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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084795
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240618BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240618BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240618BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
H01L29/78 652D
H01L29/78 652J
H01L29/78 652M
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653A
H01L29/78 655A
H01L29/78 655B
H01L29/78 655G
H01L29/78 657D
H01L29/78 658A
H01L29/91 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059803
(22)【出願日】2024-04-02
(62)【分割の表示】P 2023522695の分割
【原出願日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2021084552
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 晴司
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 大輔
(72)【発明者】
【氏名】桜井 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓弥
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コンタクトトレンチを設けた半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、ゲートトレンチ部40と接する第1導電型のエミッタ領域12と、ゲートトレンチ部の長手方向においてエミッタ領域と交互に配置された第2導電型のコンタクト領域15と、コンタクト領域の内部まで設けられた第1トレンチコンタクト部54-1と、エミッタ領域の内部まで設けられた第2トレンチコンタクト部54-2と、第1トレンチコンタクト部の下端に接して設けられ、ベース領域14よりも高濃度の第2導電型の第1プラグ部201と、第2トレンチコンタクト部の下端に接して設けられ、且つ、第1プラグ部よりも下面側まで設けられ、ベース領域よりも高濃度の第2導電型の第2プラグ部202とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板と、
前記上面と前記ドリフト領域との間に設けられた第2導電型のベース領域と、
前記上面から前記ドリフト領域まで設けられ、且つ、前記上面において長手方向に延伸して設けられたゲートトレンチ部と、
前記上面と前記ベース領域との間に設けられ、且つ、前記ゲートトレンチ部と接する第1導電型のエミッタ領域と、
前記上面と前記ベース領域との間に設けられ、且つ、前記ゲートトレンチ部の長手方向において前記エミッタ領域と交互に配置された第2導電型のコンタクト領域と、
前記上面から前記コンタクト領域の内部まで設けられた第1トレンチコンタクト部と、
前記上面から前記エミッタ領域の内部まで設けられた第2トレンチコンタクト部と、
前記第1トレンチコンタクト部の下端に接して設けられ、前記ベース領域よりも高濃度の第2導電型の第1プラグ部と、
前記第2トレンチコンタクト部の下端に接して設けられ、且つ、前記第1プラグ部よりも前記下面側まで設けられた、前記ベース領域よりも高濃度の第2導電型の第2プラグ部と
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記コンタクト領域、前記第1プラグ部および前記第2プラグ部は、同一元素のアクセプタを含む
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2プラグ部の下端は、前記エミッタ領域の下端よりも下面側に配置されている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2プラグ部の下端は、前記コンタクト領域の下端よりも上面側に配置されている
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1プラグ部の下端は、前記コンタクト領域の下端と同じ深さ位置か、または、前記コンタクト領域の下端よりも上面側に配置されている
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2プラグ部の下端の深さ位置は、前記第1プラグ部の下端の深さ位置よりも0.1μm以上、下面側に配置されている
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2プラグ部の下端の深さ位置は、前記第1プラグ部の下端の深さ位置よりも0.3μm以上、下面側に配置されている
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2プラグ部のアクセプタ濃度のピーク値は、前記第1プラグ部のアクセプタ濃度のピーク値よりも小さい
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記長手方向と垂直な配列方向において前記ゲートトレンチ部と隣り合って設けられ、前記上面から前記ドリフト領域まで設けられ、且つ、前記長手方向に延伸して設けられたトレンチ部と、
前記ゲートトレンチ部および前記トレンチ部に挟まれたメサ部と
を更に備え、
前記配列方向における前記メサ部の幅が、前記ゲートトレンチ部の幅よりも小さい
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1プラグ部は、前記第1トレンチコンタクト部の側面に接する第1部分を有し、
前記第2プラグ部は、前記第2トレンチコンタクト部の側面に接する第2部分を有し、
前記第2部分の幅は、前記第1部分の幅よりも小さい
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1プラグ部および前記第2プラグ部はボロンを含み、
前記半導体基板はシリコンを含み、
前記第1トレンチコンタクト部および前記第2トレンチコンタクト部と、前記半導体基板との境界にはシリサイド部が設けられ、
前記シリサイド部は、ボロンを含む
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板と、
前記上面と前記ドリフト領域との間に設けられた第2導電型のベース領域と、
前記上面から前記ドリフト領域まで設けられ、且つ、前記上面において長手方向に延伸して設けられたゲートトレンチ部と、
前記上面と前記ベース領域との間に設けられ、且つ、前記ゲートトレンチ部と接する第1導電型のエミッタ領域と、
前記上面と前記ベース領域との間に設けられ、且つ、前記ゲートトレンチ部の長手方向において前記エミッタ領域と交互に配置された第2導電型のコンタクト領域と、
前記上面から前記コンタクト領域の内部まで、および、前記上面から前記エミッタ領域の内部まで設けられたトレンチコンタクト部と、
前記トレンチコンタクト部の下端に接して設けられ、前記ベース領域よりも高濃度であり、前記コンタクト領域よりも浅く設けられた第2導電型のプラグ部と、
を備える半導体装置。
【請求項13】
前記トレンチコンタクト部は、
前記上面から前記コンタクト領域の内部まで設けられた第1トレンチコンタクト部と、
前記上面から前記エミッタ領域の内部まで設けられた第2トレンチコンタクト部と、
を備え、
前記プラグ部は、
前記第1トレンチコンタクト部の下端に接して設けられた第1プラグ部と、
前記第2トレンチコンタクト部の下端に接して設けられ、前記第1プラグ部と同じ深さまで設けられた第2プラグ部と、
を備える請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記トレンチコンタクト部は、
前記上面から前記コンタクト領域の内部まで設けられた第1トレンチコンタクト部と、
前記上面から前記エミッタ領域の内部まで設けられた第2トレンチコンタクト部と、
を備え、
前記プラグ部は、
前記第1トレンチコンタクト部の下端に接して設けられた第1プラグ部と、
前記第2トレンチコンタクト部の下端に接して設けられ、前記第1プラグ部よりも前記下面側まで設けられた第2プラグ部と、
を備える請求項12に記載の半導体装置。
【請求項15】
上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板に、前記上面と前記ドリフト領域との間に設けられた第2導電型のベース領域と、前記上面から前記ドリフト領域まで設けられ、且つ、前記上面において長手方向に延伸して設けられたゲートトレンチ部と、前記上面と前記ベース領域との間に設けられ、且つ、前記ゲートトレンチ部と接する第1導電型のエミッタ領域と、前記上面と前記ベース領域との間に設けられ、且つ、前記ゲートトレンチ部の長手方向において前記エミッタ領域と交互に配置された第2導電型のコンタクト領域とを形成する上面側構造形成段階と、
前記上面から前記コンタクト領域の内部まで設けられた第1トレンチコンタクト部と、前記上面から前記エミッタ領域の内部まで設けられた第2トレンチコンタクト部を形成するトレンチ形成段階と、
前記第1トレンチコンタクト部および前記第2トレンチコンタクト部を介して前記半導体基板に第2導電型のドーパントを注入するプラグ注入段階と、
前記半導体基板をアニールして、前記第1トレンチコンタクト部の下端に接する第2導電型の第1プラグ部と、前記第2トレンチコンタクト部の下端に接し、前記第1プラグ部よりも前記下面側まで設けられた第2導電型の第2プラグ部とを形成するプラグアニール段階と
を備える製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンタクトトレンチを設けた半導体装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 国際公開第2018/052099号
【一般的開示】
【0003】
本発明の第1の態様においては、半導体装置を提供する。半導体装置は、上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板を備えてよい。半導体装置は、上面とドリフト領域との間に設けられた第2導電型のベース領域を備えてよい。半導体装置は、上面からドリフト領域まで設けられ、且つ、上面において長手方向に延伸して設けられたゲートトレンチ部を備えてよい。半導体装置は、上面とベース領域との間に設けられ、且つ、ゲートトレンチ部と接する第1導電型のエミッタ領域を備えてよい。半導体装置は、上面とベース領域との間に設けられ、且つ、ゲートトレンチ部の長手方向においてエミッタ領域と交互に配置された第2導電型のコンタクト領域を備えてよい。半導体装置は、上面からコンタクト領域の内部まで設けられた第1トレンチコンタクト部を備えてよい。半導体装置は、上面からエミッタ領域の内部まで設けられた第2トレンチコンタクト部を備えてよい。半導体装置は、第1トレンチコンタクト部の下端に接して設けられ、ベース領域よりも高濃度の第2導電型の第1プラグ部を備えてよい。半導体装置は、第2トレンチコンタクト部の下端に接して設けられ、且つ、第1プラグ部よりも下面側まで設けられた、ベース領域よりも高濃度の第2導電型の第2プラグ部を備えてよい。
