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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084724
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】組成物、シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20240618BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240618BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240618BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240618BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20240618BHJP
   C08K 7/18 20060101ALI20240618BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240618BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20240618BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240618BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240618BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C08L27/12
C08K3/013
C08K3/36
C08K3/22
C08K9/06
C08K7/18
C08J5/18 CEW
B32B15/082 B
B32B27/30 D
B32B27/20 Z
H05K1/03 610H
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208911
(22)【出願日】2023-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2022198841
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023188804
(32)【優先日】2023-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】奥野 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】上田 有希
(72)【発明者】
【氏名】澤木 恭平
(72)【発明者】
【氏名】細川 萌
(72)【発明者】
【氏名】田中 義人
(72)【発明者】
【氏名】山内 昭佳
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA27
4F071AB26
4F071AE17
4F071AF40Y
4F071AF62Y
4F071AG28
4F071AH12
4F071BA01
4F071BB04
4F071BC01
4F100AA18B
4F100AA20
4F100AA20B
4F100AA21B
4F100AB01A
4F100AB17A
4F100AB33A
4F100AH06B
4F100AK17B
4F100AK18
4F100AK18B
4F100BA02
4F100BA07
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4F100CA23B
4F100DE01
4F100DE01B
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4F100GB43
4F100JA02
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4F100JL01
4F100YY00B
4J002BD121
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4J002BD151
4J002BD161
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4J002DF016
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4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DL006
4J002DM006
4J002FA042
4J002FA046
4J002FA086
4J002FB096
4J002FD012
4J002FD016
4J002GF00
4J002GQ01
4J002HA09
(57)【要約】
【課題】 電気特性は維持したままで線膨張率が低いシートを得るための組成物、また、それを用いたシート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 フッ素樹脂粒子とフィラーを含み、フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーとの全量中67~96.5質量%であることを特徴とする組成物。
フッ素樹脂粒子とフィラーを含み、フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーとの全量中67~96.5質量%である組成物からなることを特徴とするシート又は膜。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂粒子とフィラーを含み、フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーとの全量中67~96.5質量%であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記フッ素樹脂粒子は非溶融加工性である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記フッ素樹脂粒子がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリテトラフルオロエチレンは、標準比重(SSG)が2.0~2.3である請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記フィラーが、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム又はこれらの組み合わせを含むものである請求項1又は2記載の組成物。
【請求項6】
前記フィラーは、表面がシランカップリング剤でコーティングされたものである請求項1又は2記載の組成物。
【請求項7】
前記フィラーが球状である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項8】
前記球状フィラーの平均粒子径が0.1~10μmである請求項7記載の組成物。
【請求項9】
前記フッ素樹脂粒子は、平均粒子径が0.05~1000μmである請求項1又は2記載の組成物。
【請求項10】
フッ素樹脂粒子とフィラーを含み、フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーとの全量中67~96.5質量%である組成物からなることを特徴とするシート又は膜。
【請求項11】
厚みが5~250μmである請求項10記載のシート又は膜。
【請求項12】
10GHzでの比誘電率(Dk)が3.5以下、誘電正接(Df)が0.0014以下、及び線膨張率(CTE)が40ppm/K以下である請求項10又は11に記載のシート又は膜。
【請求項13】
フッ素樹脂粒子とフィラーとを、フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーとの全量中67~96.5質量%となるように混合して成膜する工程を有することを特徴とするシート又は膜の製造方法。
【請求項14】
実質的にフッ素樹脂粒子とフィラーとからなる組成物を用いて成膜することを特徴とする請求項13に記載のシート又は膜の製造方法。
【請求項15】
金属層及び請求項10又は11に記載のシート又は膜を必須の層とする金属張積層体。
【請求項16】
前記金属層が銅箔である請求項15に記載の金属張積層体。
【請求項17】
