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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084897
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199079
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】張 明光
(72)【発明者】
【氏名】田中 訓史
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA02
2H033BA11
2H033BA12
2H033BB01
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BB35
2H033BB38
2H033BE00
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】ニップの搬送方向の長さを大きくすることができ、ひいては、トナー像の定着性の向上を実現できる定着装置を提供する。
【解決手段】定着装置7において、板状の弾性体50は、少なくとも一部が加熱ローラ30との間で無端ベルト41を挟んでニップN1を形成するニップ形成面55と、上流支持面61に接触して支持される上流被支持面51と、下流支持面62に接触して支持される下流被支持面52と、ニップ形成面55よりも搬送方向D1の上流に位置し、ニップ形成面55と上流被支持面51とを接続する上流接続面53であって、搬送方向D1の上流に膨らむように湾曲する上流接続面53と、ニップ形成面55よりも搬送方向D1の下流に位置し、ニップ形成面55と下流被支持面52とを接続する下流接続面54であって、搬送方向D1の下流に膨らむように湾曲し、規制面64に接触して支持される下流接続面54と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱ローラと加圧ユニットとによってシートを挟んで搬送方向に搬送し、前記シート上にトナー像を熱定着させる定着装置であって、
前記加圧ユニットは、前記加熱ローラに接して回転する無端ベルトと、
前記加熱ローラの回転軸心方向に延びて前記無端ベルトの内周面に接触し、前記加熱ローラとの間で前記無端ベルトを挟む板状の弾性体と、
前記回転軸心方向に延びて前記無端ベルトの内周側で前記弾性体を支持するホルダであって、前記加熱ローラと対向する上流支持面と、前記上流支持面よりも前記搬送方向の下流に位置し、前記加熱ローラと対向する下流支持面と、を有するホルダと、
前記下流支持面よりも前記搬送方向の前記下流、かつ前記下流支持面よりも前記加熱ローラに近い側に位置し、前記搬送方向の上流を向く規制面と、
を有し、
前記弾性体は、少なくとも一部が前記加熱ローラとの間で前記無端ベルトを挟んでニップを形成するニップ形成面と、
前記上流支持面に接触して支持される上流被支持面と、
前記下流支持面に接触して支持される下流被支持面と、
前記ニップ形成面よりも前記搬送方向の前記上流に位置し、前記ニップ形成面と前記上流被支持面とを接続する上流接続面であって、前記搬送方向の前記上流に膨らむように湾曲する前記上流接続面と、
前記ニップ形成面よりも前記搬送方向の前記下流に位置し、前記ニップ形成面と前記下流被支持面とを接続する下流接続面であって、前記搬送方向の前記下流に膨らむように湾曲し、前記規制面に接触して支持される前記下流接続面と、
を有していることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記下流被支持面は、前記搬送方向に移動不能な状態で前記下流支持面に接触している請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記上流被支持面は、前記搬送方向の前記上流に移動可能な状態で前記上流支持面に接触している請求項1記載の定着装置。
【請求項4】
前記ホルダが前記規制面を有している請求項1記載の定着装置。
【請求項5】
前記弾性体が弾性変形していない状態において、前記下流接続面における前記規制面に接触する部分は、前記加熱ローラと前記加圧ユニットとが並ぶ方向において、前記ニップ形成面よりも前記下流被支持面に近い位置にある請求項1乃至4のいずれか1項記載の定着装置。
【請求項6】
