(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084698
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 513
H01G4/30 516
H01G4/30 201G
【審査請求】未請求
【請求項の数】39
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023192896
(22)【出願日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】10-2022-0173266
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0052140
(32)【優先日】2023-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン、ブム スク
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、ダエ ウー
(72)【発明者】
【氏名】キム、ダ ミ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ス ジン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC10
5E001AD04
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E001AH01
5E001AH05
5E001AH06
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE05
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG03
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG12
5E082JJ03
5E082JJ13
5E082KK01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外部からの水分、めっき液、水素の浸透経路を遮断して耐湿信頼性を向上させる積層型電子部品を提供する。
【解決手段】積層型電子部品100は、誘電体層111及び誘電体層111と第1方向に交互に配置される内部電極121,122と、を含む本体110において、内部電極121、122の一端と接する第1電極層131、141の端と本体110との間にガラスを含む保護層150を配置することにより、外部からの水分、めっき液及び水素の浸透経路を遮断して積層型電子部品100の耐湿信頼性を向上させようとする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される第1及び第2内部電極と、を含み、
前記第1方向に対向する第1及び第2面、前記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、並びに前記第1~第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面を含む本体と、
前記第3面上に配置される第1外部電極と、
前記第4面上に配置される第2外部電極と、を含み、
前記本体は、前記第3面と前記第1、第2、第5及び第6面とを連結する第1コーナー、及び前記第4面と前記第1、第2、第5及び第6面とを連結する第2コーナーを含み、
前記第1外部電極は、前記第3面及び第1コーナー上に配置される第1-1電極層、及び前記第1-1電極層上に配置され、且つ前記第1、第2、第5及び第6面上の一部まで延びて配置される第1-2電極層を含み、
前記第2外部電極は、前記第4面及び第2コーナー上に配置される第2-1電極層、及び前記第2-1電極層上に配置され、且つ前記第1、第2、第5及び第6面上の一部まで延びて配置される第2-2電極層を含み、
前記第1-1電極層と前記第1コーナーとの間、及び前記第2-1電極層と前記第2コーナーとの間には、ガラスを含む保護層が配置され、
前記保護層は、前記第1内部電極の端のうち、前記第4面に近い端を連結した直線、及び前記第2内部電極の端のうち、前記第3面に近い端を連結した直線と離隔して配置された、積層型電子部品。
【請求項2】
前記第2面の延長線から前記第1コーナーに配置された保護層の第1方向の端までの平均サイズは、0.1μm以上10μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記第3面の延長線から前記第1コーナーに配置された保護層の前記第2方向の端までの平均サイズは、前記第1-1電極層の平均厚さに対して2倍以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記第1-2及び第2-2電極層はガラスを含み、
前記第1-2及び第2-2電極層に含まれたガラスのうち少なくとも一部は、前記第1-1及び第2-2電極層と前記第1面及び第2面との間に配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記第3面の延長線から前記第1コーナーに配置された保護層の前記第2方向の端までの平均サイズは、前記第1-2及び第2-2電極層と前記第1面及び第2面との間に配置されたガラスの平均厚さに対して1.01以上50以下である、請求項4に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記第1-1及び第2-1電極層は、Ba及びZnのうち一つ以上を含むガラスを含み、
前記第1-2及び第2-2電極層は、Na及びFeのうち一つ以上を含むガラスを含む、請求項4に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記保護層に含まれるガラスは、Na及びFeのうち一つ以上を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記第1-2及び第2-2電極層はCuを含み、
前記保護層に含まれるガラスはNa及びFeを含み、
前記保護層に含まれたNaの平均含量は、前記第1-2及び第2-2電極層に含まれたCuに対して1.25wt%以上15.65wt%以下であり、
前記保護層に含まれたFeの平均含量は、前記第1-2及び第2-2電極層に含まれたCuに対して0.15wt%以上5.45wt%以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記第1-1及び第2-1電極層はNiを含み、
前記第1-2及び第2-2電極層はCuを含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記保護層に含まれるガラスは、Feを含む酸化物を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記Feを含む酸化物は、FeOx(Xは0を除く正の有理数)である、請求項10に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記第1外部電極は、前記第1-1電極層と前記第1-2電極層との間に配置される追加電極層をさらに含み、前記第2外部電極は、前記第2-1電極層と前記第2-2電極層との間に配置される追加電極層をさらに含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記追加電極層はCu及びガラスを含む、請求項12に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記保護層の前記第2方向の端は、前記第1-1電極層と前記追加電極層との間、及び前記第2-1電極層と前記追加電極層との間に配置される、請求項12又は13に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
誘電体層及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される第1及び第2内部電極を含み、
前記第1方向に対向する第1及び第2面、前記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、並びに前記第1~第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面を含む本体と、
前記第3面及び第4面上にそれぞれ配置される外部電極と、を含み、
前記外部電極は、前記第3面及び第4面上において内部電極の第2方向の端と接するように配置され、Niを含む第1電極層、及び前記第1電極層上から前記第1、第2、第5、第6面上の一部に延びて配置されるCuを含む第2電極層を含み、