【0004】
コンタクト領域、第1プラグ部および第2プラグ部は、同一元素のアクセプタを含んでよい。
【0005】
第2プラグ部の下端は、エミッタ領域の下端よりも下面側に配置されていてよい。
【0006】
第2プラグ部の下端は、コンタクト領域の下端よりも上面側に配置されていてよい。
【0007】
第1プラグ部の下端は、コンタクト領域の下端と同じ深さ位置か、または、コンタクト領域の下端よりも上面側に配置されていてよい。
【0008】
第2プラグ部の下端の深さ位置は、第1プラグ部の下端の深さ位置よりも0.1μm以上、下面側に配置されていてよい。
【0009】
第2プラグ部の下端の深さ位置は、第1プラグ部の下端の深さ位置よりも0.3μm以上、下面側に配置されていてよい。
【0010】
第2プラグ部のアクセプタ濃度のピーク値は、第1プラグ部のアクセプタ濃度のピーク値よりも小さくてよい。
【0011】
半導体装置は、長手方向と垂直な配列方向においてゲートトレンチ部と隣り合って設けられ、上面からドリフト領域まで設けられ、且つ、長手方向に延伸して設けられたトレンチ部を備えてよい。半導体装置は、ゲートトレンチ部およびトレンチ部に挟まれたメサ部を備えてよい。配列方向におけるメサ部の幅が、ゲートトレンチ部の幅よりも小さくてよい。
【0012】
第1プラグ部は、第1トレンチコンタクト部の側面に接する第1部分を有してよい。第2プラグ部は、第2トレンチコンタクト部の側面に接する第2部分を有してよい。第2部分の幅は、第1部分の幅よりも小さくてよい。
【0013】
第1プラグ部および第2プラグ部はボロンを含んでよい。半導体基板はシリコンを含んでよい。第1トレンチコンタクト部および第2トレンチコンタクト部と、半導体基板との境界にはシリサイド部が設けられてよい。シリサイド部は、ボロンを含んでよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、半導体装置を提供する。上記半導体装置は、上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板を備えてよい。上記半導体装置は、上面とドリフト領域との間に設けられた第2導電型のベース領域を備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、上面からドリフト領域まで設けられ、且つ、上面において長手方向に延伸して設けられたゲートトレンチ部を備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、上面とベース領域との間に設けられ、且つ、ゲートトレンチ部と接する第1導電型のエミッタ領域を備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、上面とベース領域との間に設けられ、且つ、ゲートトレンチ部の長手方向においてエミッタ領域と交互に配置された第2導電型のコンタクト領域を備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、上面からコンタクト領域の内部まで、および、上面からエミッタ領域の内部まで設けられたトレンチコンタクト部を備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、トレンチコンタクト部の下端に接して設けられ、ベース領域よりも高濃度であり、コンタクト領域よりも浅く設けられた第2導電型のプラグ部を備えてよい。
【0015】
上記いずれかの半導体装置において、トレンチコンタクト部は、上面からコンタクト領域の内部まで設けられた第1トレンチコンタクト部を備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、トレンチコンタクト部は、上面からエミッタ領域の内部まで設けられた第2トレンチコンタクト部を備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、プラグ部は、第1トレンチコンタクト部の下端に接して設けられた第1プラグ部を備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、プラグ部は、第2トレンチコンタクト部の下端に接して設けられ、第1プラグ部と同じ深さまで設けられた第2プラグ部を備えてよい。
【0016】
上記いずれかの半導体装置において、トレンチコンタクト部は、上面からコンタクト領域の内部まで設けられた第1トレンチコンタクト部を備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、トレンチコンタクト部は、上面からエミッタ領域の内部まで設けられた第2トレンチコンタクト部を備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、プラグ部は、第1トレンチコンタクト部の下端に接して設けられた第1プラグ部を備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、プラグ部は、第2トレンチコンタクト部の下端に接して設けられ、第1プラグ部よりも下面側まで設けられた第2プラグ部を備えてよい。
【0017】
本発明の第3の態様においては、半導体装置の製造方法を提供する。製造方法は、上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板に、上面とドリフト領域との間に設けられた第2導電型のベース領域と、上面からドリフト領域まで設けられ、且つ、上面において長手方向に延伸して設けられたゲートトレンチ部と、上面とベース領域との間に設けられ、且つ、ゲートトレンチ部と接する第1導電型のエミッタ領域と、上面とベース領域との間に設けられ、且つ、ゲートトレンチ部の長手方向においてエミッタ領域と交互に配置された第2導電型のコンタクト領域とを形成する上面側構造形成段階を備えてよい。製造方法は、上面からコンタクト領域の内部まで設けられた第1トレンチコンタクト部と、上面からエミッタ領域の内部まで設けられた第2トレンチコンタクト部を形成するトレンチ形成段階を備えてよい。製造方法は、第1トレンチコンタクト部および第2トレンチコンタクト部を介して半導体基板に第2導電型のドーパントを注入するプラグ注入段階を備えてよい。製造方法は、半導体基板をアニールして、第1トレンチコンタクト部の下端に接する第2導電型の第1プラグ部と、第2トレンチコンタクト部の下端に接し、第1プラグ部よりも下面側まで設けられた第2導電型の第2プラグ部とを形成するプラグアニール段階を備えてよい。
【0018】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】半導体装置100の上面図の一例である。
図2図1における領域Aの拡大図である。
図3図2におけるc-c断面の一例を示す図である。
図4図2におけるb-b断面の一例を示す図である。
図5】b-b断面およびc-c断面を並べて示した図である。
図6図2におけるd-d断面の一例を示す図である。
図7A】b-b断面およびc-c断面の他の例を示す図である。
図7B図2におけるd-d断面の他の例を示す図である。
図7C図2におけるd-d断面の他の例を示す図である。
図8】b-b断面およびc-c断面の他の例を示す図である。
図9】第2トレンチコンタクト部54-2および第2プラグ部202の近傍を拡大した図である。
図10】第1トレンチコンタクト部54-1および第1プラグ部201の近傍を拡大した図である。
図11】第2トレンチコンタクト部54-2および第2プラグ部202の近傍の他の例を示す図である。
図12A】半導体装置100の製造方法の一例を示す図である。
図12B】半導体装置100の製造方法の一例を示す図である。
図13図12Bにおけるe-e線およびf-f線におけるアクセプタ濃度分布の一例を示す図である。
図14図2におけるe-e断面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
本明細書の単位系は、特に断りがなければSI単位系である。長さの単位をcmで表示することがあるが、諸計算はメートル(m)に換算してから行ってよい。本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0022】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。
【0023】
本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。本明細書において半導体基板の上面側と称した場合、半導体基板の深さ方向における中央から上面までの領域を指す。半導体基板の下面側と称した場合、半導体基板の深さ方向における中央から下面までの領域を指す。
【0024】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0025】
本明細書においては、不純物がドーピングされたドーピング領域の導電型をP型またはN型として説明している。本明細書においては、不純物とは、特にN型のドナーまたはP型のアクセプタのいずれかを意味する場合があり、ドーパントと記載する場合がある。本明細書においては、ドーピングとは、半導体基板にドナーまたはアクセプタを導入し、N型の導電型を示す半導体またはP型の導電型を示す半導体とすることを意味する。
【0026】
本明細書においては、ドーピング濃度とは、熱平衡状態におけるドナーの濃度またはアクセプタの濃度を意味する。本明細書においては、ネット・ドーピング濃度とは、ドナー濃度を正イオンの濃度とし、アクセプタ濃度を負イオンの濃度として、電荷の極性を含めて足し合わせた正味の濃度を意味する。一例として、ドナー濃度をN、アクセプタ濃度をNとすると、任意の位置における正味のネット・ドーピング濃度はN-Nとなる。
【0027】
ドナーは、半導体に電子を供給する機能を有している。アクセプタは、半導体から電子を受け取る機能を有している。ドナーおよびアクセプタは、不純物自体には限定されない。例えば、半導体中に存在する空孔(V)、酸素(O)および水素(H)が結合したVOH欠陥は、電子を供給するドナーとして機能する。
【0028】
本明細書においてP+型またはN+型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型またはN-型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。また、本明細書においてP++型またはN++型と記載した場合には、P+型またはN+型よりもドーピング濃度が高いことを意味する。
【0029】
本明細書において化学濃度とは、電気的な活性化の状態によらずに測定される不純物の原子密度を指す。化学濃度(原子密度)は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS)により計測できる。上述したネット・ドーピング濃度は、電圧-容量測定法(CV法)により測定できる。また、拡がり抵抗測定法(SR法)により計測されるキャリア密度を、ネット・ドーピング濃度としてよい。CV法またはSR法により計測されるキャリア密度は、熱平衡状態における値としてよい。また、N型の領域においては、ドナー濃度がアクセプタ濃度よりも十分大きいので、当該領域におけるキャリア密度を、ドナー濃度としてもよい。同様に、P型の領域においては、当該領域におけるキャリア密度を、アクセプタ濃度としてもよい。
【0030】
また、ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度分布がピークを有する場合、当該ピーク値を当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度がほぼ均一な場合等においては、当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度の平均値をドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。
