oのモル量に対する比が比較的0.5:1に近いことが好ましい。好ましくは、Na2Oのモル量のR2Oのモル量に対する比は0.1:1~1:1、例えば0.2:1~0.8:1、0.3:1~0.7:1、または0.4:1~0.6:1の範囲である。好ましくは、Na2Oのモル量のR2Oのモル量に対する比は少なくとも0.1:1、例えば少なくとも0.2:1、少なくとも0.3:1、または少なくとも0.4:1である。Na2Oのモル量のR2Oのモル量に対する比は最大1:1、例えば最大0.9:1、最大0.8:1、最大0.7:1、または最大0.6:1である。
【0020】
アルカリ土類金属酸化物は特に高い耐失透性を達成するために有利である。アルカリ土類金属酸化物はガラスの粘度を調整するためにも役立つ(溶融挙動の最適化)。アルカリ土類金属酸化物はガラスの融点を下げることができるので、ガラスを少ないエネルギーで溶融することができる。
【0021】
ガラス中で一般に使用されるアルカリ土類金属酸化物はMgO、CaO、SrOおよびBaOである。本願内で使用される「RO」との用語は、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOのモル量の合計に関する。ROの量が非常に少ない場合、耐失透性が損なわれることがある。ROの量が非常に多い場合、耐加水分解性が損なわれることがある。
【0022】
好ましくは、ROの量は>15.0~22.5モル%、より好ましくは15.25~22.0モル%、より好ましくは15.5~21.5モル%、より好ましくは15.75~20.75モル%、より好ましくは16.0~20.0モル%、例えば16.0~19.5モル%、16.0~19.0モル%、16.0~18.5モル%、16.0~18.0モル%、16.0~17.5モル%、または16.0~17.0モル%の範囲である。ROの量は好ましくは15.0モル%より多く、より好ましくは少なくとも15.25モル%、より好ましくは少なくとも15.5モル%、より好ましくは少なくとも15.75モル%、より好ましくは少なくとも16.0モル%である。ROの量は好ましくは最大22.5モル%、より好ましくは最大22.0モル%、より好ましくは最大21.5モル%、より好ましくは最大20.75モル%、より好ましくは最大20.0モル%、例えば最大19.5モル%、最大19.0モル%、最大18.5モル%、最大18.0モル%、最大17.5モル%、または最大17.0モル%である。
【0023】
CaOはアルカリ土類金属酸化物であり、ガラスの粘度を調整するために役立つ(溶融挙動の最適化)。CaOはガラスの融点を下げるので、ガラスを少ないエネルギーで溶融することができる。しかしながら、非常に多量のCaOは耐加水分解性を損なうことがある。好ましくは、CaOの量は3.0~15.0モル%、より好ましくは3.5モル%~14.5モル%、より好ましくは4.0~14.0モル%、より好ましくは4.5モル%~13.75モル%、より好ましくは5.0~13.5モル%、例えば5.0モル%~12.5モル%、5.0モル%~10.0モル%、5.0モル%~8.0モル%、5.0モル%~6.0モル%、または6.0モル%~13.5モル%、8.0モル%~13.5モル%、10.0モル%~13.5モル%、または12.5モル%~13.5モル%の範囲である。CaOの量は好ましくは少なくとも3.0モル%、より好ましくは少なくとも3.5モル%、より好ましくは少なくとも4.0モル%、より好ましくは少なくとも4.5モル%、より好ましくは少なくとも5.0モル%、例えば少なくとも6.0モル%、少なくとも8.0モル%、少なくとも10.0モル%、または少なくとも12.5モル%である。CaOの量は好ましくは最大15.0モル%、より好ましくは最大14.5モル%、より好ましくは最大14.0モル%、より好ましくは最大13.75モル%、より好ましくは最大13.5モル%、例えば最大12.5モル%、最大10.0モル%、最大8.0モル%、または最大6.0モル%である。
【0024】
MgOはガラスの粘度を調整するために特に有利であることができる。MgOはガラスの融点を低下させ、ガラスがより良好に溶融することを助ける。MgOは、適度な量で使用される場合、耐加水分解性を改善できる。しかしながら、MgOの量が多いと、耐失透性が損なわれることがある。好ましくは、MgOの量は0.1~7.0モル%、より好ましくは0.2~7.0モル%、より好ましくは0.4~7.0モル%、より好ましくは0.6~6.0モル%、より好ましくは0.8~5.0モル%、より好ましくは1.0~4.5モル%、より好ましくは1.0~4.0モル%、より好ましくは1.5~3.75モル%、より好ましくは2.0~3.5モル%の範囲である。MgOの量は好ましくは少なくとも0.1モル%、より好ましくは少なくとも0.2モル%、より好ましくは少なくとも0.4モル%、より好ましくは少なくとも0.6モル%、より好ましくは少なくとも0.8モル%、より好ましくは少なくとも1.0モル%、より好ましくは少なくとも1.5モル%、より好ましくは少なくとも2.0モル%である。MgOの量は好ましくは最大7.0モル%、より好ましくは最大6.0モル%、より好ましくは最大5.0モル%、より好ましくは最大4.5モル%、より好ましくは最大4.0モル%、より好ましくは最大3.75モル%、より好ましくは最大3.5モル%である。
【0025】
耐失透性をさらに改善するために、CaOのモル量のMgOのモル量に対する比を最適化することができる。好ましくは、CaOのモル量のMgOのモル量に対する比は0.5:1~50:1、より好ましくは0.8:1~30:1、より好ましくは1:1~25:1、より好ましくは1.1:1~20:1、より好ましくは1.2:1~15:1、より好ましくは1.3:1~10:1、より好ましくは1.5:1~7.5:1の範囲である。好ましくは、CaOのモル量のMgOのモル量に対する比は少なくとも0.5:1、より好ましくは少なくとも0.8:1、より好ましくは少なくとも1:1、より好ましくは少なくとも1.1:1、より好ましくは少なくとも1.2:1、より好ましくは少なくとも1.3:1、より好ましくは少なくとも1.5:1である。好ましくは、CaOのモル量のMgOのモル量に対する比は最大50:1、より好ましくは最大30:1、より好ましくは最大25:1、より好ましくは最大20:1、より好ましくは最大15:1、より好ましくは最大10:1、より好ましくは最大7.5:1である。
【0026】
