(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084809
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】PEGMEMA及び薬物担持ポリマーセグメントから構成される自己集合化ジブロックコポリマー
(51)【国際特許分類】
A61K 47/64 20170101AFI20240618BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240618BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20240618BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20240618BHJP
A61K 31/09 20060101ALI20240618BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240618BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240618BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240618BHJP
C12N 9/99 20060101ALI20240618BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240618BHJP
C07K 5/103 20060101ALI20240618BHJP
C07K 5/062 20060101ALI20240618BHJP
C07K 5/065 20060101ALI20240618BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20240618BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
A61K47/64 ZNA
A61P35/00
A61K31/513
A61K31/7068
A61K31/09
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K9/10
C12N9/99
C07K16/00
C07K5/103
C07K5/062
C07K5/065
C07K7/06
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060491
(22)【出願日】2024-04-03
(62)【分割の表示】P 2022134497の分割
【原出願日】2017-11-16
(31)【優先権主張番号】1619372.4
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】519000548
【氏名又は名称】レセ アラスティルマ エジティム ダニスマンリク イラク サナイ ティカレト アノニム シルケティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サニアル、ラナ
(72)【発明者】
【氏名】サニアル、アミタブ
(72)【発明者】
【氏名】カガ、サディク
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗癌剤を送達するためのポリマー-薬物コンジュゲート、及び癌などの疾患の治療のためのそれらの使用を提供する。
【解決手段】下式Iに示されるポリマー-薬物コンジュゲートを提供する。
(R
1~3はCH
3、x、yは1~100の自然数、nは1~50の自然数、Lは切断可能なリンカー、Dは抗癌剤、AはcRGDfKを含む末端基、Bは重合開始剤の断片)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療薬を送達するためのブロックコポリマーの形態の式Iのポリマー-薬物コンジュゲート、
【化1】
式中、
・R
1、R
2、及びR
3は、独立して、H又は-CH
3から選択される
・xは、1~100の自然数である
・yは、1~100の自然数である
・nは、1~50の自然数である
・Lは、切断可能なリンカーである
・Dは治療薬であり、コンブレタスタチン、又は5-フルオロウラシル(5-FU)、又はゲムシタビン、又はクロロキン、又はドキソルビシンである
・Aは、末端基であるか、又はAはヌルであってもよい
・Bは、末端基であるか、又はBはヌルであってもよい。
【請求項2】
リンカーが、ポリ(エチレングリコール)、アミノ酸、ポリ(アミノ酸)、及び短鎖ペプチドを含む群から選択される、請求項1に記載のポリマー-薬物コンジュゲート。
【請求項3】
リンカーが、カテプシンBに不安定な短ペプチドである、請求項1又は2に記載のポリマー-薬物コンジュゲート。
【請求項4】
短ペプチドが、Gly-Phe-Leu-Gly(配列番号1)、Val-Cit、Phe-Lys、Val-Ala、Ala-Leu-Ala-Leu(配列番号2)を含む群から選択される、請求項1~3に記載のポリマー-薬物コンジュゲート。
【請求項5】
リンカーが、生理学的条件下で解離する官能基を含む、C1~C10炭化水素又はC1~C10置換もしくはヘテロ置換炭化水素である、請求項1~4に記載のポリマー-薬物コンジュゲート。
【請求項6】
官能基が、アセタール、エステル、イミン、アミド、ジスルフィド、カーボナート、ヒドラジン、カルバマートから選択される、請求項5に記載のポリマー-薬物コンジュゲート。
【請求項7】
リンカーが存在しない、請求項1~6に記載のポリマー-薬物コンジュゲート。
【請求項8】
治療薬が、ポリマー-薬物コンジュゲートの5重量%~50重量%の量で存在する、請求項1~7に記載のポリマー-薬物コンジュゲート。
【請求項9】
式のポリマー-薬物コンジュゲートが、5kDa~60kDaの平均分子量を有する、請求項1~10に記載のポリマー-薬物コンジュゲート。
【請求項10】
Aが連鎖移動剤(CTA)もしくは開始剤の断片、又は標的部分とコンジュゲーションしたCTAもしくは開始剤の断片、又は反応性官能基を有するCTAもしくは開始剤の断片である末端基である、請求項1~13に記載のポリマー-薬物コンジュゲート。
【請求項11】
Bが連鎖移動剤又は開始剤の断片である末端基である、請求項1~14に記載のポリマー-薬物コンジュゲート。
【請求項12】
標的部分が、抗体、抗体断片、又はCyclo(Arg-Gly-Asp-D-Phe-Lys)(cRGDfK)(配列番号3)のようなペプチドを含む群から選択される、請求項10に記載のポリマー-薬物コンジュゲート。
【請求項13】
反応基が、アセタール、ヘミアセタール、カルボン酸、アルコール、アミド、イミド、無水物、アリールは、ライド、アゾ化合物、ジアゾ化合物、ヒドラジン、アジド、カーボナート、クロロシラン、シアン化物、エステル、スルファートエステル、ホスファートエステル、チホスファートエステル、イソシアナート、イソチオシアナート、チオカルバマートエステル、ジチオカルバマートエステルから選択される、請求項10に記載のポリマー-薬物コンジュゲート。
【請求項14】
請求項1~13に記載の式Iのポリマー-薬物コンジュゲートを用いて形成されたポリマー集合体(ナノ粒子又はミセル)、
【化2】
式中、
・R
1、R
2、及びR
3は、独立して、H又は-CH
3から選択される
・xは、1~100の自然数である
・yは、1~100の自然数である
・nは、1~50の自然数である
・Lは、切断可能なリンカーであるか、又はLは、ヌルであってもよい
・Dは、コンブレタスタチン、又は5-フルオロウラシル、又はゲムシタビン、又はクロロキン、又はドキソルビシンである治療薬である
・Aは、末端基であるか、又はAは、ヌルであってもよい
・Bは、末端基であるか、又はBは、ヌルであってもよい。
【請求項15】
式Iのポリマー-薬物コンジュゲートに結合したもの以外の治療薬をカプセル化する、請求項14に記載のポリマー集合体(ナノ粒子又はミセル)。
【請求項16】
カプセル化される治療薬が、ヌクレオシド類似体、抗葉酸剤、他の代謝産物、トポイソメラーゼI阻害剤、アントラサイクリン、ポドフィロトキシン、タキサン、ビンカアルカロイド、アルキル化剤、プラチナート、抗ホルモン剤、放射性医薬品、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)阻害剤、レチノイド、免疫調節剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、及び他の薬剤を含む群から選択される、請求項15に記載のポリマー集合体。
【請求項17】
以下を含む式Iのポリマー-薬物コンジュゲートを調製する方法、
PEG(メタ)アクリラートモノマー(式II)の重合、
【化3】
式中、
・R
1及びR
3は、独立して、H又は-CH
3から選択される
・nは、1~50の自然数である
式IIaのポリマーを得ること、
【化4】
式中、
・Aは、末端基であるか、又はAは、ヌルであってもよい
・Bは、末端基であるか、又はBは、ヌルであってもよい
次いで、(ii)式IIaを(メタ)アクリラートL-Dモノマー(式IIIa)とさらに反応させること、
【化5】
式中、
・R
2は、H又は-CH
3から選択される
・Lは、切断可能なリンカーである、又はLは、ヌルであってもよい
・Dは、コンブレタスタチン、又は5-FU、又はゲムシタビン、又はクロロキン、又はドキソルビシンから選択される治療薬である
式Iのポリマー-薬物コンジュゲートを得ること。
【請求項18】
以下を含む式Iのポリマー-薬物コンジュゲートを調製する方法、
(i)PEG(メタ)アクリラートモノマー(式II)の重合、
【化6】
式中、
・R
1及びR
3は、独立して、H又は-CH
3から選択される
・nは、1~50の自然数である
式IIaのポリマーを得ること、
【化7】
次いで、(ii)式IIaを(メタ)アクリラートLモノマー(式IIIb)とさらに反応させること、
【化8】
・式中、R
2は、H又は-CH
3から選択される
・Lは、切断可能なリンカーであるか、又はLは、ヌルであってもよい
式IIbに示されるようなコポリマーを得ること、
【化9】
・式中、xは、1~100の自然数である
・yは、1~100の自然数である
・Aは、末端基であるか、又はAは、ヌルであってもよい
・Bは、末端基であるか、又はBは、ヌルであってもよい
次いで、(iii)式IIbを、コンブレタスタチン、又は5-FU、又はゲムシタビン、又はクロロキン、又はドキソルビシンから選択される治療薬(D)と反応させて、式Iで示されるポリマーコンジュゲートを得ること。
【請求項19】
以下を含む式Iのポリマー-薬物コンジュゲートを調製するための方法、
(i)PEG(メタ)アクリラートモノマー(式II)の重合、
【化10】
式中、
