(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084890
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】自動運転車両の走行支援装置
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/50 20060101AFI20240619BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20240619BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240619BHJP
【FI】
B60Q1/50 Z
B60W30/10
B60W60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199059
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 史彦
【テーマコード(参考)】
3D241
3K339
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BB16
3D241BB37
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA13Z
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3D241DA52Z
3D241DB01Z
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3D241DD13Z
3K339AA02
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3K339MC51
3K339MC52
3K339MC56
3K339MC58
3K339MC77
3K339MC90
(57)【要約】
【課題】自車両の合流行動をより早期に周囲へ周知する。
【解決手段】自動運転可能な自車両1が走行している合流車線から隣接する走行車線への車線変更の要求指示を検出する車線変更要求検出部11と、車線変更要求検出部11によって自車両1の車線変更の要求指示が検出されたとき、走行車線上に、自車両1が合流する目標合流エリアを設定する目標合流エリア設定部12と、目標合流エリア設定部12で設定された目標合流エリアに向けて自車両1から照明を照射する照明照射部61と、照明照射部61を制御して目標合流エリアに基づく照射範囲に照射させる照明制御部62と、を備えた自動運転車両1の走行支援装置であって、目標合流エリア設定部12は、走行車線上において、合流車線の終了地点に隣接するエリアを目標合流エリアと設定し、照明制御部62は、少なくとも自車両1の全長を照射範囲として設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転可能な自車両が走行している合流車線から隣接する走行車線への車線変更の要求指示を検出する車線変更要求検出部と、
前記車線変更要求検出部によって前記自車両の車線変更の前記要求指示が検出されたとき、前記走行車線上に、前記自車両が合流する目標合流エリアを設定する目標合流エリア設定部と、
前記目標合流エリア設定部で設定された前記目標合流エリアに向けて前記自車両から照明を照射する照明照射部と、
前記照明照射部を制御して前記目標合流エリアに基づく照射範囲に照射させる照明制御部と、を備えた自動運転車両の走行支援装置であって、
前記目標合流エリア設定部は、前記走行車線上において、前記合流車線の終了地点に隣接するエリアを前記目標合流エリアとして設定し、
前記照明制御部は、少なくとも前記自車両の全長を前記照射範囲として設定する
ことを特徴とする、自動運転車両の走行支援装置。
【請求項2】
前記照明制御部は、前記自車両の位置と前記目標合流エリアとの間隔(Z)に応じて前記照射範囲を設定すると共に、前記間隔が短くなるほど前記照射範囲を狭くする
ことを特徴とする、請求項1に記載の自動運転車両の走行支援装置。
【請求項3】
前記照明制御部は、前記自車両の車速に応じて前記照射範囲を設定すると共に、前記車速が高いほど前記照射範囲を狭くする
ことを特徴とする、請求項1に記載の自動運転車両の走行支援装置。
【請求項4】
前記自車両が前記合流車線を走行中に前記走行車線を走行する他車両を検出する他車両検出部を備え、
前記照明制御部は、前記照射範囲内に前記他車両が検出された場合に、前記照射範囲を前記他車両の側方及び後方にずらして設定し直す
