(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008485
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】油中水型化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20240112BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240112BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240112BHJP
A61K 8/58 20060101ALI20240112BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240112BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20240112BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/37
A61K8/19
A61K8/58
A61Q19/00
A61K8/894
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110401
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】松井 礼奈
(72)【発明者】
【氏名】隈部 大輝
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AB172
4C083AB221
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB352
4C083AB431
4C083AB432
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC512
4C083AC531
4C083AC532
4C083AC852
4C083AC911
4C083AC912
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD071
4C083AD091
4C083AD111
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD211
4C083AD282
4C083AD492
4C083AD631
4C083AD632
4C083AD662
4C083BB01
4C083BB11
4C083BB46
4C083CC02
4C083CC19
4C083DD32
4C083EE01
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】 使用性および分散安定性に優れた油中水型化粧料の提供。
【解決手段】 (A)極性油、(B)(B1)HLBが5以下のシリコーン界面活性剤または(B2)有機変性粘土鉱物、(C)ニコチン酸またはその誘導体、(D)油溶性被膜形成剤、および(E)水を含んでなる化粧料。この化粧料に含まれる(A)成分の含有率は0.8質量%以上であり、水相の比率は60質量%以上(いずれも化粧料の総質量を基準とする)である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)極性油、
(B)(B1)HLBが5以下のシリコーン界面活性剤、または(B2)有機変性粘土鉱物、
(C)ニコチン酸またはその誘導体、
(D)油溶性被膜形成剤、および
(E)水
を含んでなる油中水型化粧料であって、
前記油中水型化粧料の総質量を基準として、(A)成分の含有量が0.8質量%以上であり、水相の比率が60質量%以上である、油中水型化粧料。
【請求項2】
(B1)成分がポリエーテル変性シリコーンである、請求項1に記載の油中水型化粧料。
【請求項3】
(B1)成分が、下記一般式(b1):
【化1】
[式中、Aは、メチル基、フェニル基、および一般式:
-C
3H
6O(C
2H
4O)
p(C
3H
6O)
qR’
(式中、
R’は水素原子、アシル基、および炭素数1~4のアルキル基からなる群から選択される基であり、
pは5~50の整数であり、
qは5~50の整数であり、
繰り返し単位(C
2H
4O)と(C
3H
6O)は、ランダムに配列していても、ブロックを形成していてもよい。)
で示されるポリオキシアルキレン基からなる群から選択される基であり、
Rはメチル基またはフェニル基であり、
mは50~1000の整数であり、
nは1~40の整数であり、
繰り返し単位(SiR
2O)と(SiRAO)は、ランダムに配列していても、ブロックを形成していてもよく、
ポリエーテル変性シリコーン中のポリオキシアルキレン基の含有率が40重量%以上である。]
で表され、質量平均分子量が30000以上であるポリエーテル変性シリコーンである、請求項1または2に記載の油中水型化粧料。
【請求項4】
(B2)成分が、三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムである、請求項1または2に記載の油中水型化粧料。
【請求項5】
(B2)成分が下記一般式(a2):
(X,Y)2-3(Si,Al)4O10(OH)2Z1/3・xH2O (b2)
(式中
X=Al、Fe(III)、Mn(III)、またはCr(III)、
Y=Mg、Fe(II)、Ni,Zn、またはLi、
