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特開2024-84738電気外科システム、電気外科発電機、および電気外科システムを動作させる方法
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  • 特開-電気外科システム、電気外科発電機、および電気外科システムを動作させる方法 図1
  • 特開-電気外科システム、電気外科発電機、および電気外科システムを動作させる方法 図2
  • 特開-電気外科システム、電気外科発電機、および電気外科システムを動作させる方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084738
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】電気外科システム、電気外科発電機、および電気外科システムを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
A61B18/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210086
(22)【出願日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】63/432,195
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516236908
【氏名又は名称】オリンパス・ヴィンター・ウント・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】OLYMPUS WINTER & IBE GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ディートリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ラミン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス フェーシング
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK23
4C160KK36
4C160MM32
(57)【要約】
【課題】起動スイッチ回路を有する電気外科器具および器具識別回路を有する電気外科器具の両方が電気外科発電機の1つの同じコネクタに接続され得る電気外科システムを提供する。
【解決手段】電気外科システムは、電気外科発電機と、3ピンコネクタを介して電気外科発電機に接続するように構成された電気外科器具とを備える。電気外科発電機は、電気外科器具が電気外科発電機に接続されると、電気外科器具が起動スイッチ回路または器具識別回路を備えるかどうかを検出し、電気外科器具が起動スイッチ回路を備える場合には、3ピンコネクタの第2および第3のピンを起動スイッチユニットに接続し、電気外科器具が器具識別回路を備える場合には、3ピンコネクタの第2および第3のピンを器具識別ユニットに接続する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科発電機と、
3ピンコネクタを介して前記電気外科発電機に接続するように構成された電気外科器具と、
を備える電気外科システムであって、
前記電気外科器具は、前記3ピンコネクタの第1のピンに接続された電気外科電極と、
前記3ピンコネクタの第2のピンおよび第3のピンに接続された
起動スイッチ回路および
器具識別回路のうちの一方と、を備え、
前記電気外科発電機は、
前記電気外科器具が前記電気外科発電機に接続されると、前記電気外科器具が起動スイッチ回路または器具識別回路を備えるかどうかを検出し、
前記電気外科器具が前記起動スイッチ回路を備える場合には、前記3ピンコネクタの前記第2および前記第3のピンを起動スイッチユニットに接続し、
前記電気外科器具が前記器具識別回路を備える場合には、前記3ピンコネクタの前記第2および前記第3のピンを器具識別ユニットに接続する
ように構成される、
電気外科システム。
【請求項2】
前記電気外科発電機が、前記電気外科発電機の接続ソケットへの前記3ピンコネクタの挿入を検出するように構成されたプラグ検出ユニットを備える、請求項1に記載の電気外科システム。
【請求項3】
前記3ピンコネクタの前記第2および前記第3のピンを前記器具識別ユニットおよび前記起動スイッチユニットのいずれかに接続するための中継スイッチユニットをさらに備える、請求項1に記載の電気外科システム。
【請求項4】