前記弾性体が弾性変形していない状態において、前記ニップ形成面は、前記回転軸心方向から見て、直線状、又は、前記搬送方向の中間部が前記加熱ローラから離隔するように湾曲している請求項1乃至4のいずれか1項記載の定着装置。
【請求項7】
前記加熱ローラと前記加圧ユニットとを互いに接近及び離隔可能に支持し、前記加圧ユニットを前記加熱ローラに向けて押圧する第1付勢力を発揮可能な付勢機構をさらに備え、
前記第1付勢力によって前記弾性体が弾性変形するときに、前記ニップ形成面における前記搬送方向の下流端が前記ニップを形成する請求項6記載の定着装置。
【請求項8】
前記付勢機構は、前記第1付勢力と、前記第1付勢力よりも小さい第2付勢力であって、前記加圧ユニットを前記加熱ローラに向けて押圧する前記第2付勢力と、を選択的に発揮可能であり、
前記第2付勢力によって前記弾性体が弾性変形するときに、前記ニップ形成面における前記搬送方向の前記下流端は前記ニップを形成しない請求項7記載の定着装置。
【請求項9】
前記弾性体は、ステンレス製である請求項1乃至4のいずれか1項記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図5等に従来の定着装置の一例が開示されている。この定着装置は、加熱ロールと加圧ベルトとによってシートを挟んで搬送方向に搬送し、シート上にトナー像を熱定着させる。
【0003】
加圧ベルトは、ベルト本体、板バネ及び台座部を有している。ベルト本体は、加熱ロールに接して回転する。板バネは、加熱ロールの回転軸心方向に延びてベルト本体の内周面に接触し、加熱ロールとの間でベルト本体を挟む。台座部は、回転軸心方向に延びてベルト本体の内周側で板バネを支持する。
【0004】
板バネは、台座部に支持される基端部と、基端部における搬送方向の上流端からU字状に折り返された折り返し部と、折り返し部の上端から基端部に対向して搬送方向の下流に延びる自由端部と、を有している。自由端部に形成された付勢面は、加熱ロールとの間でベルト本体を挟んでニップを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-208308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の定着装置では、板バネの自由端部における搬送方向の下流端が台座部に支持されていないため、ニップの搬送方向の長さを大きくすることが難しく、ひいては、トナー像の定着性の向上を実現することが難しい。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、ニップの搬送方向の長さを大きくすることができ、ひいては、トナー像の定着性の向上を実現できる定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の定着装置は、加熱ローラと加圧ユニットとによってシートを挟んで搬送方向に搬送し、前記シート上にトナー像を熱定着させる定着装置であって、
前記加圧ユニットは、前記加熱ローラに接して回転する無端ベルトと、
前記加熱ローラの回転軸心方向に延びて前記無端ベルトの内周面に接触し、前記加熱ローラとの間で前記無端ベルトを挟む板状の弾性体と、
前記回転軸心方向に延びて前記無端ベルトの内周側で前記弾性体を支持するホルダであって、前記加熱ローラと対向する上流支持面と、前記上流支持面よりも前記搬送方向の下流に位置し、前記加熱ローラと対向する下流支持面と、を有するホルダと、
前記下流支持面よりも前記搬送方向の前記下流、かつ前記下流支持面よりも前記加熱ローラに近い側に位置し、前記搬送方向の上流を向く規制面と、
を有し、
前記弾性体は、少なくとも一部が前記加熱ローラとの間で前記無端ベルトを挟んでニップを形成するニップ形成面と、
前記上流支持面に接触して支持される上流被支持面と、
前記下流支持面に接触して支持される下流被支持面と、
前記ニップ形成面よりも前記搬送方向の前記上流に位置し、前記ニップ形成面と前記上流被支持面とを接続する上流接続面であって、前記搬送方向の前記上流に膨らむように湾曲する前記上流接続面と、
前記ニップ形成面よりも前記搬送方向の前記下流に位置し、前記ニップ形成面と前記下流被支持面とを接続する下流接続面であって、前記搬送方向の前記下流に膨らむように湾曲し、前記規制面に接触して支持される前記下流接続面と、
を有していることを特徴とする。
【0009】
