(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084710
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】海底電力ケーブルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
H01B 13/00 20060101AFI20240618BHJP
H01B 13/26 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H01B13/00 527
H01B13/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023206681
(22)【出願日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】22213133
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519099829
【氏名又は名称】エヌケーティー エイチブイ ケーブルズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ラングストローム, ソニー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】酸素含有量が極めて少ない銅材料を使用することにより、溶接部及び熱影響部における水素脆化のリスクが低減され、自生溶接による溶接を行うことによって、銅材料自体のみが溶融され、高品質の溶接が確保される遮水バリアの海底電力ケーブルを製造する方法を提供する。
【解決手段】方法は、導体3の周囲に配置された内側半導体層、内側半導体層の周囲に配置された絶縁層および絶縁層の周囲に配置された外側半導体層を備える絶縁システム5を設けることと、絶縁システムの周囲に金属シース12を配置することと、自生溶接によって金属シースの両縁部12a、12bを長手方向に溶接して絶縁システムの周囲に金属製止水層を形成することと、を含み、金属シースが、少なくとも99重量%の銅および最大0.1重量%の酸素を含んだ銅材料からなるか又は16~25の範囲のクロム当量および11~22の範囲のニッケル当量を有するステンレス鋼からなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)導体(3)の周囲に絶縁システム(5)を設けることであって、前記絶縁システム(5)が、前記導体(3)の周囲に配置された内側半導体層(7)、前記内側半導体層(7)の周囲に配置された絶縁層(9)、および前記絶縁層(9)の周囲に配置された外側半導体層(11)を備える、絶縁システム(5)を設けること、
b)前記絶縁システム(5)の周囲に金属シース(12)を配置すること、ならびに
c)自生溶接によって前記金属シース(12)の両縁部(12a、12b)を長手方向に溶接して前記絶縁システム(5)の周囲に金属製止水層(13)を形成すること
を含む、海底電力ケーブル(1)を製造する方法であって、
前記金属シース(12)が、少なくとも99重量%の銅および最大0.1重量%の酸素を含んだ銅材料からなるか、または
前記金属シース(12)が、Schaeffler-DeLongの状態図に従い16~25の範囲のクロム当量および11~22の範囲のニッケル当量を有するステンレス鋼からなり、この場合に前記クロム当量が式%Cr+%Mo+1.5×%Si+0.5×%Nbに従い算出され、前記ニッケル当量が式%Ni+0.5×%Mn+30×(%C+%N)に従い算出される、方法。
【請求項2】
工程c)が実行された後、前記ステンレス鋼が、溶接シームにおいて1~15の範囲のフェライト価を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程c)が、保護シールドガスを使用して実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記銅材料が、最大0.05重量%、最大0.04重量%の酸素、最大0.004重量%、最大0.001重量%の酸素など、最大0.06重量%の酸素を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記銅材料が、少なくとも99.9重量%の銅を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記銅材料が、Cu-DHP、Cu-ETP、またはCu-OFである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記銅材料の試料が、EN1976の8.2.2章、およびEN ISO2626に従い実施された水素脆化試験の後、亀裂の痕跡を示さない、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステンレス鋼が、ASTM A240/A240M-22bにより定められる304、304L、316、316L、316Ti、316Cb 