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特開2024-84726四級化スチレン系ブロックコポリマー及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084726
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】四級化スチレン系ブロックコポリマー及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/32 20060101AFI20240618BHJP
   C08F 8/20 20060101ALI20240618BHJP
   C08F 8/04 20060101ALI20240618BHJP
   C08J 5/22 20060101ALI20240618BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C08F8/32
C08F8/20
C08F8/04
C08J5/22 104
C08J5/22 CET
C08J5/18 CEQ
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023209055
(22)【出願日】2023-12-12
(31)【優先権主張番号】63/387,119
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523468079
【氏名又は名称】ノターク・エル・エル・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベニング,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジアチイ
(72)【発明者】
【氏名】トチェット,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】ティアン,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】メータル,ビジェイ
(72)【発明者】
【氏名】デーシュムク,サンデシュ
(72)【発明者】
【氏名】ディン,ルイドン
【テーマコード(参考)】
4F071
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA12
4F071AA12X
4F071AA22
4F071AA22X
4F071AA75
4F071AA78
4F071AA81
4F071AC02
4F071AC05
4F071AE19
4F071AF15Y
4F071AF20Y
4F071AF21Y
4F071AF37Y
4F071AF57Y
4F071AG05
4F071AG34
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4F071FA10
4F071FB02
4F071FB07
4F071FD04
4J100AB02P
4J100AB04Q
4J100AS03R
4J100BA32H
4J100BB03H
4J100CA05
4J100CA31
4J100DA01
4J100HA03
4J100HA21
4J100HA53
4J100HA61
4J100HC05
4J100HC45
4J100HC46
4J100HG02
4J100JA16
(57)【要約】
【課題】AEMにおいて使用するための、改善された安定性、高いイオン伝導性及び電気化学的性能、並びにバランスのとれた機械的特性を有する、第四級アンモニウム基を含有するポリマーを提供すること。
【解決手段】本開示は、四級化スチレン系ブロックコポリマー(QSBC)及び架橋QSBC(xQSBC)に関する。QSBCは、トリブロックコポリマー、テトラブロックコポリマー、ペンタブロックコポリマー、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのブロックコポリマーを含む。ブロックコポリマーは、各々が独立にビニル芳香族モノマーに由来する少なくとも1つのブロックA又はA’、及び共役ジエンモノマーに由来する、又はビニル芳香族モノマーと共役したジエンモノマーとの組み合わせに由来するブロックBを含有する。ブロックA及び/又はA’中の少なくとも1つの重合したビニル芳香族単位は、第四級アンモニウム基を含む。xQSBCは、高いイオン伝導性、改善された寸法安定性、及びバランスのとれた機械的特性を示す。QSBCは、アニオン交換膜(AEM)、燃料電池、電解装置などにおける用途がある。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリブロックコポリマー、テトラブロックコポリマー、ペンタブロックコポリマー、及びそれらの混合物から選択されるブロックコポリマーを含む、四級化スチレン系ブロックコポリマーであって、
前記トリブロックコポリマーが、A-B-A’、B-A-B、B-A’-B、(A-B)nX、(A’-B)nX、(B-A)nX、(B-A’)nX、及びそれらの混合物から選択される一般的構成を有し、各ブロックBが、ビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのコポリマーブロックであり、
前記テトラブロックコポリマーが、A-A-B-A、A’-A’-B-A’、A’-A-B-A、A’-A-B-A’、A-A’-B-A’、及びそれらの混合物から選択される一般的構成を有し、各ブロックBが、共役ジエンモノマーのポリマーブロック、又はビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのコポリマーブロックであり、
前記ペンタブロックコポリマーが、A-B-A-B-A、A’-B-A’-B-A’、A’-B-A-B-A、A’-B-A-B-A’、A-B-A’-B-A、B-A-B-A-B、B-A’-B-A’-B、B-A’-B-A-B、(A-B-A’)nX、(A’-B-A)nX、(B-A-B)nX、(B-A’-B)nX、及びそれらの混合物から選択される一般的構成を有し、各ブロックBが、共役ジエンモノマーのポリマーブロック、又はビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのコポリマーブロックであり、
ここで、
nは2~30の整数であり、
Xはカップリング剤の残基であり、
各ブロックA及びA’は独立に、ビニル芳香族モノマーのポリマーブロックであり、少なくとも1つのブロックA及びA’の少なくとも1つの重合したビニル芳香族単位は、一般式(I):
【化1】
(式中、
及びRは独立にC~Cアルキル基であり、
Zは、C1~12の直鎖アルキル鎖、C3~12の環状アルキル鎖、又はC4~12の分岐アルキル鎖のいずれかであり、
QAは第四級アンモニウム基であり、
HLは、OH、HCO 、CO 2-、F、Cl、Br、及びIから選択される対イオンである)
を有する、四級化スチレン系ブロックコポリマー。
【請求項2】
前記四級化スチレン系ブロックコポリマーが、架橋四級化スチレン系ブロックコポリマーを得るための架橋剤により架橋されている、請求項1に記載の四級化スチレン系ブロックコポリマー。
【請求項3】
0.1~500μmの厚さを有する、請求項2に記載の架橋四級化スチレン系ブロックコポリマーを含むフィルム。
【請求項4】
1M KOH溶液中で80℃にて1000時間エージングした後のフィルムが、エージング前のフィルムのOHイオン伝導性よりも<50%低下したOHイオン伝導性(ただし、両方とも80℃でmS/cmにおいて測定される)を有する、請求項3に記載のフィルム。
【請求項5】