【0031】
SR法により計測されるキャリア密度が、ドナーまたはアクセプタの濃度より低くてもよい。拡がり抵抗を測定する際に電流が流れる範囲において、半導体基板のキャリア移動度が結晶状態の値よりも低い場合がある。キャリア移動度の低下は、格子欠陥等による結晶構造の乱れ(ディスオーダー)により、キャリアが散乱されることで生じる。
【0032】
CV法またはSR法により計測されるキャリア密度から算出したドナーまたはアクセプタの濃度は、ドナーまたはアクセプタを示す元素の化学濃度よりも低くてよい。一例として、シリコンの半導体においてドナーとなるリンまたはヒ素のドナー濃度、あるいはアクセプタとなるボロン(ホウ素)のアクセプタ濃度は、これらの化学濃度の99%程度である。一方、シリコンの半導体においてドナーとなる水素のドナー濃度は、水素の化学濃度の0.1%から10%程度である。
【0033】
図1は、半導体装置100の一例を示す上面図である。図1においては、各部材を半導体基板10の上面に投影した位置を示している。図1においては、半導体装置100の一部の部材だけを示しており、一部の部材は省略している。
【0034】
半導体装置100は、半導体基板10を備えている。半導体基板10は、半導体材料で形成された基板である。一例として半導体基板10はシリコン基板であるが、半導体基板10の材料はシリコンに限定されない。
【0035】
半導体基板10は、上面視において端辺102を有する。本明細書で単に上面視と称した場合、半導体基板10の上面側から見ることを意味している。本例の半導体基板10は、上面視において互いに向かい合う2組の端辺102を有する。図1においては、X軸およびY軸は、いずれかの端辺102と平行である。またZ軸は、半導体基板10の上面と垂直である。
【0036】
半導体基板10には活性部160が設けられている。活性部160は、半導体装置100が動作した場合に半導体基板10の上面と下面との間で、深さ方向に主電流が流れる領域である。活性部160の上方には、エミッタ電極が設けられているが図1では省略している。
【0037】
活性部160には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のトランジスタ素子を含むトランジスタ部70と、FWD(Free Wheeling Diode)等のダイオード素子を含むダイオード部80の少なくとも一方が設けられている。図1の例では、トランジスタ部70およびダイオード部80は、半導体基板10の上面における所定の配列方向(本例ではX軸方向)に沿って、交互に配置されている。他の例では、活性部160には、トランジスタ部70およびダイオード部80の一方だけが設けられていてもよい。
【0038】
図1においては、トランジスタ部70が配置される領域には記号「I」を付し、ダイオード部80が配置される領域には記号「F」を付している。本明細書では、上面視において配列方向と垂直な方向を延伸方向(図1ではY軸方向)と称する場合がある。トランジスタ部70およびダイオード部80は、それぞれ延伸方向に長手を有してよい。つまり、トランジスタ部70のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。同様に、ダイオード部80のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。トランジスタ部70およびダイオード部80の延伸方向と、後述する各トレンチ部の長手方向とは同一であってよい。
【0039】
ダイオード部80は、半導体基板10の下面と接する領域に、N+型のカソード領域を有する。本明細書では、カソード領域が設けられた領域を、ダイオード部80と称する。つまりダイオード部80は、上面視においてカソード領域と重なる領域である。半導体基板10の下面には、カソード領域以外の領域には、P+型のコレクタ領域が設けられてよい。本明細書では、ダイオード部80を、後述するゲート配線までY軸方向に延長した延長領域81も、ダイオード部80に含める場合がある。延長領域81の下面には、コレクタ領域が設けられている。
【0040】
トランジスタ部70は、半導体基板10の下面と接する領域に、P+型のコレクタ領域を有する。また、トランジスタ部70は、半導体基板10の上面側に、N型のエミッタ領域、P型のベース領域、ゲート導電部およびゲート絶縁膜を有するゲート構造が周期的に配置されている。
【0041】
半導体装置100は、半導体基板10の上方に1つ以上のパッドを有してよい。本例の半導体装置100は、ゲートパッド112を有している。半導体装置100は、アノードパッド、カソードパッドおよび電流検出パッド等のパッドを有してもよい。各パッドは、端辺102の近傍に配置されている。端辺102の近傍とは、上面視における端辺102と、エミッタ電極との間の領域を指す。半導体装置100の実装時において、各パッドは、ワイヤ等の配線を介して外部の回路に接続されてよい。
【0042】
ゲートパッド112には、ゲート電位が印加される。ゲートパッド112は、活性部160のゲートトレンチ部の導電部に電気的に接続される。半導体装置100は、ゲートパッド112とゲートトレンチ部とを接続するゲート配線を備える。図1においては、ゲート配線に斜線のハッチングを付している。
【0043】
本例のゲート配線は、外周ゲート配線130と、活性側ゲート配線131とを有している。外周ゲート配線130は、上面視において活性部160と半導体基板10の端辺102との間に配置されている。本例の外周ゲート配線130は、上面視において活性部160を囲んでいる。上面視において外周ゲート配線130に囲まれた領域を活性部160としてもよい。また、外周ゲート配線130は、ゲートパッド112と接続されている。外周ゲート配線130は、半導体基板10の上方に配置されている。外周ゲート配線130は、アルミニウム等を含む金属配線であってよい。
【0044】
活性側ゲート配線131は、活性部160に設けられている。活性部160に活性側ゲート配線131を設けることで、半導体基板10の各領域について、ゲートパッド112からの配線長のバラツキを低減できる。
【0045】
活性側ゲート配線131は、活性部160のゲートトレンチ部と接続される。活性側ゲート配線131は、半導体基板10の上方に配置されている。活性側ゲート配線131は、不純物がドープされたポリシリコン等の半導体で形成された配線であってよい。
【0046】
活性側ゲート配線131は、外周ゲート配線130と接続されてよい。本例の活性側ゲート配線131は、一方の外周ゲート配線130から他方の外周ゲート配線130まで、活性部160を横切るように、X軸方向に延伸して設けられている。活性側ゲート配線131は、活性部160のY軸方向の略中央に設けられてよい。活性側ゲート配線131により活性部160が分割されている場合、それぞれの分割領域において、トランジスタ部70およびダイオード部80がX軸方向に交互に配置されてよい。
【0047】
また、半導体装置100は、ポリシリコン等で形成されたPN接合ダイオードである不図示の温度センス部や、活性部160に設けられたトランジスタ部の動作を模擬する不図示の電流検出部を備えてもよい。
【0048】
本例の半導体装置100は、上面視において、活性部160と端辺102との間に、エッジ終端構造部90を備える。本例のエッジ終端構造部90は、外周ゲート配線130と端辺102との間に配置されている。エッジ終端構造部90は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部90は、活性部160を囲んで環状に設けられたガードリング92、フィールドプレートおよびリサーフのうちの少なくとも一つを備えていてよい。
【0049】
図2は、図1における領域Aの拡大図である。領域Aは、トランジスタ部70、ダイオード部80、および、活性側ゲート配線131を含む領域である。本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面側の内部に設けられたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15を備える。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、それぞれがトレンチ部の一例である。また、本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面の上方に設けられたエミッタ電極52および活性側ゲート配線131を備える。エミッタ電極52および活性側ゲート配線131は互いに分離して設けられる。
【0050】
エミッタ電極52および活性側ゲート配線131と、半導体基板10の上面との間には層間絶縁膜が設けられるが、図2では省略している。本例の層間絶縁膜には、トレンチコンタクト部54が、当該層間絶縁膜を貫通して設けられる。本例のトレンチコンタクト部54は、半導体基板10の内部まで達している。トレンチコンタクト部54の内部には、導電部材が充填される。本明細書では、トレンチコンタクト部54の内部の導電部材を、エミッタ電極52の一部分として説明する場合がある。エミッタ電極52は、トレンチコンタクト部54を介して半導体基板10と接続する。トレンチコンタクト部54の内部には、層間絶縁膜の上に設けられたエミッタ電極52と同一の材料が充填されてよく、当該エミッタ電極52とは異なる材料が充填されてもよい。図2においては、それぞれのトレンチコンタクト部54に斜線のハッチングを付している。
【0051】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に設けられる。エミッタ電極52は、トレンチコンタクト部54を介して、半導体基板10の上面におけるエミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14と電気的に接続する。また、エミッタ電極52は、層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールを通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52は、Y軸方向におけるダミートレンチ部30の先端において、ダミートレンチ部30のダミー導電部と接続されてよい。
【0052】
活性側ゲート配線131は、層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールを通って、ゲートトレンチ部40と接続する。活性側ゲート配線131は、Y軸方向におけるゲートトレンチ部40の先端部41において、ゲートトレンチ部40のゲート導電部と接続されてよい。活性側ゲート配線131は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。
【0053】
エミッタ電極52は、金属を含む材料で形成される。図2においては、エミッタ電極52が設けられる範囲を示している。例えば、エミッタ電極52の少なくとも一部の領域はAlSi、AlSiCu等の金属合金で形成される。エミッタ電極52は、アルミニウム(Al)を含む材料等で形成された領域の下層に、チタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。エミッタ電極52は、トレンチコンタクト部54内に充填されたタングステンを含んでよい。トレンチコンタクト部54の内部では、半導体基板10と近い側から、バリアメタルとタングステンが順番に積層されてよい。タングステンおよび層間絶縁膜の上のエミッタ電極52は、アルミニウムを含む材料で形成されてよい。
【0054】