・R
1及びR
3は、独立して、H又は-CH
3から選択される
・nは、1~50の自然数である
式IIaのポリマーを得ること、
【化11】
式中、
・Aは、末端基であるか、又はAは、ヌルであってもよい
・Bは、末端基であるか、又はBは、ヌルであってもよい
次いで、(ii)式IIaを(メタ)アクリラートL-Dモノマー(式IIIa)とさらに反応させること、
【化12】
・式中、R
2は、H又は-CH
3から選択される
・Lは、切断可能なリンカーである、又はLは、ヌルであってもよい
・Dは、コンブレタスタチン、又は5-FU、又はゲムシタビン、又はクロロキン、又はドキソルビシンから選択され、ブロックコポリマーを得る治療薬である
次いで、(iii)前記形成されたブロックコポリマーを標的部分と反応させて、式Iのポリマー-薬物コンジュゲートを得ること。
【請求項20】
式IIのPEG(メタ)アクリラートが、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリラート、ポリエチレングリコールメタクリラート、ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリラート、及びポリエチレングリコールアクリラートを含む群から選択される、請求項17~19に記載の式Iのポリマー-薬物コンジュゲートを調製する方法。
【請求項21】
工程(i)が、CTA及び/又は開始剤の使用をさらに含む、請求項17~20に記載の式Iのポリマー-薬物コンジュゲートを調製する方法。
【請求項22】
請求項1~13に記載の式Iのポリマー-薬物コンジュゲート及び/又は請求項14~16に記載のポリマー集合体を含む、医薬組成物。
【請求項23】
癌の治療及び/又は予防用の医薬品として使用するための、請求項1~14に記載の式Iのポリマー-薬物コンジュゲート。
【請求項24】
癌の治療及び/又は予防用の医薬品として使用するための、請求項14~16に記載のポリマー集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式Iによるポリマー-薬物コンジュゲート、式Iのポリマー-薬物コンジュゲートからなる集合体、前記ポリマー-薬物コンジュゲート及び集合体を調製する方法、ならびに癌などの疾患を治療するためのそれらの使用に関する。
【0002】
癌の治療に使用される化学療法剤は、ほとんど細胞傷害性である。これらの薬剤は、標的化領域に加えて身体の組織に蓄積する可能性があり、それが今度は、治療的利益の低下及び健康な身体組織全体への薬物の望ましくない分布を引き起こす。身体全体へのこれらの薬剤の制御されていない分布は、患者に深刻な副作用を引き起こす。
【0003】
上述の問題に対処するために、身体の標的化領域に薬物を送達することができる薬物送達システムが開発されている。例えば、癌治療のいくつかのアプローチにおいて、これらのシステムは、高分子量及び大きな流体力学的体積を有する薬物担体が固形腫瘍に蓄積することを含意する増強された透過性及び保持効果(EPR)を利用し、これは、次に、腫瘍組織への薬物分子の受動的標的化をもたらし、健康な組織への化学療法剤の損傷を最小限にする。
【0004】
増強された透過性及び保持(EPR)効果の発見以来、血液循環が長い巨大分子は、有窓血管を通る腫瘍における蓄積の改善による薬物送達のための主要な物質となってきた。
【0005】
癌疾患のための薬物送達システムにおけるポリマー集合体に関して、主にそれらの身体分布特性に起因して大きな関心が寄せられている。本発明はまた、薬物送達における使用に好適な集合体、具体的には、癌治療用の抗癌剤に関する。
【0006】
現在の技術水準において既知のポリマー集合体を調製するための様々な種類の技術が存在する。例えば、ポリマー化合物の自己集合は、ポリマー集合体形成にとって魅力的な方法である。Eisenberg及びその共同研究者らは、1990年代に溶液中の非対称コポリマーの自己集合の第1の例を実証した。次いで、自己集合により高分子構造を生成するために、物理的及び化学的性質が異なるポリマーブロックを有する両親媒性ブロックコポリマーが注目されている。
【0007】
そのようなポリマー集合体への薬物装填は、共有結合又は疎水性相互作用による物理的カプセル化によって達成することができる。コロイド懸濁液中のこれらの集合体の総体積が非常に小さいことを考慮すると、高い薬物装填容量は、有効な薬物製剤を達成するために極めて重要である。主にミセル製剤中のポリマー集合体の低い薬物装填容量は、依然としてこの分野における大きな欠点である。
【0008】
何人かの研究者は、共有結合を提供するのではなく、薬物分子を修飾すること、又は添加化合物を使用することでπ-π相互作用を利用することによってこの問題に対処した。しかしながら、ミセル型ポリマーナノ粒子製剤中のカプセル化されていない薬物凝集体は、それらの臨床用途に安全な製剤を提供するための別の欠点である。
【0009】
別のアプローチでは、Stenzel及びその共同研究者らは、薬物結合性両親媒性ブロックコポリマーを利用して、ポリマー集合体を形成するためのブロックコポリマーの疎水性セグメントを形成している。この戦略は、明確に定義されていない最終構造をもたらす立体障害のために、ポリマー骨格への薬物の完全なコンジュゲーションの欠如を有する。さらに、不完全なコンジュゲーションによるポリマー骨格上の残留反応性基は、インビボでの望ましくない生物学的相互作用の可能性があるため、この種の重合後コンジュゲーション戦略の最も重要な欠点となり得る。
【0010】
上記に要約された現在の技術水準に照らして、薬物の含有量によって明確に定義され、いかなる残存する反応部位もなく、高い薬物装填容量を有する薬物の効率的なコンジュゲーションを提供するブロックコポリマー及びそれから形成された集合体が必要とされている。
【0011】
本発明者らは、本発明による両親媒性ブロックコポリマーが、高い薬物含有量を有し、薬物結合によって明確に定義されているミセル型集合体の形成を提供することを見出した。
【0012】
本発明は、式Iに示されるような治療薬を送達するためのブロックコポリマーの形態のポリマー-薬物コンジュゲートに関する
【化1】
【0013】
言い換えれば、本発明は、ブロックコポリマーの形態の式Iのポリマー-薬物コンジュゲート、及び式Iのポリマー-薬物コンジュゲートから作製される集合体に関し、式中
・R1及びR2は、独立して、H又は-CH3から選択される
・R3は、-H又は-CH3から選択される
・xは、1~100の自然数である
・yは、1~100の自然数である
・nは、1~50の自然数である
・Lは、切断可能なリンカーであるか、又はLは、ヌルであってもよい
・Dは、コンブレタスタチン、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、クロロキン、及びドキソルビシンを含む群から選択される治療薬である
・Aは、末端基であるか、又はAは、ヌルであってもよい
・Bは、末端基であるか、又はBは、ヌルであってもよい
【0014】
本発明者らは、先行技術のポリマー集合体の欠点を克服することに加えて;式Iのポリマー-薬物コンジュゲートからなる本発明のポリマー集合体がまた、高い薬物装填のために患者に与えられるポリマーの量を減少させることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】NHS修飾ポリマー-薬物コンジュゲート(反応性官能基を有する式Iのポリマー-薬物コンジュゲート)及びcRGDfK修飾ポリマー-薬物コンジュゲート(標的基を有する式Iのポリマー-薬物コンジュゲート)の合成を示す概略図である
【
図2】式Iのポリマー-薬物コンジュゲートからの本発明の非標的化ポリマー集合体の調製を示す概略図である。
【
図3】式Iのポリマー-薬物コンジュゲートからの本発明の標的化ポリマー集合体の調製を示す概略図である。
【
図4】本発明の非標的化ポリマー集合体中のナイルレッドの蛍光発光スペクトルである。
【
図5】本発明の標的化ポリマー集合体中のナイルレッドの蛍光発光スペクトルである。
【
図6】POEGMEMA-b-PCombMA濃度の対数に対する612nmでの発光強度のプロットである。
【
図7】総POEGMEMA-b-PCombMA及びcRGDfK-POEGMEMA-b-PCombMA濃度の対数に対する612nmでの発光強度のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「ポリマー-薬物コンジュゲート」という用語は、ポリマーに共有結合している治療薬を有するポリマー構造を指す。
【0017】
「ポリマー集合体」という用語は、1~100nmの直径を有する構造を指す。前記集合体は、自己集合化ポリマー鎖からなり、それらは、様々なサイズの中空キャビティを有していてもいなくてもよい。
【0018】
「ポリマー骨格」及び「ポリマー骨格」という用語は、互換的に使用することができ、側鎖又はペンダント基を有するポリマー鎖を指す。例えば、側鎖は、オリゴエチレングリコール単位を有してもよく、ペンダント基は、1つの治療薬又は治療薬及び/もしくは診断薬又は標的基を結合するために利用され得る他の任意の基を担持してもよい。
【0019】
本文書を通して、「本発明のポリマー-薬物コンジュゲート」という用語は、「式Iによるポリマー-薬物コンジュゲート」もしくは「式Iのポリマー-薬物コンジュゲート」、又は「式I」を意味すると解釈されるべきであり、これらの用語は、互換的に使用することができる。
【0020】
本文書を通して、「ポリマー集合体」という用語は、「式Iのポリマー-薬物コンジュゲートからなるナノ粒子」、又は「式Iに示されるコポリマーからなるナノ粒子」、又は「式Iのポリマー-薬物コンジュゲートの自己集合の結果として形成されたナノ粒子」、又は「式Iに示されるコポリマーからなるミセル集合体」を意味すると解釈されるべきであり、これらの用語は、互換的に使用することができる。
【0021】
「PEG」という用語は、H-(O-CH2-CH2)n-OR3の構造を有するポリエーテル化合物を指し、nは、1~200の自然数であり、R3は、H又は-CH3から選択される。PEGは、エチレンオキシドのオリゴマー又はポリマーとして定義される。「PEG」、「ポリエチレングリコール」、「ポリエチレンオキシド」、「PEO」、「ポリオキシエチレン」、及び「POE」という用語は、同じ構造を指し、本文書内では互換的に使用され得る。
【0022】
本発明の実施形態において、R1、R2、及びR3は、独立して、H又は-CH3から選択される。
【0023】
一実施形態において、R1=H、R2=H、R3=H、又はR1=H、R2=H、R3=-CH3、又はR1=H、R2=-CH3、R3=H、又はR1=H、R2=-CH3、R3=-CH3、又はR1=-CH3、R2=H、R3=H、又はR1=-CH3、R2=H、R3=-CH3、又はR1=-CH3、R2=-CH3、R3=H、又はR1=-CH3、R2=-CH3、R3=-CH3である。