好ましくは、MgOのモル量のROのモル量に対する比は0.01:1~0.45:1の範囲、より好ましくは0.02:1~0.35:1、より好ましくは0.05:1~0.25:1、より好ましくは0.1:1~0.2:1の範囲である。好ましくは、MgOのモル量のROのモル量に対する比は少なくとも0.01:1、より好ましくは少なくとも0.02:1、より好ましくは少なくとも0.05:1、より好ましくは少なくとも0.1:1である。好ましくは、MgOのモル量のROのモル量に対する比は最大0.45:1、より好ましくは最大0.35:1、より好ましくは最大0.25:1、より好ましくは最大0.2:1である。
【0027】
好ましくは、CaOのモル量のROのモル量に対する比は0.15:1~0.95:1、より好ましくは0.2:1~0.9:1、より好ましくは0.25:1~0.8:1、より好ましくは0.3:1~0.75:1、例えば0.3:1~0.7:1、0.3:1~0.6:1、0.3:1~0.5:1、0.3:1~0.4:1、または0.4:1~0.75:1、0.5:1~0.75:1、0.6:1~0.75:1、または0.7:1~0.75:1の範囲である。好ましくは、CaOのモル量のROのモル量に対する比は少なくとも0.15:1、より好ましくは少なくとも0.2:1、より好ましくは少なくとも0.25:1、より好ましくは少なくとも0.3:1、例えば少なくとも0.4:1、少なくとも0.5:1、少なくとも0.6:1、または少なくとも0.7:1である。好ましくは、CaOのモル量のROのモル量に対する比は最大0.95:1、より好ましくは最大0.9:1、より好ましくは最大0.8:1、より好ましくは最大0.75:1、例えば最大0.7:1、最大0.6:1、最大0.5:1、または最大0.4:1である。
【0028】
好ましくは、MgOおよびCaOのモル量の合計の、ROのモル量に対する比は0.25:1~0.95:1、より好ましくは0.3:1~0.9:1、より好ましくは0.4:1~0.85:1、例えば0.4:1~0.8:1、0.4:1~0.7:1、0.4:1~0.6:1、0.4:1~0.5:1、または0.5:1~0.85:1、0.6:1~0.85:1、0.7:1~0.85:1、または0.8:1~0.85:1の範囲である。好ましくは、MgOおよびCaOのモル量の合計の、ROのモル量に対する比は少なくとも0.25:1、より好ましくは少なくとも0.3:1、より好ましくは少なくとも0.4:1、例えば少なくとも0.5:1、少なくとも0.6:1、少なくとも0.7:1、または少なくとも0.8:1である。好ましくは、MgOおよびCaOのモル量の合計の、ROのモル量に対する比は最大0.95:1、より好ましくは最大0.9:1、より好ましくは最大0.85:1、例えば最大0.8:1、最大0.7:1、最大0.6:1、または最大0.5:1である。
【0029】
SrOの量は好ましくは0~10.0モル%、より好ましくは0~9.5モル%、より好ましくは0~9.0モル%、より好ましくは0~8.5モル%、例えば0.1~8.5モル%、0.2~8.5モル%、0.5~8.5モル%、1.0~8.5モル%、2.0~8.5モル%、3.0~8.5モル%、4.0~8.5モル%、5.0~8.5モル%、6.0~8.5モル%、7.0~8.5モル%、または0~7.0モル%、0~6.0モル%、0~5.0モル%、0~4.0モル%、0~3.0モル%、0~2.0モル%、0~1.0モル%、0~0.5モル%、0~0.2モル%、または0~0.1モル%の範囲である。好ましくは、SrOの量は少なくとも0.1モル%、例えば少なくとも0.2モル%、少なくとも0.5モル%、少なくとも1.0モル%、少なくとも2.0モル%、少なくとも3.0モル%、少なくとも4.0モル%、少なくとも5.0モル%、少なくとも6.0モル%、または少なくとも7.0モル%である。好ましくは、SrOの量は最大10.0モル%、より好ましくは最大9.5モル%、より好ましくは最大9.0モル%、より好ましくは最大8.5モル%、例えば最大7.0モル%、最大6.0モル%、最大5.0モル%、最大4.0モル%、最大3.0モル%、最大2.0モル%、最大1.0モル%、最大0.5モル%、最大0.2モル%、または最大0.1モル%である。いくつかの実施態様において、前記ガラスはSrO不含であってよい。
【0030】
BaOの量は好ましくは0~5.0モル%、より好ましくは0~4.5モル%、例えば0.1~4.5モル%、0.2~4.5モル%、0.5~4.5モル%、1.0~4.5モル%、2.0~4.5モル%、3.0~4.5モル%、3.5~4.5モル%、または0~3.5モル%、0~3.0モル%、0~2.0モル%、0~1.0モル%、0~0.5モル%、0~0.2モル%、または0~0.1モル%の範囲である。BaOの量は例えば少なくとも0.1モル%、少なくとも0.2モル%、少なくとも0.5モル%、少なくとも1.0モル%、少なくとも2.0モル%、少なくとも3.0モル%、または少なくとも3.5モル%であってよい。好ましくは、BaOの量は最大5.0モル%、より好ましくは最大4.5モル%、例えば最大3.5モル%、最大3.0モル%、最大2.0モル%、最大1.0モル%、最大0.5モル%、最大0.2モル%、または最大0.1モル%である。いくつかの実施態様において、前記ガラスはBaO不含であってよい。
【0031】
好ましくは、R2OおよびBaOのモル量の合計は0.1~9.0モル%、より好ましくは0.1~8.5モル%、より好ましくは0.2~8.0モル%、より好ましくは0.5~7.5モル%、より好ましくは0.75~7.0モル%、より好ましくは0.75~6.5モル%、より好ましくは1.0~6.0モル%、より好ましくは1.25~5.5モル%、より好ましくは1.5~5.0モル%、例えば2.0~5.0モル%、2.5~5.0モル%、3.0~5.0モル%、3.5~5.0モル%、4.0~5.0モル%、または1.5~4.0モル%、1.5~3.5モル%、1.5~3.0モル%、1.5~2.5モル%、または1.5~2.0モル%の範囲である。R2OおよびBaOのモル量の合計は好ましくは少なくとも0.1モル%、より好ましくは少なくとも0.2モル%、より好ましくは少なくとも0.5モル%、より好ましくは少なくとも0.75モル%、より好ましくは少なくとも1.0モル%、より好ましくは少なくとも1.25モル%、より好ましくは少なくとも1.5モル%、例えば少なくとも2.0モル%、少なくとも2.5、少なくとも3.0モル%、少なくとも3.5モル%、または少なくとも4.0モル%である。R2OおよびBaOのモル量の合計は好ましくは最大9.0モル%、より好ましくは最大8.5モル%、より好ましくは最大8.0モル%、より好ましくは最大7.5モル%、より好ましくは最大7.0モル%、より好ましくは最大6.5モル%、より好ましくは最大6.0モル%、より好ましくは最大5.5モル%、より好ましくは最大5.0モル%、例えば最大4.0モル%、最大3.5モル%、最大3.0モル%、最大2.5モル%、または最大2.0モル%である。
