IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧 ▶ アート金属工業株式会社の特許一覧

特開2024-84866回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法
<>
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図1
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図2
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図3
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図4
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図5
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図6
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図7
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図8
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図9
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図10
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図11
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図12
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図13
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図14
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図15
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図15A
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図16
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図17
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図18
  • 特開-回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084866
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20240619BHJP
   H02K 1/20 20060101ALI20240619BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240619BHJP
   H02K 15/14 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
H02K1/18 Z
H02K1/18 E
H02K1/20 Z
H02K15/02 D
H02K15/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050118
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】390008822
【氏名又は名称】アート金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 慎也
(72)【発明者】
【氏名】池田 将起
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601CC01
5H601CC11
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD33
5H601EE13
5H601GA02
5H601GA22
5H601GA37
5H601GA40
5H601GA50
5H601GB05
5H601GC12
5H601GE02
5H601GE09
5H601GE11
5H601JJ04
5H601KK05
5H601KK26
5H601KK30
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP06
5H615PP28
5H615SS12
5H615SS13
(57)【要約】
【課題】ステータコアの外周面の全体わたってステータコアとステータ支持部との密着性を高める。
【解決手段】車両駆動用の回転電機用ステータであって、磁性体である第1金属材料により形成されるステータコアと、ステータコアの外周面の少なくとも一部に形成され、非磁性体である第2金属材料を含む接合層と、ステータコアの外周面に一体的に接合され、第2金属材料により形成されるステータ支持部と、ステータコアは、外周面の軸方向端部における周方向の一部の第1区間において他の第2区間よりも径方向内側に凹みかつ軸方向に延在する凹部を有し、ステータ支持部は、周方向の第2区間においてステータコアの軸方向端面の外周縁部を覆い、かつ、周方向の第1区間において凹部内に延在する、回転電機用ステータが開示される。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両駆動用の回転電機用ステータであって、
磁性体である第1金属材料により形成されるステータコアと、
前記ステータコアの外周面の少なくとも一部に形成され、非磁性体である第2金属材料を含む接合層と、
前記ステータコアの外周面に一体的に接合され、前記第2金属材料により形成されるステータ支持部と、
前記ステータコアは、外周面の軸方向端部における周方向の一部の第1区間において他の第2区間よりも径方向内側に凹みかつ軸方向に延在する凹部を有し、
