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特開2024-84729果実樹用ハウス栽培方法および果実樹用ハウス栽培キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084729
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】果実樹用ハウス栽培方法および果実樹用ハウス栽培キット
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20240618BHJP
   A01G 17/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
A01G7/00 604Z
A01G7/00 602D
A01G17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023209198
(22)【出願日】2023-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2022198868
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502205282
【氏名又は名称】株式会社東和
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】栗原 秀夫
(57)【要約】
【課題】オリーブ樹等の果実樹を、その生長を妨げることなく低木化することにより、オリーブ樹等のハウス栽培を達成することができる果実樹用ハウス栽培方法および果実樹用ハウス栽培キットを提供する。
【解決手段】果実樹をハウス栽培する果実樹用ハウス栽培方法は、果実樹の上方に設けられてその高さを規制する第1規制具と、果実樹の根元に設けられてその根の生長を規制する第2規制具と、果実樹の枝に設けられてその伸び方向を規制する第3規制具と、を使用して果実樹を低木化する工程を備える。果実樹はオリーブ、柑橘類、柿、梅、桃、すもも、梨、りんご及びぶどうのうちの1種の果実の樹とすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実樹をハウス栽培する果実樹用ハウス栽培方法であって、
前記果実樹の上方に設けられてその高さを規制する第1規制具と、
前記果実樹の根元に設けられてその根の生長を規制する第2規制具と、
前記果実樹の枝に設けられてその伸び方向を規制する第3規制具と、を使用して前記果実樹を低木化する工程を備えることを特徴とする果実樹用ハウス栽培方法。
【請求項2】
前記果実樹はオリーブ、柑橘類、柿、梅、桃、すもも、梨、りんご及びぶどうのうちの1種の果実の樹である請求項1に記載の果実樹用ハウス栽培方法。
【請求項3】
前記第1規制具は、前記果実樹の上方に架設された格子材によって構成される請求項1に記載の果実樹用ハウス栽培方法。
【請求項4】
前記第2規制具は、前記果実樹の根を収容する中空状の容器によって構成され、
前記果実樹の根の生長に応じて、前記容器を容積の大きなものに交換する工程を備える請求項1に記載の果実樹用ハウス栽培方法。
【請求項5】
前記第3規制具は、前記果実樹の枝と前記第1規制具との間、又は、前記果実樹の枝と地面との間、に張設された線材によって構成され、
前記線材で前記枝を上方又は下方へ引っ張り、前記果実樹を上方から見て、前記枝が放射状に伸びるように、前記枝の伸び方向を規制する工程を備える請求項1に記載の果実樹用ハウス栽培方法。
【請求項6】
果実樹をハウス栽培する果実樹用ハウス栽培方法であって、
前記果実樹の上方に架設された格子材による第1規制具で前記果実樹の高さを規制し、
前記果実樹の根を収容する中空状容器による第2規制具で前記果実樹の根の生長を規制し、
前記果実樹の枝と前記第1規制具との間、又は、前記果実樹の枝と地面との間、に張設された線材による第3規制具で前記果実樹の枝の伸び方向を規制して、
前記果実樹を低木化することを特徴とする果実樹用ハウス栽培方法。
【請求項7】
前記果実樹はオリーブ、柑橘類、柿、梅、桃、すもも、梨、りんご及びぶどうのうちの1種の果実の樹である請求項6に記載の果実樹用ハウス栽培方法。
【請求項8】
果実樹をハウス栽培するための果実樹用ハウス栽培施設であって、