【0032】
本発明のガラスは非常に限られた量のZnOを含む。ZnOのモル量は好ましくは最大0.5モル%、より好ましくは最大0.2モル%、より好ましくは最大0.15モル%、より好ましくは最大0.1モル%、より好ましくは最大0.05モル%である。さらにより好ましくは、本発明のガラスはZnO不含である。
【0033】
TiO2は化学的耐久性の改善に寄与することができる。しかしながら、特に好ましくは、本発明のガラスはTiO2不含である。TiO2はFe2O3と反応してガラスの黄褐色がかった着色をもたらすことがある。従って、ガラス中のTiO2の量を制限することが好ましい。本発明のガラスは非常に限られた量のみのTiO2を含む。TiO2の量は好ましくは最大0.5モル%、より好ましくは最大0.2モル%、より好ましくは最大0.15モル%、より好ましくは最大0.1モル%、より好ましくは最大0.05モル%である。さらにより好ましくは、本発明のガラスはTiO2不含である。
【0034】
ZrO2は耐加水分解性を高めることができる。特に、ZrO2は、例えば、Ca2+イオンの移動度を下げる[ZrO3]2-およびCa2+の構造単位を形成することによって、ガラスの構造を安定化することができる。しかしながら、多量のZrO2は加工温度を上昇させ、且つ耐失透性を低下させることがある。好ましくは、ZrO2の量は0~6.0モル%、より好ましくは0~5.0モル%、より好ましくは0~4.0モル%、より好ましくは0~3.0モル%、より好ましくは0~2.0モル%、例えば0~1.5モル%、0~1.25モル%、0~1.0モル%、0~0.5モル%、0~0.2モル%、0~0.1モル%、または0.1~2.0モル%、0.2~2.0モル%、0.5~2.0モル%、1.0~2.0モル%、1.25~2.0モル%、または1.5~2.0モル%の範囲である。ZrO2の量は例えば少なくとも0.1モル%、少なくとも0.2モル%、少なくとも0.5モル%、少なくとも1.0モル%、少なくとも1.25モル%、または少なくとも1.5モル%であってよい。ZrO2の量は好ましくは最大6.0モル%、より好ましくは最大5.0モル%、より好ましくは最大4.0モル%、より好ましくは最大3.0モル%、より好ましくは最大2.0モル%、例えば最大1.5モル%、最大1.25モル%、最大1.0モル%、最大0.5モル%、最大0.2モル%、または最大0.1モル%である。いくつかの実施態様において、前記ガラスはZrO2不含である。
【0035】
Clは清澄剤として作用することができる。好ましくは、Clの量は0~2.0モル%、より好ましくは0.1~1.5モル%、より好ましくは0.2~1.0モル%、より好ましくは0.25~0.8モル%、より好ましくは0.3~0.7モル%、より好ましくは0.4~0.6モル%の範囲である。Clの量は例えば少なくとも0.1モル%、少なくとも0.2モル%、少なくとも0.25モル%、少なくとも0.3モル%、または少なくとも0.4モル%である。Clの量は好ましくは最大2.0モル%、より好ましくは最大1.5モル%、より好ましくは最大1.0モル%、より好ましくは最大0.8モル%、より好ましくは最大0.7モル%、より好ましくは最大0.6モル%である。
【0036】
本発明のガラスは非常に限られた量のFを含む。Fの量は好ましくは最大0.5モル%、より好ましくは最大0.2モル%、より好ましくは最大0.15モル%、より好ましくは最大0.1モル%、より好ましくは最大0.05モル%である。さらにより好ましくは、本発明のガラスはF不含である。
【0037】
好ましくは、ROのモル量とAl2O3のモル量との比は1.4:1~5:1、より好ましくは1.45:1~4:1、より好ましくは1.5:1~3:1、より好ましくは1.55:1~2.5:1、より好ましくは1.6:1~2.25:1の範囲である。ROのモル量とAl2O3のモル量との比は好ましくは少なくとも1.4:1、より好ましくは少なくとも1.45:1、より好ましくは少なくとも1.5:1、より好ましくは少なくとも1.55:1、より好ましくは少なくとも1.6:1である。好ましくは、ROのモル量とAl2O3のモル量との比は最大5:1、より好ましくは最大4:1、より好ましくは最大3:1、より好ましくは最大2.5:1、より好ましくは最大2.25:1である。
【0038】
好ましくは、SiO2のモル量のROのモル量に対する比は3:1~4.5:1、より好ましくは3.4:1~4.4:1の範囲である。好ましくは、SiO2のモル量のROのモル量に対する比は少なくとも3:1、より好ましくは少なくとも3.4:1である。好ましくは、SiO2のモル量のROのモル量に対する比は最大4.5:1、より好ましくは最大4.4:1である。
【0039】
好ましくは、Al2O3のモル量とCaOのモル量との比は0.3:1~3:1、より好ましくは0.5:1~2.5:1、より好ましくは0.7:1~2:1の範囲である。好ましくは、Al2O3のモル量とCaOのモル量との比は少なくとも0.3:1、より好ましくは少なくとも0.5:1、より好ましくは少なくとも0.7:1である。好ましくは、Al2O3のモル量とCaOのモル量との比は最大3:1、より好ましくは最大2.5:1、より好ましくは最大2:1である。
【0040】
好ましくは、R2Oのモル量とAl2O3のモル量との比は0.02:1~1:1、より好ましくは0.02:1~0.8:1、より好ましくは0.02:1~0.6:1、例えば0.02:1~0.5:1、0.02:1~0.4:1、0.02:1~0.3:1、0.02:1~0.2:1、0.02:1~0.1:1、または0.1:1~0.6:1、0.2:1~0.6:1、0.3:1~0.6:1、0.4:1~0.6:1、または0.5:1~0.6:1の範囲である。好ましくは、R2Oのモル量とAl2O3のモル量との比は少なくとも0.02:1、例えば少なくとも0.1:1、少なくとも0.2:1、少なくとも0.3:1、少なくとも0.4:1、または少なくとも0.5:1である。好ましくは、R2Oのモル量とAl2O3のモル量との比は最大1:1、より好ましくは最大0.8:1、より好ましくは最大0.6:1、例えば最大0.5:1、最大0.4:1、最大0.3:1、最大0.2:1、または最大0.1:1である。
【0041】