【0024】
「ブロックコポリマー」という用語は、1種類のモノマーの全てが一緒にまとめられ、他の種類のモノマーの全てが一緒にまとめられたコポリマーを指す。本発明のポリマー-薬物コンジュゲートは、ブロックコポリマーの形態である。本発明のポリマー-薬物コンジュゲートがブロックコポリマーの形態であるという事実は、本発明のポリマー集合体の形成を可能にする。
【0025】
治療薬は、例えば還元条件下、酸化条件下、又はエステル、アミド、ヒドラジドの加水分解によって治療薬が放出され得るように、切断可能なリンカーを介してポリマーに結合される。
【0026】
前記切断可能なリンカーは、生理学的条件下で解離することができる任意の炭化水素又は置換炭化水素系化合物であり得る。好ましい実施形態において、リンカーは、腫瘍の酸性条件下で、又は腫瘍細胞の細胞間もしくは細胞内マトリックスに存在する過剰発現酵素の助けを借りて切断される化合物(アセタールもしくはエステル官能基を含む任意のC1~C10置換もしくは非置換及び/又は直鎖及び/もしくは環状炭化水素など)から選択することができる。
【0027】
リンカーは、その一方の端部がポリマー骨格と共有結合を形成することができ、他方の端部が治療薬と共有結合を形成することができるように、ポリマー骨格と、ポリ(エチレングリコール)、アミノ酸、ポリ(アミノ酸)(例えば、ペプチドもしくはオリゴペプチド)、又はポリペプチド(例えば、タンパク質)などの薬物との両方に結合することができる任意の種類の物質であり得る。リンカーはまた、Gly-Phe-Leu-Gly(配列番号1)などの、カテプシンBに不安定であり、GFLG又はVal-Cit又はPhe-Lys又はVal-Ala又はAla-Leu-Ala-Leu(配列番号2)とも示される特定のペプチド配列を有する短いペプチドを含んでもよい。
【0028】
リンカーはまた、それが生理学的条件下で解離する官能基、例えばアセタール、エステル、イミン、アミド、ジスルフィド、カーボナート、カルバマート、ヒドラゾンを含むようなC1~C10炭化水素又はC1~C10置換もしくはヘテロ置換炭化水素であり得る。
【0029】
本発明の実施形態において、リンカー(L)は、GFLG又はVal-Cit又はPhe-Lys又はVal-Ala又はAla-Leu-Ala-Leuである。
【0030】
本発明の実施形態において、リンカーは、少なくとも1つのジスルフィド官能基を含むC1~C10ヘテロ置換炭化水素、又は少なくとも1つのアセタール官能基を含むC1~C10ヘテロ置換炭化水素、又は少なくとも1つのエステル官能基を含むC1~C10ヘテロ置換炭化水素、又は少なくとも1つのイミン官能基を含むC1~C10ヘテロ置換炭化水素、又は少なくとも1つのアミド官能基を含むC1~C10ヘテロ置換炭化水素、又は少なくとも1つのカーボナート官能基を含むC1~C10ヘテロ置換炭化水素、又は少なくとも1つのカルバマート官能基を含むC1~C10ヘテロ置換炭化水素、又は少なくとも1つのヒドラゾン官能基を含むC1~C10ヘテロ置換炭化水素である。
【0031】
本発明の別の実施形態において、リンカーは、アセタール、エステル、イミン、アミド、ジスルフィド、カーボナート、カルバマート、ヒドラゾンを含む群から選択される2つ以上の官能基を含むC1~C10置換又はヘテロ置換炭化水素を含み得る。
【0032】
本発明の別の実施形態において、リンカーは、ヌルであり得、これは治療薬Dがポリマー鎖に直接結合していることを意味する。ポリマー鎖への治療薬の直接結合は、エステル、イミン、アミド、ジスルフィド、カーボナート、カルバマート、ヒドラジン結合を介してもよい。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、薬物分子は、腫瘍の生理学的条件下で解離する直接エステル結合を介してポリマーに結合している。本発明の別の実施形態において、リンカーは、アセタール、エステル、イミン、アミド、ジスルフィド、カーボナート、カルバマート、ヒドラゾンを含む群から選択される少なくとも1つの官能基を含むC1~C10置換炭化水素と、GFLG、Val-Cit又はPhe-Lys又はVal-Ala又はAla-Leu-Ala-Leuを含む群から選択されるペプチド鎖との組み合わせであり得る。コンブレタスタチン、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、クロロキン、及びドキソルビシンから選択される治療薬は、ポリマー-薬物コンジュゲートの5重量%~50重量%の量、好ましくは、薬物-ポリマーコンジュゲートの6重量%~48重量%の量、最も好ましくは、薬物-ポリマーコンジュゲートの10重量%~45重量%の量で存在することができる。治療薬は、例えば、薬物-ポリマーコンジュゲートの10重量%~48重量%、又は15重量%~46重量%、又は20重量%~45重量%、又は25重量%~44重量%の範囲の量で存在することができる。
【0034】
「末端基」という用語は、ポリマーの末端にある官能基又は構成単位を指す。A及びBとして示される末端基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0035】
実施形態において、Aは、任意に連鎖移動剤もしくは開始剤の断片、又は標的部分とコンジュゲーションした連鎖移動剤もしくは開始剤の断片、又は反応性官能基を有する連鎖移動剤もしくは開始剤の断片である末端基である。
【0036】
実施形態において、Bは、任意に連鎖移動剤又は開始剤の断片である末端基である。
【0037】
「連鎖移動剤」という用語は、ポリマー鎖の制御されない成長を妨げることによってポリマーの分子量を調節することができる化学化合物を指す。連鎖移動剤は、文献において十分に確立されており、それらの構造は、当業者に周知である。「連鎖移動剤」及びその略語「CTA」という用語は、同じ群の化合物を指し、本文書を通して互換的に使用することができる。
【0038】
A及びBは、任意に連鎖移動剤の断片であり得る。特にCTAが重合反応に使用される場合、CTA断片は、ポリマーに対する末端基としてとどまり得る。本明細書で使用されるCTAは、当技術分野で既知の重合反応を開始するのに好適な任意の材料であり得る。一実施形態において、A及び/又はBは、3,5-ビス(2-ドデシルチオカルボノチオイルチオ-1-オキソプロポキシ)安息香酸、3-ブテニル2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオナート、2-シアノブタン-2-イル4-クロロ-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオアート、2-シアノブタニル-2-イル3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオアート、4-シアノ-4-[(ドデシルスルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタノール、シアノメチル(3,5-ジメチル-1H-ピラゾール)-カルボジチオアート、シアノメチルドデシルトリチオカーボナート、シアノメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]トリチオカーボナート、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカーボナート、S,S-ジベンジルトリチオカーボナート、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸3-アジド-1-プロパノールエステル、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸ペンタフルオロフェニルエステル、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)プロピオン酸、メチル2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオナート、ペンタエリスリトールテトラキス[2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオナート]、フタルイミドメチルブチルトリチオカーボナート、1,1,1-トリス[(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオナート]エタン、ベンジル1H-ピロール-1-カルボジチオアート、シアノメチルジフェニルカルバモジチオアート、シアノメチルメチル(フェニル)カルバモジチオアート、シアノメチルメチル(4-ピリジル)カルバモジチオアート、2-シアノプロパン-2-イルN-メチル-N-(ピリジン-4-イル)カルバモジチオアート、メチル2-[メチル(4-ピリジニル)カルバモチオイルチオ]プロピオナート、1-スクシンイミジル-4-シアノ-4-[N-メチル-N-(4-ピリジル)カルバモチオイルチオ]ペンタノアート、ベンジルベンゾジチオアート、シアノメチルベンゾジチオアート、4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸、4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸N-スクシンイミジルエステル、2-シアノ-2-プロピルベンゾジチオアート、2-シアノ-2-プロピル-4-シアノベンゾジチオアート、エチル2-(4-メトキシフェニルカルボノチオイルチオ)アセタート、エチル2-メチル-2-(フェニルチオカルボニルチオ)プロピオナート、エチル2-(フェニルカルボノチオイルチオ)-2-フェニルアセタート、エチル2-(フェニルカルボノチオイルチオ)プロピオナート、1-(メトキシカルボニル)エチルベンゾジチオアート、2-(4-メトキシフェニルカルボノチオイルチオ)エタン酸、2-ニトロ-5-(2-プロピニルオキシ)ベンジル4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタノアート2-(フェニルカルボノチオイルチオ)プロパン酸、2-フェニル-2-プロピルベンゾジチオアート、シアノメチルメチル(4-ピリジル)カルバモジチオアート、2-シアノプロパン-2-イルN-メチル-N-(ピリジン-4-イル)カルバモジチオアート、メチル2-[メチル(4-ピリジニル)カルバモチオイルチオ]プロピオナート、1-スクシンイミジル-4-シアノ-4-[N-メチル-N-(4-ピリジル)カルバモチオイルチオ]ペンタノアート、又はそれ自体として、もしくは重合反応の前後に標的部分とコンジュゲートした、もしくは反応性基で修飾されている、本明細書に列挙された開始剤の任意の断片からなる群から選択される。
【0039】
本明細書で使用される「断片」という用語は、開始剤分子を形成する共有結合のうちの1つ以上の切断により形成される化合物を指す。