ウェル領域11は、活性側ゲート配線131と重なって設けられている。ウェル領域11は、活性側ゲート配線131と重ならない範囲にも、所定の幅で延伸して設けられている。本例のウェル領域11は、トレンチコンタクト部54のY軸方向の端から、活性側ゲート配線131側に離れて設けられている。ウェル領域11は、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型の領域である。本例のベース領域14はP-型であり、ウェル領域11はP+型である。
【0055】
トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれは、配列方向に複数配列されたトレンチ部を有する。本例のトランジスタ部70には、配列方向に沿って1以上のゲートトレンチ部40と、1以上のダミートレンチ部30とが交互に設けられている。本例のダイオード部80には、複数のダミートレンチ部30が、配列方向に沿って設けられている。本例のダイオード部80には、ゲートトレンチ部40が設けられていない。
【0056】
本例のゲートトレンチ部40は、配列方向と垂直な延伸方向に沿って延伸する2つの直線部分39(延伸方向に沿って直線状であるトレンチの部分)と、2つの直線部分39を接続する先端部41を有してよい。図2における延伸方向はY軸方向である。ゲートトレンチ部40の長手方向は、延伸方向と同一である。
【0057】
先端部41の少なくとも一部は、上面視において曲線状に設けられることが好ましい。2つの直線部分39のY軸方向における端部どうしを先端部41が接続することで、直線部分39の端部における電界集中を緩和できる。
【0058】
トランジスタ部70において、ダミートレンチ部30はゲートトレンチ部40のそれぞれの直線部分39の間に設けられる。それぞれの直線部分39の間には、1本のダミートレンチ部30が設けられてよく、複数本のダミートレンチ部30が設けられていてもよい。ダミートレンチ部30は、延伸方向に延伸する直線形状を有してよく、ゲートトレンチ部40と同様に、直線部分29と先端部31とを有していてもよい。図2に示した半導体装置100は、先端部31を有さない直線形状のダミートレンチ部30と、先端部31を有するダミートレンチ部30の両方を含んでいる。
【0059】
ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30のY軸方向の端部は、上面視においてウェル領域11に設けられる。つまり、各トレンチ部のY軸方向の端部において、各トレンチ部の深さ方向の底部は、ウェル領域11に覆われている。これにより、各トレンチ部の当該底部における電界集中を緩和できる。
【0060】
配列方向において各トレンチ部の間には、メサ部が設けられている。メサ部は、半導体基板10の内部において、トレンチ部に挟まれた領域を指す。一例としてメサ部の上端は半導体基板10の上面である。メサ部の下端の深さ位置は、トレンチ部の下端の深さ位置と同一である。本例のメサ部は、半導体基板10の上面において、トレンチに沿って延伸方向(Y軸方向)に延伸して設けられている。本例では、トランジスタ部70にはメサ部60が設けられ、ダイオード部80にはメサ部61が設けられている。本明細書において単にメサ部と称した場合、メサ部60およびメサ部61のそれぞれを指している。
【0061】
それぞれのメサ部には、ベース領域14が設けられる。メサ部において半導体基板10の上面に露出したベース領域14のうち、活性側ゲート配線131に最も近く配置された領域をベース領域14-eとする。図2においては、それぞれのメサ部の延伸方向における一方の端部に配置されたベース領域14-eを示しているが、それぞれのメサ部の他方の端部にもベース領域14-eが配置されている。それぞれのメサ部には、上面視においてベース領域14-eに挟まれた領域に、第1導電型のエミッタ領域12および第2導電型のコンタクト領域15の少なくとも一方が設けられてよい。本例のエミッタ領域12はN+型であり、コンタクト領域15はP+型である。エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、深さ方向において、ベース領域14と半導体基板10の上面との間に設けられてよい。
【0062】
トランジスタ部70のメサ部60は、半導体基板10の上面に露出したエミッタ領域12を有する。エミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40に接して設けられている。ゲートトレンチ部40に接するメサ部60は、半導体基板10の上面に露出したコンタクト領域15が設けられていてよい。
【0063】
メサ部60におけるコンタクト領域15およびエミッタ領域12のそれぞれは、X軸方向における一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで設けられる。一例として、メサ部60のコンタクト領域15およびエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向(Y軸方向)に沿って交互に配置されている。
【0064】
他の例においては、メサ部60のコンタクト領域15およびエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向(Y軸方向)に沿ってストライプ状に設けられていてもよい。例えばトレンチ部に接する領域にエミッタ領域12が設けられ、エミッタ領域12に挟まれた領域にコンタクト領域15が設けられる。
【0065】
ダイオード部80のメサ部61には、エミッタ領域12が設けられていない。メサ部61の上面には、ベース領域14およびコンタクト領域15が設けられてよい。メサ部61の上面においてベース領域14-eに挟まれた領域には、それぞれのベース領域14-eに接してコンタクト領域15が設けられてよい。メサ部61の上面においてコンタクト領域15に挟まれた領域には、ベース領域14が設けられてよい。ベース領域14は、コンタクト領域15に挟まれた領域全体に配置されてよい。
【0066】
それぞれのメサ部の上方には、トレンチコンタクト部54が設けられている。トレンチコンタクト部54は、ベース領域14-eに挟まれた領域に配置されている。本例のトレンチコンタクト部54は、コンタクト領域15、ベース領域14およびエミッタ領域12の各領域の上方に設けられる。トレンチコンタクト部54は、ベース領域14-eおよびウェル領域11に対応する領域には設けられない。トレンチコンタクト部54は、メサ部60の配列方向(X軸方向)における中央に配置されてよい。
【0067】
ダイオード部80において、半導体基板10の下面と隣接する領域には、N+型のカソード領域82が設けられる。半導体基板10の下面において、カソード領域82が設けられていない領域には、P+型のコレクタ領域22が設けられてよい。カソード領域82およびコレクタ領域22は、半導体基板10の下面23と、バッファ領域20との間に設けられている。図2においては、カソード領域82およびコレクタ領域22の境界を点線で示している。
【0068】
カソード領域82は、Y軸方向においてウェル領域11から離れて配置されている。これにより、比較的にドーピング濃度が高く、且つ、深い位置まで形成されているP型の領域(ウェル領域11)と、カソード領域82との距離を確保して、耐圧を向上できる。本例のカソード領域82のY軸方向における端部は、トレンチコンタクト部54のY軸方向における端部よりも、ウェル領域11から離れて配置されている。他の例では、カソード領域82のY軸方向における端部は、ウェル領域11とトレンチコンタクト部54との間に配置されていてもよい。
【0069】
図3は、図2におけるc-c断面の一例を示す図である。c-c断面は、メサ部60においてコンタクト領域15を通過するXZ面である。上述したように、メサ部60は、X軸方向において隣り合って配置された2つのトレンチ部に挟まれた領域である。図3の例のメサ部60は、ゲートトレンチ部40と、ダミートレンチ部30に挟まれている。半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。
【0070】
層間絶縁膜38は、半導体基板10の上面に設けられている。層間絶縁膜38は、ホウ素またはリン等の不純物が添加されたシリケートガラス等の絶縁膜、熱酸化膜、および、その他の絶縁膜の少なくとも一層を含む膜である。層間絶縁膜38には、図2において説明したトレンチコンタクト部54が設けられている。
【0071】
エミッタ電極52は、層間絶縁膜38の上方に設けられる。エミッタ電極52は、層間絶縁膜38のトレンチコンタクト部54を通って、半導体基板10の上面21と接触している。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に設けられる。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、アルミニウム等の金属材料で形成されている。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向(Z軸方向)を深さ方向と称する。
【0072】
半導体基板10は、N型またはN-型のドリフト領域18を有する。メサ部60には、P+型のコンタクト領域15およびP-型のベース領域14が、半導体基板10の上面21側から順番に設けられている。ベース領域14の下方にはドリフト領域18が設けられている。メサ部60には、N+型の蓄積領域16が設けられてもよい。蓄積領域16は、ベース領域14とドリフト領域18との間に配置される。
【0073】
コンタクト領域15は半導体基板10の上面21に露出しており、且つ、メサ部60の両側のトレンチ部と接している。コンタクト領域15のドーピング濃度は、ベース領域14のドーピング濃度以上である。つまり、コンタクト領域15のドーピング濃度は、ベース領域14のドーピング濃度と同一であってよい。この場合、ベース領域14が、コンタクト領域15として上面21に露出する。また、コンタクト領域15のドーピング濃度は、ベース領域14のドーピング濃度より高くてもよい。この場合、ベース領域14よりも高濃度のP型領域が、上面21に露出する。
【0074】
ベース領域14は、コンタクト領域15の下方に設けられている。本例のベース領域14は、コンタクト領域15と接して設けられている。ベース領域14は、メサ部60の両側のトレンチ部と接していてよい。
【0075】
蓄積領域16は、ベース領域14の下方に設けられている。蓄積領域16は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高いN+型の領域である。蓄積領域16は、リンまたは水素ドナー等のドナーの濃度ピークを有してよい。ドリフト領域18とベース領域14との間に高濃度の蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減できる。蓄積領域16は、各メサ部60におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。
【0076】
ドリフト領域18の下にはN+型のバッファ領域20が設けられてよい。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い濃度ピークを有してよい。濃度ピークのドーピング濃度とは、濃度ピークの頂点におけるドーピング濃度を指す。また、ドリフト領域18のドーピング濃度は、ドーピング濃度分布がほぼ平坦な領域におけるドーピング濃度の平均値を用いてよい。
【0077】
バッファ領域20は、水素(プロトン)またはリン等のN型ドーパントをイオン注入することで形成してよい。本例のバッファ領域20は水素をイオン注入して形成される。バッファ領域20は、ベース領域14の下端から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0078】