前記電気外科発電機が、前記電気外科器具が前記電気外科発電機に接続されると、前記3ピンコネクタの前記第2および前記第3のコネクタを前記器具識別ユニットに接続するように構成される、請求項2に記載の電気外科システム。
【請求項5】
前記電気外科発電機は、前記電気外科器具が前記電気外科発電機に接続されると、
前記電気外科器具に器具識別質問信号を送信し、
前記器具識別ユニットを介して器具識別応答信号を受信しようと試みる、
ように構成される、請求項4に記載の電気外科システム。
【請求項6】
前記電気外科発電機が、前記器具識別質問信号に応答して前記器具識別応答信号が受信されない場合、
前記3ピンコネクタの前記第2および前記第3のピンを前記器具識別ユニットから切断し、
前記3ピンコネクタの前記第2および前記第3のピンを前記起動スイッチユニットに接続する
ように構成される、請求項5に記載の電気外科システム。
【請求項7】
前記電気外科発電機が、前記3ピンコネクタが前記接続ソケットから取り外されるまで、前記3ピンコネクタの前記第2および前記第3のピンの前記起動スイッチ回路への接続を維持するように構成される、請求項6に記載の電気外科システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の電気外科システムの電気外科発電機。
【請求項9】
電気外科システムを動作させる方法であって、
3ピンコネクタを介した電気外科器具の電気外科発電機への接続を検出するステップと、
前記電気外科器具が起動スイッチ回路または器具識別回路を備えるかどうかを検出するステップと、
前記電気外科器具が前記起動スイッチ回路を備える場合、前記3ピンコネクタの第2および前記第3のピンを前記電気外科発電機の起動スイッチユニットに接続するか、または
前記電気外科器具が前記器具識別回路を備える場合、前記3ピンコネクタの前記第2および前記第3のピンを前記電気外科発電機の器具識別ユニットに接続するステップと
を含む、方法。
【請求項10】
前記電気外科器具の前記電気外科発電機への接続を検出した後、前記3ピンコネクタの前記第2および前記第3のピンを前記器具識別ユニットに接続するステップと、
器具識別質問信号を前記電気外科器具に送信するステップと、
前記器具識別ユニットを介して器具識別応答信号を受信しようと試みるステップと
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記器具識別質問信号に応答して前記器具識別応答信号が受信されない場合、
前記3ピンコネクタの前記第2および前記第3のピンを前記器具識別ユニットから切断するステップと、
前記3ピンコネクタの前記第2および前記第3のピンを前記起動スイッチユニットに接続するステップと
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記3ピンコネクタが前記電気外科発電機の接続ソケットから取り外されるまで、前記3ピンコネクタの前記第2および前記第3のピンの前記起動スイッチ回路への接続を維持するステップ
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気外科発電機および電気外科器具を備える電気外科システム、その電気外科システムの電気外科発電機、および電気外科システムを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手術が行われる方法は、時間とともに進化してきた。古典的な外科手術では、メス、鉗子、ハサミなどの独立型の機械的器具が様々な侵襲的および非侵襲的処置に使用されてきたが、それらの器具の機械的機能は、単極または双極電気外科手術、超音波手術、マイクロ波手術などのエネルギー機能によって置き換えられまたは補完されてきた。電気外科発電機は、通常は電流の形態の外科エネルギーをそれぞれの器具に供給するために開発されてきた。電気外科発電機によって提供される外科エネルギーは、電気外科治療信号とも呼ばれる。
【0003】
電気外科発電機と電気外科器具との間の接続は、通常、電気外科器具に固定的または取り外し可能に接続された電気外科ケーブルを介して得られ、電気外科ケーブルをプラグ型コネクタによって電気外科発電機に接続することができる。多くの形態のコネクタが当分野で見出され得るが、3ピンコネクタの使用は、特に単極用途において非常に一般的である。
【0004】
3ピンコネクタは、1つまたは複数の起動スイッチを備える単極器具を使用するために最初に開発された。そのような器具では、3ピンコネクタの第1のピンは、通常、器具の電気外科電極に接続され、3ピンコネクタの第2および第3のピンは、1つまたは複数の起動スイッチを含む起動スイッチ回路に接続される。
【0005】