前記ステータ支持部は、周方向の前記第2区間において前記ステータコアの軸方向端面の外周縁部を覆い、かつ、周方向の前記第1区間において前記凹部内に延在する、回転電機用ステータ。
【請求項2】
前記凹部は、軸方向に開口し、かつ、前記ステータコアの軸方向全長よりも短い範囲にわたり軸方向に延在する、請求項1に記載の回転電機用ステータ。
【請求項3】
前記ステータコアは、軸方向両側で、前記凹部を有し、
前記ステータ支持部は、軸方向両側で、周方向の前記第2区間において前記ステータコアの軸方向端面の外周縁部を覆い、かつ、周方向の前記第1区間において前記凹部内に延在する、請求項1又は2に記載の回転電機用ステータ。
【請求項4】
前記ステータコアの外周面の表面積に対する前記接合層が形成される範囲の密度は、前記ステータコアの外周面の軸方向端部において、前記ステータコアの外周面の軸方向の中央部よりも小さい、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の回転電機用ステータ。
【請求項5】
前記ステータ支持部は、径方向に視て前記ステータコアに重なる範囲内に、冷却水が流れる流路を有する、請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の回転電機用ステータ。
【請求項6】
磁性体である第1金属材料により形成されるステータコアであって、外周面の軸方向端部における周方向の一部の第1区間において他の第2区間よりも径方向内側に凹みかつ軸方向に延在する凹部を有するステータコアを、金型にセットするセット工程と、
前記ステータコアの軸方向端面に軸方向に当接する軸方向両側の治具により前記ステータコアに軸方向の荷重を与えた状態で、前記ステータコアの外周面に接合層を形成するための処理を行う接合層形成工程と、
前記接合層形成工程の後、前記治具により前記ステータコアに軸方向の荷重を与えた前記状態を維持しつつ、前記ステータコアの外周面全体及び軸方向端面の外周縁部を覆う態様で、非磁性体である第2金属材料を鋳込む鋳込工程とを含む、回転電機用ステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機用ステータ及び回転電機用ステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステータコアをボルトによりケースに固定し、径方向でケースとステータコアとの間に隙間を形成し、当該隙間に、冷却用の油が流れるパイプを配置する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-158400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術では、ステータコアをケースに固定するためにボルトを用いるので、ステータコアとケースとの間の空気層が形成されやすい。このため、ケースを介してステータコアを冷却する場合に、ステータコアとケースとの間の空気層に起因して、ステータコアからケースへの熱の移動が妨げられ、伝熱性が良好でないという問題が生じる。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、ステータコアの外周面の全体わたってステータコアとステータ支持部との密着性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、車両駆動用の回転電機用ステータであって、
磁性体である第1金属材料により形成されるステータコアと、
前記ステータコアの外周面の少なくとも一部に形成され、非磁性体である第2金属材料を含む接合層と、
前記ステータコアの外周面に一体的に接合され、前記第2金属材料により形成されるステータ支持部と、
前記ステータコアは、外周面の軸方向端部における周方向の一部の第1区間において他の第2区間よりも径方向内側に凹みかつ軸方向に延在する凹部を有し、
前記ステータ支持部は、周方向の前記第2区間において前記ステータコアの軸方向端面の外周縁部を覆い、かつ、周方向の前記第1区間において前記凹部内に延在する、回転電機用ステータが提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、ステータコアの外周面の全体わたってステータコアとステータ支持部との密着性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施例によるモータ1の断面構造を概略的に示す断面図である。
図2図1のQ1部の拡大図である。
図3】一体化された状態のステータ支持部とステータコアを示す斜視図である。
図4】単品状態のステータコアを示す斜視図である。
図5】ステータコアの凹部の拡大図である。
図6】凹部を有さない周方向位置(第2区間内)でのステータコアの断面図である。
図7】凹部を有する周方向位置(第1区間内)でのステータコアの断面図である。
図8】一体化された状態のステータ支持部とステータコアの一部であって、凹部を有する部分を軸方向に視た平面図である。
図9】ステータ支持部とステータコアとの接合部の拡大図である。
図10図9のQ3部の模式図である。
図11】接合層を設けない場合の模式図である。
図12】ステータの製造方法の流れを示す概略フローチャートである。
図13】加圧治具をセットした状態を概略的に示す正面図である。
図14】アルミナイジング処理中の状態を概略的に示す正面図である。
図15】アルミナイジング処理中の状態を概略的に示す断面図である。
図15A図15のQ4部の拡大図である。
図16】鋳込工程中の状態を概略的に示す断面図である。
図17】中子の一例を示す斜視図である。
図18図16のQ5部の拡大図である。
図19】ステータコアとステータ支持部とが一体化した組立体を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。
【0010】
図1は、一実施例によるモータ1の断面構造を概略的に示す断面図である。
【0011】
図1には、モータ1の回転軸12が図示されている。以下の説明において、軸方向とは、モータ1の回転軸(回転中心)12が延在する方向を指し、径方向とは、回転軸12を中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、回転軸12から離れる側を指し、径方向内側とは、回転軸12に向かう側を指す。また、周方向とは、回転軸12まわりの回転方向に対応する。