バッファ領域20の下には、P+型のコレクタ領域22が設けられる。コレクタ領域22のアクセプタ濃度は、ベース領域14のアクセプタ濃度より高い。コレクタ領域22は、ベース領域14と同一のアクセプタを含んでよく、異なるアクセプタを含んでもよい。コレクタ領域22のアクセプタは、例えばボロンである。
【0079】
コレクタ領域22は、半導体基板10の下面23に露出しており、コレクタ電極24と接続している。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23全体と接触してよい。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、アルミニウム等の金属材料で形成される。
【0080】
半導体基板10の上面21側には、1以上のゲートトレンチ部40、および、1以上のダミートレンチ部30が設けられる。各トレンチ部は、半導体基板10の上面21から、ベース領域14を貫通して、ドリフト領域18に到達している。エミッタ領域12、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられている領域においては、各トレンチ部はこれらのドーピング領域も貫通して、ドリフト領域18に到達している。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0081】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21に設けられたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられる。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0082】
ゲート導電部44は、深さ方向において、ベース領域14よりも長く設けられてよい。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44は、ゲート配線に電気的に接続されている。ゲート導電部44に所定のゲート電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチ部40に接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0083】
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21に設けられたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー導電部34は、エミッタ電極52に電気的に接続されている。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って設けられる。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に設けられ、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に設けられる。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えばダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。
【0084】
本例のゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われている。なお、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40の底部は、下側に凸の曲面状(断面においては曲線状)であってよい。
【0085】
トレンチコンタクト部54のうち、コンタクト領域15の上方に配置された部分を第1トレンチコンタクト部54-1とし、エミッタ領域12の上方に配置された部分を第2トレンチコンタクト部54-2(図4参照)とする。第1トレンチコンタクト部54-1は、少なくとも、半導体基板10の上面21からコンタクト領域15の内部まで設けられる。本例の第1トレンチコンタクト部54-1は、層間絶縁膜38の上端から、コンタクト領域15の内部まで設けられている。第1トレンチコンタクト部54-1の下端の深さ位置は、コンタクト領域15の上端の深さ位置と、下端の深さ位置との間に配置される。
【0086】
メサ部60には、第1トレンチコンタクト部54-1の下端に接する第1プラグ部201が設けられる。第1プラグ部201は、ベース領域14よりも高濃度の第2導電型(本例ではP++型)の領域である。第1プラグ部201は、コンタクト領域15よりも高濃度の領域であってよい。例えば同一の深さ位置で比べた場合に、第1プラグ部201のドーピング濃度は、コンタクト領域15のドーピング濃度よりも高い。第1プラグ部201は、コンタクト領域15を形成した後に、コンタクト領域15の内部に更にアクセプタを注入することで形成してよい。第1プラグ部201は、コンタクト領域15よりも浅くてよく、コンタクト領域15と同じ深さであってよく、コンタクト領域15より深くてもよい。本例では、第1プラグ部201は、コンタクト領域15よりも浅い。
【0087】
図4は、図2におけるb-b断面の一例を示す図である。b-b断面は、メサ部60においてエミッタ領域12を通過するXZ面である。半導体装置100は、当該断面において、図3に示した構造に対して、第1トレンチコンタクト部54-1に代えて第2トレンチコンタクト部54-2を有し、コンタクト領域15に代えてエミッタ領域12を有し、第1プラグ部201に代えて第2プラグ部202を有する。他の構造は、図3に示した構造と同一であってよい。
【0088】
第2トレンチコンタクト部54-2は、少なくとも、半導体基板10の上面21からエミッタ領域12の内部まで設けられる。本例の第2トレンチコンタクト部54-2は、層間絶縁膜38の上端から、エミッタ領域12の内部まで設けられている。第2トレンチコンタクト部54-2の下端の深さ位置は、エミッタ領域12の上端の深さ位置と、下端の深さ位置との間に配置される。第1トレンチコンタクト部54-1および第2トレンチコンタクト部54-2の下端の深さ位置は同一であってよい。
【0089】
メサ部60には、第2トレンチコンタクト部54-2の下端に接する第2プラグ部202が設けられる。第2プラグ部202は、ベース領域14よりも高濃度の第2導電型(本例ではP++型)の領域である。
【0090】
第2プラグ部202は、エミッタ領域12を形成した後に、エミッタ領域12の内部にアクセプタを注入することで形成してよい。第1プラグ部201および第2プラグ部202は、それぞれ同一のドーズ量、且つ、同一の深さ位置にアクセプタを注入して形成した領域であってよい。ただし、第1プラグ部201は、P型のコンタクト領域15に更にアクセプタを注入した領域であるのに対し、第2プラグ部202は、N型のエミッタ領域12にアクセプタを注入してP型に反転させた領域である。このため第2プラグ部202は、第1プラグ部201よりもネット・ドーピング濃度が低い領域であってよい。
【0091】
図5は、b-b断面およびc-c断面を並べて示した図である。図5においては、メサ部60の近傍を拡大し、半導体基板10の下面23(図3図4参照)側を省略している。第2プラグ部202は、第1プラグ部201よりも下面23側まで設けられている。つまり、第2プラグ部202の下端の深さ位置Z202は、第1プラグ部201の下端の深さ位置Z201よりも、下面23側に配置されている。これにより、エミッタ領域12の下方から上面21に向かう正孔キャリアを、エミッタ電極52に引き抜きやすくなる。つまり、正孔キャリアが通過する経路の電気抵抗を低くできるので、当該経路における電圧降下を小さくし、いわゆるラッチアップを抑制できる。第2プラグ部202の下端の深さ位置Z202は、第1プラグ部201の下端の深さ位置Z201よりも0.1μm以上、下面23側に配置されていてよく、0.3μm以上、下面23側に配置されていてもよい。
【0092】
第2プラグ部202の下端の深さ位置Z202は、エミッタ領域12の下端の深さ位置Z12よりも、下面23側に配置されていることが好ましい。深さ位置Z202は、ベース領域14の内部に配置されてよい。これにより、エミッタ領域12の下方から上面21に向かう正孔キャリアを更に引き抜きやすくなる。
【0093】
コンタクト領域15、第1プラグ部201および第2プラグ部202は、同一元素のアクセプタを含んでよい。コンタクト領域15、第1プラグ部201および第2プラグ部202のそれぞれにおいて、最も濃度(atoms/cm)の高いアクセプタの元素が同一であってよい。当該元素は例えばボロンであるが、これに限定されない。コンタクト領域15および第1プラグ部201のアクセプタを同一元素とすることで、第2プラグ部202を、第1プラグ部201よりも下面23側まで容易に形成できる。
【0094】
一般に、不純物の濃度差が大きいほど、当該不純物の拡散係数は大きくなる。つまり、例えば所定の注入領域にボロンを注入した場合、注入領域の近傍に既に存在していたボロンの濃度が低いほど、新たに注入したボロンが拡散しやすくなる。プラグ部を形成すべくボロン等のアクセプタを注入する場合に、コンタクト領域15には、ベース領域14を形成するアクセプタだけでなく、ベース領域14よりも高ドーピング濃度のコンタクト領域15を形成するアクセプタも存在する。すなわち、既にボロン等のアクセプタが高濃度に存在している。例えば第1トレンチコンタクト部54-1の下端にアクセプタを注入する場合に、第1トレンチコンタクト部54-1の下端にはベース領域14よりも高濃度のコンタクト領域15を形成するアクセプタが存在することから、注入されたアクセプタと、注入前から存在するアクセプタとの濃度差が小さい。そのため、濃度勾配が小さくなり、アクセプタが拡散するときの流束が小さく、それほど拡散しない。一方で、エミッタ領域12には、ボロン等のアクセプタがベース領域14を形成する程度しか存在していない。さらに、第2トレンチコンタクト部54-2の下端の深さ位置では、アクセプタは下面23側に向かって濃度が減少している。これにより、第2トレンチコンタクト部54-2の下端にアクセプタを注入する場合に、注入されたアクセプタの濃度と、ベース領域14のアクセプタの濃度の濃度差が、コンタクト領域15の場合(すなわち第2トレンチコンタクト部54-2の下端)と比べて大きい。そのため、濃度勾配が比較的に大きくなり、アクセプタが拡散するときの流束が大きくなる。これにより、注入されたアクセプタは、主に濃度が低い下面23側に向かってエミッタ領域12の内部を深く拡散し、さらにベース領域14にも拡散する場合がある。このため、半導体基板10をアニールした場合に、エミッタ領域12に注入したアクセプタは、コンタクト領域15に注入したアクセプタよりも下面23側に向かって広い範囲に拡散する。従って、第2プラグ部202を、第1プラグ部201よりも下面23側まで設けることができる。
【0095】
半導体基板10の上面21を基準としたトレンチコンタクト部54のZ軸方向の深さをL1とする。また、エミッタ領域12のZ軸方向の幅をL2とする。また、エミッタ領域12よりも下側に突出した第2プラグ部202のZ軸方向の長さをL3とする。深さL1は、幅L2の半分以下であってよい。深さL1を小さくすることで、トレンチコンタクト部54の内部に金属材料を充填しやすくなり、半導体装置の不良率を低減できる。深さL1を小さくしても、第2プラグ部202を下面23側に長く形成できるので、ラッチアップを抑制できる。また、深さL1を小さくすることで、ゲートトレンチ部40とベース領域14との界面まで、第2プラグ部202のアクセプタが拡散する可能性を低くでき、トランジスタ部70の閾値電圧の変動を抑制できる。深さL1は、幅L2の1/4以下であってもよい。深さL1は、0.2μm以上、0.6μm以下であってよい。深さL1は、0.3μm以上であってよく、0.5μm以下であってもよい。幅L2は、0.3μm以上、0.7μm以下であってよい。幅L2は、0.4μm以上であってよく、0.6μm以下であってもよい。