1M KOH溶液中で80℃において10000時間エージングした後のフィルムが、エージング前のフィルムのOHイオン伝導性よりも<60%低下したOHイオン伝導性(ただし、両方とも80℃においてmS/cmで測定される)を有する、請求項3に記載のフィルム。
【請求項6】
25℃で静的膜電位測定セルを使用して測定される、>70%の透過選択性、及び
10kHzにおいてLCR抵抗計を使用して測定される、<2Ωcmの抵抗(Rm+s
のうちの少なくとも1つを有する、請求項3~5のいずれかに記載のフィルム。
【請求項7】
1.2~3.0meq/gのイオン交換容量(IEC)を有する、請求項3~5のいずれかに記載のフィルム。
【請求項8】
乾燥状態において、
50~2500MPaのヤング率、
1~100%の破断伸び、
15~40MPaの引張強度、及び
1~8MJ/mの靱性
(すべてがASTM D412に準拠して測定される)のうち少なくとも1つを有する、請求項3~5のいずれかに記載のフィルム。
【請求項9】
1M KOH溶液中で80℃において500時間エージングした後のフィルムが、
400~700MPaのヤング率、
1~20%の破断伸び、
5~20MPaの引張強度、及び
1~5MJ/mの靱性
(すべてがASTM D412に準拠して測定される)のうち少なくとも1つを有する、請求項3~5のいずれかに記載のフィルム。
【請求項10】
ブロックBがビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのコポリマーブロックである場合、ブロックBが、>1の重合した共役ジエンモノマーに対する重合したビニル芳香族モノマーの重量比を有する、請求項1又は2に記載の四級化スチレン系ブロックコポリマー。
【請求項11】
前記四級化スチレン系ブロックコポリマーが、スチレン系ブロックコポリマー前駆体のハロゲン化及び四級化によって得られ、四級化が、ジメチルアミン、トリメチルアミン、1-メチルピペリジン、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、N-メチルモルホリン、3-ヒドロキシプロピルジメチルアミン、n-ブチルジメチルアミン、ジ(3-ヒドロキシプロピル)メチルアミン、2,3-ジヒドロキシプロピルジメチルアミン、3-ヒドロキシプロピルジエチルアミン、2-ヒドロキシプロピルジメチルアミン、4-ヒドロキシブチルジメチルアミン、2-ヒドロキシエチルジメチルアミン、n-プロピルジメチルアミン、2-ヒドロキシエトキシエチルジメチルアミン、ジ(2-ヒドロキシエチル)メチルアミン、ベンジルジメチルアミン及び4-ヒドロキシベンジルジメチルアミン3-エチルピリジン、4-プロピルピリジン、4-tert-ブチルピリジン、4-シアノピリジン、4-イソプロピルピリジン、4-メトキシピリジン、3,4-ルチジン、3-メトキシピリジン、4-ピリジンメタノール、N,N,N,N-テトラメチルヘキシルジアミン、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの四級化剤を使用することによって行われる、請求項1又は2に記載の四級化スチレン系ブロックコポリマー。
【請求項12】
前記架橋剤が、一般式II
(RN-(CH-N(R (II)
(式中、t=1~7であり、Rは独立に、H原子、C1~5アルキル基、又はC1~5ヒドロキシアルキル基である)により表されるポリアミンである、請求項1又は2に記載の四級化スチレン系ブロックコポリマー。
【請求項13】
少なくとも1つのブロックA及びA’が独立に、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含有するポリスチレンブロックを含む、請求項1又は2に記載の四級化スチレン系ブロックコポリマー。
【請求項14】
各ブロックA及びA’が、独立に3~100kg/molの分子量(M)を有し、
ブロックBが共役ジエンモノマーのポリマーブロックである場合、ブロックBが2~150kg/molの分子量(M)を有し、
ブロックBが共役ジエンモノマーとビニル芳香族モノマーとのコポリマーブロックである場合、ブロックBが30~150kg/molの分子量(M)を有する、
請求項1又は2に記載の四級化スチレン系ブロックコポリマー。
【請求項15】
請求項2に記載の架橋四級化スチレン系ブロックコポリマーを含む、アニオン交換膜(AEM)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、四級化スチレン系ブロックコポリマー及び架橋四級化スチレン系ブロックコポリマー、その調製方法、並びにその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
アニオン交換膜(AEM)は、正に帯電した官能基の存在に起因してアニオンを選択的に通すポリマー膜である。それらは、燃料電池、電解装置、先進的バッテリー、電気化学的水素圧縮機、センサー、アクチュエーター、水処理システムなどを含めた様々な用途で使用される。これらの用途は多くの場合に、高pH及び高温における化学的安定性、高いイオン伝導性、良好な機械的特性、合成のスケーラビィリティ、優れた選択的透過性、優れた電気特性などの特定の性質を必要とする。
【0003】
AEMの性能は、使用される材料の選択によって決定される。ポリマー系材料は、それらの構造、組成、官能基、分子量、及び他の要因によって特徴づけることができ、これは様々な最終用途に向けて調整することができる。クロロメチル化、ラジカル臭素化、フリーデル・クラフツアシル化、エポキシ化、スルホン化などの官能化技術を採用して、第四級アンモニウム基などのイオン性基を導入することができ、これはAEM調製のためにさらに修飾することができる。既存のAEMは、塩基性環境における不十分な安定性、低いイオン伝導性、及び水吸収に起因する機械的強度の低下に関連した課題に直面している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
AEMにおいて使用するための、改善された安定性、高いイオン伝導性及び電気化学的性能、並びにバランスのとれた機械的特性を有する、第四級アンモニウム基を含有するポリマーが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(概要)
一態様において、本開示は、トリブロックコポリマー、テトラブロック、ペンタブロックコポリマー、及びそれらの混合物から選択されるブロックコポリマーを含む、四級化スチレン系ブロックコポリマー(QSBC)に関する。トリブロックコポリマーは、A-B-A’、B-A-B、B-A’-B、(A-B)nX、(A’-B)nX、(B-A)nX、(B-A’)nX、及びそれらの混合物から選択される一般的構成を有する。トリブロックコポリマー中の各ブロックBは、ビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのコポリマーブロックである。テトラブロックコポリマーは、A-A-B-A、A’-A’-B-A’、A’-A-B-A、A’-A-B-A’、A-A’-B-A’、及びそれらの混合物から選択される一般的構成を有する。テトラブロックコポリマー中の各ブロックBは、共役ジエンモノマーのポリマーブロック、又はビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのコポリマーブロックである。ペンタブロックコポリマーは、A-B-A-B-A、A’-B-A’-B-A’、A’-B-A-B-A、A’-B-A-B-A’、A-B-A’-B-A、B-A-B-A-B、B-A’-B-A’-B、B-A’-B-A-B、(A-B-A’)nX、(A’-B-A)nX、(B-A-B)nX、(B-A’-B)nX、及びそれらの混合物から選択される一般的構成を有する。ペンタブロックコポリマー中の各ブロックBは、共役ジエンモノマーのポリマーブロック、又はビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのコポリマーブロックである。トリブロック、テトラブロック、又はペンタブロックコポリマーにおいて、nは2~30の整数であり、Xはカップリング剤の残基であり、各ブロックA及びA’は独立に、ビニル芳香族モノマーのポリマーブロックであり、少なくとも1つのブロックA及びA’の少なくとも1つの重合したビニル芳香族単位は、一般式(I):