好ましくは、ROのモル量とR2Oのモル量との比は2.25:1~100:1、より好ましくは2.5:1~85:1、より好ましくは2.75:1~75:1、より好ましくは3:1~65:1、例えば3:1~50:1、3:1~25:1、3:1~15:1、3:1~10:1、3:1~7.5:、3.25:1~5:1、または5:1~65:1、7.5:1~65:1、10:1~65:1、15:1~65:1、25:1~65:1、または50:1~65:1の範囲である。好ましくは、ROのモル量とR2Oのモル量との比は少なくとも2.25:1、より好ましくは少なくとも2.5:1、より好ましくは少なくとも2.75:1、より好ましくは少なくとも3:1、より好ましくは少なくとも3.25:1、例えば少なくとも5:1、少なくとも7.5:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、少なくとも25:1、または少なくとも50:1である。好ましくは、ROのモル量とR2Oのモル量との比は最大100:1、より好ましくは最大85:1、より好ましくは最大75:1、より好ましくは最大65:1、例えば最大50:1、最大25:1、最大15:1、最大10:1、最大7.5:1、または最大5:1である。
【0042】
好ましくは、Al2O3のモル量のNa2Oのモル量に対する比は1.5:1~100:1、より好ましくは2:1~75:1、より好ましくは2.5:1~50:1、より好ましくは3:1~35:1、例えば3:1~30:1、3:1~25:1、3:1~20:1、3:1~15:1、3:1~10:1、3:1~7.5:1、3:1~5:1、または5:1~35:1、7.5:1~35:1、10:1~35:1、15:1~35:1、20:1~35:1、25:1~35:1、または30:1~35:1の範囲である。好ましくは、Al2O3のモル量のNa2Oのモル量に対する比は少なくとも1.5:1、より好ましくは少なくとも2:1、より好ましくは少なくとも2.5:1、より好ましくは少なくとも3:1、例えば少なくとも5:1、少なくとも7.5:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、少なくとも20:1、少なくとも25:1、または少なくとも30:1である。好ましくは、Al2O3のモル量のNa2Oのモル量に対する比は最大100:1、より好ましくは最大75:1、より好ましくは最大50:1、より好ましくは最大35:1、例えば最大30:1、最大25:1、最大20:1、最大15:1、最大10:1、最大7.5:1、または最大5:1である。
【0043】
本発明のガラスはアルミノケイ酸塩ガラスである。しかしながら、前記ガラスは他の成分も含む。好ましくは、SiO2およびAl2O3のモル量の合計は69.0~83.0モル%、より好ましくは70.0モル%~82.0モル%、より好ましくは72.0~81.5モル%、より好ましくは74.0~81.0モル%、より好ましくは76.0~80.5モル%の範囲である。好ましくは、SiO2およびAl2O3のモル量の合計は少なくとも69.0モル%、より好ましくは少なくとも70.0モル%、より好ましくは少なくとも72.0モル%、より好ましくは少なくとも74.0モル%、より好ましくは少なくとも76.0モル%である。好ましくは、SiO2およびAl2O3のモル量の合計は最大83.0モル%、より好ましくは最大82.0モル%、より好ましくは最大81.5モル%、より好ましくは最大81.0モル%、より好ましくは最大80.5モル%である。
【0044】
好ましくは、R2OおよびROのモル量の合計は15.5~25.0モル%、より好ましくは16.0~24.5モル%、より好ましくは16.5~24.0モル%、より好ましくは17.0~23.5モル%、より好ましくは17.5~23.0モル%、より好ましくは18.0~22.5モル%、より好ましくは18.5~22.0モル%、より好ましくは19.0~21.5モル%の範囲である。好ましくは、R2OおよびROのモル量の合計は少なくとも15.5モル%、より好ましくは少なくとも16.0モル%、より好ましくは少なくとも16.5モル%、より好ましくは少なくとも17.0モル%、より好ましくは少なくとも17.5モル%、より好ましくは少なくとも18.0モル%、より好ましくは少なくとも18.5モル%、より好ましくは少なくとも19.0モル%である。好ましくは、R2OおよびROのモル量の合計は最大25.0モル%、より好ましくは最大24.5モル%、より好ましくは最大24.0モル%、より好ましくは最大23.5モル%、より好ましくは最大23.0モル%、より好ましくは最大22.5モル%、より好ましくは最大22.0モル%、より好ましくは最大21.5モル%である。
【0045】
一般に、特に医薬品包装の分野においては、中性的な白色の色の印象が望ましい。他の色の印象、特に黄褐色がかった色の印象は一般に望ましくないとみなされ、なぜならそのようなガラスは観察者にとって「悪い」、またはさらには「汚い」ように見えるからである。さらには、ガラスの望ましくない色の印象は、医薬品包装の内容物の適切な検査を阻害することがある。従って、従来技術においては、黄褐色がかった色の印象をみちびくFe-Ti酸化物の形成を回避するために、極めて少ない含有率のFe2O3を有するガラスが製造されていた。従って、Fe2O3の含有率をできるだけ低く保つために、非常に高い純度を有する原料が必要とされていた。そのような原料は非常に高価である。
【0046】
本発明者らは、高純度の非常に高価な原料を使用する必要なく、良好な色の印象を有するガラスを提供するための方策を見出した。特に、本発明のガラスはFe2O3を(モル%に基づき)少なくとも12ppm、例えば少なくとも20ppm、少なくとも30ppm、少なくとも40ppm、50ppmより多く、少なくとも60ppm、少なくとも70ppm、少なくとも80ppm、または少なくとも90ppmの量で含み得る。しかしながら、Fe2O3の量は非常に多くてはならない。好ましくは、前記ガラスはFe2O3を最大0.1モル%(1000ppm)、より好ましくは最大750ppm、より好ましくは最大500ppm、より好ましくは最大250ppm、より好ましくは最大200ppm、より好ましくは最大175ppm、より好ましくは最大150ppm、より好ましくは最大125ppmの含有率で有する。好ましくはFe2O3の量は12~1000ppm、より好ましくは20~750ppm、より好ましくは30~500ppm、より好ましくは40~250ppm、より好ましくは50~200ppm、より好ましくは60~175ppm、より好ましくは70~150ppm、より好ましくは80~125ppm、例えば90~125ppmの範囲である。
【0047】