【0096】
長さL3は、幅L2より小さくてよい。長さL3は、幅L2の半分以下であってよい。長さL3を大きくしすぎると、ゲートトレンチ部40とベース領域14との界面まで、第2プラグ部202のアクセプタが拡散する可能性が高くなり、トランジスタ部70の閾値電圧が変動する場合がある。長さL3は、0μmより大きく、0.4μm以下であってよい。長さL3は、0.1μm以上であってよく、0.3μm以下であってもよい。
【0097】
第2プラグ部202の上端部の深さ位置をZp2とする。第2プラグ部202の上端部は、第2トレンチコンタクト部54-2の側壁に接していてよい。上面21から、第2プラグ部202の上端部の深さ位置Zp2までの幅をLa2とする。深さ位置Zp2から深さ位置Z12までの幅をLb2とする。幅La2は、幅Lb2よりも小さくてよい。これにより、第2トレンチコンタクト部54-2とエミッタ領域12との接触抵抗を小さく維持しながら正孔を引き抜きやすくでき、ラッチアップを抑制できる。
【0098】
第1プラグ部201の上端部の深さ位置をZp5とする。第1プラグ部201の上端部は、第1トレンチコンタクト部54-1の側壁に接していてよい。上面21から、第1プラグ部201の上端部の深さ位置Zp5までの幅をLa5とする。深さ位置Zp5から深さ位置Z15までの幅をLb5とする。幅La5は、幅Lb5よりも小さくてよい。また、幅La2は、幅La5よりも小さくてよい。これにより、第2トレンチコンタクト部54-2から正孔を引抜やすくでき、ラッチアップを抑制できる。
【0099】
第1プラグ部201の下端の深さ位置Z201は、コンタクト領域15の下端の深さ位置Z15と同じ深さであってよく、深さ位置Z15よりも上面21側に配置されていてもよい。コンタクト領域15の下端の深さ位置Z15は、エミッタ領域12の下端の深さ位置Z12よりも下面23側に配置されてよい。第2プラグ部202の下端の深さ位置Z202は、コンタクト領域15の下端の深さ位置Z15よりも下面23側に配置されてよい。
【0100】
第1プラグ部201の下端の深さ位置Z201は、エミッタ領域12の下端の深さ位置Z12よりも下面23側に配置されてよい。これにより、下面23側からの正孔キャリアを引き抜きやすくなり、ラッチアップを抑制できる。深さ位置Z201は、深さ位置Z12よりも上面21側に配置されていてもよい。
【0101】
なお、図3から図5においては、トランジスタ部70のメサ部60の構造を説明した。ダイオード部80のメサ部61は、メサ部60の構造に対して、エミッタ領域12およびコンタクト領域15に代えて、ベース領域14を有する。また、メサ部61は、メサ部60の構造に対して、コレクタ領域22に代えてカソード領域82を有する。メサ部61は、トレンチコンタクト部54を有してよい。トレンチコンタクト部54は、第1トレンチコンタクト部54-1および第2トレンチコンタクト部54-2と同一の深さ位置まで設けられる。メサ部61は、トレンチコンタクト部54の下端に接したP++型のプラグ部を有してよい。メサ部61のプラグ部は、第1プラグ部201と同一の深さ位置まで、または、第1プラグ部201よりも深くまで形成されてよい。メサ部61のプラグ部は、第2プラグ部202よりも浅く形成されてよい。ベース領域14と、当該プラグ部は、同一元素のアクセプタを含んでよい。
【0102】
図6は、図2におけるd-d断面の一例を示す図である。d-d断面は、メサ部60においてトレンチコンタクト部54を通過するYZ面である。図6においては、図5と同様に下面23側の領域を省略している。また、図6においては、層間絶縁膜38を省略している。
【0103】
図2に示したように、メサ部60の上面には、Y軸方向に沿ってエミッタ領域12とコンタクト領域15とが交互に配置されている。トレンチコンタクト部54のうち、上面視においてコンタクト領域15の内部に位置する領域を第1トレンチコンタクト部54-1とし、上面視においてエミッタ領域12の内部に位置する領域を第2トレンチコンタクト部54-2としている。図6に示すように、第1トレンチコンタクト部54-1および第2トレンチコンタクト部54-2は、Y軸方向に沿って交互に配置されている。第1トレンチコンタクト部54-1の下には、第1プラグ部201が配置され、第2トレンチコンタクト部54-2の下には、第2プラグ部202が配置されている。つまり、Y軸方向に沿って、第1プラグ部201と第2プラグ部202とが交互に配置されている。上述したように、第2プラグ部202の下端の深さ位置Z202は、第1プラグ部201の下端の深さ位置Z201よりも下面23側に配置されている。
【0104】
図7Aは、b-b断面およびc-c断面の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、第1プラグ部201、第2プラグ部202およびコンタクト領域15の相対位置が、図5に示した例と相違する。他の構造は、図5に示した例と同様である。
【0105】
本例の第2プラグ部202の下端の深さ位置Z202は、コンタクト領域15の下端の深さ位置Z15よりも上面21側に配置されている。第1プラグ部201の下端の深さ位置Z201も、コンタクト領域15の下端の深さ位置Z15よりも上面21側に配置されてよい。例えば、トレンチコンタクト部54を浅く形成することで、深さ位置Z201および深さ位置Z202を深さ位置Z15よりも浅く形成できる。それぞれのプラグ部を浅く形成することで、ゲートトレンチ部40の近傍までプラグ部のアクセプタが拡散することを抑制でき、トランジスタ部70の閾値電圧の変動を抑制できる。また、コンタクト領域15を深く形成することで、エミッタ領域12の下方から上面21に向かう正孔キャリアを、コンタクト領域15からも引き抜きやすくなる。
【0106】
図7Bは、図2におけるd-d断面の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、図7Aに示した構造を有している。図7Aにおいて説明したように、本例のプラグ部(すなわち第1プラグ部201および第2プラグ部202)は、コンタクト領域15よりも浅く設けられている。つまり第1プラグ部201の下端の深さ位置Z201および第2プラグ部202の下端の深さ位置Z202の両方が、コンタクト領域15の下端の深さ位置Z15よりも上面21側に配置されている。第2プラグ部202は、第1プラグ部201よりも下面23側まで設けられてよい。図7Bの例では、第1プラグ部201の下端の深さ位置Z201、第2プラグ部202の下端の深さ位置Z202およびコンタクト領域15の下端の深さ位置Z15が、上面21側から順番に深さ位置Z201、深さ位置Z202、深さ位置Z15の順番で配置されている。
【0107】
第1プラグ部201のY軸方向の長さをY201、第2プラグ部202のY軸方向の長さをY202とする。半導体基板10の上面21におけるエミッタ領域12の長さおよびコンタクト領域15の長さを、長さY201および長さY202としてよい。上面21におけるエミッタ領域12の長さおよびコンタクト領域15の長さは、トレンチコンタクト部54と接する位置で測定してよい。図7Bに示すように、第1プラグ部201および第2プラグ部202の深さ位置が異なる場合、当該深さ位置が変化するY軸方向の位置を、第1プラグ部201および第2プラグ部202の境界位置としてもよい。
【0108】
第1プラグ部201の長さY201は、第2プラグ部202の長さY202よりも長くてよく、同一であってよく、短くてもよい。本明細書で開示されるそれぞれの例においても同様である。
【0109】
図7Cは、図2におけるd-d断面の他の例を示す図である。本例においても図7Bの例と同様に、プラグ部(すなわち第1プラグ部201および第2プラグ部202)は、コンタクト領域15よりも浅く設けられている。ただし本例においては、第1プラグ部201の下端の深さ位置Z201と、第2プラグ部202の下端の深さ位置Z202とが同一である。他の構造は、図7Bの例と同様である。なお深さ位置が同一とは、±10%以内の誤差を含んでよい。つまり上面21から深さ位置Z201までの距離D201と、上面21から深さ位置Z202までの距離D202との差分の絶対値|D201-D202|が、距離D201および距離D202の少なくとも一方に対して10%以下である場合、深さ位置Z201および深さ位置Z202が同一とみなしてよい。本明細書において、各プラグ部の深さ方向の位置または距離は、各プラグ部のY軸方向の中央で測定してよく、Y軸方向の複数の箇所で測定した平均値を用いてよく、他の方法で測定した値を用いてもよい。
【0110】
本例のコンタクト領域15は、上面21の近傍にドーパントイオンを注入し、熱処理によりドーパントを拡散して形成している。このためコンタクト領域15のドーピング濃度は、上面21からZ軸方向に離れるほど低くなる。コンタクト領域15の深さ位置Z15が、第1プラグ部201の深さ位置Z201および第2プラグ部202の深さ位置Z202よりも十分深い場合、深さ位置Z201および深さ位置Z202におけるコンタクト領域15のドーピング濃度は低くなり、ベース領域14のドーピング濃度に近づく。このため、第1トレンチコンタクト部54-1の下端からコンタクト領域15に注入されたドーパントと、第2トレンチコンタクト部54-2の下端からエミッタ領域12またはベース領域14に注入されたドーパントとの拡散深さが同程度となる場合がある。この場合、本例のように、第1プラグ部201および第2プラグ部202の深さが、実質的に同一となる。
【0111】
上面21からコンタクト領域15の下端までの距離D15は、上面21から第1プラグ部201および第2プラグ部202の下端までの距離D20の1.5倍以上であってよく、1.75倍以上であってよく、2倍以上であってもよい。上面21から第1プラグ部201の下端までの距離と、上面21から第2プラグ部202の下端までの距離との平均値を、距離D20として用いてよい。上面21からコンタクト領域15の下端までの距離D15は、コンタクト領域15のY軸方向の中央で測定してよく、Y軸方向の複数の箇所で測定した平均値を用いてよく、他の方法で測定した値を用いてもよい。
【0112】
図8は、b-b断面の他の例を示す図である。X軸方向におけるメサ部60の幅をX60、ゲートトレンチ部40の幅をX40、トレンチコンタクト部54の幅をX54とする。幅X60および幅X40は、半導体基板10の上面21における幅であってよい。幅X54は、トレンチコンタクト部54の底面の幅であってよく、半導体基板10の上面21の高さにおける幅であってもよい。
【0113】
メサ部60の幅X60は、ゲートトレンチ部40の幅X40よりも小さくてよい。メサ部60を微細化することで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン抵抗を低減できる。また、第2トレンチコンタクト部54-2を浅く形成しても、第2プラグ部202を深くまで形成できるので、メサ部60を微細化した場合であっても、トレンチコンタクト部54を容易に形成できる。
【0114】
メサ部60の幅X60は、1μm以下であってよく、0.8μm以下であってよく、0.6μm以下であってもよい。トレンチコンタクト部54の幅X54は、メサ部60の幅X60の半分以下であってよい。幅X54は、0.15μm以上、0.4μm以下であってよい。
【0115】
図9は、第2トレンチコンタクト部54-2および第2プラグ部202の近傍を拡大した図である。本例の第2プラグ部202は、第2トレンチコンタクト部54-2の側面に接する第2部分212を有する。トレンチコンタクト部54の側面とは、XY面に対する傾きが45度以上、90度以下の面を指してよい。トレンチコンタクト部54の側面とは、半導体基板10の上面21から、トレンチコンタクト部54の半分の深さまでの面を指してもよい。
