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特開2024-8480バッター、油ちょう食品およびそれらの製造方法
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  • 特開-バッター、油ちょう食品およびそれらの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008480
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】バッター、油ちょう食品およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/10 20160101AFI20240112BHJP
   A23L 7/157 20160101ALN20240112BHJP
   A23L 13/50 20160101ALN20240112BHJP
【FI】
A23L5/10 E
A23L7/157
A23L13/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110393
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(71)【出願人】
【識別番号】505126610
【氏名又は名称】株式会社ニチレイフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】秦 隆志
(72)【発明者】
【氏名】西内 悠祐
(72)【発明者】
【氏名】多田 佳織
(72)【発明者】
【氏名】石嵜 雄一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 健太
(72)【発明者】
【氏名】筒井 泰之
(72)【発明者】
【氏名】青木 仁史
(72)【発明者】
【氏名】塚本 真也
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B025LB07
4B025LG01
4B025LK01
4B025LK02
4B025LK07
4B025LP20
4B035LC03
4B035LC05
4B035LE17
4B035LG35
4B035LK04
4B035LK05
4B035LK13
4B035LP07
4B035LP27
4B035LP59
4B042AC05
4B042AC06
4B042AD18
4B042AG07
4B042AH01
4B042AK20
4B042AP05
4B042AP19
4B042AP26
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】油ちょう食品の衣に対してサクサク感や歯切れ等の食感を付与し、当該食感の劣化の防止する新たな技術的手段を提供する。
【解決手段】バッター原料液を準備する工程、およびバッター原料液にファインバブルを導入して油ちょう食品用バッターを取得する工程を含む、油ちょう食品用バッターの製造方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッター原料液を準備する工程、および
前記バッター原料液にファインバブルを導入して油ちょう食品用バッターを取得する工程を含む、油ちょう食品用バッターの製造方法。
【請求項2】
前記バッター原料液の粘度が、前記油ちょう食品の衣の特性情報を参照して予め設定された範囲に調整されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バッター原料液の粘度が500~10,000cpsである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
X線CT装置を用いて撮影した前記油ちょう食品の衣の断面の面積全体に対する0.3mm以上の空隙部分の面積の和の割合(%)が5%未満である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記バッター原料液が、穀物粉および水を少なくとも含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記バッター原料液が、乳化剤および増粘剤から選択される少なくとも一つの原料成分をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の製造方法により得られた、油ちょう食品用バッター。
【請求項8】
請求項6に記載のバッターを中具の表面に付着させる工程を含む、油ちょう用加工食品の製造方法。
【請求項9】
中具と、中具の表面に付着した請求項6に記載の油ちょう食品用バッターとを含む、油ちょう用加工食品。
【請求項10】
請求項8に記載の油ちょう用加工食品を油ちょうする工程を含む、油ちょう食品の製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載に記載の製造方法により得られた、油ちょう食品。