前記第1電極層の端と前記本体との間には、ガラスを含む保護層が配置され、前記保護層に含まれるガラスはNa及びFeを含む、積層型電子部品。
【請求項16】
前記第1電極層は、前記第1面及び第2面上には配置されない、請求項15に記載の積層型電子部品。
【請求項17】
前記保護層は、前記第1内部電極の端のうち、前記第4面に近い端を連結した直線、及び前記第2内部電極の端のうち、前記第3面に近い端を連結した直線と離隔して配置された、請求項15に記載の積層型電子部品。
【請求項18】
前記第2電極層はガラスを含み、
前記第2電極層に含まれたガラスのうち少なくとも一部は、前記第2電極層と前記第1及び第2面との間に配置される、請求項15に記載の積層型電子部品。
【請求項19】
前記第3面又は第4面の延長線から前記保護層の前記第2方向の端までの平均サイズは、前記第2電極層と前記第1面及び第2面との間に配置されたガラスの平均厚さに対して1.01以上50以下である、請求項18に記載の積層型電子部品。
【請求項20】
前記第1電極層は、Ba及びZnのうち一つ以上を含むガラスを含み、
前記第2電極層は、Na及びFeのうち一つ以上を含むガラスを含む、請求項15に記載の積層型電子部品。
【請求項21】
前記保護層に含まれるガラスは、Na及びFeのうち一つ以上を含む、請求項15に記載の積層型電子部品。
【請求項22】
前記保護層に含まれるガラスは、Feを含む酸化物を含む、請求項15に記載の積層型電子部品。
【請求項23】
前記外部電極は、前記第1電極層及び前記第2電極層の間に配置される追加電極層をさらに含む、請求項15~22のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項24】
前記追加電極層はCu及びガラスを含む、請求項23に記載の積層型電子部品。
【請求項25】
前記保護層の前記第2方向の端は、前記第1電極層と前記追加電極層との間に配置される、請求項23に記載の積層型電子部品。
【請求項26】
誘電体層及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される第1及び第2内部電極を含み、
前記第1方向に対向する第1及び第2面、前記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、並びに前記第1~第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面を含む本体と、
前記第3面及び第4面上にそれぞれ配置される外部電極と、を含み、
前記外部電極は、前記第3面及び第4面上において内部電極の前記第2方向の端と接するように配置される第1電極層、及び前記第1電極層上から前記第1、第2、第5、第6面上の一部まで延びて配置される第2電極層を含み、
前記第1電極層の端と前記本体との間には、ガラスを含む保護層が配置され、
前記第1電極層は第1導電性金属を含み、前記第2電極層は第2導電性金属及びガラスを含み、
前記第2電極層に含まれたガラスの前記第1導電性金属に対する濡れ性が、前記第2電極層に含まれたガラスの第2導電性金属に対する濡れ性よりも高い、積層型電子部品。
【請求項27】
前記第2電極層に含まれたガラスの第1導電性金属に対する平均接触角を第1角度、前記第2電極層に含まれたガラスの第2導電性金属に対する平均接触角を第2角度とするとき、
前記第1角度は前記第2角度よりも小さい、請求項26に記載の積層型電子部品。
【請求項28】
前記第1角度と前記第2角度との差の絶対値は、10度以上50度以下である、請求項27に記載の積層型電子部品。
【請求項29】
前記第1導電性金属はNiであり、前記第2導電性金属はCuである、請求項26に記載の積層型電子部品。
【請求項30】
前記第2電極層に含まれるガラスは、Na及びFeのうち一つ以上を含む、請求項26に記載の積層型電子部品。
【請求項31】
前記第1電極層はガラスをさらに含み、
前記第1電極層に含まれるガラスは、Ba及びZnのうち一つ以上を含む、請求項26に記載の積層型電子部品。
【請求項32】
前記第1電極層は、前記第1面及び第2面上には配置されない、請求項26に記載の積層型電子部品。
【請求項33】
前記保護層は、前記第1内部電極の端のうち、前記第4面に近い端を連結した直線、及び前記第2内部電極の端のうち、前記第3面に近い端を連結した直線と離隔して配置された、請求項27に記載の積層型電子部品。
【請求項34】
前記第2電極層に含まれたガラスのうち少なくとも一部は、前記第2電極層と前記第1及び第2面との間に配置される、請求項26に記載の積層型電子部品。
【請求項35】
前記第3面又は第4面の延長線から前記保護層の前記第2方向の端までの平均サイズは、前記第2電極層と前記第1面及び第2面との間に配置されたガラスの平均厚さに対して1.01以上50以下である、請求項34に記載の積層型電子部品。
【請求項36】
前記保護層に含まれるガラスはFeを含む酸化物を含む、請求項26に記載の積層型電子部品。
【請求項37】
前記外部電極は、前記第1電極層及び前記第2電極層の間に配置される追加電極層をさらに含む、請求項26~36のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項38】
前記追加電極層はCu及びガラスを含む、請求項37に記載の積層型電子部品。
【請求項39】
前記保護層の前記第2方向の端は、前記第1電極層と前記追加電極層との間に配置される、請求項38に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multilayer Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話などの様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
電子製品の小型化、スリム化、多機能化に伴い、チップ部品も小型化が求められており、電子部品の実装も高集積化している。このような傾向に応じて実装される電子部品の間の空間が最小化されている。
【0004】
積層型電子部品において、外部電極の一次電極は、導電性金属とガラスとを混合して形成する場合がある。このとき、ガラスは焼成過程で低温焼結を促進するとともに導電性金属粒子間の空隙を埋める役割を果たすことができ、Ba及びTiを含むセラミック材料が主成分である本体と外部電極との界面接合力を向上させる役割を果たすことができる。しかし、セラミック材料を主成分とするガラスと導電性金属は濡れ性(wettability)が不十分であり、これにより導電性金属とガラスとの界面部は外部からの水分が浸透する経路となり得る。
【0005】
また、製造方法に応じて、一次電極は、本体のコーナーにおいて周辺よりも薄い厚さに形成されることがあり、このような一次電極と本体のコーナーとの境界部は、めっき液又は外部からの水分が浸透する主な経路となり得る。
【0006】
したがって、このような外部からの水分が浸透する経路を遮断して積層型電子部品の信頼性を向上させることができる構造的改善が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明のいくつかの目的の一つは、一次電極に含まれる導電性金属とガラスの濡れ性が十分でなかった問題を解決することである。
【0008】
本発明のいくつかの目的の一つは、本体のコーナーと一次電極の境界部がめっき液又は外部からの水分の主な浸透経路となり、積層型電子部品の耐湿信頼性が低下するという問題を解決することである。
【0009】
但し、本発明の目的は上述した内容により限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される第1及び第2内部電極を含み、上記第1方向に対向する第1及び第2面、上記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、並びに上記第1~第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面を含む本体と、上記第3面上に配置される第1外部電極と、上記第4面上に配置される第2外部電極と、を含み、上記本体は、上記第3面と上記第1、第2、第5及び第6面とを連結する第1コーナー、及び上記第4面と上記第1、第2、第5及び第6面とを連結する第2コーナーを含み、上記第1外部電極は、上記第3面及び第1コーナー上に配置される第1-1電極層、及び上記第1-1電極層上に配置され、且つ上記第2、第5及び第6面上の一部まで延びて配置される第1-2電極層を含み、上記第2外部電極は、上記第4面及び第2コーナー上に配置される第2-1電極層、及び上記第2-1電極層上に配置され、且つ上記第1、第2、第5及び第6面上の一部まで延びて配置される第2-2電極層を含み、上記第1-1電極層と上記第1コーナーとの間、及び上記第2-1電極層と上記第2コーナーとの間には、ガラスを含む保護層が配置され、上記保護層は上記第1内部電極の端のうち、上記第4面に近い端を連結した直線、及び上記第2内部電極の端のうち、上記第3面に近い端を連結した直線と離隔して配置される。