ガラスの色の印象はCIE 1931色空間による位置によって記述できる。好ましくは、本発明のガラスは、試料厚さ1mmで測定する場合に、CIE 1931色空間によるz値とx値との合計がy値よりも少なくとも1.5倍大きいというものである。そのようなガラスは、望ましくない黄褐色の印象とは程遠い、特に良好な色の印象をもたらす。
【0048】
好ましくは、前記ガラスは、以下の成分を示された量(モル%)で含む:
【表2】
【0049】
本開示において、ガラスが何らかの成分不含である、またはそれらが特定の成分を含有しないと記載される場合、これは、この成分がガラス中に不純物として存在することのみが許容されることを意味する。これは、実質的な量で添加されないことを意味する。実質的ではない量とは、500ppm(モル)未満、好ましくは400ppm(モル)未満、より好ましくは300ppm(モル)未満、より好ましくは200ppm(モル)未満、より好ましくは100ppm(モル)未満、特に好ましくは50ppm(モル)未満、および最も好ましくは10ppm(モル)未満の量である。好ましくは、本発明のガラスはF、MoO3、SnO2および/またはCeO2不含である。
【0050】
本発明のガラスは優れた透過率を有する。好ましくは、前記ガラスは波長400nmで、試料厚さ1mmで85%を上回る、より好ましくは90%を上回る透過率を有する。好ましくは、前記ガラスは波長495nmで、試料厚さ1mmで85%を上回る、より好ましくは90%を上回る透過率を有する。好ましくは、前記ガラスは波長670nmで、試料厚さ1mmで85%を上回る、より好ましくは90%を上回る透過率を有する。好ましくは、前記ガラスは波長400nmで、試料厚さ10mmで75%を上回る、より好ましくは85%を上回る透過率を有する。好ましくは、前記ガラスは波長495nmで、試料厚さ10mmで75%を上回る、より好ましくは85%を上回る透過率を有する。好ましくは、前記ガラスは波長670nmで、試料厚さ10mmで75%を上回る、より好ましくは85%を上回る透過率を有する。好ましくは、前記ガラスは試料厚さ1mmで、400nmに比して495nmで最大5%高い透過率を有する。好ましくは、前記ガラスは試料厚さ10mmで、400nmに比して495nmで最大5%高い透過率を有する。好ましくは、前記ガラスは試料厚さ1mmに比して、試料厚さ10mmで最大5%低い、400nmでの透過率を有する。
【0051】
好ましくは、前記ガラスは波長400nmおよび495nmおよび670nmで、試料厚さ1mmで85%を上回る、より好ましくは90%を上回る透過率を有する。好ましくは、前記ガラスは波長400nmおよび495nmおよび670nmで、試料厚さ10mmで75%を上回る、より好ましくは85%を上回る透過率を有する。
【0052】
好ましくは、前記ガラスは波長400nm、450nm、495nm、550nm、600nm、650nm、および670nmで、試料厚さ1mmで85%を上回る、より好ましくは90%を上回る透過率を有する。好ましくは、前記ガラスは波長400nm、450nm、495nm、550nm、600nm、650nm、および670nmで、試料厚さ10mmで75%を上回る、より好ましくは85%を上回る透過率を有する。
【0053】
好ましくは、本発明のガラスは可視範囲において高い透過率を有する。好ましくは、前記ガラスは試料厚さ1mmで、380nm~780nmの波長範囲全体における任意の波長で、50%を上回る、より好ましくは60%を上回る、より好ましくは70%を上回る、より好ましくは80%を上回る、より好ましくは85%を上回る、より好ましくは90%を上回る透過率を有する。好ましくは、前記ガラスは試料厚さ10mmで、380nm~780nmの波長範囲全体における任意の波長で、50%を上回る、より好ましくは60%を上回る、より好ましくは70%を上回る、より好ましくは75%を上回る、より好ましくは80%を上回る、より好ましくは85%を上回る透過率を有する。
【0054】
好ましくは、本発明のガラスは可視範囲において、特に波長400nmおよび495nmおよび670nmで高い透過率を有する。好ましくは、400nmおよび495nmおよび670nmでの透過率は非常に類似している。
【0055】
好ましくは、試料厚さ1mmおよび/または試料厚さ10mmで、495nmでの透過率と400nmでの透過率との比は0.95:1~1.05:1、より好ましくは0.97:1~1.04:1、より好ましくは0.99:1~1.03:1、より好ましくは1:1~1.02:1の範囲である。495nmでの透過率が400nmでの透過率に比して高いことが特に好ましい。最も好ましくは、495nmでの透過率と400nmでの透過率との比は>1:1~1.015:1の範囲である。
【0056】
好ましくは、試料厚さ1mmおよび/または試料厚さ10mmで、670nmでの透過率と495nmでの透過率との比は0.95:1~1.05:1、より好ましくは0.96:1~1.03:1、より好ましくは0.97:1~1.02:1、より好ましくは0.98:1~1.01:1の範囲である。
【0057】
好ましくは、試料厚さ1mmおよび/または試料厚さ10mmで、670nmでの透過率と400nmでの透過率と比は0.95:1~1.05:1、より好ましくは0.96:1~1.04:1、より好ましくは0.97:1~1.03:1、より好ましくは0.98:1~1.02:1、より好ましくは0.99:1~1.01:1の範囲である。
【0058】
上述のとおり、色の印象は、色の印象を3つの値、つまりx値、y値およびz値(色度座標)の組み合わせによって表すCIE 1931色空間に基づいて記述することができる。それは好ましくはDIN 5033に類似して、中心窩の2°の円弧内のCIE標準観測者(CIE 1931 2°標準観測者)について、6770Kで光源「C」を使用して特定される。簡単に言うと、X、YおよびZの標準スペクトル値をCIE 1931色空間系の表から取得し、測定された透過率値を乗算して、それぞれの三刺激値が得られる。
【0059】
色空間内での色位置または色の場所を定義する色度座標x、yおよびzは、x+y+zの合計が1になるように正規化することによって得られる。従って、x値、y値およびz値は正の値であり、且つx+y+zの合計=1である。CIE 1931色空間の色度図は、x軸がx値に関し、y軸がy値に関する色空間を表す。z値は、x値とy値との任意の所定の対から、z=1-x-yを計算することによって推測され得る。x=y=z=1/3の点は、「白」の色を定義するいわゆる「白色点」を表す。高いx値は赤みがかった色を表す。高いy値は緑がかった色を表す。高いz値は青みがかった色を表す。各々の色度は色空間における特定の色位置として表される。加法混合色は、要素の直線の接続線上にそれらの色位置を有する。色刺激の仕様を正確に評価するために、三刺激値Yを明度の基準値(DIN 5033、パート1)として、全てのy値の合計を比率(=21.293658)によって除算することによって使用する。それによって、得られる値を100の最大値に正規化する。この値は、そのガラスが人間の目にとって、比較用試料に比して明るいか暗いかを示す。