【請求項12】
X線CT装置を用いて撮影した衣の断面の面積全体に対する0.3mm以上の空隙部分の面積の和の割合(%)が5%未満である、油ちょう食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッター、油ちょう食品およびそれらの製造方法に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
鶏のから揚げやコロッケのようなフライ類等の油ちょう食品は、肉類、魚介類等の中具のジューシー感および衣のサクサク感を兼ね備えたものが良好な品質として好まれている。スーパーやコンビニエンスストアー等においてこのような油ちょう食品は、その場で油ちょうした後、常温または冷蔵して陳列したり、容器等に包装して販売されたり、温かさを保持するために電気ヒーター式等の店頭販売用ウォーマーケース内で保温した状態で陳列して販売されている。上記形態等で販売される油ちょう食品は、衣が硬くなり噛み切り難くさが発生してくるとともに、衣のサクサク感が低下するという問題がある。例えば、ウォーマーケース内で保温した状態で陳列して販売される油ちょう食品の場合、保温時間にもよるが、通常、ウォーマー保温後、約3~4時間経過した場合には商品としての価値が著しく低下するおそれがあるため、廃棄されることが多い。
【0003】
一方で、油ちょう食品の食感を消費者に受け入れやすい状態に保持するための種々の検討が従前行われている。例えば、バッター原料中の粉の量が多いと食感が重く、衣の噛み切り難さ、歯に付く感じが出るために、バッターに配合される水分量をバッターがその機能を担保しうる範囲で調整することが一般的に行われている。しかしながら、バッター原料成分中の不溶性成分が吸収した水分は、油ちょう食品を製造する際に行う油ちょうにより蒸発し難いため、衣のサクサク感が低下する場合がある。したがって、バッター中有の水分量の調整により油ちょう食品の衣のサクサク感と歯切れとの両立することはしばしば困難となる。
【0004】
また、油脂や澱粉等のバッター原料を変更することにより、油ちょう食品の衣の食感を調整する検討が従前行われている。しかしながら、小麦由来の澱粉の種類等を単純に変更しても、例えば、グルテン量が多くなると衣が硬くなり噛み切り難くなって油ちょう食品の衣本来の食感ではなく、パン類のような食感になる場合がある。また、バッター原料中の澱粉の種類を変更して、グルテン量を少なくしても、油ちょう食品の衣の歯ごたえ等について損なわれる場合がある。
【0005】
一方で、近年、バッターの水分量や原料組成を変更する以外に油ちょう食品の衣の食感を改善する手法が報告されている。例えば、特許文献1には、マイクロナノバブルを発生させた水をバッターの原料として使用することを特徴とする多孔性小麦粉食品の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-166874号公報
【発明の概要】
【0007】
しかしながら、油ちょう直後および小売上に必要な保管期間において、油ちょう食品の衣のサクサク感や歯切れを良好に保持する効果的な技術的手段が依然として求められている。
【0008】
本開示者らは、今般、鋭意検討した結果、予め準備したバッターにファインバブルを導入したところ、油ちょう食品の衣に対してサクサク感や歯切れ等の食感を付与し、当該食感の劣化の防止を効果的に行うことができることを見出した。本開示は、かかる知見に基づくものである。
【0009】
したがって、本開示は、油ちょう食品の衣に対してサクサク感や歯切れ等の食感を付与し、当該食感の劣化の防止する新たな技術的手段を提供する。
【0010】
本開示の一実施態様によれば、バッター原料液を準備する工程、および
上記バッター原料液にファインバブルを導入して油ちょう食品用バッターを取得する工程を含む、油ちょう食品用バッターの製造方法およびそれにより得られた油ちょう食品用バッターが提供される。
【0011】
また、本開示の別の一実施態様によれば、上記バッターを中具の表面に付着させる工程を含む、油ちょう用加工食品の製造方法およびそれにより得られた油ちょう用加工食品が提供される。
【0012】
また、本開示の別の一実施態様によれば、上記油ちょう用加工食品を油ちょうする工程を含む、油ちょう食品の製造方法およびそれにより得られた油ちょう食品が提供される。
【0013】
本開示によれば、油ちょう食品の衣に対してサクサク感や歯切れ等の食感を付与し、当該食感の劣化の防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】から揚げ(比較区1の上面、比較区1Aの上面および側面、試験区1の上面および側面、ならびに試験区4の側面)における衣の断面面積全体に対する0.3mm以上の空隙部分の面積の和の割合(%)を示すグラフである。
図2】から揚げ(比較区1の上面、比較区1Aの上面および側面、試験区1の上面および側面、ならびに試験区4の上面および側面)における衣の断面のX線CT画像である。