【0012】
モータ1は、例えばハイブリッド車両や電気自動車で使用される車両駆動用のモータであってよい。ただし、モータ1は、他の任意の用途に使用されるものであってもよい。
【0013】
モータ1は、インナーロータ型であり、ステータ21がロータ30の径方向外側を囲繞するように設けられる。ステータ21は、ステータコア22の径方向外側がステータ支持部10に接合される。ステータ支持部10の構成及びステータコア22とステータ支持部10との接合方法については後述する。
【0014】
ステータ21は、ステータコア22と、ステータコイル29とを含む。
【0015】
ステータコア22は、鉄を主成分とする材料(第1金属材料の一例)により形成される。例えば、ステータコア22は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなるが、変形例では、ステータコア22は、磁性粉末が圧縮して固められた圧粉体により形成されてもよい。なお、ステータコア22は、周方向で分割される分割コアにより形成されてもよいし、周方向で分割されない形態であってもよい。
【0016】
ステータコイル29は、ステータコア22に巻装される。ステータコイル29は、例えば、U相コイル、V相コイル、及びW相コイルを含む。ステータコイル29は、ステータコア22の軸方向両側から突出するコイルエンド29A、29Bを有する。ステータコイル29は、セグメントコイルの形態のコイル片(図示せず)をステータコア22に組み付けることでステータコア22に巻装されてもよい。なお、セグメントコイルとは、各相のコイルを、組み付けやすい単位(例えば2つのスロットに挿入される単位)で分割した形態である。コイル片は、例えば、断面略矩形の線状導体(平角線)を、絶縁被膜(図示せず)で被覆してなる。線状導体は、銅により形成されるが、変形例では、線状導体は、鉄のような他の導体材料により形成されてもよい。
【0017】
ロータ30は、ステータ21の径方向内側に配置される。ロータ30は、ロータコア32と、ロータシャフト34とを備える。ロータコア32は、ロータシャフト34の径方向外側に固定され、ロータシャフト34と一体となって回転する。ロータシャフト34は、ステータ支持部10にベアリング14a、14bを介して回転可能に支持される。なお、ロータシャフト34は、モータ1の回転軸12を画成する。
【0018】
ロータコア32は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板から形成される。ロータコア32の内部には、永久磁石321が挿入される。永久磁石321の数や配列等は任意である。変形例では、ロータコア32は、磁性粉末が圧縮して固められた圧粉体により形成されてもよい。
【0019】
ロータコア32の軸方向の両側には、エンドプレート35A、35Bが取り付けられてよい。エンドプレート35A、35Bは、ロータコア32を支持する支持機能の他、ロータ30のアンバランスの調整機能(切削等されることでアンバランスを無くす機能)を有してよい。
【0020】
ロータシャフト34は、図1に示すように、中空部34Aを有する。中空部34Aは、ロータシャフト34の軸方向の全長にわたり延在する。中空部34Aは、油路として機能してもよい。例えば、中空部34Aには、図1にて矢印R1で示すように、軸方向の一端側から油が供給され、ロータシャフト34の径方向内側の表面を伝って油が流れることで、ロータコア32を径方向内側から冷却できる。また、ロータシャフト34の径方向内側の表面を伝う油は、ロータシャフト34の両端部に形成される油穴341、342を通って径方向外側へと噴出され(矢印R5、R6)、コイルエンド29A、29Bの冷却に供されてもよい。
【0021】
なお、図1では、特定の構造のモータ1が示されるが、モータ1の構造は、ロータコア32がステータ支持部10により支持されている限り、任意である。従って、例えば、ロータシャフト34は、中空部34Aを有さなくてもよいし、中空部34Aよりも有意に内径の小さい中空部を有してもよい。また、図1では、特定の冷却方法が開示されているが、モータ1の冷却方法は任意である。従って、例えば、中空部34A内に挿入される油導入管が設けられてもよいし、ステータ支持部10内の油路から径方向外側からコイルエンド29A、29Bに向けて油が滴下されてもよい。
【0022】
図2は、ステータ支持部10の一例の説明図であり、図1のQ1部の拡大図である。
【0023】
ステータ支持部10は、アルミを主成分とする材料(第2金属材料の一例)により形成される。例えば、ステータ支持部10は、後述のように冷却水が通る冷却水路95を形成する関係上、好ましくは、耐腐食性が良好なアルミ合金により形成される。アルミ合金としては、例えば、Al-Si系合金や、Al-Mg系合金、Al-Mg-Si系合金等、任意である。
【0024】
ステータ支持部10は、ケース油路35及び冷却水路95を形成する中空部(空洞)を有する構造である。かかる中空部を有するステータ支持部10は、一ピースの部材であり、鋳造で形成されてもよいし、3Dプリント技術を利用して形成されてもよい。
【0025】
ステータ支持部10は、径方向でステータコア22に接する態様でステータコア22を径方向内側に保持する。すなわち、ステータ支持部10は、ステータコア22の外周面222(径方向外側の表面)を隙間なく覆う態様で、ステータコア22を保持する。このようにして、ステータ支持部10は、ステータコア22を含むステータ21を回転不能に支持する。
【0026】
ステータ支持部10とステータコア22とは、ボルトによる締結ではなく、接合により一体化される。すなわち、ステータ支持部10は、ステータコア22の外周面222に、その径方向内側の表面が接合される。ステータ支持部10とステータコア22との接合方法については後述する。
【0027】