【0040】
本明細書に列挙されたCTAの断片化及び形成された断片の構造は、当技術分野において十分に確立されており、したがってA及びBの構造は、最新技術を利用することによって進歩性を使用することなく決定することができる。
【0041】
A及び/又はBは、任意にヌルである(null:存在しない)。
【0042】
本発明の実施形態において、Aは、ヌルであり、Bは、CTAの断片である。
【0043】
別の実施形態において、Bは、ヌルであり、Aは、CTAの断片である。
【0044】
別の実施形態において、A及びBは、両方ともCTAの断片であるが、それらは、互いに構造的に異なる。言い換えれば、A及びBは、同じCTAの異なる断片である。
【0045】
別の実施形態において、A及びBは、両方ともCTAの断片であり、それらは、同じ化学構造を有する。
【0046】
「標的部分」という用語は、身体の特定の標的部位に結合する傾向を有する分子を指す。言い換えれば、標的部分は、相補的受容体を有する細胞に特異的に結合する分子である。
【0047】
標的部分は、抗体;抗体断片、又はCyclo(Arg-Gly-Asp-D-Phe-Lys)(配列番号3)(cRGDfK)などのペプチドを含む群から選択することができる。好ましい実施形態において、cRGDfKは、標的部分として使用される。
【0048】
「反応性基」という用語は、容易な化学反応を起こすことが意図されているか又は合理的に予想され得る化学物質中の原子又は関連する原子団を指す。
【0049】
反応性基は、アセタール、ヘミアセタール、カルボン酸、アルコール、アミド、イミド、無水物、アリールハライド、アゾ化合物、ジアゾ化合物、ヒドラジン、アジド、カーボナート、クロロシラン、シアン化物、エステル、スルファートエステル、ホスファートエステル、チホスファートエステル、イソシアナート、イソチオシアナート、チオカルバマートエステル、ジチオカルバマートエステルであり得る。好ましくは、反応性基は、エステル、イミド、又はカーボナートである。反応基は、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドであり得る。
【0050】
本発明のポリマーコンジュゲートの調製に用いられる重合技術に応じて、A及び/又はBは、開始剤の断片であり得る。
【0051】
本明細書で使用される開始剤は、モノマーと反応して多数の他のモノマーと連続的に連結してポリマー化合物にすることができる中間化合物を形成する化学化合物を指す。「開始剤」及び「重合開始剤」という用語は、本願の文脈内では互換的に使用することができる。
【0052】
本発明のポリマーコンジュゲートを調製するために使用される重合技術に応じて、異なる開始剤を使用することができる。
【0053】
実施形態において、A及び/又はBは、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(別名AIBN)、過硫酸アンモニウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸一ナトリウム塩二水和物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルアセタート、クメンヒドロパーオキシド、2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン、ジクミルパーオキシド、2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-アミルパーオキシ)シクロヘキサン、ベンゾイルパーオキシド、2-ブタノンパーオキシド、tert-ブチルパーオキシド、ジ-tert-アミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、tert-ブチルパーオキシベンゾアート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボナート、tert-ブチルヒドロパーオキシド、2-アジドエチル-2-ブロモイソブチラート、ビス[2-(2-ブロモイソブチリルオキシ)ウンデシル]ジスルフィド、ビス[2-(2’-ブロモイソブチリルオキシ)エチル]ジスルフィド、2-ブロモイソブタン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、2-ブロモイソ酪酸無水物、α-ブロモイソブチリルブロマイド、2-(2-ブロモイソブチリルオキシ)エチルメタクリラート、tert-ブチルα-ブロモイソブチラート、3-ブチニル-2-ブロモイソブチラート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-ブロモイソブチラート)、ドデシル2-ブロモイソブチラート、エチルα-ブロモイソブチラート、エチレンビス(2-ブロモイソブチラート)、2-ヒドロキシエチル2-ブロモイソブチラート、1-(DL-1,2-イソプロピリデングリセリル)2-ブロモイソブチラート、メチルα-ブロモイソブチラート、オクタデシル2-ブロモイソブチラート、ペンタエリスリトールテトラキス(2-ブロモイソブチラート)、1-(フタルイミドメチル)2-ブロモイソブチラート、ポリ(エチレングリコール)ビス(2-ブロモイソブチラート)、プロパルギル2-ブロモイソブチラート、1,1,1-トリス(2-ブロモイソブチリルオキシメチル)エタン、10-ウンデセニル2-ブロモイソブチラート、N-tert-ブチル-O-[1-[4-(クロロメチル)フェニル]エチル]-N-(2-メチル-1-フェニルプロピル)ヒドロキシルアミン、N-tert-ブチル-N-(2-メチル-1-フェニルプロピル)-O-(1-フェニルエチル)ヒドロキシルアミン、TEMPO、TEMPOメタクリラート、2,2,5-トリメチル-4-フェニル-3-アザヘキサン-3-ニトロキシド、3,5-ビス(2-ドデシルチオカルボノチオイルチオ-1-オキソプロポキシ)安息香酸、3-ブテニル2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオナート、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタノール、シアノメチルドデシル、シアノメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]トリチオカーボナート、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカーボナート、S,S-ジベンジルトリチオカーボナート、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸3-アジド-1-プロパノールエステル、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸ペンタフルオロフェニルエステル、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)プロピオン酸、メチル2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオナート、ペンタエリスリトールテトラキス[2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオナート]、フタルイミドメチルブチルトリチオカーボナート、1,1,1-トリス[(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオナート]エタン、ベンジルベンゾジチオアート、シアノメチルベンゾジチオアート、4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸、4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸N-スクシンイミジルエステル、2-シアノ-2-プロピルベンゾジチオアート、2-シアノ-2-プロピル4-シアノベンゾジチオアート、エチル2-(4-メトキシフェニルカルボノチオイルチオ)アセタート、エチル2-メチル-2-(フェニルチオカルボニルチオ)プロピオナート、エチル2-(フェニルカルボノチノイルチオ)-2-フェニルアセタート、エチル2-(フェニルカルボノチオイルチオ)プロピオナート、1-(メトキシカルボニル)エチルベンゾジチオアート、2-(4-メトキシフェニルカルボノチオイルチオ)エタン酸、2-ニトロ-5-(2-プロピニルオキシ)ベンジル、4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタノアート、2-(フェニルカルボノチオイルチオ)プロパン酸、2-フェニル-2-プロピルベンゾジチオアート、シアノメチルメチル(4-ピリジル)カルバモジチオアート、シアノプロパン-2-イルN-メチル-N-(ピリジン-4-イル)カルバモジチオアート、メチル2-[メチル(4-ピリジニル)カルバモチオイルチオ]プロピオナート、1-スクシンイミジル-4-シアノ-4-[N-メチル-N-(4-ピリジル)カルバモチオイルチオ]ペンタノアート、又はそれ自体として、もしくは重合反応の前後に標的部分とコンジュゲートした、もしくは反応性基で修飾されている、それらの組み合わせを含む群から選択することができる開始剤の断片である。
【0054】
標的部分の定義及び例は、上記の通りである。
【0055】
反応性基の定義及び例は、上記の通りである。
【0056】
本出願内に列挙された連鎖移動剤及び開始剤は、本発明の説明のための例として与えられており、CTA及び/又は開始剤として作用することができる本文書の提出の前後に公表された任意の化学化合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0057】
本発明のポリマーコンジュゲート中の薬物の量の測定は、当技術分野において周知の従来の技術を使用することによって、例えば、ポリマー-薬物コンジュゲートの1H-NMRからの薬物比の計算によって、又は薬物の強制放出による量の決定によって行われる。
【0058】
別の実施形態において、本発明のポリマー-薬物コンジュゲートは、5kDa~60kDaの平均分子量を有する。好ましい実施形態において、本発明のポリマー-薬物コンジュゲートは、6Da~50kDaの平均分子量を有し、最も好ましい実施形態において、本発明のポリマー-薬物コンジュゲートは、7kDa~40kDaの平均分子量を有する。
【0059】
本発明のポリマー-薬物コンジュゲートの分子量は、当技術分野において既知の従来の技術を使用することによって、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用することによって決定される。
【0060】