【0116】
本例の第2プラグ部202は、第2トレンチコンタクト部54-2に金属材料を充填する前に、第2トレンチコンタクト部54-2を介してアクセプタを注入することで形成される。この場合、アクセプタは、第2トレンチコンタクト部54-2の側面からも注入される。エミッタ領域12をP型に反転させる程度に、第2トレンチコンタクト部54-2の側面からアクセプタが注入されると、第2トレンチコンタクト部54-2の側面にP型の第2部分212が形成される。第2部分212は、ベース領域14よりもドーピング濃度が低くてよく、高くてもよい。
【0117】
図10は、第1トレンチコンタクト部54-1および第1プラグ部201の近傍を拡大した図である。図9に示した第2プラグ部202と同様に、本例の第1プラグ部201は、第1トレンチコンタクト部54-1の側面に接する第1部分211を有する。
【0118】
第1部分211のX軸方向の幅をX211とし、第2部分212のX軸方向の幅をX212とする。幅X211および幅X212は、半導体基板10の上面21における幅であってよい。第2部分212の幅X212は、第1部分211の幅X211よりも小さくてよい。それぞれのトレンチコンタクト部54の側面から注入されるアクセプタの量は、トレンチコンタクト部54の底面から注入されるアクセプタの量に比べて少ない。このため、第2トレンチコンタクト部54-2の側面から離れたエミッタ領域12では、アクセプタが到達してもP型に反転しづらくなる。このため、第2部分212の幅X212は小さくなる。一方で、第1トレンチコンタクト部54-1の側面からアクセプタが注入されると、アクセプタが到達した範囲のP型濃度は上昇するので、第1部分211の幅X211は、幅X212よりも大きくなる場合がある。
【0119】
また、第1プラグ部201のX軸方向の幅をX201とし、第2プラグ部202のX軸方向の幅をX202とする。各プラグ部のX軸方向における最大幅を、各プラグ部の幅としてよい。トレンチコンタクト部54の底面からは、比較的に多くのアクセプタが注入される。このため、各プラグ部が最大幅を示す深さ位置は、トレンチコンタクト部54の下端よりも下面23側であってよい。
【0120】
第1プラグ部201の幅X201は、第2プラグ部202の幅X202よりも小さくてよい。上述したように、エミッタ領域12においては、コンタクト領域15に比べてアクセプタが拡散しやすい。このため、第2トレンチコンタクト部54-2の底面から注入された多量のアクセプタは、エミッタ領域12においてX軸方向にも広く拡散し、幅X202は幅X201よりも大きくなる場合がある。
【0121】
図11は、第2トレンチコンタクト部54-2および第2プラグ部202の近傍の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、バリアメタル221およびシリサイド部231を備える。他の構造は、図1から図11において説明したいずれかの態様の半導体装置100と同様である。
【0122】
バリアメタル221は、トレンチコンタクト部54の底面および側面に沿って設けられる。バリアメタル221は、半導体基板10と、アルミニウムまたはタングステン等を含む電極との間に配置される。バリアメタル221は、層間絶縁膜38の側面に沿って更に設けられてよく、層間絶縁膜38の上面に沿って更に設けられてもよい。バリアメタル221は、チタンを含む金属で形成されてよい。バリアメタル221は、窒化チタン膜と、チタン膜とが積層された積層膜であってもよい。
【0123】
シリサイド部231は、第2トレンチコンタクト部54-2と、半導体基板10との境界に設けられる。本例のシリサイド部231は、バリアメタル221と、半導体基板10との境界に設けられる。シリサイド部231は、バリアメタル221に含まれる金属が、半導体基板10に含まれるシリコンによりシリサイド化して形成された部分であってよい。本例のシリサイド部231は、チタンシリサイドである。
【0124】
本例の第2プラグ部202はボロンを含む。シリサイド部231にも、ボロンが含まれてよい。第2プラグ部202のボロンが、シリサイド部231の内部に拡散してよい。シリサイド部231のうち、第2プラグ部202と接する部分にボロンが含まれてよい。図11においては、第2トレンチコンタクト部54-2および第2プラグ部202を示したが、第1トレンチコンタクト部54-1および第1プラグ部201の近傍においても、バリアメタル221およびシリサイド部231が設けられてよい。第1トレンチコンタクト部54-1のシリサイド部231の半導体基板10側の界面は、全体がコンタクト領域15または第1プラグ部201に接する。第1トレンチコンタクト部54-1のシリサイド部231の当該界面全体にボロンが含まれてよい。
【0125】
図12Aおよび図12Bは、半導体装置100の製造方法の一例を示す図である。図12Aおよび図12Bにおいては、製造工程の一部を示している。図12Aおよび図12Bにおいては、図5と同様にエミッタ領域12を通過する断面と、コンタクト領域15を通過する断面とを並べて示している。図12Aおよび図12Bにおいては、メサ部60の上面21側の構造を示している。
【0126】
まず上面側構造形成段階S1201において、半導体基板10の上面21の近傍の構造を形成する。上面側構造形成段階S1201においては、ドリフト領域18を有する半導体基板10に、ベース領域14、エミッタ領域12、コンタクト領域15、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、および、層間絶縁膜38を形成する。上面側構造形成段階S1201においては、蓄積領域16を更に形成してもよい。
【0127】
次にトレンチ形成段階S1202およびS1203において、層間絶縁膜38および半導体基板10の上面21をエッチングして、第1トレンチコンタクト部54-1および第2トレンチコンタクト部54-2を形成する。第1トレンチコンタクト部54-1はコンタクト領域15の内部まで設けられ、第2トレンチコンタクト部54-2はエミッタ領域12の内部まで設けられる。ただし当該段階では、第1トレンチコンタクト部54-1および第2トレンチコンタクト部54-2の内部に金属材料を充填しない。本例では、層間絶縁膜38および半導体基板10に形成した溝を、トレンチコンタクト部54と称している。
【0128】
次にプラグ注入段階S1204において、それぞれのトレンチコンタクト部54を介して、半導体基板10に第2導電型のドーパントを注入する。当該ドーパントは、コンタクト領域15を形成するために注入したドーパントと同一元素であることが好ましい。本例のドーパントはボロンである。プラグ注入段階S1204においては、注入したドーパントの濃度ピークが、エミッタ領域12およびコンタクト領域15の内部に配置されるように、ドーパントイオンの加速エネルギーを設定する。第1トレンチコンタクト部54-1および第2トレンチコンタクト部54-2に対しては、同一のドーズ量(ions/cm)でドーパントイオンを注入してよい。
【0129】
次にプラグアニール段階S1205において、半導体基板10をアニールする。これにより、第1プラグ部201および第2プラグ部202を形成する。上述したように、エミッタ領域12においては、コンタクト領域15よりもアクセプタの拡散係数が大きい。このため、第2プラグ部202は、第1プラグ部201よりも広い範囲に形成される。プラグアニール段階S1205においては、アニール炉で半導体基板10の全体をアニールしてよい。プラグアニール段階S1205では、第2プラグ部202が、少なくともベース領域14まで到達する温度および時間の条件で、半導体基板10をアニールしてよい。
【0130】
プラグアニール段階S1205の後に、トレンチコンタクト部54の内部に金属材料を充填してよい。また、プラグアニール段階S1205の後にエミッタ電極52を形成してよい。また、プラグアニール段階S1205の後に半導体基板10の下面23側のバッファ領域20、コレクタ領域22、カソード領域82およびコレクタ電極24を形成してよい。
【0131】
図13は、図12Bにおけるe-e線およびf-f線におけるアクセプタ濃度分布の一例を示す図である。e-e線は、第2プラグ部202およびベース領域14の一部を通過するZ軸と平行な線である。f-f線は、第1プラグ部201およびベース領域14の一部を通過するZ軸と平行な線である。
【0132】
図12Aおよび図12Bにおいて説明したように、第1プラグ部201および第2プラグ部202に対するボロン等のアクセプタのドーズ量は同一である。ただし、第2プラグ部202においては、第1プラグ部201よりもアクセプタが広範囲に拡散する。このため、第2プラグ部202のアクセプタ濃度のピーク値D2は、第1プラグ部201のアクセプタ濃度のピーク値D1よりも小さくてよい。第1プラグ部201においてアクセプタ濃度がピーク値を示す深さ位置Z1と、第2プラグ部202においてアクセプタ濃度がピーク値を示す深さ位置Z2は、同一であってよく異なっていてもよい。また、第1プラグ部201および第2プラグ部202の少なくとも一方において、トレンチコンタクト部54の下端に接する位置のアクセプタ濃度が最大値を示してもよい。
【0133】
上述したように、第2プラグ部202の下端の深さ位置Z202は、第1プラグ部201の下端の深さ位置Z201よりも下面23側に配置される。深さ位置Z202および深さ位置Z201は、トレンチコンタクト部54の下端から下面23側に向かって、アクセプタ濃度の傾きの絶対値が最初に減少を示す変化点の位置であってよい。上述したように、第2プラグ部202に注入されたアクセプタは下面23側に広く拡散するので、当該極小値を示す位置が第1プラグ部201よりも下面23側に配置される。
【0134】
第1プラグ部201のアクセプタ濃度のピーク値D1は、1×1020/cm以上であってよい。ピーク値D1は、1×1021/cm以下であってよい。なお、コンタクト領域15におけるアクセプタ濃度のピーク値は、ピーク値D1より小さくてよい。コンタクト領域15におけるアクセプタ濃度のピーク値は、1×1019/cm以上、1×1020/cm未満であってよい。第2プラグ部202のアクセプタ濃度のピーク値D2は、コンタクト領域15におけるアクセプタ濃度のピーク値より高くてよい。深さ位置Z201におけるベース領域14のアクセプタ濃度D3および深さ位置Z202におけるベース領域14のアクセプタ濃度D4は、例えば1×1016/cm以上、5×1017/cm以下である。アクセプタ濃度D4は、アクセプタ濃度D3より低くてよい。
【0135】
本例によれば、第2プラグ部202のピーク値D2が、第1プラグ部201のピーク値D1よりも小さい。前述のように、トレンチコンタクト部54を介してアクセプタを注入する前において、第2トレンチコンタクト部54-2の下端におけるアクセプタ濃度(/cm)は、第1トレンチコンタクト部54-1の下端におけるアクセプタ濃度と比べて、少なくとも一桁程度低い。そのため、エミッタ領域12の内部では、注入されたアクセプタが主に下面23側に向かって拡散する。このため、ピーク値D2はピーク値D1よりも小さくなる。また、エミッタ領域12の内部においては、上面21に水平な方向へのアクセプタの拡散を比較的に小さくでき、トランジスタ部70の閾値電圧の変動を抑制できる。また、第2プラグ部202のピーク値D2を高くすることで、正孔キャリアを引き抜きやすくなる。
【0136】
図14は、図2におけるe-e断面の一例を示す図である。e-e断面以外の構造は、図1から図13において説明したいずれかの形態と同様である。e-e断面は、メサ部60においてゲートトレンチ部40の近傍を通過するYZ面である。e-e断面においては、第1プラグ部201および第2プラグ部202が形成されていない。X軸方向において、e-e断面とゲートトレンチ部40との距離は、ゲートトレンチ部40とトレンチコンタクト部54との距離の1/10以下であってよい。図14においては、図5と同様に下面23側の領域を省略している。また、図14においては、層間絶縁膜38を省略している。