ことを特徴とする、請求項1に記載の自動運転車両の走行支援装置。
【請求項5】
前記照明照射部は、複数の照射パターンを備えており、
前記照明制御部は、前記自車両と前記目標合流エリアとの間隔が所定未満となったときに前記照射パターンを切り換える
ことを特徴とする、請求項1に記載の自動運転車両の走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、自動運転車両の走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車やトラック等の車両の自動運転支援システムの研究、開発が行われている。車両走行において、道路の合流または分岐がある箇所では、自車両と他車両との距離が接近しやすく、また、他車両の運転状況が急変しやすい箇所でもあるため、自動運転による運転支援を検討する上でとても重要となっている。また、自車両に自動運転支援システムが搭載されている場合であっても、他車両に自動運転支援システムが搭載されていないケースも想定され、この場合、手動運転である他車両の運転状況を予測したり把握したりすることが一層困難となりうる。
【0003】
道路の合流箇所における車両の自動運転支援システムとして、特許文献1が開示されている。特許文献1では、自車両が走行する第1車線から、隣接する第2車線に車線を変更する場合に、第2車線を走行する第1他車両と第2他車両との間の路面上に、自車両が備えた照明ユニットから光パターンを照射している。さらに、第1他車両と第2他車両との車間距離に応じて、光パターンの長さを変化させる。これにより、自車両が第1車線から第2車線に車線変更する場合において、第2車線を走行する他車両が、自車両の車線変更の意図を明確に把握することができ、車線変更の際における車車間のリッチな視覚的コミュニケーションを実現可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の技術は、第1車線を走行する自車両から、第2車線を走行する第1他車両と第2他車両との間の路面までの距離が近くないと、この路面に光パターン照射することができないことが考えられる。また、第2車線を走行する他車両の速度に合わせて合流する目標ポイントへ照射したい場合には、目標ポイントがその他車両の影と重なってしまい、正確に路面へ照射することができない可能性がある。
本件は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、自動運転車両が走行している合流車線から隣接する走行車線に合流する場合において、自車両の合流行動をより早期に周囲へ周知することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現できる。
(1)適用例に係る自動運転車両の走行支援装置は、自動運転可能な自車両が走行している合流車線から隣接する走行車線への車線変更の要求指示を検出する車線変更要求検出部と、前記車線変更要求検出部によって前記自車両の車線変更の前記要求指示が検出されたとき、前記走行車線上に、前記自車両が合流する目標合流エリアを設定する目標合流エリア設定部と、前記目標合流エリア設定部で設定された前記目標合流エリアに向けて前記自車両から照明を照射する照明照射部と、前記照明照射部を制御して前記目標合流エリアに基づく照射範囲に照射させる照明制御部と、を備えた自動運転車両の走行支援装置であって、前記目標合流エリア設定部は、前記走行車線上において、前記合流車線の終了地点に隣接するエリアを前記目標合流エリアと設定し、前記照明制御部は、少なくとも前記自車両の全長を前記照射範囲として設定する。
【0007】
適用例に係る自動運転車両の走行支援装置では、自車両が走行している合流車線から隣接する走行車線への車線変更が検出されると、走行車線上に目標合流エリアが設定されると共に、照射範囲が設定され、この照射範囲に照明が照射される。目標合流エリアは合流車線の終了地点に隣接するエリアに設定されるので、自車両から離れた位置の路面に照明が照射される。そのため、自車両の合流行動がより早期に周囲へ周知される。また、照射範囲は、目標合流エリアに基づき、少なくとも自車両の全長に設定されるので、走行車線を走行する他車両が照射範囲へ進入するリスクを減らすと共に、合流に適した場所に照明が照射される。
【0008】
(2)本適用例に係る走行支援装置において、前記照明制御部は、前記自車両の位置と前記目標合流エリアとの間隔に応じて前記照射範囲を設定すると共に、前記間隔が短くなるほど、前記照射範囲を狭くしてもよい。
本適用例に係る走行支援装置では、自車両の走行に応じて変化する位置関係を考慮して適切に照射範囲が設定されるので、自車両の合流動作が正しく周囲へ周知される。
