(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084889
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】デバイス固定構造及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240619BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199057
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔太
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA04
5H770AA21
5H770PA22
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA02
5H770QA27
5H770QA33
(57)【要約】
【課題】電力変換装置に適用されるカード型電力変換デバイスの固定にあたり、装置の小型化及び部品点数削減を図る。
【解決手段】デバイス固定構造1は、ヒートシンク4とでカード型電力変換デバイス2を挟み込むホルダー3を有する。ホルダー3には、ドライブ基板6と制御基板7が固定される。ドライブ基板6は、カード型電力変換デバイス2のスイッチング素子へのオンオフ信号を出力する。制御基板7は、ドライブ基板6への制御信号を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシンクとでカード型電力変換デバイスを挟み込むホルダーを有し、
前記ホルダーには、前記カード型電力変換デバイスのスイッチング素子へのオンオフ信号を出力するドライブ基板と、このドライブ基板への制御信号を出力する制御基板が固定されることを特徴とするデバイス固定構造。
【請求項2】
前記カード型電力変換デバイスは、放熱面が前記ヒートシンク側に配されること
を特徴とする請求項1に記載のデバイス固定構造。
【請求項3】
前記カード型電力変換デバイスは、両面に放熱面を有し、
前記ホルダーは、金属製の部材から成ること
を特徴とする請求項1に記載のデバイス固定構造。
【請求項4】
前記ドライブ基板と前記制御基板は、基板対基板コネクタにより接続されること
を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のデバイス固定構造。
【請求項5】
前記ホルダーと前記ヒートシンクは締結具によりに締結され、
前記締結具は、前記ホルダー、前記ヒートシンク、前記カード型電力変換デバイス、前記ドライブ基板及び前記制御基板を格納する電力変換装置の筐体に固着されること
を特徴とする請求項1に記載のデバイス固定構造。
【請求項6】
前記ホルダーの縁部には、前記ドライブ基板が前記ホルダーの表面部と対向して固定される複数のドライブ基板固定部が立設され、
前記ホルダーの表面部及び縁部には、前記制御基板が前記ホルダーの表面部と対向して固定される制御基板固定部が立設され、
前記制御基板固定部は、前記ドライブ基板固定部よりも全長が大きいこと
を特徴とする請求項1に記載のデバイス固定構造。
【請求項7】
前記ホルダーにおける前記ドライブ基板固定部の近傍部位には、前記ヒートシンクに固定される複数のヒートシンク固定部がさらに立設され、
前記ヒートシンク固定部間には、前記カード型電力変換デバイスが嵌め込まれる空間が確保されたこと
を特徴とする請求項6に記載のデバイス固定構造。
【請求項8】
請求項1に記載のデバイス固定構造を有する電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置等の電力変換装置に適用されるカード型電力変換デバイスの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ装置は、IGBT等のスイッチング素子を搭載したパワーモジュールと、当該スイッチング素子のオンオフ信号を生成するドライブ基板と、このドライブ基板に制御信号を出力する制御基板等の電気部品を備える。
【0003】
前記パワーモジュールとしては、扁平型の形状を成し、横方向に端子を突出させたカード型電力変換デバイスがある(特許文献1,2)。このカード型電力変換デバイスは、金属による放熱面を備え、この放熱面をヒートシンクに当接させることで冷却が行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-46927号公報