【0137】
当該断面において、半導体基板10の上面21には、エミッタ領域12およびコンタクト領域15がY軸方向に沿って交互に設けられている。コンタクト領域15は、エミッタ領域12よりも深くまで形成されてよい。
【0138】
Y軸方向において、エミッタ領域12の長さをY12、コンタクト領域15の長さをY15とする。上面21におけるエミッタ領域12およびコンタクト領域15の境界位置を用いて、各領域の長さを測定してよい。エミッタ領域12の長さY12は、コンタクト領域15の長さY15より短くてよく、同一であってよく、長くてもよい。
【0139】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0140】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0141】
10・・・半導体基板、11・・・ウェル領域、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、18・・・ドリフト領域、20・・・バッファ領域、21・・・上面、22・・・コレクタ領域、23・・・下面、24・・・コレクタ電極、29・・・直線部分、30・・・ダミートレンチ部、31・・・先端部、32・・・ダミー絶縁膜、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、39・・・直線部分、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・先端部、42・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート導電部、52・・・エミッタ電極、54・・・トレンチコンタクト部、60、61・・・メサ部、70・・・トランジスタ部、80・・・ダイオード部、81・・・延長領域、82・・・カソード領域、90・・・エッジ終端構造部、92・・・ガードリング、100・・・半導体装置、102・・・端辺、112・・・ゲートパッド、130・・・外周ゲート配線、131・・・活性側ゲート配線、160・・・活性部、201・・・第1プラグ部、202・・・第2プラグ部、211・・・第1部分、212・・・第2部分、221・・・バリアメタル、231・・・シリサイド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の上面に複数のトレンチ部が設けられ、前記上面の側に前記トレンチ部間の領域であるメサ部が設けられた半導体装置であって、
第1導電型のドリフト領域と、
前記上面と前記ドリフト領域との間に設けられた第2導電型のベース領域と、
少なくとも一部が前記上面に露出した、前記ベース領域よりも高濃度である第2導電型の第2高濃度領域と、
少なくとも一部が前記上面に露出した、前記ドリフト領域よりも高濃度である第1導電型の第1高濃度領域と、
前記上面から前記第2高濃度領域の内部まで設けられた第1溝、及び前記上面から前記第1高濃度領域の内部まで設けられた第2溝に充填された金属電極と、
を備え、
前記第1溝の下方の前記メサ部のアクセプタ濃度の最大値である第1ピーク値は、前記第2溝の下方の前記メサ部のアクセプタ濃度の最大値である第2ピーク値よりも高い
半導体装置。
【請求項2】
前記第2溝の直下の前記メサ部のアクセプタの拡散範囲は、前記第1溝の直下の前記メサ部のアクセプタの拡散範囲よりも広い
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1ピーク値は、1×10 20 /cm 以上、1×10 21 /cm 以下である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1溝の下方の前記メサ部のアクセプタ濃度分布において、前記第2高濃度領域として前記第1溝の直下の第1プラグ部とコンタクト領域とを含み、
前記第2溝の下方の前記メサ部のアクセプタ濃度分布において、前記第2溝の直下に第2プラグ部を含む
請求項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2プラグ部の下端は、前記第1プラグ部の下端よりも深くに配置されている
請求項に記載の半導体装置。
【請求項6】
アクセプタ濃度分布において、前記第1プラグ部の下端及び前記第2プラグ部の下端は、アクセプタ濃度の傾きの絶対値が最初に減少を示す変化点の位置である
請求項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2ピーク値は、前記コンタクト領域におけるアクセプタ濃度の最大値である第3ピーク値以上である
請求項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第3ピーク値は、1×10 19 /cm 以上、1×10 20 /cm 未満である
請求項に記載の半導体装置。
【請求項9】
複数の前記トレンチ部が配列される配列方向の前記メサ部の幅は、いずれか1つの前記トレンチ部の幅よりも小さい
請求項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記金属電極は、前記第1溝及び前記第2溝に充填されるタングステンを含む
請求項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1溝及び前記第2溝は、第1の深さを有する
請求項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1の深さは、前記第1高濃度領域の深さ方向における幅の半分以下である
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1の深さは、0.2μm以上、0.6μm以下である
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第2高濃度領域および前記第1高濃度領域は、前記トレンチ部の延伸方向に沿って、前記上面に交互に露出している
請求項1から13のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第2高濃度領域および前記第1高濃度領域は、前記トレンチ部の延伸方向に沿って、ストライプ状に設けられている
請求項1から13のいずれか1項に記載の半導体装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
本発明の第1の態様においては、半導体装置を提供する。上記半導体装置には、半導体基板の上面に複数のトレンチ部が設けられ、前記上面の側に前記トレンチ部間の領域であるメサ部が設けられてよい。上記いずれかの半導体装置は、第1導電型のドリフト領域と、前記上面と前記ドリフト領域との間に設けられた第2導電型のベース領域とを備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、少なくとも一部が前記上面に露出した、前記ベース領域よりも高濃度である第2導電型の第2高濃度領域を備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、少なくとも一部が前記上面に露出した、前記ドリフト領域よりも高濃度である第1導電型の第1高濃度領域を備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、前記上面から前記第2高濃度領域の内部まで設けられた第1溝、及び前記上面から前記第1高濃度領域の内部まで設けられた第2溝に充填された金属電極を備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、前記第1溝の下方の前記メサ部のアクセプタ濃度の最大値である第1ピーク値は、前記第2溝の下方の前記メサ部のアクセプタ濃度の最大値である第2ピーク値よりも高くてよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2溝の直下の前記メサ部のアクセプタの拡散範囲は、前記第1溝の直下の前記メサ部のアクセプタの拡散範囲よりも広くてよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1ピーク値は、1×10 20 /cm 以上、1×10 21 /cm 以下であってよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記いずれかの半導体装置は、前記第1溝の下方の前記メサ部のアクセプタ濃度分布において、前記第2高濃度領域として前記第1溝の直下の第1プラグ部とコンタクト領域とを含んでよい。上記いずれかの半導体装置は、前記第2溝の下方の前記メサ部のアクセプタ濃度分布において、前記第2溝の直下に第2プラグ部を含んでよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2プラグ部の下端は、前記第1プラグ部の下端よりも深くに配置されていてよい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記いずれかの半導体装置のアクセプタ濃度分布において、前記第1プラグ部の下端及び前記第2プラグ部の下端は、アクセプタ濃度の傾きの絶対値が最初に減少を示す変化点の位置であってよい。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2ピーク値は、前記コンタクト領域におけるアクセプタ濃度の最大値である第3ピーク値以上であってよい。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
上記いずれかの半導体装置において、前記第3ピーク値は、1×10 19 /cm 以上、1×10 20 /cm 未満であってよい。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
上記いずれかの半導体装置において、複数の前記トレンチ部が配列される配列方向の前記メサ部の幅は、いずれか1つの前記トレンチ部の幅よりも小さくてよい。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
上記いずれかの半導体装置において、前記金属電極は、前記第1溝及び前記第2溝に充填されるタングステンを含んでよい。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1溝及び前記第2溝は、第1の深さを有してよい。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1の深さは、前記第1高濃度領域の深さ方向における幅の半分以下であってよい。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
上記いずれかの半導体装置において、第1の深さは、0.2μm以上、0.6μm以下であってよい。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2高濃度領域および前記第1高濃度領域は、前記トレンチ部の延伸方向に沿って、前記上面に交互に露出していてよい。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2高濃度領域および前記第1高濃度領域は、前記トレンチ部の延伸方向に沿って、ストライプ状に設けられていてよい。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。