【0009】
(3)本適用例に係る走行支援装置において、前記照明制御部は、前記自車両の車速に応じて前記照射範囲を設定すると共に、前記車速が高いほど、前記照射範囲を狭くしてもよい。
本適用例に係る走行支援装置では、自車両の車速に応じて適切に照射範囲が設定されるので、自車両の合流動作が正しく周囲へ周知される。
【0010】
(4)本適用例に係る走行支援装置は、前記自車両が前記合流車線を走行中に前記走行車線を走行する他車両を検出する他車両検出部を備え、前記照明制御部は、前記照射範囲内に前記他車両が検出された場合に、前記照射範囲を前記他車両の側方及び後方にずらして設定し直してもよい。
本適用例に係る走行支援装置では、走行車線上の他車両の走行を阻害することなく、自車両の合流動作が早期に周囲へ周知される。そして、他車両に対して照射範囲内への進入制限を促し、照射範囲を回避させることができる。
【0011】
(5)また、本適用例に係る走行支援装置において、前記照明照射部は、複数の照射パターンを備えており、前記照明制御部は、前記自車両と前記目標合流エリアとの間隔が所定未満となったときに前記照射パターンを切り換えてもよい。
本適用例に係る走行支援装置では、自車両の合流が近くなったら照射をより目立たせることが可能であり、周囲に対して自車両の合流が切迫していることが周知される。
【発明の効果】
【0012】
適用例に係る自動運転車両の走行支援装置によれば、自動運転車両が走行している合流車線から隣接する走行車線に合流する場合において、自車両の合流行動をより早期に周囲へ周知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】適用例に係る走行支援装置を搭載した自動運転車両の構成を示すブロック図である。
【
図2】(a)~(c)は適用例に係る走行支援装置の照射制御を説明する図である。
【
図3】(a)及び(b)は適用例に係る走行支援装置の照射制御を説明する図である。
【
図4】(a)及び(b)は適用例に係る走行支援装置の照射制御の他の例を説明する図である。
【
図5】適用例に係る走行支援装置の照射制御の例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、本件の適用例に係る自動運転車両の走行支援装置について説明する。以下の適用例はあくまでも例示に過ぎず、この適用例で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。下記の適用例の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、下記の適用例の各構成は、必要に応じて取捨選択でき、あるいは公知技術に含まれる各種構成と適宜組み合わせられる。
【0015】
本適用例に係る走行支援装置は、自動運転車両(「自車両」とも言う)が走行する合流車線から、これに隣接する走行車線へ車線変更する(合流する)場合に、周囲(例えば、走行車線を走行する他車両)に対して、自車両の合流行動をより早期に周知するものである。本適用例では、高速道路を想定し、自車両が加速車線(合流車線)から本線(走行車線)に合流する場合を例示するが、走行路の種類は特に限定されず、二車線以上の走行路であれば、自車両が走行している車線を「合流車線」と捉え、これに隣接する車線を「走行車線」と捉えることで、本走行支援装置を適用可能である。
【0016】
本適用例に係る走行支援装置を備えた自車両は、自動運転可能な車両(トラック,バス,自動車など)である。一方、他車両の種類は特に限られず、自動運転機能の有無を問わない車両(トラック,バス,乗用車,二輪車など)である。なお、ここでいう自動運転可能な車両とは、運転者の手動運転操作によらず自動で走行可能な機能を持った車両である。自動運転可能な車両は、自動運転制御中では、車載制御装置が加速制御と操舵制御と制動制御とを行い、運転者の手動運転操作に代わって車両を走行させる。
【0017】
[1.構成]
図1は、本適用例に係る走行支援装置を備えた自動運転車両1(「車両1」,「自車両1」とも言う)の構成を示すブロック図である。車両1は、例えば、トラック,バス,自動車などであり、運転者の手動運転操作によらず自動で走行可能な機能(自動運転機能)を備える。
【0018】