【0011】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される第1及び第2内部電極を含み、上記第1方向に対向する第1及び第2面、上記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、並びに上記第1~第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面を含む本体と、上記第3面及び第4面上にそれぞれ配置される外部電極と、を含み、上記外部電極は、上記第3面及び第4面上において内部電極の第2方向の端と接するように配置され、Niを含む第1電極層、及び上記第1電極層上から上記第1、第2、第5、第6面上の一部に延びて配置されるCuを含む第2電極層を含み、上記第1電極層の端と上記本体との間にはガラスを含む保護層が配置され、上記ガラスはNa及びFeを含む。
【0012】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される第1及び第2内部電極を含み、上記第1方向に対向する第1及び第2面、上記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、並びに上記第1~第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面を含む本体と、上記第3面及び第4面上にそれぞれ配置される外部電極と、を含み、上記外部電極は、上記第3面及び第4面上において内部電極の上記第2方向の端と接するように配置される第1電極層、及び上記第1電極層上から上記第1、第2、第5、第6面上の一部まで延びて配置される第2電極層を含み、上記第1電極層の端と上記本体との間にはガラスを含む保護層が配置され、上記第1電極層は第1導電性金属を含み、上記第2電極層は第2導電性金属及びガラスを含み、上記第2電極層に含まれたガラスの第1導電性金属に対する濡れ性が、上記第2電極層に含まれたガラスの第2導電性金属に対する濡れ性よりも高い。
【発明の効果】
【0013】
本発明のいくつかの効果の一つは、一次電極に含まれる導電性金属とガラスの濡れ性を向上させて積層型電子部品の耐湿信頼性を向上させることである。
【0014】
本発明のいくつかの効果の一つは、本体のコーナーと一次電極との境界部にガラスを含む保護層を形成して積層型電子部品の耐湿信頼性を向上させることである。
【0015】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図である。
【
図3】
図1のII-II'線に沿った断面図である。
【
図4】一実施例による本体を分解して示した分解斜視図である。
【
図5】
図1のIII-III'線に沿った断面図である。
【
図7】金属の種類に応じたガラスとの接触角を模式的に示した模式図である。
【
図8】本発明の実施形態による保護層が形成されるメカニズムを簡略に示したものである。
【
図9】本発明の実施形態による保護層が形成された領域を積層型電子部品の第1及び第3断面において走査電子顕微鏡を用いて撮影したイメージである。
【
図10a】電子プローブマイクロ分析器(EPMA、Electron Probe X-ray Micro Analyzer)を介して本発明の実施形態による保護層が形成された領域をマッピング(Mapping)したイメージである。
【
図10b】電子プローブマイクロ分析器(EPMA、Electron Probe X-ray Micro Analyzer)を介して本発明の実施形態による保護層が形成された領域をマッピング(Mapping)したイメージである。
【
図10c】電子プローブマイクロ分析器(EPMA、Electron Probe X-ray Micro Analyzer)を介して本発明の実施形態による保護層が形成された領域をマッピング(Mapping)したイメージである。
【
図11】一実施例による積層型電子部品を第3方向の中心部まで研磨した第1及び第2方向の断面図である。
【
図13】一実施例による積層型電子部品を第3方向の中心部まで研磨した第1及び第2方向の断面図である。
【
図14】ガラスの種類に応じて各サンプルに対する接触角の差を示した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために誇張することができ、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0018】
そして、図面において、本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示したものに限定されるものではない。なお、同一思想の範囲内の機能が同じである構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0019】
図面において、第1方向は、誘電体層を間に挟んで第1及び第2内部電極が交互に配置される方向又は厚さT方向、上記第1方向と垂直な方向である第2方向及び第3方向のうち、上記第2方向は長さL方向、上記第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0020】
図3は、
図1のII-II'線に沿った断面図であり、
図4は、一実施例による本体を分解して示した分解斜視図であり、
図5は、
図1のIII-III'線に沿った断面図であり、
図6は、
図2のP領域を拡大した拡大図であり、
図7は、金属の種類に応じたガラスとの接触角を模式的に示した模式図であり、
図8は、本発明の実施形態による保護層が形成されるメカニズムを簡略に示したものであり、
図9は、本発明の実施形態による保護層が形成された領域を積層型電子部品の第1及び第3断面において走査電子顕微鏡を用いて撮影したイメージであり、
図10a、
図10b及び
図10cは、電子プローブマイクロ分析器(EPMA、Electron Probe X-ray Micro Analyzer)を介して本発明の実施形態による保護層が形成された領域をマッピングしたイメージであり、
図11は、一実施例による積層型電子部品を第3方向の中心部まで研磨した第1及び第2方向の断面図であり、
図12は、
図11のQ領域の拡大図であり、
図13は、一実施例による積層型電子部品を第3方向の中心部まで研磨した第1及び第2方向の断面図である。
【0021】
以下では、
図1~
図13を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品100及び様々な実施例について詳細に説明する。
【0022】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される第1及び第2内部電極121、122を含み、上記第1方向に対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面3、4、並びに上記第1~第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面5、6を含む本体110と、上記第3面及び第4面上にそれぞれ配置される外部電極130、140と、を含み、
上記本体は、上記第3面と上記第1、第2、第5及び第6面とを連結する第1コーナーC1、及び上記第4面と上記第1、第2、第5及び第6面とを連結する第2コーナーC2を含み、上記第1外部電極は、上記第3面及び第1コーナー上に配置される第1-1電極層131、及び上記第1-1電極層上に配置され、且つ上記第1、第2、第5及び第6面上の一部まで延びて配置される第1-2電極層132を含み、上記第2外部電極は、上記第4面及び第2コーナー上に配置される第2-1電極層141、及び上記第2-1電極層上に配置され、且つ上記第1、第2、第5及び第6面上の一部まで延びて配置される第2-2電極層142を含み、上記第1-1電極層と上記第1コーナーとの間、及び上記第2-1電極層と上記第2コーナーとの間には、ガラスを含む保護層150が配置され、上記保護層は、上記第1内部電極の端のうち、上記第4面に近い端を連結した直線、及び上記第2内部電極の端のうち、上記第3面に近い端を連結した直線と離隔して配置されることができる。
