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特開2024-84769スルーディスプレイ分光器を有して構成される発光型ディスプレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084769
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】スルーディスプレイ分光器を有して構成される発光型ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/18 20060101AFI20240618BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240618BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G01J3/18
G09F9/00 313
G09F9/00 366A
G09F9/00 366Z
G02B5/18
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024053335
(22)【出願日】2024-03-28
(62)【分割の表示】P 2022529644の分割
【原出願日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】62/949,197
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カクマクシ,オザン
(72)【発明者】
【氏名】カリー,ジョティ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,サンム
(72)【発明者】
【氏名】ビタ,イオン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スルーディスプレイ分光器を有して構成される発光型ディスプレイを提供する。
【解決手段】格子として使用される発光型表示パネルと、発光型表示パネルの背後/下に位置する分光器光学系とを備える。モバイルコンピューティングデバイスは、発光型表示パネルと、発光型表示パネルの下に位置する分光器とを備える。発光型表示パネルは、1つ以上のLEDを含む第1周期パターンの画素と、画素を制御する第2周期パターンの回路素子とを含み、第1周期パターンおよび第2周期パターンは、発光型ディスプレイを通過するデバイスの外部から受光した光を回折するように構成され、当該回折は、波長依存回析である。分光器は、回折光の異なる波長範囲の強度を検出するように構成される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイルコンピューティングデバイスであって、
発光型表示パネルを備え、前記発光型表示パネルは、
1つ以上のLEDを含む第1周期パターンの画素と、
前記画素を制御する第2周期パターンの回路素子とを含み、前記第1周期パターンおよび前記第2周期パターンは、前記デバイスの外部から受光した、前記発光型ディスプレイを通過する光を回折するように構成され、前記回折は、波長依存回析であり、前記モバイルコンピューティングデバイスは、さらに、
前記発光型表示パネルの下に配置されて前記回折光のそれぞれ異なる波長範囲の強度を検出するように構成された分光器を備える、モバイルコンピューティングデバイス。
【請求項2】
前記ディスプレイパネルは、AMOLED(アクティブマトリックス有機発光ダイオード)ディスプレイパネルを含む、請求項1に記載のモバイルコンピューティングデバイス。
【請求項3】
前記回路素子は、光が通過する開口部を形成するように配置される、先行する請求項のいずれか1項に記載のモバイルコンピューティングデバイス。
【請求項4】
前記1つ以上のLEDは、物体に光を与えるように構成され、前記物体は、前記デバイスの外部から受光した前記光を反射し、前記光は、前記周期パターンによって回折される、先行する請求項のいずれか1項に記載のモバイルコンピューティングデバイス。
【請求項5】
前記分光器は、光センサーアレイを含み、前記光センサーアレイは、前記光センサーアレイのそれぞれ異なる部分に投影される前記回折光の強度に応答する、先行する請求項のいずれか1項に記載のモバイルコンピューティングデバイス。
【請求項6】
前記光センサーアレイのベースライン感度を格納するために構成されたメモリをさらに備える、請求項5に記載のモバイルコンピューティングデバイス。
【請求項7】