車両1には、車両1を制御する制御装置10と、各種センサ類21~29と、アクセル装置(ACC)30と、ブレーキ装置(BRK)40と、ステアリング装置(STR)50と、車両用照明システム60とが設けられる。制御装置10は、例えばマイクロプロセッサやROM、RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成された電子制御装置(ECU)である。制御装置10は、ROM、RAM等のメモリ装置に記憶されたソフトウェアプログラムを実行することにより、自動運転制御や、後述する照射制御を実施する。なお、制御装置10は、車両1が備える各種装置を統括制御するための電子制御装置(VCU)の一部として構成されてもよいし、VCUとは別の電子制御装置により構成されてもよい。
【0019】
各種センサ類21~29は、具体的には、カメラ21,レーダー22,GNSS23,車速センサ24,加速度センサ25,アクセル開度センサ26,ブレーキセンサ27,ステアリング角センサ28,ウィンカスイッチ29である。
カメラ21は、車両1の周囲を静止画や動画で撮影する撮像装置であり、例えば、車両1の前端部,後端部,側面に配置される。カメラ21で撮影された画像を解析することで、車両1の周囲の状況を精度よく把握可能である。
【0020】
レーダー22は、例えば、レーザーレーダーやミリ波レーダーなどの物体探知装置である。レーダー22の検出結果を用いることで、車両1の周囲の物体(例えば、他車両)の位置や相対距離を精度よく把握可能である。GNSS23は、車両1の現在位置を計測する測位装置である。GNSS23は、マップ情報に基づいて、車両1の現在位置を精度よく特定可能である。なお、マップ情報は、制御装置10に設けられる。カメラ21,レーダー22及びGNSS23は、車両1の周囲の情報を検出する手段(周辺環境検出手段)である。なお、これらの他に、インフラ設備(路側機等)や他車両と通信することで情報を取得する無線通信部が設けられうる。
【0021】
車速センサ24は、車両1の車速を検出するセンサであり、加速度センサ25は、車両1の前後加速度や横加速度を検出するセンサである。アクセル開度センサ26は、アクセルペダルの操作量や操作速度等を検出するセンサであり、ブレーキセンサ27は、ブレーキペダルの操作量や操作速度等を検出するセンサである。ステアリング角センサ28は、ステアリング角度を検出するセンサであり、ウィンカスイッチ29は、ウィンカ情報(ウィンカのオンオフ及び方向)を検出する手段である。各種センサ類21~29で検出された情報(検出信号)は、制御装置10に入力される。
【0022】
アクセル装置30,ブレーキ装置40及びステアリング装置50は、車両1が自動運転で走行する際に制御装置10により制御される装置である。制御装置10は、例えば、自動運転モードが設定された場合に、各種センサ類21~29からの情報に基づき、車両1の目標出力(目標トルク),目標車速,目標舵角などを算出して、アクセル装置30,ブレーキ装置40及びステアリング装置50をそれぞれ制御する。なお、これらの装置30,40,50の説明は省略する。
【0023】
車両用照明システム60は、車両1から路面上に向かって照明を照射するためのシステムであり、照明ユニット(照明照射部)61と照明制御部62とを含む。照明ユニット61は、後述する目標合流エリア6に向けて車両1から照明を照射する装置であり、例えば車両1のルーフの前部に配置される。照明制御部62は、照明ユニット61を制御して、所定の照射範囲7に照明を照射させるものである。照明制御部62は、例えば、電子制御装置のハードウェア資源を用いて実行されるソフトウェアとして設けられる。なお、
図1では、照明制御部62が上記の制御装置10とは別に設けられているが、照明制御部62が制御装置10に設けられてもよい。
【0024】
[2.制御]
車両1は、自車両1が走行している合流車線から隣接する走行車線へ車線変更する場合に、路面上に照明を照射する照射制御を実施する。これにより、自車両1の周囲に対して、自車両1の合流行動をより早期に周知する。
図1に示すように、制御装置10内には、照射制御を実施するための機能要素として、車線変更要求検出部11と、目標合流エリア設定部12と、他車両検出部13とが設けられている。これらの機能要素11~13は、制御装置10の機能を便宜的に分類して示したものであり、例えば、制御装置10のハードウェア資源を用いて実行されるソフトウェアとして設けられている。上記の照明制御部62も照射制御を実施するための機能要素である。なお、制御装置10内には、自動運転制御を行う車両制御部も設けられてよい。
【0025】
制御装置10の入力側には、上記の各種センサ類21~29が接続されている。また、制御装置10の出力側には、アクセル装置30,ブレーキ装置40,ステアリング装置50及び車両用照明システム60が接続されている。以下、
図2(a)~(c),
図3(a)及び(b),