【発明の具体的説明】
【0015】
<油ちょう食品用バッターの製造方法/油ちょう食品用バッター>
本開示の一実施態様によれば、油ちょう食品用バッターの製造方法は、バッター原料液を準備する工程、およびバッター原料液にファインバブルを導入して油ちょう食品用バッターを取得する工程を含むことを特徴としている。本開示の一実施態様において、バッター原料液は、ファインバブルを導入しなくてもバッターとしてそのまま使用することができるように予め調製されたものである。とりわけバッター原料液に対してファインバブルを導入することにより、油ちょう食品の衣に対してサクサク感や歯切れ等の食感を付与し、当該食感の劣化を防止しうることは意外な事実である。
【0016】
(バッター原料液の準備工程)
本開示の一実施態様において、バッター原料液の準備は、公知のバッターを購入することにより実施してもよく、原料成分を適宜混合することにより実施してもよい。したがって、本開示の一実施態様によれば、バッター原料液の準備工程は、原料成分を混合する工程を含む。
【0017】
本開示の一実施態様において、バッター原料液の原料成分は、穀粉類、澱粉類およびそれらの組合せから選択させる原料粉、および水を少なくとも含む。
【0018】
バッターの原料粉として用いられる穀粉類としては、例えば、小麦粉(薄力粉、中力粉、強力粉)、米粉、とうもろこし粉や、ひえ、粟等の雑穀粉が挙げられる。
【0019】
バッターの原料粉として用いられる澱粉類としては、例えば、タピオカ、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、コメ、緑豆、小麦等の様々な原料から精製して得られる澱粉類、これらの澱粉類を適宜化学的に加工して得られる加工澱粉類(アセチル化澱粉等)等が挙げられる。
【0020】
バッター原料液における上記原料粉の含有量は、特に限定されないが、中具全表面にバッターを効果的に付着させる観点から、バッター原料液の全体質量に対して、例えば、30~70質量%とすることができ、好ましくは35~65質量%、より好ましくは40~60質量%、さらに好ましくは45~55質量%とされる。
【0021】
バッター原料液における水の含有量は、特に限定されないが、バッターの流動性と付着性を両立させる観点から、バッター原料液の全体質量に対して、例えば、30~70質量%とすることができ、好ましくは35~65質量%、より好ましくは40~60質量%、さらに好ましくは45~55質量%とされる。
【0022】
また、本開示の一実施態様において、バッター原料液は、乳化剤、増粘剤等の他の原料成分をさらに含んでいてもよい。
【0023】
バッター原料液に用いられる乳化剤は、食品用の乳化剤であればいずれのものを用いてもよく、例えば、レシチン、サポニン、カゼインナトリウムなどの天然の乳化剤や、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの合成乳化剤のいずれを用いてもよい。
【0024】
本開示の一実施態様において、バッター原料液における乳化剤の含有量は特に制限されるものではなく、他の原料成分と水の含有量に応じて、これらが良好に乳化するように決定することができる。バッター原料液における乳化剤の含有量は、バッター原料液の全体質量に対して、例えば、0.1~5質量%とすることができ、好ましくは0.5~2質量%、より好ましくは0.5~1.5質量%とされる。
【0025】
バッター原料液に用いられる増粘剤は、例えば、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム等の増粘多糖類が挙げられる。
【0026】
バッター原料液における増粘剤の含有量は、バッター原料液の全体質量に対して、例えば、0.01~5質量%とすることができ、好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.01~1質量%とされる。
【0027】
本開示の一実施態様において、バッター原料液には、上記原料成分の他に、本開示の効果を損なわない範囲で、通常バッターに使用される他の原料成分を含有させることができる。他の原料成分としては、例えば、大豆油等の食用油類、食塩や砂糖、アミノ酸等の調味料、β-カロテン等の色素、香料、酸味料、pH調整剤、乳化剤、糖類、食物繊維、動物性又は植物性タンパク質素材が挙げられる。
【0028】
本開示の一実施態様において、バッター原料液の粘度は、油ちょう食品の食感を向上する観点から、油ちょう食品の衣の特性情報を参照して予め調整しておくことが好ましい。かかる油ちょう食品の衣の特性情報の好適な例としては、油ちょう食品の衣の食感(サクサク感、歯切れ等)や、X線CT(Computed Tomography)装置を用いて撮影した油ちょう食品の衣の断面の面積全体に対する空隙部分(例えば0.3mm以上)の面積の和の割合(%)等が挙げられる。
【0029】