電気外科発電機に接続されると、第1のピンは患者回路に接続され、患者回路を介して電気外科治療信号が提供される。単極用途では、患者回路は通常、手術部位から離れた場所で患者の身体に貼付される大きな表面中性電極パッチを通して完成される。このような中性電極パッチは、通常、別個の接続プラグによって電気外科発電機に接続される。
【0006】
3ピンコネクタの第2および第3のピンは、電気外科発電機の起動スイッチユニットに接続する。起動スイッチユニットは、電気外科器具の起動スイッチ回路に質問信号を提供し、起動スイッチ回路から応答信号を受信するように構成され、応答信号は、1つまたは複数の起動スイッチの起動状態に応じて変化する。電気外科発電機の起動スイッチユニットは、応答信号を分析し、制御信号を提供するようにさらに構成され、制御信号はその後、電気外科発電機による電気外科治療信号の起動を制御するために使用される。いくつかの例では、電気外科器具の起動スイッチ回路は、「凝固(coag)」スイッチおよび「切断(cut)」スイッチを含んでもよく、電気外科発電機は、「凝固(coag)」スイッチが起動されたときに組織の凝固に適した第1の電気外科治療信号を提供し、「切断(cut)」スイッチが起動されたときに組織の切断に適した第2の電気外科治療信号を提供するように構成される。
【0007】
長らく、高度な電気外科治療信号を必要とする高度な電気外科器具が開発されてきた。不適切な電気外科治療信号をそのような器具に提供することから生じる問題を防止するために、いくつかの最新の器具は、器具の接続時に電気外科発電機の器具識別ユニットによって検出および/または読み出すことができる器具識別回路を備える。次いで、電気外科発電機は、器具に提供される適切な電気外科治療波形を選択するために、器具識別回路を検出または読み出すことによって得られた情報を使用し得る。一部の器具識別回路は単純な抵抗性または反応性の電子素子からなるが、器具識別は、使用情報などを記憶するために電気外科発電機によって書き込むこともできるマイクロチップ、例えばEEPROMメモリデバイスを含むことが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既知の電気外科発電機は、一般に、電気外科発電機の器具識別ユニットを電気外科器具の器具識別回路に接続するための追加の接点を含む独自のコネクタを提供する。そのような独自のコネクタは、電気外科発電機の前面プレート上に追加の空間を必要とし、特に外科手術中のストレスの多い状況では、正しいコネクタを見つけることをより困難にする。
【0009】
起動スイッチ回路を有する電気外科器具および器具識別回路を有する電気外科器具の両方が電気外科発電機の1つの同じコネクタに接続され得る電気外科システムを有することが有益であろう。
【0010】
本開示の目的は、起動スイッチ回路を有する電気外科器具および器具識別回路を有する電気外科器具の両方が電気外科発電機の1つの同じコネクタに接続され得る電気外科システム、その電気外科システムの電気外科発電機、および電気外科システムを動作させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示は、電気外科発電機と、3ピンコネクタを介して電気外科発電機に接続するように構成された電気外科器具とを備える電気外科システムを提供し、電気外科器具は、3ピンコネクタの第1のピンに接続された電気外科電極と、3ピンコネクタの第2のピンおよび第3のピンに接続された起動スイッチ回路および器具識別回路のうちの一方と、を備え、電気外科発電機は、電気外科器具が電気外科発電機に接続されると、電気外科器具が起動スイッチ回路または器具識別回路を備えるかどうかを検出し、電気外科器具が起動スイッチ回路を備える場合には、3ピンコネクタの第2および第3のピンを起動スイッチユニットに接続し、電気外科器具が器具識別回路を備える場合には、3ピンコネクタの第2および第3のピンを器具識別ユニットに接続するように構成される。
【0012】
本開示による電気外科システムでは、起動スイッチ回路を備える標準的な単極電気外科器具および器具識別回路を備える電気外科器具の両方を、同じ3ピンコネクタを介して電気外科発電機に交互に接続することができる。
【0013】
電気外科発電機は、電気外科発電機の接続ソケットへの3ピンコネクタの挿入を検出するように構成されたプラグ検出ユニットを備えてもよい。プラグ検出ユニットは、マイクロスイッチ、光バリア、ピン受けブッシングの長さまたは円周に沿った分割接点、または接続ソケットのレセプタクルへのピンの挿入を検出するための任意の他の適切な手段を備えてもよい。
【0014】
電気外科発電機は、3ピンコネクタの第2および第3のピンを器具識別ユニットおよび起動スイッチユニットのいずれかに接続するための中継スイッチユニットを備えてもよい。中継スイッチユニットは、電気外科発電機の器具識別ユニットと起動スイッチユニットとの間にガルバニック分離を提供してもよい。