図4(a)及び(b)を適宜参照しながら照射制御について説明する。これらの図では、自車両1が合流車線3から走行車線4へ車線変更する場合を示しており、
図2(a)~(c)は他車両が存在しない場合を示し、
図3(a)及び(b),
図4(a)及び(b)は他車両2が存在する場合を示す。
【0026】
車線変更要求検出部11は、自車両1が走行している合流車線3から隣接する走行車線4への車線変更の要求指示を検出する。要求指示は、例えばウィンカ情報である。すなわち、車線変更要求検出部11は、合流車線3を走行中にウィンカ情報を取得したら、そのウィンカ情報を車線変更の要求指示として検出する。例えば、
図2(a),
図3(a),
図4(a)に示すように、合流車線3の開始地点3aを通過したタイミングで、車線変更要求検出部11は要求指示を検出する。
【0027】
目標合流エリア設定部12は、車線変更要求検出部11によって自車両1の車線変更の要求指示が検出されたとき、走行車線4上に、自車両1が合流する目標合流エリア6を設定する。目標合流エリア6は、自車両1が走行車線4に合流する際の目標とするエリアである。目標合流エリア設定部12は、走行車線4上において、合流車線3の終了地点3bに隣接するエリアを目標合流エリア6と設定する。終了地点3bは、合流車線3の車幅が狭くなり始める地点である。
【0028】
他車両検出部13は、自車両1が合流車線3を走行中に走行車線4を走行する他車両2を検出する。具体的に言えば、カメラ21やレーダー22等の周辺環境検出手段から入力される信号に基づいて、他車両検出部13は他車両2の有無を検出する。例えば、
図2(a)に示す状況では、他車両検出部13は他車両2を検出せず、
図3(a)及び
図4(a)に示す状況では、他車両検出部13は他車両2(2A,2B)を検出する。なお、走行車線4の合流車線3とは逆側に隣接する追越車線5を走行する他車両は検出しなくてよい。
【0029】
照明制御部62は、上記の通り、照明ユニット61を制御して所定の照射範囲7に照明を照射させる。照射範囲7は、実際に照明が照射される範囲であり、目標合流エリア設定部12で設定された目標合流エリア6に基づいて設定される。具体的に言えば、照明制御部62は、少なくとも自車両1の全長(車長方向長さ全体)を照射範囲7として設定する。また、照明制御部62は、
図2(a)に示すように、目標合流エリア6の略全体を含むように照射範囲7を設定したり、
図3(a)に示すように、目標合流エリア6に隣接する範囲を照射範囲7として設定したり、
図4(a)に示すように、目標合流エリア6の少なくとも一部と重なる範囲を照射範囲7として設定したりする。
【0030】
より具体的には、照明制御部62は、
図2(a)に示すように、目標合流エリア6が設定されると、自車両1の現在位置からXだけ先の地点Pから、目標合流エリア6の進行方向側の先端位置(合流車線3の終了地点3b近傍)までの範囲を照射範囲7として設定する。このときの照射範囲7の長さYは、自車両1の全長に第一所定値αを加算した値(Y=全長+所定値α)とされる。なお、目標合流エリア6の長さをAとし、自車両1の位置と目標合流エリア6との間隔をZとすると、X+Y=A+Zとなる。
【0031】
照明制御部62は、自車両1の位置と目標合流エリア6との間隔Zに応じて照射範囲7を設定すると共に、間隔Zが短くなるほど照射範囲7を狭くしてもよい。間隔Zは、自車両1の前面位置と目標合流エリア6の進行方向逆側の先端位置までの距離である。例えば、
図2(b)に示すように、車両1が走行して間隔Zが短くなるにつれて照射範囲7の長さYを短くしてよい。照射範囲7の最小長さを自車両1の全長+第二所定値βとすると、間隔Zが短くなるにつれて、全長に加算する値を、第一所定値αから第二所定値βに向けて徐々に小さくしていけばよい。なお、車両1が地点Pを通過するまでは照射範囲7の長さYを一定とし、車両1が地点Pを通過してからの間隔Zに応じて照射範囲7の長さYを変更してもよい。
【0032】
また、照明制御部62は、自車両1の車速に応じて照射範囲7を設定すると共に、車速が高いほど照射範囲7を狭くしてもよい。例えば、
図2(a)の間隔Zの代わりに車速を検出し、低車速であるほど照射範囲7の長さYを長くし、高車速であるほど照射範囲7の長さYを短くしてよい。なお、車両1が地点Pを通過するまでは照射範囲7の長さYを一定とし、車両1が地点Pを通過してからの車速に応じて照射範囲7の長さYを変更してもよい。
【0033】
照明ユニット61は、複数の照射パターンを備えていてもよい。照射パターンとしては、例えば、白色や黄色や赤色といった異なる色のパターンや、
図2(a)に示すように照射範囲7内に合流方向を示す矢印マークが現れるパターンや、照射範囲7を点滅させるパターンなどが挙げられる。この場合に、照明制御部62は、