ステータ支持部10は、好ましくは、ステータコア22の外周面222の略全体に、その径方向内側の表面が接する態様(面接触する態様)でステータコア22を保持する。この場合、ステータ支持部10内の冷却水路95を通る冷却水によりステータコア22の全体を効率的に冷却できる。本実施例では、一例として、ステータ支持部10は、図2に示すように、ステータコア22の軸方向の全長にわたり延在し、ステータコア22の外周面222の略全体に、その内周面が接する。なお、ステータコア22の外周面222の“略全体”とは、ステータコア22の溶接溝(図示せず)のような箇所(ステータコア22の外周面222とステータ支持部10の内周面とが径方向で離間しうる箇所)を許容する概念である。
【0028】
ステータ支持部10は、内部にケース油路35及び冷却水路95を形成する。この際、径方向内側からステータコア22、冷却水路95、及びケース油路35の順に隣接して配置される。なお、“隣接”とは、ステータ支持部10に係る材料部分以外は介在しない態様を指す。
【0029】
冷却水路95は、任意の形態であってよく、例えば図2に示すように、多数の円柱部1951(径方向に延在する円柱部)まわりに形成される形態であってもよい。この場合、冷却水とステータ支持部10との間の接触面積(熱交換量)を効率的に増加させることができる。
【0030】
ケース油路35は、任意の形態であってよく、例えば図2に示すように、多数の円柱部1351(径方向に延在する円柱部)まわりに形成される形態であってもよい。この場合、油とステータ支持部10との間の接触面積を効率的に増加させることができる。その結果、ケース油路35内の油と冷却水路95内の水との間の熱交換を効果的に促進できる。
【0031】
ケース油路35は、油滴下部351を有してよい。この場合、ケース油路35内の油は、油滴下部351を通ってコイルエンド29A、29Bに滴下されてよい(矢印R7、R8)。このようにして、ケース油路35は、冷却水路95内の冷却水により冷却された状態で、コイルエンド29A、29Bの冷却に供されてもよい。
【0032】
本実施例によれば、冷却水路95を形成するステータ支持部10が、ステータコア22に接するので、冷却水とステータコア22との間には、ステータ支持部10の内周壁部だけが存在するだけである。ここで、冷却水は、ラジエータ(図示せず)で外気(例えば車両の走行時に通過する空気)と熱交換されて冷却され、油は、冷却水路95内の冷却水と熱交換されて冷却されるものであるので、冷却水の方が油よりも低温である。従って、冷却水とステータコア22との間に、例えば油等の他の媒体や部材が介在する場合に比べて、冷却水によりステータコア22を効率的に冷却できる。
【0033】
また、本実施例によれば、上述したように、ステータ支持部10の内部に冷却水路95及びケース油路35の双方が設けられるので、例えばケースとステータコア22との間に径方向の隙間を形成して当該隙間に冷却用のパイプを通すような比較例(図示せず)に比べて、モータ1の径方向の体格を効率的に低減できる。
【0034】
また、本実施例によれば、上述したように、ステータコア22とステータ支持部10とが接合されるので、ステータコア22がケースにボルトで締結されるような比較例(図示せず)に比べて、ボルトを使用しない分だけ部品点数を低減できるとともに、ボルトの締め付けによるステータコア22の歪の発生を回避できる。
【0035】
なお、本実施例では、好ましい例として、ケース油路35は、冷却水路95及びケース油路35を備えているが、冷却水路95及びケース油路35のうちの一方だけを備えてもよいし、双方を備えていなくてもよい。
【0036】
次に、図3図9を参照して、ステータ支持部10とステータコア22について更に説明する。
【0037】
図3は、一体化された状態のステータ支持部10とステータコア22を示す斜視図である。図4は、単品状態のステータコア22を示す斜視図である。図5は、ステータコア22の凹部24の拡大図である。図6から図8は、ステータコア22の軸方向端面220と外周面222とがなす角部に係る構造の説明図である。図6は、回転軸12を通る平面で切断した断面図であって、凹部24を有さない周方向位置(第2区間SC2内)でのステータコア22の断面図である。図7は、回転軸12を通る平面で切断した断面図であって、凹部24を有する周方向位置(第1区間SC1内)でのステータコア22の断面図である。図8は、一体化された状態のステータ支持部10とステータコア22の一部であって、凹部24を有する部分を軸方向に視た平面図である。図8には、説明用に、ステータコア22が透視により点線で示されている。
【0038】
ステータコア22は、外周面222の軸方向端部2221における周方向の一部の第1区間SC1において凹部24を有する。凹部24は、第1区間SC1とは異なる第2区間SC2よりも径方向内側に凹む形態である。なお、凹部24は、ステータコア22が積層鋼板により形成される場合、鋼板をプレス機で打ち抜く際に形成されてよい。
【0039】
凹部24は、第1区間SC1にわたって周方向に延在する。なお、本実施例では、凹部24の周方向の幅w(図5参照)は、凹部24の軸方向全長にわたって一定であるが、変化してもよい。
【0040】
凹部24の深さh(すなわち径方向の寸法)(図5及び図7参照)は、任意であるが、好ましくは2mm以下であり、より好ましくは、1mm程度である。
【0041】
凹部24は、ステータコア22の軸方向端面220側で開口し、軸方向に延在する。凹部24の軸方向の長さdは、比較的短くてよく、好ましくは、10mm以下であり、より好ましくは5mm以下である。この場合、凹部24による機能(図8を参照して後述)を確保しつつ、凹部24の形成範囲を最小限に留めることができ、コスト低減を図ることができる。
【0042】
凹部24は、周方向の複数の箇所に設けられてもよい。例えば、図4に示す例では、凹部24は、周方向の2箇所(180度ピッチ)で形成されている。また、凹部24は、ステータコア22の軸方向両側にそれぞれ形成されてもよい。この場合、第1区間SC1は、軸方向両側で同一位相であってもよいし、軸方向両側で互いに対してずれてもよい。
【0043】
ここで、本実施例では、ステータ支持部10とステータコア22との間の接合の信頼性を効果的に高めるために、ステータ支持部10とステータコア22との間に、接合層61が設けられる。具体的には、ロータコア32の外周面222には、接合層61が形成される。接合層61は、ロータコア32の外周面222にステータ支持部10を接合する際に、ステータ支持部10と一体化することで、ステータ支持部10とステータコア22との間の接合の信頼性を高める機能を有する。具体的には、ステータ支持部10がアルミを主成分とする材料により形成される場合、接合層61は、アルミを主成分とする材料が、ステータコア22の外周面222に接合しやすくするための層である。この場合、接合層61は、鉄とアルミの合金層であってよい。