請求項15に記載の金属張積層体を有することを特徴とする回路用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組成物、シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波用プリント配線板において、伝送損失が小さい高周波用プリント配線板が求められている。このような高周波用プリント配線板において、フッ素樹脂フィルムを使用することが公知である(特許文献1等)。また、配線基板材料としてフィラーを配合したフッ素樹脂を使用することについて、特許文献2~4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-8260号公報
【特許文献2】特開昭63-259907号公報
【特許文献3】国際公開第2021/024883号
【特許文献4】国際公開第2021/235460号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、電気特性は維持したままで線膨張率が低いシートを得るための組成物、また、それを用いたシート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、フッ素樹脂粒子とフィラーを含み、フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーとの全量中67~96.5質量%であることを特徴とする組成物である。
【0006】
前記フッ素樹脂粒子は非溶融加工性であることが好ましい。
前記フッ素樹脂粒子がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であることが好ましい。
前記ポリテトラフルオロエチレンは、標準比重(SSG)が2.0~2.3であることが好ましい。
【0007】
前記フィラーが、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム又はこれらの組み合わせを含むものであることが好ましい。
前記フィラーは、表面がシランカップリング剤でコーティングされたものであることが好ましい。
前記フィラーが球状であることが好ましい。
前記球状フィラーの平均粒子径が0.1~10μmであることが好ましい。
【0008】
前記フッ素樹脂粒子は、平均粒子径が0.05~1000μmであることが好ましい。
【0009】
本開示は、フッ素樹脂粒子とフィラーを含み、フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーとの全量中67~96.5質量%である組成物からなることを特徴とするシート又は膜でもある。
厚みが5~250μmであることが好ましい。
10GHzでの比誘電率(Dk)が3.5以下、誘電正接(Df)が0.0014以下、及び線膨張率(CTE)が40ppm/K以下であることが好ましい。
【0010】
本開示は、フッ素樹脂粒子とフィラーとを、フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーとの全量中67~96.5質量%となるように混合して成膜する工程を有することを特徴とする上記シート又は膜の製造方法でもある。
実質的にフッ素樹脂粒子とフィラーとからなる組成物を用いて成膜することが好ましい。
【0011】
本開示は、金属層及び上述したシート又は膜を必須の層とする金属積層体でもある。
前記金属層は、銅箔であることが好ましい。
本開示は、上記金属積層体を有することを特徴とする回路用基板でもある。
【発明の効果】
【0012】
本開示の組成物によって得られたシートは、電気特性は維持したままで線膨張率が低いといった優れた性能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示を詳細に説明する。
フッ素樹脂にフィラーを配合した組成物については多くの検討が行われている。
一方、高周波用プリント配線板という分野においては、近年、ますます高水準の、低誘電率、低損失、低膨張という性能が要求されている。
【0014】
本開示においては、フィラーの含有量を多くすることで線膨張率が低い組成物を得るものである。本開示の組成物は、フッ素樹脂粒子とフィラーを含み、フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーとの全量中67~96.5質量%であることを特徴とするものである。
このような配合量とすることで、低誘電率、低損失といった電気特性を維持しながら線膨張率が低いという、優れた性能を有するシートを提供できる。
【0015】
フッ素樹脂とフィラーとの混合組成物からシートを作製する際に、従来は、加工助剤を加え、ペースト押出したものを圧延し、シート化するのが一般的であった。この方法においては、フィラーの含有量が多い場合、ペーストの押出しが困難であり、シート化することができなかった。
本開示においては、粉体圧延成形することによって、フィラーの含有量が高充填(67~96.5質量%)の組成物であっても、シート化できることを見出したものである。これにより、上記のように、フィラーの含有量を多くすることで線膨張率が低い組成物とし、更に、電気特性は維持したままで線膨張率が低いフッ素樹脂シートを提供し得るものとしたものである。
【0016】
本開示の組成物は、フッ素樹脂粒子とフィラーを含み、フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーとの全量中67~96.5質量%である。
上記フィラーの含有量の下限は、68質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、75質量%以上であることが最も好ましい。上記フィラーの配合量の上限は、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。このような含有量とすることで、電気特性を維持しながら線膨張率を、低くすることができるという点で好ましい。フィラーの含有量が下限未満の場合は線膨張率が高くなり、上限を超える場合は、シートが脆くなり成形性が悪化する問題がある。また、線膨脹率は低すぎても良くなく、積層する金属、例えば、銅箔と同程度になる観点から、75~85質量%であることが最も好ましい。
【0017】
(フィラー)
本開示において使用することができるフィラーとしては特に限定されず、アラミド繊維、ポリフェニルエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、モディファイドポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレン、ポリアミド、全芳香族ポリエステル樹脂から選ばれる一種以上である有機充填材、セラミックス、タルク、マイカ、酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、ガラス繊維、ガラス片、ガラスビード、炭化ケイ素、弗化カルシウム、窒化ホウ素、硫酸バリウム、二硫化モリブデン及び炭酸カリウムウイスカから選ばれる一種以上である無機充填材などを挙げることができる。これらの2種以上を併用するものであってもよい。
これらのなかでも、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム又はこれらの組み合わせを含むものであることが特に好ましい。これらのフィラーはフィラー自体の線膨張率と誘電正接が低いため、組成物、シートに加工したい場合も線膨張率を低く、また誘電正接(Df)も低く制御可能となるので好ましい。
【0018】
上記フィラーは、その形状を特に限定されるものではないが、球状であることが特に好ましい。球状であると、穴あけ加工時に均一に加工しやすい、比表面積が少なく伝送損失が低いという点で好ましいものである。特に、球状シリカ粒子を使用することが最も好ましい。
【0019】
上記球状フィラーは、その粒子形状が真球に近いものを意味しており、具体的には、球形度が0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.90以上がさらに好ましく、0.95以上が最も好ましい。球形度はSEMで写真を撮り、その観察される粒子の面積と周囲長から、(球形度)={4π×(面積)÷(周囲長)2}で算出される値として算出する。1に近づくほど真球に近い。具体的には画像処理装置(スペクトリス株式会社:FPIA-3000)を用いて100個の粒子について測定した平均値を採用する。
【0020】
本開示においてフィラーは、平均粒子径が0.1~10μmであることが好ましい。なお、ここでの平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布計によって測定したD50の値である。平均粒子径が0.1μ未満であると、フィラーの凝集が生じることで、充分な効果が得られない傾向にある。また、平均粒子径が10μmを超えると、シートが薄膜化しにくい傾向にある。