前記発光型表示パネルと前記光センサーアレイとの間にファイバープレートをさらに備え、前記ファイバープレートは、前記光センサーアレイに前記回折光を投影するように構成される、請求項4または請求項5のいずれかに記載のモバイルコンピューティングデバイス。
【請求項8】
前記発光型表示パネルと前記分光器との間に配置されるレンズをさらに備え、前記レンズは、前記分光器に前記回折光を投影するように構成される、先行する請求項のいずれか1項に記載のモバイルコンピューティングデバイス。
【請求項9】
前記発光型表示パネルと前記分光器との間に不透明層をさらに備え、前記不透明層は、前記ディスプレイパネルを通って前記分光器まで前記回折光を通過させるように構成されたアパーチャを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のモバイルコンピューティングデバイス。
【請求項10】
前記分光器からの信号を処理するように構成されるプロセッサをさらに備え、前記信号は、検出した前記回折光の前記異なる波長範囲の強度に基づく信号であり、前記回折光の受光元の製品を真正または本物であると識別する、先行する請求項のいずれか1項に記載のモバイルコンピューティングデバイス。
【請求項11】
発光型表示パネルであって、
1つ以上のLEDを含む第1周期パターンの画素と、
前記画素を制御する第2周期パターンの回路素子とを含み、前記第1周期パターンおよび前記第2周期パターンは、前記デバイスの外部から受光した、前記発光型ディスプレイを通過する光を回折するように構成され、前記回折は、波長依存回折であり、前記発光型表示パネルの下に位置する分光器によって前記回折光が検出できる、発光型表示パネル。
【請求項12】
前記ディスプレイパネルは、AMOLED(アクティブマトリックス有機発光ダイオード)ディスプレイパネルを含む、請求項11に記載の発光型表示パネル。
【請求項13】
前記回路素子は、光が通過する開口部を形成するように配置される、請求項11~12のいずれか1項に記載の発光型表示パネル。
【請求項14】
前記1つ以上のLEDは、物体に光を与えるように構成され、前記物体は、前記デバイスの外部から受光した光を反射し、前記光は、前記周期パターンによって回折される、請求項11~13のいずれか1項に記載の発光型表示パネル。
【請求項15】
前記発光型表示パネルと前記分光器との間に不透明層をさらに備え、前記不透明層は、前記回折光に前記ディスプレイパネルおよび前記不透明層を通過させるように構成されたアパーチャを含む、請求項11~14のいずれか1項に記載の発光型表示パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年12月17日に出願された米国出願第62/949,197号の利益を主張するものであり、そのすべての開示内容を引用により本明細書に援用する。
【0002】
技術分野
本開示は、フラットパネルディスプレイに関し、特に、ディスプレイを通した分光検知を可能にする、モバイル機器で使われるディスプレイに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
少なくともユーザエクスペリエンスの観点からは、モバイル機器(たとえば、携帯電話、タブレット端末など)のより多くの領域を覆うようにディスプレイを広げることが所望の形であろう。しかしながら、モバイル機器のディスプレイを含んでいる面に配置された電気光学装置(たとえば、正面カメラ、光センサー、分光器など)は、機器のディスプレイを含んだこの面のスペースを求めて競い合うであろう。よって、機器のディスプレイ面にその他のセンサーを収容するためには、ディスプレイの発光領域の大きさを妥協しなければならないであろう。
【発明の概要】
【0004】
概要
本開示は、発光型表示パネルと、ディスプレイパネルの下に位置する分光器とを有するモバイルコンピューティングデバイスについて説明する。分光器が検出して解析する光は、ディスプレイパネルを通過し、波長依存した方法でディスプレイパネルの素子によって回析される。
【0005】
包括的な態様では、モバイルコンピューティングデバイスは、発光型表示パネルと、発光型表示パネルの下に配置された分光器とを備える。発光型表示パネルは、1つ以上のLEDを含む第1周期パターンの画素と、画素を制御する第2周期パターンの回路素子とを含み、第1周期パターンおよび第2周期パターンは、発光型ディスプレイを通過する、デバイスの外部から受光した光を回折するように構成され、当該回折は、波長依存回析である。分光器は、回折光の異なる波長範囲の強度を検出するように構成される。
【0006】
実施態様は、以下の特徴のうち1つ以上を含み得る。
たとえば、ディスプレイパネルは、AMOLED(アクティブマトリックス有機発光ダイオード)ディスプレイパネルを含み得る。