【0023】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される第1及び第2内部電極121、122を含み、上記第1方向に対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面3、4、並びに上記第1~第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面5、6を含む本体110と、上記第3面及び第4面上にそれぞれ配置される外部電極130、140と、を含み、上記外部電極は、上記第3面及び第4面上において内部電極の第2方向の端と接するように配置され、Niを含む第1電極層131、141、及び上記第1電極層上から上記第1、第2、第5、第6面上の一部に延びて配置されるCuを含む第2電極層132、142を含み、上記第1電極層の端と上記本体との間には、ガラスを含む保護層150が配置され、上記ガラスはNa及びFeを含むことができる。
【0024】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される第1及び第2内部電極121、122を含み、上記第1方向に対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面3、4、並びに上記第1~第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面5、6を含む本体110と、上記第3面及び第4面上にそれぞれ配置される外部電極130、140と、を含み、上記外部電極は、上記第3面及び第4面上において内部電極の上記第2方向の端と接するように配置される第1電極層131、141、及び上記第1電極層上から上記第1、第2、第5、第6面上の一部まで延びて配置される第2電極層132、142を含み、上記第1電極層の端と上記本体との間には、ガラスを含む保護層150が配置され、上記第1電極層は第1導電性金属を含み、上記第2電極層は第2導電性金属及びガラスを含み、上記第2電極層に含まれたガラスの第1導電性金属に対する濡れ性が上記第2電極層に含まれたガラスの第2導電性金属に対する濡れ性よりも高いことができる。
【0025】
本体110は、誘電体層111及び誘電体層111と交互に配置される内部電極121、122を含む。
【0026】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0027】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4、第1及び第2面1、2と連結され、第3及び第4面3、4と連結され、第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0028】
図2を参照すると、本体110は、第3面3と第1、第2、第5及び第6面1、2、5、6とを連結する第1コーナーC1、及び第4面4と第1、第2、第5及び第6面1、2、5、6とを連結する第2コーナーC2を含むことができる。第1及び第2コーナーC1、C2は、誘電体層111上に内部電極121、122が配置されていないマージン領域が重なることにより、内部電極121、122の厚さによる段差が発生し、本体110の焼結過程で収縮挙動によって形成されることができる。あるいは、チッピング不良などを防止するために、本体110の各面を連結する角を別途の工程を行ってラウンド処理することにより形成されたものであってもよい。
【0029】
一方、本体110は実質的に六面体形状を有することができるが、六面体をなす各面は、実際には完全な平面の形態でなくてもよい。すなわち、本体110をなす各面の実際の形状は、粗さを有する曲面であってもよい。したがって、本発明で定義される本体110の第1~第6面1、2、3、4、5、6は、本体110をなす各面を実質的に平坦な面と仮定した仮想の面を意味することができる。このような定義によれば、第1コーナーC1は、平坦な面であると仮定した第3面3と第1、第2、第5及び第6面1、2、5、6とを連結する曲面と定義されることができ、第2コーナーC2は、平坦な面であると仮定した第4面4と第1、第2、第5及び第6面1、2、5、6とを連結する曲面と定義されることができる。
【0030】
また、第1コーナーC1及び第2コーナーC2は、後述する容量形成部Acと本体110との関係においても定義されることができる。以下では、
図6を参照して第1コーナーC1を定義するさらに他の例示について説明するが、第2コーナーC2の場合においても同様に理解することができる。
【0031】
図6を参照すると、第1コーナーC1は、積層型電子部品100の任意の第1方向及び第2方向の断面において、容量形成部Acの第1方向の延長線と容量形成部Acの第2方向の延長線とを連結する本体110の連結線を意味することができる。ここで、容量形成部Acの第1方向の延長線は、第2内部電極122の第2方向の端を連結した線の延長線を意味することができ、容量形成部Acの第2方向の延長線は、第1方向の端に配置された内部電極の第2方向の延長線を意味することができる。このような第1コーナーC1に対する定義を、任意の第1方向及び第2方向の断面ではなく3次元の立体に拡大する場合、第1コーナーC1は、本体110の第2方向の一面のうち、第1内部電極121が接する領域に該当する面と第1方向に対向する一面及び他面、第3方向に対向する一面及び他面のうち、容量形成部Acと第1方向又は第3方向に重なる領域とを連結する面であることができる。同様に、第2コーナーC2は、本体110の第2方向の他面のうち、第2内部電極122が接する領域に該当する面との第2方向の一面のうち、第1内部電極121が接する領域に該当する面と第1方向に対向する一面及び他面、第3方向に対向する一面及び他面のうち、容量形成部Acと第1方向又は第3方向に重なる領域とを連結する面であることができる。
【0032】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0033】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。上記チタン酸バリウム系材料はBaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)又はBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。
【0034】
また、誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーに、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
【0035】
一方、誘電体層111の平均厚さtdは特に限定する必要はない。例えば、誘電体層111の平均厚さtdは0.2μm以上2μm以下であってもよく、積層型電子部品100の高容量化及び小型化をより容易に達成するために誘電体層111の平均厚さtdは0.35μm以下であってもよい。
【0036】
誘電体層111の平均厚さtdは、上記第1及び第2内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の平均厚さtdを意味することができる。
【0037】
誘電体層111の平均厚さtdは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つの誘電体層を長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層に拡張して平均値を測定すると、誘電体層の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0038】
図2を参照すると、本体110は本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Acと、上記容量形成部Acの第1方向の一面及び他面に配置されたカバー部112、113とを含むことができる。
【0039】
また、上記容量形成部Acは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であって、誘電体層111を間に挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層して形成することができる。
【0040】
カバー部112、113は、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの第1方向の一面及び他面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0041】
また、カバー部112、113は内部電極を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。