【0006】
【化1】
(式中、R及びRは独立にC~Cアルキル基であり;Zは、C1~12の直鎖アルキル鎖、C3~12の環状アルキル鎖、又はC4~12の分岐アルキル鎖のいずれかであり;QAは第四級アンモニウム基であり;HLは、OH、HCO 、CO 2-、F、Cl、Br、及びIから選択される対イオンである)を有する。
【0007】
第2の態様において、QSBCは、架橋四級化スチレン系ブロックコポリマー(xQSBC)を得るための架橋剤により架橋されている。
【0008】
第3の態様において、フィルムは架橋四級化スチレン系ブロックコポリマーを含み、フィルムは0.1~500μmの厚さを有する。
【0009】
第4の態様において、1M KOH溶液中で80℃にて1000時間エージングした後のフィルムは、エージング前のフィルムのOHイオン伝導性よりも<50%低下したOHイオン伝導性(ただし、両方とも80℃でmS/cmにおいて測定される)を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の用語は以下の意味を有する:
【0011】
「[A、B、及びCなどの群]の少なくとも1つ」又は「[A、B、及びCなどの群]のうちのいずれか」とは、その群からの単一のメンバー、群からの1つより多くのメンバー、又は群からのメンバーの組合わせを意味する。例えば、A、B、及びCのうちの少なくとも1つとは、例えば、Aのみ、Bのみ、又はCのみ、並びにA及びB、A及びC、B及びCであり、又はA、B、及びCであり、又はA、B、及びCのすべての他の任意のあらゆる組合わせを含む。
【0012】
「A、B、又はC」として提示された実施形態のリストは、Aのみ、Bのみ、Cのみ、「A又はB」、「A又はC」、「B又はC」、又は「A、B、又はC」の実施形態を含むものとして解釈されるべきである。
【0013】
「ビニル含量」は、ブタジエンの場合1,2-付加を介して、又はイソプレンの場合は3,4-付加を介して重合し、ポリマー骨格に隣接する一置換オレフィン、又はビニル基を生成する共役ジエンモノマーの含量を指す。ビニル含量はH核磁気共鳴分光測定(NMR)により測定することができる。
【0014】
%CEとして表される「カップリング効率」とは、カップリングポリマーの重量%及び非カップリングポリマーの重量%の値を使用して計算される。カップリングポリマー及び非カップリングポリマーの重量%は、示差屈折率検出器のアウトプットを使用して決定される。
【0015】
ブロックコポリマーの「ポリスチレン含有量」又はPSCとは、ビニル芳香族の重量%、例えば、ブロックコポリマー中の重合したスチレンの重量%を指し、これは、すべての重合したビニル芳香族単位の分子量の合計を、ブロックコポリマーの全分子量で割ることにより計算される。PSCは、任意の適切な方法、例えば、H NMRを使用して決定することができる。
【0016】
ブロックコポリマーにおける「水素化レベル」とは、水素化すると飽和状態になる、最初の不飽和結合の%を指す。水素化ビニル芳香族ポリマーにおける水素化レベルは、UV-VIS分光分析法及び/又はH NMRを使用して決定することができる。水素化ジエンポリマーにおける水素化レベルは、H NMRを使用して決定することができる。
【0017】
「分子量」又はMとは、ポリマーブロック又はブロックコポリマーのポリスチレン当量の換算分子量(kg/mol)を指す。Mは、ポリスチレン較正標準液を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定することができ、例えば、ASTM5296-19に従い行われる。GPC検出器は紫外線又は屈折率検出器又はこれらの組合わせであることができる。クロマトグラフは、市販のポリスチレン分子量標準物質を使用して較正される。このように構成されたGPCを使用して測定されたポリマーのMは、ポリスチレン当量の分子量又は見かけの分子量である。本明細書で表現されているMは、GPCトレースのピークで測定され、一般的にポリスチレン当量の「ピーク分子量」と呼ばれ、Mとして示される。
【0018】
「膜」は材料の連続的、可撓性のシート又は層(フィルム又はコーティングなど)を指し、例えば分子、イオン、ガス、又は粒子などの何らかのものを通すが他のものを阻止する選択的バリアである。
【0019】
電気化学セルにおける「アニオン交換膜」又は「アルカリ交換膜」又はAEMは、2つの電極の周囲に存在する反応物を分離しながら一方でセルの稼働に必須のアニオンを輸送する半透膜を指す。
【0020】
「イオン交換容量」又はIECは、ポリマーにおけるイオン交換に関与する全活性部位又は官能基を指す。従来の酸塩基滴定法を使用してIECを決定することができる。International Journal of Hydrogen Energy、39巻、10号、2014年3月26日、5054~5062頁、「Determination of the ion exchange capacity of anion-selective membrane」を参照のこと。IECは、1モルの交換可能なプロトンを供給するのに必要なポリマーの重量である、「当量」又はEWの逆数である。
【0021】
「イオン伝導性」は、物質の(ここでは膜の)イオン(例えば、OH)伝導の傾向の指標である。イオン伝導はイオンの移動、及び電流の1つのメカニズムである。イオン伝導性は一般に電気化学的インピーダンス分光法などの方法により測定される。
【0022】
「透過選択性」とは、膜が対イオンに対して透過性であり共イオンに対して非透過性である度合いを指す。AEMを有する電気化学セルに電流を印加すると、溶液中の対イオン(アニオン、例えば、OH)はAEMを通過することになり、理論上は、大部分の共イオン(カチオン)を膜が拒絶することになる。しかし実際には、一部のカチオンがAEMを通過することになる。これらの共イオンが膜を通過することは全体のプロセス効率を低下させる。高い透過選択性を有する膜、すなわち対イオンに対して透過性が高く共イオンに対して非透過性が高い膜は、透過選択性が低い膜よりも効率的である。透過選択性は、透過セル、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン選択性電極、導電率測定、静的膜電位測定セルなどを含めた公知の方法により測定することができる。
【0023】
AEMの「抵抗」又は「抵抗率」又は「電気抵抗率」は、電流の流れに膜がどれだけ強く抵抗するかを表すものを指す。抵抗率が高いと、膜を通るイオン移動を促進して電気化学的分離を行うために、より多くの電流、ひいてはより多くのエネルギーを、電気化学セルに与えなければならない。一般に、AEMの抵抗率が低いほど、膜の効率が高い。抵抗率は、抵抗に面積を掛けたもの、例えばオーム平方センチメートル、Ω.cmの単位で表すことができる。抵抗率は、電気化学的インピーダンス分光法、四探針法、電流-電圧特性、LCR抵抗計などを含めた公知の方法により測定することができる。
【0024】
「乾燥」又は「乾燥状態」は、本質的に液体(例えば、水、アルカリ溶液、有機溶媒など)を吸収していない又はわずかな量の液体しか吸収していない材料又は膜の、含水の状態を指す又は述べる。例えば、大気と単に接触している材料又は膜は乾燥状態にあると考えられる。