本発明の定着装置において、板状の弾性体は、上流被支持面が上流支持面に接触して支持され、下流被支持面が下流支持面に接触して支持され、下流接続面が規制面に接触して支持される。つまり、弾性体は、ホルダに3か所で接触して支持される。
【0010】
この構成により、この定着装置は、弾性体が弾性変形するときに、ニップ形成面における搬送方向の下流端が加熱ローラから離隔することを確実性高く抑制でき、ニップ形成面が加熱ローラの外周面に沿って湾曲する状態を確実性高く維持できる。
【0011】
その結果、この定着装置は、ニップ形成面における加熱ローラとの間で無端ベルトを挟む部分の面積を広くすることができる。
【0012】
したがって、本発明の定着装置は、ニップの搬送方向の長さを大きくすることができ、ひいては、トナー像の定着性の向上を実現できる。
【0013】
下流被支持面は、搬送方向に移動不能な状態で下流支持面に接触している構成であってもよい。
【0014】
この構成により、シートを挟んだ状態のニップにおける面圧のピークをニップ形成面における搬送方向の中央よりも下流に位置させることを確実性高く実現でき、また、そのピークの位置が搬送方向においてばらつくことを抑制できる。その結果、この定着装置は、トナー像の定着性の一層の向上、例えば熱定着されるトナー像の光沢発現性の向上、を実現できる。
【0015】
上流被支持面は、搬送方向の上流に移動可能な状態で上流支持面に接触している構成であってもよい。
【0016】
この構成により、ニップにおける面圧をニップ形成面における搬送方向の中央よりも上流で低減できるので、シートをニップに誘い込み易くなり、シートの搬送性の向上を実現できる。
【0017】
ホルダが規制面を有していてもよい。
【0018】
この構成により、共にホルダに設けられた下流支持面と規制面との位置精度を高めることができる。
【0019】
弾性体が弾性変形していない状態において、下流接続面における規制面に接触する部分は、加熱ローラと加圧ユニットとが並ぶ方向において、ニップ形成面よりも下流被支持面に近い位置にある構成であってもよい。
【0020】
この構成により、下流接続面は、ニップ形成面の変形に追従して変形する部分の長さが大きくなり、ニップ形成面は、加熱ローラの外周面に沿って変形し易くなる。その結果、この定着装置は、ニップの搬送方向の長さを一層大きくすることができる。
【0021】
弾性体が弾性変形していない状態において、ニップ形成面は、回転軸心方向から見て、直線状、又は、搬送方向の中間部が加熱ローラから離隔するように湾曲している構成であってもよい。
【0022】
この構成により、シートをニップに誘い込み易くなり、シートの搬送性の向上を実現できる。
【0023】
本発明の定着装置は、加熱ローラと加圧ユニットとを互いに接近及び離隔可能に支持し、加圧ユニットを加熱ローラに向けて押圧する第1付勢力を発揮可能な付勢機構をさらに備えていてもよい。そして、第1付勢力によって弾性体が弾性変形するときに、ニップ形成面における搬送方向の下流端がニップを形成する構成であってもよい。
【0024】
この構成により、ニップにおける面圧のピークをニップ形成面における搬送方向の下流端の近傍に位置させることができる。つまり、ニップにおける面圧をニップの出口側で強くすることができる。その結果、この定着装置は、トナー像の定着性の一層の向上を実現できる。
【0025】
付勢機構は、第1付勢力と、第1付勢力よりも小さい第2付勢力であって、加圧ユニットを加熱ローラに向けて押圧する第2付勢力と、を選択的に発揮可能である構成であってもよい。そして、第2付勢力によって弾性体が弾性変形するときに、ニップ形成面における搬送方向の下流端はニップを形成しない構成であってもよい。
【0026】
この構成により、通常のシートを挟んで搬送する場合には付勢機構が第1付勢力を発揮し、通常のシートよりも厚い封筒や厚紙等を挟んで搬送する場合には付勢機構が第2付勢力を発揮することで、封筒等にシワが発生することを抑制できる。
【0027】
弾性体は、ステンレス製であってもよい。
【0028】
弾性体をステンレスの板バネとすることにより、弾性体が良好な弾性力を発揮できるので、ニップ形成面が加熱ローラの外周面に沿って湾曲するように弾性変形し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、実施例の定着装置を備えた画像形成装置の模式断面図である。
