(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084715
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】黒鉛合金を含むコーティング構造およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/01 20060101AFI20240618BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240618BHJP
C25D 15/02 20060101ALI20240618BHJP
C09D 201/00 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
B32B15/01 E
B32B9/00 A
C25D15/02 F
C25D15/02 N
C25D15/02 Q
C09D201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023208164
(22)【出願日】2023-12-11
(31)【優先権主張番号】202211603745.8
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】508079120
【氏名又は名称】タイコ エレクトロニクス (シャンハイ) カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】516193944
【氏名又は名称】タイコ エレクトロニクス テクノロジー (エスアイピー) カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】521523202
【氏名又は名称】タイコ エレクトロニクス (スーヂョウ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100229736
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 剛
(72)【発明者】
【氏名】ダイチィオン ダイアナ ヂァン
(72)【発明者】
【氏名】ヂェンイー ジュリー ヂゥー
(72)【発明者】
【氏名】ウェンヂァン マァー
(72)【発明者】
【氏名】ドォンチィン ゲイツ パァン
(72)【発明者】
【氏名】チゥンイェン シェリー ヂォウ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイドォン ヂァン
(72)【発明者】
【氏名】ヂォンシィー ファン
(72)【発明者】
【氏名】クゥークゥー ガァン
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AA37B
4F100AA37D
4F100AB01A
4F100AB01C
4F100AB01E
4F100AB16A
4F100AB16C
4F100AB16E
4F100AB21A
4F100AB21B
4F100AB21C
4F100AB21D
4F100AB21E
4F100AB22B
4F100AB22D
4F100AB24A
4F100AB24B
4F100AB24C
4F100AB24D
4F100AB24E
4F100AB31B
4F100AB31D
4F100BA05
4F100CA19B
4F100CA19D
4F100CA19H
4F100EH712
4F100EH71A
4F100EH71B
4F100EH71C
4F100EH71D
4F100EH71E
4F100GB31
4F100GB41
4F100GB51
4F100JG01
4F100JJ01
4F100JK09
4J038EA011
4J038PB01
4J038PB07
4J038PB09
4J038PC02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コーティング中の黒鉛粒子が空気中に浮遊することを防止することが可能な、コーティング構造を提供する。
【解決手段】コーティング構造は、基体と、第1の金属層と、第2の合金層と、第3の金属層と、第4の合金層とを備える。第1の金属層は、基体の外面にめっきされ、黒鉛を含まない。第2の合金層は、第1の金属層の外面にめっきされ、黒鉛および金属から合成された合金を含む。第3の金属層は、第2の合金層の外面にめっきされ、黒鉛を含まない。第4の合金層は、第3の金属層の外面にめっきされ、黒鉛および金属から合成された合金を含む。黒鉛を含まない金属層および黒鉛を含む合金層を積層状に繰り返すように配置することにより、コーティング構造を任意の厚さに配置し、黒鉛合金をそのコーティング構造内に封止し、黒鉛粒子が空気中に浮遊することを防止することができる。また、本発明はさらに、コーティング構造の調製方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体の外面にめっきされている、黒鉛を含まない第1の金属層と、