【特許文献2】国際公開第2015/170383号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インバータ装置に適用されるカード型電力変換デバイスの従来の固定構造は以下の問題点がある。カード型電力変換デバイスはスイッチング動作時に電磁ノイズを発生する。このノイズの影響を低減させるためには、カード型電力変換デバイスからドライブ基板を介して制御基板に至る配線長は極力短くことが望ましい。すなわち、カード型電力変換デバイス、ドライブ基板、制御基板は近接した配置が要求され、インバータ装置の小型化も要望される。また、インバータの組み立て作業を容易にするためには、カード型電力変換デバイス、ドライブ基板、制御基板の固定時の位置精度が高いことも望まれる。
【0006】
本発明は、以上の事情を鑑み、電力変換装置に適用されるカード型電力変換デバイスの固定にあたり、装置の小型化及び部品点数削減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の一態様は、ヒートシンクとでカード型電力変換デバイスを挟み込むホルダーを有し、前記ホルダーには、前記カード型電力変換デバイスのスイッチング素子へのオンオフ信号を出力するドライブ基板と、このドライブ基板への制御信号を出力する制御基板が固定されるデバイス固定構造である。
【0008】
本発明の一態様は、前記デバイス固定構造において、前記カード型電力変換デバイスは、放熱面が前記ヒートシンク側に配される。
【0009】
本発明の一態様は、前記デバイス固定構造において、前記カード型電力変換デバイスは、両面に放熱面を有し、前記ホルダーは、金属製の部材から成る。
【0010】
本発明の一態様は、前記デバイス固定構造において、前記ドライブ基板と前記制御基板は、基板対基板コネクタにより接続される。
【0011】
本発明の一態様は、前記デバイス固定構造において、前記ホルダーは、締結具により前記ヒートシンクに固定され、前記締結具は、前記ホルダー、前記ヒートシンク、前記カード型電力変換デバイス、前記ドライブ基板及び前記制御基板を格納する電力変換装置の筐体に固着される。
【0012】
本発明の一態様は、前記デバイス固定構造において、前記ホルダーの縁部には、前記ドライブ基板が前記ホルダーの表面部と対向して固定される複数のドライブ基板固定部が立設され、前記ホルダーの表面部及び縁部には、前記制御基板が前記ホルダーの表面部と対向して固定される制御基板固定部が立設され、前記制御基板固定部は、前記ドライブ基板固定部よりも全長が大きい。
【0013】
本発明の一態様は、前記デバイス固定構造において、前記ホルダーにおける前記ドライブ基板固定部の近傍部位には、前記ヒートシンクに固定される複数のヒートシンク固定部がさらに立設され、前記ヒートシンク固定部間には、前記カード型電力変換デバイスが嵌め込まれる空間が確保される。
【0014】
本発明の一態様は、上記のデバイス固定構造を有する電力変換装置である。
【発明の効果】
【0015】
以上の本発明によれば、電力変換装置に適用されるカード型電力変換デバイスの固定にあたり、装置の小型化及び部品点数削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)本発明の一態様であるデバイス固定構造の斜視図、(b)当該デバイス固定構造の側面図。
【
図2】(s)ドライブ基板及び制御基板が配置される前記デバイス固定構造のホルダーの斜視図、(b)ヒートシンクが配置される当該ホルダーの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1に示された本発明の一態様であるデバイス固定構造1は、インバータ装置等に例示される電力変換装置のカード型電力変換デバイス2の固定に適用される。
【0019】
カード型電力変換デバイス2は、ホルダー3とヒートシンク4とにより挟み込まれて前記電力変換装置の筐体5内に配置される。
【0020】
ホルダー3にはドライブ基板6と制御基板7とが固定される。各基板の面積がカード型電力変換デバイス2の表面積と同等であることが装置小型化の観点から望まれる。よって、
図1の態様は電力変換装置の電子部品を搭載する基板はカード型電力変換デバイス2の表面積と同等の二枚の基板であるドライブ基板6と制御基板7に分離されている。
【0021】
ドライブ基板6と制御基板7は図示省略の基板対基板コネクタを介して電気的に接続される。ドライブ基板6は、カード型電力変換デバイス2のスイッチング素子へのオンオフ信号を出力する。制御基板7は、ドライブ基板6への制御信号を出力する。
【0022】
