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特開2024-84860ヒト皮質スフェロイドでのミエリン形成オリゴデンドロサイトの誘導
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084860
(43)【公開日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ヒト皮質スフェロイドでのミエリン形成オリゴデンドロサイトの誘導
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20240618BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240618BHJP
   C07K 14/475 20060101ALI20240618BHJP
   C07K 14/575 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N5/10 ZNA
C07K14/475
C07K14/575
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024065390
(22)【出願日】2024-04-15
(62)【分割の表示】P 2020557321の分割
【原出願日】2019-04-16
(31)【優先権主張番号】62/658,901
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/700,472
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】500429332
【氏名又は名称】ケース ウェスタン リザーブ ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】CASE WESTERN RESERVE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【弁理士】
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】テサー,ポール
(72)【発明者】
【氏名】マーダバン,マユール
(72)【発明者】
【氏名】ネビン,ザカリー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多能性幹細胞(PSC)からオリゴ皮質スフェロイド(OCS)を生成する方法を提供する。
【解決手段】a)多能性幹細胞の神経皮質パターン形成により神経皮質スフェロイド(NCS)を生成する工程と、b)前記神経皮質スフェロイドを、規定されたオリゴデンドロサイト系統の増殖因子及び/又はホルモンに、定められたタイミングで曝露させて、前記神経皮質スフェロイド内の天然のオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)集団の増殖、生存、及び/又は拡大を促進し、それによりオリゴ皮質スフェロイドを生成する工程とを含み、前記オリゴ皮質スフェロイドは、軸索のミエリン形成を生じ得るミエリン形成オリゴデンドロサイト(ODC)に分化し得るオリゴデンドロサイト前駆細胞を含む、方法を提供する。
【選択図】図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多能性幹細胞(PSC)からオリゴ皮質スフェロイド(OCS)を生成する方法であって、
a)前記多能性幹細胞の神経皮質パターン形成により神経皮質スフェロイド(NCS)を生成する工程と、
b)前記神経皮質スフェロイドを、規定されたオリゴデンドロサイト系統の増殖因子及び/又はホルモンに、定められたタイミングで曝露させて、前記神経皮質スフェロイド内の天然のオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)集団の増殖、生存、及び/又は拡大を促進し、それによりオリゴ皮質スフェロイドを生成する工程と
を含み、
前記オリゴ皮質スフェロイドは、軸索のミエリン形成を生じ得るミエリン形成オリゴデンドロサイト(ODC)に分化し得るオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
この国際特許出願は、2018年4月17日に出願された米国仮特許出願第62/658,901号明細書及び2018年7月19日に出願された米国仮特許出願第62/700,472号明細書に対する出願日の利益を主張し、上記出願のそれぞれの内容全体(あらゆる図面及び配列表を含む)は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の支援
本発明は、国立衛生研究所から授与された助成金NS093357、NS095280、GM007250、HD084167、及びCA043703の下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
ヒト皮質形成は、別々の細胞集団の協調した生成、遊走、及び成熟を必要とする複雑なプロセスである。多くのグループが、インビトロでの2D培養及び分化中の神経細胞の強制的な凝集によりオリゴデンドロサイトを生成しているが、hPSC由来の皮質スフェロイドは、内因性分化プログラムを利用して、発生中のヒト脳に存在する局部的な組織化及び皮質の層化を再現する。
【0004】
インビトロでの3次元(3D)組織の生成の進歩は、ヒトの神経発達及び疾患を研究する能力を改善している。ヒト多能性幹細胞(hPSC)由来の3D培養物は、「オルガノイド」又は「スフェロイド」と呼ばれており、複雑な発生プロセス、細胞間相互作用、微小環境、組織構造、及び従来のインビトロでの培養ではアクセスできない拡張された時間的力学を再現する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のグループが、ヒト大脳皮質をパターン形成するのに必要な細胞の増殖、遊走、組織化、及び成熟の協調ラウンドをモデル化するためのプロトコールを開発している。この多能性幹細胞由来の「皮質スフェロイド」は、別々の皮質層に自己組織化し且つ機能する神経ネットワークを確立する複数の皮質細胞型(例えば、神経前駆細胞、成熟ニューロンサブタイプ、及びアストロサイト)を生成することが示されている。しかしながら、皮質スフェロイドの単一細胞分析により、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の存在を示唆する転写プロファイルが同定されており、希なオリゴデンドロサイトが孤立した形で同定されているが、中枢神経系(CNS)のミエリン形成グリア(myelinating glia)及び神経起源の3番目に主要な細胞型であるオリゴデンドロサイトの再現性のある生成及び成熟を実証したプロトコールは依然としてない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、多能性幹細胞(PSC)からオリゴ皮質スフェロイド(oligocortical spheroid)(OCS)を生成する方法であって、a)前記多能性幹細胞の神経皮質パターン形成により神経皮質スフェロイド(NCS)を生成する工程と、b)前記神経皮質スフェロイドを、規定されたオリゴデンドロサイト系統の増殖因子及び/又はホルモンに、定められたタイミングで曝露させて、前記神経皮質スフェロイド内の天然のオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)集団の増殖、生存、及び/又は拡大を促進し、それによりオリゴ皮質スフェロイドを生成する工程とを含み、前記オリゴ皮質スフェロイドは、軸索のミエリン形成を生じ得るミエリン形成オリゴデンドロサイ
ト(ODC)に分化し得るオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)を含む、方法を提供する。
【0007】
ある特定の実施形態では、この規定されたオリゴデンドロサイト系統の増殖因子及びホルモンは、血小板由来の増殖因子(PDGF)(例えば、PDGF-AA(PDGF-AA))、及びインスリン様増殖因子-1(IGF-1)を含む。
【0008】
ある特定の実施形態では、この規定されたオリゴデンドロサイト系統の増殖因子及びホルモンは、PDGF-AA、PDGF-AB、FGF-2、VEGF、又はこれらの組み合わせ、及びインスリン若しくはIGF-1、又はこれらの組み合わせを含む。
【0009】
ある特定の実施形態では、この方法は、オリゴデンドロサイト分化を誘発するための追加の増殖因子及び/又はホルモンへの定められたタイミングでの曝露をさらに含む。
ある特定の実施形態では、この追加の増殖因子及び/又はホルモンは、甲状腺ホルモン(T3)、クレマスチン、及び/又はケトコナゾールを含む。
【0010】
ある特定の実施形態では、工程b)を、受胎の約10週間後と同等の時点で実行するか、又は工程a)の開始の約50~60日後に実行する。
ある特定の実施形態では、オリゴデンドロサイト分化を誘発するための追加の増殖因子及び/又はホルモンへの定められたタイミングでの曝露を、受胎の約14週間後と同等の時点で実行するか、又は工程a)の開始の約60~70日後に実行する。
【0011】
ある特定の実施形態では、この多能性幹細胞は、ヒト胚性幹細胞系統に由来するか、又は人工多能性幹細胞(iPSC)系統に由来する。
ある特定の実施形態では、工程b)を、約6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15日の期間にわたり実行する。
【0012】
ある特定の実施形態では、工程a)の終了時の神経皮質スフェロイドは、オリゴデンドロサイト系統細胞を実質的に含まない。オリゴデンドロサイト系統細胞の欠如は、オリゴデンドロサイト系統細胞の任意のマーカー(例えば、転写因子OLIG2及びSOX10等の1種又は複数種の標準的なOPCマーカー)により検証され得る。
【0013】
ある特定の実施形態では、工程b)の終了時のオリゴ皮質スフェロイドは、工程b)により処理されていない同年齢の神経皮質スフェロイドと比較して実質的に増加しているOPCを含む。OPCの増加は、例えば、1種又は複数種の標準的なOPCマーカーの免疫染色の増加により検出され得、及び/又は定量され得る。適切なOPCマーカーとして、OPCに特異的な転写因子(例えば、OLIG2及びSOX10)、オリゴデンドロサイト膜タンパク質マーカー(例えばプロテオリピドタンパク質1(PLP1))、並びにCNS中のオリゴデンドロサイトで特異的に発現される転写因子(例えばMYRF)が挙げられ得る。
【0014】
ある特定の実施形態では、この多能性幹細胞は、疾患を有する対象から単離されたiPSCである。この実施形態によれば、罹患した個体から単離されたiPSCから産生されたOCSは、この疾患の処置に有用なモデルであり得る。
【0015】
ある特定の実施形態では、この疾患は、ミエリン産生の欠損を特徴とするか、又はミエリンの喪失若しくはミエリン機能の喪失に起因する/関連する欠損を特徴とする。