321、もしくは347の型のうち1つから選択されるオーステナイト系ステンレス鋼型、またはEN10088-1:2005によるそれらの等価物である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記自生溶接が、レーザ、タングステン不活性ガスすなわちTIG、またはプラズマによる自生溶接のうち1つである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記金属シース(12)が0.4~2mmの範囲の厚さを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記海底電力ケーブル(1)が動的海底電力ケーブルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記海底電力ケーブル(1)が静的海底電力ケーブルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程c)が、周囲に前記絶縁システム(5)を有する前記導体(3)が長手方向に移動する間に実行され、工程c)が、少なくとも10kmなど少なくとも5kmの、前記導体(3)および前記絶縁システム(5)の連続長さにわたって実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記海底電力ケーブル(1)が高電圧の海底電力ケーブルである、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法によって取得可能な海底電力ケーブル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して海底電力ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
海底電力ケーブルには従来、絶縁システムを保護する放射状の遮水バリアとして作用する鉛シースが備わっていた。
【0003】
鉛を含まない放射状の遮水バリア設計に向けた傾向が存在する。例えば、銅、種々の銅合金、アルミニウム、およびステンレス鋼製の遮水バリアが提唱されている。
【0004】
典型的に遮水バリアは、先ず絶縁システムの周囲に金属テープを長手方向に巻き付け、次いで金属テープの両縁部をケーブルの長手方向に溶接することによって作製される。しかし、溶接プロセスには様々な課題が存在し、遮水バリアの品質に影響を及ぼすおそれがある。
【発明の概要】
【0005】
種々の遮水バリア材料に関して、銅は、例えば極めて少量の酸素しか溶解することができない。銅マトリックスに溶解されなかった酸素は、銅マトリックスに分散した亜酸化銅として結合される。酸素含有銅を溶接すると、大気からの水素が溶接溶融物中に拡散し、亜酸化銅と反応して水蒸気を生じさせ得る。これにより、相当な体積膨張が生じる。主に粒界に小さな蒸気泡が生じ、粒界に沿って亀裂を引き起こすリスクがある。このため、水および/または湿気が溶接物を通ってさらに絶縁システムへと拡散するリスクがあるため、例えば絶縁システム中での水トリーによりケーブルを損傷させるおそれがある。
【0006】
すべてのステンレス鋼が、海底電力ケーブル用の金属シースとして使用されるのに好適なわけではない。例えば、自生溶接される一部のステンレス鋼は、好ましくない凝固プロセスや相転移に起因して生じる亀裂などの溶接欠陥を呈し、かつ/または、海底電力ケーブル用途でステンレス鋼が供される重荷に対処不能な好ましくない溶接微細構造をもたらすことになる。
【0007】
上記を鑑みて、本開示の目的は、先行技術の問題を解決または少なくとも軽減する海底電力ケーブルを製造する方法を提供することである。
【0008】
したがって、本開示の第1の態様によれば、a)導体の周囲に絶縁システムを設けることであって、絶縁システムが、導体の周囲に配置された内側半導体層、内側半導体層の周囲に配置された絶縁層、および絶縁層の周囲に配置された外側半導体層を備える、設けること、b)絶縁システムの周囲に金属シースを配置すること、ならびにc)自生溶接によって金属シースの両縁部を長手方向に溶接して絶縁システムの周囲に金属製止水層を形成することを含む、海底電力ケーブルを製造する方法であって、金属シースが、少なくとも99重量%の銅および最大0.1重量%の酸素を含んだ銅材料からなるか、または、Schaeffler-DeLongの状態図に従い16~25の範囲のクロム当量および11~22の範囲のニッケル当量を有するステンレス鋼からなり、この場合にクロム当量が式%Cr+%Mo+1.5×%Si+0.5×%Nbに従い算出され、ニッケル当量が式%Ni+0.5×%Mn+30×(%C+%N)に従い算出される、方法が提供される。
【0009】
酸素含有量が極めて少ない銅材料を使用することにより、溶接部および熱影響部(Heat Affected Zone:HAZ)における水素脆化のリスクが低減される。さらに、自生溶接による溶接を行うことによって、典型的に脱酸素剤を含有する溶加材は必要とされない。銅材料自体のみが溶融される。これにより、高品質の溶接が確保される。
【0010】
これらの範囲内にあるステンレス鋼は、溶接部の凝固中にいかなる硬化プロセスも受けず、さらに、完全なオーステナイト相ではなく、凝固亀裂を回避するのに非常に有益であるデルタフェライト相で凝固する。