本発明の別の実施形態は、式Iで示されるポリマー-薬物コンジュゲートを用いて形成されたポリマー集合体であり、式中;
【化2】
・R
1及びR
2は、独立して、H又は-CH
3から選択される
・R
3は、-H又は-CH
3から選択される
・xは、1~100の自然数である
・yは、1~100の自然数である
・nは、1~50の自然数である
・Lは、切断可能なリンカーであるか、又はLは、ヌルであってもよい
・Dは、コンブレタスタチン、又は5-フルオロウラシル、又はゲムシタビン、又はクロロキン、又はドキソルビシンである治療薬である
・Aは、末端基であるか、又はAは、ヌルであってもよい
・Bは、末端基であるか、又はBは、ヌルであってもよい
【0061】
本発明の別の実施形態は、式Iで示されるポリマー-薬物コンジュゲートを用いて形成されたポリマーミセルであり、式中;
【化3】
・R
1及びR
2は、独立して、H又は-CH
3から選択される
・R
3は、-H又は-CH
3から選択される
・xは、1~100の自然数である
・yは、1~100の自然数である
・nは、1~50の自然数である
・Lは、切断可能なリンカーであるか、又はLは、ヌルであってもよい
・Dは、コンブレタスタチン、又は5-フルオロウラシル、又はゲムシタビン、又はクロロキン、又はドキソルビシンである治療薬である
・Aは、末端基であるか、又はAは、ヌルであってもよい
・Bは、末端基であるか、又はBは、ヌルであってもよい
【0062】
別の実施形態において、本発明による集合体は、治療用分子をカプセル化するために使用され、その意味において、ポリマー鎖に結合したもの以外の治療薬をカプセル化する式Iのポリマー-薬物コンジュゲートからなるポリマー集合体は、本発明の別の実施形態である。
【0063】
「カプセル化する」という用語は、ゲスト分子、例えばホスト分子のキャビティ内部に治療薬を閉じ込めること、例えば式Iのポリマー-薬物コンジュゲートからなるポリマー集合体を指す。カプセル化は、好ましくは、治療用分子と本発明のポリマー集合体との非共有結合相互作用によって起こる。
【0064】
「治療薬」という用語は、疾患の治療における使用に好適な任意の化合物を指す。「治療薬」、「化学療法剤」、「抗癌剤」、及び「抗新生物剤」という用語は全て、疾患の治療における使用に好適な化合物を指し、これらの用語は、互換的に使用することができる。一実施形態において、疾患は、癌である。
【0065】
さらに、「治療薬」はまた、疾患、例えば癌の治療における使用に好適な任意の薬剤を指す。本発明のポリマー-薬物コンジュゲートに直接又は間接的に結合することができる任意の治療薬を使用することができる。米国特許第6 6,342,221号はまた、抗癌剤に関連する薬剤についても記載しており、この文書は、参照により本明細書に組み込まれる。抗癌剤は、化学療法剤、細胞毒素、代謝拮抗剤、アルキル化剤、プロテインキナーゼ阻害剤、アントラサイクリン、抗生物質、抗有糸分裂剤(例えば抗チューブリン剤)、コルチコステロイド、放射性医薬品、及びタンパク質(例えばサイトカイン、酵素、又はインターフェロン)として分類することができるが、これらに限定されない。抗癌剤の具体例は、例えば、ドセタキセル、ゲムシタビン、イマチニブ、5-フルオロウラシル、9-アミノカンプトテシン、アミン修飾ゲルダナマイシン、ドキソルビシン、パクリタキセル、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、メソe-クロリン、シスプラチン、ならびに放射性核種(例えば1-131、Y-90、In-111、及びTc-99m)である。当技術分野で既知の他の多くの抗癌剤が存在し、多くが開発され続けており、それらの薬剤もまた本発明の範囲内に含まれる。
【0066】
治療薬はまた、ヌクレオシド類似体、抗葉酸剤、他の代謝産物、トポイソメラーゼI阻害剤、アントラサイクリン、ポドフィロトキシン、タキサン、ビンカアルカロイド、アルキル化剤、プラチナート、抗ホルモン剤、放射性医薬品、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)阻害剤、レチノイド、免疫調節剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、及び他の薬剤を含む小群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0067】
ヌクレオシド類似体は、アザシチジン、クラドリビン、クロハラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、メルカプトプリン、ネララビン、ペントスタチン、チオグアニン、トリフルリジン、チピラシルを含む群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0068】
抗葉酸剤は、メトトレキサート、ペメトレキセド、プララトレキセド、ラルチトレキセドを含む群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0069】
他の代謝産物は、ヒドロキシカルバミドを含む群から選択することができるが、これに限定されない。
【0070】
トポイソメラーゼI阻害剤は、イリノテカン及びトポテカンを含む群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0071】
アントラサイクリンは、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、バルルビシンを含む群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0072】
ポドフィロトキシンは、エトポシド及びテニポシドを含む群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0073】
タキサンは、カバジタキセル、ドセタキセル、パクリタキセルを含む群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0074】
ビンカアルカロイドは、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、ビノレルビンを含む群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0075】
アルキル化剤は、ベンダムスチン、クロラムブシル、ダカルバジン、メルファラン、ストレプトゾトシン、トラベクチンを含む群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0076】
抗ホルモン化合物は、アビラテロン、ビカルタミド、シプロテロン、デガレリクス、エキセメスタン、フルベストラント、ゴセレリン、ヒスレリン、ロイプロリド、ミフェプリストン、トリプトレリンを含む群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0077】
チロシンキナーゼ阻害剤は、アファチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、コビメチニブ、クリゾチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、オシメチニブ、パゾパニブ、ルキソリチニブ、スニチニブ、バンデタニブを含む群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0078】
ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)阻害剤は、エベロリムス、テムシロリムスを含む群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0079】
レチノイドは、アリトレチノイン、ベキサロテン、イソトレチノイン、タミバロテン、トレチノインを含む群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0080】
免疫調節剤は、レナリドマイド、ポマリドマイド、サリドマイドを含む群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0081】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、ベリノスタット、パノビノスタット、バルプロアート、ボリノスタットを含む群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0082】
プラチナートは、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチンを含む群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0083】
他の薬剤は、アナグレリド、セリチニブ、ダブラフェニブ、イデラリシブ、イブルチニブ、パルボシクリブ、ベムラフェニブ、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ダクチノマイシン、エリブリン、エストラムスチン、イクサベピロン、マイトマイシン、プロカルバジン、アレクチニブ、フルキシメステロン、イオベグアン、イミキモド、インターフェロン、イクサゾミブ、ランレオチド、レンチナン、オクトレオチド、オマセタキシン、テガフール、ギメラジル、オテラシル、ウラシル、コンブレタスタチン、クロロキンを含む群から選択することができるが、これらに限定されない。
【0084】
本発明の好ましい実施形態において、治療薬は、タキサン、抗葉酸剤、チロシンキナーゼ阻害剤、アントラサイクリン、ヌクレオシド類似体、又は他の薬剤から選択される。最も好ましくは、治療薬は、ドセタキセル、ペメトレキセド、クロロキン、コンブレタスタチン、ゲムシタビン、ドキソルビシン、フルオロウラシル(5-FU)、5’-デオキシ-5-フルオロシチジン(5’-DFCR)、ラパチニブを含む群から選択される。
【0085】
本発明の実施形態において、治療薬は、ドセタキセルである。
【0086】
本発明の実施形態において、治療薬は、カルボプラチンである。
【0087】
本発明の実施形態において、治療薬は、ドキソルビシンである。
【0088】
本発明の別の実施形態は、(i)PEG(メタ)アクリラートモノマー(式II)の重合を含む、本発明のポリマー-薬物コンジュゲート(式I)の調製方法(方法I)であり、
【化4】
式中、
・R1は、H又は-CH
3から選択される
・R3は、-H又は-CH3から選択される
・nは、1~50の自然数である
式IIaのポリマーを得、
【化5】
式中、
・Aは、末端基であるか、又はAは、ヌルであってもよい
・Bは、末端基であるか、又はBは、ヌルであってもよい
【0089】
次いで、(ii)式IIaを(メタ)アクリラートL-Dモノマー(式IIIa)とさらに反応させ、