【0021】
本開示で使用する球状シリカ粒子は、粒子径が小さい方から体積を積算したときにD90/D10が2以上(望ましくは2.3以上、2.5以上)、D50が10μm以下であることが好ましい。更に、D90/D50が1.5以上であることが好ましい(更に望ましくは1.6以上)。D50/D10が1.5以上であることが好ましい(更に望ましくは1.6以上)。粒子径が大きな球状シリカ粒子の間隙に粒子径が小さな球状シリカ粒子が入ることが可能になるため、充填性に優れ、且つ、流動性を高くすることができる。特に粒度分布としてはガウス曲線と比較して粒子径が小さい側の頻度が大きいことが好ましい。粒径はレーザ回折散乱方式粒度分布測定装置により測定可能である。また、所定以上の粒子径をもつ粗粒をフィルタなどで除去したものであることが好ましい。
【0022】
上記球状シリカ粒子は、吸水性が1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることが更に好ましい。吸水性は乾燥時のシリカ粒子の質量を基準とする。吸水性の測定は乾燥状態にある試料を40℃、80%RHに1時間放置し、カールフィッシャー水分測定装置で200℃加熱により生成する水分を測定し、算出する。
【0023】
上記球状シリカ粒子は、フッ素樹脂シートを600℃で30分間、大気雰囲気下で加熱することでフッ素樹脂を焼き飛ばし、球状シリカ粒子を取り出したのち、上述の方法を用いて上記各パラメータを測定することもできる。
【0024】
上記球状シリカ粒子は、市販のシリカ粒子で上述した性質を満たすものを使用するものであってもよい。市販のシリカ粒子としては、例えば、デンカ溶融シリカ FBグレード(デンカ株式会社製)、デンカ溶融シリカ SFPグレード(デンカ株式会社製)、エクセリカ(株式会社トクヤマ製)、高純度合成球状シリカ粒子アドマファイン(株式会社アドマテックス製)、アドマナノ(株式会社アドマテックス製)、アドマフューズ(株式会社アドマテックス製)等を挙げることができる。
【0025】
上記酸化チタンと酸化マグネシウムは、シリカと比較し、比誘電率(Dk)が高いため、比誘電率(Dk)を調製するために添加できる。市販の酸化チタンとしては、CR-EL(石原産業株式会社製)、HT0210(東邦チタニウム株式会社製)等を挙げることができる。市販の酸化マグネシウムとしては、RF-10CS、RF-10C-45μm(宇部マテリアルズ株式会社製)等を挙げることができる。
【0026】
上記フィラーは、表面処理が施されたものであることが好ましい。表面処理を予め施すことで、シリカ粒子の凝集を抑制することができ、樹脂組成物中にシリカ粒子を良好に分散させることができる。
【0027】
上記表面処理は、表面処理剤の種類や処理量を適宜選択して行うことができる。
上記処理量は、0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることが誘電率、誘電正接が低く線膨張率も小さくなる観点からより好ましい。また、上記処理量は、5質量%以下であることが好ましい。
上記表面処理としては特に限定されるものではなく、公知の任意のものを使用することができる。具体的には、例えば、反応性官能基を有するエポキシシラン、アミノシラン、イソシアネートシラン、ビニルシラン、アクリルシラン、疎水性のアルキルシラン、フェニルシラン、フッ素化アルキルシランなどのシランカップリング剤による処理、プラズマ処理、フッ素化処理等を挙げることができる。
【0028】
上記シランカップリング剤として、具体的には、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネートシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン、アクリロキシトリメトキシシラン等のアクリルシラン等が例示される。
【0029】
本開示においては、表面処理が施されたものの中でも、表面がシランカップリング剤でコーティングされたフィラーを使用することが好ましい。
【0030】
(フッ素樹脂粒子)
本開示の組成物は、フッ素樹脂粒子を含有するものである。フッ素樹脂粒子は、低誘電性を有するものであることから、本開示の目的において好適に使用することができる。
【0031】
フッ素樹脂粒子の平均粒子径は0.05~1000μmであることが好ましい。上記フッ素樹脂粒子の平均粒子径の下限は、0.07μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることが更に好ましい。上記フッ素樹脂粒子の平均粒子径の上限は、700μm以下であることが好ましく、500μm以下であることが更に好ましい。
このようなものを使用することで、成形性、分散性に優れるという利点がある。なお、ここでの平均粒子径は、ASTM D 4895に準拠し測定した値である。
【0032】
フッ素樹脂粒子の体積基準累積50%径は0.05~40μmであることが好ましい。上記フッ素樹脂粒子の体積基準累積50%径の下限は、0.7μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることが更に好ましい。上記フッ素樹脂粒子の体積基準累積50%径の上限は、35μm以下であることが好ましく、30μm以下であることが更に好ましい。
このようなものを使用することで、成形性、分散性に優れるという利点がある。なお、ここでの体積基準累積50%径は、レーザ回折式粒度分布計によって測定した値である。
【0033】
本開示において使用するフッ素樹脂粒子は特に限定されるものではないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン〔TFE〕/ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕共重合体〔FEP〕、TFE/アルキルビニルエーテル共重合体〔PFA〕、TFE/HFP/アルキルビニルエーテル共重合体〔EPA〕、TFE/クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕共重合体、TFE/エチレン共重合体〔ETFE〕、ポリフッ化ビニリデン〔PVdF〕、分子量30万以下のテトラフルオロエチレン〔LMW-PTFE〕等が挙げられる。一種類で使用してもよいし、二種類以上を混合しても良い。
【0034】
本開示において使用するフッ素樹脂粒子は、非溶融加工性であることが好ましい。
非溶融加工性であるとは、融点以上に加熱しても、樹脂が十分な流動性を有さず、樹脂において一般的に使用される溶融成形の手法によって成型することができない樹脂を意味する。PTFEがこれに該当する。
また、低誘電性という観点からも、PTFEであることが特に好ましい。PTFEはフィブリル性を有するものが好ましい。フィブリル性を有するPTFEとは未焼成のポリマー粒子をペースト押出や粉体圧延成形できるPTFEを意味する。
【0035】
PTFEは、変性ポリテトラフルオロエチレン(以下、変性PTFEという)であってもよいし、ホモポリテトラフルオロエチレン(以下、ホモPTFEという)であってもよいし、変性PTFEとホモPTFEの混合物であってもよい。なお、高分子PTFEにおける変性PTFEの含有割合は、ポリテトラフルオロエチレンの成形性を良好に維持させる観点から、10重量%以上98重量%以下であることが好ましく、50重量%以上95重量%以下であることがより好ましい。ホモPTFEは、特に限定されず、特開昭53-60979号公報、特開昭57-135号公報、特開昭61-16907号公報、特開昭62-104816号公報、特開昭62-190206号公報、特開昭63-137906号公報、特開2000-143727号公報、特開2002-201217号公報、国際公開第2007/046345号パンフレット、国際公開第2007/119829号パンフレット、国際公開第2009/001894号パンフレット、国際公開第2010/113950号パンフレット、国際公開第2013/027850号パンフレット等で開示されているホモPTFEを好適に使用できる。中でも、高い延伸特性を有する特開昭57-135号公報、特開昭63-137906号公報、特開2000-143727号公報、特開2002-201217号公報、国際公開第2007/046345号パンフレット、国際公開第2007/119829号パンフレット、国際公開第2010/113950号パンフレット等で開示されているホモPTFEが好ましい。
【0036】