前記果実樹の栽培室が内部に設けられた建物と、
前記果実樹の上方に架設される格子材からなり、前記果実樹の高さを規制する第1規制具と、
前記果実樹の根を収容する中空状容器からなり、前記果実樹の根の生長を規制する第2規制具と、
前記果実樹の枝と前記格子材との間、又は、前記果実樹の枝と地面との間、に張設される線材からなり、前記果実樹の枝の伸び方向を規制する第3規制具と、
を備えることを特徴とする果実樹用ハウス栽培施設。
【請求項9】
前記果実樹はオリーブ、柑橘類、柿、梅、桃、すもも、梨、りんご及びぶどうのうちの1種の果実の樹である請求項8に記載の果実樹用ハウス栽培施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリーブ、柑橘類、柿、梅、桃、すもも、梨、りんご又はぶどう等の果実の樹をハウス栽培するための果実樹用ハウス栽培方法、および果実樹用ハウス栽培キットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、オリーブ樹は、その果実から採取されるオリーブ油は勿論、果実そのものも食用となり、また、木材としても優れることから、有用な果樹として着目されている。オリーブ樹は、日照量が多いほど生育がよく、気温について温暖地が適当であるという性質を有することから、通常、その栽培は、露地栽培で行われる。
オリーブ樹は、背丈が3mを超える高木であり、大きく成長することから、日照量が低減しないように樹間の間隔を広くとる必要があり、栽培に広大な場所を要する。このため、オリーブ樹の栽培には、単位面積当たりの収量が少ない、果実の収穫が高所での作業となって煩雑化する等の弊害が伴う。
特許文献1には、オリーブ樹の背丈を1.5~2.5mの高さに矮化し、前後左右、1~2m離隔して培地に植える栽培方法が記載されている。この栽培方法では、矮化のために、オリーブ樹の徒長枝の根元近傍の部位、あるいは徒長枝を生み出した親の枝の根元近傍の部位を捻枝、および水平から下向き50度の範囲の角度で、下向きに曲げ、固定処理する。
また、上記のような枝の捻枝、曲げ、固定処理に用いられるものとして、特許文献2には柑橘類等の枝吊り具、特許文献3には果実樹用枝誘引具、特許文献4には植物の結果枝穂教具、特許文献5にはクリップが、それぞれ記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6600793号公報
【特許文献2】特開2003-250362号公報
【特許文献3】特開2017-225439号公報
【特許文献4】特許第6002827号公報
【特許文献5】特開2011-160774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、オリーブ樹等の果実樹の栽培には、単位面積当たりの収量が少ない、果実の収穫が高所での作業となって煩雑化する等の弊害が伴う。また、オリーブ樹等の栽培は、倒伏、根傷み、果実の損傷、落果などが発生しやすいため十分な防風対策を行う必要がある、特定害虫による食害や炭疽病などの病害への十分な対策を行う必要がある等の難点を有する。
さらに、オリーブ樹等の枝の捻枝等に関して、特許文献1では針金クリップを用いており、枝を折ったり、傷付けたりしてしまう可能性が高く、その場合、オリーブ樹の生長が妨げられてしまう。特許文献2~5に記載のものを用いて枝の捻枝等を行う場合もまた、オリーブ樹の枝を折ったり、傷付けたりしてしまう可能性が高い。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有していた現状に鑑みてなされたものであり、オリーブ樹等の果実樹を、その生長を妨げることなく低木化することにより、オリーブ樹等のハウス栽培を達成することができる、果実樹用ハウス栽培方法および果実樹用ハウス栽培キットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下に示される。
(1)果実樹をハウス栽培する果実樹用ハウス栽培方法であって、
前記果実樹の上方に設けられてその高さを規制する第1規制具と、
前記果実樹の根元に設けられてその根の生長を規制する第2規制具と、
前記果実樹の枝に設けられてその伸び方向を規制する第3規制具と、を使用して前記果実樹を低木化する工程を備えることを特徴とする果実樹用ハウス栽培方法。