Z=K、Na、またはCa、
xは整数
である)
で表される粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で変性したものである、請求項1または2に記載の油中水型化粧料。
【請求項6】
(C)成分が、
ニコチン酸、
ニコチン酸アミド、
ニコチン酸ベンジル、
ニコチン酸トコフェロール、および
ニコチン酸β-ブトキシエステル
からなる群から選択されるものである、請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項7】
(D)成分が、
トリメチルシロキシケイ酸、
ジメチルアミノメタクリレート4級化塩、
ビニルピロリドン・メタクリル酸-N,N-ジメチル-エチルアンチニオエチル塩共重合体、
シリコーン/ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、
(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリルアルキル)コポリマー、デキストリン、
(ビニルピロリドン/VA)コポリマー、
アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム、
ポリビニルアルコール、
ポリアクリル酸エチル、
(アクリル酸アルキル/オクチルアクリルアミド)コポリマー、
(アクリレーツ/メタクリル酸プロピルトリメチコン)コポリマー、
ポリ酢酸ビニル、
(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー、
3-[トリス(トリメチルシロキサン)シリル]プロピルカルバミド酸プルラン、
ポリエーテルグラフトアクリルシリコーン、および
フルオロ変性シリコーンレジン
からなる群から選ばれるものである、請求項1または2に記載の油中水型化粧料。
【請求項8】
(A)成分が、紫外線吸収剤である、請求項1または2に記載の油中水型化粧料。
【請求項9】
前記油中水型化粧料の総質量を基準として、
(A)成分の含有率が2~20質量%、
(B)成分の含有率が0.5~7質量%、
(C)成分の含有率が2~10質量%、および
(D)成分の含有率が1~20質量%、
である、請求項1または2に記載の油中水型化粧料。
【請求項10】
サンケア用化粧料である、請求項1または2に記載の油中水型化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極性油を高配合した油中水型乳化化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肌に直接塗布される化粧料には、塗布時に肌をみずみずしさ、しっとり感、きめ細かさなどの快適な使用感を与えることが望まれる。このような使用感を実現するために様々な方法が検討されているが、化粧品においては乳化技術によって使用感が変化することが知られており、最適な乳化技術が検討されている。そのような検討の中で、油中水型化粧料において、水相の比率が高いものは、みずみずしさを与えることができるという点で優れていることが知られている。
【0003】
このような水相の比率が高い水中油型化粧料を実現するためには、シリコーン界面活性剤や有機変性粘土鉱物などの分散剤を用いることが有効であることも知られている。そのような分散剤は各種の油分と組み合わせることが検討されており、さらに油分も複数の成分を組み合わせることが検討されている。ここで、本発明者らの検討によれば、油分を構成する成分として、極性油の含有量を多くすると、化粧料の分散安定性が不十分となることがあることがわかった。このため、水相の比率の高い水中油型化粧料に対して、極性油を大量に添加することが難しかった。極性油は、塗布時に肌のつやを改良する美的効果や、紫外線防止効果を与える効果を与えるものがあるため、そのような効果を得るためには、極性油を高い含有率で含みながらも、高い分散安定性を有する水相比の高い油中水型化粧料が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許公開第2020/247441号
【発明の概要】
【0005】
本発明は、水相比の高い油中水型化粧料の優れた使用感、例えばみずみずしさを実現しながら、高い分散安定性も実現できる油中水型化粧料を提供しようとするものである。
【0006】
本発明によれば、以下の化粧料が提供される。
[1] (A)極性油、
(B)(B1)HLBが5以下のシリコーン界面活性剤または(B2)有機変性粘土鉱物、
(C)ニコチン酸またはその誘導体、
(D)油溶性被膜形成剤、および
(E)水
を含んでなる油中水型化粧料であって、
前記油中水型化粧料の総質量を基準として、(A)成分の含有量が0.8質量%以上であり、水相の比率が60質量%以上である、油中水型化粧料。。
[2] (B1)成分がポリエーテル変性シリコーンである、[1]に記載の油中水型化粧料。
[3] (B1)成分が、下記一般式(b1):
【化1】
[式中、Aは、メチル基、フェニル基、および一般式:
-C
3H
6O(C
2H
4O)
p(C
3H
6O)
qR’
(式中、
R’は水素原子、アシル基、および炭素数1~4のアルキル基からなる群から選択される基であり、
pは5~50の整数であり、
qは5~50の整数であり、
繰り返し単位(C
2H
4O)と(C
3H
6O)は、ランダムに配列していても、ブロックを形成していてもよい。)
で示されるポリオキシアルキレン基からなる群から選択される基であり、