変性PTFEは、TFEと、TFE以外のモノマー(以下、変性モノマーという)とからなる。変性PTFEには、変性モノマーにより均一に変性されたもの、重合反応の初期に変性されたもの、重合反応の終期に変性されたものなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。変性PTFEは、TFE単独重合体の性質を大きく損なわない範囲内で、TFEとともに微量のTFE以外の単量体をも重合に供することにより得られるTFE共重合体であることが好ましい。変性PTFEは、例えば、特開昭60-42446号公報、特開昭61-16907号公報、特開昭62-104816号公報、特開昭62-190206号公報、特開昭64-1711号公報、特開平2-261810号公報、特開平11-240917、特開平11-240918、国際公開第2003/033555号パンフレット、国際公開第2005/061567号パンフレット、国際公開第2007/005361号パンフレット、国際公開第2011/055824号パンフレット、国際公開第2013/027850号パンフレット等で開示されているものを好適に使用できる。中でも、高い延伸特性を有する特開昭61-16907号公報、特開昭62-104816号公報、特開昭64-1711号公報、特開平11-240917、国際公開第2003/033555号パンフレット、国際公開第2005/061567号パンフレット、国際公開第2007/005361号パンフレット、国際公開第2011/055824号パンフレット等で開示されている変性PTFEが好ましい。
【0037】
変性PTFEは、TFEに基づくTFE単位と、変性モノマーに基づく変性モノマー単位とを含む。変性モノマー単位は、変性PTFEの分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分である。変性PTFEは、変性モノマー単位が全単量体単位の0.001~0.500質量%含まれることが好ましく、より好ましくは、0.01~0.30質量%含まれる。全単量体単位は、変性PTFEの分子構造における全ての単量体に由来する部分である。
【0038】
変性モノマーは、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン(CTFE)等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)等の水素含有フルオロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;パーフルオロアルキルエチレン(PFAE)、エチレン等が挙げられる。用いられる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0039】
パーフルオロビニルエーテルは、特に限定されず、例えば、下記一般式(1)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。
CF=CF-ORf・・・(1)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)
【0040】
本明細書において、パーフルオロ有機基は、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基である。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0041】
パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(1)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)が挙げられる。パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。PAVEとしては、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)が好ましい。
【0042】
上記パーフルオロアルキルエチレン(PFAE)は、特に限定されず、例えば、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、パーフルオロヘキシルエチレン(PFHE)等が挙げられる。
【0043】
変性PTFEにおける変性モノマーとしては、HFP、CTFE、VDF、PAVE、PFAE及びエチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0044】
本開示に使用するPTFEは、コアシェル構造を有していてもよい。コアシェル構造を有するPTFEとしては、例えば、粒子中に高分子量のポリテトラフルオロエチレンのコアと、より低分子量のポリテトラフルオロエチレンまたは変性のポリテトラフルオロエチレンのシェルとを含む変性ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。このような変性ポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば、特表2005-527652号公報に記載されるポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0045】
本開示においては、このような非溶融加工性であるようなフッ素樹脂を使用し、これをフィブリル化するような成形方法によってフッ素樹脂シートとするものであることが好ましい。当該成形方法については、後述する。
【0046】
上記PTFEは、標準比重(SSG)が2.0~2.3であることが好ましい。このようなPTFEを使用すると、高い強度(凝集力及び単位厚さあたりの突き刺し強度)を有するPTFE膜を得やすい。大きい分子量を有するPTFEは長い分子鎖を有するため、分子鎖が規則的に配列した構造を形成しにくい。この場合、非晶質部の長さが増加し、分子同士の絡み合いの度合いが増加する。分子同士の絡み合いの度合いが高い場合、PTFE膜は、加えられた負荷に対して変形しにくく、優れた機械的強度を示すと考えられる。また、大きい分子量を有するPTFEを使用すると、小さい平均孔径を有するPTFE膜を得やすい。
【0047】
上記SSGの下限は、2.05であることがより好ましく、2.1であることが更に好ましい。上記SSGの上限は、2.25であることがより好ましく、2.2であることが更に好ましい。
【0048】
標準比重〔SSG〕はASTM D-4895-89に準拠して試料を作製し、得られた試料の比重を水置換法によって測定したものである。
【0049】
上記PTFEは、屈折率が1.2~1.6の範囲内のものであることが好ましい。このような屈折率を有するものとすることで、低誘電であるという点で好ましい。屈折率を上記範囲内のものとすることは、分極率や主鎖の柔軟性を調整する方法等によって行うことができる。上記屈折率の下限は、1.25であることがより好ましく、1.30であることがより好ましく、1.32であることが最も好ましい。上記屈折率の上限は、1.55であることがより好ましく、1.50であることがより好ましく、1.45であることが最も好ましい。
上記屈折率は、屈折計(Abbemat 300)を用いて測定した値である。
【0050】
本実施形態において、PTFE粒子を構成するPTFEの分子量(数平均分子量)は、例えば、200~1200万の範囲にある。PTFEの分子量の下限値は、300万であってもよく、400万であってもよい。PTFEの分子量の上限値は、1000万であってもよい。
【0051】
PTFEの数平均分子量の測定方法としては、標準比重(Standard Specific Gravity)から求める方法、及び、溶融時の動的粘弾性による測定法がある。標準比重から求める方法は、ASTM D-4895 98に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D-792に準拠した水置換法によって実施することができる。動的粘弾性による測定法は、例えば、S.Wuによって、Polymer Engineering & Science, 1988, Vol.28, 538、及び、同文献1989, Vol.29, 273に説明されている。
【0052】
上記粒子状のPTFEは、二次粒子径が500μm以上のポリテトラフルオロエチレン樹脂を50質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましい。二次粒子径が500μm以上のPTFEが当該範囲内のものであることによって、強度の高いシートを作製できるという点で利点を有する。
二次粒子径が500μm以上のPTFEを用いることで、より抵抗が低く、靭性に富んだシートを得ることができる。
【0053】
上記二次粒子径の下限は、300μmであることがより好ましく、350μmであることが更に好ましい。上記二次粒子径の上限は、700μm以下であることがより好ましく、600μm以下であることが更に好ましい。二次粒子径は例えばふるい分け法などで求めることができる。
【0054】