ある特定の実施形態では、この疾患は、ペリツェウス・メルツバッヘル病(PMD)である。例えば、PMDは、PLP1遺伝子座全体の欠失を特徴とし得るか、PLP1遺伝子座全体の重複を特徴とし得るか、又はPLP1での点変異(例えばc.254T>G)
を特徴とし得る。
【0016】
本発明の別の態様は、本発明の方法のいずれかを使用して生成されたオリゴ皮質スフェロイドを提供する。
本発明の別の態様は、多能性幹細胞から発生したオリゴ皮質スフェロイドであって、軸索のミエリン形成を生じ得るミエリン形成オリゴデンドロサイトに分化し得るオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)を含むオリゴ皮質スフェロイドを提供する。
【0017】
ある特定の実施形態では、このオリゴ皮質スフェロイドは、軸索のミエリン形成を生じ得るミエリン形成オリゴデンドロサイトをさらに含む。
本発明の別の態様は、ミエリン産生の欠損又はミエリンの喪失若しくはミエリン機能の喪失に起因する/関連する欠損を特徴とする疾患を処置するのに有効な薬物をスクリーニングする方法であって、候補薬物のライブラリ由来の複数種の候補薬物をそれぞれ個別に、前記疾患を有する個体由来の多能性幹細胞から発生したオリゴ皮質スフェロイドと接触させる工程と、前記疾患を処置するのに有効であるとして、ミエリン産生の欠損を軽減するか、ミエリンの量及び/若しくは機能を回復させるか、又はミエリン喪失を予防する1種又は複数種の候補薬物を同定する工程とを含む方法を提供する。
【0018】
ある特定の実施形態では、この方法は、この疾患を有する動物に、有効であると同定された候補薬物を投与する工程をさらに含む。例えば、この疾患を有する個体は、ヒトであり得、この動物は、この疾患のモデルとしてのマウスであり得る。
【0019】
明確に否認されているか又は不適当でない限り、本明細書で説明されている任意の一実施形態を、実施例又は特許請求の範囲でのみ説明されている実施形態を含む1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせ得ることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1-1】図1A~1Fは、ヒト皮質スフェロイドでのオリゴデンドロサイトの生成を示す。図1Aは、スフェロイド生成の概略である。神経皮質スフェロイド(NCS)及びオリゴ皮質スフェロイド(OCS)を生成するためのプロトコールは、8週目まで同一であり、その後、神経皮質スフェロイドを基本培地で増殖させたが、オリゴ皮質スフェロイドを、50~60日目からPDGF-AA/IGF-1で処理し、60~70日目からT3で処理した。14週目に、オリゴデンドロサイトの分化を評価した。色は、ニューロン(赤紫色)、アストロサイト(赤色)、及びOPC/オリゴデンドロサイト(緑色)を示す。図1B及び1Cは、(a)神経皮質プロトコール又は(b)オリゴ皮質プロトコールで生成された、14週目のH7スフェロイドの代表的な蛍光画像である。それぞれに関して、4つの別々の株から生成されたスフェロイドの3の独立したバッチから、同様の結果が得られた。スケールバー、50μm。図1Bは、神経皮質プロトコールスフェロイドが、ニューロン(神経フィラメント:赤紫色)及びアストロサイト(GFAP:赤色)を生成するが、オリゴデンドロサイト(PLP1:緑色)を生成しないことを示す。図1Cは、オリゴ皮質プロトコールスフェロイドが、ニューロン(神経フィラメント:赤紫色)、アストロサイト(GFAP:赤色)、及びオリゴデンドロサイト(PLP1:緑色)を生成することを示す。挿入図、より高倍率でのオリゴデンドロサイトの形態。図1Dは、神経皮質プロトコール又はオリゴ皮質プロトコールと、PDGF-AA及びIGF-1、又はT3のみとで生成された14週目のスフェロイドでのオリゴデンドロサイト系統の核マーカーであるMYRFの定量を示す。MYRF陽性細胞を、株H7、H9、及びCWRU191の細胞株からの各処理条件に関する4つ又は5つの個々のスフェロイド(n=4、PDGF/IGF又はT3処理、n=5、NCS及びOCS)からの4つの平面から計数して、平均化した(白枠)。エラーバー、標準偏差。同一のバッチからのn=3のスフェロイドを、外部で検証される株RUES1に使用した。図1Eは、神経皮質スフェロイド及びオリゴ皮質スフェロイドでの、ニューロン、アストロサイト、及びオリゴデンドロサイトの遺伝子発現を示す。ヒートマップは、各細胞型に関する100個の最も細胞特異的な転写産物からなる。オリゴデンドロサイト特異的遺伝子及びアストロサイト特異的遺伝子は、神経皮質スフェロイドと比較してオリゴ皮質で上方制御されている。図1Fは、図1Eのデータからのニューロン特異的遺伝子発現、アストロサイト特異的遺伝子発現、及びオリゴデンドロサイト特異的遺伝子発現を示す。箱は、第1四分位及び第3四分位にまたがっており、平均で分割されており、ひげは、最大値及び最小値まで及んでいる。図1E及び1Fは、各条件に関する5つのスフェロイドからのRNA-seqを示す。対応のあるノンパラメトリックWilcoxonマッチドペア符号付き順位検定(paired non-parametric Wilcoxon matched pairs signed-rank test)を使用して、有意性を判定した。
図1-2】図1A~1Fは、ヒト皮質スフェロイドでのオリゴデンドロサイトの生成を示す。図1B及び1Cは、(a)神経皮質プロトコール又は(b)オリゴ皮質プロトコールで生成された、14週目のH7スフェロイドの代表的な蛍光画像である。それぞれに関して、4つの別々の株から生成されたスフェロイドの3の独立したバッチから、同様の結果が得られた。スケールバー、50μm。図1Bは、神経皮質プロトコールスフェロイドが、ニューロン(神経フィラメント:赤紫色)及びアストロサイト(GFAP:赤色)を生成するが、オリゴデンドロサイト(PLP1:緑色)を生成しないことを示す。図1Cは、オリゴ皮質プロトコールスフェロイドが、ニューロン(神経フィラメント:赤紫色)、アストロサイト(GFAP:赤色)、及びオリゴデンドロサイト(PLP1:緑色)を生成することを示す。挿入図、より高倍率でのオリゴデンドロサイトの形態。
図1-3】図1A~1Fは、ヒト皮質スフェロイドでのオリゴデンドロサイトの生成を示す。図1Dは、神経皮質プロトコール又はオリゴ皮質プロトコールと、PDGF-AA及びIGF-1、又はT3のみとで生成された14週目のスフェロイドでのオリゴデンドロサイト系統の核マーカーであるMYRFの定量を示す。MYRF陽性細胞を、株H7、H9、及びCWRU191の細胞株からの各処理条件に関する4つ又は5つの個々のスフェロイド(n=4、PDGF/IGF又はT3処理、n=5、NCS及びOCS)からの4つの平面から計数して、平均化した(白枠)。エラーバー、標準偏差。同一のバッチからのn=3のスフェロイドを、外部で検証される株RUES1に使用した。図1Eは、神経皮質スフェロイド及びオリゴ皮質スフェロイドでの、ニューロン、アストロサイト、及びオリゴデンドロサイトの遺伝子発現を示す。ヒートマップは、各細胞型に関する100個の最も細胞特異的な転写産物からなる。オリゴデンドロサイト特異的遺伝子及びアストロサイト特異的遺伝子は、神経皮質スフェロイドと比較してオリゴ皮質で上方制御されている。図1Fは、図1Eのデータからのニューロン特異的遺伝子発現、アストロサイト特異的遺伝子発現、及びオリゴデンドロサイト特異的遺伝子発現を示す。箱は、第1四分位及び第3四分位にまたがっており、平均で分割されており、ひげは、最大値及び最小値まで及んでいる。図1E及び1Fは、各条件に関する5つのスフェロイドからのRNA-seqを示す。対応のあるノンパラメトリックWilcoxonマッチドペア符号付き順位検定(paired non-parametric Wilcoxon matched pairs signed-rank test)を使用して、有意性を判定した。
図2-1】図2A~2Lは、オリゴ皮質スフェロイドでのオリゴデンドロサイトの成熟を示す。図2Aは、オリゴ皮質スフェロイド生成の概略である。図1Aと同様の色。図2B~2Dは、20週目のH7オリゴ皮質スフェロイドの代表的な蛍光画像である。スフェロイドの2つの独立したバッチから、同様の結果が得られた。スケールバー、50μm。図2Bは、オリゴデンドロサイト系統(MYRF:赤紫色)、CTIP2陽性(黄色)の初期に生じたニューロン、及びSATB2陽性(青緑色)の後期に生じたニューロンのロバストな生成を示す。図2Cは、成熟中のオリゴデンドロサイト(PLP1:緑色)での線状突起形成を示す。図2Dは、成熟したミエリンのマーカーであるMBP(赤色)の免疫染色であり、成熟の初期段階を示す点状のMBP発現を示す。図2E~2Gは、20週目のH7オリゴ皮質スフェロイドの代表的なEMである。3種のスフェロイドの単一バッチから、EM結果が得られた。スケールバー、1μm。図2Eは、オリゴデンドロサイトによるミエリン形成を受けているニューロンのクラスターを示す。図2Fは、緩く圧縮されたミエリンの複数の層に囲まれた軸索を示す。図2Gは、軸索を囲む緩く圧縮されたミエリンのより広範な巻き付きを示す。図2H~2Jは、30週目のH9オリゴ皮質スフェロイドの代表的な蛍光画像である。オリゴ皮質スフェロイドの単一バッチからの4つのスフェロイドから、同様の結果が得られた。スケールバー、50μm。図2Hは、SATB2陽性(青緑色)の表層からのCTIP2陽性(黄色)の深層の皮質の積層及び分離を示す。皮質層内には、MYRF陽性(赤紫色)のオリゴデンドロサイトが散在している。図2Iは、オリゴデンドロサイトの突起(PLP1:赤紫色)トラック(矢印)ニューロン軸索(神経フィラメント:黄色)を示す。図2Jは、図2Iにおいて枠で囲まれた領域のより高倍率を示す。図2Kは、軸索の周りのコンパクトなミエリンを示す30週目のH9オリゴ皮質スフェロイドの電子顕微鏡写真である。スフェロイドの単一バッチからの3つのスフェロイドから、EM結果が得られた。スケールバー、1μm。図2Lは、軸索の長さに沿って撮影されたブロック面EMセクションからの3D再構成である。
図2-2】図2A~2Lは、オリゴ皮質スフェロイドでのオリゴデンドロサイトの成熟を示す。図2Bは、オリゴデンドロサイト系統(MYRF:赤紫色)、CTIP2陽性(黄色)の初期に生じたニューロン、及びSATB2陽性(青緑色)の後期に生じたニューロンのロバストな生成を示す。図2Cは、成熟中のオリゴデンドロサイト(PLP1:緑色)での線状突起形成を示す。図2Dは、成熟したミエリンのマーカーであるMBP(赤色)の免疫染色であり、成熟の初期段階を示す点状のMBP発現を示す。図2E~2Gは、20週目のH7オリゴ皮質スフェロイドの代表的なEMである。3種のスフェロイドの単一バッチから、EM結果が得られた。スケールバー、1μm。図2Eは、オリゴデンドロサイトによるミエリン形成を受けているニューロンのクラスターを示す。図2Fは、緩く圧縮されたミエリンの複数の層に囲まれた軸索を示す。図2Gは、軸索を囲む緩く圧縮されたミエリンのより広範な巻き付きを示す。