【0044】
図9は、ステータ支持部10とステータコア22との接合部の拡大図(写真)である。図10は、図9のQ3部の模式図である。接合層61が形成されるので、図9及び図10に示すように、ステータコア22の外周面222にステータ支持部10を隙間なく接合させることができる。なお、接合層61を設けずに焼嵌めによりステータ支持部10’とステータコア22とを結合させる場合、図11に示すように、ステータ支持部10’とステータコア22との間に、ステータコア22の外周面222の凹凸(軸方向に沿った径方向の凹凸)に起因した空気層(隙間)70が形成されやすい。これに対して、本実施例によれば、図9及び図10に示すように、ステータコア22の外周面222の凹凸を埋める態様でステータ支持部10を形成できる。
【0045】
すなわち、図11に示すような比較例では、ステータコア22とステータ支持部10’との間に、ステータコア22の外周面の凹凸に起因した空気層が形成されやすく、かかる空気層に起因して熱抵抗が増加しやすい。
【0046】
これに対して、本実施例によれば、ステータコア22とステータ支持部10とは、上述したように接合されるので、ステータコア22の外周面222の凹凸(軸方向に沿った径方向の凹凸)は、ステータ支持部10の材料により埋められる。すなわち、ステータ支持部10におけるステータコア22からの熱の受熱面となる接合面は、空気層を含まない。従って、本実施例によれば、ステータコア22とステータ支持部10との間の密着性を高め、ステータコア22とステータ支持部10との間の熱抵抗を効果的に低減できる。この結果、本実施例によれば、ステータコア22からステータ支持部10への熱伝達が促進され、ステータコア22をステータ支持部10を介して効率的に冷却できる。
【0047】
ところで、ステータコア22の外周面222に上述した接合層61を形成する場合、接合層61を形成する範囲が広いほど、ステータ支持部10とステータコア22との間の密着性が高くなる範囲が広くなる。ステータコア22とステータ支持部10との間の接合の信頼性を高める観点や、ステータコア22に対する冷却能力を高める観点からは、ステータコア22の外周面222の全面にわたって接合層61を形成する方が望ましい。
【0048】
しかしながら、後述するように製造上の制約等に起因して、ステータコア22の外周面222の軸方向端部2221に接合層61を形成することが難しい場合がある。この場合、例えば、製造上の要因に起因して、ステータコア22の外周面222の表面積に対する接合層61が形成される範囲の密度は、ステータコア22の軸方向両側において、ステータコア22の軸方向の中央部よりも小さくなりやすい。
【0049】
この点、本実施例では、ステータコア22は、軸方向端部2221に凹部24を有し、凹部24内には、図7に示すように、ステータ支持部10が延在する。すなわち、ステータコア22とステータ支持部10とは、凹部24においても実質的に隙間なく密着される。
【0050】
凹部24にステータ支持部10が延在する場合、ステータコア22とステータ支持部10との間の接合の信頼性を高めることができる。具体的には、図8に示すように、ステータ支持部10とステータコア22との間に、回転軸12まわりにステータコア22をステータ支持部10に対して相対的に回転させる回転方向の荷重F1が発生した場合を想定する。この場合、凹部24の周方向の側壁241とステータ支持部10との間の周方向の係合に起因して、荷重F1に対する反力F2を発生させることができる。これにより、凹部24以外の領域におけるステータ支持部10とステータコア22との間の接合層61にかかる力(せん断力)を低減でき、回転方向の荷重F1に起因してステータ支持部10とステータコア22との間の密着性が阻害される可能性を、低減できる。なお、図8では、荷重F1は、時計回りであるが、反時計回りの場合も同様である。
【0051】
また、本実施例では、ステータコア22は、周方向の第2区間SC2において、図6に示すように、軸方向端面220の外周縁部2201が、ステータ支持部10により覆われる。
【0052】
軸方向端面220の外周縁部2201がステータ支持部10により覆われる場合、ステータコア22とステータ支持部10との間の結合の信頼性を高めることができる。具体的には、図6に示すように、ステータ支持部10とステータコア22との間に、ステータコア22をステータ支持部10に対して軸方向に相対的に変位させる荷重F10が発生した場合を想定する。この場合、軸方向端面220の外周縁部2201とステータ支持部10との間の軸方向の係合に起因して、荷重F10に対する反力F20を発生させることができる。これにより、凹部24以外の領域におけるステータ支持部10とステータコア22との間の接合層61にかかる力を低減でき、軸方向の荷重F10に起因してステータ支持部10とステータコア22との間の密着性が阻害される可能性を、低減できる。なお、図6では、荷重F10は、図6の左向きであるが、図6の右向きの場合も同様である。すなわち、この場合、軸方向逆側で軸方向端面220の外周縁部2201とステータ支持部10との間の軸方向の係合に起因して、同様の反力F20を発生させることができる。
【0053】
なお、外周縁部2201の径方向の延在範囲は、任意であり、例えば凹部24の深さhと同様であってもよい。また、ステータコア22は、好ましくは、第2区間SC2の全体にわたり、軸方向端面220の外周縁部2201が、ステータ支持部10により覆われる。これにより、全周にわたって上述した反力F20を発生させることができる。
【0054】
このようにして、本実施例によれば、ステータ支持部10とステータコア22とを一体的に接合して、ステータ支持部10とステータコア22の間の密着性を高めつつ、ステータ支持部10とステータコア22との間の接合の信頼性を効果的に高めることができる。
【0055】