【0015】
電気外科発電機は、電気外科器具が電気外科発電機に接続されると、3ピンコネクタの第2および第3のコネクタを器具識別ユニットに接続するように構成されてもよい。
【0016】
電気外科発電機は、電気外科器具が電気外科発電機に接続されると、電気外科器具に器具識別質問信号を送信し、器具識別ユニットを介して器具識別応答信号を受信するようにさらに構成されてもよい。器具識別質問信号に応答して器具識別応答信号が受信されない場合、電気外科発電機は、3ピンコネクタの第2および第3のピンを器具識別ユニットから切断し、3ピンコネクタの第2および第3のピンを起動スイッチユニットに接続するようにさらに構成されてもよい。
【0017】
電気外科発電機は、3ピンコネクタが接続ソケットから取り外されるまで、3ピンコネクタの第2および第3のピンの起動スイッチ回路への接続を維持するようにさらに構成されてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、本開示は、上述の電気外科システムで動作するように構成された電気外科発電機を提供する。
【0019】
いくつかのさらなる実施形態では、本開示は、電気外科システムを動作させるための方法であって、3ピンコネクタを介した電気外科器具の電気外科発電機への接続を検出するステップと、電気外科器具が起動スイッチ回路または器具識別回路を備えるかどうかを検出するステップと、電気外科器具が起動スイッチ回路を備える場合、3ピンコネクタの第2および第3のピンを電気外科発電機の起動スイッチユニットに接続するか、または電気外科器具が器具識別回路を備える場合、3ピンコネクタの第2および第3のピンを電気外科発電機の器具識別ユニットに接続するステップと、を含む方法を提供する。
【0020】
本方法は、電気外科器具の電気外科発電機への接続を検出した後、3ピンコネクタの第2および第3のピンを器具識別ユニットに接続するステップと、器具識別質問信号を電気外科器具に送信するステップと、器具識別ユニットを介して器具識別応答信号を受信しようと試みるステップとをさらに含んでもよい。
【0021】
器具識別質問信号に応答して器具識別応答信号が受信されない場合、本方法は、3ピンコネクタの第2および第3のピンを器具識別ユニットから切断するステップと、3ピンコネクタの第2および第3のピンを起動スイッチユニットに接続するステップと、をさらに含んでもよい。
【0022】
本方法は、3ピンコネクタが接続ソケットから取り外されるまで、3ピンコネクタの第2および第3のピンの起動スイッチ回路への接続を維持するステップをさらに含んでもよい。
【0023】
本開示のいくつかの例を、例示的な図面を参照して以下に説明する。説明された例は、より良い理解のために提供されており、網羅的であること、または添付の特許請求の範囲を決して限定することを意図するものではない。
【0024】
図面は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、電気外科システムを示す図である。
図2図2は、電気外科発電機を示す図である。
図3図3は、電気外科システムを動作させる方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、電気外科発電機10および電気外科器具11,12を備える電気外科システム1を示す。
【0027】
電気外科器具11は、ハンドル15、シャフト16、および遠位電極17を備える単極ペンシル電極である。ハンドル15には、2つの起動スイッチ18,19が設けられている。電気外科器具11は、器具を電気外科発電機10の接続ソケット21に接続するための3ピンコネクタ20をさらに備える。
【0028】
電気外科器具11が電気外科発電機10に接続されると、起動スイッチ18,19の作動により、電気外科発電機10は異なる電気外科治療信号を電気外科器具11に提供する。一例では、起動スイッチ18の作動は、組織を切断するように設計された第1の電気外科治療信号の提供を引き起こしてもよく、起動スイッチ19の作動は、組織を凝固または焼灼するように設計された第2の電気外科治療信号の提供を引き起こしてもよい。
【0029】
電気外科器具12は、本体25と、シャフト26と、顎部27と、顎部27を開閉するように動作可能なハンドルレバー28,29と、を備える単極鉗子である。電気外科電極(図示せず)は、顎部27の一方または両方に設けられてもよく、または顎部27は、電極自体として作用する導電性材料から構成されてもよい。電気外科器具11と同様に、電気外科器具12は、器具を電気外科発電機10に接続するための3ピンコネクタ30を備える。