図2(c)に示すように、自車両1と目標合流エリア6との間隔Zが所定未満となったときに照射パターンを切り換えてよい。これにより、周辺車両に対して合流が切迫していることを周知可能である。
【0034】
なお、
図2(c)に示す例では、間隔Zがマイナスになった状態(自車両1の前面位置が目標合流エリア6の進行方向逆側の先端位置を超えた状態)となっており、間隔Zが所定以上であるときよりも目立つ照射パターン(例えば濃い色や目立つ模様のパターン)に切り換えられている。照射パターンを切り換えるときの閾値(上記の所定)は予め設定されており、例えば自車両1の全長よりも十分に短く、例えばゼロである。
【0035】
このように、他車両2が検出されない場合には、
図2(a)~(c)に示すように、自車両1の走行する合流車線3に隣接する走行車線4上に、目標合流エリア6が設定されると共に、目標合流エリア6のほぼ全体を包含する照射範囲7に対し、照明が照射されることで、自車両1の合流行動がより早期に周知される。
【0036】
一方、走行車線4上の照射範囲7内に他車両2が存在する場合には、他車両2に直接的に照明を照射するわけにはいかない。このため、
図3(a)に示すように、他車両検出部13により、設定した照射範囲7内に他車両2Aが検出された場合には、照明制御部62は、照射範囲7をこの他車両2Aの側方及び後方にずらして設定し直す。言い換えれば、照明制御部62は、他車両2Aを回避した位置を照射範囲7に再設定し、照明ユニット61を制御してこの照射範囲7に照明を照射させる。これにより、他車両2Aの走行に支障をきたすことなく、他車両2Aに対して素早い退避を促しつつ、自車両1の合流行動をより早期に周知可能である。また、他車両2Aの後方を走行している別の他車両2Bに対しては、照射範囲7からの回避を早期に促すことが可能となる。
【0037】
図3(a)に示す例では、他車両2Aが目標合流エリア6の進行方向後側の一部に重なる位置にいるため、照射範囲7は、他車両2Aの後方、言い換えれば走行車線4上の範囲と、この範囲と他車両2Aと目標合流エリア6との側方、言い換えれば合流車線3上の範囲とのそれぞれに再設定されている。また、
図4(a)に示す例では、他車両2Aは
図3(a)と略同じであるが、照射範囲7は、他車両2Aの後方、言い換えれば走行車線4上の範囲と、他車両2A及び目標合流エリア6の側方、言い換えれば合流車線3上の範囲とのそれぞれに再設定されており、合流車線3上の範囲がやや走行車線4側に向かって斜めに延びている。
【0038】
照射範囲7内に他車両2Aが検出された場合にも、
図2(a)~(c)で説明したように、照明制御部62は、間隔Zが短くなるほど照射範囲7を狭くしてもよい。また、照射範囲7内に他車両2Aが検出された場合に、自車両1の車速が高いほど照射範囲7を狭くしてもよい。また、
図3(b)及び
図4(b)に示すように、上記と同様、自車両1と目標合流エリア6との間隔Zが所定未満となったときに照射パターンを切り換えてよい。なお、
図3(a)の状態からしばらくして、照射範囲7内に他車両2が検出されなくなったら、
図2(a)に示すような照射範囲7を設定すればよい。
【0039】
図5は、制御装置10が実施する照射制御の例を説明するフローチャートである。
本フローチャートは、自車両1が合流車線3の開始地点3aを通過したときに、開始する。なお、自車両1が自動運転しているか手動運転しているかは問わない。
ステップS1において、車線変更要求検出部11は、ウィンカ情報を取得して、合流車線3を走行している自車両1の走行車線4への車線変更の要求指示を検出する。
【0040】
ステップS2において、制御装置10は、各種情報(自車両1の現在の位置情報,自車両1の周辺情報,自車両1の車速情報など)を取得する。
ステップS3において、目標合流エリア設定部12は、走行車線4上に目標合流エリア6を設定する。
ステップS4において、照明制御部62は、目標合流エリア6に基づいて照射範囲7を設定する。
【0041】
ステップS5において、照明制御部62は、他車両検出部13により、照射範囲7内に他車両2が検出されたか否かを判定する。照射範囲7内に他車両2が検出されない場合(ステップS5のNo)、照明制御部62は、車速情報と位置情報とを再取得し(ステップS6)、照射範囲7を再設定(更新)して(ステップS7)、照明ユニット61を制御して、照射範囲7(路面上)へ照明を照射させる(ステップS8)。
【0042】
ステップS12において、自車両1の位置と目標合流エリア6との間の間隔Zが所定未満であるか否かが判定される。間隔Zが所定以上である場合(ステップS12のNo)、ステップS5に戻り、現時点で設定されている照射範囲7内に他車両2が検出されたか否かが判定される。