図2-3】図2A~2Lは、オリゴ皮質スフェロイドでのオリゴデンドロサイトの成熟を示す。図2H~2Jは、30週目のH9オリゴ皮質スフェロイドの代表的な蛍光画像である。オリゴ皮質スフェロイドの単一バッチからの4つのスフェロイドから、同様の結果が得られた。スケールバー、50μm。図2Hは、SATB2陽性(青緑色)の表層からのCTIP2陽性(黄色)の深層の皮質の積層及び分離を示す。皮質層内には、MYRF陽性(赤紫色)のオリゴデンドロサイトが散在している。図2Iは、オリゴデンドロサイトの突起(PLP1:赤紫色)トラック(矢印)ニューロン軸索(神経フィラメント:黄色)を示す。図2Jは、図2Iにおいて枠で囲まれた領域のより高倍率を示す。図2Kは、軸索の周りのコンパクトなミエリンを示す30週目のH9オリゴ皮質スフェロイドの電子顕微鏡写真である。スフェロイドの単一バッチからの3つのスフェロイドから、EM結果が得られた。スケールバー、1μm。図2Lは、軸索の長さに沿って撮影されたブロック面EMセクションからの3D再構成である。
図3図3A~3Eは、オリゴ皮質スフェロイドでの皮質のパターン形成及び組織化を示す。図3A及び3Bは、8週目のH7スフェロイドの代表的な蛍光画像である。図3Aは、初期の神経皮質パターン形成の終わりに、スフェロイドが、脳室様帯へと組織化する神経前駆細胞(SOX2:黄色、及びネスチン:青色)の明確な集団を生成することを示す。この細胞はまた、Ki67(赤紫色)で標識した場合に、唯一活発に分裂している細胞でもある。図3Bは、TBR2陽性(青色)の外側SV2様ゾーンがSox2陽性(黄色)の脳室様帯に隣接して現れることを示す。図3Cは、PDGF-AA/IGF-1処理までのオリゴ皮質プロトコールにより生成し、次いで、分裂細胞を標識するために9週目(58日目及び60日目)の間にBrdU(赤紫色)の2回の用量を投与したH7スフェロイドの代表的な蛍光画像である。BrdU陽性細胞は、SOX2陽性脳室帯に局在しており、このSOX2陽性脳室帯を初期胚中心と同定する。図3D及び3Eは、神経皮質プロトコール(図3D)又はオリゴ皮質プロトコール(図3E)で生成し、9週目(58日目及び60日目)の間にBrdUで処理し、次いで14週目まで維持したH7スフェロイドの代表的な蛍光画像である。オリゴ皮質スフェロイドのみがオリゴデンドロサイト(MYRF:青緑色)を生成し、このオリゴデンドロサイトの多くは、BrdUに対して二重陽性である(図3Eの箱状の領域の拡大図における矢印、右側に示す)。スケールバー、50μm。
図4図4A~4Gは、ミエリン形成促進(promyelinating)剤がオリゴ皮質スフェロイドでのオリゴデンドロサイトの生成を促進することを示す。図4A~4Dは、PDGF/IGF-1(50~60日目から)で処理し、且つ(図4A)DMSO、(図4B)T3、(図4C)クレマスチン、又は(図4D)ケトコナゾール(60~70日目から)で処理した14週目のH7スフェロイドの代表的な蛍光画像である。DMSOでは、得られたMYRF陽性細胞が少ないのに対して、T3、クレマスチン、及びケトコナゾールでは、ロバストなMYRFシグナルが得られた。分析には、同一のバッチからの4つのスフェロイドを使用した。スケールバー、50μm。図4Eは、図4A~4DからのMYRFの定量を示す。MYRF陽性細胞を、細胞系統毎にn=4の個々のスフェロイドで計数して(着色された点)平均化した(白色のバー)。エラーバー、標準偏差。有意性を、Welchの補正による両側不対t検定を使用して決定した。図4F~4Gは、14週目のH7スフェロイドの代表的なEM画像である。スケールバー、500nm。図4Fは、標準的なオリゴ皮質プロトコール(T3)で生成されたスフェロイドがミエリンの非存在を示すことを示す。図4Gは、T3の代わりにケトコナゾールで生成されたスフェロイドが、複数の神経軸索を囲む非圧縮ミエリンのロバストな産生を示す。
図5-1】図5A~5Nは、オリゴ皮質スフェロイドがヒトミエリン疾患の表現型を再現することを示す。図5A~5Lは、14週目のオリゴ皮質スフェロイドの代表的な蛍光画像である。分析には、同一のバッチから5つ(図5A及び5B)又は4つ(図5C~5L)のスフェロイドを使用した。スケールバー、50μm。図5A及び5Bは、(図5A)PLP1:緑色又は(図5B)MYRF:赤色に関して免疫染色されたCWRU198スフェロイドを示しており、豊富なオリゴデンドロサイト及びロバストなPLP1発現を明らかにする。図5C~5Dは、(図5C)PLP1:緑色又は(図5D)MYRF:赤色に関して免疫染色されたPLP1欠失スフェロイドを示しており、豊富なMYRF陽性オリゴデンドロサイトにもかかわらずPLP1の予想される欠如を示す。図5E及び5Fは、(図5E)PLP1:緑色又は(図5F)MYRF:赤色に関して免疫染色されたPLP1重複オリゴ皮質スフェロイドを示しており、MYRF陽性オリゴデンドロサイトの豊富さの減少にもかかわらずロバストなPLP1発現を示す。図5G及び5Hは、(図5G)PLP1:緑色又は(図5H)MYRF:赤色に関して免疫染色されたPLP1 c.254T>Gスフェロイドを示しており、PLP1の核周囲保持及びMYRF陽性オリゴデンドロサイトの存在量の減少を示す。図5I及び5Jは、GSK2656157で処理し且つ(図5I)PLP1:緑色又は(図5J)MYRF:赤色に関して免疫染色されたPLP1 c.254T>Gオリゴ皮質スフェロイドを示しており、オリゴデンドロサイトの突起へのPLP1の動員及びMYRF陽性オリゴデンドロサイトの存在量の救出を示す。図5K及び5Lは、(図5K)PLP1:緑色又は(図5L)MYRF:赤色に関して免疫染色された、PLP1 CRISPRで補正されたc.254TG>Tオリゴ皮質スフェロイドを示しており、PLP1の核周囲保持及びオリゴデンドロサイトの存在量の両方の救出を示す。図5Mは、図5A~5Lにおける1個のオルガノイド当たりのMYRF陽性オリゴデンドロサイトの割合を示す。MYRF陽性細胞を、コントロール系統CWRU198のn=5の個々のスフェロイド及び1つの細胞系統当たりn=4の個々のスフェロイドから計数し(着色された点)、平均化した(白枠)。エラーバー、標準偏差。有意性を、Welchの補正による両側不対t検定を使用して決定した。図5Nは、30週目の、PLP1 CRISPRで補正されたc.254G>Tオリゴ皮質スフェロイドの代表的なEMであり、軸索を囲むコンパクトなミエリンを示す。EM分析に、単一バッチからの3つのスフェロイドを使用した。スケールバー、1μm。
図5-2】図5A~5Nは、オリゴ皮質スフェロイドがヒトミエリン疾患の表現型を再現することを示す。図5Mは、図5A~5Lにおける1個のオルガノイド当たりのMYRF陽性オリゴデンドロサイトの割合を示す。MYRF陽性細胞を、コントロール系統CWRU198のn=5の個々のスフェロイド及び1つの細胞系統当たりn=4の個々のスフェロイドから計数し(着色された点)、平均化した(白枠)。エラーバー、標準偏差。有意性を、Welchの補正による両側不対t検定を使用して決定した。図5Nは、30週目の、PLP1 CRISPRで補正されたc.254G>Tオリゴ皮質スフェロイドの代表的なEMであり、軸索を囲むコンパクトなミエリンを示す。EM分析に、単一バッチからの3つのスフェロイドを使用した。スケールバー、1μm。
図6-1】図6A~6Eは、ヒト皮質スフェロイドでのオリゴデンドロサイト前駆体細胞の生成を示す。図6Aは、スフェロイド生成の概略である。神経皮質スフェロイド(NCS)及びオリゴ皮質スフェロイド(OCS)を生成するためのプロトコールは、8週目まで同一であった。神経皮質スフェロイドを基本培地で増殖させたが、オリゴ皮質スフェロイドを、50~60日目からPDGF-AA/IGF-1で処理してOPCを生成した。OPC数の増加を、9週目の最後に評価した。この概略中の色は、ニューロン(赤紫色)、アストロサイト(赤色)、及びOPC/オリゴデンドロサイト(緑色)を模倣する。図6B~6Cは、神経皮質プロトコールで生成された8週目(図6B)及び9週目(図6C)のH7スフェロイドの代表的な蛍光画像である。これらのスフェロイドは、OPC(OLIG2:黄色及びSOX10:赤紫色)を生成しない。スケールバー、図6B~6Dの場合は50μm。図6Dは、PDGA-AA/IGF-1による処理までのオリゴ皮質プロトコールで生成された9週目のH7スフェロイドの代表的な蛍光画像である。これらのスフェロイドは、OPC(OLIG2:黄色及びSOX10:赤紫色)を生成する。矢印は、OLIG2/SOX10二重陽性細胞を示す。図6Eは、神経皮質プロトコール又はオリゴ皮質プロトコールで生成された9週目のスフェロイドでのOLIG2陽性OPC及びSOX10/OLIG2二重陽性OPCの定量を示す。細胞を、系統H7、H9及びCWRU191の5つの個々のスフェロイド(着色された点)からの3つの平面それぞれから計数し、平均化した(白枠)。エラーバーは標準偏差であり、1つの系統当たり同一バッチからのn=5のスフェロイド。
図6-2】図6A~6Eは、ヒト皮質スフェロイドでのオリゴデンドロサイト前駆体細胞の生成を示す。図6Eは、神経皮質プロトコール又はオリゴ皮質プロトコールで生成された9週目のスフェロイドでのOLIG2陽性OPC及びSOX10/OLIG2二重陽性OPCの定量を示す。細胞を、系統H7、H9及びCWRU191の5つの個々のスフェロイド(着色された点)からの3つの平面それぞれから計数し、平均化した(白枠)。エラーバーは標準偏差であり、1つの系統当たり同一バッチからのn=5のスフェロイド。
図7図7A~7Cは、3つの追加のヒト多能性系統でのオリゴ皮質プロトコールの検証を示す。図7Aは、H9、CWRU191、及びRUES1から生成された14週目のオリゴ皮質スフェロイドでのPLP1の代表的な蛍光画像である。H9、CWRU191、及びCWRU198の場合のスフェロイドの3つの独立したバッチ、並びにRUES1の1つのバッチから、同様の結果が得られた。スケールバー、50μm。図7Bは、H9、CWRU191、及びRUES1から生成された14週目のオリゴ皮質スフェロイドでのMYRFの代表的な蛍光画像である。H9、CWRU191、及びCWRU198の場合のスフェロイドの3つの独立したバッチ、並びにRUES1の1つのバッチから、同様の結果が得られた。スケールバー、50μm。図7Cは、H7から生成された単一の14週目のオリゴ皮質スフェロイドでのMYRFの代表的な蛍光画像を伴う、図1DでのMYRF定量の概略である。4つパネル(1~4)は、撮像されており且つ1つのスフェロイド当たり計数された、4つの、等しく拡大されており、大きさが等しく、且つ一貫して分布している領域を示す。1つのスフェロイド当たりの報告された%MYRF陽性細胞は、これら4つの画像の平均である。スケールバー、50μm。
図8図8A~8Cは、追加の多能性系統からのオリゴデンドロサイトの成熟を示す。図8Aは、20週目のH9、CWRU191、及びRUES1のオリゴ皮質スフェロイドでのMYRF及びPLP1の発現の代表的な蛍光画像を示す。結果は、系統H9及びCWRU191の2つの独立したバッチから生成されたスフェロイド、並びに系統RUES1の1つのバッチから生成されたスフェロイドの代表である。スケールバー、50μm。図8Bは、20週目のH9及びCWRU191のオリゴ皮質スフェロイドでの軸索周りの複数の緩く圧縮されたミエリンラップの代表的なEM画像を示す。EM分析を、各系統に関する同一のバッチからの3つのスフェロイドに対して実施した。RUES1のEM分析は実施しなかった。スケールバー、1μm。図8Cは、14週目及び20週目のH7オリゴ皮質スフェロイドでのSox10及びMYRFの発現の代表的な蛍光画像を示す。結果は、2つの独立したバッチから生成されたスフェロイドの代表である。スケールバー、50μm。