【0030】
電気外科器具11とは異なり、電気外科器具12は起動スイッチを備えていない。代わりに、器具識別回路35が3ピンコネクタ30に設けられる。
【0031】
電気外科器具12が電気外科発電機10に接続されると、発電機10は、電気外科器具12に提供される電気外科治療信号の適切なパラメータを決定するために、器具識別回路35に記憶された情報を使用することができる。そのような電気外科治療信号の起動のために、電気外科発電機10は、無線フットスイッチ40のような他の起動デバイスに接続されてもよい。無線フットスイッチ40は、組織を切断、凝固および/または焼灼するための異なる電気外科治療信号の起動のための第1および第2のペダル41(一方のみ見える)を備えてもよい。
【0032】
電気外科システム1は、患者回路を閉じるための中性パッチ電極50をさらに備える。パッチ電極50は、ソケット52を介して電気外科発電機10に接続するための単純なプラグ51を備える。他の例では、電気外科システムは、電極パッチと患者の皮膚との間の接触品質を監視するために使用することができる分割中性電極パッチ(図示せず)を備えてもよい。
【0033】
図2は、電気外科システム1に使用される電気外科発電機10の概略設計を示す。電気外科発電機10は、様々な電気外科治療信号を生成するように構成された信号生成ユニット110を備える。信号生成ユニット110は、交流電流、例えば電圧、電流、波形、デューティサイクルなどの所定の特性を有する高周波電流をDC電圧源から生成するための既知の回路を含む。信号生成ユニット110は、マルチバイブレータ、PLL回路などの交流を生成するためのデジタル回路、共振ループのような交流を生成するためのアナログ回路、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。信号生成ユニット110は、電圧センサ、電流センサなどの電気外科治療信号の特性を決定するためのセンサと、電気外科治療信号の特性を指定された限界内に保つためのフィードバック調整回路とをさらに備えてもよい。
【0034】
電気外科治療信号は、信号生成ユニット110によって、接続ソケット31の第1のピンレセプタクル31aとソケット52のピンレセプタクル52aとの間に提供される。中継スイッチ115は、ソケット31,52を信号生成ユニット110から選択的に分離するためにさらに設けられる。
【0035】
信号生成ユニット110には起動スイッチユニット120が関連付けられており、これを接続ソケット31の第2および第3のピンレセプタクル31b,31cに接続することができ、閉回路を形成するために第1のピンレセプタクル31aに恒久的に接続する。起動スイッチユニット120は、接続ソケット31に接続された電気外科器具の起動スイッチ回路に質問信号を提供し、起動スイッチ回路から受信した応答信号を分析するように構成される。いくつかの実施形態では、起動スイッチユニット120は、起動スイッチ回路に一定または低周波交流電圧を提供してもよく、起動スイッチ回路は、起動スイッチ回路の1つまたは複数の起動スイッチの起動状態に応じて、起動スイッチユニットと起動スイッチ回路との間に形成された回路に結合されるか、またはそこから結合解除される所定の抵抗素子または反応素子を備えてもよい。いくつかの実施形態では、起動スイッチ回路は、回路に結合される異なる抵抗器を備えてもよく、その結果、起動状態に応じて異なる電流が回路に流れる。他の実施形態では、起動スイッチ回路は、質問信号の正または負のいずれかの半波が回路を通過するように、回路に結合される反対の極性を有するダイオードを備えてもよい。
【0036】
起動スイッチ回路は通常、電気外科器具11のハンドル15内に配置されるため、起動スイッチ回路を接続するためのワイヤは、ハンドル15と3ピンコネクタ20との間で電気外科治療信号を搬送するワイヤと平行に延びる。したがって、質問信号は、応答信号を依然として検出することができるように、特定の信号強度を有する必要がある。
【0037】
電気外科発電機10は、信号生成ユニット110と通信するように構成された制御ユニット130をさらに備える。制御ユニット130は、信号生成ユニット110で生成される電気外科治療信号のパラメータ、および信号生成ユニット110から受信した状態情報を提供する。制御ユニット130はまた、起動スイッチユニット120から起動および/または停止信号を受信し、そのような信号を信号生成ユニット110に送信されるコマンドに変換してもよい。
【0038】
