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▶ カレン メイクニック テオランタの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084793
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】翼およびタービン装置
(51)【国際特許分類】
   F01D 1/32 20060101AFI20240618BHJP
【FI】
F01D1/32
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059519
(22)【出願日】2024-04-02
(62)【分割の表示】P 2019522793の分割
【原出願日】2017-10-25
(31)【優先権主張番号】16196917.5
(32)【優先日】2016-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519149032
【氏名又は名称】カレン メイクニック テオランタ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】カレン,コルム ジョセフ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、周囲流体内で相対的に動くためのタービン翼と、少なくとも1つの翼を含むタービン装置とを提供する。
【解決手段】翼は、2つの丘構造を有する主桁と、蒸発および凝縮流体を外に向かって、主桁の上を流れる周囲流体へ排出できる排出手段とを含む。これらの丘構造の1つめは、周囲流体の流れを音速に達するまで加速する。第一丘構造の後でマッハ数は増加し続け、蒸発流体が外気に排出されて空気を冷却させ、これは周囲の流れをさらに加速させ、圧力を低減させる。第二丘構造において、より低い圧力は推力を発生させる。マッハ数は、流れが第二丘構造に対して動くにつれて、減少し、第二領域に沿って下るにつれて増加する。凝縮流体が排出され、空気中の水分を放熱しながら凝縮させ、結果としてマッハ数を低下させ、圧力を増加させる。第二丘構造における圧力増加は、ロータを回転するのに使用される推力を生み出す。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲流体内で相対的に動くためのタービン翼であって、前記タービン翼は主桁および排出手段を含み、
前記主桁は上部側壁および下部側壁、前縁、後縁、および前記前縁から前記後縁に延びるキャンバーラインを備えた翼の断面形状を有し、前記翼は前記周囲流体に対して、前記周囲流体が前記主桁の上を前記前縁から前記後縁へ下流方向に流れるように動き、
前記排出手段は流体を外に向かって、前記主桁の上を流れる前記周囲流体へ排出でき、
前記主桁の前記側壁は前記前縁から前記後縁に連続して、第一丘構造および第二丘構造を含み、各丘構造は、前記キャンバーラインからの距離が次第に増加する第一領域と、前記キャンバーラインからの距離が次第に減少する第二領域と、前記第一および第二領域との間の接合部分にある頂上とを含み、
前記第一丘構造の前記第一領域は、前記周囲流体と相互作用するように作動可能で、前記周囲流体を高亜音速の相対速度から、前記第一丘構造の頂上で音速の相対速度に、そして前記第一丘構造の頂上の後で超音速に加速させ、
前記排出手段は、前記第一丘構造の前記第二領域で凝縮が開始する前に前記周囲流体へ蒸発させるために、蒸発流体を排出し、前記第一丘構造の前記第二領域が前記周囲流体と相互作用して、前記周囲流体を超音速の相対速度から高超音速の相対速度に加速させ、
前記第二丘構造の前記第一領域は、前記周囲流体と相互作用可能であって、前記周囲流体を前記第二丘構造の頂上で超音速の相対速度に減速および維持し、
前記排出手段はさらに凝縮流体を排出して前記第二丘構造の前記第二領域の上を流れる前記周囲流体における凝縮衝撃を有核化するように作動可能であって、これは、前記周囲流体を超音速の相対速度から亜音速の相対速度に減速させ、前記側壁に圧力を発生させそれにより前記翼に推力を加えることを特徴とする、
タービン翼。
【請求項2】
前記第一丘構造の上を流れる前記周囲流体に初期凝縮衝撃が発生する前に、蒸発流体が排出される、請求項1に記載のタービン翼。
【請求項3】
前記凝縮流体は、前記第二丘構造の上を流れる前記周囲流体で凝縮衝撃が発生する前に排出される、請求項1または2に記載のタービン翼。
【請求項4】
前記排出手段は少なくとも1つのノズルを含み、前記蒸発流体および前記凝縮流体は、前記翼にある導管の配列を介して、供給源から前記各ノズルに運ばれる、請求項1~3のいずれか一項に記載のタービン翼。
【請求項5】
前記主桁は作動流体を含有する中空の空洞を含み、前記空洞は複数の相互接続したチャンバに分けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載のタービン翼。
【請求項6】
前記各チャンバはバルブ手段を含み、前記バルブ手段は前記チャンバ間の前記作動流体の流れを制御して、前記各チャンバにおける前記作動流体の圧力および/または温度を独立して調整する、請求項5に記載のタービン翼。
【請求項7】
前記蒸発流体は、水、液体窒素、およびメタノールなどの炭化水素のうちの1つまたは組み合わせである、請求項1~6のいずれか一項に記載のタービン翼。
【請求項8】
前記蒸発流体は、タービンの設計寸法の規模において蒸発できる直径の流体粒子を含む、請求項7に記載のタービン翼。
【請求項9】
前記凝縮流体は、水、塩水、または氷粒子の小滴などの、冷却され静電気を帯びた流体粒子を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のタービン翼。
【請求項10】
前記周囲流体は湿った空気である、請求項1~9のいずれか一項に記載のタービン翼。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の少なくとも1つの翼を有するタービン装置であって、前記装置は、タービンシャフト、少なくとも1つのロータ、および導管の配列を含み、
前記少なくとも1つのロータは前記シャフトから軸方向に延び、翼は前記各ロータの先端に担持され、
前記導管の配列は、前記シャフトおよび前記各ロータ内にあって、蒸発および凝縮流体が前記翼に供給されるためにその中を通過し、
前記各ロータは、前記翼の前縁が周囲流体を通過して動き、それによって前記タービンシャフトが回転するように、前記周囲流体と相互作用して回転するように構成される、