図9図9は、オリゴ皮質スフェロイドでのオリゴデンドロサイトのBrdUに基づく運命マッピングである。PDGF-AA/IGF-1処理までのオリゴ皮質プロコトルで生成し、次いで分裂細胞を標識するために9週目(58日目及び60日目)にBrdUの2回の用量を投与した2つの追加のH7スフェロイド、及び2つのH9スフェロイド、及び2つのCWRU191スフェロイドの代表的な蛍光画像を示す。2回目のBrdUパルスの後、BrdU陽性(赤紫色)細胞の大部分は、SOX2陽性(黄色)細胞及びビメンチン陽性(青色)細胞と共に局在する。14週目までに、BrdU標識細胞の一部は、オリゴデンドロサイトマーカーMYRF(青緑色)に関して二重陽性である(高倍率挿入図中の矢印)。パルスチェイス実験を、各系統からのスフェロイドの単一バッチに対して実施し、1つの系統当たり4つのスフェロイドを分析した。スケールバー、50μm。
図10図10は、12週目のオリゴ皮質スフェロイドでの細胞集団の単一細胞分析である。示されているのは、Nowakowski他、2017年により生成された単一細胞ヒト胎児脳細胞と比較した、12週目のH7オリゴ皮質スフェロイドからの単一細胞RNA-seqデータのクラスタリングである。一連の前駆細胞集団は、前駆細胞マーカーであるビメンチン、SOX2、ネスチン、及びSox6の可視化を通じて、両方のデータセットで明らかであるが、オリゴ皮質スフェロイドのみが、現れるオリゴデンドロサイトクラスター(PLP1/DM20及びOMG)の証拠を示す。単一バッチからの10個のスフェロイドに対して単一細胞RNA-seqを実施した。
図11-1】図11A~11Cは、PLP1点変異のCRISPR補正を示す。図11Aは、変異及び一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドドナーを重複するガイドRNAを使用した、患者由来のhiPSCでのPLP1点変異(PLP1c.254T>G)の補正の概略である。図11Bは、変異親(PLP1c.254G)系統のサンガーシークエンシングトレース及び核型である。図11Cは、補正された(PLP1c.254T)系統のサンガーシークエンシングトレース及び核型である。
図11-2】図11A~11Cは、PLP1点変異のCRISPR補正を示す。図11Bは、変異親(PLP1c.254G)系統のサンガーシークエンシングトレース及び核型である。図11Cは、補正された(PLP1c.254T)系統のサンガーシークエンシングトレース及び核型である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
大脳オルガノイドは、細胞の組成、相互作用、及び組織化を調べるのに利用可能なシステムを提供するが、中枢神経系のミエリン形成グリアであるオリゴデンドロサイトを欠いている。本明細書で説明されているのは、ヒト多能性幹細胞有来の「オリゴ皮質スフェロイド」においてオリゴデンドロサイト及びミエリンを再現性よく生成する方法である。成熟中のオリゴデンドロサイトと一致する分子的特徴は、培養20週までに現れ、30週までにさらなる成熟及びミエリン圧縮が起こる。
【0022】
ミエリン形成促進剤は、オリゴデンドロサイトの生成及びミエリン形成の速度及び程度を増強し、遺伝的なミエリン障害を有する患者から生成されたスフェロイドは、ヒト疾患表現型を再現する。
【0023】
そのため、本主題の方法及びそれにより生成されたオリゴ皮質スフェロイドは、発生中の中枢神経系のミエリン形成を研究するための多目的なプラットフォームを提供し、疾患のモデリング及び治療法の開発ための新たな機会を提供する。
【0024】
本出願人は、先行するニューロンモデルで実証されている全体的な組織化及び局部的な特定を保存しつつ、PDGF、IGF-1、及びT3等の増殖因子に曝露することにより、皮質スフェロイド中でオリゴデンドロサイト前駆細胞及びミエリン形成オリゴデンドロサイトを再現性よく誘導するための方法を開発した。これらのオリゴ皮質スフェロイド中での全ての主要なCNS系統の誘導は、ヒト皮質の発生及び疾患を観察するための及び撹乱させるための新たな機会を提供する。
【0025】
そのため、一態様では、本発明は、多能性幹細胞(PSC)からオリゴ皮質スフェロイド(OCS)を生成する方法であって、a)前記多能性幹細胞の神経皮質パターン形成により神経皮質スフェロイド(NCS)を生成する工程と、b)前記神経皮質スフェロイドを、規定されたオリゴデンドロサイト系統の増殖因子及び/又はホルモンに、定められたタイミングで曝露させて、前記神経皮質スフェロイド内の天然のオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)集団の増殖、生存、及び/又は拡大を促進し、それによりオリゴ皮質スフェロイドを生成する工程とを含み、前記オリゴ皮質スフェロイドは、軸索のミエリン形成を生じ得るミエリン形成オリゴデンドロサイト(ODC)に分化し得るオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)を含む、方法を提供する。
【0026】
ある特定の実施形態では、オリゴ皮質スフェロイドは、好ましくは工程a)の開始後9、14、又は20週目の終了時に、少なくとも約5、6、7、8、9、10、15、20、25、30%のオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)及び/又は分化したオリゴデンドロサイトを含む。OPC及び/又はODCの割合を、OPC/ODCマーカー(例えばMYRF又はPLP1)を発現する細胞の計数に基づいて測定し得る。この細胞を、図1D又は図7Cで使用した方法に従って計数し得る(例えば、4つ又は5つの個々のスフェロイドからの4つの平面から計数し得る)。
【0027】
ある特定の実施形態では、この規定されたオリゴデンドロサイト系統の増殖因子及びホルモンは、血小板由来の増殖因子(PDGF)(例えば、PDGF-AA(PDGF-AA))、及びインスリン様増殖因子-1(IGF-1)を含む。
【0028】
ある特定の実施形態では、この規定されたオリゴデンドロサイト系統の増殖因子及びホルモンは、PDGF-AA、PDGF-AB、FGF-2、VEGF、又はこれらの組み合わせ、及びインスリン若しくはIGF-1、又はこれらの組み合わせを含む。
【0029】
ある特定の実施形態では、この方法は、オリゴデンドロサイト分化を誘発するための追加の増殖因子及び/又はホルモンへの定められたタイミングでの曝露をさらに含む。
OPCからのオリゴデンドロサイト分化を誘発することが知られている任意の因子を、本発明のこの工程で使用し得る。ある特定の実施形態では、この追加の増殖因子及び/又はホルモンは、甲状腺ホルモン(T3)、クレマスチン、及び/又はケトコナゾールを含む。
【0030】
ある特定の実施形態では、工程b)を、受胎の約10週間後と同等の時点で実行するか、又は工程a)の開始の約50~60日後に実行する。
ある特定の実施形態では、オリゴデンドロサイト分化を誘発するための追加の増殖因子及び/又はホルモンへの定められたタイミングでの曝露を、受胎の約14週間後と同等の時点で実行するか、又は工程a)の開始の約60~70日後に実行する。
【0031】
ある特定の実施形態では、この多能性幹細胞は、ヒト胚性幹細胞系統に由来するか、又は人工多能性幹細胞(iPSC)系統に由来する。
ある特定の実施形態では、工程b)を、約6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15日の期間にわたり実行する。
【0032】
ある特定の実施形態では、工程a)の終了時の神経皮質スフェロイドは、オリゴデンドロサイト系統細胞を実質的に含まない。オリゴデンドロサイト系統細胞の欠如は、オリゴデンドロサイト系統細胞の任意のマーカーにより検証され得る。例えば、オリゴデンドロサイト系統細胞の欠如は、転写因子OLIG2及びSOX10等の1種又は複数種の標準的なOPCマーカーの欠如又は最小限の免疫染色により検証され得る。
【0033】
ある特定の実施形態では、工程b)の終了時のオリゴ皮質スフェロイドは、工程b)により処理されていない同年齢の神経皮質スフェロイドと比較して実質的に増加しているOPCを含む。OPCの増加は、例えば、1種又は複数種の標準的なOPCマーカーの免疫染色の増加により検出され得、及び/又は定量され得る。適切なOPCマーカーとして、OPCに特異的な転写因子(例えば、OLIG2及びSOX10)、オリゴデンドロサイト膜タンパク質マーカー(例えばプロテオリピドタンパク質1(PLP1))、並びにCNS中のオリゴデンドロサイトで特異的に発現される転写因子(例えばMYRF)が挙げられ得る。
【0034】
ある特定の実施形態では、この多能性幹細胞は、疾患を有する対象から単離されたiPSCである。この実施形態によれば、罹患した個体から単離されたiPSCから産生されたOCSは、この疾患の処置に有用なモデルであり得る。
【0035】
ある特定の実施形態では、この疾患は、ミエリン産生の欠損を特徴とするか、又はミエリンの喪失若しくはミエリン機能の喪失に起因する/関連する欠損を特徴とする。
ある特定の実施形態では、この疾患は、ペリツェウス・メルツバッヘル病(PMD)である。例えば、PMDは、PLP1遺伝子座全体の欠失を特徴とし得るか、PLP1遺伝子座全体の重複を特徴とし得るか、又はPLP1での点変異(例えばc.254T>G)を特徴とし得る。
【0036】
本発明の別の態様は、本発明の方法のいずれかを使用して生成されたオリゴ皮質スフェロイドを提供する。
本発明の別の態様は、多能性幹細胞から発生したオリゴ皮質スフェロイドであって、軸索のミエリン形成を生じ得るミエリン形成オリゴデンドロサイトに分化し得るオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)を含むオリゴ皮質スフェロイドを提供する。
【0037】
ある特定の実施形態では、このオリゴ皮質スフェロイドは、軸索のミエリン形成を生じ得るミエリン形成オリゴデンドロサイトをさらに含む。
本発明の別の態様は、ミエリン産生の欠損又はミエリンの喪失若しくはミエリン機能の喪失に起因する/関連する欠損を特徴とする疾患を処置するのに有効な薬物をスクリーニングする方法であって、候補薬物のライブラリ由来の複数種の候補薬物をそれぞれ個別に、前記疾患を有する個体由来の多能性幹細胞から発生したオリゴ皮質スフェロイドと接触させる工程と、前記疾患を処置するのに有効であるとして、ミエリン産生の欠損を軽減するか、ミエリンの量及び/若しくは機能を回復させるか、又はミエリン喪失を予防する1種又は複数種の候補薬物を同定する工程とを含む方法を提供する。
【0038】
ある特定の実施形態では、この方法は、この疾患を有する動物に、有効であると同定された候補薬物を投与する工程をさらに含む。例えば、この疾患を有する個体は、ヒトであ
り得、この動物は、この疾患のモデルとしてのマウスであり得る。
【0039】
本発明が上記で概して説明されており、本発明のある特定の特徴を、下記のセクションでより詳細にさらに説明する。