【0060】
x値、y値およびz値は正の値であり、且つx+y+zの合計=1である。CIE 1931色空間の色度図は、x軸がx値に関し、y軸がy値に関する色空間を表す。z値は、x値とy値との任意の所定の対から、z=1-x-yを計算することによって推測され得る。x=y=z=1/3の点は、「白」の色を定義するいわゆる「白色点」を表す。高いx値は赤みがかった色を表す。高いy値は緑がかった色を表す。高いz値は青みがかった色を表す。
【0061】
好ましくは、CIE1931色空間におけるx値は、試料厚さ1mmおよび/または10mmで少なくとも0.30且つ最大0.35、より好ましくは少なくとも0.31且つ最大0.32である。好ましくは、CIE1931色空間におけるy値は、試料厚さ1mmおよび/または10mmで少なくとも0.30且つ最大0.35、より好ましくは少なくとも0.31且つ最大0.32である。好ましくは、x値およびy値は、試料厚さ1mmおよび/または10mmで少なくとも0.30且つ最大0.35、より好ましくは少なくとも0.31且つ最大0.32である。
【0062】
上述のとおり、特に医薬品包装の分野においては、中性的な白色の色の印象が望ましい。対照的に、黄褐色がかった色の印象は望ましくない。中性的な白色の色の印象はx=y=z=1/3によって表されるので、これは試料厚さ1mmおよび/または10mmで本発明の潜在的な1つの実施態様である。しかしながら、実際には中性的な白色とはわずかに異なる色の印象がさらにより好ましい。従ってz値が、試料厚さ1mmおよび/または10mmで1/3を上回り、好ましくは0.34を上回り、より好ましくは0.35を上回り、より好ましくは0.36を上回り、より好ましくは少なくとも0.37、またはさらに0.37を上回ることが好ましい。しかしながら、ガラスが非常に青く見えないためには、z値が高すぎてはならない。特に好ましくは、z値は試料厚さ1mmおよび/または10mmで0.37~0.38、より好ましくは>0.37~0.375、より好ましくは0.371~0.374の範囲である。
【0063】
一般に、z値は試料厚さ10mmでは、試料厚さ1mmに比して小さくなり得る。例えば、試料厚さ1mmでのz値と試料厚さ10mmでのz値との差は0.0001~0.005、より好ましくは0.0005~0.002の範囲であってよい。従って、試料厚さ10mmで、z値は好ましくは>0.37~0.375、より好ましくは0.371~0.373の範囲である。
【0064】
好ましくは、z値とx値との比は試料厚さ1mmおよび/または10mmで1.1~1.3、より好ましくは1.15~1.25の範囲である。好ましくは、z値とy値との比は試料厚さ1mmおよび/または10mmで1.05~1.3、より好ましくは1.1~1.25の範囲である。
【0065】
y値がx値より高い場合、ガラスの色の印象が特に有利であることが判明した。しかしながら、y値とx値との間の差は大きすぎてはならない。好ましくは、CIE 1931色空間におけるy値は、試料厚さ1mmおよび/または10mmで、x値よりも最大1.1倍大きい。好ましくは、y値とx値との比は試料厚さ1mmおよび/または10mmで>1:1~1.05:1、より好ましくは1.01:1~1.03:1、より好ましくは1.015:1~1.025:1の範囲である。
【0066】
好ましくは、x値は試料厚さ1mmおよび/または10mmで0.31~0.312、より好ましくは0.31~0.311の範囲である。好ましくは、y値は試料厚さ1mmおよび/または10mmで0.316~0.318の範囲である。好ましくは、y値は試料厚さ1mmで0.316~0.317の範囲であり、且つ/またはy値は試料厚さ10mmで0.317~0.318の範囲である。好ましくは、x値は試料厚さ1mmおよび/または10mmで0.31~0.312、より好ましくは0.31~0.311の範囲であり、且つy値は試料厚さ1mmおよび/または10mmで0.316~0.318の範囲である。好ましくは、x値は試料厚さ1mmおよび/または10mmで0.31~0.312、より好ましくは0.31~0.311の範囲であり、且つy値は試料厚さ1mmで0.316~0.317の範囲および/または試料厚さ10mmで0.317~0.318の範囲である。
【0067】
一般に、y値は試料厚さ10mmでは、試料厚さ1mmに比して大きくなり得る。例えば、試料厚さ10mmでのy値と試料厚さ1mmでのy値との差は0.0005~0.002、より好ましくは0.00075~0.0015の範囲であってよい。
【0068】
「試料厚さ」について言及される場合、その厚さはそれぞれのパラメータを測定できる試料の厚さを示す。試料厚さはガラスまたはガラス物品の実際の厚さに関するのではなく、ガラスまたはガラス物品の厚さは前記試料厚さに決して限定されない。
【0069】
好ましくは、前記ガラスは試料厚さ10mmでは、試料厚さ1mmに比して最大10%、より好ましくは最大5%、より好ましくは最大1%、より好ましくは最大0.5%大きいy値を有する。好ましくは、y値は試料厚さ10mmでは、試料厚さ1mmに比して0.1%~0.5%、より好ましくは0.25%~0.4%大きい。
【0070】
好ましくは、前記ガラスは試料厚さ10mmでは、試料厚さ1mmに比して最大10%、より好ましくは最大5%、より好ましくは最大1%、より好ましくは最大0.5%小さいz値を有する。好ましくは、z値は試料厚さ10mmでは、試料厚さ1mmに比して0.1%~0.5%、より好ましくは0.15%~0.4%小さい。
【0071】
好ましくは、前記ガラスは温度範囲25℃~300℃において3×10-6/℃を上回る平均線熱膨張係数CTEを有する。
【0072】
好ましくは、本発明のガラスは厚さ0.1~5mm、より好ましくは0.4~2.5mmを有する。好ましくは、本発明のガラスはガラス管であり、特に肉厚0.1~5mm、より好ましくは0.4~2.5mmを有するガラス管である。
【0073】