制御ユニット130は、メモリ要素、バスシステムなどのプロセッサおよび関連する回路を備えてもよい。制御ユニット130は、Windows(登録商標)、MacOS(登録商標)などのオペレーティングシステム、または独自仕様のオペレーティングシステムで動作する標準、工業グレード、または医療グレードのコンピュータであってもよい。制御ユニット130は、電気外科発電機のオペレータと状態情報を通信し、電気外科治療波形のパラメータ設定などのオペレータ入力を受信するためのユーザインターフェースを含んでもよい。
【0039】
電気外科発電機10は、接続ソケット31の第2および第3のピンレセプタクル31b,31cにも接続することができる器具識別ユニット140をさらに備える。器具識別ユニット140は、電気外科発電機10に接続された電気外科器具12の器具識別回路35に器具識別質問信号を送信し、器具識別回路35から器具識別応答信号を受信するように構成される。
【0040】
器具識別ユニット140と器具識別回路35との間で交換される通信信号は、典型的には、3V~5Vの範囲の低電圧信号である。多くの電気外科器具では、器具識別回路は3ピンコネクタ30に配置されているので、信号線からの干渉を最小限に抑えることができる。
【0041】
器具識別回路35は、器具識別ユニットによって読み書き可能な「1ワイヤ(1-wire)」チップ、例えばEEPROMまたはFLASHメモリチップを含んでもよい。
【0042】
安全上の理由から、信号生成ユニット110および起動スイッチユニット120は、制御ユニット130および器具識別ユニット140からガルバニック分離されている。この分離を破線150で示す。AC/DC変換電源ユニット151は、分離されたユニットに供給するための分離された電力出力を備える。分離を横切る任意の信号線には、光カプラまたはガルバニック分離を維持するための他の適切な手段を設けてもよい。
【0043】
分離の遮断を回避するために、起動スイッチユニット120と器具識別ユニット140と接続ソケット31との間に中継スイッチユニット152が設けられている。中継スイッチユニット152は、起動スイッチユニット120または器具識別ユニット140のいずれかを接続ソケット31の第2および第3のピンレセプタクル31b,31cに交互に接続するように、または第2および第3のピンレセプタクル31b,31cを起動スイッチユニット120および器具識別ユニット140の両方から切断するように構成されたスイッチを備えてもよい。中継スイッチユニット152および中継スイッチ115は、制御ユニット130によって制御される。
【0044】
電気外科発電機10は、ピンレセプタクル31a,31b,31cのうちの1つまたは複数に関連付けられたプラグ検出ユニット160をさらに備える。プラグ検出ユニット160は、限定ではないが、プラグがピンレセプタクルに挿入されると作動するマイクロスイッチ、遮光される光バリア、またはプラグの挿入時に接続されるピンレセプタクルの長さに沿った分割接点を含んでもよい。プラグ検出ユニット160は、プラグがピンレセプタクル31a,31b,31cのうちの1つまたは複数に挿入されているか否かを示す信号を制御ユニット130に出力するように構成された回路を備える。
【0045】
図1および図2に示すような電気外科システムを動作させる例示的な方法200が図3に示される。
【0046】
第1のステップ201において、3ピンコネクタの接続ソケット31への挿入がプラグ検出ユニット160によって検出され、それぞれの制御信号がプラグ検出ユニット160から制御ユニット130に送信される。制御信号は、接続ソケット31のピンレセプタクル31a,31b,31cの少なくとも1つにプラグが挿入されていない間は「高」状態に維持され、プラグがそれぞれのピンレセプタクル31a,31b,31cに挿入されると「低」に変化する、またはその逆の論理信号を含んでもよい。制御信号は、恒久的に「低」であり、それぞれのピンレセプタクル31a,31b,31cへのプラグの挿入またはそこからのプラグの取り外しが検出されると、短いパルスに対してのみ「高」に変化する論理信号を含んでもよい。パルスの形状は、プラグの挿入とプラグの取り外しとを区別するように構成されてもよい。
【0047】
第2のステップ202では、接続ソケットに接続された電気外科器具のタイプが検出される。器具タイプを検出するために、いくつかの実施形態では、制御ユニット130は、中継スイッチユニット152を制御して、接続ソケット31の第2および第3のピンレセプタクル31b,31cを器具識別ユニット140と接続してもよい。同時に、制御ユニット130は、器具識別ユニット140に影響を及ぼす電気外科治療信号からの干渉を防止するために、中継スイッチ115を制御して接続ソケット31およびソケット52を切断してもよい。次いで、制御ユニット130は、器具識別ユニット140を制御して、第2および第3のピンレセプタクル31b,31cを介して電気外科器具に器具識別質問信号を送信する。
