(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084824
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】基板を結合および剥離させる方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/48 20060101AFI20240618BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20240618BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
B29C65/48
B32B7/06
B32B7/12
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024060986
(22)【出願日】2024-04-04
(62)【分割の表示】P 2022196134の分割
【原出願日】2016-10-24
(31)【優先権主張番号】102015118742.6
(32)【優先日】2015-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ブルクグラーフ
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト ヴィースバウアー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】結合層によって製品基板を支持体基板に結合する方法、および結合された支持体基板から製品基板を剥離させる方法の提供。
【解決手段】結合層(4)と製品基板(2)との間に剥離層(3)が設けられる。ここで、a)剥離層(3)は、放射源の電磁放射との相互作用によって剥離可能となり、b)結合層(4)および支持体基板(5)それぞれの少なくとも大部分が、電磁放射に対して透過性を有する。本発明はさらに、対応する製品基板‐支持体基板‐複合体にも関する。
【選択図】
図1b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合層(4)によって製品基板(2)を支持体基板(5)に結合する方法であって、
前記結合層(4)と前記製品基板(2)との間に剥離層(3)を設け、
a)前記剥離層(3)を、放射源の電磁放射との相互作用によって剥離可能とし、
b)前記結合層(4)および前記支持体基板(5)それぞれの少なくとも大部分が、前記電磁放射に対して透過性を有する、
方法。
【請求項2】
製品基板(2)を、結合層(4)によって前記製品基板(2)に結合された支持体基板(5)から剥離させる方法であって、
前記結合層(4)と前記製品基板(2)との間に剥離層(3)を設け、
a)前記剥離層(3)を、放射源の電磁放射との相互作用によって剥離し、
b)前記結合層(4)および前記支持体基板(5)それぞれの少なくとも大部分が、前記電磁放射に対して透過性を有する、
方法。
【請求項3】
前記電磁放射に対する前記剥離層の物理特性および/または化学特性を、前記結合層(4)および/または前記支持体基板(5)の対応する物理特性および/または化学特性に対して相補的となるように選定する、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記結合層(4)への前記電磁放射の光子吸収率は、50%未満、好ましくは25%未満、さらに好ましくは10%未満、最も好ましくは1%未満、特に最も好ましくは0.1%未満である、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記剥離層(3)での前記電磁放射の光子吸収率は、50%超、好ましくは75%超、さらに好ましくは90%超、最も好ましくは99%超、特に最も好ましくは99.9%超である、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記結合層(4)を、剥離過程中、50℃未満、好ましくは25℃未満、さらに好ましくは10℃未満、最も好ましくは1℃未満、特に最も好ましくは0.1℃未満で加熱する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記剥離層(3)を、前記電磁放射によって昇華させる、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記剥離層(3)を、10μm未満の層厚さ、好ましくは1μm未満の層厚さ、さらに好ましくは100nm未満の層厚さ、最も好ましくは10nm未満の層厚さ、特に最も好ましくは1nm未満の層厚さで形成または被着する、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
結合層(4)によって支持体基板(5)に結合された製品基板(2)を含む製品基板‐支持体基板‐複合体であって、
前記結合層(4)と前記製品基板(2)との間に剥離層(3)が設けられており、
a)前記剥離層(3)は、放射源の電磁放射との相互作用によって剥離可能となり、
b)前記結合層(4)および前記支持体基板(5)それぞれの少なくとも大部分が、前記結合層(4)を通して送信される電磁放射に対して透過性を有する、
製品基板‐支持体基板‐複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1記載の、結合層によって製品基板を支持体基板に結合する方法、および請求項2記載の、結合層によって製品基板に結合された支持体基板から製品基板を剥離させる方法、ならびに請求項9記載の、製品基板‐支持体基板‐複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、2つの基板(製品基板および支持体基板)をデボンディングまたは剥離させる複数の方法が存在している。多くの方法は、2つの基板の相対的に容易な剥離が可能な一時的接着を達成するために、いわゆる結合接着剤を使用している。結合接着剤は、大抵の場合ポリマーであり、特にはサーモプラストである。
【0003】
一時的結合を形成する第1の手法は、基板の全面にわたってコーティングを行うことである。第2の基板は結合プロセスによって第1の基板に結合される。2つの基板の分離、デボンディングまたは剥離は、高温下でのせん断プロセスによって行われる。この場合の温度は、好ましくは、結合接着剤のガラス転位温度を上回る。適用されるせん断力により、2つの基板を相当に緩慢なプロセスで相互にずらし、相互に分離することができる。