【化6】
・式中、R
2は、H又はCH
3から選択される
・Lは、切断可能なリンカーである、又はLは、ヌルであってもよい
・Dは、コンブレタスタチン、5-FU、ゲムシタビン、クロロキン、ドキソルビシンを含む群から選択され、式Iのポリマー-薬物コンジュゲートを得る治療薬である。
【0090】
別の態様において、本発明のポリマー-薬物コンジュゲート(式I)を調製するための方法(方法II)は、(i)PEG(メタ)アクリラートモノマー(式II)の重合を含み、
【化7】
式中、
・R1は、H又は-CH
3から選択される
・R3は、-H又は-CH3から選択される
・nは、1~50の自然数である
式IIaのポリマーを得、
【化8】
式中、
・Aは、末端基であるか、又はAは、ヌルであってもよい
・Bは、末端基であるか、又はBは、ヌルであってもよい
【0091】
次いで、(ii)式IIaを(メタ)アクリラートLモノマー(式IIIb)とさらに反応させ、
【化9】
・式中、R
2は、H又は-CH
3から選択される
・Lは、切断可能なリンカーであるか、又はLは、ヌルであってもよい
式IIbに示されるようなコポリマーを得る
【化10】
・式中、xは、1~100の自然数であり
・yは、1~100の自然数である
【0092】
次いで、(iii)式IIbを、コンブレタスタチン、5-FU、ゲムシタビン、クロロキン、ドキソルビシンを含む群から選択される治療薬(D)と反応させて、式Iに示されるポリマーコンジュゲートを得る。
【0093】
本発明の別の実施形態は、(i)PEG(メタ)アクリラートモノマー(式II)の重合を含む、本発明のポリマー-薬物コンジュゲート(式I)を調製するための方法(方法III)であり、
【化11】
式中、
・R1は、H又は-CH
3から選択される
・R3は、-H又は-CH3から選択される
・nは、1~50の自然数である
式IIaのポリマーを得、
【化12】
式中、
・Aは、末端基であるか、又はAは、ヌルであってもよい
・Bは、末端基であるか、又はBは、ヌルであってもよい
【0094】
次いで、(ii)式IIaを(メタ)アクリラートL-Dモノマー(式IIIa)とさらに反応させ、
【化13】
・式中、R
2は、H又は-CH
3から選択される
・Lは、切断可能なリンカーである、又はLは、ヌルであってもよい
・Dは、コンブレタスタチン、5-FU、ゲムシタビン、クロロキン、ドキソルビシンを含む群から選択され、ブロックコポリマーを得る治療薬であり、次いで、(iii)形成されたブロックコポリマーを標的部分と反応させて、式Iに示されるポリマー-薬物コンジュゲートを得る。
【0095】
「アクリラート」という用語は、アクリル酸の誘導体を指す。これらの誘導体は、親酸(CH2CHCO2H)及びエステルを含み、したがって、「アクリラート系」という用語は、上記のアクリラート誘導体のいずれかを有する官能基を定義する。
【0096】
「メタクリラート」という用語は、メタクリル酸の誘導体を指す。これらの誘導体は、親酸(CH2C(CH3)CO2H)及びエステルを含む。したがって、「メタクリラート系」という用語は、上記のメタクリラート誘導体のいずれかを有する官能基を定義する。
【0097】
「(メタ)アクリラート」という用語は、「アクリラート」及び「メタクリラート」という用語を指す。したがって、「(メタ)アクリラート」という用語は、「アクリラート」及び「メタクリラート」と互換的に使用することができ、上記のようにこれらの用語の全ての特徴を含む。「(メタ)アクリラート」はという用語は、「メタクリラート及び/又はアクリラート」を意味すると解釈されるべきである。
【0098】
方法I、II、及びIIIの工程(i)は、連鎖移動剤及び/又は開始剤の使用をさらに含み得る。
【0099】
別の態様において、本発明は、方法I、II、又はIIIのうちのいずれか1つによって調製された式Iのポリマー-薬物コンジュゲートに関する。
【0100】
別の実施形態において、本発明は、この方法が、非常に明確に定義されたポリマー構造及び薬物含有量を有するポリマー-薬物コンジュゲートを提供するので、方法Iによって調製された式Iのポリマー-薬物コンジュゲートに関する。また、この方法で調製されたポリマー-薬物コンジュゲートは、側鎖上に薬物分子に非コンジュゲートなままである遊離反応基を有さない。
【0101】
一実施形態において、PEG(メタ)アクリラート(式II)は、好ましくは、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリラート(CAS番号:26915-72-0)、ポリエチレングリコールメタクリラート(CAS番号:25736-86-1)、ポリエチレングリコールメチルエーテルアクリラート(CAS番号:32171-39-4)、及びポリエチレングリコールアクリラート(CAS番号:9051-31-4)を含む群から選択され、化合物の構造については、表1を参照のこと。本発明の好ましい実施形態において、R1及びR3が両方とも-CH3であるポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリラートが使用される。
【0102】
本発明の実施形態において、50~2000g/molの平均分子量を有するPEG(メタ)アクリラート(式II)が使用される。好ましい実施形態において、PEG(メタ)アクリラート(式II)は、100~1500g/molの平均分子量を有し、最も好ましい実施形態において、PEG(メタ)アクリラート(式II)は、150~1000g/molの平均分子量を有する。本発明のPEG(メタ)アクリラート(式II)は、例えば、60、70、80、80、100、150、200~250、300、400、500、600、700、800、900、1000g/molの平均分子量を有することができる。
【0103】
本発明による切断可能なリンカーは、商業的供給源から入手することができ、又は文献に提供されている既知の方法により調製され得る。
【0104】
別の態様において、本発明は、式Iのポリマー-薬物コンジュゲートの合成に使用するための式IIbのブロックコポリマーに関し、
【化14】
式中;
-xは、1~100の自然数である、
-yは、1~100の自然数である、
-R
1及びR
2は、独立して、H又は-CH
3から選択される、
-R
3は、-H又は-CH
3から選択される
-nは、1~50の自然数である、
-Lは、切断可能なリンカーである、又はLは、ヌルであってもよい
-Aは、末端基であるか、又はAは、ヌルであってもよい
-Bは、末端基であるか、又はBは、ヌルであってもよい。
【0105】
上記に開示したように、式Iのポリマー-薬物コンジュゲートを調製する方法(方法I、II、及びIII)は、少なくとも2つの重合工程を含み、モノマー式II及び式IIIa又はIIIbのモノマーが重合される。本発明の実施形態において、これらの重合工程は、開始剤及び/もしくは重合剤ならびに/又は溶媒をさらに含んでもよい。
【0106】
本発明のポリマー-薬物コンジュゲートは、既知の重合方法のうちのいずれかによって調製することができる。当技術分野において既知の任意の好適な開始剤及び/又は触媒は、本発明のポリマー-薬物コンジュゲートの調製に使用することができる。重合開始剤が使用される場合、開始剤又はその断片は、得られるポリマー-薬物コンジュゲート中に存在し得る。
【0107】
本発明のポリマー-薬物コンジュゲートのポリマー骨格は、例えば、当技術分野において既知の塊状重合、溶液重合、及び/又は懸濁重合技術によって得ることができる。
【0108】
本発明のポリマー-薬物コンジュゲートの調製に使用される重合技術は、フリーラジカル重合又は制御/リビングフリーラジカル重合によって伝播してもよい。本明細書では、「制御/リビングフリーラジカル重合」という用語は、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合、ヨウ素移動重合(ITP)、セレン中心ラジカル媒介重合、テルリド媒介重合(TERP)、ニトロキシド媒介重合(NMP)を指す。本発明の好ましい実施形態において、RAFT重合を使用して本発明のポリマー-薬物コンジュゲートを調製する。
【0109】
好適な重合開始剤は、本文書に記載の群から選択することができる。
【0110】
RAFT重合を用いる場合、CTA及び開始剤は、本明細書に提供される方法I、II、又はIIIに従って本発明のポリマー-薬物コンジュゲートを調製するために一緒に使用され得る。
【0111】
本発明の実施形態において、本発明のポリマー-薬物コンジュゲート及びそれらから作製されたポリマー集合体は、標的基をさらに含み得る。本明細書では、「標的基」という用語は、細胞、好ましくは、相補的受容体を有する腫瘍細胞に特異的に結合する腫瘍特異的リガンドを指す。
【0112】
「標的基」という用語は、所望の活性のために本発明のポリマー-薬物コンジュゲートを特定の部位に送達するのに役立つ、すなわち化合物の局在化をもたらす分子を意味する。局在化は、分子決定基の特異的認識、標的剤又はコンジュゲートの分子サイズ、イオン相互作用、疎水性相互作用などによって媒介される。薬剤を特定の組織又は領域に標的する他のメカニズムは、当業者に既知である。標的リガンドとしては、例えば、標的化細胞表面上の分子に結合する分子が挙げられる。例示的な標的リガンドとしては、抗体、抗体断片、有機小分子、ペプチド、ペプトイド、タンパク質、ポリペプチド、オリゴ糖、トランスフェリン、HS-糖タンパク質、凝固因子、血清タンパク質、β-糖タンパク質、G-CSF、GM-CSF、M-CSF、EPOなどが挙げられる。本発明の例示的な実施形態において、標的システムは、RGDfK、EPPT1ペプチド、ビスホスホン酸、又はフォラートなどの標的リガンドを担体分子又はリンカーに共有結合させることを含む。
【0113】
特定の実施形態において、本発明は、標的リガンドを含む又は含まないポリマー-薬物コンジュゲートによって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、標的リガンドは、RGDfK、EPPT1、ビスホスホン酸、又はフォラートであり得る。
【0114】
本発明の別の実施形態は、式Iで示される有効量のポリマー-薬物コンジュゲートを対象に投与することを含む、治療薬を送達するための方法を提供する。
【0115】
本発明の別の実施形態は、式Iで示されるポリマー-薬物コンジュゲートからなる有効量のポリマー集合体を対象に投与することを含む、治療薬を送達するための方法を提供する。
【0116】
本発明の別の実施形態は、抗癌剤又は類似の薬剤の送達を必要とする種々の障害の治療に使用するための本発明のポリマー-薬物コンジュゲートである。
【0117】
本発明の別の実施形態は、抗癌剤又は類似の薬剤の送達を必要とする様々な障害の治療に使用するための本発明のポリマー-薬物コンジュゲートからなるポリマー集合体である。
【0118】