図2図2は、実施例の定着装置の断面図である。
図3図3は、加圧ユニットにおけるステイ、第1ベルトガイド、第2ベルトガイド、ホルダ、板バネ及び一対の押さえ部材の斜視図である。
図4図4は、加圧ユニットにおけるステイ、第1ベルトガイド、第2ベルトガイド、ホルダ、板バネ及び一対の押さえ部材の分解斜視図である。
図5図5は、図3のA-A断面を示す断面図である。
図6図6は、加熱ローラ及び加圧ユニットの通常圧接モードを示す模式部分断面図である。
図7図7は、加熱ローラ及び加圧ユニットの軽圧接モードを示す模式部分断面図である。
図8図8は、加熱ローラ及び加圧ユニットの離隔モードを示す模式部分断面図である。
図9図9は、ニップにおける搬送方向の面圧分布を示すグラフである。
図10図10は、加熱ローラ及び加圧ユニットの離隔モードを示す模式部分断面図であって、ニップ形成面が湾曲している構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した実施例について図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1に示すように、実施例の定着装置7は、本発明の定着装置の具体的態様の一例である。定着装置7は、画像形成装置1に備えられて画像形成部3の一部を構成している。画像形成装置1は、電子写真方式によりシートSHに複数色の画像を形成するカラープリンタである。
【0032】
<画像形成装置の概略構成>
画像形成装置1は、略箱状体である装置本体9と、装置本体9に収容された画像形成部3、シートトレイ9C、給送部20、排出補助ローラ対28及び排出ローラ対29と、を備えている。
【0033】
シートトレイ9Cは、画像形成部3よりも下方に位置している。シートトレイ9Cは、画像が形成される前のシートSHを積層状態で収容している。シートSHは、用紙、OHPシート等である。
【0034】
装置本体9の上面には、排出トレイ9Tが形成されている。排出トレイ9Tは、画像形成を終えたシートSHを支持する。
【0035】
装置本体9の幅方向は、前後方向及び上下方向に直交する方向である。シートトレイ9Cから搬送されて排出トレイ9Tに排出されるシートSHの幅方向は、装置本体9の幅方向と同じである。図2以降の各図に示す前後方向、上下方向及び幅方向は、図1に対応させて表示する。
【0036】
給送部20は、画像形成部3よりも前方に位置している。給送部20は、給送経路P1に沿って配置された給送ローラ21、分離ローラ22、分離パッド22A、第1搬送ローラ対23及び第2搬送ローラ対24を有している。
【0037】
給送経路P1は、シートトレイ9Cの前端部から前向きかつ上向きに進んだ後にUターンし、後向きに進んで画像形成部3に至る経路である。
【0038】
給送ローラ21は、シートトレイ9Cに収容されたシートSHを給送経路P1に送り出す。分離ローラ22及び分離パッド22Aは、給送ローラ21が送り出したシートSHが複数枚重なっている場合に1枚ずつに分離する。
【0039】
第1搬送ローラ対23及び第2搬送ローラ対24は、分離ローラ22及び分離パッド22Aによって1枚ずつに分離されたシートSHをニップして画像形成部3に向けて搬送する。
【0040】
画像形成部3は、直接転写型のカラー電子写真方式である。画像形成部3は、プロセスカートリッジ4、転写ベルト6、スキャナ部8及び定着装置7を有している。
【0041】
プロセスカートリッジ4は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーに対応し、前後方向に直列する4つのカートリッジの集合体である。プロセスカートリッジ4は、各色のトナーにそれぞれ対応する4個の感光体5や、図示しない現像ローラ、帯電器及びトナー収容部等を有している。感光体5の回転軸心は、装置本体9の幅方向に延びている。転写ベルト6は、各感光体5に下から対向している。
【0042】
スキャナ部8は、レーザ光源、ポリゴンミラー、fθレンズ及び反射鏡等を有している。スキャナ部8は、上方からレーザビームをプロセスカートリッジ4内の各感光体5に照射する。
【0043】
プロセスカートリッジ4において、各感光体5の表面は、その回転に伴って、帯電器により一様に正帯電された後、スキャナ部8から照射されるレーザビームの高速走査により露光される。これにより、各感光体5の表面には、シートSHに形成すべき画像に対応した静電潜像が形成される。