【0004】
一時的結合を形成する第2の手法は、支持体基板の特別な面領域を、この面領域と施与される結合接着剤との間の接着作用が最小となるように、特には接着作用が完全に消失するように処理することである。特別に処理された面領域のほか、きわめて小さな未処理の面領域が残る。高い接着性を有する面領域は、大抵の場合、数ミリメートル厚さの周縁の円環部である。支持体基板は、こうした特別な処理の後、全面にわたって結合接着剤によりコーティングされる。その後、通常の結合過程が行われる。剥離過程は、大抵の場合化学的に、結合接着剤の縁領域を剥離させ、これにより結合接着剤と支持体基板との間の接着力を低下させることで行われる。その後、支持体基板を製品基板からきわめて容易に取り外すことができる。
【0005】
2つの基板を相互に分離する別の手法として、結合接着剤のコーティングを行う前に特に透明な支持体基板上に特別な剥離層を設けることが挙げられる。特定の電磁放射に対する支持体基板の透明性により、光子は妨害されずに剥離層に到達できる。剥離層は光子によって相応に変化して、結合接着剤に対する接着力を低下させる。刊行物である国際公開第2014058601号(WO2014058601A1)には、支持体基板からの結合接着剤の分離ひいては製品基板からの支持体基板の分離を生じさせる反応をその場で形成するために、紫外レーザーを支持体基板の内側に位置する剥離層へ照射するこうした方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、結合の際およびデボンディングまたは剥離の際に最適なフローが達成され、後続の方法ステップが簡単化される方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1,2,9の特徴によって解決される。本発明の有利な実施形態は、各従属請求項に示されている。また、明細書、特許請求の範囲および/または図面に示されている特徴の少なくとも2つの組み合わせの全ても本発明の範囲に該当する。なお値領域を示す場合、言及した範囲内にある値も限界値として開示したものとし、任意の組み合わせで特許請求の範囲に挙げることができる。
【0008】
本発明は、製品基板と支持体基板とが電磁放射に対して少なくとも大部分が透明な結合層によって結合されており、この結合層と製品基板との間に、放射源の電磁放射との相互作用によって剥離可能となるように構成された剥離層が設けられた、製品基板‐支持体基板‐複合体を製造可能な方法および装置を提供するというアイデアを基礎としている。
【0009】
本発明の方法によれば、結合の際には、特に、
a)剥離層を放射源の電磁放射との相互作用によって剥離可能とし、
b)結合層および支持体基板それぞれの少なくとも大部分が、電磁放射に対して透過性を有するようにする、
という特徴/ステップを使用可能である。
【0010】
本発明の方法によれば、剥離の際には、特に、
a)剥離層(3)を放射源の電磁放射との相互作用によって剥離し、
b)結合層(4)および支持体基板(5)それぞれの少なくとも大部分が、電磁放射に対して透過性を有するようにする、
という特徴/ステップを使用可能である。
【0011】
本発明の装置によれば、特に、
a)剥離層(3)は、放射源の電磁放射との相互作用によって剥離可能となり、
b)結合層(4)および支持体基板(5)それぞれの少なくとも大部分が、電磁放射に対して透過性を有する、
という特徴を使用可能である。
【0012】
本発明の(特には独立した)中心思想は、特に、使用される電磁放射、特にレーザーの波長領域に小さい吸収係数を有する結合接着剤(結合層)を使用することにある。吸収係数、ここでは特に線形の吸収係数は、好ましくは質量密度で正規化される。ここで、このようにして得られた種々の材料の質量吸収係数を相互に比較することができる。質量吸収係数は、NISTのX線減衰データベース(http://www.nist.gov/pml/data/xraycoef)から、X線放射に対し、元素および数種の化合物について得ることができる。質量吸収係数は波長にきわめて強く依存するので、以下に、数種の純粋元素と数種の化合物、特にポリマーについての波長領域と質量吸収係数領域とを示す。
【表1】
NISTのX線減衰データベースの質量吸収係数の値領域は、10
-3MeVから10
2MeVのメガ電子ボルトの定義領域で示される。紫外領域は10
-5MeVの定義領域にあるので、当該定義領域により、紫外領域での質量吸収係数を直接に読み取ることはできない。また、刊行物である米国特許第5965065号明細書(US5965065A)からは、所望の紫外領域の元素すなわち炭素、窒素および酸素についての質量吸収係数の値領域が示されている。とりわけ炭素は有機ポリマーの主成分である。ただし、純粋成分の質量吸収係数によって化合物の質量吸収係数を自動的に導出することができない場合にも、少なくとも化合物の質量吸収係数の値領域を推定することはできる。これらの全てのデータから、本発明の化合物についての質量吸収係数は10
-6~10
2MeVのエネルギの定義領域において約10
-2~10
5cm
2/gの間で変化することが理解される。これは10の7乗分の値領域である。刊行物である米国特許第5965065号明細書(US5965065A)は、炭素についての質量吸収係数が、10のべき乗の範囲において、1000cm
2/gから10
6cm
2/gの間で1000eVから100eVへ変化することも示されている。さらに、炭素についての吸収エッジが約300eVにあることも理解される。全てのデータから、エネルギまたは波長領域の小さな変化によって、材料の吸収特性の大きな変化が生じうることを理解できる。したがって、特に本発明の可能な材料の全てについての質量吸収係数の個々の値を示すことは不可能であり、有意でない。
【0013】
このため、本発明では、剥離層を支持体基板でなく製品基板に形成できる。結合接着剤による電磁放射の吸収率が小さいことにより、その場所で剥離過程またはデボンディング過程を開始するのに充分な光子が剥離層に到達する。
【0014】