【0007】
回路素子は、光が通過する開口部を形成するように配置され得る。
1つ以上のLEDは、物体に光を与えるように構成され得、当該物体は、デバイスの外部から受光した光を反射し、当該光は、周期パターンによって回析される。
【0008】
分光器は、光センサーアレイを含み得、光センサーアレイは、光センサーアレイのそれぞれ異なる部分に投影される回折光の強度に応答する。
【0009】
モバイルコンピューティングデバイスは、アレイのベースライン感度を格納するために構成されたメモリを備え得る。
【0010】
モバイルコンピューティングは、発光型表示パネルと光センサーアレイとの間にファイバープレートを備え得、ファイバープレートは、光センサーアレイに回折光を投影するように構成される。
【0011】
モバイルコンピューティングデバイスは、発光型表示パネルと分光器との間に配置されるレンズをさらに備え得、レンズは、分光器に回折光を投影するように構成される。
【0012】
モバイルコンピューティングデバイスは、発光型表示パネルと分光器との間に不透明層をさらに備え得、不透明層は、ディスプレイパネルを通って分光器まで回折光を通過させるように構成されたアパーチャを含む。
【0013】
モバイルコンピューティングデバイスは、分光器からの信号を処理するように構成されたプロセッサをさらに備え得、信号は、検出した回折光の異なる波長範囲の強度に基づく信号であり、回折光の受光元の製品を真正または本物であると識別する。
【0014】
別の態様では、発光型表示パネルは、1つ以上のLEDを含む第1周期パターンの画素と、画素を制御する第2周期パターンの回路素子とを含み得、第1周期パターンおよび第2周期パターンは、発光型ディスプレイを通過する、デバイスの外部から受光した光を回折するように構成され、当該回折は、波長依存回折であり、回折光は、発光型表示パネルの下に配置された分光器によって検出できる。
【0015】
実施態様は、以下の特徴のうち1つ以上を含み得る。
たとえば、ディスプレイパネルは、AMOLED(アクティブマトリックス有機発光ダイオード)ディスプレイパネルを含み得る。
【0016】
ディスプレイパネルは、AMOLED(アクティブマトリックス有機発光ダイオード)ディスプレイパネルを含み得る。
【0017】
回路素子は、光が通過する開口部を形成するように配置され得る。
1つ以上のLEDは、物体に光を与えるように構成され得、この物体は、デバイスの外部から受光した光を反射し、当該光は、周期パターンによって回析される。
【0018】
発光型表示パネルは、発光型表示パネルと分光器との間に不透明層をさらに含み得、不透明層は、回折光にディスプレイパネルおよび不透明層を通過させるように構成されたアパーチャを含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】ディスプレイと光学装置とを備えるモバイルコンピューティングデバイスの上(前)面を示す図であり、ディスプレイと光学装置が前面のそれぞれ異なる部分を占めている。
図1B】本開示の実現可能な実施態様に係る、ディスプレイ領域の背後に配置された分光器を有するディスプレイを備えるモバイルコンピューティングデバイスの上(前)面を示す図である。
図2A】本開示の実現可能な実施態様に係る、発光型表示パネルの背後に各々が配置された複数の光学装置を備えるモバイル機器の側面断面図を示す。
図2B】本開示の実現可能な実施態様に係る、発光型表示パネルの背後に配置された複数の光学装置を備えるモバイル機器の側面断面図を示す。
図3A】本開示の実現可能な実施態様に係る、発光型ディスプレイの高解像度部分の画素および信号線の上面(前から見た)図を示す。
図3B】本開示の実現可能な実施態様に係る、発光型ディスプレイの低解像度部分の画素および信号線の上面(前から見た)図を示す。
図4図3Bに示す発光型ディスプレイの実現可能な側面断面図を示す。
図5図4の発光型ディスプレイを通過する光への実現可能な影響を示す図である。
図6】発光型ディスプレイの回折素子による光の波長依存回折の概略図である。
図7】発光型ディスプレイが備える2次元配列の回折素子によって回折される光の実測点像分布関数を示す図である。
図8】入射光がディスプレイを通過するときに当該光を回折できる周期パターンの回折素子を含む発光型ディスプレイを有するモバイル機器の概略図である。
図9】機器が周辺光点灯モードで使われている場合に入射光がディスプレイを通過すると、当該光を回折できる周期パターンの回折素子を含む発光型ディスプレイを有するモバイル機器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面の構成要素は、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではなく、互いに相対した大きさではない。複数の図面を通して、同じ参照番号は対応する部品を指す。