上記粒子状のPTFEは、より高強度でかつ均質性に優れるシートが得られることから、平均一次粒子径が50nm以上であることが好ましい。より好ましくは、100nm以上であり、更に好ましくは150nm以上であり、特に好ましくは200nm以上である。
PTFEの平均一次粒子径が大きいほど、その粉末を用いてペースト押出成形をする際に、ペースト押出圧力の上昇を抑えられ、成形性にも優れる。上限は特に限定されないが500nmであってよい。重合工程における生産性の観点からは、350nmであることが好ましい。
【0055】
上記平均一次粒子径は、重合により得られたPTFEの水性分散液を用い、ポリマー濃度を0.22質量%に調整した水性分散液の単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真における定方向径を測定して決定された平均一次粒子径との検量線を作成し、測定対象である水性分散液について、上記透過率を測定し、上記検量線をもとに決定できる。
【0056】
また、上記PTFEは、最大吸熱ピーク温度(結晶融点)は340±7℃であることが好ましい。
【0057】
PTFEは示差走査熱量計で測定した結晶融解曲線上の吸熱カーブの最大ピーク温度が338℃以下の低融点PTFEと、示差走査熱量計で測定した結晶融解曲線上の吸熱カーブの最大ピーク温度が342℃以上の高融点PTFEであっても良い。
【0058】
低融点PTFE粒子は、乳化重合法で重合し製造された粒子であり、前記の最大吸熱ピーク温度(結晶融点)を有し、誘電率(ε)は2.08~2.2、誘電正接(tanδ)は1.9×10-4~4.0×10-4である。市販品としては、たとえばダイキン工業(株)製のポリフロンファインパウダーF201、同F203、同F205、同F301、同F302;旭硝子工業(株)製のCD090、CD076;デュポン社製のTF6C、TF62、TF40などがあげられる。
【0059】
高融点PTFE粒子も、乳化重合法で重合し製造された粒子であり、前記の最大吸熱ピーク温度(結晶融点)を有し、誘電率(ε)は2.0~2.1、誘電正接(tanδ)は1.6×10-4~2.2×10-4と全体的に低い。市販品としては、たとえばダイキン工業(株)製のポリフロンファインパウダーF104;旭硝子工業(株)製のCD1、CD141、CD123;デュポン社製のTF6、TF65などがあげられる。
【0060】
なお、両PTFE粒子が2次凝集した粒子の平均粒子径は通常、250~2000μmであることが好ましい。特に、溶媒を用いて造粒して得られる造粒粒子は予備成形の際の金型充填時の流動性が向上する点から好ましい。
【0061】
上述したような各パラメータを満たす粒子形状のPTFEは、従来の製造方法により得ることができる。例えば、国際公開第2015-080291号や国際公開第2012-086710号等に記載された製造方法に倣って製造すればよい。
【0062】
(組成物)
本開示の組成物は、上述したフィラー及びフッ素樹脂粒子を含有するものである。必要に応じて、フィラー及びフッ素樹脂粒子以外の成分を含有するものであってもよいし、フィラー及びフッ素樹脂粒子のみからなるものであってもよい。フィラー及びフッ素樹脂粒子以外の成分の含有量は、組成物全量に対して10質量%以下であることが好ましい。
特に、実質的にフッ素樹脂粒子とフィラーとからなる組成物とすることが好ましい。なお、「実質的にフッ素樹脂粒子とフィラーとからなる」とは、フィラー及びフッ素樹脂粒子以外の成分の含有量が、組成物全量に対して3質量%以下であることを意味する。
【0063】
本開示の組成物は、組成物としての10GHz誘電正接が0.0001~0.0015であることが好ましい。このような範囲内のものとすることで、低損失になるという点で好ましい。
【0064】
(シート)
本開示の組成物は、シートの形成に好適に用いられる。
本開示は、フッ素樹脂粒子とフィラーを含み、フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーの全量中67~96.5質量%である組成物からなるシートでもある。
【0065】
上記シートは、厚みが5~250μmであることが好ましい。本開示のシートは、薄いものであっても、充分にその目的を達成することができる。このような観点から、200μm未満であることがより好ましく、150μm未満であることが更に好ましい。
【0066】
本開示のシートは、10GHzでの比誘電率(Dk)が3.5以下、誘電正接(Df)が0.0014以下、及び線膨張率(CTE)が40ppm/K以下であることが好ましい。
このような物性を満たすことで、電気特性に優れ、低線膨張率の性能を有するシートとなる。
【0067】
10GHzでの比誘電率(Dk)が3.5以下であることで、誘電体損失が低いという点で好ましい。
上記比誘電率(Dk)の上限は、3.2であることがより好ましく、3.1であることが更に好ましい。上記比誘電率(Dk)の下限は、2.0であることがより好ましく、2.5であることが更に好ましい。
【0068】
誘電正接(Df)が0.0014以下であることで、誘電体損失が低いという点で好ましい。
上記誘電正接(Df)の上限は、0.0012であることがより好ましく、0.0011であることが更に好ましい。上記誘電正接(Df)の下限は、0であることがより好ましい。
【0069】
本明細書における10GHzでの比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)は、スプリットシリンダ式誘電率・誘電正接測定装置(EM lab社製)を用いて、25℃、10GHzのDk及びDfを測定することにより求めた。
【0070】
線膨張率(CTE)が40ppm/K以下であることで、低収縮で寸法安定性に優れたフッ素樹脂シートとなる点で好ましい。上記線膨張率(CTE)の上限は、35であることがより好ましく、30であることが更に好ましい。上記線膨張率(CTE)の下限は、5であることがより好ましく、10であることが更に好ましい。
本明細書における線膨張率は、TMA-7100(株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用いたTMA測定を引張モードで行い、サンプル片として、長さ20mm、幅5mmに切出したシートを用いて、チャック間を10mmに設定し、49mNの荷重をかけながら昇温速度2℃/分で0~150℃でのサンプルの変位量から線膨張率を求めた。
【0071】
(シートの製造方法)
本開示のシートは、上述したフッ素樹脂粒子とフィラーを用いて成膜することによって得ることができる。その製造方法は、粉体圧延成形によって行うことが好ましい。
【0072】
本開示は、上述したフッ素樹脂粒子とフィラーとを、フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーとの全量に対して67~96.5質量%となるように混合して成膜する工程を有することを特徴とする上記シートの製造方法でもある。
【0073】
上述したように、本開示のシートに使用するフッ素樹脂としては、非溶融加工性であるフッ素樹脂を使用することが好ましい。このようなフッ素樹脂を使用した場合、これをシート状に成形する場合は、原料としての粉末状のPTFEをフィブリル化することで成形することが好ましい。
【0074】
粉体圧延成形の具体的な方法は、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0075】
(粉体圧延成形)
粉体圧延成形は、樹脂粉体に剪断力を付与することで、フィブリル化させ、これによってシート状に成形する方法である。その後、焼成して成形体を得る工程を含むものであってよい。
より具体的には、
フッ素樹脂粒子及びフィラーを含む原料組成物を混合しながら、剪断力を付与する工程(1)
前記工程(1)によって得られた混合物をバルク状に成形する工程(2)及び
前記工程(2)によって得られたバルク状の混合物をシート状に圧延する工程(3)
を有する製造方法等が挙げられる。
更に、上記で得られたシート状物を、200~400℃で、1~60分間焼成する工程(4)を有するようにしてもよい。焼成する温度を変えることでシートの物性の制御も可能であり、例えば345℃以下の低温で焼成することで誘電正接を低くすることができ、350℃以上の高温で焼成することで線膨張率を低くすることができる。
また、工程(2)は省略しても構わない。
【0076】
なお、このような粉体圧延成形によってシートとする場合は、実質的にフッ素樹脂粒子とフィラーとからなる組成物を用いて成膜することが好ましい。
または、フッ素樹脂粒子とフィラーのみを混合して成形することが好ましい。
【0077】