さらに、本発明は、電磁光子源、特にレーザーを用いて、2つの基板をデボンディングまたは剥離させるシステムおよび方法に関する。ここで、本発明は特に、製品基板と支持体基板との間の接着性を低下させるために電磁放射を剥離層へ導入する、特にフォーカシングするというアイデアを基礎としている。電磁放射は、2つの基板を相互に結合する結合接着剤を通して、特にはこれを加熱することなく送信される。
【0015】
したがって、本発明の思想は、特に、結合接着剤と電磁放射と剥離層とを特別に調整して組み合わせて使用することにある。
【0016】
本発明の利点は、とりわけ、剥離層を製品基板に設けることができるということにある。よって、剥離層は、製品基板と結合層との間に位置する。電磁放射、特にレーザーによって剥離層への照射を行い、接着力を低下させると、特には自動的に、製品基板を結合接着剤から直接に分離することができる。したがって、製品基板は好ましくは剥離直後に既に結合接着剤から解放された状態にあり、あらためて化学洗浄を行う必要がない。
【0017】
剥離層は、好ましくは、本発明の損傷過程中に完全に破壊、特には昇華されるように構成される。
【0018】
電磁放射は、材料の電子と相互作用する。この相互作用は、交流電磁場が帯電した電子を振動させうることによって生じる。正に帯電している原子核は格段に大きな質量を有するので、電子に対して大きな慣性を有する。したがって、原子核の運動は大抵の場合に無視される。
【0019】
交流電磁場は、その周波数に依存して、固体、特に分子に種々の物理的作用を生じさせうる。本願発明の思想は主としてポリマーに関連するので、以下では特に、この物理的作用を、分子、特にポリマーに即して説明する。
【0020】
分子または分子部分は、所定の前提条件のもとでは、光子を吸収し、光子エネルギを振動エネルギおよび/または回転エネルギおよび/または位置エネルギに変換することができる。こうしたエネルギ変換を行えるようにするために、光子は所定の周波数を有さなければならない。形成される新たなエネルギ状態は、相応の波長を有する光子の放出によって再び低下させることができる。こうした定常的な光子の吸収および放出、これにともなうエネルギ変換および分子の個別の自由度へのエネルギの分配は統計的プロセスに関わるので、ここではこれ以上立ち入らない。
【0021】
マイクロ波領域および赤外領域の電磁放射は、分子において、主として回転を励起する。
【0022】
赤外領域の電磁放射は、分子を好ましくは振動させる。なお、バレンツ振動と変形振動との2つのタイプの振動が区別される。第1のタイプの振動は、分子の2個の原子が結合軸に沿って振動するものであり、第2のタイプの振動は、結合角度の変化によって、分子の少なくとも3個の原子間に振動が発生するものである。
【0023】
紫外波長領域の電磁放射の光子は、分子構造の個々の電子を高位の分子軌道へ持ち上げることができるか、またはさらに電子を分子構造から解離させこれにより分子をイオン化することができる大きさのエネルギを既に有している。励起された電子は特には価電子であり、つまり最外殻の分子軌道に位置する電子である。原子核電子を分離させるには、特にはX線波長領域の格段に大きな光子エネルギが必要となる。透過率は、最高被占分子軌道(英語:highest occupied molecule orbital, HOMO)から最低被占分子軌道(英語:lowest occupied molecule orbital, LUMO)への電子の励起が起こりえない波長領域において最大となる。光子が電子と相互作用しえず、HOMOからLUMOへの電子の遷移が排除されているので、光子は、妨害なく、固体、特にポリマー、最も好ましくは結合接着剤を通過する。
【0024】
このように、分子軌道理論は、既に、本発明の結合接着剤の可能な化学合成に対する示唆を提供している。
【0025】
放射源、特に光子源
本発明によれば、特に光子源が放射源として使用される。
【0026】
したがって、源とは、特にその大部分が光子源であり、好ましくは専ら光子源である。光子源は、特にその少なくとも大部分が、好ましくは完全に、
・マイクロ波、300mm~1mm、
・赤外線、特に
・近赤外線、0.78μm~3.0μm、
・中赤外線、3.0μm~50μm、
・遠赤外線、50μm~1000μm、
・可視光、380nm~780nm、
・紫外線、特に
・近紫外線、360nm~315nm、
・中紫外線、315nm~280nm、
・遠紫外線、280nm~200nm、
・真空紫外線、200nm~100nm、
・極紫外線、121nm~10nm、
・X線、0.25nm~0.001nm、
の各波長領域のうち1つもしくは複数で放射を行う。好ましいのは1000μmから10nmまでの波長領域であり、さらに好ましくは780nmから100nmまでの波長領域であり、最も好ましくは370nmから200nmの波長領域である。
【0027】
また、2つの異なる波長領域を形成可能な源の使用も可能である。この場合、個々の全波長に対する本発明の上述した全ての前提条件が当てはまる。紫外線および赤外線の組み合わせが特に好ましい。赤外線は主として剥離層の加熱に用いられ、紫外線は主として共有結合の破壊に用いられる。こうした組み合わせにおいては、本発明の結合接着剤は、2つの波長領域の双方に低い吸収率を有さなければならない。
【0028】
本発明によれば、少なくとも大部分、好ましくは専ら、コヒーレントな光子源、特にマイクロ波源、好ましくはメーザー、または可視光、紫外線およびX線用のコヒーレントな光子源として構成されたレーザーが好ましい。
【0029】
光子源は、連続波モードまたは(好ましくは)パルスモードで駆動可能である。パルス時間は、特には1s未満、好ましくは1ms未満、さらに好ましくは1μs未満、最も好ましくは1ns未満である。2つの連続するパルス間の時間は、好ましくは1ms超、さらに好ましくは100ms超、最も好ましくは1s超である。
【0030】
光子源の波長は、特には、光子流が結合層、特に結合接着剤を、少なくとも大部分、好ましくは完全に透過でき、その際、吸収による大きな損失が生じないように選定される。
【0031】
結合層による光子の吸収率は、特には50%未満、好ましくは25%未満、さらに好ましくは10%未満、最も好ましくは1%未満、特に最も好ましくは0.1%未満である。よって、結合層による光子の透過率は、特には50%超、好ましくは75%超、さらに好ましくは90%超、最も好ましくは99%超、特に最も好ましくは99.9%超となる。吸収率は、材料特性と製品ウェハへの要求とに基づいて選択された層厚さに関連する。
【0032】