具体的には、本実施例によれば、上述したように、ステータコア22の軸方向端面220の外周縁部2201を覆う態様でステータコア22にステータ支持部10が結合され、かつ、外周面222の凹部24に埋設される態様でステータコア22にステータ支持部10が結合される。これにより、本実施例によれば、ステータコア22の外周面222の軸方向端部2221に接合層61が形成されない又は形成される密度が比較的低い場合でも、ステータ支持部10とステータコア22との間の接合の信頼性を確保できる。
【0056】
従って、本実施例によれば、ステータコア22の外周面222の全体のうちの軸方向端部2221だけに接合層61をあえて形成しないような製造方法を実現することも可能であり、接合層61形成することに関連した製造方法の自由度を高めることができる。
【0057】
次に、図12以降を参照して、モータ1のステータ21の製造方法について説明する。
【0058】
図12は、ステータ21の製造方法の流れを示す概略フローチャートである。図13から図19は、図12に示す製造方法を説明するための図である。具体的には、図13は、加圧治具80をセットした状態を概略的に示す正面図である。図13等には、軸方向に対応するX方向と、X1側及びX2側が定義されている。ここでは、X1側を上側とし、X2側を下側として説明する。図14は、アルミナイジング処理中の状態を概略的に示す正面図である。図15は、アルミナイジング処理中の状態を概略的に示す断面図である。図15Aは、図15のQ4部の拡大図である。図16は、鋳込工程中の状態を概略的に示す断面図である。図17は、中子795Aの一例を示す斜視図である。図18は、図16のQ5部の拡大図である。図19は、ステータコア22とステータ支持部10とが一体化した組立体を概略的に示す断面図である。
【0059】
ステータ21の製造方法は、まず、ステータコア22を準備することを含む(ステップS30)。ステータコア22は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなる。この場合、各鋼板は、互いに結合されていなくてもよいし、溶接等により結合されていてもよい。
【0060】
次いで、ステータ21の製造方法は、ステータコア22に対して、加圧治具80をセットすることを含む(ステップS31)。
【0061】
加圧治具80は、軸方向両側からステータコア22の軸方向端面220に軸方向に当接及び加圧し、ステータコア22に軸力を付与する機能を有する。
【0062】
本実施例では、一例として、加圧治具80は、上側加圧治具81と、下側加圧治具82と、締付ボルト83とを含む。
【0063】
上側加圧治具81は、ステータコア22のX1側の軸方向端面220を覆うとともに、ステータコア22におけるロータコア32が収容される空間SP1(図14参照)を軸方向のX1側から塞ぐ。下側加圧治具82は、ステータコア22のX2側の軸方向端面220を覆うとともに、ステータコア22におけるロータコア(図示せず)が収容される空間SP1(図14参照)を軸方向のX2側から塞ぐ。締付ボルト83は、上側加圧治具81と下側加圧治具82との間に軸方向の力(軸力)を発生する。具体的には、締付ボルト83が締め付けられると、上側加圧治具81と下側加圧治具82との間の距離が縮まることで軸方向の力が発生し、上側加圧治具81とステータコア22のX1側の軸方向端面220との間の当接(軸方向の当接)が強固となり、下側加圧治具82とステータコア22のX2側の軸方向端面220との間の当接(軸方向の当接)が強固となる。なお、上側加圧治具81及び/又は下側加圧治具82は、油圧等を利用した他の機構により軸方向に駆動されてもよい。
【0064】
次いで、ステータ21の製造方法は、加圧治具80をセットした状態で、不活性ガスをステータコア22の空間SP1内に充填することを含む(ステップS32)。
【0065】
図14には、不活性ガスを空間SP1内に充填するための不活性ガス充填装置90が模式的に示される。図14に示す例では、不活性ガス充填装置90は、管部材91と、不活性ガス供給路92と、バルブ93と、不活性ガス供給源94とを含む。この場合、不活性ガス供給源94からの不活性ガスは、不活性ガス供給路92及び管部材91を介して空間SP1内に充填される。なお、バルブ93は、空間SP1内の圧力を減圧できる減圧弁(圧力弁)であってよい。これにより、後述するステップS33やステップS36での温度上昇に起因して空間SP1内の不活性ガスが膨張した場合でも、空間SP1内の圧力を適切に保つことができる。
【0066】
なお、この場合、上側加圧治具81には、管部材91が気密に接続される。管部材91は、上側加圧治具81と一体に形成されてもよい。管部材91は、図14に模式的に示すように、一端が空間SP1内に延在し、他端が不活性ガス供給路92に接続される。なお、不活性ガス供給路92は、管部材91に取り外し可能に接続されてもよいし、一体的に接続されてもよい。
【0067】
次いで、ステータ21の製造方法は、ステータコア22の外周面222に、接合層61(図9参照)を形成する工程(接合層形成工程)を含む(ステップS33)。接合層61は、上述したように、次の工程で導入されるアルミを主成分とする材料が、ステータコア22の外周面222に接合しやすくするための層である。本実施例では、接合層61は、一例として、鉄とアルミの合金層である。鉄とアルミの合金層は、例えば、アルミナイジング処理を行うことで形成できる。アルミナイジング処理の場合、ステータコア22の外周面222の一部が溶融し、アルミとの合金層が形成される。ステータコア22の外周面222の一部が溶融して接合層61が形成されるので、接合層61とステータコア22とは強固に一体化される。
【0068】
本実施例では、ステップS33としてアルミナイジング処理が実行される。具体的には、加圧治具80をセットした状態で、ステータコア22をアルミ槽50(例えば溶融アルミニウム槽)に浸漬させる。図15は、加圧治具80をセットした状態で、ステータコア22がアルミ槽50に浸漬された状態が示されている。図15には、溶融アルミニウムの液面L13が模式的に示されている。本実施例では、加圧治具80をセットした状態で、ステータコア22は、上側加圧治具81の一部が溶融アルミニウム内に浸かる態様で、アルミ槽50に浸漬される。ただし、変形例では、例えば、加圧治具80をセットした状態で、ステータコア22は、上側加圧治具81が溶融アルミニウム内にギリギリ浸からない態様で、アルミ槽50に浸漬されてもよいし、上側の軸方向端部2221が溶融アルミニウム内に浸からない態様で、アルミ槽50に浸漬されてもよい。