【0021】
詳細な説明
本開示では、モバイル機器(たとえば、携帯電話、タブレット端末など)で使用できるフラットパネルディスプレイ(すなわち、ディスプレイパネル)について説明する。モバイル機器の前面は、前面に面した領域に、通常GUI(Graphic User Interface)として動作するディスプレイと、センサー/エミッターとして動作する1つ以上の光学装置とを含む。当該1つ以上の光学装置は、照明状況の検知(たとえば、光センサー)、近接の検知(たとえば、電磁センサー)、画像の撮影(たとえば、正面カメラ)、および/または光の提供(たとえば、フラッシュ)を含む(しかし、これらに限定されない)、様々な機能のために構成され得る。
【0022】
従来、ディスプレイと光学装置とは、前面の別個の領域を占めていた。たとえば、図1Aは、前面のそれぞれ異なる部分を占めるディスプレイ110およびカメラ111を有するモバイル機器101を示す図である。カメラ111に加えて、モバイル機器101は、たとえば分光器など、光信号を受信および検知するその他の光学素子を含み得る。
【0023】
分光器を使用して、入射する電磁放射線を解析し、入射する電磁放射線の構成波長、およびこれらの異なる構成波長における放射照度や出力を特定できる。分光器が提供する情報は、様々な異なる方法で利用できる。たとえば、製品の分光シグネチャに基づいて製品の原料や成分を特定するために分光情報を利用できる。別の例では、製品(たとえば、医薬品、贅沢な消費財など)が、偽造品では再現できない既知の特徴的なスペクトル信号を有している場合、分光情報を利用して、この製品の信憑性を判断してもよい。別の例では、分光情報を用いて物の状態を判断してもよい。たとえば、果物の糖度は、果物が熟するにつれて変化し得、果物から検知する電磁スペクトルに果物の糖度が影響を与える場合、分光器を用いて、果物の相対的な成熟度を判断できる。分光手段によって、健康関連情報(たとえば、血中酸素飽和度、体脂肪率など)も検出できる。
【0024】
発光型ディスプレイ技術(たとえば、AMOLED(アクティブマトリックス有機発光ダイオード))の最近の進歩により、ディスプレイの発光(すなわち、アクティブ)エリアをモバイル機器の端に向けて拡張することが容易になった。ディスプレイのアクティブエリアをモバイル機器の端に向けて拡張することによって、ユーザは、大型デバイスのデメリットを伴わないで、大型ディスプレイのメリットが得られるであろう。しかしながら、これでは、モバイル機器の前面上の発光型ディスプレイの領域外に、分光器やその他の光学装置のための十分なスペースを残せないであろう。これに加えて、分光器機能をモバ
イル機器に追加することは、入射光を回折するための格子を設けることを含み、この格子は、調達し、検査を行い、機器に組み込こまなければならないさらに別のコンポーネントとなり得る。
【0025】
本明細書に開示する発光型ディスプレイは、分光器のためにディスプレイに空隙を残したり、ディスプレイの周囲にスペースを残したりすることなくディスプレイのアクティブエリアを端まで延在できるよう、モバイル機器の前面を分光器と共有するように構成される。したがって、ディスプレイの下に配置された分光器がディスプレイを通して電磁放射線(たとえば、光)を受光でき、かつディスプレイ自体が格子として動作して受光した放射エネルギーを分光の検知と解析のために波長に分けることができるよう、分光器を覆う本開示のディスプレイパネルの1つ以上の部分を構成できる。
【0026】
図1Bは、ディスプレイ112が端に向けて拡張されたモバイル機器102を示す図である。光学装置のために確保された領域からディスプレイが排除されたモバイル機器とは異なり、ディスプレイ112の発光(すなわち、アクティブ)エリアは、前面のほぼ全体に渡って広がっている。したがって、モバイル機器102の前面のほぼ全体を使って、カラー画像や、黒白画像や、グレースケール画像、グラフィックス、および/または文字を提供できる。いくつかの実施態様では、ディスプレイ112は、1つ以上の領域120を含み、その背後(すなわち、下)に分光器が配置されてもよい。
【0027】
領域120の大きさ、形状、および/または配置は、様々に実装されてもよい。たとえば、図1Bに示す領域120は、丸形(たとえば、円形)であり、ディスプレイ112の端から離れて配置されている。このようである必要はない。たとえば、領域120の形状は四角形とすることができ、ディスプレイ112の端に沿って領域120を配置できる。