特に、結合層および光子源または電磁放射の特性は、結合層が著しく加熱されないように(特に適切な材料選択によって)選定されかつ/または設定される。加熱は、特には50℃未満、好ましくは25℃未満、さらに好ましくは10℃未満、最も好ましくは1℃未満、特に最も好ましくは0.1℃未満である。加熱は、特には、結合層の分子の振動自由度も回転自由度も励起しない電磁波長領域を有する光子源を使用することによって、その大部分を排除することができる。加熱を防止するために、好ましくは紫外‐可視波長領域の電磁ビームが紫外‐可視透過性の結合層と組み合わせて用いられる。
【0033】
以下では、本発明の放射源、特に電磁光子源の好ましい実施形態として、レーザーを説明する。なお、レーザーに代えて、上述した放射源を使用してもよい。
【0034】
固体、特にポリマー、好ましくは本発明の結合層の透過率の定量分析は、紫外‐可視分光計によって行われる。紫外‐可視スペクトルとは、特定の波長の光子の透過率を波長の関数として示したグラフである。
【0035】
支持体基板
好ましい実施形態では、使用されるレーザー(本発明の電磁放射)の波長に対する支持体基板の透過率が決定的な意義を有する。本発明によれば、レーザービームは、支持体基板を通って基板積層体(製品基板‐支持体基板‐複合体)へ入力される。つまり、製品基板は、特には設けられている機能ユニット(金属ユニット)および/または隆起構造体の少なくとも大部分において、レーザーの波長に対し、不透明であってよい。したがって、支持体基板は、好ましくはレーザービームの強度の減衰ができるだけ小さくなる材料から選択される。支持体基板は、特には主として、好ましくは完全に、
・ガラス、
・鉱物、特にサファイア、
・半導体材料、特にケイ素、
・ポリマー、
・化合物材料、
の各材料のうち1つもしくは複数から形成される。本発明によれば、好ましくはガラス製の支持体基板が使用される。
【0036】
支持体基板の厚さは、特に、(特に結合層とともに)製品基板の安定化を保証するのに充分な大きさとなるように選定される。支持体基板の厚さは、特には100μm超、好ましくは500μm超、さらに好ましくは1000μm超、最も好ましくは1500μm超、特に最も好ましくは2000μm超である。
【0037】
同時に、厚さは、レーザービームの強度の減衰をできるだけ小さくするため、最小限の厚さとなるように選定される。支持体基板の厚さは、特には2000μm未満、好ましくは1750μm未満、さらに好ましくは1500μm未満、最も好ましくは1250μm未満、特に最も好ましくは900μm未満である。
【0038】
結合層、特に結合接着剤
結合接着剤として、特に
・ポリマー、特に
・無機ポリマー、好ましくは
・ポリフォスファゼン、
・ポリシロキサン、シリコーン、
・ポリシラン、
・有機ポリマー、特に
・アクリル酸エステル‐スチレン‐アクリロニトリル、
・アクリロニトリル/メチルメタクリレート、
・アクリロニトリル/ブタジエン/アクリレート、
・アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン、
・アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン、
・アクリルポリマー、
・アルキド樹脂、
・ブタジエンゴム、
・ブチルゴム、
・カゼインプラスチック、ガラリス、
・セルロースアセテート、
・セルロースエーテルおよび誘導体、
・水和セルロース、
・ニトロセルロース、
・キチン、キトサン、
・クロロプレンゴム、
・シクロオレフィン‐コポリマー、
・標準化ポリビニルクロリド、
・エポキシ樹脂、
・エチレン‐エチルアクリレート‐コポリマー、
・エチレン‐ポリビニルアセテート、
・エチレン‐プロピレン‐コポリマー、
・エチレン‐プロピレン‐ジエン‐ゴム、
・エチレンビニルアセテート、
・発泡ポリスチレン、
・フッ素ゴム、
・尿素ホルムアルデヒド樹脂、
・尿素樹脂、
・イソプレンゴム、
・リグニン、
・メラミンホルムアルデヒド樹脂、
・メラミン樹脂、
・メチルアクリレート/ブタジエン/スチレン、
・天然ゴム、
・パーフルオロアルコキシアルカン、
・フェノールホルムアルデヒド樹脂、
・ポリアセタール、
・ポリアクリロニトリル、
・ポリアミド、
・ポリブチレンサクシネート、
・ポリブチレンテレフタレート、
・ポリカプロラクトン、
・ポリカーボネート、
・ポリクロロトリフルオロエチレン、
・ポリエステル、
・ポリエステルアミド、
・ポリエーテルアルコール、
・ポリエーテルブロックアミド、
・ポリエーテルイミド、
・ポリエーテルケトン、
・ポリエーテルスルホン、
・ポリエチレン、
・ポリエチレンテレフタレート、
・ポリヒドロキシアルカノエート、
・ポリヒドロキシブチレート、
・ポリイミド、
・ポリイソブチレン、
・ポリラクチド(ポリ乳酸)、
・ポリメタクリルメチルイミド、
・ポリメチルメタクリレート、
・ポリメチルペンテン、
・ポリオキシメチレンまたはポリアセタール、
・ポリフェニレンエーテル、
・ポリフェニレンスルフィド、
・ポリフタルアミド、
・ポリプロピレン、
・ポリプロピレン‐コポリマー、
・ポリピロール、
・ポリスチレン、
・ポリスルホン、
・ポリテトラフルオロエチレン、
・ポリトリメチレンテレフタレート、
・ポリウレタン、
・ポリビニルアセテート、
・ポリビニルブチラル、
・ポリビニルクロリド(硬質PVC)、
・ポリビニルクロリド(軟質PVC)、
・ポリビニリデンフルオリド、
・ポリビニルピロリドン、
・スチレン‐アクリロニトリル‐共重合体、
・スチレン‐ブタジエン‐ゴム、
・スチレン‐ブタジエン‐スチレン
・合成ゴム、
・熱可塑性ポリウレタン、
・不飽和ポリエステル、
・ビニルアセテート‐コポリマー、
・ビニルクロリド/エチレン/メタクリレート、
・ビニルクロリド/エチレン、
・ビニルクロリド‐ビニルアセテート‐コポリマー、
・可塑化ポリビニルクロリド、
の各材料のうち1つもしくは複数から選択される。
【0039】
とりわけ、シリコーンなどの無機ポリマーは、放射源として好ましい本発明のレーザーの広い波長領域に対して比較的高い透過率を有するので、本発明によれば、好ましくは結合接着剤として用いられる。
【0040】
結合接着剤は、好ましくは次のプロセスステップによって施与される。すなわち、第1のプロセスステップでは、結合接着剤の施与がスピンコーティングプロセスによって行われる。第2のプロセスステップでは、何らかの溶剤の駆逐のための熱処理が行われる。この熱処理の温度は、特には50℃超、好ましくは75℃超、さらに好ましくは100℃超、最も好ましくは100℃超、特に最も好ましくは150℃超である。好ましくは熱処理の温度は500℃未満である。
