IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大同特殊鋼株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-昇降扉の落下防止装置 図1
  • 特開-昇降扉の落下防止装置 図2
  • 特開-昇降扉の落下防止装置 図3
  • 特開-昇降扉の落下防止装置 図4
  • 特開-昇降扉の落下防止装置 図5
  • 特開-昇降扉の落下防止装置 図6
  • 特開-昇降扉の落下防止装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084878
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】昇降扉の落下防止装置
(51)【国際特許分類】
   F27D 1/18 20060101AFI20240619BHJP
   F23M 7/00 20060101ALI20240619BHJP
   E06B 9/02 20060101ALI20240619BHJP
   E06B 9/84 20060101ALI20240619BHJP
   F27B 9/30 20060101ALI20240619BHJP
   F27B 9/24 20060101ALN20240619BHJP
【FI】
F27D1/18 N
F23M7/00
E06B9/02 A
E06B9/84 A
F27B9/30
F27B9/24 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199032
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】志賀 瑛
【テーマコード(参考)】
2E042
4K050
4K051
【Fターム(参考)】
2E042AA01
2E042CA01
2E042DB02
4K050AA01
4K050AA03
4K050AA04
4K050AA09
4K050AA10
4K051AA03
4K051AA04
4K051AA09
4K051AB07
4K051MB13
(57)【要約】
【課題】安価かつ簡易な構造で昇降扉の落下を確実に防止できる昇降扉の落下防止装置を提供する。
【解決手段】炉体開口部12の上縁に設けられて、正逆回転して昇降扉2を開放ないし閉鎖作動させる回転軸3と、回転軸3の外周の、所定の角度位置に固定されて当該回転軸3の径方向外方へ突出しこれと一体に旋回する少なくとも一つのストッパ体5A,5Bと、炉体側に設置されてストッパ体5A,5Bの先端旋回軌跡T1,T2内に進出する少なくとも一つの規制体7A,7Bを着脱可能に保持する保持部材6とを備える。ストッパ体5A,5Bは、回転軸3の周方向の異なる位置で径方向外方へそれぞれ異なる長さで突出する一対が設けられ、規制体は、相対的に長く突出するストッパ体5Aの先端旋回軌跡T1内に進出する第1規制体7Aと、相対的に短く突出するストッパ体5Bの先端旋回軌跡T2内に進出する第2規制体7Bが設けられてこれらが選択的に保持部材6に保持される。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体開口部の上縁に設けられて、正逆回転して昇降扉を開放ないし閉鎖作動させる回転軸と、前記回転軸の外周の、所定の角度位置に固定されて当該回転軸の径方向外方へ突出しこれと一体に旋回する少なくとも一つのストッパ体と、炉体側に設置されて前記ストッパ体の先端旋回軌跡内に進出する少なくとも一つの規制体を着脱可能に保持する保持部材とを備える昇降扉の落下防止装置。
【請求項2】
前記ストッパ体は、前記回転軸の周方向の異なる位置で径方向外方へそれぞれ異なる長さで突出する一対が設けられ、前記規制体は、相対的に長く突出する前記ストッパ体の先端旋回軌跡内に進出する第1規制体と、相対的に短く突出する前記ストッパ体の先端旋回軌跡内に進出する第2規制体が設けられてこれらが選択的に前記保持部材に保持される請求項1に記載の昇降扉の落下防止装置。
【請求項3】
前記規制体は板体であり、前記保持部材は、前記ストッパ体の旋回面に直交する姿勢に前記規制体が着脱可能に挿入され保持される保持溝を備える請求項1又は2に記載の昇降扉の落下防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は昇降扉の落下防止装置に関し、特に工業炉の炉体の開閉を行う昇降扉に好適に使用できる落下防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の落下防止装置としては例えば特許文献1に示されたものがある。