本開示の一実施態様において、油ちょう食品の衣の特性情報が油ちょう食品の衣の食感(サクサク感、歯切れ等)である場合、バッター原料液の粘度範囲の調整は、油ちょう食品の衣のサクサク感または歯切れのいずれかの評価スコアが基準区の評価スコアと比較して、例えば0.6以上、好ましくは0.8以上高くなるように実施される。衣の食感の評価は、後述する試験例1に記載の手法により実施することができる。
【0030】
また、本開示の一実施態様において、油ちょう食品の衣の特性情報がX線CT装置を用いて撮影した油ちょう食品の衣の断面の面積全体に対する空隙部分(0.3mm以上)の面積の和の割合(%)である場合、バッター原料液の粘度範囲の調整は、X線CT装置を用いて撮影した衣の断面の面積全体に対する空隙部分(0.3mm以上)の面積の和の割合(%)が,例えば5%未満、好ましくは3%以下となるように実施される。油ちょう食品の衣の断面面積全体に対する空隙部分の測定方法は、後述する試験例3に記載の手法により実施することができる。
【0031】
本開示の一実施態様によれば、上記バッター原料液の粘度は、ファインバブルを効率的に封入する観点から、例えば、10℃における粘度を、500~10,000cpsとすることができ、好ましくは1,000~6,000cps、より好ましくは1500~4,000cpsとされる。理論に拘束されるものではないが、バッターの粘度を上述の範囲に設定すれば、バッターの流動性は維持されつつも、封入されるファインバブルが抜けにくくなり、ファインバブルの封入体積も向上することから、食感の改善効果も向上するものと考えられる。
【0032】
バッター原料液の粘度は、例えば、原料成分の種類、割合を適宜変更することにより調整することができる。
【0033】
また、本開示の一実施態様によれば、バッター原料液の粘度は、C型粘度計(例えば、型番「CVR-20」トキメック社製)を用いて測定することができる。
【0034】
(ファインバブル導入工程)
本開示の一実施態様によれば、ファインバブル導入工程は、上記バッター原料液にファインバブルを導入して油ちょう食品用バッターを取得する工程を含む。本開示の方法によれば、とりわけバッター原料液にファインバブルを導入することにより、油ちょう食品の衣の食感等の特性を顕著に向上させることが可能となる。
【0035】
ここで、「ファインバブル」とは、直径が100μm未満の気泡のことであり、国際標準化機構(ISO20480-1)で規格化されている。また、そのうち、粒径1μm超100μm以下の目視可能な白濁の気泡を「マイクロバブル」、粒径1μm以下の目視不可能な無色透明の気泡を「ウルトラファインバブル」という。本開示において、そのような気泡は、旋回液流式、加圧溶解式、微細孔式など、公知の任意の発生方法により発生させることができる。本開示において、例えば、株式会社ナック製Foamestコラムタイプ_FP-20-300、IDEC株式会社製ultrafineGaLFFZ1N-05S、株式会社ナノクス製ナノフレッシャーNF-WP0.4、エンバイロ・ビジョン株式会社製YJノズルYJ-21、株式会社テクニカルライト製UFB DUAL、ノリタケカンパニーリミテッド製NGB-I1-15/M等を用いることができる。これらの装置を使用する場合、各装置のバブル発生方式に応じて、供給するガス圧(ガス流量)や液圧(液流量)、使用するフィルターの孔径などを調整することなどにより、所望の粒径および気泡粒子密度とすることができる。例えば、旋回液流式装置などのバブルを発生させる液の流動を伴う発生装置の場合には、主に、供給するガス圧(ガス流量)および液圧(液流量)を調整することにより、バブルの粒径や気泡粒子密度を調整することができる。また、バブルを発生させる液の流動を伴わない発生装置である、例えば、細孔式発生装置の場合には、供給するガス圧(ガス流量)や液圧(液流量)に加えて、使用するフィルターの孔径を調整することにより粒径や気泡粒子密度を調整することができる。さらに、異なるバブル発生方式の装置を適宜組み合わせることによって、バブルを発生させてもよい。
【0036】
本開示の一実施態様によれば、細孔式発生装置等の公知のファインバブル導入装置を用いてファインバブルをバッター原料液に繰り返し導入してもよい。一実施態様によれば、ファインバブルを導入する際のバッター原料液の流量やガス流量、上記繰り返しの回数は、特に限定されず、所望の油ちょう食品の食感等を勘案して決定してよいが、バッター原料液の流量は、例えば1~3mL/min程度、ファインバブルのガス流量は、例えば50~200mL/min程度とし、1~20回程度繰り返して導入処理を実施することができる。
【0037】
本開示の一実施態様において、ファインバブルの気泡中に含まれる気体は、特に限定されず、空気であってもよい。
【0038】
本開示の一実施態様において、バッター原料液には、粒径が約100μm以下のファインバブルの気泡粒子が導入させる。そのように微小な気泡粒子を含有させたバッターは油ちょう処理することにより、油ちょう食品の衣に良好なサクサク感と歯切れを効率よく付与することをできる。バッター原料液に導入される気泡粒子の粒径の好ましいより具体的な範囲としては、1nm~100μm、1nm~80μm、10nm~60μmまたは20nm~50μmが挙げられる。