タービン装置。
【請求項12】
誘発された前記凝縮衝撃は前記周囲流体内の流体粒子を凝縮でき、前記翼は凝縮された流体を前記装置の少なくとも1つの収集手段に偏向させるように構成され得る、請求項11に記載のタービン装置。
【請求項13】
前記収集手段は、
凝縮された流体内容物が収集チャンバに流れ込むのに通るダクティングに形成される経路、
前記凝縮された流体内容物を前記収集チャンバに偏向する、前記タービンを取り囲むハウジング、網または他の表面の収集表面、および、
前記凝縮された流体内容物を前記タービンシャフトに沿って収集するための、1つ以上のサイクロンもしくは渦管および収集チャンバ
のうちの1つ以上を含む、請求項11または請求項12に記載のタービン装置。
【請求項14】
さらに、回転する前記タービンシャフトによって生成されたエネルギを電気的および/または機械的なエネルギに変換するためのエネルギ変換手段を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載のタービン装置。
【請求項15】
前記エネルギ変換手段は前記タービン装置の前記ハウジング内に設けられ、前記シャフトが前記ハウジングと連結され、電気エネルギを生成するための前記エネルギ変換手段の導電性巻線が前記ハウジング内に設けられる、請求項14に記載のタービン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲流体内で相対的に動くための翼と、翼を有するタービン装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力もしくは潮力の作用を除いて、地球上の全てのエネルギは、直接またはかなりの期間にわたって蓄えられた、太陽そのものに由来するものと言える。太陽が地球を照らすとき、エネルギが多くの作用を引き起こし、気候への影響が最も顕著で、植物および動物の両方がこれを源として維持されることが周知である。太陽のエネルギの多くが、太陽を取り囲む広大な系統を熱するのに使用されるが、太陽のエネルギの大部分が、広範な水域からなどの水を蒸発させる。このような蒸発は、降雨をもたらし、膨大な量の水蒸気を維持し、その小さな部分は蓄積して凝縮した雲を形成することがある。従来の電力源は、太陽エネルギの1%未満を使用する、葉緑素および他の有機的な作用に由来する。
【0003】
再生可能エネルギの風車は、蒸発および凝縮作用を利用して仕事および電力を生成することが知られている。最近開発されたのは、バートン(Barton)の予熱膨脹エンジンおよびEOLA風力タービンである。これらの機械は、限られた状況で、エネルギ(Barton製)および水(EOLAタービン)を供給するように使用される。Bartonエンジンは、非常に程度の低いエネルギ効率に対して、予熱された乾燥した空気と蒸発している水とを必要とし、ソーラアレイなどのタービン排出または予熱乾燥空気に制限される。EOLAは、従来の空調ユニットに取り付けられる従来の空気タービンである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周知の装置は、電力を生成するために、断続的な風速および/または、太陽光発電などの、予備の従来の発電機を必要とする補助的なエネルギ源に頼っている。本発明の目的は、上記の課題を少なくともいくらか克服し、および/または、公共および/または産業に有益な選択肢をもたらす、翼とタービン装置とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のさらなる態様は、例示のみによって与えられる以下の説明によって、明らかになるであろう。
【0006】
本発明に従って、周囲流体内で相対的に動くためのタービン翼がもたらされ、タービン翼は主桁および排出手段を含む。主桁は上部側壁および下部側壁、前縁、後縁、および前縁から後縁に延びるキャンバーラインを備えた翼の断面形状を有し、翼は周囲流体に対して、周囲流体が主桁の上を前縁から後縁へ下流方向に流れるように動く。排出手段は流体を外に向かって、主桁の上を流れる周囲流体へ排出できる。本発明は、次のことを特徴とする。主桁の側壁は前縁から後縁に連続して、第一丘構造および第二丘構造を含む。各丘構造は、キャンバーラインからの距離が次第に増加する第一領域と、キャンバーラインからの距離が次第に減少する第二領域と、第一および第二領域との間の接合部分にある頂上とを含む。第一丘構造の第一領域は、周囲流体と相互作用するように作動可能で、周囲流体を、高亜音速の相対速度から、第一丘構造の頂上で音速の相対速度に、そして第一丘構造の頂上の後で超音速に加速させる。排出手段は、第一丘構造の第二領域で凝縮が開始する前に周囲流体へ蒸発させるように、蒸発流体を排出し、第一丘構造の該第二領域が周囲流体と相互作用して、周囲流体を超音速の相対速度から高超音速の相対速度に加速させる。第二丘構造の第一領域は、周囲流体と相互作用可能であって、周囲流体を第二丘構造の頂上で超音速の相対速度に減速および維持する。排出手段はさらに凝縮流体を排出して第二丘構造の第二領域の上を流れる周囲流体における凝縮衝撃を捉えまたは有核化するように作動可能である。これは、周囲流体を超音速の相対速度から亜音速の相対速度に減速させ、側壁に圧力を発生させそれゆえに翼に推力を加える。
【0007】
本発明は空気中の水分から直接、仕事および電力を生み出すための翼を提供する。この翼は、風速に頼らず、そのエネルギ源は常に入手可能な周囲の空気から直接生成される。さらに、凝縮された水分は豊富な水であり、使用中に、冷却、空調、および低温の超電導を許容する。最終的に、余熱が即時の局地的な要求に対して使用され得る。
【0008】
翼の特徴的な設計は、その長さ方向に備えられる2つの丘構造をもたらす。これらの丘構造の1つ目は、周囲流体の流れを、音速に達するまで加速させる。第一丘構成の後、面積が増加するにつれて、マッハ数が超音速に増加し続ける。水滴の噴霧などの、蒸発流体は、第一丘構造の下り坂または底部のいずれかに沿って、周囲に排出される。これらの蒸発は空気を冷却させる。これは、次に、周囲流体をさらに加速させ、圧力を低下させる。第二丘構造において、より低い圧力が推力を発生させる。流れが第二丘構造に対して動くにつれて、マッハ数は第一領域に沿って減少し、第二領域に沿って下るにつれて増加する。この第二丘構造に沿った点において、マッハ数は凝縮マッハ数に達する。この点においてもしくはその前に、凝縮流体が排出され、空気中の含水量を放熱しながら凝縮させる。これはマッハ数を低下させ、圧力を増加させる。第二丘の第二領域で増加した圧力は、ロータを回転させるのに使用できる推力を生み出す。