【0041】
剥離層
剥離層は、上述した電磁放射の作用のもとで剥離層の少なくとも一方側、好ましくは製品基板に面する側の接着力を低下させうるものであれば任意のあらゆる材料から形成可能である。本発明の剥離層は、特には電磁放射を使用して、完全に昇華される。
【0042】
剥離層は、特に本発明の実施形態では、ラミネートフィルムとして形成可能である。
【0043】
本発明の剥離層は、好ましくは分子層として、特に単分子層として形成されるかまたは被着される。特に本発明の剥離層の層厚さは、100μm未満、好ましくは50μm未満、さらに好ましくは10μm未満、最も好ましくは500nm未満、特に最も好ましくは1nm未満である。
【0044】
電磁放射に対する剥離層の物理特性および/または化学特性は、結合層および/または支持体基板の対応する物理特性および/または化学特性に対して、特には少なくとも部分的に、好ましくは大部分で、さらに好ましくは完全に相補的となるように、(特に材料選択によって)選定され、かつ/または(特に圧力、湿度、温度などのパラメータを調整することによって)調整される。作用する電磁放射は、特には少なくともその大部分が、好ましくは完全に、本発明の剥離層に吸収される。
【0045】
本発明の剥離層による電磁放射、特に光子の吸収率は、特には50%超、好ましくは75%超、さらに好ましくは90%超、最も好ましくは99%超、特に最も好ましくは99.9%超である。よって、透過率は、50%未満、好ましくは25%未満、さらに好ましくは10%未満、最も好ましくは1%未満、特に最も好ましくは0.1%未満である。なおこの場合もまた、吸収率の値は、材料特性と製品ウェハへの要求とに基づいて選択された層厚さに関連している。
【0046】
好ましくは、剥離層の材料と電磁放射とは、電磁放射と剥離層との相互作用によってできるだけ多くの回転自由度および/または振動自由度が励起され、かつ/または電子が最高被占分子軌道から最低被占分子軌道へ移動するように選定される。好ましくは、この相互作用は、特には専ら、紫外‐可視スペクトルで行われる。したがって、特には電子構造への直接の作用のみが行われ、好ましくは回転自由度および/または振動自由度の励起は行われない。つまり、回転自由度および/または振動自由度の励起は、本発明の剥離層の加熱、ひいてはこれに接する製品基板の加熱ももたらす。
【0047】
剥離層の材料と電磁放射とは、特に、電磁放射との相互作用による剥離層の温度上昇が、50℃未満、好ましくは25℃未満、さらに好ましくは10℃未満、最も好ましくは1℃未満、特に最も好ましくは0.1℃未満となるように選定される。この加熱は、特には、振動自由度も回転自由度も励起しない電磁波長領域を有する光子源を用いることにより、その大部分を排除することができる。したがって、加熱を防止するために、本発明によれば、とりわけ紫外‐可視波長領域の電磁ビームが使用される。
【0048】
剥離層の適切な加熱は、本発明によれば、高い熱運動量によって本発明の剥離層の溶解が促進されるので、望ましいものとなりうる。加熱は、好ましくは少なくとも0.1℃、さらに好ましくは少なくとも1℃、さらに好ましくは少なくとも5℃、さらに好ましくは少なくとも10℃である。
【0049】
剥離層として、特に、
・ポリマー、特に
・有機ポリマー、特に
・アクリル酸エステル‐スチレン‐アクリロニトリル、
・アクリロニトリル/メチルメタクリレート、
・アクリロニトリル/ブタジエン/アクリレート、
・アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン、
・アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン、
・アクリルポリマー、
・アルキド樹脂、
・ブタジエンゴム、
・ブチルゴム、
・カゼインプラスチック、ガラリス、
・セルロースアセテート、
・セルロースエーテルおよび誘導体、
・水和セルロース、
・ニトロセルロース、
・キチン、キトサン、
・クロロプレンゴム、
・シクロオレフィン‐コポリマー、
・標準化ポリビニルクロリド、
・エポキシ樹脂、
・エチレン‐エチルアクリレート‐コポリマー、
・エチレン‐ポリビニルアセテート、
・エチレン‐プロピレン‐コポリマー、
・エチレン‐プロピレン‐ジエン‐ゴム、
・エチレンビニルアセテート、
・発泡ポリスチレン、
・フッ素ゴム、
・尿素ホルムアルデヒド樹脂、
・尿素樹脂、
・イソプレンゴム、
・リグニン、
・メラミンホルムアルデヒド樹脂、
・メラミン樹脂、
・メチルアクリレート/ブタジエン/スチレン、
・天然ゴム、
・パーフルオロアルコキシアルカン、
・フェノールホルムアルデヒド樹脂、
・ポリアセタール
・ポリアクリロニトリル、
・ポリアミド、
・ポリブチレンサクシネート、
・ポリブチレンテレフタレート、
・ポリカプロラクトン、
・ポリカーボネート、
・ポリカーボネート、
・ポリクロロトリフルオロエチレン、
・ポリエステル、
・ポリエステルアミド、
・ポリエーテルアルコール、
・ポリエーテルブロックアミド、
・ポリエーテルイミド、
・ポリエーテルケトン、
・ポリエーテルスルホン、
・ポリエチレン、
・ポリエチレンテレフタレート、
・ポリヒドロキシアルカノエート、
・ポリヒドロキシブチレート、
・ポリイミド、
・ポリイソブチレン、
・ポリラクチド(ポリ乳酸)、
・ポリメタクリルメチルイミド、
・ポリメチルメタクリレート、
・ポリメチルペンテン、
・ポリオキシメチレンまたはポリアセタール、
・ポリフェニレンエーテル、
・ポリフェニレンスルフィド、
・ポリフタルアミド、
・ポリプロピレン、
・ポリプロピレン‐コポリマー、
・ポリピロール、
・ポリスチレン、
・ポリスルホン、
・ポリテトラフルオロエチレン、
・ポリトリメチレンテレフタレート、
・ポリウレタン、
・ポリビニルアセテート、
・ポリビニルブチラル、
・ポリビニルクロリド(硬質PVC)、
・ポリビニルクロリド(軟質PVC)、
・ポリビニリデンフルオリド、
・ポリビニルピロリドン、
・スチレン‐アクリロニトリル‐共重合体、
・スチレン‐ブタジエン‐ゴム、
・スチレン‐ブタジエン‐スチレン、
・合成ゴム、
・熱可塑性ポリウレタン、
・不飽和ポリエステル、
・ビニルアセテート‐コポリマー、