好ましい実施形態において、本発明は、癌治療用の医薬品として使用するための式Iで示されるポリマー-薬物コンジュゲートに関する。
【0119】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明は、癌治療用の医薬品として使用するための式Iのポリマー-薬物コンジュゲートからなるポリマー集合体に関する。
【0120】
本明細書で使用される場合、「治療する」又は「治療している」は、その状態によって脅かされているか、又はその状態に苦しんでいる対象において、病的状態を特徴付ける少なくとも1つの症状を阻害、軽減、調整、改善、又は阻止することを意味する。様々な種類の癌の非限定的なリストは、以下の通りである:癌腫、固形組織の癌腫、扁平上皮癌腫、腺癌、肉腫、神経膠腫、高悪性度神経膠腫、芽細胞腫、神経芽細胞腫、形質細胞腫、組織球腫、黒色腫、腺腫、低酸素腫瘍、骨髄腫、転移性癌、又は一般的な癌。
【0121】
開示された組成物が治療に使用することができる癌の具体例としては、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、ホジキン病、膀胱癌、脳腫瘍、神経系癌、頭頸部癌、頭頸部扁平上皮癌、腎臓癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌などの肺癌、神経芽細胞腫/神経膠芽腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、肝臓癌、黒色腫、口腔の扁平上皮癌、のど喉頭癌、大腸癌、子宮頸癌、子宮頸癌腫、乳癌、及び上皮癌、腎臓癌、泌尿生殖器癌、肺癌、食道癌、頭頸部癌、大腸癌、造血器癌;精巣癌;大腸癌及び直腸癌、前立腺癌、又は膵臓癌が挙げられる。
【0122】
本発明のポリマー-薬物コンジュゲート及び/又は本発明のポリマー-薬物コンジュゲートからなるポリマー集合体はまた、子宮頸部及び肛門の異形成、他の異形成、重度の異形成、過形成、異型過形成、及び新形成などの前癌状態の治療にも使用され得る。
【0123】
本明細書で使用される「癌」及び「癌性」という用語は、悪性腫瘍を指すか、又は無秩序な細胞増殖を特徴とする生理学的状態を表す。
【0124】
本明細書で考察されるように、本発明のポリマー-薬物コンジュゲート及び/又は本発明のポリマー-薬物コンジュゲートからなるポリマー集合体は、癌の治療及び/又は予防において用途を見出す。そのような使用のために、本発明のポリマー-薬物コンジュゲート及び/又は本発明のポリマー-薬物コンジュゲートからなるポリマー集合体は、一般に医薬組成物の形態で投与される。
【0125】
したがって、本発明によれば、式Iによるポリマー-薬物コンジュゲート、ならびに少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/又は担体を含む医薬組成物が提供される。「治療」という用語は、治療的又は予防的療法のいずれかを含む。
【0126】
さらに、本発明によれば、式Iによるポリマー-薬物コンジュゲート、ならびに少なくとも1つの薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、及び/又は担体からなるポリマー集合体を含む医薬組成物が提供される。
【0127】
本発明のポリマー-薬物コンジュゲート及び/又は本発明のポリマー-薬物コンジュゲートからなるポリマー集合体を含む組成物は、それを患者に投与する所望の方法に応じて任意の好適な形態であり得る。本発明のポリマー-薬物コンジュゲート及び/又は本発明のポリマー-薬物コンジュゲートからなるポリマー集合体を含む組成物は、例えば、液体分散液又は水性もしくは油性懸濁液の形態で、経口投与するように処方することができるか、又はそれらは、非経口投与、例えば皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、腹腔内、皮内、経皮、もしくは他の注入技術のために処方することができる。
【0128】
本発明のポリマー-薬物コンジュゲート及び/又は本発明のポリマー-薬物コンジュゲートからなるポリマー集合体を含む組成物はまた、吸入による投与のために、吸入器又は噴霧器と共に投与するためのエアロゾル又は溶液の形態で処方することができる。本発明のポリマー-薬物コンジュゲート及び/又は本発明のポリマー-薬物コンジュゲートからなるポリマー集合体は、好ましくは、経皮的、皮下、鼻腔内、静脈内、筋肉内、腫瘍内、又は吸入を介して対象に投与される。任意の所与の場合における投与に最も好適な経路は、本発明のポリマー-薬物コンジュゲート中に存在する特定の治療薬、対象、ならびに対象の疾患及び健康状態の性質及び重症度に依存する。
【0129】
本発明のポリマー-薬物コンジュゲート及び/又は本発明のポリマー-薬物コンジュゲートからなるポリマー集合体は、1つ以上の他の治療上活性な化合物と組み合わせて、例えば、同時に、順次に、又は別々に投与され得、治療上活性な化合物は、抗癌剤であり得るか、又はそれは、免疫調節剤、抗ウイルス剤、抗感染剤、抗菌剤、抗感染剤もしくは麻酔剤、又はそれらの組み合わせである。
【0130】
本発明のポリマー集合体は、上に提供されたリストから選択された第2の治療薬をカプセル化していてもよく、1つ以上の他の治療上活性な化合物と組み合わせて、例えば、同時に、順次に、又は別々にさらに投与され得、治療上活性な化合物は、抗癌剤であり得るか、又はそれは、免疫調節剤、抗ウイルス剤、抗感染剤、抗菌剤、抗感染剤もしくは麻酔剤、又はそれらの組み合わせである。
【0131】
前記第2の治療薬は、本発明のポリマー-薬物コンジュゲート中に存在する治療薬とは異なるという条件で、上に列挙した治療薬から選択することができる。
【0132】
本明細書の文脈で含まれるとは、含むことを意味することを意図している。
【0133】
技術的に適切な場合には、本発明の実施形態を組み合わせてもよい。
【0134】
実施形態は、特定の特徴/要素を含むものとして本明細書に記載される。本開示はまた、前記特徴/要素からなるか又は本質的になる別個の実施形態にも及ぶ。
【0135】
特許及び出願などの技術的参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0136】
本明細書に具体的かつ明示的に列挙された任意の実施形態は、単独で、又は1つ以上のさらなる実施形態と組み合わせて、免責事項の基礎を形成し得る。
【0137】
以下の例を参照しながら本発明を説明するが、これらの例は、単なる例示であり、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0138】
例
以下の例は、式Iのポリマー-薬物コンジュゲート及びそれらのポリマー集合体の段階的調製を提供する。
【0139】
例1A:重合性コンブレタスタチン-A4モノマー(CombMA)の合成
コンブレタスタチン-A4(300mg、0.95mmol)、トリエチルアミン(TEA、191mg、1.89mmol)、塩化メタクリロイル(198mg、1.89mmol)をN2下で25mLの丸底フラスコ中で乾燥ジクロロメタン(DCM、10mL)に溶解した。反応液を室温で16時間撹拌した。粗生成物を飽和NaHCO3(20mL×2)及び蒸留水(20mL×2)で抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を蒸発させた。CombMAモノマーを、ヘキサンを用いたシリカカラムクロマトグラフィーを使用して精製した。
【0140】
例1B:反応性官能基を有する連鎖移動剤(CTA)の調製
4-シアノペンタン酸ジチオペンタのアート(CPDB)は、CTAであり、このCTAを以下の手順に従って反応性官能基であるN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で修飾した。
【0141】
簡単に説明すると、CPADB(200mg、0.72mmol)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(125mg、1.07mmol)を無水DCM(4mL)に溶解した。ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(177mg、0.86mmol)を無水DCM(1mL)に溶解した。次いで、2つの溶液混合物を混合し、反応混合物を室温で暗所にて16時間撹拌した。不溶性白色副生成物ジシクロヘキシル尿素(DCU)を濾過により除去した。得られた溶液を真空乾燥し、粗生成物をヘキサン及びEtOAcを用いてシリカカラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0142】
例1C:POEGMEMA及びNHS-POEGMEMAホモポリマーの合成
可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合をPOEGMEMA及びNHS活性化POEGMEMA(NHS-POEGMEMA)ホモポリマーの合成に使用した。POEGMEMAポリマーを合成するために、DMF(3mL)中のOEGMA(600mg、2.0mmol)及びCPADB(20.12mg、0.072mmol)の溶液に、AIBN(1.31mg、0.008mmol)を添加した。混合物をN2でパージしてO2を除去し、重合を70℃で撹拌した。冷却及び空気暴露により重合を停止させた。POEGMEMAポリマーをジエチルエーテル中で沈殿させることにより精製した。ポリマー沈殿物を真空下で乾燥させて、約35のOEGMEMA繰り返し単位(460mg、収率77%)を得た。NHS-POEGMEMAホモポリマーの合成のために、連鎖移動剤としてSCPDB(27.10mg、0.072mmol)を使用して同じ手順を適用して、約35のOEGMEMA繰り返し単位(480mg、収率80%)を得た。
【0143】
例1D:POEGMEMA-co-CombMA及びNHS-POEGMEMA-co-CombMAブロックコポリマーの合成
RAFT重合をPOEGMEMA-b-PCombMA及びNHS-POEGMEMA-b-PCombMAブロックコポリマーの合成に使用した。DMF(0.75mL)中のCombMA(100mg、0.26mmol)及びマクロ連鎖移動剤としてのPOEGMEMAポリマー(50mg、0.005mmol)の溶液に、AIBN(0.15mg、0.00092mmol)を添加した。混合物をN2でパージしてO2を除去し、重合を65℃で撹拌した。冷却及び空気暴露により重合を停止させた。粗生成物をジエチルエーテル中で沈殿させた。ポリマー沈殿物を真空乾燥して、約32のCombMA繰り返し単位(98mg、65%収率)を得た。マクロ連鎖移動剤としてNHS-POEGMEMA(50mg、0.005mmol)を使用してNHS-POEGMEMA-b-PCombMAブロックコポリマーを合成するために同じ手順を適用して、約33のCombMA繰り返し単位(105mg、収率70%)を得た。