【0009】
本発明は、周囲空気の凝縮および蒸発を制御して、放出された熱が仕事を生み出すのに利用できるようにする、翼およびタービン装置に関係する。そのため、本発明は従来技術の上記の限定によって制限されず、primary再生可能エネルギおよび集水装置をもたらす。
【0010】
本発明の他の実施形態では、初期凝縮衝撃が発生する前に、蒸発流体が排出され、第一丘構造の上を流れる周囲流体における初期凝縮衝撃を防ぐ/相殺する。
【0011】
本発明の他の実施形態では、凝縮流体は、第二丘構造の上を流れる周囲流体で凝縮衝撃が発生する前に排出される。
【0012】
本発明の他の実施形態では、排出手段は少なくとも1つのノズルを含み、蒸発流体および凝縮流体は、翼にある導管の配列を介して、供給から各ノズルに運ばれる。ノズルの様々なピンホールの大きさまたはノズルが、排出された流体の様々な流速よび液滴直径を可能にする。
【0013】
本発明の他の実施形態では、主桁は作動流体を含有する中空の空洞を含み、空洞は複数の相互接続したチャンバに分けられている。
【0014】
本発明の他の実施形態では、各チャンバはバルブ手段を含み、バルブ手段はチャンバ間の作動流体の流れを制御して、各チャンバにおける作動流体の圧力および/または温度を独立して調整する。
【0015】
本発明の他の実施形態では、蒸発流体は、水、液体窒素、およびメタノールなどの炭化水素のうちの1つまたは組み合わせである。
【0016】
本発明の他の実施形態では、蒸発流体は、タービンの設計寸法の規模において、蒸発できる直径の流体粒子を含む。これおよび他の周囲環境要素を考慮するために、液滴直径は、可変な出力の大きさと、可変な流速と、可変な圧力および温度とによって変えられ得る。これらの条件はダクティング、チャンバ、および可変なノズルの大きさによって決められる。回転するヘッドの遠心力または外部の揚水は、気体の圧縮および/または温度管理のために外気と熱交換することによって、これらの条件を管理する。
【0017】
本発明の他の実施形態では、凝縮流体は、水、塩水、または氷粒子の小滴などの、冷却され静電気を帯びた流体粒子を含む。
【0018】
本発明の他の実施形態では、周囲流体は湿った空気である。
【0019】
本発明のさらなる態様において、先行する請求項のいずれか1つに係る少なくとも1つの翼を有するタービン装置が提供され、装置は、次のものを含む。タービンシャフトと、シャフトから軸方向に延びて、その先端で翼を運ぶ少なくとも1つのロータ。蒸発および凝縮流体が翼に供給されるのに通る、シャフトおよび各ロータ内の導管の配列。各ロータは、翼の前縁が周囲流体を通過して動くことによってタービンシャフトが回転するように、周囲流体と相互作用して回転するように構成される。
【0020】
本発明のタービン装置は蒸発および凝縮作用によって生成されたエネルギ貯蔵を利用して、電気または使用可能なエネルギ形態に変換できるエネルギを供給する。そうすることで、タービン装置は空気の水分をエネルギ源として使用して、空気から電力を生成するであろう。乾燥した気候で作動されるとき、出力として生成される凝縮された水は、洗浄のために収集および使用されることがある。
【0021】
従って、本発明は仕事および電力を空気中の水分から直接生み出す。これは風速に頼らず、そのエネルギ源は常に入手可能な周囲の空気から直接生成される。凝縮された水分は豊富な水であり、冷たい核は使用中に、冷却、空調、および低温の超電導を許容する。いかなる余熱も即時の局地的な要求に対して使用され得る。
【0022】
本発明の他の実施形態では、誘発された凝縮衝撃が周囲流体内の流体粒子を凝縮でき、翼は凝縮された流体を装置の少なくとも1つの収集手段に偏向させるように構成され得る。
【0023】
本発明の他の実施形態では、収集手段は、凝縮された流体内容物が収集チャンバに流れるのに通るダクティングに形成される経路、凝縮された流体内容物を収集チャンバに偏向する、タービンを取り囲むハウジング、網または他の表面の収集表面、および、凝縮された流体内容物をタービンシャフトに沿って収集するための、1つ以上のサイクロンもしくは渦管および収集チャンバのうちの1つ以上を含む。
【0024】
本発明の他の実施形態では、タービンはさらに、回転するタービンシャフトによって生成されたエネルギを電気的および/または機械的なエネルギに変換するためのエネルギ変換手段を含む。
【0025】
本発明の他の実施形態では、エネルギ変換手段はタービン装置のハウジング内に設けられ、シャフトがハウジングと連結され、電気エネルギを生成するためのエネルギ変換手段の導電性巻線がハウジング内に設けられる。
【0026】
本発明は、遷音速の翼または、任意でロータおよび軸方向のハブを含む回転体を有する、電力を生産可能なエンジンを提供する。翼または回転体は、縮小断面に隣接して、そして最小断面でもしくは最小断面の前にあって、蒸発噴霧または気体がノズルから導入される超音速ポケットを有する。これは後続の拡大断面における圧力を低減するように調整される。最大断面においてもしくはその付近で、後続の凝縮を有核化するためにさらなる噴霧が導入され得る。最大断面の後に、縮小断面部分は凝縮衝撃を発生させる。先に導入された液状噴霧はこれらの一過性液滴を捉えるために核を供給する。これらの、一般的に水である液体または気体は、適切な内部ダクティングを備えたロータによって、ハブから翼または回転体に運ばれ得る。凝縮衝撃は超音速のポケットを終了させ、気流を亜音速に戻して装置の背面に圧力を与える。
【0027】
エンジンは、電力を生産するため、ハブから軸方向の仕事を抽出するため、ロータの回転を持続するため、凝縮された水を抽出するため、低温および超電導の目的のために先端における非常に冷たい状態を利用するため、または回転している装置の遠心力による揚水を利用するために、使用され得る。
【0028】
本発明は、添付図面を参照しながら例としてのみ示されるいくつかの実施形態についての後続の説明から、より明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明による翼の斜視図である。
図2図1の翼の端面図である。
図2a図1および2の翼の回転体の線図である。
図3図1の翼の側面線図である。
図4図1から3による翼を含むタービンの斜視図である。
図5図4のタービンの切取部分の詳細な斜視図である。
図6図3のタービンを実装する集水装置の斜視図である。
図7a図3のタービン装置内の水流を示す斜視図である。