【0025】
「エージングされた」又は「エージング後」とは、試料の特性の変化を観測/測定するために試料が一定の時間にわたって特定の温度において溶液(例えば、酸性溶液、アルカリ溶液など)にさらされるプロセスを指す。試験/測定は試料をそれぞれの溶液から取り出した後に行われる。
【0026】
この開示は、四級化スチレン系ブロックコポリマー(QSBC)及びその架橋された型、すなわち架橋四級化スチレン系ブロックポリマー(xQSBC)に関する。QSBCは、スチレン系ブロックコポリマー(SBC)前駆体をハロゲン化及び四級化することにより得られる。xQSBCは、QSBCを架橋することにより、又は同じステップでハロゲン化SBCを架橋及び四級化することにより得ることができる。xQSBCは、高いイオン伝導性、改善された寸法安定性、及びバランスのとれた機械的特性を有し、これらはAEM、燃料電池、電解装置などにおいて有用となり得る。
【0027】
(スチレン系ブロックコポリマー(SBC)前駆体)
SBC前駆体は、ブロックA、ブロックA’、及びブロックBを有する、直鎖、分岐、又はラジカルブロックコポリマーのいずれかである。実施形態において、SBC前駆体は、同一であり又は異なっており独立にビニル芳香族モノマーのポリマーブロックであるブロックA及びA’、共役ジエンモノマーのポリマーブロック、又は共役ジエンモノマーとビニル芳香族モノマーとのコポリマーブロックを含有するブロックBを含む。SBC前駆体は、QSBC/xQSBCを次のステップで形成する前に水素化される。
【0028】
実施形態において、SBC前駆体は、A-B-A’、B-A-B、B-A’-B、(A-B)nX、(A’-B)nX、(B-A)nX、(B-A’)nX、及びそれらの混合物から選択される一般的構成を有するトリブロックコポリマーである。トリブロックコポリマー中の各ブロックBは、共役ジエンモノマーとビニル芳香族モノマーとのコポリマーブロックである。
【0029】
実施形態において、SBC前駆体は、A-A-B-A、A’-A’-B-A’、A’-A-B-A、A’-A-B-A’、A-A’-B-A’、及びそれらの混合物から選択される一般的構成を有するテトラブロックコポリマーである。実施形態において、テトラブロックコポリマー中の各ブロックBは、共役ジエンモノマーのポリマーブロック、又は共役ジエンモノマーとビニル芳香族モノマーとのコポリマーブロックである。
【0030】
実施形態において、SBC前駆体は、A-B-A-B-A、A’-B-A’-B-A’、A’-B-A-B-A、A’-B-A-B-A’、A-B-A’-B-A、B-A-B-A-B、B-A’-B-A’-B、B-A’-B-A-B、(A-B-A’)nX、(A’-B-A)nX、(B-A-B)nX、(B-A’-B)nX、及びそれらの混合物から選択される一般的構成を有するペンタブロックコポリマーである。実施形態において、ペンタブロックコポリマー中の各ブロックBは、共役ジエンモノマーのポリマーブロック、又は共役ジエンモノマーとビニル芳香族モノマーとのコポリマーブロックである。H NMRを含めた標準的な分析技術を使用してQSBC又はxQSBC中のSBC前駆体の構成/構造を検出することができる。
【0031】
トリブロックコポリマー、テトラブロック、又はペンタブロックコポリマーにおいて、nは2~30の整数であり、Xはカップリング剤の残基である。
【0032】
実施形態において、ビニル芳香族モノマーは、スチレン、パラ置換スチレン、オルト置換スチレン、メタ置換スチレン、アルファ-メチルスチレン、1,1-ジフェニルエチレン、1,2-ジフェニルエチレン、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0033】
実施形態において、パラ置換スチレンモノマーは、パラ-メチルスチレン、パラ-エチルスチレン、パラ-n-プロピルスチレン、パラ-イソプロピルスチレン、パラ-n-ブチルスチレン、パラ-sec-ブチルスチレン、パラ-イソブチルスチレン、パラ-t-ブチルスチレン、パラ-デシルスチレンの異性体、パラ-ドデシルスチレンの異性体、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0034】
実施形態において、共役ジエンモノマーは、イソプレン、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、ファルネセン、ミルセン、ピペリレン、シクロヘキサジエン、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0035】
実施形態において、各ブロックA及びA’は独立に、3~100、又は5~80、又は10~70、又は3~70、又は5~65kg/molの分子量(M)を有する。
【0036】
実施形態において、各ブロックA及びA’は独立に、SBC前駆体の総重量を基準として90~95、又は65~95、又は70~90、又は75~95、又は80~95重量%を構成する。
【0037】
実施形態において、ブロックBが共役ジエンモノマーのポリマーブロックである場合、ブロックBは2~150、又は5~120、又は5~100、又は5~60kg/molの分子量(M)を有する。実施形態において、ブロックBはSBC前駆体の総重量を基準として5~35、又は10~30、又は5~25、又は5~20重量%を構成する。
【0038】
実施形態において、ブロックBが共役ジエンモノマーとビニル芳香族モノマーとのコポリマーブロックである場合、ブロックBは30~150、又は40~120、又は50~100kg/molの分子量(M)を有する。実施形態において、ブロックBはSBC前駆体の総重量を基準として最大で60、又は10~50、又は10~40、又は15~45、又は10~35重量%を構成する。
【0039】
実施形態において、ブロックBがビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのコポリマーブロックである場合、ブロックBにおける、重合したビニル芳香族モノマーの重合した共役ジエンモノマーに対する重量比は>1、又は>2、又は≧3である。
【0040】
実施形態において、水素化前のブロックBは、ブロックB中の重合した共役ジエンモノマーの総重量を基準として、最大で80、又は5~80、又は10~75、又は20~70重量%のビニル含量を有する。ビニル含量は、H NMRにより水素化の前又は後に測定することができる。
【0041】
実施形態において、各ブロックA及びA’は独立に<30%、又は<25%、又は<20%、又は<10%の水素化レベルを有する。
【0042】
実施形態において、ブロックBが共役ジエンモノマーのポリマーブロックを含有する場合、ブロックBは>80%、又は>90%、又は>95%、又は>98%、又は>99.5%、又は最大で100%の水素化レベルを有する。
【0043】
実施形態において、ブロックBが共役ジエンモノマーとビニル芳香族モノマーとのコポリマーブロックを含有する場合、ブロックB中の重合した共役ジエン単位は、>80%、又は>90%、又は>95%、又は>98%、又は>99.5%、又は最大で100%の水素化レベルを有し、重合したビニル芳香族単位は、<30%、又は<25%、又は<20%、又は<10%の水素化レベルを有する。
【0044】
実施形態において、SBC前駆体は、50~95%、又は60~90%、又は>60%、又は>65%のカップリング効率(CE)を有する。
【0045】
実施形態において、SBC前駆体は、70~95、又は75~95、又は80~95、又は85~95、又は75~85、又は80~90重量%のポリスチレン含量を有する。
【0046】