【0144】
例1E:標的化ブロックコポリマーの合成
NHS-POEGMEMA-b-PCombMA(50mg、0.002mmol)及びcRGDfK(6.4mg、0.01mmol)をDMF(0.25mL)に共溶解し、この反応混合物にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(6.5mg、0.05mmol)を添加した。反応混合物を30℃で24時間撹拌した。粗生成物をジエチルエーテル中で沈殿させた。ポリマー沈殿物を減圧乾燥して、cRGDfK-POEGMEMA-b-CombMA(41mg、収率82%)を得た。cRGDfK-POEGMEMA-b-CombMAブロックコポリマーの調製を示す全体図を
図1として提供する。
【0145】
例1F:標的化及び非標的化ポリマー集合体の調製
本明細書において、「標的化」とは、cRGDfK-POEGMEMA-b-CombMAブロックコポリマーからなるポリマー集合体を指し、「非標的化」とは、POEGMEMA-b-PCombMAブロックコポリマーからなるポリマー集合体を指す。
【0146】
2つの溶液を調製して、標的化及び非標的化集合体を得た。非標的化集合体の形成のために、2.3mgのPOEGMEMA-b-PCombMAブロックコポリマーをガラスバイアル中の500μLのTHFに溶解し、3mLの水をこの溶液に添加した。次いで、バイアル中のTHFを室温で24時間、開放雰囲気で蒸発させて、ミセルを得た。cRGDfK-POEGMEMA-b-PCombMA及びPOEGMEMA-b-PCombMA混合物(1/5、w/w)を使用して同じ方法で標的化集合体を調製した。非標的化及び標的化集合体の調製の概略図を
図2及び
図3に提供する。
【0147】
例1G:臨界ミセル濃度(CMC)測定
蛍光プローブ法を標的化及び非標的化集合体のCMC値の決定に利用した。ブロックコポリマー溶液(450μL)を、上記のようにバイアル中で段階希釈を使用してTHF中で調製した。THF中のナイルレッドの50μL溶液(0.03mg/mL)、次いで3mLの水を各バイアルに添加した。THFを開放雰囲気で完全に蒸発させ、3mLの水中1×10-9~1×10-5Mの範囲の16個の試料についての最終濃度値を得た。蛍光測定値を550nmの励起波長で蛍光分光光度計により記録し、発光を580~660nmでモニターした。
【0148】
自己集合によってミセル型ポリマー構造を形成するための両親媒性ポリマーの最低必要濃度を決定するために、ブロックコポリマーのCMC値を、ポリマー濃度の関数としてナイルレッドの蛍光強度を追跡することによって計算した。
【0149】
非標的化及び標的化集合体におけるナイルレッドの蛍光発光スペクトルを550nmの励起波長で得て、発光を580~660nmでモニターした(それぞれ
図4及び
図5)。
【0150】
CMC値を決定するために、612nmでの発光強度対コポリマー濃度の対数のプロットを得た。非標的化及び標的化集合体形成についてのCMC値は、強度比に属する傾向線と比較的一定の値及び急速に増加した強度比との交点によって計算した(それぞれ
図6及び
図7)。非標的化及び標的化集合体形成についてのCMC値は、それぞれ1.796×10
-6M及び1.566×10
-6Mであることが分かった。
【0151】
例2A:重合性5FUモノマー(5FU-MA)の合成
5-フルオロウラシル(250mg、1.92mmol)及び37%ホルマリン(244μL)を60℃で2時間反応させた。次いで、混合物を冷却し、完全に凍結乾燥して粘稠な化合物を得た。第2の工程として、この生成物(315mg、1.97mmol)を無水アセトニトリル(5.8mL)に溶解し、次いでトリエチルアミン(422μL、3.03mmol)をこの溶液に添加した。反応混合物を0℃に冷却した後、塩化メタクリロイル(232μL、2.38mmol)を滴下した。反応を室温で一晩進行させ、次いで白色沈殿物を濾別した。全ての揮発物を真空下で蒸発させ、次いで粗生成物をジクロロメタン(20mL)で溶解し、続いて1MのHCl(2×10mL)、1MのNaHCO3(10mL)、及びブライン(10mL)で抽出した。有機部分を濃縮した後、生成物を、エチルアセタート:ヘキサン混合物(30:70v/v)で溶出するシリカカラムクロマトグラフィーにより純粋な形で単離した。生成物を粘性無色油状物として得た(305mg、収率68%)。
【0152】
例2B:POEGMEMAホモポリマーの合成
可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合をPOEGMEMAホモポリマーの合成に使用した。POEGMEMAポリマーの合成のために、DMF(2.5mL)中のOEGMA(500mg、1.66mmol)及びCPADB(11.97mg、42.85μmol)の溶液に、AIBN(0.78mg、4.76μmol)を添加した。混合物をN2でパージしてO2を除去し、重合を70℃で16時間撹拌した。冷却及び空気暴露により重合を停止させた。POEGMEMAポリマーをジエチルエーテル中で沈殿させることにより精製した。ポリマー沈殿物を真空乾燥して、95mgのポリマーを収率19%で得た。
【0153】
例2C:POEGMEMA-co-5FU-MAブロックコポリマーの合成
RAFT重合をPOEGMEMA-b-P5FU-MAブロックコポリマーの合成に使用した。DMF(0.30mL)中の5FU-MA(17.9mg、78.6μmol)及びマクロ連鎖移動剤としてのPOEGMEMAポリマー(40mg、3.93μmol)の溶液に、AIBN(0.13mg、0.786μmol)を添加した。混合物をN2でパージし、O2を除去して重合を70℃で16時間撹拌した。冷却及び空気暴露により重合を停止させた。粗生成物をジエチルエーテル中で沈殿させた。ポリマー沈殿物を真空乾燥して、16mgのポリマーを収率28%で得た。
【0154】
例3A:重合性コンブレタスタチン-A4モノマー(Comb-SS-MA)の合成
2-ヒドロキシエチルメタクリラート(500mg、3.8mmol)、4,4’-ジチオ酪酸(1.83g、7.6mmol)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.59mg、7.8mmol)、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(281mg、2.3mmol)を100mL丸底フラスコ中のN2下で無水ジクロロメタン(DCM)(54mL)に溶解した。反応液を室温で16時間撹拌した。粗生成物を冷ジエチルエーテル中で沈殿させ、-20℃で20分間放置した。生成物を、エチルアセタート及びヘキサン(20:80v/v)を用いるシリカカラムクロマトグラフィーを使用することにより精製した(426mg、収率32%)。
【0155】
次いで、得られた生成物(300mg、0.85mmol)及びコンブレタスタチン-A4(270mg、0.85mmol)を、25mL丸底フラスコ中のN2下でDIPC(129mg、1.02mmol)及びDMAP(104mg、0.85mmol)と共に無水ジクロロメタン(DCM)(6mL)に溶解した。反応液を室温で16時間撹拌した。Comb-SS-MAモノマーを、エチルアセタート及びヘキサン(30:70v/v)を用いたシリカカラムクロマトグラフィーを使用して精製した(195mg、35%収率)。
【0156】
例3B:POEGMEMA及びComb-SS-MA-POEGMEMAホモポリマーの合成
可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)重合をPOEGMEMAの合成に使用した。POEGMEMAポリマーの合成のために、DMF(5mL)中のOEGMA(1.0g、3.3mmol)及びCPADB(36.88mg、0.133mmol)の溶液に、AIBN(2.17mg、0.0013mmol)を添加した。混合物をN2でパージし、O2を除去して、重合を70℃で16時間撹拌した。冷却及び空気暴露により重合を停止させた。POEGMEMAポリマーをジエチルエーテル中で沈殿させることにより精製した。ポリマー沈殿物を真空乾燥して、715mgのポリマーを収率69%で得た。
【0157】
例3C:POEGMEMA-co-Comb-SS-MAブロックコポリマーの合成
POEGMEMA-b-PComb-SS-MAブロックコポリマーの合成には、RAFT重合を使用した。DMF(1.07mL)中のComb-SS-MA(80mg、0.20mmol)及びマクロ連鎖移動剤としてのPOEGMEMAポリマー(134mg、0.020mmol)にAIBN(0.68mg、0.004mmol)を添加した。混合物をN2でパージしてO2を除去し、重合を65℃で撹拌した。冷却及び空気暴露により重合を停止させた。粗生成物をジエチルエーテル中で沈殿させた。ポリマー沈殿物を真空乾燥して、収率65%で98mgのポリマーを得た。
【0158】
上記の例は、本発明がジスルフィド及びアセタールなどの様々なリンカーの範囲、ならびにコンブレタスタチン及び5-FUなどの様々な薬物分子に適用可能であることを示している。
【配列表フリーテキスト】
【0159】
配列表1 <223>配列番号1
配列表2 <223>配列番号2
配列表3 <223>周期
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療薬を送達するためのブロックコポリマーの形態の式Iのポリマー-薬物コンジュゲート、
【化1】
式中、
・R
1、R
2、及びR
3は
、-CH
3
である
・xは、1~100の自然数である
・yは、1~100の自然数である
・nは、1~50の自然数である
・Lは、切断可能なリンカーであ
り、GFLGを含んでいる
・Dは
抗癌剤であり、コンブレタスタチン、又は5-フルオロウラシル(5-FU)、又は
ゲムシタビンである
・Aは、末端基であ
り、cRGDfKを含んでいる
・Bは、
重合開始剤の断片であり、S,S-ジベンジルトリチオカルボナートの一部であ
る。
【請求項2】
請求項
1に記載の式Iのポリマー-薬物コンジュゲートを
含むポリマー
ミセル、
【化2】
式中、
・R
1、R
2、及びR
3は
、-CH
3
である
・xは、1~100の自然数である
・yは、1~100の自然数である
・nは、1~50の自然数である
・Lは、切断可能なリンカーであ
り、GFLGを含んでいる
・Dは、
抗癌剤であり、コンブレタスタチン、又は5-フルオロウラシル、又は
ゲムシタビンである
・Aは、末端基であ
り、cRGDfKを含む標的部分である
・Bは、
重合開始剤の断片であり、S,S-ジベンジルトリチオカーボナートの一部であ
る。
【請求項3】
カプセル化された抗癌剤を第2の抗癌剤として、式Iのポリマー-薬物コンジュゲートに結合した抗癌剤をさらに含む、請求項2に記載のポリマーミセル。