図7b図3のタービン装置内の水流を示す斜視図である。
図7c図3のタービン装置内の水流を示す斜視図である。
図8】翼の中央部分全体に超音速流が存在する、安定した状況におけるマッハ数の外形を示すグラフである。
図9】翼の中央部分を通過する亜音速流が存在する、不安定な状況におけるマッハ数の外形を示すグラフである。
図10】異なる出口圧力に対するノズルを通る圧力変動を示すグラフである。
図11図3のタービンに使用される翼に関する形状設計を示す概略図である。
図12】10Kの冷却に関して、様々な温度および湿度に対する凝縮後のマッハ数を示す表である。
図13】10Kの冷却に関して、様々な温度および湿度に対する沈下深さの表である。
図14】タービン装置に関する推力計算のための入力パラメータを示す表である。
図15】蒸発が開始する前の、マッハ数の外形を示すグラフである。
図16】蒸発の後のマッハ数の外形を示し、蒸発が発生する領域を示すグラフである。
図17】凝縮後のマッハ数の外形を示し、凝縮が発生する領域を示すグラフである。
図18】出口圧力が大気圧に上昇した後のマッハ数の外形を示し、凝縮後の衝撃波を示すグラフである。
図19】ブレイトンサイクルに関する作業サイクルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
複数の図と最初に図1および2を参照すると、湿った空気などの周囲流体内で相対的に動くための、概して符号1で示されるタービン翼が図示される。翼1は、概して符号3で示される上部側壁、および概して符号4で示される底部側壁、前縁5、および後縁6を伴う、翼の断面形状を有する主桁2を含む。前縁5から後縁6にキャンバーライン7が延びる。翼1は、矢印「A」(図1)の方向に、周囲流体に相対的にまたは周囲流体を通過して動くので、周囲流体は前縁5から後縁6へ下流方向に主桁2の上を流れる。
【0031】
図2は翼の断面図であって、図2aは図2の翼の回転体を図示し、図示される一例では拡張して先細りになっている円筒形状を示し、本発明の一般的な設計原理を実装する翼型形状の一例である。先端渦に対処するための筐体が使用されない場合などにおいて、要求または所望されるように、円筒形の外形が翼の先端5、6に適用され得る。
【0032】
主桁2は前縁5から後縁6に連続して、第一丘構造8および第二丘構造9を含む。各丘構造8、9は、キャンバーライン6からの距離が次第に増加する第一領域8a、9a、キャンバーラインからの距離が次第に減少する第二領域8b、9b、および第一領域8a、9aと第二領域8b、9bとの間の接合部分に頂上8c、9cを含む。図1および2で、丘構造は上部側壁3および底部側壁4の両方に図示されているが、丘構造は要求もしくは所望されるように、翼の上部および/または底部側壁に位置してもよいことが理解されるであろう。後続の説明は、上部側壁3に設けられる丘構造のみを参照するが、限定するものとしてみなされるべきでない。
【0033】
主桁2は作動流体を含有する中空の空洞を含み、空洞は複数の相互接続したチャンバに分けられている。各チャンバにおける作動流体の圧力および/または温度が独立して調整され得るように、チャンバ間の作動流体の流れを制御できるバルブ手段がチャンバ間にある。
【0034】
図3に図示されるように、翼1はさらに、概して符号10で示される排出手段を含み、排出手段は蒸発流体12または凝縮流体13を主桁2から外側に、主桁2の上を流れる湿った空気に排出する。排出手段は少なくとも1つのノズル(図示なし)を含み、翼1から排出される流体は、翼1の主桁2の中にある、もしくは翼1の主桁2に沿って配置される、導管または導管11の配列を介して、供給から各ノズルに運ばれる。
【0035】
蒸発流体12は、水、液体窒素、およびメタノールなどの炭化水素のうちの1つまたは組み合わせであって、翼を使用するタービンの大きさおよび規模に従って、蒸発できる直径の流体粒子を含む。これと他の周囲環境要素とを考慮するために、液滴直径は、可変な出力の大きさと、可変な流速と、可変な圧力および温度とによって変えられ得る。
【0036】
凝縮流体13は冷却され静電気を帯びた流体粒子を含む。適切な凝縮流体の例は、水、塩水、または氷粒子の小滴を含む。
【0037】
翼が周囲流体に対して動いているとき、第一丘構造8の第一領域8aは、周囲流体と相互作用するように作動可能で、周囲流体を、第一丘構造8の頂上8cを越えて高亜音速の相対速度から、音速の相対速度に加速させる。
【0038】
排出手段10は次に、第一丘構造8の第二領域8bが周囲流体と相互作用して、周囲流体を低超音速の相対速度から高超音速の相対速度に加速させるように、第一丘構造8の第二領域8bで凝縮が開始する前に周囲流体へ蒸発させるために、蒸発流体12を排出する。従って、第一丘構造8の上を流れる周囲流体に初期凝縮衝撃が発生する前に、蒸発噴霧が排出される。
【0039】
第二丘構造9の第一領域9aは、周囲流体と相互作用可能であって、周囲流体を第二丘構造9の頂上9cを越えて超音速の相対速度に減速および維持し、排出手段10はさらに凝縮流体13を排出して第二丘構造9の第二領域9bの上を流れる周囲流体における凝縮衝撃を捉えまたは有核化するように作動可能である。従って、凝縮流体または噴霧が、第二丘構造9の上を流れる周囲流体で凝縮衝撃が発生する前に排出される。これは、周囲流体を超音速の相対速度から亜音速の相対速度に減速する効果があり、同様に主桁2に圧力を発生させそれゆえに翼1に推力を加える。
【0040】
図4および5を参照すると、図1から3に使用されるものと同じ符号を使用して、図1から3に従って構成される少なくとも1つの翼1を含む、概して符号20で示されるタービン装置が示される。
【0041】
装置20はタービンシャフト21と、シャフト21から軸方向に延びる少なくとも1つのロータ22とを含み、図1から3の翼1が、各ロータ22の概して符号23で示される先端もしくは末端に備えられている。蒸発および凝縮流体が翼1の導管11に供給されるのに通る、シャフト21および各ロータ22内の導管の配列も設けられている。
【0042】
使用中に、タービン装置20は、各翼1の前縁5が周囲流体を通過して動き、それによってタービンシャフト21が回転するように、各ロータ22が周囲流体と相互作用して回転するように、構成される。
【0043】
操作中に、翼1が周囲流体に対して動くとき、第二丘構造9でもしくはそれに隣接して誘発された凝縮衝撃が周囲流体内の流体粒子を凝縮でき、翼1は凝縮された流体をタービン装置20の少なくとも1つの収集手段に偏向させるように構成される。一実施形態においては、凝縮された流体内容物をタービンシャフト21に沿って収集するために、1つ以上のサイクロンもしくは渦管および収集チャンバが設けられることがある。異なる実施形態では、収集手段は、凝縮された流体内容物が収集チャンバに流れるのに通るダクティング24に形成される経路を含む。