【0028】
図2Aは、領域120A、120Bがあるディスプレイ112を有するモバイル機器の側面断面図を示し、電磁放射線は、領域120A、120Bを通って背面にある光学装置、たとえば、カメラまたは分光器まで透過できる。モバイル機器は、複数の光学装置140A、140Bを備え得る。光学装置140A、140Bの各々は、それぞれ異なる領域120A、120Bの背後に配置される。図2Bは、複数の光学装置140A、140Bが使用する1つの領域があるディスプレイ112を有するモバイル機器の側面断面図を示す。
【0029】
光学装置140A、140Bは、領域120A、120B、120Cを通して電磁放射線125を伝送および/または受信し得る。本開示は、全体的に、(たとえば、電磁スペクトルのミリ波部分、可視部分、または赤外線部分から)電磁放射線を伝送または受信するように構成される光学装置のいずれにも適用できるが、本開示の全体を通して、可視光および/または赤外光を受光するように構成された分光器の具体的な実施態様について考える。
【0030】
いくつかの実施態様では、背面にあるセンサーまで光が通過するディスプレイ112の領域120A、120B、120Cは、ディスプレイの残りの箇所と同じ画素密度および/または画素配置であってもよい。いくつかの実施態様では、背面にあるセンサーまで光が通過するディスプレイ112の領域120A、120B、120Cは、ディスプレイの残りの箇所とは異なる画素密度および/または画素配置であってもよい。たとえば、いくつかの実施態様では、ディスプレイの残りの箇所の表示領域の画素解像度は、分光器まで光を透過させるディスプレイの領域120A、120B、120Cの画素解像度よりも高くてもよい。図3Aは、発光型ディスプレイの高解像度部分の画素および信号線を示す図であり、図3Bは、発光型ディスプレイの低解像度部分の画素および信号線を示す図である。図3Aおよび図3Bでは、ディスプレイの画素は、それぞれ異なる色を発する複数の
発光素子(たとえば、発光ダイオード)を含み得、当該異なる素子からの光の混合量ごとに、画素によってすべての見える色が作られる。たとえば、いくつかの実施態様では、1つの画素は、1つの赤色LED302と、1つの青色LED304と、2つの緑色LED306とを含み得る。ディスプレイの低解像度部分では、高解像度部分よりも多くの光がディスプレイを通過する。しかしながら、ディスプレイを通過する光は、縦(Y)方向および/または横(X)方向に延びる信号線242に接触する可能性がある。
【0031】
図4は、図1Bのモバイル機器とともに使用するのに適した発光型表示パネル200の側面断面図を示す。一実施態様において、ディスプレイパネル200は、AMOLEDディスプレイであってもよい。様々なその他のディスプレイ技術(たとえば、LCD、LED)に本開示の原理を適用できるが、本開示の全体を通して、AMOLEDディスプレイの実施態様について考える。
【0032】
図4に示すように、AMOLEDディスプレイパネル200は、複数の層を含む。これらの層は、カバーガラス層210の背後(すなわち、下)に配置されている。カバーガラス層210は、モバイル機器102の前面を形成し得る。実現可能な実施態様では、ディスプレイパネル200は、偏光膜層215を含み得る。また、ディスプレイパネル200は、タッチセンサ電極222を含んだタッチセンサ層220を含み得る。ディスプレイの画素237は、陰極層230、OLEDエミッタースタック235、および陽極層236の別個の素子から形成される。陽極層236の素子は、陽極層236から縦(Z)方向に光が向けられるよう、反射型素子であってもよい。陽極層236の素子は、信号線242を通じて送信される電気信号により制御できるソース、ゲート、およびドレインを含むTFT(薄膜トランジスタ)構造240に連結できる。ディスプレイパネル200は、SiNxまたはSiONxの障壁層245と、PI(ポリイミド)の基板層250とをさらに含み得る。熱を拡散したり電気を遮蔽したりするための金属層/膜410をディスプレイパネル200の下に配置して、たとえば、CPU、GPUなど、モバイル機器が備える発熱素子、および真下の電気部品からの電気信号ノイズによって生じた局所的な高温箇所からディスプレイを保護できる。
【0033】
ディスプレイパネル200の層は、透過型回路素子および非透過型回路素子を含んでもよい。たとえば、TFT構造240、画素237、信号線242、および/またはタッチセンサ電極222はすべて、ディスプレイパネル200を通して伝搬する光を遮断してもよい。光は、非透過型(たとえば、不透明)回路素子によって反射できたり、吸収できたりする。これに加えて、光が相互作用し得る空隙(たとえば、周期スリット)の範囲を回路素子が定めてもよい。たとえば、光は、同じ層の隣接する回路素子の間に形成された空隙によって回折されてもよい。また、同じ層の素子による回折よりも効果は弱いが、それぞれ異なる層の回路素子の間の空隙によって光が回折されてもよい。