上記工程(1)における混合において使用する撹拌装置としては、特に限定されないがフッ素樹脂粒子とフィラーとが混合できればよい。ラボプラストミル、単軸混練、二軸混練、ミキサー(二軸ミキサー、バタフライミキサー、同心二軸ミキサー、ポニーミキサー、トリミックス、プラネタリーミキサー、PDミキサー、ディゾルバー)、ビーズミル(ミル、マイティーミル)、ロールミル(二本ロール、三本ロール)、ニーダー(フラッシングニーダー、ソルトミリングニーダー、加圧ニーダー)等が挙げられる。
攪拌する温度も特に限定されないが、好ましくは0~50℃、より好ましくは10~30℃である。
攪拌する時間も特に限定されないが、好ましくは1秒から1時間、より好ましくは10秒から10分である。
また、混合するにあたっては、PTFEを部分的にフィブリル化させることが好ましい。
【0078】
上記工程(3)においてシート状に圧延する装置としては特に限定されないが、工程(1)で得られた粉体混合物、又は工程(2)で得られたバルク状の混合物にせん断を掛けて、シート化出来ればよく、粉体圧延装置、粉体成膜装置、ロールプレス(二本、三本)、ダブルベルトプレス等が挙げられる。
シート状にする温度も特に限定されないが、好ましくは20~300℃、より好ましくは30~200℃である。
【0079】
(積層体)
本開示のシートは、回路用基板用のシートとして、その他の基材と積層して使用することができる。
【0080】
本開示は、金属層及び上述したフッ素樹脂シートを必須の層とする金属積層体でもある。上述したフッ素樹脂シートの片面又は両面に金属層を接着させたことを特徴とする金属積層体であってもよい。上述したように、本開示のフッ素樹脂を含むシートは、プリント配線基板用途において特に好適に使用することができるものであるから、このような金属積層体として好適に使用することができる。
金属層としては、銅箔、金箔、銀箔、白金箔、ルテニウム箔等が挙げられる。中でも、銅箔が、導体損が低いので好ましい。
【0081】
上記銅箔は、Rz1.6μm以下であることが好ましい。すなわち、本開示の組成物は、Rz1.6μm以下という平滑性の高い銅箔への接着性も優れたものである。更に、銅箔は、少なくとも上述したフッ素樹脂シートと接着する面が1.6μm以下であればよく、他方の面は、Rz値を特に限定するものではない。
上記Rzは、もっとも高い部分(最大山高さ:Rp)ともっとも深い部分(最大谷深さ:Rv)の和の値である。上記表面粗さはJIS-B0601に規定される十点平均粗さである。本明細書において、上記Rzは、測定長を4mmとして、表面粗さ計(商品名:サーフコム470A、東京精機社製)を用いて測定した値である。
【0082】
上記銅箔は、厚みは特に限定されないが、1~100μmの範囲であることが好ましく、5~50μmの範囲内であることがより好ましく、9~35μmがさらに好ましい。
【0083】
上記銅箔は特に限定されるものではなく、具体的には例えば、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。
【0084】
Rz1.6μm以下の銅箔としては特に限定されず、市販のものを使用することができる。市販のRz1.6μm以下の銅箔としては、例えば、電解銅箔CF-T9DA-SV-18(厚み18μm/Rz0.85μm)(福田金属層粉工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0085】
上記銅箔は、本開示のシートとの接着強度を高めるために、表面処理を施したものであってもよい。
【0086】
上記表面処理は特に限定されないが、シランカップリング処理、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、電子線処理などであり、シランカップリング剤の反応性官能基としては、特に限定されないが、樹脂基材に対する接着性の観点から、アミノ基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、及びエポキシ基から選択される少なくとも1種を末端に有することが好ましい。また、加水分解性基としては、特に限定されないが、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基などが挙げられる。本開示で使用する銅箔は、防錆層(クロメート等の酸化物皮膜等)、耐熱層等が形成されたものであってもよい。
【0087】
上記シラン化合物による表面処理層を銅箔表面上に有する表面処理銅箔は、シラン化合物を含む溶液を調製した後、この溶液を用いて銅箔を表面処理することによって製造することができる。
【0088】
上記銅箔は、表面に、樹脂基材との接着性を高めるなどの観点から、粗化処理層を有するものであってもよい。
なお、粗化処理が本開示において要求される性能を低下させるおそれがある場合は、必要に応じて銅箔表面に電着させる粗化粒子を少なくしたり、粗化処理を行わない態様としたりすることもできる。
【0089】
銅箔と表面処理層との間には、各種特性を向上させる観点から、耐熱処理層、防錆処理層及びクロメート処理層からなる群から選択される1種以上の層を設けてもよい。これらの層は、単層であっても、複数層であってもよい。
【0090】
本開示の銅張積層体は、更に、上記銅箔およびシート以外の層を有するものであってもよい。
当該銅箔およびシート以外の層は、ポリイミド、モディファイドポリイミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルファイド、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ビスマレイミド、ポリフェニレンオキサイド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエーテル、及び、ポリブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0091】
上記銅箔およびシート以外の層は、上述した樹脂からなるものであれば特に限定されない。また、当該銅箔およびフッ素樹脂からなるシート以外の層は、厚みが、12.5~260μmの範囲内のものであることが好ましい。
【0092】
本開示の金属張積層体は、金属層を形成するのはロール状シートの片面でも両面でも構わない。金属層を形成する方法としては、ロール状シートの表面に金属箔を積層(粘着)する方法、蒸着法、めっき法などが挙げられる。金属箔を積層する方法としては、熱プレスによる方法が挙げられる。熱プレス温度は誘電体フィルムの融点-150℃~誘電体フィルムの融点+40℃が挙げられる。熱プレスの時間は例えば1~30分である。熱プレスの圧力は、0.1~10MPaという方法によって製造することができる。
【0093】
(膜)
本開示においては、上記組成物を用いて膜を形成するようにしてもよい。本開示は、フッ素樹脂粒子とフィラーを含み、フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーとの全量中67~96.5質量%である組成物からなることを特徴とする膜でもある。
本開示の膜は、フッ素樹脂粒子を含むパウダー、フィラーを液状媒体に分散させた分散液を基材上に塗布し、乾燥した後に加熱して得ることができる。
【0094】
本開示の金属積層体は、その用途を特に限定されず、例えば、回路用基板として使用される。本開示は、上記金属積層体を有する回路用基板でもある。
回路用基板とは、半導体やコンデンサチップなどの電子部品を電気的に接続すると同時に、限られた空間内に配置し固定するための板状部品である。本金属積層体から形成される回路用基板の構成は特に制限はない。回路用基板は、リジッド基板、フレキシブル基板、リジッドフレキシブル基板のいずれであってもよい。回路用基板は、片面、基板、両面基板、多層基板(ブルドアップ基板等)のいずれであってもよい。特に、フレキシブル基板、リジット基板用に好適に使用することができる。特に10GHz以上の高周波用プリント基板として好適に使用することができる。
【0095】
回路用基板としては特に限定されず、上述した金属積層体を使用して、一般的な方法によって製造することができる。
【0096】
回路基板用の積層体は、銅箔層及び上述したシート、更に、基材層を有することを特徴とする積層体でもある。基材層としては特に限定されないが、ガラス繊維からなる布帛層、樹脂フィルム層を有することが好ましい。
【0097】
本開示のシートと金属積層体は、電気電子部品として使用される。例えば、ETC、GPS、無線LANおよび携帯電話等の電子機器や通信機器に使用されるアンテナ、高速伝送用コネクタ、CPUソケット、衝突防止用レーダーなどのミリ波および準ミリ波レーダー、RFIDタグ、コンデンサー、インバーター部品、ケーブルの被覆材、リチウムイオン電池等の二次電池の絶縁材、スピーカー振動板等が挙げられる。
【0098】