(2)前記果実樹はオリーブ、柑橘類、柿、梅、桃、すもも、梨、りんご及びぶどうのうちの1種の果実の樹である前記(1)に記載の果実樹用ハウス栽培方法。
(3)前記第1規制具は、前記果実樹の上方に架設された格子材によって構成される前記(1)に記載の果実樹用ハウス栽培方法。
(4)前記第2規制具は、前記果実樹の根を収容する中空状の容器によって構成され、
前記果実樹の根の生長に応じて、前記容器を容積の大きなものに交換する工程を備える前記(1)に記載の果実樹用ハウス栽培方法。
(5)前記第3規制具は、前記果実樹の枝と前記第1規制具との間、又は、前記果実樹の枝と地面との間、に張設された線材によって構成され、
前記線材で前記枝を上方又は下方へ引っ張り、前記果実樹を上方から見て、前記枝が放射状に伸びるように、前記枝の伸び方向を規制する工程を備える前記(1)に記載の果実樹用ハウス栽培方法。
(6)果実樹をハウス栽培する果実樹用ハウス栽培方法であって、
前記果実樹の上方に架設された格子材による第1規制具で前記果実樹の高さを規制し、
前記果実樹の根を収容する中空状容器による第2規制具で前記果実樹の根の生長を規制し、
前記果実樹の枝と前記第1規制具との間、又は、前記果実樹の枝と地面との間、に張設された線材による第3規制具で前記果実樹の枝の伸び方向を規制して、
前記果実樹を低木化することを特徴とする果実樹用ハウス栽培方法。
(7)前記果実樹はオリーブ、柑橘類、柿、梅、桃、すもも、梨、りんご及びぶどうのうちの1種の果実の樹である前記(6)に記載の果実樹用ハウス栽培方法。
(8)果実樹をハウス栽培するための果実樹用ハウス栽培施設であって、
前記果実樹の栽培室が内部に設けられた建物と、
前記果実樹の上方に架設される格子材からなり、前記果実樹の高さを規制する第1規制具と、
前記果実樹の根を収容する中空状容器からなり、前記果実樹の根の生長を規制する第2規制具と、
前記果実樹の枝と前記格子材との間、又は、前記果実樹の枝と地面との間、に張設される線材からなり、前記果実樹の枝の伸び方向を規制する第3規制具と、
を備えることを特徴とする果実樹用ハウス栽培施設。
(9)前記果実樹はオリーブ、柑橘類、柿、梅、桃、すもも、梨、りんご及びぶどうのうちの1種の果実の樹である前記(8)に記載の果実樹用ハウス栽培施設。
【発明の効果】
【0007】
本発明の果実樹用ハウス栽培方法および果実樹用ハウス栽培施設によれば、果実樹の高さを規制する第1規制具、根の生長を規制する第2規制具、及び枝の伸び方向を規制する第3規制具を用いることで、果実樹の傷付きを抑制することができ、ハウス栽培のための果実樹の低木化を、その生長を妨げることなく達成することができる。果実樹として、オリーブ、柑橘類、柿、梅、桃、すもも、梨、りんご及びぶどうのうちの1種の果実の樹に適用することができ、この中で特にオリーブ樹を好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】オリーブ樹用ハウス栽培施設の説明図。
図2】成長する状態のオリーブ樹の栽培を説明する正断面図。
図3】成長する状態のオリーブ樹の栽培を説明する平面図。
図4】成長した状態のオリーブ樹の栽培を説明する正断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0010】
本発明の果実樹用ハウス栽培方法は、果実樹をハウス栽培するための栽培方法であって、
前記果実樹の上方に設けられてその高さを規制する第1規制具と、
前記果実樹の根元に設けられてその根の生長を規制する第2規制具と、
前記果実樹の枝に設けられてその伸び方向を規制する第3規制具と、を使用して前記果実樹を低木化する工程を備えることを特徴とする(図1参照)。
前記果実樹としては、特に限定されないが、オリーブ、柑橘類、柿、梅、桃、すもも、梨、りんご及びぶどうのうちの1種の果実の樹を例示することができる。前記「柑橘類」としては、レモン、みかん、スダチ、キンカン、ゆず、オレンジ、グレープフルーツ等が挙げられる。また、前記「梨」には日本梨も洋梨も含まれる。
【0011】
本発明において、ハウス栽培とは、畑等といった屋外の栽培地で栽培を行う露地栽培と異なり、内部に栽培室が設けられた建物内、つまり屋内の栽培地で栽培を行うことを意味する。また、オリーブ樹等の果実樹(以下、「オリーブ樹等」ともいう。)の栽培の目的は、主として、その果実を収穫することである。