【0048】
接続ソケット31に接続された電気外科器具が器具識別回路35を有するタイプのものである場合、器具識別質問信号は器具識別回路35によって受信され、器具識別回路は器具識別応答信号を器具識別ユニット140に送信する。器具識別質問および応答信号は、器具識別データ、器具特性データ、器具認証日などの様々な信号成分を含んでもよい。
【0049】
器具識別応答信号が器具識別ユニット140によって受信された場合、制御ユニット130は、接続ソケット31に接続された電気外科器具が、電気外科器具12のような器具識別回路を備える器具タイプであると判定する。器具識別応答信号が器具識別ユニット140によって受信されない場合、制御ユニット130は、接続ソケット31に接続された電気外科器具が、電気外科器具11と同様に、器具識別回路を備えていないが起動スイッチ回路を備える器具タイプであると判定する。この区別は、図3のブロック203によって表される。
【0050】
器具が器具識別回路を有するタイプの器具である場合、ステップ204において、器具識別ユニット140と器具識別回路との間の接続が確立または維持される。上記の方法で器具タイプが検出された場合、そのような接続は既に確立されており、維持されるだけでよい。器具タイプを検出するための他の可能な方法は、器具識別ユニットとの接続を確立することを必要としない場合がある。そのような方法が使用されている場合、接続は依然として確立される必要がある。並行して、制御ユニット130は、中継スイッチ115を制御して、接続ソケット31およびソケット52を信号生成ユニット110に接続してもよく、その結果、電気外科治療信号を電気外科器具に提供することができる。
【0051】
ステップ205において、器具識別回路35と器具識別ユニット140との間の接続が確立または維持された後、制御ユニット130は、適切な電気外科治療信号を電気外科器具に提供するのに有用な情報を読み出し、器具使用データを器具識別回路35に書き込むために、器具識別ユニット140を制御して器具識別回路35と通信してもよい。
【0052】
器具が起動スイッチ回路を有するタイプの器具である場合、制御ユニットは、ステップ207において、中継スイッチユニット152を制御して、第2および第3のピンレセプタクル31b,31cを起動スイッチユニット120に接続する。ステップ202において第2および第3のピンレセプタクル31b,31cが以前に器具識別ユニット140に接続されている場合、そのような接続は、中継スイッチユニット152によって自動的に切断される。並行して、制御ユニット130は、中継スイッチ115を再び制御して、接続ソケット31およびソケット52を信号生成ユニット110に接続してもよく、その結果、電気外科治療信号を電気外科器具に提供することができる。
【0053】
ステップ208において、制御ユニット130は、器具の起動スイッチ回路と通信するように起動スイッチユニット120を制御し、器具の起動スイッチの起動状態に従って電気外科治療信号を器具に提供するように信号生成ユニット110を制御してもよい。
【0054】
電気外科処置または電気外科的処置の一部の完了後、ステップ209において、接続ソケット31からの3ピンコネクタ20,30の切断を任意選択的に検出してもよい。3ピンコネクタの切断が検出された後、制御ユニット130は、中継スイッチユニット152を制御して、起動スイッチユニット120および/または器具識別ユニットを接続ソケット31の第2および第3のピンレセプタクル31b,31cから切断してもよい。同時に、制御ユニット130は、中継スイッチ115を制御して、信号生成ユニット110から接続ソケット31およびソケット52を切断してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 電気外科システム
10 電気外科発電機
11 電気外科器具
12 電気外科器具
15 ハンドル
16 シャフト
17 電気外科電極(遠位電極)
18 起動スイッチ
19 起動スイッチ
20 3ピンコネクタ
21 接続ソケット
25 本体
26 シャフト
27 電気外科電極(顎部)
28 ハンドルレバー
29 ハンドルレバー
30 3ピンコネクタ
31 接続ソケット
31a 第1のピンレセプタクル
31b 第2のピンレセプタクル
31c 第3のピンレセプタクル
35 器具識別回路
40 無線フットスイッチ
41 ペダル
50 パッチ電極
51 プラグ
52 ソケット
52a ピンレセプタクル
110 信号生成ユニット
115 中継スイッチ
120 起動スイッチユニット
130 制御ユニット
140 器具識別ユニット
151 AC/DC変換電源ユニット
152 中継スイッチユニット
160 プラグ検出ユニット
図1
図2
図3