実施形態において、SBC前駆体は、10~400、又は20~350、又は30~300、又は40~250、又は20~200、又は30~300kg/molの分子量(M)を有する。
【0047】
実施形態において、トリブロックコポリマーは、ポリ(スチレン-パラメチルスチレン/エチレン/ブチレン-スチレン)(S-pMS/EB-S)、ポリ(パラメチルスチレン-スチレン/エチレン/ブチレン-パラメチルスチレン)(pMS-S/EB-pMS)、ポリ(スチレン-パラメチルスチレン/エチレン/プロピレン-スチレン)(S-pMS/EP-S)、及びポリ(パラメチルスチレン-スチレン/エチレン/プロピレン-パラメチルスチレン)(pMS-S/EP-pMS)から選択される少なくとも1つである。
【0048】
実施形態において、テトラブロックコポリマーは、ポリ(パラメチルスチレン-エチレン/プロピレン-スチレン-エチレン/プロピレン)(pMS-EP-S-EP)、ポリ(スチレン-エチレン/プロピレン-パラメチルスチレン-エチレン/プロピレン)(S-EP-pMS-EP)、ポリ(パラメチルスチレン-エチレン/ブチレン-スチレン-エチレン/ブチレン)(pMS-EB-S-EB)、及びポリ(スチレン-エチレン/ブチレン-パラメチルスチレン-エチレン/ブチレン)(S-EB-pMS-EB)から選択される少なくとも1つである。テトラブロックコポリマー中の各ブロックBは、ビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのコポリマーブロックであってもよい。
【0049】
実施形態において、ペンタブロックコポリマーは、ポリ(パラメチルスチレン-エチレン/プロピレン-スチレン-エチレン/プロピレン-パラメチルスチレン)(pMS-EP-S-EP-pMS)、ポリ(スチレン-エチレン/プロピレン-パラメチルスチレン-エチレン/プロピレン-スチレン)(S-EP-pMS-EP-S)、ポリ(パラメチルスチレン-エチレン/ブチレン-スチレン-エチレン/ブチレン-パラメチルスチレン)(pMS-EB-S-EB-pMS)、及びポリ(スチレン-エチレン/ブチレン-パラメチルスチレン-エチレン/ブチレン-スチレン)(S-EB-pMS-EB-S)から選択される少なくとも1つである。ペンタブロックコポリマー中の各ブロックBは、ビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーとのコポリマーブロックであってもよい。
【0050】
SBC前駆体は、当技術分野において公知であり例えば米国特許第7449518号明細書に開示される方法により調製することができる。SBC前駆体は、例えばアニオン性重合により調製することができる。カチオン性重合などの他の方法も採用できる。アニオン性重合開始剤は一般に有機金属化合物、例えば有機リチウム化合物など、例えば、エチル-、プロピル-、イソプロピル-、n-ブチル-、sec-ブチル-、tert-ブチル-、フェニル-、ヘキシルビフェニル-、ヘキサメチレンジ-、ブタジエニル-、イソプレニル-、1,1-ジフェニルヘキシルリチウム、又はポリスチリルリチウムなどである。必要とされる開始剤の量は、得ようとする分子量に基づいて計算され、一般には重合させようとするモノマーの量を基準として0.002~5重量%である。適切な溶媒としては、4~12個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式、又は芳香族炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、イソオクタン、ベンゼン、アルキルベンゼンなど、例えばトルエン、キシレン、若しくはエチルベンゼンなど、又は適切なそれらの混合物が挙げられる。ポリマー連鎖停止反応は、プロトンドナーを用いて、又はカルバニオンポリマー鎖により置き換えることができる脱離基を有する化合物を用いてクエンチすることによって実現でき、続いて、得られる逐次ブロックコポリマー鎖をカップリング剤(存在する場合)によりカップリングさせ、続いて水素化SBCを作るための水素化ステップを行う。
【0051】
(四級化スチレン系ブロックコポリマー(QSBC)又はイオノマー)
実施形態において、QSBCは、トリブロックコポリマー、テトラブロックコポリマー、ペンタブロックコポリマー、又はそれらの混合物から選択される少なくとも1つのブロックコポリマーを含む。少なくとも1つのブロックA及びA’中の少なくとも1つの重合したビニル芳香族単位は、一般式(I):
【0052】
【化2】
(式中、R及びRは独立にC~Cアルキル基であり;ZはC1~12の直鎖アルキル鎖、C3~12の環状アルキル鎖、又はC4~12の分岐アルキル鎖のいずれかであり;QAは第四級アンモニウム基であり;HLはOH、HCO 、CO 2─、F、Cl、Br、及びIから選択される対イオンである)を有する。
【0053】
実施形態において、少なくとも1つのブロックA及びA’は独立に、重合したスチレンモノマーを含み、これは四級化が起こりやすく、ブロックBは共役ジエンモノマーのポリマーブロックを含み、これは四級化されにくい。実施形態において、ブロックBがスチレンモノマーと共役ジエンモノマーとのコポリマーブロックである場合、重合したスチレン単位は四級化が起こりやすい。
【0054】
実施形態において、少なくとも1つのブロックA及びA’における少なくとも1つの重合したビニル芳香族単位は、1つ以上の第四級アンモニウム基を含む。実施形態において、重合したビニル芳香族単位は重合したスチレン単位である。
【0055】
(QSBC又はxQSBCの調製方法)
実施形態において、QSBCは一連の反応ステップによって得られる。SBC前駆体の水素化後の実施形態において、水素化SBC前駆体はハロゲン化される。このステップにおいて、当技術分野において一般的に知られるフリーデルクラフト(FC)置換反応によって水素化SBC前駆体を少なくとも1つのハロゲン化アルキルと反応させて、SBC(AL-SBC)を含有するハロゲン化アルキルを得る。FC置換反応は、酸触媒、例えばブレンステッド酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン(トリフル)酸などの存在下で行うことができる。反応は、0~40℃、又は5~30℃、又は0~25℃、又は0~20℃において、十分な時間で行うことができる。ハロゲン化物の例としては、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素が挙げられ、置換アルキル鎖は、直鎖(C1~12)、分岐(C4~12)、環状(C3~12)鎖であってもよい。任意のハロゲン化剤、例えば1,1-ジメチル-6-ブロモ-1-ヘキサノールを使用して、AL-SBC(ここではBr-SBC)を得ることができる。実施形態において、重合したビニル芳香族モノマーのパラ位でハロゲン化アルキル鎖を結合させることにより、四級化が起こりやすいブロックが選択的にハロゲン化される。ハロゲン化後、AL-SBCはさらなる処理のために回収されてもよい。
【0056】
ハロゲン化アルキルを十分な量で使用して所望のハロゲン化度を得ることができる。実施形態において、AL-SBCは、ハロゲン化が起こりやすいブロックに対して最大で100%、又は40~90%、又は45~80%、又は50~95%、又は55~90%、又は60~100%、又は>40%、又は>50%、又は>55%のハロゲン化度を有する。ハロゲン化度は、H NMRを含めた標準的な分析技術により測定することができる。
【0057】
ハロゲン化後の実施形態において、AL-SBCの四級化は、AL-SBCを少なくとも1つの四級化剤と、例えばジアミノ基又は多アミノ基を含有する化合物と反応させることにより行われる。実施形態において、QSBCすなわち、架橋していない四級化SBCはイオノマーである。