前記第1の金属層の外面にめっきされている、黒鉛および金属から合成された合金を含む第2の合金層と、
前記第2の合金層の外面にめっきされている、黒鉛を含まない第3の金属層と、
前記第3の金属層の外面にめっきされている、黒鉛および金属から合成された合金を含む第4の合金層と
を備える、
コーティング構造。
【請求項2】
前記第4の合金層の外面にめっきされている、黒鉛を含まない第5の金属層と、
前記第5の金属層の外面にめっきされている、黒鉛および金属から合成された合金を含む第6の合金層と
をさらに備える、
請求項1に記載のコーティング構造。
【請求項3】
前記コーティング構造の最外面を被覆する有機層
をさらに備える、
請求項1または請求項2に記載のコーティング構造。
【請求項4】
前記コーティング構造の第2外面にめっきされている金属シール層
をさらに備える、
請求項1または請求項2に記載のコーティング構造。
【請求項5】
前記第1の金属層および前記第3の金属層は各々、銀層、金層、スズ層、白金層、ニッケル層、パラジウム層、銀合金層、金合金層、スズ合金層、白金合金層、ニッケル合金層、およびパラジウム合金層の単層または複数の積層されている層を含み、
前記第2の合金層および前記第4の合金層は各々、少なくとも黒鉛および銀から合成された合金層、少なくとも黒鉛および金から合成された合金層、少なくとも黒鉛およびスズから合成された合金層、少なくとも黒鉛およびニッケルから合成された合金層、少なくとも黒鉛およびパラジウムから合成された合金層、少なくとも黒鉛およびアンチモンから合成された合金層、ならびに少なくとも黒鉛およびビスマスから合成された合金層の単層または複数の積層されている層を含む、
請求項1に記載のコーティング構造。
【請求項6】
コーティング構造の調製方法であって、前記方法は、
基体の外面に、黒鉛を含まない第1の金属層をめっきすることと、
黒鉛を含むコロイドを、第2の金属のイオンを含む電気めっき溶液と混合することと、
前記第2の金属のイオンを含む前記混合された電気めっき溶液を前記第1の金属層の外面に電着させて、黒鉛および前記第2の金属から合成された第2の合金層を得ることと
を含む、
調製方法。
【請求項7】
黒鉛を含む前記コロイドは、
Sn2+およびPd2+を含むコロイドに黒鉛粒子を添加し、それらを十分に撹拌すること
により得られる、
請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
前記方法は、
超音波水洗浄を用いて、前記第2の合金層の表面における黒鉛粒子を除去すること
をさらに含む、
請求項6に記載の調製方法。
【請求項9】
前記方法は、
前記第2の合金層の外面に、黒鉛を含まない第3の金属層をめっきすることと、
黒鉛を含むコロイドを、第4の金属のイオンを含む電気めっき溶液と混合することと、
前記第4の金属のイオンを含む前記混合された電気めっき溶液を前記第3の金属層の外面に電着させて、黒鉛および前記第4の金属から合成された第4の合金層を得ることと
をさらに含む、
請求項8に記載の調製方法。
【請求項10】
前記第1の金属層は、銀層、金層、スズ層、白金層、ニッケル層、パラジウム層、銀合金層、金合金層、スズ合金層、白金合金層、ニッケル合金層、およびパラジウム合金層の単層または複数の積層されている層を含み、
前記第2の合金層は、少なくとも黒鉛および銀から合成された合金層、少なくとも黒鉛および金から合成された合金層、少なくとも黒鉛およびスズから合成された合金層、少なくとも黒鉛およびニッケルから合成された合金層、少なくとも黒鉛およびパラジウムから合成された合金層、少なくとも黒鉛およびアンチモンから合成された合金層、ならびに少なくとも黒鉛およびビスマスから合成された合金層の単層または複数の積層されている層を含む、
請求項6に記載の調製方法。
【請求項11】
前記方法は、
前記コーティング構造の最外面を有機層で被覆すること
をさらに含む、
請求項6に記載の調製方法。
【請求項12】
前記方法は、
前記コーティング構造の第2外面に金属シール層をめっきすること
をさらに含む、
請求項6に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気めっきの分野に関し、より詳細には、黒鉛合金(グラファイト合金)を含むコーティング構造およびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子工学、ヘルスケア、機関車、航空、および航行のための構成要素において、様々な金属コーティングが広く用いられている。構成要素の性能の急速な発展に伴い、金属コーティングの電気伝導性、熱伝導性、耐摩耗性、耐腐食性、およびはんだ付け性能等に関する人々の要求がより一層高まっている。黒鉛合金を用いてコーティングを作製することで、その潤滑性および耐摩耗性を増大させることができ、その結果、改善された電気伝導性、熱伝導性、および耐摩耗性を伴うより低い摩擦係数が得られることが判明している。