高速通信対応基板としては、基地局アンテナ基板、アンテナ分配基板、無線基地局の無線部分であるRRH(Remote Radio Head)用基板、無線基地局の制御部又はベースバンド部(BBU:Base Band Unit)用基板、高速通信用トランシーバー基板、RNC(Radio Network Contoroler)用基板、高速トランスミッター用基板、高速レシーバー用基板、高速信号多重回路用基板、60GHz帯使用のWiFig用基板、データセンター用のサーバーで使用されるデーター転送用基板などがあげられる。また、高速通信対応基板としては、アンテナ用基板、例えば、5G以降の規格で求められる大容量通信に向けた、超多素子アンテナ(Massive MIMO)向けの基板等も例示できる。
【0099】
シートは、基板用の絶縁体のみならず、信号線被覆材用の絶縁体として使用できる。例えば、高速信号を伝送する導波管、高速LAN用のQSFPケーブル、高速通信対応用の同軸ケーブル(例;SFP+ケーブル、QSFP+ケーブルなど)、低損失用の同軸ケーブル等の絶縁被覆材(例;絶縁チューブ)として使用できる。
【0100】
こうした高周波を使用する場合、コネクタなどの電気部品、ケーシングなどの通信機器に使用される資材には、安定して低い比誘電率(εr)及び低い誘電正接(tanδ)といった電気的特性が求められる。シートは、そのような資材用の絶縁材料としても使用できる。
【0101】
シートは、ハンダ付けが必要となるコネクタプリント配線基板用の絶縁材料としても使用できる。シートは優れた耐熱性を有しているので、ハンダ付け時の高温でも問題が生じにくい。
【0102】
誘電体導波線路においては、高周波のミリ波又はサブミリ波を低損失で伝送させために、低誘電損失な材料が求められている。シートは、ミリ波、サブミリ波等を伝送する誘電体導波線路用の絶縁材料としても使用できる。誘電体導波線路としては、円柱状誘電体線路、方形状誘電体線路、だ円形状誘電体線路、チューブ状誘電体線路、イメージ線路、インシュラーイメージ線路、トラップドイメージ線路、リブガイド、ストリップ誘電体線路、逆ストリップ線路、Hガイド、非放射性誘電体線路(NRDガイド)等が挙げられる。
【0103】
上記ガラス繊維からなる布帛層は、ガラスクロス、ガラス不織布等からなる層である。
ガラスクロスとしては市販のものが使用でき、フッ素樹脂との親和性を高めるためにシランカップリング剤処理を施されたものが好ましい。ガラスクロスの材質としてはEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、低誘電率ガラスなどが挙げられるが、入手が容易である点からEガラス、Sガラス、NEガラスが好ましい。繊維の織り方としては平織でも綾織でも構わない。ガラスクロスの厚さは通常5~90μmであり、好ましくは10~75μmであるが、本開示のシートよりは薄いものを用いることが好ましい。
【0104】
上記積層体は、ガラス不織布をガラス繊維からなる布帛層として使用するものであってもよい。ガラス不織布とは、ガラスの短繊維を少量のバインダー化合物(樹脂あるいは無機物)で固着したもの、あるいはバインダー化合物を使用せずにガラス短繊維を絡ませることによってその形状を維持しているものであり、市販のものが使用できる。ガラス短繊維の直径は好ましくは0.5~30μmであり、繊維長は好ましくは5~30mmである。バインダー化合物の具体例としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂等の樹脂や、シリカ化合物等の無機物が挙げられる。バインダー化合物の使用量はガラス短繊維に対して通常3~15質量%である。ガラス短繊維の材質としてはEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、低誘電率ガラスなどが挙げられる。ガラス不織布の厚さは通常50μm乃至1000μmであり、100~900μmであることが好ましい。尚、本開示におけるガラス不織布の厚さは、JIS P8118:1998に準じ、(株)小野測器製のデジタルゲージDG-925(荷重110グラム、面径10mm)を用いて測定した値を意味する。フッ素樹脂との親和性を高めるために、ガラス不織布にシランカップリング剤処理を施してもよい。
【0105】
ガラス不織布の多くは空隙率が80%以上と非常に高いので、本開示のシートより厚いものを使用し、圧力によって圧縮して用いることが好ましい。
【0106】
上記ガラス繊維からなる布帛層は、ガラスクロスとガラス不織布とを積層した層であってもよい。これによって、相互の性質が組み合わせられて、好適な性質を得ることができる。
上記ガラス繊維からなる布帛層は、樹脂を含浸させたプリプレグの状態であってもよい。
【0107】
上記積層体は、ガラス繊維からなる布帛層とシートが界面で接着していてもよく、ガラス繊維からなる布帛層にシートの一部もしくはすべてが含侵されていてもよい。
更に、ガラス繊維からなる布帛にフッ素樹脂組成物を含侵させてプリプレグを作成したものであってもよい。このようにして得られたプリプレグに対して、更に、本開示のシートを積層したものであってもよい。この場合、プリプレグを作成する際に使用するフッ素樹脂組成物としては特に限定されるものではなく、本開示のシートを使用することもできる。
【0108】
上記基材層として用いる樹脂フィルムとしては、耐熱性樹脂フィルム、熱硬化性樹脂フィルムが好ましい。耐熱性樹脂フィルムとしては、ポリイミド、モディファイドポリイミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルファイドなどが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミド、ポリフェニレンオキサイド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエーテル、ポリブタジエンなどを含むものが挙げられる。
耐熱性樹脂フィルムおよび熱硬化性樹脂フィルムは強化繊維を含んでいても良い。強化繊維としては特に限定されないが、例えばガラスクロス、とくに低誘電タイプのものが好ましい。
【0109】
耐熱性樹脂フィルムおよび熱硬化性樹脂フィルムの誘電特性、線膨張率、吸水率などの特性は特に限定されないが、たとえば、20GHzにおける誘電率は3.8以下が好ましく、3.4以下がより好ましく、3.2以下が更に好ましい。20GHzにおける誘電正接は、0.0030以下が好ましく、0.0025以下がより好ましく、0.0020以下が更に好ましい。線膨張率は100ppm/℃以下が好ましく、70ppm/℃以下がより好ましく、40ppm/℃以下が更に好ましい。吸水率は1.0%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.1%以下が更に好ましい。
【実施例0110】
以下、本開示を実施例に基づいて具体的に説明する。以下の実施例においては特に言及しない場合は、「部」「%」はそれぞれ「質量部」「質量%」を表す。
【0111】
(実施例1~実施例13)
(粉体圧延成形)
フッ素樹脂粒子(PTFE)と球状シリカを、球状シリカの含有量が表1に示す量となるように各々計量し、ワンダークラッシャーで室温中、メモリ6で30秒×2回攪拌した。
得られた混合物を2本ロールで圧延し(ロール間隙:100μmに設定、ロール温度:100℃)、膜厚130μmのサンプルを得、340℃又は360℃で、15分間焼成することでシートを得た。
【0112】
なお、各実施例において使用した球状シリカは、表1に示すように、アドマテックス社製SC6500-SQ(平均粒径2.1μm)、又はアドマテックス社製SC6500-SQ(平均粒径2.1μm)を3-アミノプロピルトリエトキシシラン(処理量1質量%)により表面処理を施したものを使用した。実施例13はアドマテックス社製SC6500-SQ(平均粒径2.1μm)を3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(処理量0.3質量%)により表面処理を施したものを使用した。
【0113】
なお、各実施例において使用したフッ素樹脂粒子(PTFE)は、以下の性質を有するものである。
平均粒子径:500μm
見掛密度:460g/L
標準比重:2.17
【0114】
(比較例1、比較例3、比較例7、比較例8)
(ペースト押出)
表2に示す割合でフッ素樹脂粒子(PTFE)と球状シリカを所定量計量し、ドライアイス存在下、ミキサーで混合した。混合中の温度は-10℃以下であった。
得られた混合物にオイル(アイソパーH)を20%添加し、混合し、5時間程度熟成させた。
熟成させた組成物を圧力3MPa条件で予備成形し、予備成形した成形体を40℃、50mm/minの条件で押出し、押出サンプルを得た。押出サンプルを2本ロールで圧延し、膜厚125μmのサンプルを得、200℃、2時間乾燥し、340℃又は360℃で、15分焼成することでシートを得た。