【0042】
一方、カバー部112、113の平均厚さは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の平均厚さtcは15μm以下であってもよい。
【0043】
カバー部112、113の平均厚さは第1方向のサイズを意味することができ、容量形成部Acの上部又は下部において等間隔の5個の地点で測定したカバー部112、113の第1方向のサイズを平均した値であることができる。
【0044】
図3を参照すると、容量形成部Acの第3方向の一面及び他面にはマージン部114、115が配置されることができる。
【0045】
マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置されたマージン部114と、第6面6に配置されたマージン部115とを含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記本体110の第3方向(幅方向)の両端面(end surfaces)に配置されることができる。
【0046】
マージン部114、115は、図示のように、第1及び第2内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0047】
マージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0048】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される箇所を除き、導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであってもよい。
【0049】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0050】
一方、マージン部114、115の幅は特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、マージン部114、115の平均幅は15μm以下であってもよい。
【0051】
マージン部114、115の平均幅は、マージン部114、115の第3方向の平均サイズを意味することができ、容量形成部Acの側面において、等間隔の5個の地点で測定したマージン部114、115の第3方向のサイズを平均した値であることができる。
【0052】
内部電極121、122は誘電体層111と第1方向に交互に配置される。
【0053】
内部電極121、122は第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ連結されることができる。具体的に、第1内部電極121の一端は第3面に連結され、第2内部電極122の一端は第4面に連結されることができる。すなわち、一実施例において、内部電極121、122は、第3面3又は第4面4と接することができる。
【0054】
図2に示すように、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。本体の第3面3には第1外部電極130が配置されて第1内部電極121と連結され、本体の第4面4には第2外部電極140が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0055】
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極140とは連結されず、第1外部電極130と連結され、第2内部電極122は第1外部電極130とは連結されず、第2外部電極140と連結される。したがって、第1内部電極121は第4面4において一定距離離隔して形成され、第2内部電極122は第3面3において一定距離離隔して形成されることができる。このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されてもよい。
【0056】
図4を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0057】
内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0058】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
図1及び
図2を参照すると、本体110上には外部電極130、140が配置されることができる。外部電極130、140は、本体110の第3面3上に配置される第1外部電極130及び本体110の第4面4上に配置される第2外部電極140を含むことができる。本発明では、積層型電子部品100が2つの外部電極130、140を有する構造について説明しているが、外部電極130、150の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0060】
従来の場合、積層型電子部品において、外部電極の一次電極(本発明の第1電極層)は、導電性金属とガラスとを混合して形成する場合がある。このとき、ガラスは、焼成過程で低温焼結を促進するとともに、導電性金属粒子間の空隙を埋める役割を果たすことができ、Ba及びTiを含むセラミック材料が主成分である本体と外部電極との界面接合力を向上させる役割を果たすことができる。しかし、セラミック材料を主成分とするガラスと導電性金属は濡れ性(wettability)が不十分であり、これにより、導電性金属とガラスの界面部は外部からの水分が浸透する経路となり得る。
【0061】
また、製造方法に応じて、一次電極は、本体のコーナーにおいて周辺よりも薄い厚さに形成されることがあり、このような一次電極と本体のコーナーとの境界部は、めっき液又は外部からの水分が浸透する主な経路となり得る。したがって、このような外部からの水分が浸透する経路を遮断して積層型電子部品の信頼性を向上させることができる構造的改善が必要な実情である。
【0062】
そこで、本発明では、内部電極の一端と接する第1電極層の端と本体110との間にガラスを含む保護層を配置することにより、外部からの水分、めっき液、水素の浸透経路を遮断して積層型電子部品100の耐湿信頼性を向上させようとする。
【0063】
以下では、本発明の一実施形態による積層型電子部品100、100'、100''において、外部電極130、140に含まれる第1電極層131、141、第2電極層132、142、保護層150の様々な実施形態及びそれによる実施例について詳細に説明する。
【0064】
一実施例において、外部電極130、140は、第3面及び第4面3、4上にそれぞれ配置されることができる。
【0065】
具体的に、外部電極130、140は、第3面及び第4面3、4上において、内部電極121、122の第2方向の端と接するように配置される第1電極層131、141及び第1電極層131、141上から第1、第2、第5及び第6面上の一部に延びて配置される第2電極層132、142を含むことができる。
【0066】
第1電極層131、141は、第3面及び第4面3、4上にそれぞれ配置されて内部電極121、122の第2方向の端とそれぞれ接するように配置されることができる。具体的に、第1電極層は、第3面3上に配置されて第1内部電極121の第2方向の端と接する第1-1電極層131、及び第4面4上に配置されて第2内部電極122の第2方向の端と接する第2-1電極層141を含むことができる。
【0067】
一方、本体110が上述した第1コーナーC1、第2コーナーC2を含む形状である場合、第1電極層131、141は第3面3及び第1コーナーC1上に配置される第1-1電極層131と、第4面4及び第2コーナーC2上に配置される第2-1電極層141とに区分されることができる。但し、第1-1電極層131が第1コーナーC1を全てカバーする必要はなく、第2-1電極層141も第2コーナーC2を全てカバーする必要はない。
【0068】
第1電極層131、141は、第1面及び第2面1、2上には配置されなくてもよい。これにより、外部電極130、140が積層型電子部品100において占める比重を減らすことができるため、積層型電子部品100の単位体積当たりの容量を向上させることができる。
【0069】
第1電極層131、141は導電性金属を含むことができる。第1電極層131、141に含まれる導電性金属を第1導電性金属と呼ぶことができる。
【0070】
上記第1導電性金属はNiであってもよい。これにより、内部電極121、122がNiを含む場合、外部電極130、140と内部電極121、122の電気的連結性を向上させることができ、第2電極層132、142がCuを含む場合、Cuが内部電極に拡散してクラックを発生させる現象を抑制することができる。
【0071】