【0039】
本開示おいて、バッター原料液に導入される気泡などの粒子の粒径とは、粒子の直径のことをいう。粒子の直径とは、各粒子を完全な球体と仮定した場合における、その直径に相当する値のことをいう。バッター原料液に導入される気泡粒子の粒径は、上述のような公知のファインバブル導入装置において適宜調整することができる。
【0040】
本開示の一実施態様において、ファインバブルの導入工程の温度は、特に限定されないが、例えば25℃以下、好ましくは20℃以下、より好ましくは15℃以下、最も好ましくは0~10℃である。また、上記温度は、例えば、バッター原料液またはバッターが攪拌されて該液の温度が略均一である状態で、当該技術分野において通常用いられる温度計を挿入することなどにより測定することができる。
【0041】
本開示の一実施態様によれば、上述のような方法により、上記バッター原料液にファインバブルを導入することにより、油ちょう食品用バッターを提供することができる。
【0042】
<油ちょう用加工食品/製造方法>
また、本開示の一実施態様によれば、上記方法により得られた油ちょう食品用バッターを中具の表面に付着させる工程を含む、油ちょう用加工食品の製造方法が提供される。ここで、「油ちょう用加工食品」とは、油ちょう処理用の加工がなされ、かつ、油ちょう処理前である食品をいう。
【0043】
中具は、特に限定されないが、例えば、肉類、魚介類等であってもよい。油ちょう食品の種類に応じて、中具を所定の大きさにカットし、所定の下拵えをするか、素のまま用いることができる。
【0044】
肉類としては、例えば、鶏、豚、牛等の畜肉を挙げることができる。魚介類としては、例えば、エビなどの甲殻類が挙げられる。
【0045】
中具に水分を導入する保水作用を有する保水剤溶液を準備することが好ましい。該保水剤溶液は、例えば、ポリリン酸ナトリウム等のリン酸塩、クエン酸三ナトリウム等のクエン酸塩、炭酸ナトリウム等の炭酸塩のうち単独又は2種以上の混合物と、塩と、水とを含んでいてもよい。また、塩としては、塩が含まれるしょうゆ等の調味料を用いることができる。
【0046】
中具として肉類を用いる場合には、保水処理に用いる容器付混合機を準備することが好ましい。該容器付混合機は、上記保水剤溶液と、カットされた複数の肉類とを混合でき、保水剤溶液を肉類の表面から浸透させることが可能なものであれば特に限定されず、例えば、羽根付回転筒状タンク(タンブラー)を備えた混合機が挙げられ、市販品を用いることもできる。
【0047】
また、バッターを中具の表面に付着させる方法としては、特に限定されないが、バッターを中具の表面に均一に付着させる観点から、例えば、塗布やコーティング等の処理や、バッターと中具を混合する処理を用いることが好ましい。
【0048】
中具に付着させるバッターの量は、特に限定されないが、中具の表面全体を被覆する観点から、通常、中具100質量部あたり、5~30質量部程度とされる。
【0049】
一実施態様によれば、中具に付着させる工程の実施前に、予め中具に常法に従って打ち粉を施すこともできる。
【0050】
また、一実施態様によれば、上記バッターを付着させた後、本開示の衣用バッターに加え、別のバッター、ブレッダーミックス粉またはパン粉等の衣材を付着させてもよい。このような衣材としては、市販品(ブレッダーミックス粉等)を用いてもよい。
【0051】
また、本開示の一実施態様によれば、油ちょう食品用バッターを中具の表面に付着させることにより得られた、油ちょう用加工食品が提供される。好ましい実施態様によれば、油ちょう用加工食品は、目的とする油ちょう食品の中具と、該中具の外側に位置する本開示のバッターの層とを含んでなる。油ちょう用加工食品は、そのまま保管、販売してもよく、油ちょうすることにより油ちょう食品として保管、販売してもよい。
【0052】
<油ちょう食品/製造方法>
また、本開示の一実施態様によれば、上記油ちょう用加工食品を油ちょうする工程を含む、油ちょう食品の製造方法が提供される。ここで、「油ちょう食品」とは、油ちょう用加工食品を油ちょうしてなる食品をいい、「揚げ物」とも称される。
【0053】
本開示の一実施態様によれば、油ちょうは、公知のフライヤーを用いて実施することができる。油ちょう条件は、中具の種類や大きさ等に応じて温度および時間を当業者が適宜設定することができる。例えば、油ちょう工程における油温は、通常160~200℃程度、油ちょう時間は15~30分程度とすることができる。
【0054】
また、油ちょう食品は、そのまま食品として提供してもよいが、一定期間常温で保管した後に販売してもよく、冷蔵または冷凍処理を行って保管、運搬し、広範囲の消費者に販売してもよい。したがって、本開示の一実施態様によれば、上記油ちょう食品の製造方法は、油ちょう食品を、常温保管、冷凍または冷蔵する工程をさらに含む。このような常温保管、冷蔵、冷凍処理は、公知の方法で実施することができる。ここで、常温、冷蔵、冷凍保管に適用される温度は、後述する常温販売、冷蔵販売、冷蔵販売と同様とすることができる。