・ビニルクロリド/エチレン/メタクリレート、
・ビニルクロリド/エチレン、
・ビニルクロリド‐ビニルアセテート‐コポリマー、
・可塑化ポリビニルクロリド、
・無機ポリマー、
・ポリフォスファゼン、
・ポリシロキサン、シリコーン、
・ポリシラン、
・金属、特にCu,Ag,Au,Al,Fe,Ni,Co,Pt,W,Cr,Pb,Ti,Ta,Zn,Sn,
・金属合金、
・非金属、
・セラミック、
・ガラス、
・金属ガラス、
・非金属ガラス、特に
・有機非金属ガラス、
・無機非金属ガラス、特に
・非酸化物ガラス、特に
・ハロゲン化物ガラス、
・カルコゲナイドガラス、
・酸化物ガラス、特に
・リン酸塩ガラス、
・ケイ酸塩ガラス、特に
・アルモシリケートガラス、
・鉛シリケートガラス、
・アルカリシリケートガラス、特に
・アルカリ‐アルカリ土類シリケートガラス、
・ホウケイ酸ガラス、
・ホウ酸塩ガラス、特にアルカリホウ酸塩ガラス、
の各材料が扱われる。
【0050】
本発明により、好ましくは、ポリマーから成る剥離層が使用される。ポリマーは、特にその多数の結合タイプ、特にσ結合、π結合、メソメリー安定化芳香族結合(ベンゼン環)によって、剥離層として好適である。こうした結合により、きわめて複雑な紫外‐可視スペクトルが得られ、入射する光子と電子との共鳴相互作用をもたらす波長領域が得られる。
【0051】
金属および金属合金は、結晶性の固体の吸収スペクトルを有する。金属および金属合金は、特に光子励起によって加熱可能であるので、剥離層として好適である。
【0052】
セラミックおよびガラスは、最小の相互作用効果を有する。これらは、大抵の場合、アモルファスまたは少なくとも部分アモルファスである。
【0053】
剥離層は、好ましくは次のようなプロセスステップによって形成される。
【0054】
第1のプロセスステップでは、剥離層の形成は、スピンコーティングプロセスによって行われる。
【0055】
第2のプロセスステップでは、何らかの溶剤の駆逐のための熱処理が行われる。この熱処理の温度は、特には50℃超、好ましくは75℃超、さらに好ましくは100℃超、最も好ましくは100℃超、特に最も好ましくは150℃超である。好ましくは、熱処理の温度は500℃未満である。
【0056】
第3のプロセスステップでは、剥離層を硬化させるための、より高温での第2の熱処理が行われる。この熱処理の温度は、特には100℃超、好ましくは150℃超、さらに好ましくは200℃超、最も好ましくは250℃超、特に最も好ましくは300℃超である。硬化は、電磁放射、特に紫外線によって行うこともできる。プロセスガスを用いた化学的な完全硬化も可能である。特には、空気湿分による硬化を行うこともできる。
【0057】
本発明の第1の実施形態では、基板積層体(製品基板‐支持体基板‐複合体)は、製品基板と、製品基板上に特には全面にわたって設けられる本発明の剥離層と、結合接着剤(結合層)と、支持体基板と、から形成される。
【0058】
この場合、製品基板の表面は、平坦でなくてよい。製品基板の表面に、同様にコーティングされる隆起構造体を有する機能ユニットが存在する構成も可能である。
【0059】
本発明によれば、こうした基板積層体の製造は、特には、以下に説明するプロセスステップのうち1つもしくは複数のプロセスステップによって行われる。
【0060】
本発明の第1のプロセスステップでは、製品基板に、特には全面にわたって、本発明の剥離層がコーティングされる。本発明の剥離層のコーティングは、(好ましくは)スピンコーティングによって行うこともできるし、スプレーコーティングまたはブレードコーティングによって行うこともできる。本発明の剥離層がフィルムである場合、これは好ましくはラミネートされる。
【0061】
本発明の第2のプロセスステップでは、結合接着剤(結合層)の施与が行われる。したがって、結合接着剤は、本発明の剥離層上、製品基板上および/または支持体基板上に施与することができる。
【0062】
本発明の第3のプロセスステップでは、2つの基板相互の結合(特に圧力を作用させての接合)が行われる。結合前に位置合わせプロセスを行ってもよい。
【0063】
本発明の第2の実施形態では、基板積層体(製品基板‐支持体基板‐複合体)は、製品基板と、製品基板の中央に設けられる付着防止層と、周縁に設けられる本発明の剥離層と、結合接着剤(結合層)と、支持体基板と、から形成される。
【0064】
本発明によれば、こうした基板積層体の製造は、特には以下に説明するプロセスステップのうち1つもしくは複数のプロセスステップによって行われる。
【0065】
本発明の第1のプロセスステップでは、製品基板に付着防止層が共心状にコーティングされる。付着防止層のコーティングは、スピンコーティングまたはスプレーコーティングによって行うことができる。付着防止層は全面にわたっては設けられない。特には、周縁のリング部分が、10mm未満のリング幅、好ましくは5mm未満のリング幅、さらに好ましくは3mm未満のリング幅、最も好ましくは2mm未満のリング幅、特に最も好ましくは1mm未満のリング幅で、コーティングされずに残される。このようなコーティングされない周縁のリング部分を有する中央のコーティングを得るために、製品基板が、周縁のリング部分の領域においてマスキングされる。
【0066】
本発明の第2のプロセスステップでは、製品基板の周縁のリング部分に、本発明の剥離層がコーティングされる。本発明の剥離層のコーティングは、スピンコーティング、スプレーコーティングまたはブレードコーティングによって行うことができる。本発明の剥離層がフィルムである場合、好ましくは、このフィルムは、周縁領域においてラミネートされる。全面にわたるラミネートを行い、フィルムの中央部分を除去することもできる。
【0067】
本発明の第3のプロセスステップでは、結合接着剤の施与が行われる。結合接着剤は、本発明の剥離層上、したがって製品基板上および/または支持体基板上に施与することができる。
【0068】
本発明の第4のプロセスステップでは、2つの基板相互の結合(特に圧力を作用させての接合)が行われる。結合前に位置合わせプロセスを行ってもよい。
【0069】
本発明の剥離層への(特に電磁放射の作用による)作用は、支持体を通し、周縁へ向かって共心状に、または側部のみで、行われる。基板積層体の本発明の剥離層への作用は、特に、刊行物であるPCT欧州特許出願公開第2015/050607号明細書(PCT/EP2015/050607)に言及されているシステムによっても行うことができる。