一方、第1導電性金属がNiである場合、第1導電性金属がCuである場合よりも焼成温度が相対的に高く、緻密な電極層を形成することが難しく、これにより積層型電子部品100の密閉性を向上させ難くなる可能性がある。しかし、本発明の一実施形態によれば、第1電極層131、141の端と本体110との間にガラスを含む保護層が配置されるため、第1電極層131、141がNiを含んで緻密な電極層を形成しにくい場合でも、積層型電子部品100の耐湿信頼性を向上させることができる。すなわち、第1電極層131、141に含まれる第1導電性金属がNiである場合、本発明による耐湿信頼性の向上効果はさらに顕著になり得る。
【0072】
第1電極層131、141は、第1導電性金属の他にもガラスを含むことができる。第1電極層131、141に含まれるガラスの成分は特に制限されないが、Ba及びZnのうち一つ以上を含むガラスであってもよい。
【0073】
第1電極層131、141上には第2電極層132、142が配置されることができる。第2電極層132、142は、第1電極層131、141上から第1、第2、第5及び第6面1、2、5、6上の一部に延びて配置されることができる。これにより、積層型電子部品100の曲げ強度が向上できる。
【0074】
一方、本体110が上述の第1コーナーC1、第2コーナーC2を含む形状である場合、第2電極層132、142は第1-1電極層131上に配置され、且つ第1、2、5、6面(1、2、5、6)上の一部まで延びて配置される第1-2電極層132及び第2-1電極層141上に配置され、且つ第1、2、5、6面(1、2、5、6)上の一部まで延びて配置される第2-2電極層142を含むことができる。第1-2電極層132と第2-2電極層142とは、ショートを防止するために互いに離隔して配置されることが好ましい。
【0075】
第2電極層132、142は導電性金属を含むことができる。第2電極層132、142に含まれる導電性金属を第2導電性金属と呼ぶことができる。
【0076】
上記第2導電性金属はCuであってもよいが、これに制限されるものではなく、電気伝導性に優れ、機械的強度に優れた金属元素がさらに含まれてもよい。
【0077】
第2電極層132、142は、第2導電性金属の他にもガラスを含むことができる。第2電極層132、142に含まれるガラスの成分は特に制限されないが、Na及びFeのうち一つ以上を含むガラスであることが好ましく、これにより、後述する第2電極層132、142に含まれるガラスの第1導電性金属に対する濡れ性と、第2電極層132、142に含まれるガラスの第2導電性金属に対する濡れ性との差をより容易に形成することができる。
【0078】
第2電極層132、142に含まれるガラスは、Na及びFeのうち一つ以上の他にも、様々な元素を含むことができる。例えば、B、Si、Al、Si、Al、Li、K、Na、Ba、Ca、Sr、Fe、Zn、Ni、Sn、Ag、Cu、In、Mn、Ti、Ge、P、及びCoのうち一つ以上をさらに含むことができる。このとき、Bが第2電極層132、142に主成分として含まれる場合、低温でのガラスが液相を形成することができ、Cuの焼結を加速化することができる。
【0079】
一実施例において、第2電極層132、142に含まれるガラスの第1導電性金属に対する濡れ性は、第2電極層132、142に含まれるガラスの第2導電性金属に対する濡れ性よりも高いことができる。これにより、
図8に示すように、第2電極層132、142に含まれるガラスは、第1電極層131、142の端と本体110との境界面に移動しながら第1電極層131、142の端に入り込むことができ、その結果として、第1電極層131、142の端と本体110との間にはガラスを含む保護層150が配置されることができる。
【0080】
ガラスの導電性金属に対する濡れ性は、ガラスと導電性金属との間の接触角で表すことができる。
図7を参照すると、同じ組成のガラスにおいて、Niに対する接触角とCuに対する接触角が異なることがある。このとき、接触角が大きいほど濡れ性が低く、接触角が小さいほど濡れ性が高いと見なすことができる。具体的に、ガラスサンプル20のNiサンプル11に対する接触角θ1は、ガラスサンプル20のCuサンプル12に対する接触角θ2より小さい。これは、ガラスサンプル20のNiサンプル11に対する濡れ性がガラスサンプル20のCuサンプル12に対する濡れ性よりも大きいことを意味する。
【0081】
第2電極層132、142に含まれるガラスの第1導電性金属に対する濡れ性と、第2電極層132、142に含まれるガラスの第2導電性金属に対する濡れ性との大小関係は、ガラスと導電性金属の接触角を比較して決定することができる。すなわち、一実施例において、第2電極層132、142に含まれたガラスの第1導電性金属に対する平均接触角を第1角度、第2電極層132、142に含まれたガラスの第2導電性金属に対する平均接触角を第2角度とするとき、第1角度は第2角度よりも小さいことができる。このとき、第1角度と第2角度との差の絶対値は10度以上50度以下であることが好ましく、これにより、本発明による保護層150が形成されるのに十分な濡れ性の差を確保することができる。
【0082】
本発明において、第2電極層132、142に含まれたガラスの第1導電性金属に対する平均接触角と、第2電極層132、142に含まれたガラスの第2導電性金属に対する平均接触角を測定する方法は特に制限されない。例えば、第2電極層132、142に含まれたガラスと同じ組成のガラスサンプルを第1電極層131、141と同じ組成及び焼成条件で形成した第1サンプル、並びに第2電極層132、142と同じ組成及び焼成条件で形成した第2サンプルに同量塗布した後、630℃以上830℃以下の範囲内の測定温度で接触角測定器(Contact angle meter)を用いて静的接触角(Static Contact angle)を測定することができる。このような接触角測定を5個以上の同一のサンプルについて行った後に平均値をとると、第2電極層132、142に含まれたガラスの第1導電性金属に対する平均接触角、及び第2電極層132、142に含まれたガラスの第2導電性金属に対する平均接触角を測定することができる。
【0083】
保護層150は、第1電極層131、141の端と本体110との間に配置されることができ、ガラスを含むことができる。
【0084】
図5によるIII-III'線に沿った断面は、
図2を参照すると、本体110の第1コーナーC1に隣接した領域を第1方向に切断した断面であることができる。
図5を参照すると、III-III'線に沿った断面において、本体110は保護層150と接しており、保護層150上に第1電極層131及び第2電極層132が順次に配置されることができる。これにより、保護層150が水分、めっき液及び水素の浸透に対して脆弱な本体110の第1コーナーC1をカバーすることにより、積層型電子部品100の耐湿信頼性を向上させることができる。
【0085】
図9を参照すると、保護層150は、第1電極層131、141の端と本体110との間に配置されてもよいことを確認することができ、本体110の角が丸みを帯びた形態を有するコーナーを含む形状である場合、第1電極層131、141のコーナーの間に保護層150が配置されることを確認することができる。
【0086】
ここで、第1電極層131、142の端と本体110との間は、第1-1電極層131と第1コーナーC1との間、及び第2-1電極層141と第2コーナーC2との間を意味することができる。すなわち、一実施例において、第1-1電極層131と第1コーナーC1及び第2-1電極層141と第2コーナーC2の間には、ガラスを含む保護層150が配置されることができる。
【0087】
一方、本体110が第1及び第2コーナーC1、C2を含む構造を有する場合、保護層150は第1コーナーC1上に連続的に配置され、第2コーナーC2上に連続的に配置されることができるが、これに制限されるものではなく、いくつかの不連続領域が形成されてもよい。また、保護層は、本体110の第1~第6面1、2、3、4、5、6のうち3つの面を連結する三重点上において、第1~第6面1、2、3、4、5、6のうち2つの面を連結する角上でより薄い厚さを有することができる。
【0088】
一実施例のように、本体110が第1及び第2コーナーC1、C2を含む構造である場合、第1及び第2コーナーC1、C2は収縮により、水分、めっき液及び水素の浸透に対してより脆弱な微細構造を形成することができる。しかし、本発明の一実施形態によれば、第1-1電極層131と第1コーナーC1との間、及び第2-1電極層141と第2コーナーC2との間にガラスを含む保護層が配置されるため、本体110が第1及び第2コーナーC1、C2を含む場合でも、積層型電子部品100の耐湿信頼性を向上させることができる。
【0089】