上述のハウス栽培によるオリーブ樹等の栽培を達成するために、本発明は、オリーブ樹等を低木化する工程を備える。
【0012】
つまり、オリーブ樹等は、成長した状態で地面からの高さ(背丈)が3mを超える高木であるから、そのオリーブ樹をハウス栽培するにあたり、高木を栽培可能な栽培室を有する建物の用意にコストが嵩む等、現実的ではない。
また、高木を栽培可能な栽培室を有する建物を用意したとして、栽培可能な株数が少量に限られるため単位面積当たりの収量が少ない、果実の収穫が高所での作業となるため煩雑化する等の弊害が伴う。
よって、オリーブ樹等を低木化する工程の目的は、通常のハウス栽培で利用される建物でのオリーブ樹等の栽培を可能にするとともに、栽培可能な株数の増加による単位面積当たりの収量の向上と、果実の収穫作業の容易化とを図ることである。
【0013】
オリーブ樹等の低木化について、具体的には、オリーブ樹等の成長した状態での地面からの高さ(背丈)を3m以下にすることができる。このオリーブ樹等の背丈は、好ましくは2.5m以下、より好ましくは、2m以下とすることができる。
オリーブ樹等を低木化する工程は、第1規制具、第2規制具及び第3規制具を使用して実行される。これら第1規制具、第2規制具及び第3規制具は、オリーブ樹等の生長を規制するものである。
【0014】
第1規制具は、オリーブ樹等の上方に設けられて、その高さを規制するものである(図2参照)。この第1規制具は、主に、オリーブ樹等が結実可能となるまでの期間、具体的には花芽分化までの成長過程の期間において、オリーブ樹の高さ(背丈)の生長を低木の範囲内に抑制することができる。
すなわち、オリーブ樹等は、その成長過程において、幹や枝を上方へ伸ばして、高さ(背丈)を生長させる。第1規制具は、オリーブ樹等の上方、つまりは、上方へ伸びる幹の進路上に設けられており、オリーブ樹等の生長において、その高さ(背丈)が低木の範囲を超えようとする場合、具体的には3mを超える場合に、幹や枝が上方へ伸びることを妨げて抑制することにより、オリーブ樹等の高さ(背丈)を規制する。
【0015】
第1規制具には、オリーブ樹等の高さを規制することができるのであれば、何れのものも使用することができ、特に限定されないが、オリーブ樹等の上方に設けられることから、十分な日照量を保持できるように、光を透過可能なものであることが好ましい。
このような第1規制具としては、ワイヤーネット、金網等の格子材、メッシュ材、パンチング材などを例示することができる。これらの中でも、ワイヤーネット、金網等の格子材は、網目の大きなものであれば光がほぼ遮られることがなく、さらに軽量であるため、オリーブ樹の上方に安定して容易に設置することができ、安価で入手が容易であるためコストの高騰を抑えることができる。
【0016】
第1規制具は、オリーブ樹等の高さ(背丈)が低木の範囲内であれば、つまり、オリーブ樹等の上方に設けられた第1規制具に幹や枝が届き達するまでは、オリーブ樹等の生長を抑制することはない。寧ろ、第1規制具は、オリーブ樹等の成長過程において、第3規制具等との併用により、幹や枝の生長を補助することもできる。
また、第1規制具は、オリーブ樹等の上方に設けられる位置に応じて、オリーブ樹等の高さを、低くすることができ、あるいは、高くすることもできる。すなわち、第1規制具は、オリーブ樹等の高さを規制することにより、その高さを任意に決めることができる。
【0017】
第2規制具は、オリーブ樹等の根の生長を規制するものである(図2、4参照)。この第2規制具は、主に、オリーブ樹等の成長過程の期間において、オリーブ樹等の幹の太さの生長を抑制することができる。
すなわち、オリーブ樹等は、その成長過程において、根を生長させることで、幹を太くすることにより、高木へと成長する。第2規制具は、根の生長を規制し、幹の太さの生長を抑制して、オリーブ樹等の高木への成長を妨げることにより、オリーブ樹等を低木化することができる。
【0018】
第2規制具には、オリーブ等樹の根の生長を規制することができるのであれば、何れのものも使用することができ、特に限定されないが、根の生長を好適に規制できるように、根を収容する中空状容器を用いることが好ましい。
つまり、第2規制具は、中空状容器を使用する場合、その内部に土を収容したうえで根を収容することができる。この場合、土の存在によって根の生長が阻害されず、その生長は中空状容器の容積に応じた度合いに制限することができ、根の生長を好適に規制することができる。