神経皮質スフェロイド(NCS)の生成
本発明の方法によれば、規定されたオリゴデンドロサイト系統の増殖因子及びホルモンへの定められたタイミングでの曝露により、(ヒト)多能性幹細胞(hPSC)から、神経皮質スフェロイドを生成し得る。
【0040】
例示的な50日間プロトコールが、(参照により本明細書に組み込まれるPasca他,Functional cortical neurons and astrocytes from human pluripotent stem cells in
3D culture.Nat Methods 12,671-678(2015))で説明されている。そのため、一実施形態では、神経皮質スフェロイドを、Pasca他で説明されているこの50日間プロトコールに従って、(ヒト)多能性幹細胞(hPSC)から生成する。
【0041】
別の実施形態では、神経皮質スフェロイドを、本明細書で簡単に説明されているように、Pasca他で説明されているこの50日間プロトコールの改変バージョンに従って、(ヒト)多能性幹細胞(hPSC)から生成する。
【0042】
具体的には、多能性幹細胞コロニーを、ビトロネクチン(例えばGibco #A14700)上で培養する。この細胞コロニーを、10分にわたり37℃で、酵素(例えばディスパーゼ(例えばGibco #17105-041))を使用して回収する。次いで、インタクトなコロニーを、ロック阻害剤(例えばCalbiochem #688001の10μM Y-27632)、AMP-キナーゼ阻害剤(例えばSigma #P5499の10μM Dorsopmorphin)、及びTGF-β阻害剤(例えばSigma #S4317の10μM SB-431542)を含むSpheroid Starter培地の適切な量(例えば200μL)で、個々の低付着性組織培養表面(例えばS-Bio Prime #MS-9096VZのV底96ウェルプレート)に移す。
【0043】
Spheroid Starter培地を、20% ノックアウト血清(Invitrogen #12587-010)、非必須アミノ酸(Invitrogen #11140050)、Glutamax(Invitrogen #35050061)、β-メルカプトエタノール、及び100U/mL ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM/F12(Invitrogen #11320-033)で作製し得る。
【0044】
次いで、ロック阻害剤を含まない同一の培地を次の5日間にわたり使用し、その後、この培地を、Neurobasal-Aベースのスフェロイド培地に交換する。Neurobasal-Aスフェロイド培地は、B-27血清代替物が添加されており且つビタミンA(Invitrogen #12587)、Glutamax(Invitrogen
#35050061)、及び100U/mL ペニシリン/ストレプトマイシンが添加されていないNeurobasal-A培地(Invitrogen #10888022)である。
【0045】
7~25日目から、この培地に、20ng/ml FGF-2(R&D systems #233-FB-25/CF)及び10ng/ml EGF(R&D systems #236-EG-200)を添加する。
【0046】
スフェロイドを、培地の半分を毎日交換しつつ、25日目まで96ウェルプレート中で
培養する。25日目に、スフェロイドを、1つのウェル当たり8~10個のスフェロイドの密度で超低付着性組成培養表面(例えばCorning #CLS3471の6ウェルプレート)に移し、プロトコールの残り全体を通してこのように培養する。
【0047】
また、この時点から、このNeurobasal-Aスフェロイド培地に、1% Geltrex(Invitrogen #A15696-01)を添加した。
Neurobasal-Aスフェロイド培地に、20ng/ml BDNF(R&D systems #248-BD)及び20ng/ml NT-3(R&D systems #267-N)を補充することにより、27~41日目の間に神経分化を誘発し得る。17~41日目の間で一日おきに、培地の半分の交換を実施し得る。
【0048】
オリゴ皮質スフェロイド(OCS)の生成
オリゴ皮質スフェロイドを生成するために、NCSを、規定されたオリゴデンドロサイト系統の増殖因子及び/ホルモンに、定められたタイミングで曝露させて、神経皮質スフェロイド内の天然のオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)集団の増殖、生存、及び/又は拡大を促進する。
【0049】
一実施形態では、50日目に開始して、10日にわたり交換する一日おきの培地に、10ng/mL 血小板由来増殖因子-AA(PDGF-AA、例えばR&D Systems #221-AA-050のもの)及び10ng/mL インスリン様増殖因子-1(IGF-1、例えばR&D Systems #291-G1-200のもの)を添加して、オリゴ皮質スフェロイドを生成する。
【0050】
そうして生成されたOCSは、軸索のミエリン形成を生じ得るミエリン形成オリゴデンドロサイト(ODC)に分化し得るオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)を含む。
そうして生成されたOCSを、追加の増殖因子及び/又はホルモンにさらに曝露させて、オリゴデンドライト分割を誘発し得る。
【0051】
一実施形態では、60日目に、10日にわたり交換する一日おきの培地に、40ng/mL 3,3’,5-トリヨードチロニン(T3、Sigma #ST2877)を添加する。任意選択で、この期間中に低分子も補充し得る。例えば、T3の代わりに、4μM
ケトコナゾール及び2μM クレマスチンを添加し得る。さらに、T3に加えて、GSK2656157を添加してもよい。
【0052】
例示的用途
本主題のシステムの検証において、本出願人は、遺伝病のモデル化及び前臨床薬物のスクリーニングでの用途を実証している。本主題のオリゴ皮質スフェロイドを使用して、白質ジストロフィーでの脱髄の理解から多発性硬化症を処置するための再ミエリン形成戦略の開発までの多くの未解決の問題を研究し得た。このシステムを利用して、様々なニューロンクラスでのミエリンの発生、ミエリンの圧縮、結節及び節間部のサイズの調節、並びに単一ニューロン及び全スフェロイドの電気生理の基本的な問題も探求し得る。
【0053】
オリゴデンドロサイトの局部的な集団は、胚形成中の別々の時期に生じ、遊走し、成熟する。哺乳動物では、腹部由来のオリゴデンドロサイトは、生じる最初の集団の一つであるが、皮質の適切なミエリン形成には必要とされず、大部分は後の皮質由来のオリゴデンドロサイトに置き換えられる。非ヒト霊長類と比較しても、ヒトでのミエリン形成のタイミング及び持続期間は局部的に異なる。ヒトのオリゴ皮質スフェロイドは、ミエリンの発生のこれらの及び他の独自のヒトでの側面を探求するのに利用可能なシステムを提供する。
【実施例0054】
実施例1 オリゴ皮質スフェロイドの生成
ここで説明されているのは、規定されたオリゴデンドロサイト系統の増殖因子及びホルモンへの定められたタイミングでの曝露による、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)及びミエリン形成オリゴデンドロサイトを含む(ヒト)多能性幹細胞(hPSC)由来の皮質スフェロイドを生成する例示的なプロトコールである。
【0055】
まず、本出願人は、50日間プロトコール(参照により本明細書に組み込まれるPasca他,Functional cortical neurons and astrocytes from human pluripotent stem cells
in 3D culture.Nat Methods 12,671-678(2015))の最適化バージョンを使用して、「神経皮質スフェロイド」を生成してパターン形成した。実施例7におけるバリエーションを参照されたい。
【0056】
初期の神経皮質のパターン形成の後、本出願人は、天然OPC集団の拡大を駆動するための血小板由来の増殖因子-AA(PDGF-AA)及びインスリン様増殖因子-1(IGF-1)による処理(50~60日目=「9週目」)、続いてオリゴデンドロサイト分化を誘発するための甲状腺ホルモン(T3)による処理、並びに最終的なミエリン形成(60~70日目=「10週目」)によって、「オリゴ皮質スフェロイド」を生成した(図1A)。
【0057】
PDGF-AA及びIGF-1は、OPCの増殖及び生存を促進する必須の発生マイトジェン(developmental mitogen)であり、T3は、インビボでOPCからのオリゴデンドロサイトの生成を調節して誘発する。処理期間を経験的に決定したが、受胎後10週目及び14週目それぞれでのヒト胎児脳でのOPC及びオリゴデンドロサイトの初期の特定を反映する。
【0058】
系統間の変動性を評価して、このプロトコールがロバストであることを実証するために、本出願人は、ヒト胚性幹細胞系統H7(女性)を使用して、このプロコトルを最初に開発した。次いで、本出願人は、下記の2つの追加の独立したhPSC系統を使用して、重要な実験を再現した:胚性幹細胞系統H9(女性)及びインハウス由来の人工多能性幹細胞(iPSC)系統CWRU191(男性)。
【0059】
実施例2 OPC及びオリゴデンドロサイトの誘導
8週目での神経皮質のパターン形成の終了までに、神経皮質スフェロイドは、2種の標準的なOPC転写因子であるOLIG2及びSOX10の最小限の免疫染色により証明されるように、オリゴデンドロサイト系統中に細胞をほとんど含んでいなかった(図6B~6C)。しかしながら、10日にわたる、PDGF-AA及びIGF-1による、パターン形成されたスフェロイドのその後の処理により、同年齢の未処理の神経皮質スフェロイドと比較して、オリゴ皮質スフェロイド内のOPCの数が実質的に増加した(図6C~6E)。
【0060】
14週目までに、神経皮質スフェロイドは、ニューロン及びアストロサイトのロバストな集団を生成していたが、オリゴデンドロサイトは生成しておらず(図1B)、オリゴ皮質スフェロイド(50~60日目からPDGF-AA/IGF-1で処理し、60~70日目からT3で処理した)は、最も豊富なオリゴデンドロサイト膜タンパク質であるプロテオリピドタンパク質1(PLP1)、及びCNSにおけるオリゴデンドロサイト中で特異的に発現される転写因子であるMYRFに関する免疫蛍光により実証されるように、3種全てのhPSC系統にわたりオリゴデンドロサイトのロバストな集団を再現性よく生成した(図1C図7A~7C)。
【0061】
重要なことに、オリゴ皮質スフェロイドは、MYRF陽性オリゴデンドロサイトの産生において、下記の系統間の及びスフェロイド間の低い変動性を示した:H7、H9、及びCWRU191に由来するオリゴ皮質スフェロイドそれぞれに関して総細胞の21.59%±4.9%、20.53%±3.9%、及び18.4%±2.2%(定量の概略に関しては図7Cを参照されたい)、1つの系統当たりn=5のスフェロイド(図1D)。
【0062】