【0044】
図6は、図4および5のタービン装置20を含み、さらなる集水手段を実装する、集水装置30を示す。集水装置30は装置の中心から吹き出すまたは中心に向かって吹き込む回転する空気の円柱を作り出すことが可能である。集水装置30はシャフト21の両端にベンチュリ管31を含み、各ベンチャー管31のスロートの前の一組の固定子32は、固定子32に入る高速で低圧の流体小滴の気流に回転を生じさせることができる。ピンホール33の収集リングがダクティング24に沿って設けられ、収集タンク35に流出させる低圧チャンバ34によって支持されている。さらなる組の固定子36がスロートおよびピンホール33の後に設けられ、回転を低減させて気流エネルギおよび圧力を回復させることができる。収集タンク35は水の液滴を含む外向きの気流を取り囲み、タンク35の表面はタンク35に集まる衝突液滴を収集することができる。
【0045】
タービン装置20はまた、回転するタービンシャフト21によって生成されたエネルギを電気的および/または機械的なエネルギに変換するためのエネルギ変換手段を含む。任意で、エネルギ変換手段はタービン装置20のハウジング内に設けられ、シャフト21がハウジングと連結され、電気エネルギを生成するためのエネルギ変換手段の導電性巻線がハウジング内に設けられる。
【0046】
本発明のタービン装置が変動を利用する、ブレイトンサイクルの作業サイクルを示す図19を参照しながら、本発明の作業サイクルが説明される。本発明のタービン装置は最も低い温度(3-4)を低減しようとする。通常、これは、排出温度が周囲空気であることによって制限される。この機械において、排出温度はセ氏マイナス60または70度程度の場合がある。静的温度減少(3-4)は空気力学的で、速度における等エントロピーの増加によって発生する。排熱(4-1)は蒸発に影響される。温度上昇(1-2)は空気力学的で、速度におけるほぼ等エントロピーの減少によって発生する。加熱(2-3)は凝縮または炭化水素を燃焼することによって行われる。蒸発と凝縮との間の均衡がよく図示され、このサイクルで計算できることに留意されたい。実際は、蒸発の流れで凝縮を均衡化するのを制御するのが最も簡単である。これは、流れの量および液滴の大きさが、バルブおよび可変のピンホール配列によって管理される必要があることを意味する。
【0047】
提案されるタービンシステムは、垂直軸に取り付けられる回転子である。実際のタービンは回転子の先端に位置し、装置はフェアリーロートダインのヘリコプタなどのチップジェットに類似する原理で作動する。タービンからの推進力が回転子を円形に押す推力を生成する。ヘリコプタと異なり、目的は運動を揚力を発生させるように使用するためではなく、むしろ電力を生成するためである。
【0048】
図4から6に示されるダクト付きの設計では、遷音速の先端が停止したダクト内に取り付けられる。水噴霧は中心シャフトを伝ってロータを通り先端に行き、外気に加えられる。図7に図示されるように、空気は装置を通って引き込まれ、装置から水噴霧を除去する。
【0049】
流体がその波速より大きな速度で動き始めると、超音速流が発生する。このタイプの流れの最も明らかな応用は、定期的に音の壁を「突破する」ことを求められる軍用機の設計である。流体がその波速より速く動くとき、情報はあり得る障害物周りの上流を通過できない。結果として超音速流は、日常の状況においてより一般的である亜音速流とは大きく異なる。
【0050】
超音速領域における主な支配方程式は、等エントロピー流方程式である。これらの方程式は、観察される圧力、温度、密度、および面積変化と、流れのマッハ数との関係を表す。
【0051】
これらの方程式は、以下のとおりである。
マッハ数:
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
記号
M=マッハ数、V=速度、R=気体定数、T=温度、P=圧力
A=面積、γ=比熱比、ρ=密度、Φ=相対湿度、Y=スロート
X=長手方向距離
下付き文字/上付き文字
0=澱み特性、*=チョーク特性
【0052】
これらの方程式は、流れのマッハ数が増加すると、静圧および温度が下降することを示す。熱伝導がない限り、澱み特性は同じままである。超音速領域でマッハ数が1から増加するにつれて面積も増加するが、亜音速領域で1から変化するにつれてもまた同様に増加がみられる。
【0053】
空気における凝縮の作用は、空気の温度および蒸気量に依存する。任意の温度に対して、気圧は次のように計算できる。
P=ρRT 方程式5
ここでpは密度、Rは空気の気体定数、Tはケルビンでの温度である。
【0054】
空気は一定量の水蒸気からなり、凝縮に関する重要な項の1つは、この蒸気の分圧である。分圧とは、空気圧に相対湿度を乗じたものである。他の重要な項は、飽和圧力である。これは水が凝縮する圧力であって、次の方程式から求められる。
P=133.322e(20.386-5132/T)
【0055】
分圧が飽和圧力より大きい場合、凝縮が開始するであろう。同様に、分圧が飽和圧力より小さい場合、水が蒸発するであろう。
【0056】
超音速流を加熱する影響は、マッハ数、温度、および圧力がすべて相互依存しているため、複雑である。一つの単純化は、蒸発または凝縮のいずれかによって生じる気温変化が、一定の面積で同じように起こると仮定することである。このことは、凝縮の場合、これらの変化がほぼ瞬時に生じることを意味する。これらの条件において、加熱の影響は、各特性がチョーク条件下のその値に関連している、レイリー方程式から求められる。これらの方程式は、
圧力:
【数5】
【数6】
【数7】
【0057】
温度変化の影響は、マッハ数に関連しており、それゆえに気体の圧力および密度における変化を計算するのに使用され得る。
【0058】
本発明のタービン装置を設計する際の本質的な問題の1つは、流れの安定性である。安定性が損なわれ得る1つの状況は、2つの丘の間の部分(中央部分)における流れが亜音速になるときである。もしこれが発生する場合、第二丘の前向き部分が高圧領域になるであろう。これは内部構造の抗力を増加させ、装置の潜在的な推力を低減させるであろう。
【0059】
図8は、中央部分全体に超音速流を伴う、安定した状況におけるマッハ数の外形を示す。逆に、図9は中央部分全体に亜音速流を伴う、不安定な状況におけるマッハ数の外形を示す。