【0058】
実施形態において、QSBCは、少なくとも1つの第四級アンモニウム基を含有するモノマーを重合させることにより得られる。第四級アンモニウム官能基を有するモノマーを使用することに加えて、既に存在する官能基と同一である若しくは異なるさらなる官能基(複数可)、例えばアクリレート、スルフィド、エポキシド、硫黄などを導入する又は加えるために、重合後のステップが採用される。
【0059】
(xQSBCを含有するフィルムの形成)
実施形態において、架橋四級化SBC(xQSBC)を含有するフィルムは、最初に適切な溶媒中又は2種以上の溶媒の混合物中にAL-SBCを溶解させて溶液を得ることにより調製される。この溶液に、少なくとも1つの架橋剤を加え、続いてフィルムを溶液流延する。次いで架橋ポリマーを含有するフィルムを、少なくとも1つの四級化剤を含有する浴中に浸して、xQSBCを含有するフィルムを得る。あるいは、四級化剤に浸す代わりに、架橋四級化SBCのための四級化剤をフィルムにスプレーする、コーティングする、又は四級化剤によりフィルムを処理することにより、フィルムが四級化される。溶媒の例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、THF、n-ヘキサン、シクロヘキサン、塩化メチレン、塩化エチレン、イソプロピルアルコール、アセトン、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジオキソラン、2-メトキシエタノール、ジメチルホルムアミド、ベンジルアルコール、及びそれらの混合物が挙げられる。実施形態において、10:90~90:10、又は30:70~70:30の重量の2種の溶媒の混合物が使用される。2種の溶媒の混合物の例は、極性溶媒及び非極性溶媒、例えばトルエン及び少なくとも1つのアルコール、キシレン及び少なくとも1つのアルコールなどであってもよい。
【0060】
あるいは、実施形態において、ステップを入れ替えて、AL-SBCの四級化を架橋の前に行ってxQSBCを含有するフィルムを得る。
【0061】
他の実施形態において、AL-SBCの架橋及び四級化は、AL-SBCを1つ以上の溶媒中に溶解させ、少なくとも1つの四級化剤及び少なくとも1つの架橋剤を加えて、xQSBCを含有する混合物を得ることにより、インサイチュで(単一ステップで)行われる。その混合物を基材上に流延することにより、次にxQSBCのフィルムが得られる。実施形態において、混合物は5~50%、又は10~40%、又は5~30%、又は10~30%、又は>5%、又は>15%の固体濃度を有する。この代替的実施形態に使用される溶媒は上記の通りである。
【0062】
実施形態において、ハロゲン化後のSBC(すなわち、AL-SBC)は回収されず、溶液中に存在する。この溶液に、少なくとも1つの四級化剤及び少なくとも1つの架橋剤を加え、続いてxQSBCを含有するフィルムを流延する。
【0063】
実施形態において、四級化剤は、ジメチルアミン、トリメチルアミン(TMA)、1-メチルピペリジン、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、N-メチルモルホリン、3-ヒドロキシプロピルジメチルアミン、n-ブチルジメチルアミン、ジ(3-ヒドロキシプロピル)メチルアミン、2,3-ジヒドロキシプロピルジメチルアミン、3-ヒドロキシプロピルジエチルアミン、2-ヒドロキシプロピルジメチルアミン、4-ヒドロキシブチルジメチルアミン、2-ヒドロキシエチルジメチルアミン、n-プロピルジメチルアミン、2-ヒドロキシエトキシエチルジメチルアミン、ジ(2-ヒドロキシエチル)メチルアミン、ベンジルジメチルアミン及び4-ヒドロキシベンジルジメチルアミン、3-エチルピリジン、4-プロピルピリジン、4-tert-ブチルピリジン、4-シアノピリジン、4-イソプロピルピリジン、4-メトキシピリジン、3,4-ルチジン、3-メトキシピリジン、4-ピリジンメタノール、N,N,N,N-テトラメチルヘキシルジアミン、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0064】
実施形態において、QSBCは第四級アンモニウムカチオンの代わりにホスホニウムカチオンを含む。ホスホニウムカチオンは、リン含有化合物を使用することにより、例えばトリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、メチルホスファイト、エチルホスファイト、フェニルホスファイト、トリス(トリメトキシフェニル)ホスフィン(P(Ph(OMe))、トリフェニルホスフィン(P(Ph))などを使用することにより得ることができる。
【0065】
実施形態において、架橋剤は、2つの第一級又は第三級アミンをその分子末端に有する一般式II:
(RN-(CH-N(R (II)
(式中、t=1~7であり、Rは独立に、H原子、C1~5アルキル基、又はC1~5ヒドロキシアルキル基である)により表されるポリアミンである。
【0066】
実施形態において、架橋剤は、1,6-ヘキサンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン(TMHDA)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、フェニレンジアニリン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,2-ジアミノエタン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン、N,N,N’,N’-テトラメチルベンジジン、N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ポリビニルピリジン、ポリクロロメチルスチレンに由来する第一級又は第二級アミノ化生成物、トリアルキルアミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなど、芳香族アミン、例えばN,N-ジメチルアニリン又はN-メチルピロールなど、複素環アミン、例えばN-メチルピロリジン又はN-メチルモルホリンなど、アルコールアミン、例えばN-メチル-N,N-ジエタノールアミン、N,N-ジメチル-N-エタノールアミン、トリエタノールアミンなど、メチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1-メチルイミダゾール、N,N’-ジメチルピペラジン、(1,4)ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン、トリアジン、ヘキサメチレンテトラアミン、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0067】
実施形態において、架橋剤の他の部類としては、二官能性若しくは多官能性化合物、例えばジビニルベンゼン、脂肪族又は芳香脂肪族炭化水素のハロゲン化物、例えば1,2-ジブロモエタン、ビス(クロロメチル)ベンゼンなど、又は四塩化ケイ素、ジアルキル-又はジアリールケイ素ジクロリド、アルキル-又はアリールケイ素トリクロリド、四塩化スズ、アルキルケイ素メトキシド、アルキルケイ素エトキシド、多官能性アルデヒド、例えばテレフタルジアルデヒドなど、ケトン、エステル、無水物若しくはエポキシド、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、テトラメトキシシラン(TMOS)、ジメチルアジペート、ガンマ-グリシドキシプロピル-トリメトキシシラン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0068】