加えて、オリゴデンドロサイト系統のロバストな誘導は、PDGF-AA/IGF-1及びT3の両方による連続的処理に依存しており、なぜならば、MYRF陽性オリゴデンドロサイトは、いずれかの個別の処理によってはほとんど産生されなかったからである(図1D)。
【0063】
そのため、神経皮質のパターン形成により、オリゴデンドロ生成の構造的枠組み及び細胞的枠組みが確立されるが、この実験では、OPC及びオリゴデンドロサイトの再現性のある誘導には、PDGF-AA、IGF-1、及びT3が必要である。
【0064】
このアプローチの再現性をさらに検証するために、このプロトコールを、独立した細胞系統、ヒト胚性幹細胞系統RUES1(男性)、並びに別個の人員及び試薬を使用して、独立した研究室で再現し、MYRF陽性細胞は、RUES由来のオリゴ皮質スフェロイド中の細胞の18.36%±3.37%を構成していた(図1D図7A~7B)。
【0065】
最後に、バルクスフェロイドのRNA配列決定を使用して、PDGF-AA/IGF-1処理及びT3処理が、同年齢の神経皮質スフェロイドと比較して、オリゴ皮質スフェロイド中でのニューロン遺伝子、アストロサイト遺伝子、及びオリゴデンドロサイト遺伝子の転写にどの程度影響を及ぼすかを包括的に評価した。各細胞型の100種(brainrnaseq.orgからのマウス転写データを使用して定義されたもの)の最も特異的なmRNA転写産物の発現に関する14週目のスフェロイドの分析から、ニューロン遺伝子セットでは有意な変化が実証されなかったが、グリア遺伝性セット(特に、オリゴデンドロサイト系統のもの)の有意な上方制御が示された(図1E及び1F)。これらのデータから、オリゴ皮質スフェロイドを生成する方法は、包括的なオリゴデンドロサイト転写プログラムを活性化するが、スフェロイド中の他の細胞型(例えばニューロン)の発現プログラムを明白には変更しないことが実証される。
【0066】
実施例3 オリゴデンドロサイトの成熟及びミエリン形成
初期のオリゴ皮質のパターン形成の後、数週間から数ヶ月にわたり、スフェロイドを基本培地で維持し得る。本出願人は、20週目及び30週目に、ニューロンの多様性及びオリゴデンドロサイトの成熟を分析した(図2A)。20週目のスフェロイドは、比較的未熟に見える。MYRF陽性オリゴデンドロサイトに加えて、このスフェロイドは、CTIP2で標識された、初期に生じた深層ニューロンの大きな集団、及びSATB2で標識された、後期に生じた表層ニューロンの別のより小さい集団を含んでおり、MYRF陽性オリゴデンドロサイトが全体的に分布していた(図2B図8A)。しかしながら、ニューロンの集団は、深層を通る比較的若いSATB2細胞の継続的な遊走と一致する実質的な重複を示した。
【0067】
オリゴデンドロサイトが成熟するにつれて、隣接する軸索を追跡してそのミエリン形成を生じる細胞突起を伸ばす。PLP1発現は、早くも14週間の培養でロバストであり、PLP1免疫蛍光は、20週目までは別個の突起として解像されなかった(図2C図8A)。さらに、これらの突起のサブセットは、初期のミエリン形成のマーカーであるミエリン塩基性タンパク質(MBP、図2D)を発現し始めており、このことは、オリゴデンドロサイトの突起がニューロン軸索と会合していたことを示唆する。電子顕微鏡観察(E
M)から、20週目には、圧縮されていないミエリンの複数の層を有するヒト軸索の同心円状の(組織化されていないことが多い)巻き付きが明らかになった(図2E~2G、図8B)。この初期のオリゴ皮質スフェロイドミエリンが組織化されていないことは、インビトロでの培養環境に部分的に起因し得るが、ヒト及びニワトリの両方のインビボでの胎児ミエリン形成の最初期段階に対する顕著な類似性を示す。重要なことに、T3処理及び広範なオリゴデンドロサイト成熟にもかかわらず、20週目のオリゴ皮質スフェロイドはまた、SOX10陽性、MRYF陰性のOPCのプールも維持した(図8C)。
【0068】
30週目に、スフェロイドは、別個の皮質層に組織化されているCTIP2で標識されたニューロン集団及びSATB2で標識されたニューロン集団を含んでおり、SATB2集団は大きく、CTRP2層はより小さかった。MYRF陽性オリゴデンドロサイトは、これらの層全体にわたり及びCTIP2に隣接する別個の層としての両方で存在した(図2H)。加えて、オリゴデンドロサイトの突起は、神経フィラメントを発現するニューロン軸索と共局在化する別個のPLP1陽性のトラクトとしてさらに解像されていた(図2I~2J)。30週目のEMから、コンパクトなミエリンに囲まれたニューロン軸索が同定されており(図2K)、3D再構築による一連のブロック面の撮像から、軸索を囲むミエリンの長手方向の巻き付きが実証された(図2L)。しかしながら、30週目の時点で、本出願人は、おそらくスフェロイドニューロンの未熟さの継続及び最小限のコヒーレントな電気的活動に部分的に起因して、Ranvierの結節等のさらなる構造的組織化の決定的な証拠を同定し得なかった(現在の全てのスフェロイド技術及びオルガノイド技術により指摘されている問題)。
【0069】
まとめると、これらの結果から、ヒトオリゴデンドロサイトによるヒトニューロンの初期のミエリン形成は、わずか20週間でオリゴ皮質スフェロイドにおいて起こり得、30週間までに、ミエリンの成熟、精製、及び圧縮が起こることが実証される。このインビトロでのタイミングは、子宮内でのヒト胎児発生の第三期の後半におけるミエリンの出現、並びに齧歯動物CNSへの移植後のヒトOPCの成熟及びミエリン形成のタイミングと類似しており、このことは、齧歯動物で提案されているようなヒトオリゴデンドロサイトの成熟のための細胞固有の発生時計の存在の可能性を示唆する。
【0070】
実施例4 インビボでの皮質発生との関連性
本出願人は、次に、本主題のオリゴ皮質スフェロイド内での発生及び細胞の組織化を評価して、インビボでのヒト皮質発生との関連性を実証した。8週目までに、スフェロイドは、分裂するネスチン陽性の神経前駆細胞及びSOX2陽性の神経前駆細胞のロバストな集団を含んでおり、SOX2陽性の脳室様帯及びTBR2陽性の外側脳室下帯に組織化された(図3A及び図3B)。全てのSOX2集団が脳室様空隙を囲んでおらず、多くはスフェロイドの外表面に局在化していたが、SOX2陽性の胚中心の配置は、皮質中の脳室帯を連想させた。9週目に、本出願人は、これらの胚中心の増殖中のSox2陽性細胞を、チミジン類似体5-ブロモ-2’-デオキシウリジン(BrdU)で標識し(図3C及び図9A)、これらの発生軌跡を追跡した。14週目までに、BrdU標識細胞は、胚中心から離れて遊走しており、SOX2陽性の胚帯とは異なる集団を形成した(図3D~3E、図9A)。この時点で、オリゴ皮質スフェロイドのみがMYRF陽性のOPCを含んでおり、この一部はMYRF/BrdU二重陽性であった(図3E及び図9A)。BrdUと共局在化したMYRFは、これらの細胞が、オリゴ皮質スフェロイドの前駆細胞帯で見出されるBrdUで標識されたSOX2陽性前駆細胞に由来したことの強力な証拠である。
【0071】
胚中心から離れるBrdUパルス前駆細胞(BrdU-pulsed progenitor)の遊走は、オリゴ皮質スフェロイドが、増殖して分化する一連のオリゴデンドロサイトを含むことを示唆する。グリア成熟の細胞組成及びスペクトルの包括的な多様性を
評価するために、本出願人は、全ての集団が表されるであろうPDGF-AA/IGF-1及びT3処理直後の初期の時点である12週目のオリゴ皮質スフェロイドに対して、単一細胞RNA-seqを実施した。細胞クラスタリングにより、グリア集団とニューロン集団とが大まかに区別された。グリアクラスターは、初期前駆細胞(ビメンチン、SOX2、及びネスチンにより標識されている)、OPC(SOX6により標識されている)、並びに成熟中のオリゴデンドロサイト(PLP1及びオリゴデンドロサイトミエリン糖タンパク質により標識されている)を含んでおり、このクラスター全体を通して増殖マーカーが発現しており、成熟マーカーが段階的に明確な亜集団を定義した(図10A)。この単一細胞分析により、ヒト胎児皮質からの単一細胞トランスクリプトームデータと同様に、発生の複数の段階でのオリゴデンドロサイトの明確な集団がオリゴ皮質スフェロイド中に共存することが実証される(図10A)。このことは、オリゴ皮質スフェロイドが、ヒトグリアの発生のこれらのほとんどアクセスできない段階を調べるための手段を提供する可能性があることを示唆する。
【0072】
実施例5 スフェロイドでのミエリン形成促進薬の試験
インビトロ系でヒト軸索のミエリン形成を生じ得るヒトオリゴデンドロサイトを生成する能力は、ヒトミエリンの発生、疾患、及び治療法を探求するための新たな機会を提供する。本出願人は、本主題のヒトオリゴ皮質スフェロイドが、既に同定されているミエリン形成促進薬の既知の効果を再現するかどうかを最初に試験した。
【0073】
FDAにより承認されている2種の薬物であるクレマスチン及びケトコナゾールが、インビトロ及びインビボで齧歯動物オリゴデンドロサイトの生成及びミエリン形成の強力な刺激剤であることが分かっている。さらに、クレマスチンは、多発性硬化症患者の第2相の再利用臨床試験において、再ミエリン形成を増強することが最近報告された。ヒトオリゴデンドロサイト生成に対するこれらのミエリン形成促進薬の効果を評価するために、オリゴ皮質スフェロイドを、50~60日目からPDGF-AA/IGF-1で処理し、次いで、60~70日目からDMSO、T3、クレマスチン、又はケトコナゾールのいずれかで処理し、続いて、4週にわたり基本培地に戻した。14週目でのMYRF陽性オリゴデンドロサイトの定量により、クレマスチン(18.7%±2.94%)及びケトコナゾール(27.61%±5.941%)はそれぞれ、ビヒクル(DMSO)コントロール(6.345%±1.46%)と比較して、T3(21.59%±4.9%)と同程度までオリゴデンドロサイトの産生を増強することが明らかになった(図4A~4E)。注目すべきことに、EMで調べた場合には、ケトコナゾールで処理したスフェロイドはまた、培養14週目までにミエリン形成も示しており、T3で処理したスフェロイドと比べて2ヶ月早かった(図4F~4G)。これらの結果から、クレマスチン及びケトコナゾールが、ヒトオリゴデンドロ生成及び成熟を増強して促進することが実証され、且つオリゴ皮質スフェロイドが、ヒト臨床試験前に候補のミエリン治療薬を評価するための生理学的な及び種に関して妥当な前臨床モデルを提供することが実証される。
【0074】
実施例6 スフェロイドはミエリン障害の病理を再現する
オリゴ皮質スフェロイドは、ヒトミエリン形成とミエリン疾患につながる病理学的プロセスとのこれまでアクセスできなかった段階を研究するための、前例のない組織様の最小限に操作されたシステムを提供する。本出願人は、本主題のシステムが、既知の細胞病理及び機能障害を再現し得るかどうかを試験するために、一遺伝子性の白質ジストロフィーであるペリツェウス・メルツバッヘル病(PMD[MIM 312080])を調べた。
【0075】
PMDは、ミエリン産生の欠損を有する希なX連鎖病である。軽度の運動遅滞及び痙縮から幼児期の死亡を伴う重度の筋緊張低下症までの範囲の重症度のスペクトルを示す患者では、原因遺伝子PLP1での数百の変異が同定されている。
【0076】