ホルダー3は周知の樹脂製または金属製の部材からなる。カード型電力変換デバイス2は片面が放熱面である場合、当該放熱面はヒートシンク4側に配置される。また、カード型電力変換デバイス2の両面が放熱面である場合、ホルダー3は金属製の部材から成る。
【0023】
ホルダー3の縁部には、ドライブ基板6がホルダー3の表面部と対向してボルト等の締結具8により固定される複数のドライブ基板固定部31が立設される。さらに、このドライブ基板固定部31の近傍部位には、締結具8によりヒートシンク4に固定される複数のヒートシンク固定部32が立設される。特に、このヒートシンク固定部32をヒートシンク4に固定する締結具8はホルダー3、ヒートシンク4、カード型電力変換デバイス2、ドライブ基板6及び制御基板7を格納する筐体5に固着される。
【0024】
また、
図2(b)のように、ホルダー3における複数のヒートシンク固定部32間には、カード型電力変換デバイス2が嵌め込まれる空間30が確保される。
【0025】
ホルダー3の表面部及び縁部には、制御基板7がホルダー3の表面部と対向して締結具8により固定される制御基板固定部33が立設される。制御基板固定部33はドライブ基板固定部31よりも全長が大きく設定されることで、ホルダー3においてドライブ基板6と制御基板7が所定間隔に配置される。
【0026】
図1を参照してカード型電力変換デバイス2の組み付け手順について説明する。
【0027】
先ず、電力変換装置の筐体5の内面にヒートシンク4が配置される。次いで、ヒートシンク4上にカード型電力変換デバイス2が配置される。次いで、空間30にカード型電力変換デバイス2が嵌め込まれてホルダー3がヒートシンク4上に配置される。次いで、ホルダー3のヒートシンク固定部32が締結具8によりヒートシンク4に固定されると共にヒートシンク4が筐体5の内面に固定される。次いで、ドライブ基板6がホルダー3のドライブ基板固定部31上に配置されて締結具8によりに固定される。そして、制御基板7が、基板対基板コネクタを介してドライブ基板6に接続された後、制御基板固定部33上に配置されて締結具8により固定される。
【0028】
以上のようにカード型電力変換デバイス2はドライブ基板6及び制御基板7と共に筐体5内に固定される。特に、ヒートシンク4とでカード型電力変換デバイス2を固定するホルダー3にドライブ基板6及び制御基板7が固定されることで、カード型電力変換デバイス2の近傍にドライブ基板6、制御基板7を配置でき、位置精度の高いデバイス固定が可能となる。さらには、インバータ要素の小型化と部品点数削減が図られる。また、ドライブ基板6と制御基板7のいずれかを任意に交換できるので、ドライブ基板の機能を有する制御基板の固定構造よりもメンテナンス性及び拡張性に優れる。そして、電力変換装置の電子部品を搭載する基板がカード型電力変換デバイス2と同等であるドライブ基板6及び制御基板7に分離されることで、電力変換装置の小型化がさらに図られる。
【0029】
また、ホルダー3へのドライブ基板6と制御基板7の固定により、組立位置精度が向上し、基板対基板コネクタによるドライブ基板6と制御基板7の接続が可能となる。したがって、ドライブ基板6と制御基板7を接続するケーブルが不要となり、部品点数を低減できる。そして、ドライブ基板6,制御基板7間の電気接続配線長が短縮化されるので、ドライブ基板6及び制御基板7のノイズ誤動作を低減でき、電力変換装置(特に、インバータ装置)の信頼性が向上する。
【0030】
さらに、カード型電力変換デバイス2の放熱面がヒートシンク4側に配されること、または、カード型電力変換デバイス2の両面が放熱面を有する場合にホルダー3を金属製の部材で構成することで、カード型電力変換デバイス2の放熱を図ることができる。
【0031】
そして、ホルダー3にて複数のヒートシンク固定部32により確保された空間30にカード型電力変換デバイス2が嵌め込まれることで、ホルダー3及びヒートシンク4の面内方向へのカード型電力変換デバイス2の位置ずれが抑制される。したがって、カード型電力変換デバイス2、ドライブ基板6及び制御基板7を有する電力変換装置の組み立て性作業性がさらに向上する。
【0032】
尚、本発明のデバイス固定構造は、インバータ装置以外の電力変換装置(例えば、DCDCコンバータ等)にも適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1…デバイス固定構造
2…カード型電力変換デバイス
3…ホルダー、30…空間、31…ドライブ基板固定部、32…ヒートシンク固定部、33…制御基板固定部
4…ヒートシンク
5…筐体
6…ドライブ基板
7…制御基板
8…締結具