【0070】
本発明の第3の実施形態では、基板積層体は、製品基板と、結合接着剤と、支持体基板上の中央に設けられる付着防止層と、周縁に設けられる本発明の剥離層と、から形成される。この実施形態は、特許文献である米国特許出願公開第20090218560号明細書(US20090218560A1)の拡張形態である。
【0071】
剥離過程
本発明の剥離過程前、製品基板は、好ましくは、フィルムフレームに展開されたフィルムに固定されている。フィルムフレームおよびフィルムは、支持体基板を取り外した後の相対的に薄い製品基板を安定化する。支持体基板は、好ましくは、製品基板をフィルムフレームのフィルム上に被着したのちにはじめて取り外される。
【0072】
剥離過程は、好ましくはレーザーによって行われる。レーザーは、剥離層に作用し、これにより、本発明の第1の実施形態の製品基板と結合層との間または本発明の第3の実施形態の支持体基板と結合接着剤との間の付着強度/付着力を低減させる。付着強度/付着力は、特には50%超、好ましくは75%超、さらに好ましくは90%超、低減される。
【0073】
本発明の第2の実施形態および第3の実施形態の基板積層体の剥離は、特に、刊行物であるPCT欧州特許出願公開第2015/050607号明細書(PCT/EP2015/050607)に記載されたシステムによって行うことができる。
【0074】
剥離過程の後、製品基板の表面は、好ましくは洗浄される。本発明の別の重要な態様は、本発明の第1の実施形態の剥離層が完全に除去され、相対的にクリーンな表面を有する製品基板が形成されて、この表面の洗浄を迅速にひいてはコスト効率よく行えることにある。
【0075】
方法の特徴を開示している場合、これを、装置の特徴についても開示したものとし、逆に装置の特徴を開示している場合、方法の特徴についても開示したものとする。
【0076】
本発明の別の利点、特徴および詳細は、図面に即した好ましい実施例の以下の説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1a】本発明の製品基板‐支持体基板‐複合体の第1の実施形態を示す、縮尺通りでない概略図である。
【
図1b】
図1aの製品基板‐支持体基板‐複合体を剥離させる本発明の方法の一実施形態を示す、縮尺通りでない概略図である。
【
図2a】本発明の製品基板‐支持体基板‐複合体の第2の実施形態を示す、縮尺通りでない概略図である。
【
図2b】
図2aの製品基板‐支持体基板‐複合体を剥離させる本発明の方法の一実施形態を示す、縮尺通りでない概略図である。
【
図3】本発明の製品基板‐支持体基板‐複合体の第3の実施形態を示す、縮尺通りでない概略図である。
【
図4】第1の吸収率グラフ(吸光度=吸収率)を示す、縮尺通りでない概略図である。
【
図5】第2の吸収率グラフ(吸光度=吸収率)を示す、縮尺通りでない概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
図中、同じ要素または同様の機能を有する要素には同じ参照番号を付してある。
【0079】
図示されている全ての製品基板2には、機能ユニット6を設けることができる。ただし、特には相応の機能ユニット6を有さない製品基板も可能である。機能ユニット6とは、例えば、マイクロチップ、メモリモジュール、MEMSデバイスなどであってよい。また、機能ユニット6に、隆起構造体7、例えばはんだバンプを設けてもよい。こうした隆起構造体7は、それぞれ異なって成形可能であるが、剥離層3のコーティングが相応に困難かつ/または不完全となりうる。よって、製品基板2のコーティングについて言及する場合、同時に機能ユニット6および/または隆起構造体7のコーティングについても言及しているものとする。
【0080】
図1aには、少なくとも1つの製品基板2と剥離層3と結合層4としての結合接着剤と支持体基板5とから形成される、本発明の基板積層体1の本発明の第1の実施形態が、概略的に縮尺通りでなく示されている。用意された製品基板2の、(可能な)機能ユニット6および隆起構造体7を有するトポグラフィの上方に、本発明の剥離層3が特には全面にわたって設けられる。剥離層表面3oは、結合接着剤に接し、この結合接着剤はさらに支持体基板5に結合されている。
【0081】
図1bには、本発明の剥離過程が、概略的に縮尺通りでなく示されている。レーザー9は、支持体基板5を経て結合接着剤に入射するレーザービーム10を形成する。本発明によれば、結合接着剤の吸収率は、レーザービーム10の波長を本発明にしたがって平衡化することにより、最小化されている。したがって、レーザービーム10は、特には最小のエネルギ損失で、さらに好ましくは無視できるほど小さいエネルギ損失で、剥離層3に入射する。
【0082】
本発明によれば、レーザービーム10の光子と剥離層3との相互作用が、結合接着剤との相互作用に比べてきわめて大きく、好ましくは最大となる。剥離層3は、少なくとも部分的に、好ましくは大部分が、さらに好ましくは完全に、溶解または破壊される。少なくとも、製品基板2と結合接着剤との間の付着強度が低減される。
【0083】
レーザー9は、特には剥離層表面3o全体を、特にx方向および/またはy方向の運動によって走査する。また、レーザービーム10を最適に平行化できない場合、良好なフォーカシングを保証するため、レーザービーム10をz方向で位置調整することもできる。
【0084】
図2aには、少なくとも1つの製品基板2と、製品基板2の周縁のみに設けられた剥離層3と、製品基板2の中央に設けられた付着防止層8と、結合接着剤として形成された結合層4と、支持体基板5と、から形成される、本発明の基板積層体1’の本発明の第2の実施形態が、概略的に縮尺通りでなく示されている。付着防止層8と結合接着剤との間の付着作用は本発明によって最小化されており、これに対して、本発明の剥離層3と結合接着剤との間には、比較的大きな(少なくとも2倍の大きさの)付着強度が生じている。
【0085】
図2bには、
図2aの本発明の第2の実施形態の剥離層3の溶解が示されている。レーザービーム10は、好ましくは基板積層体1’の周縁にのみ集中される。好ましくは、当該システムは、レーザー9が定置され、基板積層体1’が回転軸線Rを中心として回転するように構成されている。
【0086】