本出願人は、二次元(2D)培養を使用して、罹患している男性患者のパネルからPMD iPSC由来のオリゴデンドロサイトを既に生成しており、様々な変異を有する個体での明確な細胞表現型及び収束した細胞表現型の両方を実証した。ここで、本出願人は、PMD変異が異なる3種のiPSC系統(PLP1遺伝子座全体の欠失、PLP1遺伝子座全体の重複、及びPLP1での点変異(c.254T>G))からオリゴ皮質スフェロイドを生成した。表現型的には、これらの患者は、軽度(欠失)、中程度(重複)、及び重度(点変異)の影響を受けた。起源の性別及び細胞型の両方を制御するために、本出願人は、MYRF(18.4%±2.20%)及びPLP1(図5A~5B)を、既に説明されているコントロール系統H7、H9、及びCWRU191と同程度まで発現する健康なコントロール男性iPSC系統由来のインハウスのCWRU198からスフェロイドを同時に生成した。
【0077】
オリゴ皮質スフェロイドでは、MYRF陽性オリゴデンドロサイトの豊富さは、疾患の重症度と共に傾いたが、PLP1発現の程度は、遺伝的状態と相関した(図5C~5H)。PLP1欠失系統は、PLP1の予想される非存在にもかかわらず、豊富なMYRF陽性オリゴデンドロサイト(15.14%±1.96%)を産生した(図5C~5D、図5M)。逆に、重複系統は、CWRU198(図5F図5M)と比較したMYRF陽性オリゴデンドロサイトの有意な減少(11.84%±2.27%)にもかかわらず、豊富なPLP1シグナルを生じた(図5E)。
【0078】
以前の2D培養では、c.254T>G点変異を有するオリゴデンドロサイトは、小胞体ストレス経路の化学的調節により消散されるPLP1の明確な核周囲保持を示した。オリゴ皮質スフェロイドはこの表現型を再現し、PLP1の率直な核周囲保持(図5G)及びMYRF陽性オリゴデンドロサイトの最も深刻な減少(9.69%±1.82%)が実証された(図5H図5M)。プロテインキナーゼR様小胞体キナーゼ(PERK)の阻害剤であるGSK2656157による、点変異オリゴ皮質スフェロイドのその後の処理により、小胞体から離れてオリゴデンドロサイトの突起へのPLP1の動員が改善され(図5I)、MYRF陽性細胞の割合が有意に増加した(15.04%±1.96%)(図5J図5M)。最後に、オリゴ皮質スフェロイド生成前のiPSCでの野生型配列への点変異のCRISPR補正(図11A~11C)により、オリゴデンドロサイトの突起へのPLP1動員を回復させた(図5K)だけでなく、MYRF陽性オリゴデンドロサイトの割合を健康なコントロールレベルまで増加させ(17.25±3.22%)(図5L~5M)、培養20週間までミエリンの生成を可能にした(図5N)。
【0079】
PMDの遺伝子型と表現型との間の機序的関係は、完全には特徴付けられていない。現在のデータは、過剰な(例えば重複した)PLP1又は異常な/ミスフォールドした(例えばミスセンス変異した)PLP1の蓄積が、ERストレス、細胞死、及び重度の患者の表現型につながるが、PLP1欠失は、より良好な耐性を示し、細胞の豊富さと、本主題のオリゴ皮質スフェロイドでのPLP1発現と間の二分は、この仮説と一致することを示唆する。hPSC由来の脳オルガノイド及び皮質スフェロイドを使用して、神経障害に関与する変異特異的な病理プロセスが詳細に分析されている。本主題のシステムを検証して、これらの努力を多種多様なミエリン疾患に拡張し得、且つオリゴデンドロサイトの誕生、成熟、ミエリン形成、及び死滅の過程にわたり患者特異的な病因の探求を始めることができる。
【0080】
実施例7 種々の方法
多能性幹細胞系統
健康なiPSC(CWRU191;CWRU198)及びPMD iPSCを、インフォームドコンセント及びCase Western Reserve University and University Hospital Institutional
Review Boardの承認の後に、既に生成した。この研究では、承認されたNIH hESC Registryからの2種のヒト胚性幹細胞(hESC)系統(「H7」NIHhESC-10-0061;「H9」NIHhESC-10-0062)も使用した。
【0081】
オリゴ皮質スフェロイド分化
神経皮質スフェロイドを、下記で言及されるバリエーションにより既に説明されているように(参照により本明細書に組み込まれるPasca他,Functional cortical neurons and astrocytes from human
pluripotent stem cells in 3D culture.Nat Methods 12,671-678(2015))、ヒト多能性幹細胞から生成した。
【0082】
神経皮質スフェロイドをパターン形成するために、ビトロネクチン(Gibco #A14700)上で培養した多能性幹細胞コロニーを、10分にわたり37℃でディスパーゼ(Gibco #17105-041)を使用して持ち上げた。インタクトなコロニーを、10μM ロック阻害剤Y-27632(Calbiochem #688001)、10μM Dorsopmorphin(Sigma #P5499)、及び10μM
SB-431542(Sigma #S4317)を含むスフェロイドスターター培地200μLで、個々の低付着性V底96ウェルプレート(S-Bio Prime #MS-9096VZ)に移した。スフェロイドスターター培地は、20% ノックアウト血清(Invitrogen #12587-010)、非必須アミノ酸(Invitrogen #11140050)、Glutamax(Invitrogen #35050061)、β-メルカプトエタノール、及び100U/mL ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM/F12(Invitrogen #11320-033)であった。ロック阻害剤を含まない同一の培地を次の5日間にわたり使用し、その後、この培地を、Neurobasal-Aベースのスフェロイド培地に交換した。Neurobasal-Aスフェロイド培地は、B-27血清代替物が添加されており且つビタミンA(Invitrogen #12587)、Glutamax(Invitrogen #35050061)、及び100U/mL ペニシリン/ストレプトマイシンが添加されていないNeurobasal-A培地(Invitrogen #10888022)であった。7~25日目から、この培地に、20ng/ml FGF-2(R&D systems #233-FB-25/CF)及び10ng/ml EGF(R&D systems #236-EG-200)を添加した。スフェロイドを、培地の半分を毎日交換しつつ、25日目まで96ウェルプレート中で培養した。25日目に、スフェロイドを、1つのウェル当たり8~10個のスフェロイドの密度で、超低付着性6ウェルプレート(Corning #CLS3471)に移し、プロトコールの残り全体を通してこのように培養した。また、この時点から、このNeurobasal-Aスフェロイド培地に、1% Geltrex(Invitrogen #A15696-01)を添加した。Neurobasal-Aスフェロイド培地に、20ng/ml BDNF(R&D systems #248-BD)及び20ng/ml NT-3(R&D systems #267-N)を補充することにより、27~41日目の間に神経分化を誘発した。17~41日目の間で一日おきに、培地の半分の交換を実施した。
【0083】
オリゴ皮質スフェロイドを生成するために、50日目に開始して、10日にわたり交換する一日おきの培地に、10ng/mL 血小板由来増殖因子-AA(PDGF-AA、R&D Systems #221-AA-050)及び10ng/mL インスリン様増殖因子-1(IGF-1、R&D Systems #291-G1-200)を添加した。次に、60日目に、10日にわたり交換する一日おきの培地に、40ng/mL 3,3’,5-トリヨードチロニン(T3、Sigma #ST2877)を添加した。
使用した場合には、この期間中に低分子を補充した。T3の代わりに、4μM ケトコナゾール及び2μM クレマスチンを添加した。T3に加えて、GSK2656157を添加した。
【0084】
70日目以降に、実験の完了まで一日おきに培地を交換して、Neurobasal-Aスフェロイド培地でスフェロイドを成熟させて維持した。
独立した検証
承認されたNIH hESC Registryからの1種のhESC系統「RUES1」(NIHhESC-09-0012)を使用した。RUES1を、mTeSR1培地(Stemcell Technologies #85850)中においてマトリゲル上で培養し、StemPro Accutase(Thermofisher #A1110501)を使用して持ち上げた。オリゴ皮質スフェロイド分化を、分化プロトコールの1~7日目にKSRの代わりにN2サプリメント(Thermofisher #17502048)及び25mg/mL ヒトインスリン溶液(Sigma #I9278)を使用することを除いて、上記で説明したように実施した。
【0085】
低分子
ケトコナゾール(Sigma #K1003)の4mMストック溶液、フマル酸クレマスチン(Sigma #SML0445)の2mMストック溶液、及びGSK2656157(EMD Millipore #5046510001)の10mMストック溶液を調製し、分注し、-20℃で保存した。低分子を、20分にわたり37℃まで温めた後、予め温めた培地に添加した。凍結したアリコートを、廃棄する前に2回を超えないで解凍した。
【0086】
BrdU標識
スフェロイド中の分裂細胞を標識するために、58日目及び60日目に、3μg/mLの最終濃度で、培養培地にBrdUを添加した。9週目のサンプルを、60日目のBrdU投与の4時間後に採取した。系統追跡実験のために、BrdUで標識されたスフェロイドを14週目に採取し、免疫組織化学のために処理した。
【0087】
PLP1の遺伝子編集
iPSCにおけるPLP1点変異(c.254T>G)のCRISPR-Cas9編集を、この変異を重複するガイドRNA(配列:CCAGCAGGCGGGCCCCATAAAGG)と、この変異を囲む25個のヌクレオチドの相同性アームを有する一本鎖オリゴヌクレオチドとを使用して、セントルイスのワシントン大学にてGenome Engineering and iPSC Centerにより実施した。受領時に、変異及び補正遺伝子座を再配列させ、両方の系統を核型にして(karyotyped)、編集プロセス中に大きな遺伝子型異常が生じていないことを確実にした(細胞系統遺伝学)。
【0088】
免疫細胞化学
免疫組織化学のためのスフェロイドを、45分にわたり4%氷冷パラホルムアルデヒドで最初に固定し、PBSで3回洗浄し、一晩30%スクロースで平衡化した。このスフェロイドをOCTに埋め込み、10μmで薄片化した。
【0089】
免疫組織化学を、既に説明されているように実施した(Najm他,Nat Methods 8,957-962(2011))。簡潔に説明すると、切片をPBSで3回洗浄し、次いで、0.1% Triton X-100及び0.25% 正常ロバ血清を含むPBSで30分にわたりブロックした。次いで、この切片を、ブロッキング溶液中の一次抗体を使用して、4℃で一晩インキュベートした。以下の一次抗体を使用した:ラット抗PLP1(1:500、AA3、Wendy Macklinからの寄贈);ウサギ抗