【0003】
しかしながら、黒鉛(グラファイト)は無極性であるために非親水性となり、黒鉛合金の調製プロセスにおいて、黒鉛が分離および析出(precipitate)しやすい。この結果、黒鉛がコーティング中で不均一に分布する。黒鉛は、コーティングの表層に分布しやすく、黒鉛の含有量が増大するにつれて、コーティングの付着力が減少する。その成膜品質(deposition quality)および成膜効率は高くない。さらに、調製プロセス中に黒鉛が部分的に析出(precipitate)するため、遊離した黒鉛の粉塵が人の健康に有害であり得る。それを長期間吸引した人は、アレルギー性ぜんそくおよび粉塵に関連する疾病を患う場合がある。黒鉛合金を調製するための現行の方法は、めっき溶液の狭い作用範囲(working window)、コーティングの限られた厚さ、および工業的大量生産の難しさなどの他の短所も有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の課題を解決するために、本発明は、コーティング中の黒鉛粒子(グラファイト粒子)が空気中に浮遊することを防止することが可能な、黒鉛合金(グラファイト合金)をコーティング構造内部に封止(seal、閉じ込める)するコーティング構造を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これに基づいて、本発明の一実施形態によれば、コーティング構造が提供される。コーティング構造は、基体と、第1の金属層と、第2の合金層と、第3の金属層と、第4の合金層とを備える。第1の金属層は、基体の外面にめっきされ、黒鉛を含まない。第2の合金層は、第1の金属層の外面にめっきされ、黒鉛および金属から合成された合金を含む。第3の金属層は、第2の合金層の外面にめっきされ、黒鉛を含まない。第4の合金層は、第3の金属層の外面にめっきされ、黒鉛および金属から合成された合金を含む。
【0006】
本実施形態においては、黒鉛を含まない金属層および黒鉛を含む合金層を積層状に繰り返して配置することにより、コーティング構造を任意の所望の厚さに配置し、実際の応用の要件を満たすことができる。加えて、黒鉛を含まない金属層は、コーティング内の黒鉛粒子が空気中に浮遊することを防止し、それにより人の健康に対する危険を回避することができるので、特にコーティング構造が摩耗した場合に、シール層としても機能することができる。
【0007】
一実施形態において、コーティング構造は、第5の金属層および第6の合金層をさらに含む。第5の金属層は、第4の合金層の外面にめっきされ、黒鉛を含まない。第6の合金層は、第5の金属層の外面にめっきされ、黒鉛および金属から合成された合金を含む。
【0008】
一実施形態において、コーティング構造は、コーティング構造の最外面を被覆する有機層をさらに含む。
【0009】
一実施形態において、コーティング構造は、コーティング構造の第2外面にめっきされる金属シール層をさらに含む。
【0010】
一実施形態において、第1の金属層および第3の金属層は各々、銀層、金層、スズ層、白金層、ニッケル層、パラジウム層、銀合金層、金合金層、スズ合金層、白金合金層、ニッケル合金層、およびパラジウム合金層の単層または複数の積層されている層を含む。第2の合金層および第4の合金層は各々、少なくとも黒鉛および銀から合成された合金層、少なくとも黒鉛および金から合成された合金層、少なくとも黒鉛およびスズから合成された合金層、少なくとも黒鉛およびニッケルから合成された合金層、少なくとも黒鉛およびパラジウムから合成された合金層、少なくとも黒鉛およびアンチモンから合成された合金層、ならびに少なくとも黒鉛およびビスマスから合成された合金層の単層または複数の積層されている層を含む。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、コーティング構造の調製方法が提供される。方法は、基体の外面に黒鉛を含まない第1の金属層をめっきすることと、黒鉛を含むコロイドを、第2の金属イオンを含む電気めっき溶液と混合することと、第2の金属イオンを含む混合された電気めっき溶液を第1の金属層の外面に電着させて、黒鉛および第2の金属から合成された第2の合金層を得ることとを含む。
【0012】
一実施形態において、黒鉛を含むコロイドは、Sn2+およびPd2+を含むコロイドに黒鉛粒子を添加し、それらを十分に撹拌することにより得られる。
【0013】
一実施形態において、方法は、超音波水洗浄を用いて、第2の合金層の表面における黒鉛粒子を除去することをさらに含む。
【0014】