【0069】
本実施例によれば、ステータコア22は、加圧治具80が取り付けられた状態で、アルミ槽50に浸漬されるので、ステータコア22が積層鋼板により形成される場合でも、層間に溶融アルミニウムが侵入したり、空間SP1内に溶融アルミニウムが浸入したりする可能性を低減できる。
【0070】
アルミナイジング処理は、好ましくは、不活性ガスを空間SP1内に充填した状態で実現される。
【0071】
アルミナイジング処理が空間SP1内に不活性ガスが充填された状態で実現される場合、そうでない場合(すなわちアルミナイジング処理が空間SP1内に不活性ガスが充填されない状態で実現される場合)に比べて、ステータコア22を形成する鋼板の絶縁膜へのダメージを低減できる。
【0072】
具体的には、ステータコア22を形成する鋼板は、比較的高い温度(例えば600℃以上)の、酸素を含む雰囲気に晒されると、酸化スケール(錆)が発生しやすくなる。このような酸化スケールが発生すると、各鋼板の表面に付与されている絶縁膜が破壊され、ステータコア22の磁気性能が所期の性能でなくなる可能性がある。アルミナイジング処理が、空間SP1内に不活性ガスが充填されない状態(すなわち酸素を含む雰囲気)で実現される場合、ステータコア22が、溶融アルミニウムに起因して高温の雰囲気に晒されることになる。その結果、ステータコア22の各鋼板の絶縁膜が破壊され、ステータコア22の磁気性能が所期の性能でなくなる可能性がある。
【0073】
この点、アルミナイジング処理が不活性ガスを空間SP1内に充填した状態で実現される場合、ステータコア22が、溶融アルミニウムに起因して高温の雰囲気に晒されても、当該雰囲気が酸素を実質的に含まないので、酸化スケールの発生が防止又は効果的に低減される。この結果、ステータコア22の各鋼板の絶縁膜が保護されるので、ステータコア22の磁気性能が所期の性能でなくなる可能性を、効果的に低減できる。また、空間SP1内の圧力(内圧)が高まることで、ステータコア22が積層鋼板により形成される場合でも、層間に溶融アルミニウムが侵入する可能性を低減できる。
【0074】
ところで、本実施例では、図15に示すように、液面L13がステータコア22の上側の軸方向端面220よりも高いので、ステータコア22の外周面222全体に接合層61が形成されうる。
【0075】
しかしながら、実際には、ステータコア22の外周面222の軸方向端部2221や軸方向端面220の外周縁部2201のような、上側加圧治具81及び下側加圧治具82の近傍の部位には、接合層61が形成され難い傾向がある。これは、図15Aにハッチングにより模式的に示すように、上側加圧治具81の外周面811及び下側加圧治具82の外周面821には、塗型(離型剤)1500が塗布されており、かかる塗型1500の影響で、かかる部位への接合層61の形成が不十分となるためである。
【0076】
接合層61は、上述したように、ステータコア22とステータ支持部10の間の密着性を高める機能を有するので、ステータコア22における接合層61の形成が不十分となる部位(ステータコア22の外周面222の軸方向端部2221等)においては、密着性の不足に係る不都合(例えば浮きや剥がれ等)が生じうる。
【0077】
この点、本実施例では、図6から図8等を参照して上述したように、ステータコア22は、外周面222の軸方向端部2221に凹部24内と、軸方向端面220の外周縁部2201上とに、アルミ材料の部位(ステータ支持部10の一部)が形成されるので、このような不都合を効果的に防止できる。
【0078】
また、上述のような塗型1500に起因した不都合(ステータコア22の軸方向端部2221において接合層61の形成が不十分となる)は、上側加圧治具81及び下側加圧治具82に起因してステータコア22の軸方向両側で生じる。
【0079】
この点、本実施例では、図6から図8等を参照して上述したように、ステータコア22は、軸方向両側で、外周面222の軸方向端部2221の凹部24内と、軸方向端面220の外周縁部2201上とに、アルミ材料の部位(ステータ支持部10の一部)が形成されるので、このような不都合を効果的に防止できる。
【0080】
次いで、ステータ21の製造方法は、接合層61が形成されたステータコア22を、図16に示すように、鋳造用の金型にセットすることを含む(ステップS34)。この際、ステータコア22は、上述した加圧治具80が取り付けられた状態で、鋳造用の金型にセットされる。なお、鋳造用の金型は、アルミ槽50と共通であってよい。換言すると、アルミナイジング処理は、鋳造用の金型内で実行されてもよい。
【0081】
また、この際、上述したケース油路35を形成するための中子及び冷却水路95を形成するための中子(図17の中子795A参照)を鋳造用の金型にセットする。
【0082】
なお、図17に示す中子795Aは、冷却水路95を形成するための円筒部7951を備え、円筒部7951には、円柱部1951を形成するための穴1951A(径方向の貫通穴)が複数形成される。なお、中子795Aの形態は、冷却水路95の形態に応じて適宜設計されてよい。これは、ケース油路35を形成するための中子735Aについても同様である。
【0083】
図16には、上述したケース油路35を形成するための中子735Aと、冷却水路95を形成するための中子795Aとが、鋳造用の金型にセットされた状態が模式的に示される。図16に模式的に示すように、中子795Aは、径方向内側のステータコア22に対して径方向外側に離間してセットされ、中子735Aは、中子795Aに対して径方向外側に離間してセットされる。また、中子735Aは、径方向外側の鋳造用の金型に対して径方向内側に離間してセットされてよい。
【0084】
次いで、ステータ21の製造方法は、ステータコア22(接合層61が形成されたステータコア22)がセットされた鋳造用の金型に、アルミを主成分とする材料(以下、単に「アルミ材料」とも称する)を、溶かした状態(溶湯)で注湯することで、ステータ支持部10を鋳造する工程(鋳込工程)を含む(ステップS36)。なお、本実施例では、溶かしたアルミ材料の重さだけで鋳造する金型鋳造(アルミ重力鋳造)方法が採用されるが、他の鋳造方法が利用されてもよい。なお、本実施例では、ステータコア22には凹部24(図4参照)が形成されているので、凹部24内へとアルミ材料が到達する。