ここでは電動シリンダ等の駆動装置でカンヌキ部材を進出させて、隔壁側に設けた軸受けの貫通穴と、上昇開放した防音用昇降扉の上端に設けたフランジの貫通穴内とに上記カンヌキ部材を進入貫通させることで昇降扉の落下を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-63986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記従来の落下防止装置では、カンヌキ部材を作動させるための駆動装置が必要である上に、カンヌキ部材を滑らかに軸受けやフランジの各貫通穴に貫通させるために、カンヌキ部材の先端をテーパ状に仕上げるとともに、軸受けを自己潤滑材等で構成し併せて当該軸受けの貫通孔入り口部分に面取り加工を施す等の手間と費用を要していた。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、安価かつ簡易な構造で昇降扉の落下を確実に防止できる昇降扉の落下防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、炉体開口部(12)の上縁に設けられて、正逆回転して昇降扉(2)を開放ないし閉鎖作動させる回転軸(3)と、前記回転軸(3)の外周の、所定の角度位置に固定されて当該回転軸(3)の径方向外方へ突出しこれと一体に旋回する少なくとも一つのストッパ体(5A,5B)と、炉体側に設置されて前記ストッパ体(5A,5B)の先端旋回軌跡(T1,T2)内に進出する少なくとも一つの規制体(7A,7B)を着脱可能に保持する保持部材(6)とを備える。
【0007】
本第1発明においては、必要時には保持部材に保持させた規制体をストッパ体の先端旋回軌跡内に進出させることによって両者を互いに当接させて回転軸の逆回転を確実に阻止して、昇降扉の落下を防止することができる。従来のカンヌキ部材を使用する構造に比して、駆動装置や煩雑な加工の手間が不要であるから、簡易に実現することができる。
【0008】
本第2発明では、前記ストッパ体(5A,5B)は、前記回転軸の周方向の異なる位置で径方向外方へそれぞれ異なる長さで突出する一対が設けられ、前記規制体は、相対的に長く突出する前記ストッパ体(5A)の先端旋回軌跡(T1)内に進出する第1規制体(7A)と、相対的に短く突出する前記ストッパ体(5B)の先端旋回軌跡(T2)内に進出する第2規制体(7B)が設けられてこれらが選択的に前記保持部材(6)に保持される。
【0009】
本第2発明においては、昇降扉を二位置で位置決めしてそれぞれ確実に昇降扉の落下防止を行うことができるとともに、いずれの位置での落下防止を行っているかを容易に確認することができる。
【0010】
本第3発明では、前記規制体(7A,7B)は板体であり、前記保持部材(6)は、前記ストッパ体(5A,5B)の旋回面に直交する姿勢に前記規制体(7A,7B)が着脱可能に挿入され保持される保持溝(611)を備える。
【0011】
本第3発明においては、規制体を簡易な構造で確実に保持することができる。
【0012】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の昇降扉の落下防止装置によれば、安価かつ簡易な構造で昇降扉の落下を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】昇降扉を設けた工業炉の炉体開口部の概略断面図である。
図2】本発明の第1実施形態における、回転軸を設けた炉体開口部上縁の拡大斜視図である。
図3】昇降扉が下降全閉位置にある時の、ストッパ体を設けた回転軸の断面図である。
図4】昇降扉が炉内温度測定位置にある時の、ストッパ体を設けた回転軸の断面図である。
図5】昇降扉が全開位置にある時の、ストッパ体を設けた回転軸の断面図である。
図6】本発明の第2実施形態における、昇降扉が全開位置にある時の、ストッパ体を設けた回転軸の断面図である。
図7】昇降扉が炉内温度測定位置にある時の、ストッパ体を設けた回転軸の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0016】
(第1実施形態)
図1には工業炉(具体的には炉内製品をローラで搬送するローラーハーネス炉)1の炉体開口部12の概略断面を示し、開口部12にはこれを開閉する昇降扉2が設置されている。昇降扉2はその上端両側(一方のみ図示)にそれぞれチェーン21の一端が結合されており、上方へ延びる各チェーン21は、炉体の開口部12上縁に支持された回転軸3の両端にそれぞれ装着されたスプロケット(図示略)に懸架されて下方へ向きを変え、その他端(下端)は、炉体に垂設された駆動シリンダ4のロッド41に結合されている。これにより、駆動シリンダ4のロッド41を収縮後退させてチェーン21を引くと回転軸3が正転させられて昇降扉2が上昇開放作動させられる。反対に、駆動シリンダ4のロッド41を伸長進出させると(図1の状態)、回転軸3が逆転させられて昇降扉2が下降閉鎖作動させられる。