【0011】
自生溶接とは、いかなる溶加材/溶接材料も使用することなく縁部を溶融して接合することによって、金属シースの両縁部を溶接することを意味する。
【0012】
自生溶接を使用することによって、頂部または根元の寸法が過剰に溶接されることなく溶接形状は非常に滑らかになるので、海底電力ケーブルの断面を本質的に円形の対称的形状とする必要がある止水層に有益である。さらに、溶接形状における重大な溶接ずれのリスクが低減される。溶接材料の添加によって溶接プールへの断続的な供給が生じるおそれがあり、このリスクは、海底電力ケーブルの長区間にわたって溶接が連続的に行われる場合に増大する。さらに、溶接ワイヤの汚染または不良によって生じる溶接の乱れのリスクも、溶接の中断および乱れを生じさせるおそれのあるワイヤ送給ラインの破損のリスクも存在しない。自生溶接の使用によって、例えば金属製止水層がコルゲーションプロセスに供される場合、ならびに/またはローラおよび/もしくはダイによる縮径に供される場合に、金属製止水層の取り扱いも容易になる。
【0013】
海底電力ケーブルは、AC海底電力ケーブルまたはDC海底電力ケーブルであってもよい。
【0014】
海底電力ケーブルは、中電圧または高電圧の海底電力ケーブルであってもよい。高電圧とは、海底電力ケーブルの30kV以上の公称電圧を意味する。
【0015】
一実施形態によれば、工程c)が実行された後、ステンレス鋼は、溶接シームにおいて1~15の範囲のフェライト価を有する。このため、ステンレス鋼溶接金属、すなわち自生溶接によって形成された溶接シームは、1~15の範囲のフェライト価を有する。それゆえ、Schaeffler-DeLongの状態図による上記で定義されたクロム当量およびニッケル当量の範囲と組み合わせてフェライト価によって形成される境界内にあるステンレス鋼は、自生溶接されると、決して完全なオーステナイト系ステンレス鋼ではない。完全なオーステナイト系微細構造をもたらすオーステナイト系ステンレス鋼は、凝固亀裂のリスクが劇的に増加するため、自生溶接がより困難となる。
【0016】
一実施形態によれば、工程c)は、保護シールドガスを使用して実行される。1つまたは複数の不活性ガスなどの保護シールドガスを使用すると、溶接シームの酸化リスクが無くなる。
【0017】
一実施形態によれば、銅材料は、最大0.05重量%、最大0.04重量%の酸素、最大0.004重量%、最大0.001重量%の酸素など、最大0.06重量%の酸素を含む。銅材料に含まれる酸素が少ないほど、自生溶接プロセスの結果として溶接シームの水素脆化のリスクが少なくなる。
【0018】
銅材料は、0.001重量%~0.004重量%未満など、0.001重量%~0.06重量%未満の範囲で酸素を含み得る。
【0019】
一実施形態によれば、銅材料は少なくとも99.9重量%の銅を含む。
【0020】
一実施形態によれば、銅材料はCu-DHP、Cu-ETP、またはCu-OFである。これらの銅材料は、意図的に合金化された銅ではなく、凝固中にいずれの硬化プロセスも受けない一相金属であり、これは溶接品質に最も有益なものである。
【0021】
リンは熱伝導率を低下させることでより低い溶接入熱の使用を可能にし、結果としてより良好な溶融挙動をもたらすことから、リンで脱酸素化された銅材料であるCu-DHPが、銅を自生溶接する場合に特に好適である。銅に残る残留リン量が水素と競合し、その酸素に対する強力な親和性により、材料に残るすべての酸素の酸素含有ホスフェートの形成が生じるという、別の利点もある。
【0022】
一実施形態によれば、銅材料の試料は、EN1976の8.2.2章、およびEN ISO2626に従い実施された水素脆化試験の後、亀裂の痕跡を示さない。このため、水素脆化試験はEN1976の8.2.2章の試験であり、試験の仕様についてはEN ISO2626を参照されたい。脆化の検証は、EN ISO2626に記載される試験、例えば、前後曲げ検査および顕微鏡検査に従い行うことができる。
【0023】
一実施形態によれば、ステンレス鋼は、ASTM A240/A240M-22bにより定められる304、304L、316、もしくは316L、316Ti、316Cb 321、または347の型のうち1つから選択されるオーステナイト系ステンレス鋼型、あるいはEN10088-1:2005によるそれらの等価物である。
【0024】
一実施形態によれば、自生溶接は、レーザ、タングステン不活性ガスすなわちTIG、またはプラズマによる自生溶接のうち1つである。
【0025】
一実施形態によれば、金属シースは、0.4~2mmの範囲の厚さを有する。溶加材を添加すると溶接異常のリスクが高まるため、自生溶接は、溶接溶加材の使用時と比較してこの厚さ範囲で特に都合が良い。
【0026】
一実施形態によれば、海底電力ケーブルは動的海底電力ケーブルである。
【0027】
一実施形態によれば、海底電力ケーブルは静的海底電力ケーブルである。
【0028】
一実施形態によれば、工程c)は、周囲に絶縁システムを有する導体が長手方向に移動する間に実行され、工程c)は、少なくとも10kmなど少なくとも5kmの、導体および絶縁システムの連続長さにわたって実行される。
【0029】
一実施形態によれば、海底電力ケーブルは高電圧の海底電力ケーブルである。