Rはメチル基またはフェニル基であり、
mは50~1000の整数であり、
nは1~40の整数であり、
繰り返し単位(SiR
2O)と(SiRAO)は、ランダムに配列していても、ブロックを形成していてもよく、
ポリエーテル変性シリコーン中のポリオキシアルキレン基の含有率が40重量%以上である。]
で表され、質量平均分子量が30000以上であるポリエーテル変性シリコーンである、[1]または[2]に記載の油中水型化粧料。
[4] (B2)成分が、三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムである、[1]~[3]のいずれかに記載の油中水型化粧料。
[5] (B2)成分が下記一般式(a2):
(X,Y)
2-3(Si,Al)
4O
10(OH)
2Z
1/3・xH
2O (b2)
(式中
X=Al、Fe(III)、Mn(III)、またはCr(III)、
Y=Mg、Fe(II)、Ni,Zn、またはLi、
Z=K、Na、またはCa、
xは整数
である)
で表される粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で変性したものである、[1]~[4]のいずれかに記載の油中水型化粧料。
[6] (C)成分が、
ニコチン酸、
ニコチン酸アミド、
ニコチン酸ベンジル、
ニコチン酸トコフェロール、および
ニコチン酸β-ブトキシエステル
からなる群から選択されるものである、[1]~[5]のいずれかに記載の化粧料。
[7] (D)成分が、
トリメチルシロキシケイ酸、
ジメチルアミノメタクリレート4級化塩、
ビニルピロリドン・メタクリル酸-N,N-ジメチル-エチルアンチニオエチル塩共重合体、
シリコーン/ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、
(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリルアルキル)コポリマー、デキストリン、
(ビニルピロリドン/VA)コポリマー、
アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム、
ポリビニルアルコール、
ポリアクリル酸エチル、
(アクリル酸アルキル/オクチルアクリルアミド)コポリマー、
(アクリレーツ/メタクリル酸プロピルトリメチコン)コポリマー、
ポリ酢酸ビニル、
(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー、
3-[トリス(トリメチルシロキサン)シリル]プロピルカルバミド酸プルラン、
ポリエーテルグラフトアクリルシリコーン、および
フルオロ変性シリコーンレジン
からなる群から選ばれるものである、[1]~[6]のいずれかに記載の油中水型化粧料。
[8] (A)成分が、紫外線吸収剤である、[1]~[7]のいずれかに記載の油中水型化粧料。
[9] 前記油中水型化粧料の総質量を基準として、
(A)成分の含有率が2~20質量%、
(B)成分の含有率が0.5~7質量%、
(C)成分の含有率が2~10質量%、および
(D)成分の含有率が1~20質量%、
である、[1]~[8]のいずれかに記載の油中水型化粧料。
[10] サンケア用化粧料である、[1]~[9]のいずれかに記載の油中水型化粧料。
【0007】
本発明によれは、高い水相比を有することによる優れた使用感と、極性油によってもたらされる各種の機能と、優れた分散安定性とを同時に満足できる、油中水型化粧料を提供することができる。
【発明の具体的説明】
【0008】
本発明による油中水型化粧料(以下、簡単に「化粧料」ということがある)は、
(A)極性油、
(B)特定の分散剤、
(C)ニコチン酸またはその誘導体、
(D)油溶性被膜形成剤、および
(E)水
を含んでなる。
【0009】
本発明による化粧料に含まれる各成分について説明をすると以下のとおりである。
【0010】
(A)極性油
本発明による化粧料は極性油(以下、「(A)成分」ということがある)を含むものである。本発明において極性油とは、極性基、すなわち親水性基を有するものをいう。この極性油は、化粧料に求められる機能に応じて、通常、化粧品分野、医薬品分野、食品分野などで用いられるものから任意に選択して用いることができる。極性油は、これらのうち、IOB値が0.05~0.80であるものが好ましい。IOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、
IOB値=無機性値/有機性値
として表される。ここで、「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、同水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子または官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子および官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる。
【0011】
本発明においては、極性油は化粧品に機能を付与することができるものを用いることができる。具体的には、化粧品を私用したときに肌につや、色、質感を与えたり、紫外線吸収効果や肌に対する保護膜形成効果などを与えることができる極性油を用いることができる。
【0012】