本発明のガラスは、優れた耐加水分解性を有する。特に、前記ガラスは耐加水分解性のクラスIを有する(ISO 720-1985(E)に準拠するHGA1またはUSP660/ガラス粒に準拠するタイプI)。本発明のガラスの高い耐加水分解性は、医薬品包装として使用するために特に有利である。
【0074】
ISO 720-1985(E)のHGA1限界はガラス粒1グラムあたり62μgのNa2O当量に相応する。これは、ISO 720-1985(E)の試験において、ガラス粒1グラムあたりの酸化ナトリウム(Na2O)の質量として表されるアルカリの当量62μg/g以下を有するガラスがHGA1として分類されることを意味する。「HGA」との用語は、オートクレーブ法によるガラス粒の耐加水分解性を表す。
【0075】
本発明のガラスは、それらが本質的にHGA1限界よりもさらに良好である優れた耐加水分解性を有し、それはISO 720-1985(E)の試験において本発明のガラスの相応のNa2O当量がガラス粒1グラムあたり62μgのNa2Oよりも実質的に低いことを意味する。これをHGA1限界のパーセンテージとして表すことができる。例えば、ガラス粒1グラムあたり62μgのNa2OはHGA1限界の100%に相応する。同様に、ISO 720-1985(E)試験におけるガラス粒1グラムあたり46.5μgのNa2Oという結果は、HGA1限界の75%に相応する。特に、HGA1限界のパーセンテージが低いほど、ガラスの耐加水分解性は良好である。
【0076】
好ましくは、本発明のガラスは、ISO 720-1985(E)に準拠するHGA1限界の75%未満、より好ましくは最大74%、より好ましくは最大73%、より好ましくは最大72%、より好ましくは最大71%、より好ましくは最大70%、より好ましくは最大69%、より好ましくは最大68%、より好ましくは最大67%、より好ましくは最大66%、より好ましくは最大65%に相応する耐加水分解性を有する。本発明のガラスは例えば、ISO 720-1985(E)に準拠するHGA1限界の少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、または少なくとも60%に相応する耐加水分解性を有し得る。好ましくは、本発明のガラスは、ISO 720-1985(E)に準拠するHGA1限界の40%~75%、例えば40%~74%、40%~73%、40%~72%、40%~71%、40%~70%、40%~69%、45%~68%、50%~67%、55%~66%、または60%~65%に相応する耐加水分解性を有する。
【0077】
本発明のガラスは、非常に低い失透傾向を有する。本開示は一方では「失透傾向」との用語を使用し、他方では「耐失透性」との用語を使用する。「失透傾向」との用語は、ガラスが失透する傾向に関する。「耐失透性」との用語は、失透に対するガラスの耐性に関する。従って、低い失透傾向は高い耐失透性と関連し、その逆もまた然りである。
【0078】
好ましくは、前記ガラスは800℃~1500℃、例えば1035℃~1405℃の温度で失透しない。
【0079】
耐失透性をKGmaxについて表すことができる。KGmaxが低いほど、耐失透性は高い。KGmaxはμm/分での最大結晶化速度を意味する。結晶化速度の測定は周知である。結晶化速度は形成された結晶に沿って、つまりその最大の伸びで測定される。特に、結晶化速度はガラスを勾配温度処理に供して(例えば勾配炉を使用して)特定される。
【0080】
いわゆる失透下限温度(lower devitrification temperature; LDT)は、昇温レジームにおいて失透が開始する温度である。液相線温度(失透上限温度(upper devitrification temperature; UDT)とも称される)より上では、長時間の後でも結晶は生じない。LDTおよびUDTの値は、異なるガラスの間では一般に異なる。「結晶化」および「失透」の用語は、特段示されない限り本願では同義的に使用される。
【0081】
結晶化がある場合、それは失透下限温度(LDT)未満より上且つ失透上限温度(UDT)未満の温度、つまりLDTとUDTとの間の範囲で生じる。従って、結晶化速度がその最大値を有する温度はLDTとUDTとの間にある。KGmaxを特定するために、ガラスをLDTとUDTとの間の温度に加熱しなければならない。一般にLDTからUDTまでの範囲内の種々の温度が試験され、なぜなら、どの温度で正確に最大の結晶化が生じるのかがわからないことが多いからである。これは、結晶化が生じる温度範囲の、それぞれ上限および下限としてのLDTおよびUDTを特定することも可能にする。
【0082】
結晶化速度は好ましくは、勾配炉において昇温レジームで1時間の間、ガラスを熱処理することによって特定される。勾配炉は異なる加熱ゾーンを有する炉、つまり異なる温度の領域を有する炉である。昇温レジ-ムは、炉内に入れられる前にガラスの温度が炉のいかなる領域における温度よりも低いことを意味する。従って、そのガラスがどの領域に入れられるかにはかかわらず、ガラスの温度はそれを炉に入れることによって上げられる。従って、失透の測定は好ましくは、異なる温度のゾーンを有する(予熱された)勾配炉内で1時間の熱処理によって行われる。それは位置に基づく勾配であり、時間に基づく勾配ではなく、なぜなら勾配炉は異なる温度の位置またはゾーンに分割されているからである。
【0083】
いくつかの加熱ゾーンに分割されている炉は、異なる温度で同時に試験することを可能にする。これは勾配炉の特別な利点である。例えば、最低温度は800℃であってよく、且つ最高温度は1500℃であってよいか、または最低温度は1035℃であってよく、且つ最高温度は1405℃であってよい。結晶化速度をLDTとUDTとの間の範囲の種々の温度で特定でき、その範囲内で潜在的に異なる結晶化速度を比較して最大結晶化速度としてのKGmaxを特定することを可能にするように温度を選択すべきである。LDTおよびUDTが未知である場合、比較的広い範囲内の温度を試験して、LDTおよびUDTの特定を可能にすることが好ましい。例えば、勾配炉における最低温度は、それがガラスの加工温度(VA)の約350K下であるように選択され得る。
【0084】
好ましくは、本発明のガラスは、ガラスが勾配炉内で60分間、昇温レジームで熱処理される場合に、800℃~1500℃、例えば1035℃~1405℃の温度範囲で、KGmaxが好ましくは最大0.75μm/分、より好ましくは最大0.6μm/分、より好ましくは最大0.5μm/分、より好ましくは最大0.4μm/分、より好ましくは最大0.3μm/分、より好ましくは最大0.2μm/分、より好ましくは最大0.1μm/分、より好ましくは最大0.05μm/分、より好ましくは最大0.02μm/分、より好ましくは最大0.01μm/分であるような耐失透性である。最も好ましくは、失透は全く生じない。重要なことに、勾配温度処理の間に失透が全く生じなければ、KGmaxは特定され得ない。失透がないことはKGmax=0μm/分として表すこともできる。