【0030】
第2の態様によれば、第1の態様の方法によって取得可能な海底電力ケーブルが提供される。
【0031】
概して、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書で特に明記されない限り、当該技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されたい。「要素、装置、成分、手段(a/an/the element,apparatus,component,means)」などに対するすべての言及は、特に明記されない限り、その要素、装置、成分、手段などの少なくとも1つの例を指すものとして広く解釈されたい。
【0032】
ここで、添付の図面を参照しつつ、本発明の概念の具体的な実施形態を例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】海底電力ケーブルの一例の断面図を概略的に示す図である。
【
図2】絶縁システムの周囲に配置された金属シースの自生溶接の斜視図を概略的に示す図である。
【
図3】海底電力ケーブルを製造する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
ここで、例示的な実施形態が示される添付の図面を参照しつつ、以下に本発明の概念をより詳細に説明する。しかし、本発明の概念は多くの異なる形態で具体化され得るが、本明細書に明記される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではなく、むしろこれらの実施形態は、本開示を徹底的かつ完全なものにして本発明の概念の範囲を当業者に詳細に伝えるように、例として提供される。本明細書全体において、同様の符号は同様の要素を指す。
【0035】
図1は、海底電力ケーブル1の一例の断面図を示す。例示的な海底電力ケーブル1は単芯海底電力ケーブルを表しているが、海底電力ケーブル1は代替的に多芯海底電力ケーブルとすることもできる。
【0036】
海底電力ケーブル1は、AC海底電力ケーブルまたはDC海底電力ケーブルであってもよい。
【0037】
海底電力ケーブル1は、導体3と、導体3の周囲に配置された絶縁システム5とを備える。
【0038】
絶縁システム5は、導体3の周囲に配置された内側半導体層7と、内側半導体層7の周囲に配置された絶縁層9と、絶縁層9の周囲に配置された外側半導体層11とを備える。
【0039】
絶縁システム5は、油などの絶縁流体を含浸させた押出形成絶縁システムまたは紙系絶縁システムであってもよい。
【0040】
絶縁システム5は、押出形成絶縁システムである場合、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンゴム(EPR)、またはエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)などのポリマー材料を含む。
【0041】
海底電力ケーブル1は、さらに金属製止水層13を備える。金属製止水層13は、いずれの溶加材も含まず形成された長手方向の溶接シームを有する。このため、金属製止水層13は自生溶接されている。
【0042】
金属製止水層13は、少なくとも99重量%の銅および最大0.1重量%の酸素を含む銅材料で作製されるか、またはSchaeffler-DeLongの状態図に従い16~25の範囲のクロム当量および11~22の範囲のニッケル当量を有するステンレス鋼で作製され、この場合にクロム当量は式%Cr+%Mo+1.5×%Si+0.5×%Nbに従い算出され、ニッケル当量は式%Ni+0.5×%Mn+30×(%C+%N)に従い算出される。
【0043】
金属製止水層13は、0.4~2mmの範囲の厚さを有し得る。
【0044】
銅材料は、最大0.05重量%、最大0.04重量%の酸素、最大0.004重量%、最大0.001重量%の酸素など、最大0.06重量%の酸素を含み得る。
【0045】
銅材料は、少なくとも99.9重量%の銅を含み得る。
【0046】
銅材料は、例えばCu-DHP、Cu-ETP、またはCu-OFであってもよい。
【0047】
銅材料の試料は、一例によれば、EN1976の8.2.2章、およびEN ISO2626に従い実施された水素脆化試験の後、亀裂の痕跡を示さない場合がある。
【0048】
ステンレス鋼は、溶接シームにおいて1~15の範囲のフェライト価を有し得る。
【0049】
ステンレス鋼は、ASTM A240/A240M-22bにより定められる304、304L、316、316L、316Ti、316Cb 321、もしくは347の型のうち1つから選択されるオーステナイト系ステンレス鋼型、またはEN10088-1:2005によるそれらの等価物であり得る。
【0050】
海底電力ケーブル1は、金属製止水層13の周囲に配置されたポリマー層15を備える。ポリマー層15は、金属製止水層13の上に押出成形され得る。ポリマー層15は、一例によれば、ホットメルト接着剤などの接着剤によって金属製止水層13の外面に結合され得る。
【0051】
海底電力ケーブル1は、1つまたは複数の層においてポリマー層15の周囲に螺旋状に置かれた複数の装甲要素17を備えた装甲層を備え得る。