【0034】
図5は、ディスプレイの回路素子によって光が回折された図4のディスプレイパネル200の一部の側面断面図である。図に示すように、光300Aは、隣接するタッチセンサ電極222Aと222Bとの距離および隣接する画素237Aと237Bとの距離が光の波長よりも大きい場合に著しく変化させられることなく、電極222Aと222Bとの間、および画素237Aと237Bとの間を通り得る。しかしながら、間に狭い空隙を有して互いに近くに配置された2つの隣接する信号線242A、242Bの間に形成された空隙によって、光300Aを回折できる。光300A、300Bの波長に相対する空隙の寸法によって、光に与える空隙の影響が決まり得る。たとえば、光の回折度合いは、光の波長(「λ」)と比較した空隙(「d」)の相対的な大きさによって異なり得る。d>>λである場合、回折はほとんどなく、d<<λである場合、空隙を通過する光はほとんどない。しかしながら、d~λである場合、光の著しい回折が生じ得る。したがって、形成される空隙が適切な寸法の空隙であれば、回路素子のその他の組合せによって形成される空
隙によって光が回折されてもよい。たとえば、信号線242CとTFT構造240との間に形成される第1の空隙、および隣接する信号線242Aと242Bとの間の第2の空隙の、これらの空隙を通過する光の波長と比較した相対的な大きさがそれぞれ異なる場合、第1の空隙によって回折される光300Bは、第2の空隙によって回折される光300Aとは異なるように回折され得る。
【0035】
光が回折すると、回折光320A、320Bが回折角全体に分散されるよう、回折は光の一部の伝搬方向を効果的に変化させると解釈され得る。一般に、ディスプレイの空隙が狭いほど、回折角は大きくなる。
【0036】
ディスプレイパネル200を通過する光を、ディスプレイの下に位置するセンサー(たとえば、ディスプレイの下に位置するカメラのセンサー)に光学的に投影する場合、センサー電極222A、222B、画素237A、237B、信号線242A、242B、242C、およびTFT構造240による光の回折は障害となり得るが、ディスプレイの回折素子による光の回折を有利に利用して、ディスプレイパネル200を通過する光についての分光情報を取得できるようになる。
【0037】
たとえば、図6は、発光型表示パネル200の回折素子による光の波長依存回折の概略図である。入射する広スペクトル光602は、発光型ディスプレイの回折素子、たとえば、タッチセンサ電極222と相互作用し得、広スペクトル光のそれぞれ異なる波長は、それぞれ異なる量だけ回折され得る。回折光604は、(たとえば、レンズ606によって)光センサーアレイ608に投影され得る。光センサーアレイ608では、アレイ608のそれぞれ異なる画素上で、それぞれ異なる範囲の波長が分解される。いくつかの実施態様では、レンズ606の代わりにファイバーオプティックプレートを代用することができ、これにより、発光型ディスプレイの回折素子と光センサーアレイとの距離を小さくできたり、湾曲した像面を設けたりすることができるようになる。別個に分解された波長範囲のそれぞれの強度を用いて、入射光のスペクトログラムを特定できる。ディスプレイパネル200の下に熱拡散層610を配置して、たとえば、CPU、GPUなど、モバイル機器が備える発熱素子による局所的な高温箇所からディスプレイを保護できる。熱拡散層610は、金属を含んでもよく、光学的に不透明であってもよく、層610に作られた小さな開口部を有し、光をディスプレイを通過させてディスプレイパネル200の下に位置する光センサーアレイ608まで届けてもよい。
【0038】
図6の模式図は、回折素子の一端との光線の相互作用による、簡略化した回折パターンを示す。実際には、入射光は、発光型ディスプレイ200が備えるより複雑なパターンの複数の回折素子によって回折される。たとえば、再び図3B参照して、複数のLEDと複数の信号線とを各々が含む複数の画素を備えるディスプレイの一部を通過すると、入射光は、複数の素子によって回折される。しかしながら、発光型ディスプレイの回折素子の空間的周期性により、ディスプレイは、入射光のための2次元回折格子として機能できる。図7は、発光型ディスプレイが備える実際の回折素子の2次元アレイによって回折される光の実測点像分布関数を示す図である。ここで、図7に示す点像分布関数では、発光型ディスプレイの2次元パターンの回折素子の空間パターンの特徴を反響させている。
【0039】