【0055】
また、本開示の一実施態様によれば、常温保管、冷蔵または冷凍した油ちょう食品は再度油ちょう処理して消費者に提供してもよい。したがって、本開示の一実施態様によれば、本開示の方法は、常温保管、冷蔵または冷凍工程により得られた油ちょう食品を油ちょうする工程を含む。かかる2回目の油ちょうは、1回目の油ちょうに準じて公知の方法に従い実施することができる。
【0056】
また、本開示の別の実施態様によれば、上記油ちょう食品用バッターと中具とを準備する工程、上記油ちょう食品用バッターを中具の表面に付着させて油ちょう用加工食品を取得する工程、油ちょう用加工食品を油ちょうして油ちょう食品を取得する工程、所望により油ちょう食品を冷蔵または冷凍する工程を含む、油ちょう食品の製造方法が提供される。また、本開示の一実施態様によれば、上記方法により得られた、油ちょう食品が提供される。
【0057】
また、本開示の一実施態様において、油ちょう食品の衣は、サクサク感や歯切れの向上の観点から、サイズの大きい空隙部分の割合を低減させておくことが好ましい。本開示の一実施態様によれば、X線CT装置を用いて撮影した衣の断面の面積全体に対する空隙部分(0.3mm以上)の面積の和の割合(%)が5%未満である、油ちょう食品が提供される。X線CT装置を用いて撮影した油ちょう食品の衣の断面の面積全体に対する空隙部分(0.3mm以上)の面積の和の割合(%)は、上述のように5%未満であってもよいが、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、さらに一層好ましくは0.1%以下とされる。
【0058】
油ちょう食品の好適な例としては、例えば、コロッケ、メンチカツ、トンカツ、エビフライ、魚介類フライ、春巻等のフライ類、天ぷら類(かき揚げ等)やから揚げ類が挙げられるが、から揚げ類が特に好ましい。
【0059】
油ちょう食品は、保管性に優れていることから、スーパーマーケットやコンビニエンスストアー等で一定期間保管して販売するうえで有利に利用することができる。したがって、本開示の一実施態様によれば、油ちょう食品は、ウォーマーケース内で約10分間~4時間程度保存して販売するウォーマー保存用、また、常温、冷凍または冷蔵販売用として用いることができる。ここで、常温販売とは、油ちょう食品が、通常、18~25℃程度の環境下に置かれて販売されることを意味する。また、冷蔵販売とは、油ちょう食品が、通常、-5℃~10℃程度の環境下に置かれて販売されることを意味する。また、冷凍販売とは、油ちょう食品が、通常、-18℃以下の環境下に置かれて販売されることを意味する。このような常温又は冷蔵販売用油ちょう食品を購入した消費者等は、当該油ちょう食品をそのまま食することができる他、電子レンジ等で加温して食することもできる。
【0060】
また、本開示の一実施態様によれば、以下が提供される。
(1)バッター原料液を準備する工程、および
上記バッター原料液にファインバブルを導入して油ちょう食品用バッターを取得する工程を含む、油ちょう食品用バッターの製造方法。
(2)上記バッター原料液の粘度が、上記油ちょう食品の衣の特性情報を参照して予め設定された範囲に調整されている、(1)に記載の方法。
(3)上記バッター原料液の粘度が500~10,000cpsである、(1)または(2)に記載の方法。
(4)X線CT装置を用いて撮影した上記油ちょう食品の衣の断面の面積全体に対する0.3mm以上の空隙部分の面積の和の割合(%)が5%未満である、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)上記バッター原料液が、穀物粉および水を少なくとも含む、(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6)上記バッター原料液が、乳化剤および増粘剤から選択される少なくとも一つの原料成分をさらに含む、(5)に記載の方法。
(7)(1)~(6)のいずれかに記載の製造方法により得られた、油ちょう食品用バッター。
(8)(7)に記載のバッターを中具の表面に付着させる工程を含む、油ちょう用加工食品の製造方法。
(9)中具と、中具の表面に付着した(7)に記載の油ちょう食品用バッターとを含む、油ちょう用加工食品。
(10)(9)に記載の油ちょう用加工食品を油ちょうする工程を含む、油ちょう食品の製造方法。
(11)(10)に記載に記載の製造方法により得られた、油ちょう食品。
(12)X線CT装置を用いて撮影した衣の断面面積全体に対する0.3mm以上の空隙部分の面積の和の割合(%)が5%未満である、油ちょう食品。
【実施例0061】
以下、本開示を実施例により説明するが、本開示はこれら実施例に限定されない。なお、特段の記載が無いかぎり、本明細書に記載の原料、単位、測定方法およびその他の規定は、日本工業規格(JIS)および日本農林規格(JAS)の記載に従う。
【0062】
試験例1
(1)バッター原料液サンプルの製造