【0060】
どのようにこの部分が気流を亜音速に変えるかを考慮する際、中央部分を、よく研究された同様のケースであるロケットエンジンノズルの中央部分と比較することが役に立つ。
【0061】
図10は、(Courant & Friedrichs, 1999)に出典される、異なる出口圧力に関するノズルを通る圧力変動を示す。図10はチャンバ圧力と、ロケットエンジンにおける異なる出口圧力に関するノズルに沿った圧力との関係を示す。もし出口における圧力がチャンバ(P)における圧力に近い場合、流れは全体的に亜音速であるという結果になるであろう。もし出口における圧力がずっと低い値(P)に減少する場合、流れは全体的に超音速になるであろう。出口圧力がこれらの2つの点の間の値になるときに問題が発生する。この範囲における出口圧力で発生し得る現象の1つは、膨脹の間に圧力増加をもたらす、ノズル長さに沿ったある点における垂直衝撃波である。
【0062】
翼の中央部分における気流が亜音速になるとき、一般的にこの種の現象が観測される。流れは翼の第一丘構造の下方で超音速であるが、この丘の下方のある点では、亜音速流をもたらす垂直衝撃波が発生する。図9では、マッハ数の急激な減少および外形の変化として、第一丘の端部で衝撃が見られる。これを阻止するのに重要なパラメータは、第一丘への「出口」における圧力である。超音速条件を維持するために、この圧力は高すぎてはならない。考慮される「出口」圧力は、第二丘構造を超えるために流れが遅くなる際の圧力増加である。もしこの第二丘構造が高すぎる場合、亜音速流が観測されるであろう。この丘の最小スロートは、既定の方法論を使用することによって計算できる。
【0063】
第二丘のスロートに関する計算方法論は、以下のとおりである。
1)もし所定のマッハ数の吸気条件を考慮する場合、澱み圧力は方程式2を使用して計算できる。
2)丘の底部における所望のマッハ数がわかる場合、第一丘の底部における面積が方程式4から計算できる。
3)次の段階は、丘の底部における垂直衝撃波を仮定し、結果として生じるマッハ数を計算することである。
4)衝撃後のマッハ数および丘の底部における面積から、チョーク条件におけるマッハ数が計算され得る。
5)動作余裕を設けるために、マッハ数1.1の面積がチョーク条件から計算される。
【0064】
そしてマッハ数1.1におけるこの面積が、第二丘におけるスロートの最小高さを表す。これより大きなスロートについては、流れがシステム全体で超音速になる。もしスロートがこれより小さい場合、中央部分は亜音速流に分類されるであろう。これは、もし入力マッハ数、第一丘におけるスロート高さ、およびマッハ数がわかる場合、第二丘の高さが計算できるので、タービンの1つのパラメータをもたらす。
【0065】
タービンの動作を妨げ得る条件の1つは、第一および第二丘構造の間の接合部分として理解される、翼の中央部分内で凝縮が発生することである。これに関する本質的な理由は、もし正味の凝縮がこの範囲で発生すると、装置に電力供給するのに必要な蒸発が十分な量発生しないことである。もし、所定の温度において蒸発の分圧が水の飽和圧力より高く上昇すると、凝縮が始まるであろう。これを防ぐために、蒸気の分圧は飽和圧力より低いままでなければならない。
【0066】
計算を処理できる方法が2つある。各方法にはその長所と短所がある。
【0067】
第一方法は、G. Schnerrの論文(Schnerr, 1989)に示される相似則を含み、凝縮が発生するところのマッハ数が相対的な澱み湿度に対して次の関係で関連する。
【数8】
ここで、
【数9】
および、
α=0.208、β=0.59。
【0068】
所定の相対湿度に対して求められる凝縮の開始マッハ数を使用して、中央部分における最大マッハが凝縮開始マッハ数より小さくなるようにすることが選定され得る。そして、選定されたマッハ数を基に、方程式4から装置の最大深さが計算され得る。ここで冷却が考慮される場合、面積を求める前に計算された、凝縮開始および結果として生じる上流のマッハ数に関して、冷却後のマッハが考慮されるべきである。この方法の利点は、凝縮開始のより単純な計算方法を示すが、変数αよびβはノズルの特定の種類に対してただ一定なことである。
【0069】
他の方法は、蒸気圧から開始マッハ数を計算することである。マッハ数が増加するにつれ、圧力温度および密度が減少することが知られている。空気および蒸気の密度から、各々の分子体積が計算できる。そしてこれらから、蒸気の分子率も求められる。
【0070】
分圧は分子率と静圧との積である。もしこの分圧が、所定の点において蒸気の飽和圧力より大きい場合、凝縮が生じるであろう。これらの値は各マッハ数に対して計算され、分圧および飽和圧力が等しいところで開始マッハ数が定められる。このことから、前述の場合のように面積が計算できる。
【0071】
この方法の利点は、形状に関わらず計算できることであるが、計算は凝縮開始の挙動を変更し得るいかなる湾曲も考慮しない。
【0072】
上記の計算から、翼の形状を計算するために方法が確立された。図11は、一方が丘構造の機構を保持し、他方が平坦面であるときの、ダクト付きの状況に対する翼設計の形状を示す。この場合、全体の設計はスロート直径yに関連し得る。
【0073】
および吸気マッハ数がわかると、方程式4を使用してyinが計算され得る。湿度条件から、中央部分における深さYdipおよびマッハ数は、蒸気圧の相似則のいずれかから計算できる。冷却の後のマッハ数および面積Ydipを用いて、第二スロートy2*の高さが計算できる。出口条件youtは、要求されるように凝縮が部分内で発生することを確実にするのに十分大きくなければならない。
【0074】
先に特定される設計パラメータから、タービンに関する一組の操作条件が確立できる。この場合、凝縮開始マッハ数がまず計算される。もしこの数が1より低い場合、凝縮は遷音速領域で開始するであろう。このことは、流れが第一丘を超える前に凝縮が開始することを意味する。これはタービンが作動するのを効果的に防ぐであろう。
【0075】
もし凝縮開始マッハ数が1より大きい場合、空気の蒸気量を考慮して、温度上昇も計算できる。レイリー方程式により、温度が上昇するとマッハ数は減少する。もし凝縮の後のマッハ数が1より小さい場合、流れはその点から亜音速になるであろう。もしマッハ数が1と1.12の間である場合、流れは超音速で、面積が拡大するとマッハ数が1.12に上昇する。この点に到達すると、垂直衝撃波は、流入マッハ数と一致する出口マッハ数0.9をもたらし得る。マッハ数が1.12を上回ると、いかなる衝撃も0.9より低いマッハ数を生じるので、垂直衝撃波が問題を呈するのを防ぐために、何らかの形態の可変形態ノズルが出口で必要となる。