極性油としては、エステル油、高級脂肪酸、高級アルコール、およびワックスなどが挙げられる。これらのうち、エステル油が好ましく用いられる。また、極性油のうち、紫外線吸収効果の高いものは、一般的に紫外線吸収剤と呼ばれ、本発明による化粧品に紫外線から肌を保護する機能を付与するために用いることができる。
【0013】
エステル油の具体例としては、ジネオペンタン酸トリプロピレングリコール、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、エチルヘキサン酸セチル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリエチルヘキサノイン(トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン)、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0014】
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、一般に化粧料に用いられる紫外線吸収剤を広く挙げることができる。例えば、
(a1)パラ-アミノ安息香酸(PABA)エチル、エチル-ジヒドロキシプロピルPABA、エチルヘキシル-ジメチルPABA、グリセリルPABA、PEG-25-PABA、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルなどの安息香酸誘導体、
(a2)ホモサレート、エチルヘキシルサリチレート(サリチル酸オクチル)、ジプロピレングリコールサリチレート、TEAサリチラートなどのサリチル酸誘導体、
(a2)オクチルメトキシシンナメート、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、メトキシケイヒ酸イソプロピル、メトキシケイヒ酸イソアミル、シンノキセート、DEAメトキシシンナメート、メチルケイヒ酸ジイソプロピル、グリセリル-エチルヘキサノエート-ジメトキシシンナメート、ジ-(2-エチルヘキシル)-4’-メトキシベンザルマロネートなどのケイヒ酸誘導体、
(a2)4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタンなどジベンゾイルメタン誘導体、
(a2)オクトクリレンなどのβ,β-ジフェニルアクリレート誘導体、
(a2)ベンゾフェノン-1、ベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-3またはオキシベンゾン、ベンゾフェノン-4、ベンゾフェノン-5、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-8、ベンゾフェノン-9、ベンゾフェノン-12などのベンゾフェノン誘導体、
(a2)3-ベンジリデンショウノウ、4-メチルベンジリデンショウノウ、ベンジリデンショウノウスルホン酸、メト硫酸ショウノウベンザルコニウム、テレフタリリデンジショウノウスルホン酸、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンショウノウなどのベンジリデンショウノウ誘導体、
(a2)フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウムなどのフェニルベンゾイミダゾール誘導体、
(a2)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、エチルヘキシルトリアゾン(例えば「ユビナールT150」;BASF社)、ジエチヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6-トリス(ジイソブチル-4’-アミノベンザルマロナート)-s-トリアジン、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジンなどのトリアジン誘導体、
(a2)ドロメトリゾールトリシロキサン、メチレンビス(ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール)などのフェニルベンゾトリアゾール誘導体、
(a2)アントラニル酸メンチルなどのアントラニル誘導体、
(a2)エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオナートなどのイミダゾリン誘導体、
(a2)ベンザルマロナート官能基を有するポリオルガノシロキサンなどのベンザルマロナート誘導体、
(a2)1,1-ジカルボキシ(2,2’-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエンなどの4,4-ジアリールブタジエン誘導体
等が例示される。
【0015】
本発明において、極性油はこれらのものから任意に選択して用いることができる。また極性油を2種類以上組み合わせて用いてもよい。例示した極性油には常温で粉末状態などの固体形状であるものもあるが、他の極性油に溶解することで用いることもできる。そして、本発明による化粧料は極性油として紫外線吸収剤を含むことが好ましい。極性油として紫外線吸収剤を含有する、本発明による化粧料はサンケア用化粧料として好ましい。
【0016】
本発明による化粧料において、(A)成分の含有率は、極性油による美的効果や紫外線防止効果を十分に発揮させるために、比較的高い含有量で配合される。具体的には、A)成分の含有率は、化粧料の総質量を基準として、0.8質量%以上であり、2~20質量%であることが好ましく、3~15質量%であることがより好ましい。極性油の含有率が低い場合には、極性油によって実現される機能が十分に発揮されないことがあるので注意が必要である。