図3には、少なくとも1つの製品基板2と、結合接着剤として形成された結合層4と、支持体基板5の周縁にのみ設けられた剥離層3と、支持体基板5の中央に設けられた付着防止層8と、支持体基板5と、から形成される、本発明の基板積層体1’’の本発明の第3の実施形態が、概略的に縮尺通りでなく示されている。
【0087】
剥離層3は支持体基板5の周縁に設けられており、ここで、剥離層3は、使用されるレーザービーム10の波長に感応する。剥離過程は、
図2bの本発明の実施形態の構成によって行われるか、または刊行物であるPCT欧州特許出願公開第2015/050607号明細書(PCT/EP2015/050607)のシステムによって行われる。
【0088】
図4には、結合接着剤の吸収スペクトルの一部分における吸収率グラフ11が示されている。ここでの吸収スペクトルは、特に、紫外‐可視吸収スペクトルである。吸収率グラフ11は、好ましくは少なくとも1つ、特には3つ以上、さらに好ましくは4つ以上、最も好ましくは5つ以上、特に最も好ましくは6つ以上の局所的な吸収率極小値12を有する。
【0089】
吸収率グラフ11では、見やすさのために、中央部の唯一の局所的な吸収率極小値12のみが示されている。局所的な吸収率極小値12は最適吸収率領域13の一部であり、その波長領域に対して、本発明で使用されるレーザー9のレーザービーム10の波長が適合化される。
【0090】
本発明によれば、使用される結合接着剤は、使用されるレーザービーム10の波長が最適吸収率領域13内に入るように、好ましくは吸収率極小値12に正確に一致するように、選択される。こうして、レーザービーム10に対する、結合接着剤の本発明の最大透過率が保証される。
【0091】
図5には、剥離層3の吸収スペクトルの一部における吸収率グラフ11’が示されている。吸収スペクトルは特には紫外‐可視吸収スペクトルである。吸収率グラフ11’は、好ましくは少なくとも1つ、特には3つ以上、さらに好ましくは4つ以上、最も好ましくは5つ以上、特に最も好ましくは6つ以上の局所的な吸収率極大値14を有する。吸収率グラフ11’では、見やすさのために、2つの局所的な吸収率極大値14のみが示されている。
【0092】
局所的な吸収率極大値14は最適吸収率領域13’の一部であり、その波長領域に対して、本発明で使用されるレーザー9のレーザービーム10の波長が適合化される。本発明によれば、使用される剥離層3は、使用されるレーザービーム10の波長が最適吸収率領域13’内に入るように、好ましくは吸収率極大値14に正確に一致するように、選択される。こうして、レーザービーム10に対する、剥離層3による本発明の最大吸収率が保証される。
【0093】
本発明によれば、とりわけ、レーザービーム10が剥離層3に全体的にかなりの規模で到達することが決定的に重要な意義を有する。レーザービーム10の波長と結合接着剤4の波長と剥離層3の波長とを相互に最適に調整できない場合、好ましくは、レーザービーム10の光子を少なくともできるだけ妨害なく剥離層3に到達させることができるよう、少なくともレーザービーム10の波長が結合接着剤の1つもしくは複数の吸収率極小値に適合化される。
【符号の説明】
【0094】
1,1’,1’’ 基板積層体(製品基板‐支持体基板‐複合体)
2 製品基板
3 剥離層
3o 剥離層表面
4 結合層
5 支持体基板
5o 支持体基板表面
6 機能ユニット
7 隆起構造体
8 付着防止層
8o 付着防止層表面
9 レーザー
10 レーザービーム
11 吸収率グラフ
12 吸収率極小値
13 最適吸収率領域
14 吸収率極大値
15 溶解した剥離層
R 回転軸線
【手続補正書】
【提出日】2024-04-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合層(4)によって製品基板(2)を支持体基板(5)に結合する方法であって、
前記結合層(4)と前記製品基板(2)との間に剥離層(3)を設け、
a)前記剥離層(3)を、レーザーの電磁放射との相互作用によって剥離可能とし、
b)前記結合層(4)および前記支持体基板(5)それぞれの少なくとも大部分が、前記電磁放射に対して透過性を有し、
前記レーザーは、パルスモードで動作可能である、
方法。
【請求項2】
製品基板(2)を、結合層(4)によって前記製品基板(2)に結合された支持体基板(5)から剥離させる方法であって、
前記結合層(4)と前記製品基板(2)との間に剥離層(3)を設け、
a)前記剥離層(3)を、レーザーの電磁放射との相互作用によって剥離し、
b)前記結合層(4)および前記支持体基板(5)それぞれの少なくとも大部分が、前記電磁放射に対して透過性を有し、
前記レーザーは、パルスモードで動作可能である、
方法。
【請求項3】
前記電磁放射に対する前記剥離層の物理特性および/または化学特性を、前記結合層(4)および/または前記支持体基板(5)の対応する物理特性および/または化学特性に対して相補的となるように選定する、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記結合層(4)への前記電磁放射の光子吸収率は、50%未満である、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記剥離層(3)での前記電磁放射の光子吸収率は、50%超である、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記結合層(4)を、剥離過程中、50℃未満で加熱する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記剥離層(3)を、前記電磁放射によって昇華させる、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記剥離層(3)を、10μm未満の層厚さで形成または被着する、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
結合層(4)によって支持体基板(5)に結合された製品基板(2)を含む製品基板‐支持体基板‐複合体であって、
前記結合層(4)と前記製品基板(2)との間に剥離層(3)が設けられており、
a)前記剥離層(3)は、レーザーの電磁放射との相互作用によって剥離可能となり、
b)前記結合層(4)および前記支持体基板(5)それぞれの少なくとも大部分が、前記結合層(4)を通して送信される電磁放射に対して透過性を有し、
前記レーザーは、パルスモードで動作可能である、
製品基板‐支持体基板‐複合体。
【外国語明細書】