【0076】
図12は、10Kの冷却に関する、様々な温度および湿度に対する凝縮後のマッハ数を示す表である。この表において、矢印Bによって示される領域は、第一丘の前に凝縮が生じるところを示し、矢印Cによって示される領域は、凝縮後の亜音速マッハ数を示し、矢印Dによって示される領域はマッハ数が1.12より小さいところを示し、矢印Eによって示される領域はマッハ数が1.12より上であるところを示す。
【0077】
この表に関して留意されなければいけない考慮点の1つは、これらの場合の多くに関して、第二丘が第一丘から下降して延びる境界層に飲み込まれ得るのに十分なほど、沈下部と第二丘との間の最終的な高さの差異が低いことである。10Kの冷却に関する、様々な温度および湿度に対する沈下深さの表が、図13に示される。
【0078】
このことは緩衝効果をもたらし、流れが沈下部の存在に気が付かず、2つの丘の頂点の間に薄い層が延びる。これらの場合、マッハ数は要求されるように増加しないで、流れを妨害するであろう。高さの増加が、境界層より高くなるのに十分であることを確実にするように注意しなければいけない。
【0079】
本発明のタービン装置の推力の計算は、可能性を示すタービンのうちの1つのCFD分析を使用して実行される。選定されるタービンは温度が30℃で相対湿度が5%の場合を示す。このタービンは装置の作動範囲内で固定され、中央部分の沈下部と第二スロートとの間の高さにおいて十分な差異を示して、境界層が流れに干渉するべきでないことを確実にする。この場合、凝縮を避けるために、計算された臨界形状の詳細が図14に示されている。
【0080】
構成される形状は0.5cmの厚さで、このシミュレーションに適用される初期境界条件は、次のとおりである。
・吸気静圧=101325Pa
・吸気澱み温度=352K
・空気質量流量=0.092kg/s(18.4kg/ms)
・蒸気質量流量=0.000118602kg/s(0.02372kg/ms)
・排気静圧=20000Pa
【0081】
括弧内の値は、装置のメートル幅あたりの質量流量である。シミュレーションはSpairt-Allmaras乱流モデルを用いて実施された。解は流れパラメータの推定を初期化した。これらは、収束の安定を確実にするための、よく考慮された過小評価である。次の設定が初期化に使用された。
・静圧=101325Pa
・x速度=283m/s
・温度=303K
【0082】
安定した方法でシミュレーションを開始するために、流れはまず、結果の収束が達成されるまで、蒸発と凝縮がないと仮定して計算された。ここで、負のエネルギ源を使用して、蒸発が第一丘の底部における区域に加えられた。次に、収束が確立されるまで、シミュレーションが再び実施された。ここで、分圧と飽和圧力との差異によって提示される点で、凝縮がエネルギ源として加えられた。再び、収束が達成されるまでシミュレーションが実施された。最終段階は、出力圧を20000Paから100800Paに増加させることを含んでいた。このことは出口を大気条件に変え、タービンからの出口における動作を正確にモデル化するために、出口衝撃を凝縮のすぐ後に発生するように変えた。
【0083】
303Kで5%の湿気に関して、空気の含水量は1.25g/kgである。抽出される蒸発エネルギは16Kの温度低下または2.22g/kgの蒸発と等しく、一方で凝縮に使用されるエネルギ源は6.98Kの温度上昇または3.47g/kgの凝縮と等しかった。
【0084】
図15は蒸発が開始する前のマッハ数の外形を示すグラフで、図16は蒸発後のマッハ数の外形を示すグラフで、蒸発が起こる領域を示し、図17は凝縮後のマッハ数の外形を示すグラフで、凝縮が起こる領域を示し、図18は出口圧力が大気圧に上昇した後のマッハ数の外形を示し、凝縮後の衝撃波を示すグラフである。
【0085】
この過程が完了したら、結果として生じる推力が壁面上の力の報告から確立され得る。この報告は、吸気と凝縮のすぐ後の末端衝撃との間の内側範囲として定義されるタービンの作業範囲について行われた。これは、タービンの幅1メートル当たり546Nの、作業範囲における正味推力を生成した。この推力はタービンの作業部内の抗力効果を含むが、排気しているロータシステムによる外部抗力効果、出口形状、または吸気と排気との間の高さの差異を含まない。面積を減らして流れを314m/sに再び加速させるために、可変形態ノズルが使用されることがあり、あるいは、亜音速の速度拡散を防ぐために出口深さが減少されることがある。これらの選択肢の両方は、装置のラム抗力を低減させ、一方で生成される推力も低減させ、従って均衡が得られる。
【0086】
全体的に正の推力を達成するために、装置は外部抗力に生成するよりも大きな内部推力を生み出さなければいけない。ここで考慮される有益なパラメータは抗力係数である。これは次の方程式から計算される。
【数10】
ここで、Dはロータシステムの抗力で、Aはロータの面積である。直径1mの3つのロータシステムと、5cmのコードを仮定すると、これは0.075mの面積を生成する。この計算で使用される速度は、先端速度の半分となる平均速度である。そしてこれは、33cmの先端深さ、従って182Nの推力と、通常の空気密度とを有するロータに対して、システムが正の推力を生み出すために、抗力係数が0.14より小さくなければいけないことを意味する。もし、システムの抗力係数を、流線形体に対して一般的な0.04の値まで下げて設計することができる場合、これは50Nの抗力を生み出す。軸受損失と併せると、これは合計で55.1Nの抗力を与える。先端深さが33cmのロータに関して、これは、有効電力の30%が初期電力利得と釣り合うべきであることを意味する。
【0087】
運動する物体に関して、電力は力と速度の積に等しい。314m/sの先端速度で回転しているタービンに関して、これは装置の作業範囲で生み出される総電力が171kW/rnであることを意味する(可変ノズルの損失が含まれるとき、これは内部で155kwにさらに減少する)。これは、蒸発/凝縮サイクルによって生み出される仕事である。直接の損失は、これを外部で133kw/rnに減少させる。
【0088】
この作業は、特定の条件において、タービンが凝縮からのエネルギ放出の影響によって推力の増加を示すことを表す。もし、損失を装置の推力より低く保つように外部ロータ/ポンプを設計できる場合、正味推力が生み出される。装置が回転する速度を考えると、推力の小さな増加でさえ、入手可能な電力の大きな増加を生み出し得る。
【0089】