一方、保護層150は、耐湿信頼性の向上のために、第1及び第2コーナーC1、C2を十分に覆うように形成されることが好ましいが、過度に形成される場合、積層型電子部品100の単位体積当たりの容量を向上させ難くなる可能性がある。したがって、保護層150は、第1内部電極121の端のうち第4面4に近い端を連結する直線、及び第2内部電極122の端のうち第3面3に近い端を連結する直線と離隔して配置されることが好ましい。
【0090】
なお、保護層150は、耐湿信頼性を向上させるのに十分な厚さを有することが好ましいが、第2電極層132、142を貫通することは好ましくない。また、保護層150は、容量形成部Acに隣接して配置されないことが好ましい。すなわち、一実施例において、第2面の延長線E2から第1コーナーC1に配置された保護層150の第1方向の端までの平均サイズt1'は、0.1μm以上10μm以下であってもよい。また、一実施例において、第3面の延長線E3から第1コーナーC1に配置された保護層150の第2方向の端までの平均サイズt1は、第1-1電極層131の平均厚さt2に対して2倍以下であってもよい。
【0091】
これと同様の観点から、一実施例では、保護層150が容量形成部Acと離隔して配置されてもよく、一実施例では、保護層150の内部電極121、122のうち第1方向の最上端及び最下端に位置する内部電極121、122を越えないように配置されてもよい。
【0092】
第2面の延長線E2から第1コーナーC1に配置された保護層150の第1方向の端までの平均サイズt1'、第3面の延長線E3から第1コーナーC1に配置された保護層150の第2方向の端までの平均サイズt1、第1-1電極層131の平均厚さt2を測定する方法は特に制限されない。例えば、積層型電子部品100の第3方向の中心部まで研磨して第1及び第2方向の断面を露出させた後、第2面の延長線E2から第1コーナーC1に配置された保護層150の第1方向の端までの第1方向のサイズをt1'、第3面の延長線E3から第1コーナーC1に配置された第2方向の端までの第2方向のサイズをt1、第3面3の延長線から第1-1電極層131の第2方向の端までの第2方向のサイズをt2と測定することができる。このとき、t2は、内部電極121、122のうち第1方向の端に配置された内部電極の第2方向の延長線EA以下で測定することが好ましい。
【0093】
一方、t1及びt1'は、第2方向に1/3地点まで研磨した第1及び第2方向の断面、並びに2/3地点まで研磨した第1及び第2方向の断面で測定した値の平均値をとることで、さらに一般化することができ、t2は、第1方向に任意の5個以上の地点で測定した値の平均値をとることによってさらに一般化することができる。
【0094】
また、上述したように、保護層150は、第2電極層132、142に含まれたガラスが焼成過程で移動して形成されることができる。このとき、第2電極層132、142に含まれたガラスは、本体110を焼成する過程、第1電極層131、141を塗布して焼成する過程、第2電極層132、142を塗布する過程を経た後、第2電極層132、142を焼成し、別途の熱処理を行う過程で本発明の保護層150が形成される位置に移動することができる。このような現象は、第1電極層131、141がNiを含み、第2電極層132、142がCuを含む場合、さらに円滑に起こることができる。
【0095】
図11を参照すると、一実施例による積層型電子部品100'は、第2電極層132、142がガラスを含む場合、第2電極層132、142に含まれたガラスのうち少なくとも一部160は、第2電極層132、142と第1及び第2面1、2との間に配置されることができる。
【0096】
このとき、
図12を参照すると、第3面又は第4面3、4の延長線から保護層150の第2方向の端までの平均サイズt1は、第2電極層132、142と第1面及び第2面1、2との間に配置されたガラス160の平均厚さt3に対して1.01以上50以下であってもよい。これにより、積層型電子部品100'において、耐湿信頼性に対して脆弱な部分である第1電極層131、141の端と本体110との界面をさらに効果的にカバーすることができる。
【0097】
一方、本体110が上述した第1コーナーC1、第2コーナーC2を含む形状である場合、第3面の延長線E3から第1コーナーC1に配置された保護層の第2方向の端までの平均サイズt1は、第1-2及び第2-2電極層132、142と第1面及び第2面1、2との間に配置されたガラス160の平均厚さt3に対して1.01以上50以下であってもよい。
【0098】
また、第1-2及び第2-2電極層132、142と第1面及び第2面1、2との間に配置されたガラス160の平均厚さt3は、積層型電子部品100の第3方向の中心部まで研磨して第1及び第2方向の断面を露出させた後、ガラス160の第1方向の端からガラス160と接する本体の第1方向の端までの第1方向のサイズで測定することができる。このようなt3値の測定は、第2方向に任意の5個以上の地点で測定した後に平均値をとることによってさらに一般化することができる。
【0099】
図13を参照すると、一実施例による積層型電子部品100''の外部電極130、140は、第1電極層131、141及び第2電極層132、142の間に配置される追加電極層133、143をさらに含むことができる。追加電極層133、143は、一実施例による第1電極層131、141のように、本体110の第1面及び第2面1、2上には配置されなくてもよい。これにより、外部電極130、140が第1電極層131、141及び第2電極層132、142のみを含む構造よりも外部電極130、140を薄層化するのにさらに容易になり得る。
【0100】
保護層150に含まれるガラスは、上述したように、第2電極層132、142に含まれたガラスが移動して形成されたものであってもよい。すなわち、保護層150に含まれるガラスは、Na及びFeのうち一つ以上を含むことができる。
【0101】
保護層150に含まれるNa及びFeの含量は特に制限されない。例えば、Naの平均含量は1.25wt%以上15.65wt%以下であってもよく、Feの平均含量は0.15wt%以上5.45wt%以下であってもよい。このとき、Na及びFeの含量は、積層型電子部品に含まれるCuの含量に対する値であることができ、具体的には、第2電極層132、142又は追加電極層133、143に含まれるCuの含量に対する値であることができる。
【0102】
以下では、保護層150に含まれるNa及びFeの含量を測定する方法の一例について説明する。まず、積層型電子部品の第3方向の中心部まで研磨した第1及び第2方向の断面において、本体のコーナーに位置する外部電極の領域をサンプリングした後(
図10a)、電子プローブマイクロ分析器(EPMA、Electron Probe Micro Analyzer)で元素の分布及び組成を分析した後、マッピングして(
図10b及び
図10c)Na及びFeが局所的に集中分布している領域を保護層150の形成領域として指定する。その後、保護層150の形成された領域の中央部の5μm×5μmの領域において、任意の5個の地点を指定してNa及びFeの平均含量を測定し、保護層150に隣接した第2電極層132、142又は追加電極層133、143の中央部の5μm×5μmの領域において、任意の5個の地点を指定してCuの平均含量を測定した後、その割合を計算して第2電極層132、142又は追加電極層133、143に含まれるCuに対して保護層150に含まれたNa及びFeの平均含量を測定することができる。
【0103】
一方、
図10b及び
図10cを参照すると、保護層150が形成された領域において、Na及びFeのうち少なくとも1つ以上が局所的に凝集した形態が存在することが確認できる。
【0104】
一実施例おいて、保護層150に含まれるガラスに含まれるFeは、Feを含む酸化物形態であってもよく、例えば、FeOx(xは0を除く正の有理数)の形態であってもよく、より具体的にはFe3O4であってもよい。
【0105】
保護層150は、水分、めっき液及び水素の浸透に対して脆弱な第1電極層131、141の端と本体110との間に配置されることにより、水分、めっき液及び水素が容量形成部Acに浸透する現象を抑えることができる。これにより、積層型電子部品100の耐湿信頼性を向上させることができる。
【0106】
以下では、実験例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これは発明の具体的な理解を助けるためのものであるため、本発明の範囲が実験例によって限定されるものではない。
【0107】
(実験例1)
(1)実施例
実施例による第1電極層は、Niを主相としてガラス成分が混在している外部電極ペーストを用いて形成した。ガラス成分はガラスパウダー形態で添加し、ガラスパウダーのサイズはD50基準0.1~5μmレベルであり、ガラスはBa-Zn系ガラス(Na及びFeは添加しない)を添加した。