下記の表1に示す配合表に従って原料成分を、ハンドブレンダー(ブラウン社製、型番:MQ500)に投入し、約4分間混合し、粘度4000cpsのバッター原料液サンプル1~6(以下、単に「サンプル1~6」ともいう。)を得た。バッター原料液の粘度は、C型粘度計(型番「CVR-20」トキメック社製)を用いて10℃における粘度を測定した。
【0063】
【表1】
【0064】
(2)試験区1~6
流量100mL/minの空気を入れながら、(1)で得られたバッター原料液サンプル1~6を2L/minの速度でファインバブル細孔式発生装置(ノリタケカンパニーリミテッド、NGB-I1-15/M)に10回通してISO20480-1に準拠するファインバブルを導入し、油ちょう用バッターサンプル(以下、「ファインバブルバッター」ともいう。)を得、それぞれを試験区1~6のバッター原料液サンプルとして以下の実験に用いた。
【0065】
(3)比較区1~6
(1)で得られたバッター原料液サンプル1~6をそのまま比較区1~6のバッター原料液サンプルとして以下の実験に用いた。
【0066】
(4)バッター原料液サンプルを用いた鶏から揚げの製造
(2)および(3)で得られたバッター原料液サンプルを用いて、以下の手順に従って鶏から揚げを製造した。
1.原料生肉の鶏肉を、一つの質量が25±2gとなるようにカットした。
2.調味液(醤油20%、食塩3.3%、グルタミン酸ナトリウム3.3%、水73.3質量%)を原料生肉100gに対して15gになるよう計量し、肉とともにPE袋に投入した。
3.PE袋の開口部をシールした。
4.PE袋に入った肉を、タンブラー(真空マッサージタンブラーMG-40型)を用いて、常圧下、チルド温度帯にて、12rpmで30分間マッサージした。
5.タンブリング後の肉をボールにとり、打ち粉として加工澱粉(商品名:松谷ばら、松谷化学工業株式会社製)を原料生肉100gに対し3.0gになるように投入し、混合した。
6.さらに、バッター原料液サンプルを、原料生肉100gに対し20.2gになるようにボールに投入し、混合した。
7.得られた衣付きの肉を、2度揚げにより油ちょうした。具体的には、170℃で2分間油ちょう後、常温で2分間静置し、170℃で2間油ちょうした。
8.得られた鶏のから揚げを、約-35℃の凍結庫で凍結した。
【0067】
(5)試食用の鶏から揚げの調製
上記(2)で得られた冷凍の鶏から揚げを175℃で7分間油ちょうした。
油ちょう直後の鶏から揚げ4個と、油ちょう後に加温什器(雰囲気温度70℃設定)で3時間補完した鶏から揚げ4個を官能評価に供した。
【0068】
(6)官能評価
上記(5)で製造された鶏から揚げサンプルについて、専門パネル5名による官能評価を行った。評価項目および評価基準は以下のとおりとし、ファインバブルを入れていない比較区1の各評価項目を3点(基準区)とし、各サンプルのスコアを評価した。3時間補完した鶏から揚げ4個を官能評価に供した。
【0069】
衣のサクサク感(スコア)
5:衣全体がサクサクしている、
4:基準区として衣のサクサクする部分が多い
3:基準区
2:基準区と比較して衣のサクサクする部分が少ない
1:衣全体がサクサクしていない
【0070】
歯切れ(噛み切り易さ)(スコア)
5:全く衣の噛み切り難さ、歯に付く感じがない、
4:基準区として衣の噛み切り難さ、歯に付く感じがあるが全体として問題が無い程度である
3:基準区
2:基準区と比較して衣の噛み切り難さ、歯に付く感じが強く感じられる
1:衣の噛み切り難さ、歯に付く感じが強く噛み切れない
【0071】
(6)結果
油ちょう直後の各サンプルについての官能評価の結果を下記の表2および表3に示す。表2および表3では、油ちょう直後の比較区1の各評価項目を3点としている。
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
また、油ちょう後3時間補完した各サンプルについての官能評価の結果を下記の表4および表5に示す。表4および表5では、3時間保管後の比較区1の各評価項目を3点としている。
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
対応する試験区と比較区とを比較すると、予め準備したバッター原料液サンプルにファインバブルを加えた試験区の方が、バッター原料液サンプルにファインバブルを加えない比較区よりも衣の食感(サクサク感)および歯切れについて、高いスコアを示す傾向が確認された。
【0076】
試験例2
(1)比較区1Aの製造
流量100mL/minの空気を入れながら、水を2L/minの速度でファインバブル発生器(ノリタケカンパニーリミテッド、NGB-I1-15/M)に10回通し、粒径10nm~100μmのファインバブルを1.0×10個/mL以上で含む水(以下、「FB水」ともいう。)を得た。次に、水に代えてFB水を用いる以外は試験例1の比較区1と同様にしてバッター原料液サンプルを製造した。
【0077】
(2)試食用の鶏から揚げの調製/官能評価
試験例1の試験区1および比較区1並びに比較区1Aのバッター原料液サンプルを用いて、試験例1と同様にから揚げを調製し、官能評価を行った。