発光型ディスプレイの回折素子による光の回折パターンでの良好な色分解を特徴とする点像分布関数の一部に対応する位置および向きで、光センサーアレイ608が発光型表示パネル200の下に配置され得る。その後、センサーアレイ上の信号を用いて、発光型表示パネル200を通過して光センサーアレイ608まで届く入射光のスペクトルを特定できる。
【0040】
図8は、発光型ディスプレイ802を有するモバイル機器800の概略図である。発光
型ディスプレイ802は、入射光804がディスプレイ802を通過すると当該光を回折できる周期パターンの回折素子を備える。回折光806は、発光型ディスプレイ802の下の不透明層808のアパーチャを通過でき、(たとえば、レンズ810によって)光センサーアレイ812に投影され得る。光センサーアレイ812は、入射光804のスペクトルを測定できる。いくつかの実施態様では、レンズ810の代わりにファイバーオプティックプレートを代用することができ、これにより、発光型ディスプレイの回折素子と光センサーアレイとの距離を小さくできる。対象の物体814からの入射光804を受光でき、発光型ディスプレイ802の1つ以上のLED818から与えられる光816によって対象の物体814を照射できる。発光型ディスプレイ802が与える光816は、機器800によって決まる分光特性を有し得る。たとえば、AMOLED発光型ディスプレイ802から与えられる光は、ディスプレイが備える個々のOLEDエミッターのバンドギャップに対応する波長の近くで比較的高い強度を有するスペクトルを示し得る。いくつかの実施態様では、発光型表示パネルが与える光とともに使用するために、ディスプレイパネル802の下の光センサーアレイ812を校正できる。たとえば、モバイル機器800を使用して未知の物体から受信したスペクトルを測定する前に、既知の分光感度を有する物体に発光型ディスプレイ802からの光を与えて、与えられた光に応じて物体から受光した光のスペクトルを測定することによって光センサーアレイを校正して、アレイ812のベースライン感度を定めることができる。アレイのベースライン感度は、機器800のメモリに格納され得る。その後、ディスプレイ802から未知の物体に光が与えられると、それに応じてアレイ812が受光する光のスペクトルをベースラインと比較して、未知の物体からのスペクトルを特定できる。いくつかの実施態様では、モバイル機器800を用いて自発光物体のスペクトルまたは周辺光のスペクトルを特定した後、1つ以上のLEDによってもたらされる光816の放射照度分布が対象の波長の範囲にわたるように、光816の分光特性を選択できる。光816は、対象の物体814に当たる周辺光に加えられた場合、物体において対象の波長の範囲にわたって均一な放射照度分布を有する。
【0041】
図9は、周辺光点灯モードで使用された場合のモバイル機器800の概略図である。周辺光は対象の物体814を照射し得、その後、対象の物体814から受光された光は、発光型表示パネル802よりも下にある不透明層808のアパーチャを通過し得、入射光804のスペクトルを測定できる光センサーアレイ812に投影され得る。また、光センサーアレイ812は、発光型ディスプレイ802のパターンの回折素子によって回折された周辺光のスペクトルを測定して、周辺光自体の分光特性を解析できる。周辺光スペクトルについての情報は、たとえば、発光型ディスプレイの明るさを周囲の光に応じて動的に変化させるなどの用途のために用いることができる。
【0042】
タブレット端末またはスマートフォンなどのモバイル機器を背景に本開示のディスプレイを提示した。しかしながら、開示した原理および技術は、より一般的に、センサーをディスプレイの背後に配置することが望ましいいずれのディスプレイにも適用され得る。たとえば、仮想エージェント家庭用端末、テレビ、またはATM(現金自動預け払い機)は、ディスプレイのアクティブエリアの背後に配置されたカメラを利用する非限定の一連のその他の用途である。さらには、分光器をディスプレイの背後に配置するための動機は、機器の端までディスプレイを拡張することに限定されない。たとえば、美的観点や隠す目的で分光器をディスプレイの背後に配置することが望ましい場合もある。
【0043】
本明細書および/または図面では、通常の実施の形態について開示した。本開示は、これらの例示的な実施の形態に限定されない。「および/または」という用語の使用は関連する記載された項目のうちの1つ以上の組合せのいずれかまたはすべてを含む。特記されていない限り、一般的な記述的意味合いで特定の用語を使用したが、限定ではない。本明細書において使用する場合、空間的に相対的な用語(たとえば、~の前、~の背後、~の上、~の下など)は、図示された向きに加えて、使用中または動作中の機器のそれぞれ異