この作業の間、装置は内部構造であると仮定される。これは外面の存在を意味する。このような構造の空気力学的な設計は、装置の抗力、ゆえに正味電力生産に関する主要な意味を有するので、タービンの操作に極めて重要である。
【0090】
装置の操作条件はとても繊細である。所定の湿度に関して、温度がより高いと、凝縮される空気中の有効水がより多くなる結果になる。これは、有効電力がより大きくなることを意味する。図13が示すように、任意の所定の温度に対して、温度がより高いと、同様に中央部分が下がり得る深さがより大きい。これは、より容易に製造できる装置を生み出すであろう。これらの設計はまた、中央部分と第二丘との間の高さの差異がより大きくなるので、境界層の影響を受けにくい。
【0091】
所定の温度に関して、湿度が上昇すると、有効電力が増加するが、分圧が高くなるので、凝縮がより早く発生するであろう。これは、中央部分が下がり得る深さが減少し、装置が流れをかく乱している境界層の影響をより受けやすくなることを意味する。使用する冷却剤の量を減らすことによって、温度低下は減少し結果として飽和圧力が増加するであろう。湿気に対して使用される冷却剤の量を正確に均衡を取ることによって、所定の物理的設計の作動領域が広がり得る。
【0092】
この分析のために、装置は周囲温度が高く相対湿度レベルが低い条件で作動するように設計される。湿度上昇は、流れの安定を維持するために使用される冷却を減らすことによっていくらか相殺され得る。これらの条件は、暖かく乾燥した気候条件において、装置がより簡単に分析されることを提示するであろう。多量の湿気は「乾燥した」冷却剤を使用することによって対処され、第一丘の後方斜面でさらなる凝縮を発生させる。乾燥した場所では、装置の副産物として生成される凝縮は、とても価値があるので、これは全体としての装置の価値を上昇させる。
【0093】
所定の条件の組に対して、臨界形状は数学的方法のみから得られることに留意する価値がある。境界層の影響を調査し、推力を評価するために、CFDは最も有効な方法を提示する。
【0094】
これらの方法の組み合わせは、タービンに関する操作範囲が存在することを示す。この範囲は温度、相対湿度、および装置に使用される冷却の量の組み合わせによって説明される。もし、一定の温度および冷却に関して、もし湿度が高すぎる場合、流れがチョーク状態になって全体の作用を妨害する前に、凝縮が起こるであろう。タービンそのものの中で、これらの要素が装置の設計に影響を与えることがあるが、冷却量を変えることによって、他の要素のいくらかの変動を補うことができる。水の代わりに窒素のなどの「乾燥」冷却剤を使用することは、水が丘の間で凝縮するときにこのような冷却剤が蒸発されるので、作動領域を広げるであろう。
【0095】
装置がその範囲内で作動され、外部機構における抗力が最小化されるとき、装置は正の推力を生成するであろう。装置が回転する速度において、推力の小さな増加でさえ、かなり大きな電力量を生成し得る。
【0096】
CFD計算から生成される設計は、直径1mの3つのロータシステムである。先端は深さ33cmで、システムは6000rpmで回転する。それは、相対湿度5%および30℃の砂漠条件で作動するように設計される。この装置は133kWの電力を生成し、毎時81リットル(一日あたり1944リットル)の水を生成する。この装置の「燃料」は、湿った新鮮な空気なので、COが生成されず、供給費用も掛からない。最終的に、空気に十分な湿気がある限り、要求に従って装置の電源を入れたり切ったりできる。
【0097】
本明細書で開示される様々な実施形態は、同じ一般的なエネルギ源を有するが、しかしながら電力、水、熱、低温学、部分冷却/加熱または揚水に関する要求が、精密な材料および寸法仕様を変化させ得る。これに併せて、機械が作動しなければいけない一般的な環境は、材料および寸法を規定するであろう。当業者は、高亜音速で効果的に作動するための、滑らかで強固な表面の一般的な必要条件を認識するであろう。
【0098】
これらの設計は高速の風に対して耐性を示し、地震、津波および他の自然災害に対して明白な脆弱性を示さない。実際に、局所的な著しい火災は、豊富な水の供給と、空気から直接引き込まれるポンプ性能とによって対処され得る。
【0099】
本発明は、実行可能なエネルギ抽出に対して、周囲の空気がどれだけ冷たく乾燥しているかにおける制限がある。一般的に、1キログラムの空気につき1グラムより多い水蒸気が必要とされる。これは、温度が-20℃より上でなければならないことを意味する。もし重要な実用性が損なわれる可能性がある場合、代替の方法に頼る必要がある。これ故に、この設計が液体を蒸発させるところで、液体は通常は水であるが、たとえばメタノールなどの、同等の蒸発潜熱を有する炭化水素の場合もある。この設計が、凝縮潜熱によって加熱するところで、熱は該炭化水素空気混合の燃焼の化学的な熱の場合がある。
【0100】
これはもちろん、材料、揚水、および噴霧特性、加えて点火システムを決定するであろう。この要求の実現性によって、それらが実際に使用されたことがなくとも、設計の特徴を決定する場合がある。しかし、このことは、これらの実用性を特定するときに、代替設備が必要とされないことを意味する。燃料はより暖かくより湿度の高い期間に入手可能な余剰電力と合成されるため、これらの状況下で炭化水素を燃焼することは環境に影響を与えない。もし、入手可能な時に余剰電力を使用すると、CO+HO→炭化水素+Oが合成され、燃焼されると、炭化水素+O→CO+HOとなり、はじめに投入された電力のいくらかを還元する。COの純生産量は0であることに留意されたい。
【0101】
従って、電力生産、集水、直流電力生産、低温/超電導環境維持、揚水、加熱または冷却に関する前述の技術の1つ以上を組み合わせることで、仕様が詳細にされ得る。結果として発生する順応性は、要求される1つのまたは複数の目的に対してエンジンを構成するための広い選択肢を設計者に与える。
【0102】
さらなる実施形態
本発明のさらなる実施形態は次のものを含む。
1.実質的に、添付の図を参照しながら本明細書に記載されるおよび/または添付の図に示される、タービン翼。
2.実質的に、添付の図を参照しながら本明細書に記載されるおよび/または添付の図に示される、タービン装置。
【0103】
本発明の態様は、例としてのみ記載されており、添付の特許請求の範囲に規定されるその範囲から逸脱することなく、追加および/または変更が行われてもよいことを理解されるべきである。
図1
図2
図2a
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19