【0019】
第2規制具に用いる中空状容器としては、陶磁器製、樹脂製、金属製等の鉢、箱等を例示することができる。これらの中でも、鉢は、その内部における保水性に優れており、特に陶器製の鉢は、吸放湿性、保湿性等の調湿性能に優れることから、中空状容器として好ましい。
さらに、第2規制具に中空状容器を使用する場合には、オリーブ樹等の成長の度合いに応じ、季節毎の日照に合わせて、オリーブ樹等の向きを変えることができる。
また、第2規制具に中空状容器を使用する場合には、栽培室の地面上に、その中空状容器を載置することができる。この場合、栽培室の内部におけるオリーブ樹等の移動や、季節毎の日照に合わせたオリーブ樹等の向きの変更を、容易に行うことができる。
【0020】
オリーブ樹等は、栽培室の気温について、年平均で14℃~16℃程度が適当であるが、ある程度は寒さに当てないと結実せず、比較的低温の環境に強いが、例えば-10℃等の氷点下の環境に長期間曝されると寒害が生じるおそれがある。
このため、第2規制具は、オリーブ樹等の根の周囲が所望の温度に保たれた環境になるように、栽培室の土中に埋めることができる。特に、第2規制具に、中空状容器として陶磁器製の鉢を用いる場合、その調湿性能により、オリーブ樹等の根の周囲を所望の湿度に保たれた環境とすることができる。
【0021】
第2規制具は、中空状容器を使用することにより、根の生長に応じて中空状容器を容積の大きなものへ変更する、所謂、植え替えをすることができる。
つまり、本発明の栽培方法は、オリーブ樹等の根の生長に応じて、中空状容器を容積の大きなものに交換する工程を備えることにより、根の生長を規制しつつも促すことができるため、根の生長の度合いを任意に決めることができる。
中空状容器の容積に関し、オリーブ樹等が苗の状態、つまり成長過程の初期の段階であれば、中空状容器の直径で10cm~20cm程度、深さで20cm~30cm程度のものとすることができる。
また、中空状容器の容積に関し、オリーブ樹等の成長過程の終期の段階であれば、中空状容器の直径で40cm~60cm程度、深さで30cm~50cm程度のものとすることができる。
さらに、オリーブ等樹の成長過程において、中空状容器の交換の時期は、2年程度とすることができる。
【0022】
第3規制具は、オリーブ樹等の枝の伸び方向を規制するものであり、オリーブ樹等の枝の横方向への広がりや相互位置を調整することができる(図2~4参照)。
すなわち、第3規制具は、オリーブ樹等の枝の伸び方向を規制し、その樹形を整えることにより、オリーブ樹等を低木化することができる。
なお、第3規制具によるオリーブ樹等の低木化に関して、これには、上方へ伸びようとする枝の伸び方向を規制し、横方向や下方に変えることにより、オリーブ樹等の高さ(背丈)を任意に決めることができることを含む(図4参照)。
また、第3規制具によるオリーブ樹等の低木化に関して、これには、横方向へ伸びようとする枝の伸び方向を規制し、その伸び方向を適度な方向に変えることにより、オリーブ樹等の幅(平面視した場合のオリーブ樹等の直径)を任意に決めることができることを含む(図3参照)。
【0023】
なお、オリーブ等樹は、枝から出る芽について、その芽が生長した枝に葉だけが付く葉芽と、花だけが付く花芽とを有しており、それらの芽が出る方向は、元の枝が伸びる方向に応じた一定方向となる。
このため、第3規制具は、芽が出る元の枝の伸び方向を規制し、その方向を、例えば、曲げる等して調整することで、芽が出る方向を任意に決めることができる。
そして、枝から出る芽が花芽である場合、芽が出る方向を調整することにより、花芽が生長してなる枝、つまりは結実する枝の通気性を良好なものとすることができる。
【0024】
第3規制具には、オリーブ等樹の枝の伸び方向を規制することができるのであれば、何れのものも使用することができ、特に限定されないが、線材、クリップ、治具などを用いることができる。
具体的に、第3規制具は、枝を折ったり、傷付けたりすることを抑制できる観点から、線材を用いることが好ましい。線材は、特に限定されないが、紐、針金、ワイヤ等を例示することができ、これらの中でも、特に紐は、入手が容易であり、使い勝手が良く、また、枝に対する当たりが柔らかいため、枝を折ったり、傷付けたりすることを好適に抑制することができる。