一実施形態において、方法は、第2の合金層の外面に、黒鉛を含まない第3の金属層をめっきすることと、黒鉛を含むコロイドを、第4の金属イオンを含む電気めっき溶液と混合することと、第4の金属イオンを含む混合された電気めっき溶液を第3の金属層の外面に電着させて、黒鉛および第4の金属から合成された第4の合金層を得ることとをさらに含む。
【0015】
一実施形態において、第1の金属層は、銀層、金層、スズ層、白金層、ニッケル層、パラジウム層、銀合金層、金合金層、スズ合金層、白金合金層、ニッケル合金層、およびパラジウム合金層の単層または複数の積層されている層を含む。第2の合金層は、少なくとも黒鉛および銀から合成された合金層、少なくとも黒鉛および金から合成された合金層、少なくとも黒鉛およびスズから合成された合金層、少なくとも黒鉛およびニッケルから合成された合金層、少なくとも黒鉛およびパラジウムから合成された合金層、少なくとも黒鉛およびアンチモンから合成された合金層、ならびに少なくとも黒鉛およびビスマスから合成された合金層の単層または複数の積層されている層を含む。
【0016】
一実施形態において、方法は、コーティング構造の最外面を有機層で被覆することをさらに含む。
【0017】
一実施形態において、方法は、コーティング構造の第2外面に金属シール層をめっきすることをさらに含む。
【0018】
本発明の他の特徴および利点が、添付の図面に関連して、また好適な実施形態の以下の詳細な説明を参照して、より良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコーティング構造の模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るコーティング構造を調製するための方法の例示的フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の技術的解決策を、実施形態を通して、また添付の図面に関連して、下記で詳細に説明する。説明の全体にわたって、同じまたは同様の参照番号は、同じまたは同様の構成要素を示す。添付の図面を参照した本開示の実施形態の以下の説明は、本開示の全体的な発明概念を説明することを意図したものであり、本開示に対する限定として解釈されるべきではない。
【0021】
本開示において用いられる「含む」、「備える」等の用語は、非限定的な用語、すなわち、他の要素も含まれ得ることを示す「含む/備えるがそれに限定されない」として解釈されるべきである。「基づく」という用語は、「少なくとも部分的に基づく」を示す。「1つの実施形態」という用語は、「少なくとも1つの実施形態」を示す。「別の実施形態」という用語は、「少なくとも1つのさらなる実施形態」を示す。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係るコーティング構造の模式図を示す。コーティング構造100は、少なくとも、基体102と、第1の金属層104と、第2の合金層106と、第3の金属層108と、第4の合金層110とを備える。
【0023】
基体102は、銅、ニッケル、プラスチック、ポリマー材料等のような金属または非金属の基体材料であってよく、基体102は、銅コーティング、ニッケルコーティング等のような基体コーティング(substrate coating)であってもよい。
【0024】
第1の金属層104は、基体102の外面にめっきされ、第1の金属層は、黒鉛を含まない。第1の金属層104は、純金属または合金であってよい。第1の金属層104は、銀層、金層、スズ層、白金層、ニッケル層、パラジウム層、銀合金層(銀スズ合金など)、金合金層(金コバルト合金または金ニッケル合金など)、スズ合金層、白金合金層、ニッケル合金層(ニッケルリン合金など)、およびパラジウム合金層(パラジウムニッケル合金など)の単層または複数の積層された層を含んでよい。例えば、第1の金属層104は、銀層、積層状の銀層および金層、または積層状の銀層および銀スズ合金層であってよい。
【0025】
第2の合金層106は、第1の金属層104の外面にめっきされ、第2の合金層106は、黒鉛および金属から合成される合金を含む。第2の合金層106は、少なくとも黒鉛および銀から合成される合金層(銀黒鉛または銀スズ黒鉛など)、少なくとも黒鉛および金から合成される合金層(金黒鉛または金コバルト黒鉛など)、少なくとも黒鉛およびスズから合成される合金層(スズ黒鉛など)、少なくとも黒鉛およびニッケルから合成される合金層(ニッケル黒鉛またはパラジウムニッケル黒鉛など)、少なくとも黒鉛およびパラジウムから合成される合金層(銀パラジウム黒鉛など)、少なくとも黒鉛およびアンチモンから合成される合金層、ならびに少なくとも黒鉛およびビスマスから合成される合金層の単層または複数の積層された層を含む。