架橋剤は、所望の架橋度を得るのに十分な量で使用される。実施形態において、xQSBCは、架橋が起こりやすいブロックに対して、最大で100%、又は50~90%、又は50~80%、又は50~95%、又は60~100%、又は60~90%、又は>50%、又は>55%の架橋度を有する。架橋度は固体NMRにより見積もることができる。
【0069】
実施形態において、フィルムの調製の際に少なくとも添加剤が加えられる。添加剤の例としては、開始剤、活性化剤、硬化剤、安定化剤、中和剤、増粘剤、融合助剤、スリップ剤、剥離剤、抗菌剤、界面活性剤、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤、色変化pH指示薬、可塑剤、粘着付与剤、フィルム形成添加剤、染料、顔料、UV安定化剤、UV吸収剤、フィラー、他の樹脂、レドックス対、ファイバー、難燃剤、粘度調整剤、湿潤剤、脱気剤、強化剤、着色剤、熱安定剤、滑沢剤、ドリップ抑制剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、加工助剤、応力緩和添加剤、及びそれらの混合物が挙げられる。実施形態において、添加剤はフィルムの総重量を基準として0~10、又は0.1~10、又は0.5~5重量%の量で加えられる。
【0070】
xQSBCポリマーは、一般的な平坦形状、中空ファイバー、又は中空管形状の上に形成することができる。製品(すなわち、xQSBC)は、自己担持単層(フィルム)、多孔質基材上の薄い機能性層、又は強化材料、例えばファイバー、フィラーなどを含有する複合材層であってもよい。xQSBCの製品形態とは関係なく、実施形態におけるxQSBCを含有するフィルムは、流延、電界紡糸、押出成形、圧縮、コーティング、例えばディッピング、フローコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、スプレーコーティング、カーテン、輪転グラビア、ブラッシング、巻き線ロッドコーティング、パン供給リバースロールコーティング、ニップ供給コーティング、スプレー、ナイフコーティング、スピンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、超音波スプレーコーティングなどを使用することにより形成される。フィルム乾燥条件は、溶媒(複数可)の使用及びフィルム形成法に基づいていてもよい。実施形態において、フィルムを25から最高で200℃、又は25~180℃、又は25~150℃、又は40~120℃、又は25~80℃において、1~4日間、又は1~3日間乾燥させる。実施形態において、フィルムは高度に規則的なモルフォロジーを形成し、膜表面と垂直な連続的なイオン伝導性ドメインを構築し、伝導性を最大化し、ねじれを最小化する。
【0071】
(特性)
QSBC又はイオノマーは、任意のAEMと適合性があり、AEMのイオン伝導性と同等レベルのイオン伝導性を有する。
【0072】
実施形態において、xQSBCを含有するフィルムは0.1~500μm、又は1~200μm、又は10~100μm、又は1~50μm、又は20~150μm、又は50~300μm、又は50~90μmの厚さを有する。フィルムは弾性であり水溶液中で膨潤が少ないものとして特徴づけられる。フィルムは寸法安定性が高く、高いイオン輸送特性、耐メタノール性、高いバリア特性、高い水素選択性、硬度、熱/酸化安定性、及び防汚特性を有する。
【0073】
実施形態において、フィルムはDI水中、80℃において、24時間で、フィルムの初期総重量を基準として1~10、又は10~50、又は20~60、又は30~80重量%の水分を吸収する。
【0074】
実施形態において、フィルムは1.0~3.5、又は1.2~3.0、又は1.3~3、又は1.3~1.9、又は>1、又は<3meq/gのイオン交換容量(IEC)を有する。
【0075】
実施形態において、1M KOH溶液中で80℃において様々な時間でエージングされたフィルムは、浸漬されたフィルムの以下のOHイオン伝導性及び他の機械的特性を有するものとして特徴づけられる。
【0076】
実施形態において、1M KOH溶液中で80℃において1000時間エージングした後のフィルムは、エージング前のフィルムのOHイオン伝導性よりも<50%、又は<45%、又は<40%、又は1~50%、又は5~40%、又は10~35%、又は5~25%低下したOHイオン伝導性(ただし、両者とも80℃においてmS/cmで測定される)を有する。
【0077】
実施形態において、1M KOH溶液中で80℃において10000時間エージングした後のフィルムは、エージング前のフィルムのOHイオン伝導性よりも<60%、又は<55%、又は<50%、又は5~60%、又は10~55%、又は15~50%、又は20~60%低下したOHイオン伝導性(ただし、両者とも80℃においてmS/cmで測定される)を有する。
【0078】
実施形態において、10mM KCO溶液中で65℃において2000時間エージングした後のフィルムは、<10%、又は<8%、又は<5%、又は<2%、又は0.1~10%、又は0.1~5%低下したOHイオン伝導性(ただし、80℃においてmS/cmで測定される)を有する。
【0079】
実施形態において、4M KOH溶液中で65℃において2000時間エージングした後のフィルムは、<45%、又は<40%、又は<35%、又は5~45%、又は10~40%、又は5~35%低下したOHイオン伝導性(ただし、80℃においてmS/cmで測定される)を有する。
【0080】
実施形態において、フィルムは乾燥状態において、5~45、又は7~40、又は10~45、又は7~40、又は15~45MPaの引張応力(ASTM D412に準拠して測定される)を有する。
【0081】
実施形態において、フィルムは乾燥状態において、50~2500、又は100~1500、又は400~1300MPaのヤング率(ASTM D412に準拠して測定される)を有する。
【0082】
実施形態において、フィルムは乾燥状態において、1~100%、又は1~50%、又は1~10%の破断伸び(ASTM D412に準拠して測定される)を有する。
【0083】
実施形態において、フィルムは乾燥状態において、15~40、又は20~35、又は15~30MPaの引張強度(ASTM D412に準拠して測定される)を有する。
【0084】
実施形態において、フィルムは乾燥状態において、1~8、又は1.5~6、又は1~5MJ/mの靱性(ASTM D412に準拠して測定される)を有する。
【0085】
実施形態において、1M KOH溶液中で80℃において330時間エージングした後のフィルムは、400~700、又は450~650、又は500~600MPaのヤング率、1~20%、又は5~18%、又は10~20%の破断伸び、5~20、又は7~18、又は10~20MPaの引張強度、及び1~5、又は1.2~4、又は1~3MJ/mの靱性(すべてASTM D412に準拠して測定される)を有する。
【0086】
実施形態において、1M KOH溶液中で80℃において500時間エージングした後のフィルムは、400~700、又は450~650、又は500~600MPaのヤング率、1~20%、又は5~18%、又は10~20%の破断伸び、5~20、又は7~18、又は10~20MPaの引張強度、及び1~5、又は1.2~4、又は1~3MJ/mの靱性(すべてASTM D412に準拠して測定される)を有する。
【0087】
実施形態において、1M KOH溶液中で80℃において720時間エージングした後のフィルムは、400~700、又は450~650、又は500~600MPaのヤング率、1~20%、又は5~18%、又は10~20%の破断伸び、5~20、又は7~18、又は10~20MPaの引張強度、及び1~5、又は1.2~4、又は1.5~4MJ/mの靱性(すべてASTM D412に準拠して測定される)を有する。