【0085】
本実施例では、鋳込工程は、上述したように、ステータコア22に加圧治具80が取り付けられた状態で実行される。
【0086】
本実施例では、図18に示すように、上側加圧治具81は、ステータコア22の軸方向端面220における外周縁部2201よりも径方向内側に当接する。すなわち、上側加圧治具81は、ステータコア22の軸方向端面220における外周縁部2201には軸方向で当接せず、外周縁部2201よりも径方向内側だけに軸方向に当接する。これは、ステータコア22の全周にわたって同じである。また、下側加圧治具82についても同様である。
【0087】
従って、ステータコア22の軸方向端面220のうちの、外周縁部2201上のアルミ材料の部位(すなわちステータ支持部10の一部)を形成できるとともに、上述した凹部24内にアルミ材料の部位(すなわちステータ支持部10の一部)を形成できる。すなわち、図6に示したように、ステータコア22の軸方向端面220の外周縁部2201を覆う態様でステータコア22にステータ支持部10を結合し、かつ、図7に示したように、外周面222の凹部24に入り込む態様でステータコア22にステータ支持部10を結合できる。
【0088】
このように本実施例では、上側加圧治具81及び下側加圧治具82は、鋳込工程によって、周方向の第2区間SC2においてステータコア22の軸方向端面220の外周縁部2201をアルミ材料の部位が覆い、かつ、周方向の前記第1区間SC1において凹部24内にアルミ材料の部位が延在するように、ステータコア22の軸方向端面220に当接する。
【0089】
なお、鋳造用の金型にセットされたステータコア22の外周面222には、上述のアルミナイジング処理により接合層61が形成されている。従って、鋳造用の金型に、溶かしたアルミ材料を導入すると、アルミ材料が接合層61に含まれるアルミと一体化する。このようにして、接合層61を介してステータコア22の外周面222にステータ支持部10を強固に接合できる。
【0090】
また、中子795Aは、径方向内側のステータコア22に対して径方向外側に離間してセットされ、中子735Aは、中子795Aに対して径方向外側に離間してセットされ、かつ、径方向外側の鋳造用の金型に対して径方向内側に離間してセットされている。従って、これらの径方向の隙間をアルミ材料が埋める態様でアルミ材料が注湯される。この結果、ステータ支持部10に係る部分がステータコア22の径方向外側に出来上がる。
【0091】
次いで、ステータ21の製造方法は、上述したケース油路35及び冷却水路95を形成するための中子735A、795A(図16)を“崩壊”させることを含む(ステップS38)。これにより、ステータ支持部10の内部に上述したケース油路35及び冷却水路95が形成される。
【0092】
次いで、ステータ21の製造方法は、上述した加圧治具80をステータコア22から取り外すことを含む(ステップS39)。これにより、ステータコア22とステータ支持部10とが一体化した組立体(図19参照)を得ることができる。なお、本ステップS39は、上述したステップS38よりも前に実行されてもよい。すなわち、加圧治具80をステータコア22から取り外す工程は、ステップS38よりも前に実行されてもよい。
【0093】
また、加圧治具80をステータコア22から取り外す工程の後又は前に、応力低減処理を実行してもよい。
【0094】
ここで、アルミは鉄に比べて熱膨張係数が約2倍である。従って、アルミを主成分とする材料から形成されるステータ支持部10と、鉄を主成分とする材料から形成されるステータコア22との一体物である鋳物(図19参照)については、固体収縮のような熱収縮を起こす際、ステータ支持部10とステータコア22の間の熱収縮量の有意な差異に起因して、ステータコア22に応力が生じる。このような応力を低減するための応力低減処理として好適な熱処理は、ステータ支持部10を形成するアルミ材料内の原子配列を変化させる処理であり、具体的には、ステータ支持部10の内径が拡大する方向に、アルミ材料の結晶構造を変化させる処理である。例えば、応力低減処理は、ステータ支持部10の内径が拡大する方向にステータ支持部10の塑性変形を生じさせる冷却処理であってよい。この場合、冷却処理は、サブゼロ処理(深冷処理)である。サブゼロ処理は、一般的に、焼入れした鋼に対して実行される処理であるが、本実施例の場合は、上述した鋳物に対して実行されてよい。なお、サブゼロ処理で利用される寒剤としては、ドライアイスや、炭酸ガス、液体窒素等であってよい。また、サブゼロ処理に代えて、更に低温の超サブゼロ処理が実行されてもよい。
【0095】
次いで、ステータ21の製造方法は、上述のようにステータ支持部10が接合されたステータコア22に、コイル片(図示せず)を組み付けることを含む(ステップS40)。この場合、コイル片は、ステータコア22のスロット内に軸方向に(又は径方向内側から)容易に組み付けることができる。
【0096】
次いで、ステータ21の製造方法は、コイル片同士を結合すること(結合工程)を含む(ステップS42)。
【0097】
このようにして、図12に示す例によれば、アルミナイジング処理により接合層61を形成することで、ステータコア22とステータ支持部10とが強固に接合したステータ21を容易に製造できる。なお、このようにして製造されたステータ21の径方向内側に、ロータ30(図1参照)が組み付けられ、モータ1を形成できる。
【0098】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、各実施形態の効果のうちの、従属項に係る効果は、上位概念(独立項)とは区別した付加的効果である。
【符号の説明】
【0099】
1・・・モータ(回転電機)、21・・・ステータ、22・・・ステータコア、222・・・外周面、2221・・・軸方向端部、220・・・軸方向端面、2201・・・外周縁部、10・・・ステータ支持部、24・・・凹部、80・・・加圧治具、61・・・接合層、SC1・・・第1区間、SC2・・・第2区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図15A
図16
図17
図18
図19