【0017】
(B)特定の分散剤
本発明による化粧料は、特定の分散剤(以下、「(B)成分」ということがある)を含むものである。この(B)成分は、(B1)HLBが5以下のシリコーン界面活性剤または(B2)有機変性粘土鉱物のいずれかである。これらの特定の分散剤を用いることで優れた使用性が実現できる。
【0018】
(B1)HLBが5以下のシリコーン界面活性剤
本発明による化粧料における(B1)成分はシリコーン界面活性剤であり、そのHLB値が5以下、好ましくは2~5の範囲内にあるものである。本発明における(B1)成分とは、分子内にシリコーン構造(疎水性部分)と親水性部分とを有する非イオン性の界面活性剤である。
【0019】
本発明による化粧料に用いることができるシリコーン界面活性剤は特に限定されないが、例えばポリエーテル基やポリグリセリン基で変性されたシリコーン系界面活性剤があり、このうち、ポリエーテル基で変性されたシリコーン、すなわちポリエーテル変性シリコーンであることが好ましい。
【0020】
ポリエーテル系シリコーンは各種のものが知られているが、本発明において特に好ましく用いられるものは、下記一般式(b1)で表されるものである。
【化2】
[式中、Aは、メチル基、フェニル基、および一般式:
-C
3H
6O(C
2H
4O)
p(C
3H
6O)
qR’
(式中、
R’は水素原子、アシル基、および炭素数1~4のアルキル基からなる群から選択される基であり、
pは5~50の整数であり、
qは5~50の整数であり、
繰り返し単位(C
2H
4O)と(C
3H
6O)は、ランダムに配列していても、ブロックを形成していてもよい。)
で示されるポリオキシアルキレン基からなる群から選択される基であり、
Rはメチル基またはフェニル基であり、
mは50~1000の整数であり、
nは1~40の整数であり、
繰り返し単位(SiR
2O)と(SiRAO)は、ランダムに配列していても、ブロックを形成していてもよく、
ポリエーテル変性シリコーン中のポリオキシアルキレン基の含有率が40重量%以上である。]
【0021】
このようなポリエーテル変性シリコーンの分子量は必ずしも限定されないが、質量平均分子量が30000以上であるポリエーテル変性シリコーンであることが好ましい。
【0022】
そのほか、ポリエーテル変性シリコーンとして、
ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、
ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、
シリコーン鎖分岐型メチルポリシロキサン共重合体、
アルキル鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、
アルキル鎖・シリコーン鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、
架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン、
アルキル基含有架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン
などを用いることもできる。
【0023】
また、ポリグリセリン基で変性されたポリグリセリン変性シリコーンとして、
分岐型ポリグリセリン変性シリコーン、
架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、
アルキル基含有架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、
アルキル基分岐型ポリグリセリン変性シリコーン
等を用いることもできる。
【0024】
より具体的な例として、
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、
ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、
セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、
PEG-9メチルエーテルジメチコン、
PEG-10ジメチコン、
PEG-3ジメチコン
等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
(B2)有機変性粘土鉱物
本発明による化粧料における(B2)成分は、有機変性粘土鉱物である。(B2)成分は、例えば、三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムの一種であり、以下の式(b2)で表される粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で変性したものが挙げられる。
(X,Y)2-3(Si,Al)4O10(OH)2Z1/3・nH2O (b2)
式中、
Xは、Al、Fe(III)、Mn(III)、またはCr(III)であり、
Yは、Mg、Fe(II)、Ni,Zn、またはLiであり、かつ
Zは、K、Na、またはCaである。
【0026】
ここで用いられる第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤は、以下で表されるものである。