MYRF(1:1000、Dr.Michael Wegnerにより提供された);ヤギ抗SOX10(1:250 R&D Systems AF 2864);ウサギ抗OLIG2(1:250、Millipore AB9610;マウス抗pan-軸索神経フィラメント(1:1000,Covance #SMI311);マウス抗MBP(1:200、Covance #Smi99)、マウス抗pan-ニューロン神経フィラメント(NF、1:1000、Covance #SMI312);ウサギ抗GFAP(1:1000、Dako #Z0334);マウス抗SATB2(1:250、Abcam、#ab51520);ラット抗CTIP2(1:400、Abcam #ab18465);ヤギ抗SOX2(1:250 R&D Systems、#AF2018);ウサギ抗TBR2(1:250、Abcam、ab23345);マウス抗Ki67(1:250、Millipore MAB4190);マウス抗ネスチン(1:1000 Millipore、MAB5326);マウス抗BrdU(1:1000、Millipore、MAB3510);ニワトリ抗ビメンチン(1:1000 Abcam、ab24525);DAPI(1μg/ml、Sigma #D8417)。
【0090】
次いで、切片をPBSで洗浄し、2時間にわたり二次抗体でインキュベートした。全ての二次抗体は、1:500の希釈で使用したLifeTechnologies AlexaFluor共役二次抗体であった。
【0091】
PLP1の免疫組織化学の場合には、ブロッキング工程の前に、10% Triton
X-100を含むPBSでの20分間の洗浄を最初に実施した。MBPの免疫組織化学の場合には、固定工程後に20分間氷冷アセトンを使用した。抗原回収後にBrdU免疫組織化学を実施し、これは、100mM クエン酸ナトリウムバッファーを沸騰させた密封コプリンジャーにスライドを入れて、1時間かけて室温にすることを伴った。
【0092】
スフェロイド切片を、Case Western Reserve School of Medicine Imaging CoreでLeica DMi8蛍光顕微鏡又はLeica Sp8共焦点顕微鏡のいずれかを使用して撮像した。MYRF陽性核を計数するために、スフェロイド毎に4つの20×フィールドを撮像した。スフェロイドの上部及び下部からの2つのフィールドと、スフェロイドの中心領域の端からの2つのフィールドとを定量した(概要に関して図6Cを参照されたい)。DAPI陽性細胞及びMYRF陽性細胞の総数を、Adobe Photoshop又はNIH ImageJで手動にて計数した。系統毎に及び処理条件毎に3~5個のスフェロイドを分析し、Graphpad Prismを使用してt検定を実施して、系統間の又は処理間の統計的有意性を評価した。
【0093】
電子顕微鏡観察
スフェロイドを、既に説明されているように固定して処理した(Najm他,Nat Methods 8,957-962(2011))。サンプルを、4%パラホルムアルデヒド(EMS)、2%グルタルアルデヒド(EMS)、及び0.1Mカコジル酸Na(EMS)を含む固定溶液中で、室温にて1時間にわたり固定した。次いで、サンプルをオスミウム酸染色し(osmicated)、酢酸ウラニルで染色し、EMbed 812(EMS)に埋め込んだ。各スフェロイドサンプルからの極薄切片(120nm)を、Concentric(挿入可能)高エネルギー電子検出器を備えた超高分解能(XHR)電界放射型走査電子顕微鏡を使用して、FEI Helios NANOLAB(商標)660 FIBSEMで観察し、全ての画像を、高倍率(15000~35000×)にて4Kv及び0.2電流ランディング電圧を使用して撮影した。
【0094】
一連のブロック面の撮像及び3D再構成
エポキシに埋め込まれたスフェロイドを整え、シリコンウエハ上にマウントし、導電性
銀塗料で覆った。スパッタコーティング(Cressington Scientific Instruments)を使用して、追加のイリジウム層約1nmを堆積させ、サンプルを、撮像のためにHelios Nanolab 660i二光束顕微鏡(FEI
Company)にロードした。ユーセントリック高さ(傾斜52°)でイオンカラム及びビームコインシデンスを設定した後、電子ビームのために2kV及び40pAの電流ランディングを使用し、次いで、低電流0.23nAを使用する横断面の後のミリングのために、イオンビーム(Ga)支援白金を保護層として堆積させ、余分のブロック材料を、高イオンビーム電流(30kV、6.5nA)を使用して除去した。
【0095】
最終的な表面研磨/ミリングのために、還元イオン電流(reduced ion current)を使用した(30kV、2.8nA)。撮像のために、400pAの電子ビーム電流、HFW 11.84μmでAuto Slice and View G3ソフトウェア(FEI Company)を使用し、6144×4096の解像度、滞在時間6μ秒、ワーキング距離4.04mmでTLD検出器を使用して、154個の切片の画像ストック(ピクセルサイズ:1.97、及びz=50nm)を得た。生画像を、Fuji撮像処理パッケージでアラインさせ、画像の可視化及びミエリン束の3D再構成に、Imaris 9.1ソフトウェア(Bitplane AG)を使用した。
【0096】
バルクRNAの配列決定及び分析
1つの系統当たり4つのスフェロイドを、TriReagent(Zymo Research #R2050-1-200)に採取し、製造業者の指示に従ってRNAを抽出した。Qiagen RNeasy Plus Miniキット(Qiagen,#73404)を使用して、RNAをさらに精製した。イルミナライブラリ(Illumina
library)を調製し、CWRU Genomics Core facilityでHiSeq 2500機器により50bpペアードエンドモードで配列決定した。参照トランスクリプトームを得ることなく、TopHat v2.0.6を使用して、hg19ゲノムに読み取り値をアラインさせた。iGenomes hg19 RefSeq参照からの転写産物の豊富さを、Cufflinks v2.0.2を使用して測定した。FPKMを分位正規化した。ニューロン特異的遺伝子、アストロサイト特異的遺伝子、及びオリゴデンドロサイト特異的遺伝子を、それぞれの細胞での発現(FPKM>1)及び他の2種の系統での非存在により定義した。各リストを、少なくとも1つのスフェロイドサンプルでも検出された倍数変化により、この細胞型に対して最も特異的な100種の遺伝子まで削減した。遺伝子リストの発現の差異を、Graphpad PrismでWilcoxon検定を使用して評価した。
【0097】
単一細胞RNAの配列決定及び分析
10個の独立して生成された12週目のスフェロイドをプールし、既に説明されているように解離させた(Marques他,Science 352,1326-1329(2016))。簡潔に説明すると、スフェロイドを、製造業者の指示に従ってWorthington Papain解離システム(Worthington Biochemical Corp.,Lakewood NJ,カタログ#:LK003150)を使用して解離させた。パパイン溶液を、解離の前に95% O及び5% COで酸素添加した。単一細胞懸濁液の細胞の計数を、Countess Automated Cell Counter(Invitrogen)で実施し、細胞を、1,000個の細胞/μLの最終濃度で単一細胞の捕捉のためにロードした。
【0098】
単一細胞の捕捉、cDNAの合成、cDNAのプレ増幅、及びライブラリの調製を、10×Genomics Chromium Single Cell 3’ Library and Beadキット v2(10×Genomics Inc,Pleasanton CA,カタログ#:120237)を使用して実施した。3,850個の細胞
を回収し、1個の細胞当たり1,870個の遺伝子中央値により、1個の細胞当たり38,611個の読み取り値の深さで配列決定した。バーコード処理及び単一細胞3’遺伝子の計数にCell Ranger Single-Cell Software Suite v2.1.0を使用し、読み取り値をhg19にマッピングした。PCA次元削減及びtSNE分析を、Cell Ranger Single-Cell Software Suite v2.1.0により実施し、10×Genomics Loupe Cell Browser v2.0.0を使用してデータを可視化した。図2A~2Lのデータを、2クラスターの表現数(present number)でK-Meansクラスタリングを使用する10×Genomics Loupe Cell Browser v2.0.0によりクラスタリングして、神経細胞及びグリア/前駆細胞の広範なクラスターを単離した。スフェロイドのクラスタリングを、発生中のヒト皮質からの及びUCSC Cluster Browser(bit.ly/cortexSingleCell)で利用可能な、公的に利用可能な単一細胞データと比較した。図2のオリゴ皮質スフェロイド遺伝子発現クラスターヒートマップを、10×Genomics Loupe Cell Browser v2.0.0を使用して作成し、このヒートマップは、全体としての集団における遺伝子の平均発現と比較して、各細胞での遺伝子発現のLog2Fold変化を表す。発生中のヒト皮質の比較遺伝子発現クラスターヒートマップを、UCSC Cluster Browserから作成した。
【0099】
ライフサイエンス報告の概要
実験計画のさらなる情報は、ライフサイエンス報告の概要で入手可能である。
データの入手可能性
全てのRNA-seqデータは、アクセッション番号GSE110006でGene Expression Omnibus(GEO)データベースに寄託されている(参照により本明細書に組み込まれる)。
【0100】
統計
単一スフェロイドにおけるMYRF陽性オリゴデンドロサイトの割合を定量するために、4つの領域(図7に示す)を撮像し、スフェロイド毎にMYRF細胞の割合を平均化した。図1に示すデータの場合には、5つのスフェロイド(n=5)を、処置群毎に同様に分析した。図4に示すデータの場合には、各群で4つのスフェロイドを分析した(n=4)。図5Mで示されたデータを、系統CWRU198の5つ(n=5)のスフェロイドから得て、且つ各PMD系統から4つのスフェロイドを得た(n=4)。Welchの補正による両側不対t検定を実施して、一度に2つの群を比較した。
【0101】
各条件から5つのスフェロイドを使用して、バルクRNA-seqを実施した。対応のあるノンパラメトリックWilcoxonマッチドペア符号付き順位検定を使用して、統計的有意性を決定した。
【0102】
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本明細書で引用されている全ての参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
【配列表】
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