【0115】
(比較例2、比較例4~比較例6)
(粉体圧延成形)
表2に示す割合でフッ素樹脂粒子(PTFE)と球状シリカを所定量計量し、その他は、実施例と同様にしてシートを得た。
【0116】
得られた各シートについて、以下の基準に基づいて評価を行った。
[Dk及びDf]
スプリットシリンダ式誘電率・誘電正接測定装置(EM lab社製)を用いて、25℃、10GHzのDk及びDfを測定した。
【0117】
[CTE(線膨張率)]
TMA―7100(株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用いたTMA測定を引張モードで行い、サンプル片として、長さ20mm、幅5mmに切出したシートを用いて、チャック間を10mmに設定し、49mNの荷重をかけながら昇温速度2℃/分で0~150℃でのサンプルの変位量からCTE(線膨張率)を求めた。
【0118】
〔成形性〕
成形性は下記の基準で〇、△、×を判断した。
〇:皺および割れがないシートの成形が可能
△:シートに皺が発生
×:シートに割れが発生
これらの結果を表1、表2に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
上記結果から、本開示のシートは、低線膨張率という観点において優れた性能を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本開示のシートは、特に、高周波プリント基板に好適に使用することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂粒子とフィラーを含み、前記フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーとの全量中75~96.5質量%であり、前記フィラーが、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム又はこれらの組み合わせを含むものであり、前記フッ素樹脂粒子及びフィラー以外の成分が10質量%以下であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記フッ素樹脂粒子は非溶融加工性である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記フッ素樹脂粒子がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリテトラフルオロエチレンは、標準比重(SSG)が2.0~2.3である請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記フィラーは、表面がシランカップリング剤でコーティングされたものである請求項1又は2記載の組成物。
【請求項6】
前記フィラーが球状である請求項1又は2記載の組成物。
【請求項7】
前記球状フィラーの平均粒子径が0.1~10μmである請求項記載の組成物。
【請求項8】
前記フッ素樹脂粒子は、平均粒子径が0.05~1000μmである請求項1又は2記載の組成物。
【請求項9】
フッ素樹脂粒子とフィラーを含み、前記フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーとの全量中75~96.5質量%であり、前記フィラーが、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム又はこれらの組み合わせを含むものであり、前記フッ素樹脂粒子及びフィラー以外の成分が10質量%以下である組成物からなることを特徴とするシート又は膜。
【請求項10】
厚みが5~250μmである請求項記載のシート又は膜。
【請求項11】
10GHzでの比誘電率(Dk)が3.5以下、誘電正接(Df)が0.0014以下、及び線膨張率(CTE)が40ppm/K以下である請求項又は10に記載のシート又は膜。
【請求項12】
フッ素樹脂粒子と、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム又はこれらの組み合わせを含むフィラーとを、前記フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーとの全量中75~96.5質量%となるように、また、前記フッ素樹脂粒子及びフィラー以外の成分が10質量%以下となるように混合して成膜する工程を有することを特徴とするシート又は膜の製造方法。
【請求項13】
実質的にフッ素樹脂粒子とフィラーとからなる組成物を用いて成膜することを特徴とする請求項12に記載のシート又は膜の製造方法。
【請求項14】
金属層及び請求項又は10に記載のシート又は膜を必須の層とする金属積層体。
【請求項15】
前記金属層が銅箔である請求項14に記載の金属積層体。
【請求項16】
請求項15に記載の金属積層体を有することを特徴とする回路用基板。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本開示は、フッ素樹脂粒子とフィラーを含み、前記フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーとの全量中75~96.5質量%であり、前記フィラーが、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム又はこれらの組み合わせを含むものであり、前記フッ素樹脂粒子及びフィラー以外の成分が10質量%以下であることを特徴とする組成物である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
記フィラーは、表面がシランカップリング剤でコーティングされたものであることが好ましい。
前記フィラーが球状であることが好ましい。
前記球状フィラーの平均粒子径が0.1~10μmであることが好ましい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本開示は、フッ素樹脂粒子とフィラーを含み、前記フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーとの全量中75~96.5質量%であり、前記フィラーが、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム又はこれらの組み合わせを含むものであり、前記フッ素樹脂粒子及びフィラー以外の成分が10質量%以下である組成物からなることを特徴とするシート又は膜でもある。
厚みが5~250μmであることが好ましい。
10GHzでの比誘電率(Dk)が3.5以下、誘電正接(Df)が0.0014以下、及び線膨張率(CTE)が40ppm/K以下であることが好ましい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本開示は、フッ素樹脂粒子と、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム又はこれらの組み合わせを含むフィラーとを、前記フィラーの含有量がフッ素樹脂粒子とフィラーとの全量中75~96.5質量%となるように、また、前記フッ素樹脂粒子及びフィラー以外の成分が10質量%以下となるように混合して成膜する工程を有することを特徴とする上記シート又は膜の製造方法でもある。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
(フィラー)
本開示において使用することができるフィラーとしては特に限定されず、アラミド繊維、ポリフェニルエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、モディファイドポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレン、ポリアミド、全芳香族ポリエステル樹脂から選ばれる一種以上である有機充填材、セラミックス、タルク、マイカ、酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、ガラス繊維、ガラス片、ガラスビード、炭化ケイ素、弗化カルシウム、窒化ホウ素、硫酸バリウム、二硫化モリブデン及び炭酸カリウムウイスカから選ばれる一種以上である無機充填材などを挙げることができる。これらの2種以上を併用するものであってもよい。
これらのなかでも、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム又はこれらの組み合わせを含むものであることが特に好ましい。これらのフィラーはフィラー自体の線膨張率と誘電正接が低いため、組成物、シートに加工した場合も線膨張率を低く、また誘電正接(Df)も低く制御可能となるので好ましい。