【0043】
一方、照射範囲7内に他車両2が検出された場合(ステップS5のYes)、照明制御部62は、車速情報と位置情報とを再取得し(ステップS9)、照射範囲7を合流車線3上と走行車線4上とに再設定(更新)して(ステップS10)、照明ユニット61を制御して、照射範囲7内の他車両2を避けて、路面上に照明を照射させる(ステップS11)。
そして、間隔Zが所定以上である間(ステップS12のNo)、ステップS5~S8、又は、ステップS9~S11が繰り返し実施される。
【0044】
間隔Zが所定未満になると(ステップS12のYes)、照明制御部62は、照明ユニット61の照射パターンを切り換えて、路面上に照明を照射させる(ステップS13)。
ステップS14において、自車両1が目標合流エリア6に入ったか否かが判定される。自車両1が目標合流エリア6に入るまでの間(ステップS14のNo)、ステップS13を繰り返して、照射パターンの照射を継続する。
【0045】
一方、自車両1が少しでも目標合流エリア6に入った場合(ステップS14のYes)、照明ユニット61をオフに制御して照射を終了する(ステップS15)。これにより、この合流車線3での照射制御が終了する。そして、制御装置10は、本フローチャートの処理を終了する。なお、自車両1が別の合流車線に進入したら、本フローチャートを再び開始する。
【0046】
[3.作用及び効果]
上記の適用例に係る走行支援装置では、自車両1が走行している合流車線3から隣接する走行車線4への車線変更が検出されると、走行車線4上に目標合流エリア6が設定されると共に、照射範囲7が設定され、この照射範囲7に照明が照射される。目標合流エリア6は合流車線3の終了地点3bに隣接するエリアに設定されるので、自車両1から離れた位置の路面に照明を照射することができ、自車両1の合流行動をより早期に周囲へ周知することができる。また、照射範囲7は、目標合流エリア6に基づき、少なくとも自車両1の全長に設定されるので、走行車線を走行する他車両が照射範囲へ進入するリスクを減らすと共に、合流に適した場所に照明を照射できる。
【0047】
これにより、例えば
図3(a)及び
図4(a)に示すように、合流車線3に進入し始めた自車両1のやや後方の走行車線4上を走行する他車両2Bが、前方の照射範囲7(照明が照射されているエリア)を早めに認識できる。そのため、この他車両2Bは、余裕をもって追越車線5に車線変更をしたり減速したりして、照射範囲7を回避することができる。また、追越車線5を走行する他車両は、走行車線4上に照射範囲7が存在することを認識でき、いずれこの照射範囲7に車両1が合流してくることを把握できる。そのため、追越車線5上の他車両に対しては、追越車線5から走行車線4へ車線変更をさせないことができる。
【0048】
本適用例に係る走行支援装置では、自車両1の位置と目標合流エリア6との間隔Zに応じて照射範囲7が設定される共に、この間隔Zが短くなるほど照射範囲が狭くなるので、自車両1の走行に応じて変化する位置関係を考慮して適切に照射範囲7を設定でき、自車両1の合流動作を正しく周囲へ周知することができる。
【0049】
また、本適用例に係る走行支援装置において、自車両1の車速に応じて照射範囲7が設定される共に、この車速が高いほど照射範囲が狭くなる場合にも、自車両1の車速に応じて適切に照射範囲7を設定でき、自車両1の合流動作を正しく周囲へ周知することができる。また、車速を考慮することで、特に、高速道路の合流部分のように、合流車線3が加速車線である場合に、照射範囲7をより適切に設定することができる。
【0050】
本適用例に係る走行支援装置では、自車両1が、走行車線4を走行する他車両2を検出する他車両検出部13を備えており、照明制御部62が、照射範囲7内に他車両2が検出された場合には、照射範囲7を、他車両2の側方及び後方にずらして設定し直すので、他車両2の走行を阻害することなく、自車両1の合流動作を早期に周囲へ周知することができる。具体的に言えば、照射範囲7が他車両2の側方に設定されるので、この他車両2の運転者が照射範囲7を認識できる。また、照射範囲7が他車両2の後方にも設定されるので、この他車両2の後ろを走行する別の他車両2に対しても照射範囲7の存在を気付かせることができる。したがって、他車両2に対し、走行車線4上の照射範囲7を回避するよう促すことができる。
【0051】
本適用例に係る走行支援装置では、照明ユニット61が複数の照射パターンを備えており、照明制御部62は、自車両1と目標合流エリア6との間隔Zが所定未満となったときに照射パターンを切り換える。そのため、自車両1の合流が近くなったら照射をより目立たせることができ、周囲に対して自車両1の合流が切迫していることを周知することができる。