【0025】
第3規制具に線材を用いる場合、線材は、枝と格子材との間、又は、枝と地面との間、に張設されて使用される。
すなわち、第3規制具に線材を用いる場合、線材は、枝を、伸ばしたい任意の方向へ引っ張ることにより、枝の伸び方向を規制することができる。
また、第3規制具に線材を用いる場合、その一端が固定などされる地面は、栽培室の地面とすることができ、あるいは、第2規制具12に収容された土による地面とすることができる。
【0026】
以下、本発明のオリーブ樹等の果実樹用ハウス栽培施設を挙げて、上記の栽培方法による果実樹のハウス栽培について説明する。
本発明の果実樹用ハウス栽培施設は、オリーブ樹等の果実樹をハウス栽培するためのものであって、
前記果実樹の栽培室が内部に設けられた建物と、
前記果実樹の上方に架設される格子材からなり、前記果実樹の高さを規制する第1規制具と、
前記果実樹の根を収容する中空状容器からなり、前記果実樹の根の生長を規制する第2規制具と、
前記果実樹の枝と前記格子材との間、又は、前記果実樹の枝と地面との間、に張設される線材からなり、前記果実樹の枝の伸び方向を規制する第3規制具と、
を備えることを特徴とする(図1参照)。
【0027】
図1に示すように、果実樹用ハウス栽培施設(以下、単に「施設」とも略記する)は、オリーブ樹OL(「果実樹OL」の意味でもある。)の栽培室が内部に設けられた建物10を備えている。
建物10は、果実樹をハウス栽培することができるものであれば、特に限定されないが、具体例として、ビニルハウス、温室などを挙げることができる。そして、建物10内の栽培室では、複数のオリーブ樹OLが栽培されている。
なお、建物10には、既存のビニルハウス、温室などを用いることができる。また、建物10には、既存のビニルハウス、温室などに設けられている設備、例えば、換気扇、換気カーテン等の換気設備、温度センサ、湿度センサ、COセンサ、照度センサ等の各種センサ類、栽培室の環境を制御する制御装置、灌水設備、防虫ネットなどを設けることができる。さらに、ハウス栽培であることを利用し、建物10内には、オリーブ樹OLの受粉時などにハチを放つなどしてもよい。
【0028】
建物10内の栽培室において、オリーブ樹OLの上方には、第1規制具11が架設されている。この第1規制具11は、オリーブ樹OLの上方において、金属ワイヤを格子状に敷設して構成された格子材からなるものである(図3参照)。
オリーブ樹OLは、成長過程において上方へ伸びようとする際、その上方への伸びを第1規制具11によって遮られることにより、高さ(背丈)を低く抑えることができる。
【0029】
第1規制具11は、栽培室の地面Gからの高さHについて、所望するオリーブ樹OLの高さ(背丈)に応じて設定することができる。この高さHは、オリーブ樹OLの低木化のために、3m以下とすることができる。なお、高さHは、オリーブ樹OLを結実させるに足る程度に成長させる観点から、1.5m以上とすることが好ましい。
また、第1規制具11の高さHは、オリーブ樹OLの成長の度合いに応じて変更することができる。例えば、オリーブ樹OLが苗の状態、つまり成長の初期の段階であれば、高さHは、2m程度とすることができる。
あるいは、第1規制具11の高さHは、果実の収穫時における足場の使用を不要とする等を目的とし、その目的に応じたオリーブ樹OLの高さ(背丈)となるように、例えば、2.2m~2.5m程度とすることができる。
【0030】
建物10内の栽培室において、オリーブ樹OLの下部には、第2規制具12が設けられている。この第2規制具12は、オリーブ樹OLの根を収容する中空状容器からなり、根の生長を規制している。
つまり、オリーブ樹OLは、根が中空状容器に収容されることにより、その中空状容器の容積を超えて根を生長させることができず、根の生長を規制することができる。そして、オリーブ樹OLは、根の生長を規制することにより、幹の太さを調整することができ、低木化することができる。
【0031】
また、第2規制具12に用いる中空状容器は、建物10内の栽培室において、土中に埋設されていることが好ましい。このように第2規制具12に用いる中空状容器を土中に埋設した場合、オリーブ樹OLの根の周囲の温度を略一定の範囲に保つことができ、寒害の発生を抑制することができる。
第2規制具12に用いる中空状容器は、オリーブ樹OLの成長の度合いに応じて、容積の大きなものに交換することができる。