【0088】
実施形態において、フィルムは25℃で測定される、>70%、又は>80%、又は>85%、又は>90%のKCl透過選択性を有する。
【0089】
実施形態において、フィルムは<2、又は<1.9、又は<1.8Ωcmの抵抗(Rm+s)を有する。
【0090】
(応用)
QSBC(架橋なし)はイオノマーであり、ポリマー電解質、電極のバインダー、膜のバインダー、電極のコーティング、セパレータ、電極組成物の一部において使用できる。
【0091】
xQSBC(架橋あり)は、選択的に四級化されたポリマーブロックを有し、良好な強度、水及び水酸化物輸送特性、改善された耐メタノール性、容易なフィルム又は膜形成の組み合わせが望まれる用途において有用となる。
【0092】
xQSBCは、電気化学的用途において、例えば水電解装置(電解質)、燃料電池(セパレータ相)、AEMにおいて、燃料電池、化学合成、水電解装置のためのものを含めた電極組立体において、バッテリー(電解質セパレータ)、スーパーキャパシタ(固体又はゲル電解質)、金属回収プロセスのための分離セル(電解質バリア)、センサー(特に湿度をセンシングするため)、湿度制御デバイス、バナジウム又は鉄レドックスフロー電池膜などにおけるエネルギー貯蔵溶液、固体ポリマー電解質としてのリチウムイオン電池において、膜容量性脱イオン(MCDI)、逆電気透析、過酸化水素合成、ブラインからのLi抽出などにおいて使用できる。
【実施例0093】
以下の実施例は非限定的であることを意図している。
【0094】
以下の試験を使用した。
【0095】
電気化学的インピーダンス分光法(EIS)を使用することによりイオン伝導性(OHイオン)測定を行った。1M KOH溶液で処理することによりAEMをイオン交換してOH型とした。測定は20~80℃まで行われ、100kHz~1Hzの周波数範囲にわたってインピーダンスを測定した。イオン伝導性は以下の式:
【0096】
【数1】
によりチャート化されたインピーダンスから計算され、式中、L(cm)は2つの内部電極間の長さであり;R(Ω)は導電性ストリップの抵抗の測定値であり;W(cm)は試料の幅であり;T(cm)は試料の厚さである。
【0097】
フィルム(膜)抵抗はLCR抵抗計を使用して測定された。周波数を交流周波数として10kHzに設定し、抵抗(Ω)を記録した。
【0098】
静的膜電位測定セルを使用して透過選択性を決定した。測定前に、膜を0.05M KCl溶液中で24時間平衡化させた。実験装置は、膜により隔てられた2つのセルから成っていた。膜の一方の側では0.05M KCl溶液がセル内を流れ、他方の側では0.5M KCl溶液を使用した。2つのダブルジャンクションAg/AgCl参照電極を膜の両側で溶液中に入れ、25℃で膜の両側の電位差を測定するのに使用した。理論膜電位は、Nerstの式から計算される100%透過選択性膜における膜電位である:
【0099】
【数2】
ΔmVtheo=ミリボルトでの理論膜電位(mV)
ΔmVmeas=mV-DCでの真の膜電位。
【0100】
QSBCのハロゲン化度をH NMR(Varian 500MHz分光計、23℃)により決定した。
【0101】
靱性、ヤング率、引張強度、及び破断伸びを含めた機械的特性はすべて、ASTM D412に準拠して測定される。
【0102】
実施例において使用される成分としては以下が挙げられる:
SBC-1(前駆体):pMS(13)-EP(10)-S(44)-EP(10)-pMS(13)の構成、22重量%のブロックB含量(すなわち、共にEPブロック)、90kg/molの分子量(M)、及び68%のカップリング効率を有するペンタブロックコポリマー。
【0103】
SBC-2(前駆体):pMS(17)-EP(13)-S(58)-EP(13)-pMS(17)の構成、22重量%のブロックB含量(すなわち、共にEPブロック)、118kg/molの分子量(M)、及び68%のカップリング効率を有するペンタブロックコポリマー。
【0104】
SBC-3(前駆体):S(21)-pMS/EB(83)-S(21)の構成、3/1のブロックpMS/EBの重量比、125kg/molの分子量(M)、及び73%のカップリング効率を有するペンタブロックコポリマー。
【0105】
SBC-4(前駆体):S(20)-pMS/EB(89)-S(20)の構成、3/1のブロックpMS/EBの重量比、129kg/molの分子量(M)、及び89%のカップリング効率を有するペンタブロックコポリマー。
【0106】
[実施例1]
SBC前駆体の臭素化。60gのSBC-1及び59gの7-ブロモ-2-メチルヘプタン-2-オールをフラスコに加えた。このフラスコに、ジクロロメタン溶媒を加えて内容物を溶解させ、50gのトリフル酸を加えた。反応内容物を25℃で2時間撹拌し、その後反応内容物をメタノール中に注ぎ入れて臭素化SBC-1(Br-SBC-1)を析出させた。同様の手順を使用してSBC-2、SBC-3、及びSBC-4を含めた他のSBCを臭素化した。
【0107】
[実施例2]
臭素化SBCの架橋及び四級化。60gのBr-SBC-1をTHF溶媒中に溶解させ、7gのN,N,N,N-テトラメチルヘキシルジアミンを架橋剤として加えてBr-SBCを架橋させた。この溶液からMylar基材(シリコーンコーティングされたポリエステルフィルム)上へフィルムを流延し、乾燥させた。乾燥後のフィルムを基材から取り外し、四級化のためにトリメチルアミン(TMA)溶液(水中45%)中に浸して60%の架橋度を有する架橋四級化SBC(xQSBC-1a)フィルムを得た。同様の手順を使用して、xQSBC-1b、xQSBC-2a、xQSBC-2b、xQSBC-3a、xQSBC-4aを得た。
【0108】
[実施例3]
臭素化SBCの架橋及び四級化。THFを70:30の重量比のトルエン/プロパノール混合物で置き換えることにより実施例2の手順を繰り返してxQSBC-1-ssを得た。
【0109】
[実施例4]
臭素化SBCの架橋及び四級化。60gのBr-SBC-1をトルエン/プロパノール混合物(70:30の重量比)中に溶解させ、18gのメチルピペリジンを四級化剤として加えてポリマーを四級化させた。この反応内容物に、7gのN,N,N,N-テトラメチルヘキシルジアミンを架橋剤として加えた。反応内容物をMylar基材(シリコーンコーティングされたポリエステルフィルム)上へ流延することにより、架橋四級化SBC(xQSBC-1-2p)のフィルムを得た。乾燥後、様々な試験のためにフィルムを基材から取り外した。
【0110】
各ポリマーフィルムのハロゲン化度及び架橋度を表1に示し、それぞれのポリマーフィルムのOHイオン伝導性を表2、3、及び4に示す。フィルムの透過選択性及び抵抗を表5に示す。各フィルムは50~90μmの範囲の厚さを有する。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】
【0115】
【表5】
【0116】
【表6】
【0117】
本明細書で使用する、「含む(comprising)」という用語は、その用語に続いて指定される要素又はステップを含むことを意味するが、いずれのそのような要素又はステップも網羅的ではなく、実施形態は他の要素又はステップを含んでもよい。「含む(comprising)」及び「含む(including)」という用語は様々な態様を説明するのに本明細書において使用されてきたが、開示のより具体的な態様を示すために「~から本質的に成る」及び「~から成る」という用語が「含む(comprising)」及び「含む(including)」の代わりに使用されてもよく、また開示される。
【外国語明細書】