【0052】
[4.その他]
上記の適用例に係る走行支援装置では、照明制御部62が、間隔Zに応じて、あるいは、自車両1の車速に応じて、照射範囲7を変化させる場合を例に挙げた。変形例として、間隔Z及び自車両1の車速の双方に応じて(双方を考慮して)照射範囲7を変化させてもよい。反対に、照明制御部62は、合流車線3の開始地点3aにおいて最初に設定した照射範囲7を変化させずに、言い換えれば間隔Zや車速によらず一定にしてもよい。なお、目標合流エリア6に基づく照射範囲7の設定方法は上記のものに限らず、例えば目標合流エリア6と照射範囲7とを互いに一致させてもよい。少なくとも、目標合流エリア6は、走行車線4上において、合流車線3の終了地点3bに隣接するエリアに設定されればよく、照射範囲7は、目標合流エリア6に基づくと共に少なくとも自車両1の全長を含んで設定されればよい。
【0053】
他車両検出部13は、自車両1が合流車線3を走行中に走行車線4を走行する他車両2に加えて、追越車線5を走行する他車両を検出してもよい。また、照明制御部62は、照射範囲7内に他車両2が検出された場合に、照射範囲7をこの他車両2の側方及び後方のどちらか一方だけにずらして設定し直してもよい。照明ユニット61が複数の照射パターンを備えていれば、他車両2の側方及び側方に設定した照射範囲7に、異なる照射パターンで照明を照射してもよい。なお、照明ユニット61として、映像を投影するプロジェクターを採用してもよい。プロジェクターには、いわゆるプロジェクションマッピングで用いられる周知の映像投影技術を適用してよい。
【0054】
[5.付記]
以上の適用例に関する付記を開示する。
[付記1]
自動運転可能な自車両が走行している合流車線から隣接する走行車線への車線変更の要求指示を検出する車線変更要求検出部と、
前記車線変更要求検出部によって前記自車両の車線変更の要求指示が検出されたとき、前記走行車線上に、前記自車両が合流する目標合流エリアを設定する目標合流エリア設定部と、
前記目標合流エリア設定部で設定された前記目標合流エリアに向けて前記自車両から照明を照射する照明照射部と、
前記照明照射部を制御して前記目標合流エリアに基づく照射範囲に照射させる照明制御部と、を備えた自動運転車両の走行支援装置であって、
前記目標合流エリア設定部は、前記走行車線上において、前記合流車線の終了地点に隣接するエリアを目標合流エリアと設定し、
前記照明制御部は、少なくとも前記自車両の全長を前記照射範囲として設定する
ことを特徴とする、自動運転車両の走行支援装置。
[付記2]
前記照明制御部は、前記自車両の位置と前記目標合流エリアとの間隔(Z)に応じて前記照射範囲を設定すると共に、前記間隔が短くなるほど前記照射範囲を狭くする
ことを特徴とする、付記1に記載の自動運転車両の走行支援装置。
[付記3]
前記照明制御部は、前記自車両の車速に応じて前記照射範囲を設定すると共に、前記車速が高いほど前記照射範囲を狭くする
ことを特徴とする、付記1又は2に記載の自動運転車両の走行支援装置。
[付記4]
前記自車両が前記合流車線を走行中に前記走行車線を走行する他車両を検出する他車両検出部を備え、
前記照明制御部は、前記照射範囲内に前記他車両が検出された場合に、前記照射範囲を前記他車両の側方及び後方にずらして設定し直す
ことを特徴とする、付記1~3の何れか1つに記載の自動運転車両の走行支援装置。
[付記5]
前記照明照射部は、複数の照射パターンを備えており、
前記照明制御部は、前記自車両と前記目標合流エリアとの間隔が所定未満となったときに前記照射パターンを切り換える
ことを特徴とする、付記1~4の何れか1つに記載の自動運転車両の走行支援装置。
【符号の説明】
【0055】
1 車両,自車両(自動運転車両)
2,2A,2B 他車両
3 合流車線
3a 合流車線の開始地点
3b 合流車線の終了地点
4 走行車線
5 追越車線
6 目標合流エリア
7 照射範囲
10 制御装置
11 車線変更要求検出部
12 目標合流エリア設定部
13 他車両検出部
21 カメラ
22 レーダー
23 GNSS
24 車速センサ
25 加速度センサ
26 アクセル開度センサ
27 ブレーキセンサ
28 ステアリング角センサ
29 ウィンカスイッチ
30 アクセル装置
40 ブレーキ装置
50 ステアリング装置
60 車両用照明システム
61 照明ユニット(照明照射部)
62 照明制御部
A 自車両と目標合流エリアとの間隔
X 自車両から照射範囲までの距離
Y 照射範囲の長さ
Z 目標合流エリアの長さ