オリーブ樹OLが苗からある程度の大きさまで成長する段階、つまり成長の初期から中期の段階において、中空状容器は、直径Rが10cm~20cm、土中への埋設深さDが20cm~30cm、とすることができる(図2参照)。
また、オリーブ樹OLがある程度の大きさから結実するまで成長する段階、つまり成長の中期から後期の段階において、中空状容器は、直径Rが40cm~50cm、土中への埋設深さDが40cm~50cm、とすることができる(図4参照)。
【0032】
建物10内の栽培室においてオリーブ樹OLの枝には、第3規制具13が設けられている。この第3規制具13はオリーブ樹OLの枝に結び付けられた線材からなり、枝の伸び方向を規制している。
つまり、オリーブ樹OLの枝は、線材によって引っ張られることにより、その伸び方向を誘導し、所望する任意の位置に配置することができる。そして、オリーブ樹OLは、枝の伸び方向を規制することにより、樹形、つまりは高さ(背丈)及び横方向への広がりを調整することができ、低木化することができる。
【0033】
第3規制具13に用いる線材は、オリーブ樹OLの成長の度合いに応じて、枝と格子材(第1規制具11)との間、又は、枝と地面(栽培室の地面G又は第2規制具12に用いる中空状容器に収容された土による地面)との間に、張設することができる。
すなわち、オリーブ樹OLが苗からある程度の大きさまで成長する段階、つまり成長の初期から中期の段階において、第3規制具13に用いる線材は、枝と格子材(第1規制具11)との間に張設することが好ましい(図2、3参照)。
この場合、オリーブ樹OLの枝は、線材(第3規制具13)により、上方へ持ち上げられるように引っ張られることで、逆さ枝等となることを防止することができる(図2参照)。
また、オリーブ樹OLの枝は、平面視において、相互に上下方向で重ならないように横方向へ引っ張られることで、内向枝や交差枝等になることを防止することができる(図3参照)。
【0034】
図3に示すように、オリーブ樹OLの枝は、平面視において、その伸び方向が中空状容器(第2規制具12)を中心とした放射状をなし、かつ、図中に鎖線で示した円状の範囲に収まるように、線材(第3規制具13)で引っ張ることが好ましい。
この場合、枝相互が、上下及び横方向で重ならず、日照量と風通しを良好なものとすることができる。
さらに、オリーブ樹OLを低木化する観点から、図3中に鎖線で示した円状の範囲は、直径で2m以内とすることができ、好ましくは1.5m~2mとすることができる。この場合、オリーブ樹OLは、平面視において、枝の横方向への広がりを2m以内に抑えることができ、単位面積あたりの栽培数と、果実の収穫量を好適なものとすることができる。
なおオリーブ樹OLの平面視における枝の横方向への広がりを2m以内に抑える場合、単位面積あたりの栽培数は、1坪(約3.3m)あたり1本とすることができ、収穫量は、1本あたり約15kgとすることができる。
【0035】
オリーブ樹OLがある程度の大きさから結実するまで成長する段階、つまり成長の中期から後期の段階において、第3規制具13に用いる線材は、枝と地面(第2規制具12に収容された土による地面)との間に張設することが好ましい(図4参照)。
この場合、オリーブ樹OLの枝は、線材(第3規制具13)により、下方へ引っ張られることで、実を付ける枝への通気性を良好なものとすることができる(図4参照)。
特に、実を付ける枝は、線材(第3規制具13)によって下方へ引っ張り、低い位置に配することにより、果実の収穫作業において、足場が不要となり、作業効率の向上を図ることができる。
また、第3規制具13に用いる線材は、その一端を第2規制具12に収容された土による地面に繋ぐ場合、季節毎の日照に合わせて、オリーブ樹OLの向きを容易に変えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のオリーブ樹等の果実樹用ハウス栽培方法およびオリーブ樹等の果実樹用ハウス栽培施設は、オリーブ樹等の果実樹の生長を妨げることなく低木化を達成することで、ハウス栽培を可能としており、オリーブ等の果実の栽培における有用性が高い。
【符号の説明】
【0037】
10;建物、
11;第1規制具、
12;第2規制具、
13;第3規制具、
OL;オリーブ樹(果実樹)。
図1
図2
図3
図4