【0085】
特に、ガラスが勾配炉内で60分間、昇温レジームで熱処理される場合に、800℃~1500℃の温度範囲で、ガラスが最大1.0μm/分などの最大結晶化速度(KGmax)を有することは、勾配炉が800℃~1500℃の範囲全体をカバーしなければならないことを意味するのではない。例えば、所定のガラスについて、UDTが1405℃であることが知られている場合、1405℃を上回る温度は勾配炉内で試験される必要はなく、なぜなら、そのような温度では結晶化が起こらないので、最大結晶化速度KGmaxは1405℃未満の温度であるべきだからである。
【0086】
好ましくは、結晶化速度はガラス粒、特に直径1.6mm~4mmのガラス粒を使用して特定される。そのようなガラス粒は好ましくは、勾配温度処理のために支持体、例えば白金支持体上に設置される。例えば、結晶化速度を顕微鏡で特定できるように、支持体は、各々ガラス粒を取り込むための凹部、および各々の凹部の底に穴を有することができる。ガラス粒の好ましいサイズに鑑み、凹部は好ましくは各々直径4mmを有し、穴は好ましくは各々直径1mmを有する。
【0087】
熱処理に引き続き、どの温度範囲でどの結晶化速度が生じたかを顕微鏡で特定できる。特定される最も高い結晶化速度が最大結晶化速度KGmaxである。結晶化が生じた温度範囲の、それぞれ上限および下限としてのLDTおよびUDTが特定され得る。異なるガラス粒を勾配炉の異なる温度ゾーンに容易に割り当てることができ、なぜなら、熱処理の間、炉内のどの位置がどの温度を有するか、およびどのガラス粒が炉内のどの位置に配置されたかがわかっているからである。
【0088】
好ましくは、本発明のガラスは、DIN 12116:2001-03に準拠するクラスS3以上、より好ましくはS2以上、より好ましくはS1に相応する耐酸性を有する。
【0089】
好ましくは、本発明のガラスは、ISO 695:1991(E)に準拠するクラスA2以上、より好ましくはクラスA1に相応する耐アルカリ性を有する。
【0090】
本発明は容器、特に医薬品容器を製造するための本発明のガラスの使用にも関する。
【0091】
1つの態様において、本発明は、本発明のガラスの製造方法であって、以下の段階:
ガラス原料を溶融する段階、
得られたガラスを冷却する段階
を含む前記方法に関する。
【0092】
1つの態様において、本発明は、本発明のガラスの製造方法であって、以下の段階:
ガラス溶融物を、特にダウンドロー、オーバーフローフュージョン、リドロー、フローティング、または管引き抜き法、特にダンナー法、ベロー法または垂直引き抜きによって加工する段階
を含む前記方法に関する。
【0093】
本発明のガラスは任意の形態であることができる。本発明によるガラスは例えば、ガラス容器、ガラスシート、ガラスプレート、ガラスロッド、ガラス管、ガラスブロック、または例えば医薬品または医療分野において有用な他の物品であることができる。
【0094】
本発明は、本発明のガラスを含む医薬品の一次包装にも関する。医薬品の一次包装は好ましくはビン、例えば大瓶または小瓶、例えば注射瓶またはバイアル、アンプル、カートリッジ、瓶、フラスコ、薬瓶、ビーカーまたはシリンジから選択される。
【0095】
「医薬品の一次包装」との用語は、薬剤と直接接触するガラス製の包装として理解されるべきである。包装は薬剤を環境の影響から保護し、患者によって使用されるまで薬剤をその仕様に従って保持する。
【0096】
ガラス容器の形態でのガラスは医薬品の一次包装として使用され得る。前記ガラスは液体の内容物、例えば有効成分の溶液、溶剤、例えば緩衝剤系などと接触することがあり、それは1~11の範囲のpH、4~9の範囲のpH、または5~7の範囲のpHを有し得る。前記ガラスは特に良好な化学的耐久性を示すので、それらの内容物の保管および保存のために特に適している。本発明に関する特に良好な化学的耐久性とは、ガラスが、医薬品分野に適用可能な液体の内容物の保管および保存についての要件を高度に満たすこと、特にガラスがISO 720またはUSP660に準拠する加水分解クラス1に相応する耐加水分解性を有することを意味する。
【0097】
本発明によるガラスは、医薬品容器の内容物と接触し、従ってそれらの内容物の保管および保存のために提供される医薬品容器を製造するために適している。使用され得る内容物は例えば、医薬品分野において使用される全ての固体および液体の組成物である。
【0098】
前記ガラスの特性により、それは広範な用途、例えば医薬品の一次包装、例えばカートリッジ、シリンジ、アンプルまたはバイアルとしての使用のために非常に適しており、なぜなら容器内で保管される物質、特に水溶液が、感知できるほどにはガラスを攻撃しないからである。
【0099】
本発明は、本発明のガラスを含む医薬品、および製剤にも関する。製剤は生物学的薬剤、例えば抗体、酵素、タンパク質、ペプチドなど、および1つ以上の薬学的に認容性の賦形剤を含有し得る。
【0100】
本発明によるガラスは、例えば医薬品の一次包装へとさらに加工するための、他のガラス物品の製造における中間製品、例えば半製品の形態でのガラス管であってもよい。
【0101】
以下で本発明を例示的な実施態様および比較例を参照してより詳細に説明し、それは本発明の教示を説明するが、本発明を限定することは意図されていない。
【実施例0102】
以下の例および比較例の組成は酸化物に基づくモル%で示される。
【0103】
【0104】
上記表1において組成が示された例示的なガラス例1~5および比較例C1~C3について、耐失透性(KGmax(=μm/分での最大結晶化速度)に関する)、並びにガラス粒1グラムあたりのμgでのNa2O として表されるアルカリの当量として示されるISO 720-1985(E)に準拠する耐加水分解性を、以下の表2にまとめる。
【0105】
【0106】
重要なことに、勾配温度処理の間に失透が全く生じなければ、KGmaxは特定され得ない。失透がないことはKGmax=0μm/分として表すこともできる(表2の例1および例5参照)。例1~5、並びに比較例C2は優れた耐加水分解性を有する。比較例C1およびC3は比較的低い耐加水分解性を有する。例1~5は、非常に低い失透傾向を有する。対照的に、比較例、特にC1およびC2においては失透傾向がより高い。