【化3】
式中、
R
iは、炭素数10~22のアルキル基またはベンジル基であり、
R
iiは、メチル基または炭素数10~22のアルキル基であり、
R
iiiおよびR
ivは、それぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基であり、
Xは、ハロゲン原子またはメチルサルフェート残基である。
【0027】
このような第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤としては、例えばドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、アラキルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、セチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルエチルアンモニウムクロリド、アラキルジメチルエチルアンモニウムクロリ、ベヘニルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、セチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジエチルメチルアンモニウムクロリド、アラキルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルミリスチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルベヘニルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルステアリルアンモニウムクロリド、ジベヘニルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、および相当するブロミド等、更にはジパルミチルプロピルエチルアンモニウムメチルサルフェート等が挙げられる。本発明の実施にあたっては、これらのうち一種または二種以上が任意に選択される。
【0028】
(B2)成分は、好ましくは、
ジステアルジモニウムヘクトライト、
クオタニウム-18ヘクトライト、
ステアラルコニウムヘクトライト、および
塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム
からなる群から選択される。市販品としては、ベントン27(ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト、エレメンティスジャパン社製)およびベントン38(ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト、エレメンティスジャパン社製)が挙げられる。(B)成分は、分散媒中に分散されたもののほか、粉末状態のものを用いることもできる。
【0029】
本発明による化粧料において、(B)成分の含有率は、目的に応じて任意に選択することができるが、化粧料の総質量を基準として、0.5~7質量%であることが好ましく、0.7~5質量%であることがより好ましい。
【0030】
(C)ニコチン酸またはその誘導体
本発明による化粧料は、ニコチン酸またはその誘導体(以下、簡単に「(C)成分」ということがある)を含む。本発明においては、この(C)成分と、後述する油溶性被膜形成剤とを組み合わせて用いることで、分散安定性が改良される。ニコチン酸誘導体は、化粧料において美白効果を与えるものとしてよく知られているものであるが、そのような効果の他に分散安定性にも寄与することは意外なことであった。
【0031】
(C)成分は、化粧品用途や医薬品用途に用いられているものから任意に選択して用いることができるが、例えば
ニコチン酸、
ニコチン酸アミド、
ニコチン酸ベンジル、
ニコチン酸トコフェロール、および
ニコチン酸β-ブトキシエステル
からなる群から選択されるものであることが好ましい。
【0032】
本発明による化粧料において、(C)成分の含有率は、目的に応じて任意に選択することができるが、化粧料の総質量を基準として、2質量%であることが好ましく、3質量%であることがより好ましい。一方、上限は特に限定されないが、含有率を過度に高くしても、添加量に比例した効果を得ることが難しい。このため、ニコチン酸またはその誘導体の含有率は、化粧料の総質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることが特に好ましい。
【0033】
(D)油溶性被膜形成剤
本発明による化粧料は、油溶性被膜形成剤(以下、簡単に「(D)成分」ということがある)を含む。油溶性被膜形成剤は、化粧料中で油相に含まれ、化粧料が皮膚に塗布された後には皮膚を被覆する被膜を形成して、化粧料を皮膚上に維持する効果を発揮し、いわゆる化粧持ちを改良する効果がある。
【0034】
(D)成分としては、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されない。具体例としては、
トリメチルシロキシケイ酸、
ジメチルアミノメタクリレート4級化塩、
ビニルピロリドン・メタクリル酸-N,N-ジメチル-エチルアンチニオエチル塩共重合体、
シリコーン/ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、
(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリルアルキル)コポリマー、デキストリン、