【0052】
海底電力ケーブル1は、ポリマー材料で構成された外側シースであり得る外層19、または複数の螺旋状に巻き付けられたポリマー要素で構成された外側サービングを有し得る。
【0053】
ここで
図2と
図3を参照しつつ、海底電力ケーブル1などの海底電力ケーブルの製造方法を説明する。
【0054】
工程a)では、絶縁システム5が導体3の周囲に設けられる。
【0055】
絶縁システム5は、例えば、三段押出法などによって導体3の上に押出成形され得る。代替的に絶縁システム5は、半導体テープおよび絶縁紙テープを巻き付けて内側半導体層7、絶縁層9、および外側半導体層11を形成することによって形成され得る。この場合、工程b)の前に、導体3に巻き付けられた紙テープを含浸させる。
【0056】
工程b)では、金属シース12が絶縁システム5の周囲に配置される。金属シース12は、絶縁システム5の周囲に長手方向に巻き付けられたテープであってもよい。
【0057】
金属シースは、少なくとも99重量%の銅および最大0.1重量%の酸素を含む銅材料からなるか、またはSchaeffler-DeLongの状態図に従い16~25の範囲のクロム当量および11~22の範囲のニッケル当量を有するステンレス鋼からなり、この場合にクロム当量は式%Cr+%Mo+1.5×%Si+0.5×%Nbに従い算出され、ニッケル当量は式%Ni+0.5×%Mn+30×(%C+%N)に従い算出される。
【0058】
金属シース12は、0.4~2mmの範囲の厚さを有し得る。
【0059】
銅材料は、最大0.05重量%、最大0.04重量%の酸素、最大0.004重量%、最大0.001重量%の酸素など、最大0.06重量%の酸素を含み得る。
【0060】
銅材料は、少なくとも99.9重量%の銅を含み得る。
【0061】
銅材料は、例えばCu-DHP、Cu-ETP、またはCu-OFであってもよい。
【0062】
銅材料の試料は、一例によれば、EN1976の8.2.2章、およびEN ISO2626に従い実施された水素脆化試験の後、亀裂の痕跡を示さない場合がある。
【0063】
ステンレス鋼は、ASTM A240/A240M-22bにより定められる304、304L、316、316L、316Ti、316Cb 321、もしくは347の型のうち1つから選択されるオーステナイト系ステンレス鋼型、またはEN10088-1:2005によるそれらの等価物であり得る。
【0064】
工程c)では、金属シース12の両縁部12aおよび12bが自生溶接により長手方向に溶接されることで、絶縁システム5の周囲に金属製止水層13が形成される。本プロセスは
図2で確認することができ、導体3と、絶縁システム5と、絶縁システム5の周囲に配置された金属シース12とを備えたケーブル芯が、矢印23で示されるようにケーブル芯の長手方向軸に沿って移動するように、溶接ツール21が両縁部12aおよび12bを自生溶接する。
【0065】
両縁部12aおよび12bは、好ましくは、工程c)が実行されているときに金属シース12の同じ接平面内で互いに位置合わせされる。
【0066】
一実施形態によれば、工程c)で自生溶接が実施された後、ステンレス鋼は溶接シームにおいて1~15の範囲のフェライト価を有する。
【0067】
自生溶接は、レーザ、タングステン不活性ガス(TIG)、またはプラズマによる自生溶接のうち1つであってもよい。このため溶接ツール21は、レーザ自生溶接ツール、TIG自生溶接ツール、またはプラズマ自生溶接ツールであってもよい。
【0068】
工程c)での溶接は、好ましくは、保護シールドガス、例えば、金属シースがステンレス鋼で作製される場合に、任意選択で数重量パーセントの酸素ガス、二酸化炭素ガス、または水素ガスと混合された、アルゴンやヘリウムなど90%超の不活性ガスを含んだガスを使用して実施される。このため、工程c)での溶接は、無酸素で、または少なくとも本質的に無酸素の環境下で実施される。
【0069】
工程c)では、溶接に供される金属シース12の両縁部12aおよび12bは、好ましくは、外側半導体層11の外面から離れて放射状に配置される。このため、溶接領域および発生した熱は、絶縁システム5から離間される。
【0070】
工程c)の後、金属製止水層13は、一例によれば縮径に供され得る。この場合、一組のローラを金属製止水層13の外面に押し付けることで、金属製止水層13の直径が縮小される。代替的に、金属製止水層13の直径を縮小させるために、ダイが使用されるか、またはセットもしくはローラと組み合わされてもよい。
【0071】
本方法によって得られる海底電力ケーブル1は、動的海底電力ケーブルまたは静的海底電力ケーブルであってもよい。
【0072】
静的海底電力ケーブルは、典型的に動的海底電力ケーブルよりもはるかに長いので、より長い長さで作製される。工程c)は、少なくとも10kmなど少なくとも5kmである、導体3および絶縁システム5の連続長さに対して実施され得る。
【0073】
本発明の概念が、主にいくつかの例を参照しつつ上述されてきた。しかし、当業者によって容易に理解されるように、上記で開示されたもの以外の他の実施形態も、添付の特許請求の範囲によって定められるように本発明の概念の範囲内で等しく可能である。
【外国語明細書】