例えば、第2の合金層106は、銀スズ黒鉛層、または積層状の銀黒鉛層およびスズ黒鉛層であってよい。第1の金属層104は、めっきおよび面張力(face tension)の低減のために第2の合金層106と同様の構造を提供してよく、それにより、第2の合金層106を第1の金属層104と密に結合させることができる。第2の合金層106を基体102に直接めっきすることと比較して、第1の金属層104の配置により、黒鉛合金を基体102と直接結合させた場合の弱い付着力の課題を解決することができる。
【0026】
第3の金属層108は、第2の合金層106の外面にめっきされ、第3の金属層108は、黒鉛を含まない。第3の金属層108の配置は、第1の金属層104の配置と同様である。特に、第3の金属層108は、銀層、金層、スズ層、白金層、ニッケル層、パラジウム層、銀合金層、金合金層、スズ合金層、白金合金層、ニッケル合金層、およびパラジウム合金層の単層または複数の積層された層を含んでよい。
【0027】
第4の合金層110は、第3の金属層108の外面にめっきされ、第4の合金層110は、黒鉛および金属から合成される合金を含む。第4の合金層110の配置は、第2の合金層106の配置と同様である。特に、第4の合金層110は、少なくとも黒鉛および銀から合成される合金層、少なくとも黒鉛および金から合成される合金層、少なくとも黒鉛およびスズから合成される合金層、少なくとも黒鉛およびニッケルから合成される合金層、少なくとも黒鉛およびパラジウムから合成される合金層、少なくとも黒鉛およびアンチモンから合成される合金層、ならびに少なくとも黒鉛およびビスマスから合成される合金層の単層または複数の積層された層を含んでよい。
【0028】
任意選択的に、コーティング構造100は、第5の金属層112を含んでよい。第5の金属層112は、第4の合金層110の外面にめっきされ、第5の金属層112は、黒鉛を含まない。第5の金属層112の配置は、第1の金属層104の配置と同様である。
【0029】
任意選択的に、コーティング構造100は、第6の合金層114を含んでよい。第6の合金層114は、第5の金属層112の外面にめっきされ、第6の合金層114は、黒鉛および金属から合成される合金を含む。第6の合金層114の配置は、第2の合金層106の配置と同様である。
【0030】
任意選択的に、コーティング構造100は、繰り返しスタック層(repeating stacked layer)116をさらに含む。繰り返しスタック層116は、積層状の一対または複数対の金属層および合金層を含む。例えば、繰り返しスタック層116は、積層状の一対の金属層および合金層を含んでよく、金属層の配置は、第1の金属層104の配置と同様であり、合金層の配置は、第2の合金層106の配置と同様である。
【0031】
コーティング構造100における全ての金属層、すなわち第1の金属層104、第3の金属層108、第5の金属層112、および繰り返しスタック層116における金属層は、同じまたは異なる構造およびコーティング組成を有してよいことに留意されたい。同様に、コーティング構造100における全ての合金層、すなわち第2の合金層106、第4の合金層110、第6の合金層114、および繰り返しスタック層116における合金層は、同じまたは異なる構造およびコーティング組成を有してよい。黒鉛を含まない金属層および黒鉛を含む合金層を積層状に繰り返して配置することにより、コーティング構造100を任意の所望の厚さに配置し、実際の応用の要件を満たすことができる。
加えて、黒鉛を含まない金属層は、コーティング内の黒鉛粒子が空気中に浮遊することを防止し、それにより人の健康に対する危険を回避することができるので、特にコーティング構造100が摩耗した場合に、シール層としても機能することができる。
【0032】
任意選択的に、コーティング構造100は、金属シール層118をさらに含む。銀層、スズ層、または銀スズ合金層であり得る金属シール層118は、コーティング構造を封止するために、コーティング構造100の第2外面にめっきされる。
【0033】
任意選択的に、コーティング構造100は、有機層120をさらに含む。シール剤または潤滑油等であり得る有機層120は、コーティング構造100の最外面を被覆する。
【0034】
図2は、本発明の一実施形態に係るコーティング構造100の例示的な調製方法を示す。調製方法200は、高速連続めっき、バレルめっき、およびラックめっきの生産ラインに適用することができる。コーティング構造100が個別部品(odd part)において調製される場合、個別部品をラックに吊るすまたはバレルに入れる必要がある。コーティング構造100が連続的なストリップまたはコンベアベルトにおいて調製される場合、ストリップのロールまたはベルトを緩める必要があり、それがめっきラインに入る。めっきラインは、直線状ラインまたはS字型ラインであってよい。
【0035】
ステップS202:第1の金属層104が、基体102の外面にめっきされる。第1の金属層104は、黒鉛を含まない。本実施形態において、第1の金属層104は、フラッシュめっきにより得られる。他の実施形態においては、第1の金属層104を得るために、化学めっきおよび溶融めっきなどの他の金属めっき技法が用いられてもよい。