(ビニルピロリドン/VA)コポリマー、
アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム、
ポリビニルアルコール、
ポリアクリル酸エチル、
(アクリル酸アルキル/オクチルアクリルアミド)コポリマー、
(アクリレーツ/メタクリル酸プロピルトリメチコン)コポリマー、
ポリ酢酸ビニル、
(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー、
3-[トリス(トリメチルシロキサン)シリル]プロピルカルバミド酸プルラン、
ポリエーテルグラフトアクリルシリコーン、および
フルオロ変性シリコーンレジン
等が挙げられる。
【0035】
中でも、化粧もちの観点からシリコーン被膜形成剤が好ましく、シリコーン被膜形成剤としては、
(トリメチルシロキシケイ酸/ジメチコノール)クロスポリマー、
シリコーンレジンガム、
トリメチルシロキシケイ酸、
シリコーン化プルラン、
(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー、
シルセスキオンサン系
等を好ましく挙げることができる。(D)成分は1種のみで用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明による化粧料において、(D)成分の含有率は、目的に応じて任意に選択することができるが、化粧料の総質量を基準として、1~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましく、6~12質量%であることがさらに望ましい。(D)成分の含有率を高くすることで化化粧もちを向上させることができ、一方で(D)成分の含有率を一定以下にすることで、化粧料の伸びを改良することができる。
【0037】
(E)水
本発明による組成物は、上記の成分に加えて、さらに水を含む。水としては、化粧品、医薬部外品等に使用される水を使用することができ、例えば、精製水、イオン交換水、水道水等を使用することができる。
【0038】
本発明による化粧料は、水相の比率が高く、化粧料の総質量を基準とした水相の比率が60質量%以上であり、65質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。本発明において、水はこのような水相を構成するものであるが、水相は水と、水以外の水溶性成分例えば低級アルコール等から構成される。このため、水の含有率は、化粧料の総質量を基準として、一般的には30質量%以上、好ましくは35~70質量%、より好ましくは40~65質量%である。
【0039】
(F)その他の成分
また本発明による化粧料は、上記以外のその他成分を含んでいてもよい。例えば、非極性油、(B1)成分以外の界面活性剤、香料、水溶性紫外線吸収剤、粉末、保湿剤、親油性増粘剤、低級アルコール(炭素数6未満)、酸化防止剤、消炎剤、美白剤、各種抽出物、賦活剤、血行促進剤、抗脂漏剤、 抗炎症剤、水溶性皮膜形成剤、およびアミノ酸またはペプチド等を含んでいてもよい。
【0040】
なお、分散安定性を改良するために、一般的には増粘剤等を用いることが知られている。しかしながら、本発明者らの検討によればオイルゲル化剤を配合することで使用感が損なわれる傾向にあることがわかった。このため、本発明による化粧料はオイルゲル化剤を含まないことが好ましい。
【0041】
本発明による化粧料は、任意の方法で製造することができる。各成分を配合して、攪拌混合する方法、水溶性成分を混合して水相成分を形成させ、それを油相成分に配合してから分散させる方法など、種々の方法を採用することができる。
【0042】
本発明による化粧料の形態は特に限定されないが、分散安定性に優れていることから、各種の液状化粧料として、肌に直接適用できる形態とすることが好ましい。その場合の粘度は、1,000~70,000mPa・sであることが好ましく、2,500~55,000mPa・sであることがより好ましく、3,000~45,000mPa・sであることがより好ましい。粘度がこのような範囲あることで、塗布時に塗り広げやすく、優れた使用感を得ることができる。
【実施例0043】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、含有率は化粧料の総質量に対する質量%を表す。
【0044】
下記の表1に示された組成の油中水型乳化化粧料を製造し、以下の項目について評価した。それらの結果も表1に併せて示す。
【0045】
[使用性]
各試料について、3名の専門パネラーが、各化粧料を肌に塗布したときの使用感について評価をして、その平均値から以下の基準で評価を決定した。
A: とてもみずみずしい
B: みずみずしい
C: ややべたつく
D: べたつく
【0046】
[室温時安定性、高温時安定性]
各試料を室温で保存して、経時によって粘度が変化するかどうかを確認した。
A: ほとんど減粘しない
B: やや減粘する
C: 減粘する
【0047】
【0048】
【0049】
得られた結果から、極性油をほとんど含まない参考例の化粧料は安定性に優れているが、極性油の含有量を増加させた比較例の各化粧料は、経時安定性が損なわれることがわかる。すなわち、極性油による効果を引き出すために、単純に極性油の含有量を増加させることは適当ではないことがわかる。そして、本発明による化粧料は、極性油による機能を発揮しながら、分散安定性にも優れていることがわかる。