【0017】
図2には回転軸3を設けた炉体の開口部上縁の拡大斜視図を示す。回転軸3の両端部(一方のみ図示)は、炉体に設けた軸受け部材31によって回転可能に支持されており、その外周の一カ所(複数個所でもよい)にストッパ体5A,5Bが設けてある。本実施形態ではストッパ体5A,5Bは、回転軸3の外周に固定されたリング状基体51の、周方向の異なる位置に設けられており、各ストッパ体5A,5Bは所定の厚みを有する長方形の角型金属板材で構成され、基体51の外周面(実質的に回転軸3の外周面)から径方向外方へ突出している。そして、一方のストッパ体5Aはその突出長さが相対的に長く、他方のストッパ体5Bはその突出長さが相対的に短くなっている。
【0018】
回転軸3と回転に伴って旋回する上記ストッパ体5A,5Bの旋回面に近い位置の、炉体の開口部上縁の横梁11上には保持部材6が設けられている。保持部材6は一対の板体61を近接対向させて平行に立設したもので、各板体61には中央に、上端から下方へ延びる一定幅で同形の角形の保持溝611(図3)が形成されている。そして、両保持溝611内に架け渡されるようにして、上方から後述する規制体が挿入設置される。
【0019】
以上のような落下防止構造において、規制体が保持部材6に挿入設置されていない図3 に示す状態では、両ストッパ体5A,5Bの先端旋回軌跡T1,T2内に進出するものは何も無いから、両ストッパ体5A,5B(すなわち回転軸3)は、昇降扉2の下降全閉位置(図3中の実線位置)から、後述する炉内温度測定位置(図3中の一点鎖線位置)を経て上昇全開位置(図3中の二点鎖線位置)までの角度範囲で自由に回転可能である。
【0020】
工業炉の場合、炉内の温度を正確に測定するために昇降扉2を全閉位置より僅かに上昇させた開放状態に維持したい場合がある。この場合には、昇降扉2を当該位置へ上昇させて回転軸3を図4に示す位置へ回転させた後に、保持部材6の板体61の保持溝611内に、高さが相対的に低い板状の規制体(第1規制体)7Aを挿入設置する。なお、71は強度を確保するためのスペーサである。規制体7Aは図4に示すようにストッパ体5Bの先端旋回軌跡T2内には進出せず、ストッパ体5Aの先端旋回軌跡T1内に進出するから、ストッパ体5Aが規制体7Aに当接して回転軸3の戻り旋回が規制され、昇降扉2は全閉位置より僅かに上昇した、炉内温度測定に必要な開放位置(炉内温度測定位置)に維持されてその落下が確実に防止される。
【0021】
また、炉内の点検等のために昇降扉2を上昇全開位置で保持したい場合には、昇降扉2を全開位置へ上昇させて回転軸3を図5に示す位置へ回転させた後に、保持部材板体61の保持溝611内に、規制体7Aに代えて、高さが相対的に高い板状の規制体(第2規制体)7Bを挿入設置する。規制体7Bは図5に示すように、ストッパ体5Bの先端旋回軌跡T2内にも進出するから、ストッパ体5Bが規制体7Bに当接して回転軸3の戻り旋回が規制される。これにより、昇降扉2は全開位置に上昇した開放位置に維持されてその落下が確実に防止される。
【0022】
本実施形態の落下防止装置によれば、回転軸3の外周に長さの異なる一対のストッパ体5A,5Bを取り付け、高さの異なる規制体7A,7Bを保持部材6内に選択的に挿入設置することによって、昇降扉2を全開位置と全閉手前の炉内温度測定位置で確実に位置決めしてその落下を防止することができる。本実施形態では、一対のストッパ体5A,5Bの各長さの相違に応じて板状の規制体7A,7Bの高さ(幅)を異ならせているから、全開位置と炉内温度測定位置の、いずれの位置での落下防止を行っているかを容易に確認することができる。
【0023】
(第2実施形態)
全開位置での落下防止を特に必要としない場合には、図6に示すように、第1実施形態におけるストッパ体5Bを省略して、昇降扉2が炉内温度測定位置まで開放された時に規制体7Aに当接する(図7)ストッパ体5Aのみを設けるようにしても良い。
【0024】
(その他の実施形態)
回転軸3の外周に長さの異なる3個以上のストッパ体を設け、これに応じて3個以上の規制体を選択設置するようにしても良い。なお、この場合、ストッパ体の長さ、規制体の高さ(先端旋回軌跡内への進入量)は異なるようにしても良いし、全て同じとしても良い。また、ストッパ体は必ずしも同一円周上に設ける必要はなく、異なる円周上に設けても良い。保持部材の構造も上記実施例には限られず、規制体を着脱可能に保持できるものであれば良い。
【0025】
なお、本発明の落下防止装置が適用される昇降扉は工業炉用に限られるものではない。
【符号の説明】
【0026】
1…工業炉、12…炉体開口部、2…昇降扉、3…回転軸、5A,5B…ストッパ体、7A,7B…規制体、T1,T2…先端旋回軌跡。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7