【0036】
ステップS204:黒鉛を含むコロイドが、第2の金属イオンを含む電気めっき溶液と混合される。特に、Sn2+およびPd2+を含むコロイドに黒鉛粒子を添加し、十分に撹拌することで、黒鉛を含むコロイドが得られる。例えば、まず塩化第一スズおよび塩化パラジウムの酸性コロイド溶液を調製し、次いでヘキサメタリン酸ナトリウムまたはスズ酸ナトリウムなどのアニオン系分散剤を添加して溶液と混合することで、均一かつ安定なコロイドが得られる。代替的に、Sn2+がコロイドパラジウムに添加され、Sn2+およびPd2+の濃度が調整される。次いで、マイクロサイズまたはナノサイズの黒鉛をコロイドに添加し、完全に撹拌することで、黒鉛を含むコロイドが得られる。銀スズ黒鉛の第2の合金層106を得るために、本実施形態は、黒鉛を含むコロイドを第2の金属イオン(すなわちAg+およびSn2+)を含む電気めっき溶液と混合する。
他の例においては、他のタイプの黒鉛合金を得るために、黒鉛を含むコロイドが、他の第2の金属イオン(金イオン、ニッケルイオン等)を含有する電気めっき溶液と混合される。
【0037】
ステップS206:黒鉛および第2の金属から合成される第2の合金層106を得るために、第2の金属イオンを含む混合された電気めっき溶液が第1の金属層104の外面に電着されるように用いられる。電着の過程において、第2の金属イオン(すなわちAg+およびSn2+)および黒鉛が共に第1の金属層104の外面に析出され、それにより銀スズ黒鉛の第2の合金層106が得られる。
【0038】
ステップS208:第2の合金層106の表面における黒鉛粒子を除去するために、超音波水洗浄が用いられる。
【0039】
任意選択的に、本実施形態は、第3の金属層108が第2の合金層106の外面にめっきされるステップS210の実行に進む。第3の金属層108は、黒鉛を含まない。このステップの実行は、ステップS202を参照してよい。
【0040】
任意選択的に、本実施形態は、黒鉛を含むコロイドが第4の金属イオンを含む電気めっき溶液と混合されるステップS212の実行に進む。このステップの実行は、ステップS204を参照してよい。
【0041】
任意選択的に、本実施形態は、黒鉛および第4の金属から合成される第4の合金層110を得るために、第4の金属イオンを含む混合された電気めっき溶液が第3の金属層108の外面に電着されるように用いられるステップS214の実行に進む。このステップの実行は、ステップS206を参照してよい。
【0042】
任意選択的に、本実施形態は、第4の合金層110の表面における黒鉛粒子を除去するために、超音波水洗浄が用いられるステップS216の実行に進む。このステップの実行は、ステップS208を参照してよい。
【0043】
任意選択的に、本実施形態は、ステップS210~S216を繰り返し実行する。
【0044】
さらに、本実施形態は、金属シール層118がコーティング構造100の第2外面にめっきされるステップS218を実行する。
【0045】
さらに、本実施形態は、コーティング構造100の最外面を有機層120で被覆するステップS220を実行する。
【0046】
上記の調製方法の完了後、個別部品(odd part)がラックまたはバレルから取り出されてよく、あるいは連続的なストリップのロールまたはコンベアベルトが回収されてよい。上記の調製方法において、黒鉛コロイドを利用することにより、金属および黒鉛が共に析出され、それにより黒鉛合金が得られる。本方法は、黒鉛合金を含む第2の合金層106を調製するために用いることができる。
第2の合金層106は、少なくとも黒鉛および銀から合成される合金層、少なくとも黒鉛および金から合成される合金層、少なくとも黒鉛およびスズから合成される合金層、少なくとも黒鉛およびニッケルから合成される合金層、少なくとも黒鉛およびパラジウムから合成される合金層、少なくとも黒鉛およびアンチモンから合成される合金層、ならびに少なくとも黒鉛およびビスマスから合成される合金層の単層または複数の積層された層を含んでよい。黒鉛合金を調製するための本方法の利点は、めっき溶液の広い作用範囲(a wide working window for the plating solution)、高い成膜効率(high deposition efficiency)、コーティングの安定した品質、および工業的大量生産の実現性を含む。加えて、上記の調製方法において、黒鉛粒子を洗浄するステップは、コーティング構造の使用時に人が黒鉛粒子に容易に接触することを防止することができる。
【0047】
本明細書において、具体例を参照して本発明を説明したが、これらの具体例は、単に例示を意図したものであり、本発明を限定することを意図したものではない。本発明の趣旨および範囲から逸脱しない限りにおいて、開示の実施形態が変更、追加または削除されてよいことは、当業者には明らかである。
【外国語明細書】