なる向きも含む。たとえば、モバイルコンピューティングデバイスの「前面」とは、ユーザに面した表面であってもよい。この場合、「~の前」という文言は、ユーザ側に近いことを暗に示している。これに加えて、ディスプレイの「上面」とは、ユーザに面した表面であり得る。この場合、「~の下」という文言は、モバイルコンピューティングデバイスの内部の奥側を暗に示している。
【0044】
本明細書に記載したように、上述の実施態様の特定の特徴を例示したが、当業者であれば、多くの改良、置き換え、変更、均等物が思いつくであろう。そのため、添付の特許請求の範囲は、実施態様の範囲に含まれるこれらの改良および変更のすべてを対象として含むことを理解されたい。これらは一例として提示されたに過ぎず、限定ではなく、形式および詳細について様々な変更がなされ得ることを理解されたい。本明細書に記載の装置および/または方法のいずれの部分も、相互排他的な組合せを除く、あらゆる組合せに組み合わされてもよい。本明細書に記載の実施態様は、記載したそれぞれ異なる実施態様の機能、構成要素、および/もしくは特徴の様々な組合せならびに/または部分的な組合せを含み得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折素子を含む表示パネルを備え、前記回折素子は周期パターンを有し、前記周期パターンは、前記表示パネルに入射する光を回折するように構成され、前記回折は波長依存回析であり、
前記表示パネルの下に配置されて、前記周期パターンによって回折されて前記表示パネルを通過する光を受光する光センサーアレイを備え、前記光センサーアレイは、前記表示パネルを通過することによって前記周期パターンによって回折される前記光のスペクトルを測定する、デバイス。
【請求項2】
前記周期パターンは、異なる大きさを有する第1の空隙と第2の空隙とを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記表示パネルは、画素と、前記画素を制御する回路素子とを含み、
前記回折素子は、前記回路素子である、請求項1または請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記画素は、LEDを含み、
前記表示パネルは、発光型表示パネルである、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記発光型表示パネルは、アクティブマトリックス有機発光ダイオード(AMOLED)ディスプレイパネルを含む、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記表示パネルに入射する前記光は、前記LEDから放射されて前記デバイスの外部にある物体によって反射された光である、請求項4または請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記表示パネルは、タッチセンサ電極を含み、
前記回折素子は、前記タッチセンサ電極である、請求項1または請求項2に記載のデバイス。
【請求項8】
前記表示パネルと前記光センサーアレイとの間にファイバーオプティックプレートをさらに備え、前記ファイバーオプティックプレートは、前記光センサーアレイに前記回折された光を投影するように構成される、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記表示パネルと前記光センサーアレイとの間に配置されるレンズをさらに備え、前記レンズは、前記光センサーアレイに前記回折された光を投影するように構成される、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記表示パネルと前記光センサーアレイとの間に不透明層をさらに備え、前記不透明層は、前記表示パネルを通って前記光センサーアレイまで前記回折された光を通過させるように構成されたアパーチャを含む、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記光センサーアレイからの信号を処理するように構成されるプロセッサをさらに備え、前記プロセッサは、前記光のスペクトルに基づいて、製品の原料や成分を特定する、製品の信憑性を判断する、物の状態を判断する、または、健康関連情報を検出する、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記デバイスはモバイルコンピューティングデバイスである、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のデバイス。
【外国語明細書】