【0078】
(3)結果
各サンプルについての官能評価の結果を下記の表6および表7に示す。
表6では、油ちょう直後の比較区1の各評価項目を3点としている。
【表6】
【0079】
表7では、3時間保管後の比較区1の各評価項目を3点としている。
【表7】
【0080】
油ちょう直後であっても、3時間保管後であっても、衣の食感(サクサク感)および歯切れのいずれも、試験区1(比較区1にファインバブルを直接導入することにより製造したバッターサンプル使用)の方が、比較例1(ファインバブルを加えずに製造したバッターサンプル使用)、比較区1A(FB水を原料として製造したバッターサンプル使用)よりも、高い官能評価スコアを示した。
【0081】
試験区1では、ファインバブルを含むことにより衣の構造が疎となり、衣の崩壊性が向上し、衣にサクサク感が付与されたものと考えられる。また一般的には、時間が経過すると衣中の澱粉がフィルム状になり噛み切りにくさの原因となるが、試験区1ではファインバブルが澱粉のフィルムを細かく分断することにより噛み切りにくさの発生が防止されたものと考えられる。
【0082】
また、FB水を用いた比較例1Aよりも、ファインバブルをバッターサンプルに直接導入した試験区1が良好なスコアを示した理由としては、バッターの粘性により気泡が抜けにくくなり、ファインバブルの導入体積も大きくなったことが一因と考えられる。
【0083】
なお、FB水を用いた比較例1Aでは、バッター中のFB水の容積を50%以上とするとバッター原料液が粘性を失いバッターを構成できず、バッターの製造原料としてのFB水の使用量には上限があることが判った。
【0084】
また、試験例1および試験例2の手法に準じて、バッター原料液の粘度範囲を調整し、衣の品質(サクサク感、歯切れ)に対する影響を確認したところ、バッター原料液の粘度が500~10,000cpsの範囲では、比較区と比べて品質が向上することを確認した。
【0085】
試験例3
試験例1の試験区1、試験区4、比較区1、および試験例2の比較区1Aのバッター原料液サンプルを用いて、試験例1と同様にから揚げを調製した。次に、以下の手順に従い、X線CT撮影を用いてから揚げの衣断面に対する0.3m以上の空隙の面積の割合を算出した。
<使用機器>
撮影機器:株式会社リガク 3DマイクロX線CT装置「CT Lab HX100」
制御ソフトウェア:Control software ver.4.3.1.6122
再構成ソフトウェア:CT reconstruction ver1.1.1.0
表示および解析ソフトウェア:VGSTUDIO MAX ver.3.4.5
【0086】
<手順>
1.から揚げを中心より半分に切断した。
2.平な切断面を下にして、直径25mmの試料ロッドに載した。試料ステージは標準ステージを使用した。
3.から揚げの衣部分が撮影視野に入るよう位置調整し、以下の撮影条件に則り、上面側と側面側からそれぞれ撮影を行った。
(撮影条件)
管電圧:100kV
管電流:200μA
撮影時間:17min
撮影モード:High Resolution(Binning 1)
X線フィルター:なし
ジオメトリ:Long
FOV:25×16.8mm(拡大倍率:5.45、画素サイズ8.97μm)
(装置コンディション)
管電圧100kV,管電流200μAでゲイン校正
空気、水でCT値校正
4.解析ソフトウェアで撮影データを読み込み、撮影される断面全体が衣部分となるように、衣部分の中で厚みのある箇所を選択して切り出した。
5.断面の画像中の衣部分を「マテリアル」、衣内部の空隙部分(空隙の輪郭(境界線)に囲まれる領域)を「欠陥」と見なし、断面におけるマテリアル面積、各欠陥の面積を算出した。
6.撮影される断面における0.3mm以上の欠陥をさらに抽出し、その面積の和を求めた。
7.(0.3mm以上の欠陥面積の和/マテリアル面積)×100として、「衣の断面面積全体に対する0.3mm以上の空隙部分の和の割合」を算出した。
【0087】
結果は、図1および図2に示される通りであった。
図1は、比較区1の上面、比較区1Aの上面および側面、試験区1の上面および側面、ならびに試験区4の側面におけるから揚げの衣の断面面積全体に対する0.3mm以上の空隙部分の面積の和の割合(%)を示す。
また、図2は、比較区1の上面、比較区1Aの上面および側面、試験区1の上面および側面、ならびに試験区4の上面および側面におけるから揚げの衣の断面のX線CT画像を示す。
【0088】
図1に示される通り、試験区1および試験区4ではいずれも0%であったのに対して、比較区1および比較区1Aでは5%以上であった。試験区1および試験区4では、ファインバブルがバッター液中に高レベルで保持されたことにより、衣中の0.3mm以上の空隙部分の割合が小さくなり、から揚げの衣に対してサクサク感や歯切れ等の食感が付与されたものと考えられる。
【0089】
本開示によれば、油ちょう食品の衣に対してサクサク感や歯切れ等の食感を付与し、当該食感の劣化の防止することができる。
図1
図2