【0108】
実施例による第2電極層は、Cuを主相としてガラス成分が混在している外部電極ペーストを用いて形成した。ガラス成分はガラスパウダーの形態で添加し、ガラスパウダーのサイズはD50基準0.1~5μmレベルであり、Na及びFeを添加したガラスをCuに対して1%~40%で混合した。
【0109】
各電極層は、準備されたペーストを、研磨されたチップに第1電極層及び第2電極層の順に塗布し、400度以上で熱処理して前焼チップを作製した。その後、前焼チップの第2電極層の表面にNi及びSnめっき層を形成した。
【0110】
(2)比較例
比較例による第1電極層は、実施例による第1電極層と同じ組成及び条件で形成した。但し、比較例による第2電極層は、実施例による第2電極層とは異なり、Na及びFeを添加したガラスではなく、Ba-Zn系ガラス(Na及びFeを添加しない)を使用した。残りの条件は同じである。
【0111】
下記の表1は、前焼温度及び種類に応じて、本発明のような保護層150が形成されたか否か、及びそれによる特性評価を行ったものである。
【0112】
保護層の形成の有無は、積層型電子部品の第3方向の中心部まで研磨した第1及び第2方向の断面において、本体のコーナーに位置する外部電極の領域をサンプリングした後(
図10a)、電子プローブマイクロ分析器(EPMA、Electron Probe Micro Analyzer)で元素の分布及び組成を分析した後、マッピングしてNaの含量が保護層150に含まれる全元素に対して1.25wt%以上であるか、又はFeの含量が保護層150に含まれる全元素に対して0.15wt%以上と測定される場合を良品とし、合計100個のサンプルで行った。
【0113】
めっき中の水素浸透量の評価は、Niめっき層とSnめっき層を形成する前、保護層150まで形成された前焼チップ状態での水素発生量と、Ni及びSnめっき層を形成した後の完成チップ状態での水素発生量との差を測定し、その差が2ppm以内の場合を良品とした。水素発生量は、前焼チップと完成チップを燃焼して水素分析器(Hydrogen Analyzer)によって測定し、前焼温度別に3つのLotで測定した。
【0114】
耐湿過酷評価は95℃、相対湿度95%で1.5Vrの環境で20時間進行し、絶縁抵抗(IR、Insulation Resistance)値が初期値の2order以上に低下する場合を不良とし、不良ではない場合を良品とし、合計1200個のサンプルで行った。
【0115】
表1において、良品の個数が60%未満の場合を△、良品の個数が60%以上90%以下の場合を○、良品の個数が90%超過100%以下の場合を◎と表した。
【0116】
【0117】
比較例を参照すると、前焼温度が高くなるほど耐湿過酷評価で良品の頻度が増加することが確認できる。しかし、めっき液に対する耐湿性は良くないことが確認できる。耐湿過酷評価に対する信頼性を向上させるために前焼温度を向上させる場合、第2電極層にガラスビーディングが形成された結果であるものと予想される。
【0118】
実施例を参照すると、本発明による保護層150が形成されたことが確認でき、前焼温度が550度以上である場合にも、耐湿過酷評価で良品の頻度数が90%以上であることが確認できる。また、めっき液に対する耐湿性も前焼温度500度以上で確保できることが確認できる。これは、第2電極層に含まれるガラスが第1電極層の端と本体の境界の間に移動した結果、第2電極層に含まれたガラスのガラスビーディングを抑制した結果であるものと予想される。
【0119】
すなわち、本発明の一実施例のように第2電極層に含まれるガラスがNa及びFeを含む場合、本発明の一実施例のような保護層150が第1電極層の端と本体との間に配置されることができ、これにより、積層型電子部品の外部からの水分に対する耐湿信頼性を確保することができ、めっき液又はめっきの形成時に発生する水素の浸透を効果的に抑制することができる。
【0120】
(実験例2)
図14は、実施例によるガラス及び比較例によるガラスをNiサンプル、Cuサンプル及びBTサンプルに塗布して接触角を測定した結果を示したものである。
【0121】
実施例によるガラスは、Na及びFeが添加されたアルミノシリケート(aluminosilicate)系ガラスを使用し、比較例によるガラスはBa-Zn系ガラス(Na及びFeを添加しない)を使用した。
【0122】
Niサンプルは、Niパウダーとバインダーを添加して一定の厚さに成形した後、1000度以上の温度で焼成して作製した。Cuサンプルは、Cuパウダーとバインダーを添加して一定の厚さに成形した後、800度以上の温度で焼成して作製した。BTサンプルは、BaTiO3、セラミック粉末に分散剤等を添加してグリーンシートを作製した後、複数層を積層圧着してから一定の厚さに切断し、1000度以上の温度で焼成して作製した。
【0123】
接触角の測定は、上記Niサンプル、Cuサンプル及びBTサンプルに上記実施例及び比較例によるガラスをそれぞれ塗布した後、
図7で説明したように630℃~730℃の範囲の任意の温度で接触角測定器を介して静的接触角(Static Contact Angle)を測定した結果であり、全てのサンプルにおいて同じ温度で接触角を測定した。
【0124】
比較例の場合、Ni及びCuに対しては類似の接触角を有し、BTに対する接触角が相対的に高いため、Cu及びNiに対する濡れ性は高く、BTに対する濡れ性は相対的に低い。
【0125】
実施例の場合、Ni及びBTに対しては相対的に低い接触角を有し、Cuに対しては相対的に高い接触角を有する。すなわち、実施例によるガラスが本発明の第2電極層に含まれる場合、焼成過程でNiを含む第1電極層とBTを含む本体との間に移動する駆動力を得ることができる。これにより、積層型電子部品100、100'、100''において、第1電極層131、141の端と本体110との間には、ガラスを含む保護層150が配置されることができる。
【0126】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。本発明によれば、小型化及び高容量化に有利であるため、サイズの小さいIT用製品のサイズにも適用することができ、多様な環境で高信頼性を確保できるため、高信頼性が要求される自動車電装用製品のサイズにも適用することができる。
【0127】
一方、本発明の一実施形態又は実施例による第2電極層132、142上にはめっき層が配置されることができる。めっき層は、実装特性又は密閉性を向上させる役割を果たすことができる。めっき層の種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd及びこれらの合金のうち一つ以上を含むめっき層であってもよく、複数の層で形成されてもよい。
【0128】
めっき層に関するより具体的な例を挙げると、めっき層は、Niめっき層又はSnめっき層であってもよく、第2電極層132、142上にNiめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよい。また、めっき層は、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0129】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定するものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【0130】
また、本発明で使用される「一実施例」という表現は、互いに同じ実施例を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施例は、他の一実施例の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施例で説明された事項が他の一実施例では説明されていなくても、他の一実施例においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施例に関連する説明として理解されることができる。
【0131】
本発明で使用される用語は、単に一実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0132】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
121、122:内部電極
112、113:カバー部
114、115:マージン部
130、140:外部電極
131、141:第1電極層
132、142:第2電極層
133、143:追加電極層
150:保護層
160:第1-2及び第2-2電極層と第1面及び第2面との間に配置されたガラス
20:ガラスサンプル
11:Niサンプル
12:Cuサンプル