【0044】
次に、トナー収容部からトナーが静電潜像に対応して各感光体5の表面に供給され、トナー像が形成される。そして、シートSHがプロセスカートリッジ4と転写ベルト6との間を通過する際、シートSHの上を向く面が感光体5と対面する。そして、各感光体5の表面上に担持されたトナー像がシートSHの上を向く面に転写される。
【0045】
定着装置7は、プロセスカートリッジ4よりも後方に位置している。定着装置7は、加熱ローラ30及び加圧ユニット40を有している。
【0046】
加熱ローラ30は、加熱された状態で、幅方向と平行な回転軸心X30周りに回転する。加圧ユニット40は、加熱ローラ30よりも下方かつ後方に位置し、加熱ローラ30に向けて押圧されている。加熱ローラ30と加圧ユニット40とが並ぶ方向DL1を各図に示す。
【0047】
定着装置7は、加熱ローラ30と加圧ユニット40とによって、シートSHを挟んで搬送方向D1に搬送しながら加熱し、シートSH上にトナー像を熱定着させる。搬送方向D1は、加熱ローラ30と加圧ユニット40とが並ぶ方向DL1及び幅方向に直交する方向であって、後向きに上り傾斜する方向である。
【0048】
排出補助ローラ対28及び排出ローラ対29は、排出経路P2に沿って配置されている。排出経路P2は、定着装置7を通過したシートSHを上方に導き、かつ画像が形成された面が下を向くようにUターンさせて排出トレイ9Tに排出する経路である。
【0049】
排出補助ローラ対28は、定着装置7よりも上方かつ後方に位置している。排出ローラ対29は、排出補助ローラ対28よりも前方に位置し、かつ排出トレイ9Tの後端よりも上方に位置している。
【0050】
排出補助ローラ対28は、排出経路P2に沿って搬送されるシートSHをニップして排出ローラ対29に向けて搬送し、排出ローラ対29はそのシートSHをニップして排出トレイ9Tに排出する。
【0051】
<定着装置の加熱ローラ>
図2に示すように、定着装置7において、加熱ローラ30は、回転軸心X30を中心とする金属製の薄肉円筒の表面に薄い弾性層が形成され、その弾性層の表面に離形層が形成された中空の回転体である。加熱ローラ30の回転軸心X30方向の両端は、定着フレーム80に回転可能に支持されている。
【0052】
加熱ローラ30は、その内周に配置されたハロゲンヒータ32によって加熱される。また、加熱ローラ30は、図示しない駆動源から駆動力が伝達されることにより、回転軸心X30周りに回転する。そして、加熱ローラ30は、表面の離形層によって、プロセスカートリッジ4と転写ベルト6との間を通過したシートSHに接触する。
【0053】
<定着装置の加圧ユニット>
加圧ユニット40は、無端ベルト41、ステイ43、第1ベルトガイド45、第2ベルトガイド46、第3ベルトガイド47、ホルダ60、板バネ50及び一対の押さえ部材49を有している。板バネ50は、本発明の「板状の弾性体」の一例である。
【0054】
無端ベルト41は、耐熱性を有する樹脂製薄板によって形成された可撓性を有する筒状体である。本実施例では、無端ベルト41は、ポリイミド樹脂製である。無端ベルト41は、加熱ローラ30に接して回転する。
【0055】
ステイ43、第1~3ベルトガイド45、46、47、ホルダ60、板バネ50及び一対の押さえ部材49は、無端ベルト41の内周側に位置している。
【0056】
ステイ43及びホルダ60は、耐熱性を有する樹脂製部材である。第1~3ベルトガイド45、46、47は、耐熱性及び高摺動性を有する樹脂製部材である。一対の押さえ部材49は、鋼製の平板部材である。
【0057】
板バネ50は、バネ鋼等の金属材料、樹脂材料、CFRP等の複合材料等からなる弾性変形能の高い板状の弾性体である。板バネ50の表面には、高摺動性を発揮する表面処理を施すことが好ましい。本実施例では、板バネ50は、ステンレス製の板バネ材料が曲げ加工されてなり、その表面にニッケルリンメッキ、フッ素系コーティング等が施されている。板バネ50と無端ベルト41との間には、グリス等の潤滑剤が設けられている。
【0058】
図3及び図4に示すように、ステイ43、第1、第2ベルトガイド45、46、ホルダ60、板バネ50及び一対の押さえ部材49はそれぞれ、回転軸心X30方向に延びている。図示は省略するが、第3ベルトガイド47は、回転軸心X30方向の両端部に設けられている。
【0059】
<ステイ及び第1~第3ベルトガイド>
図5に示すように、ステイ43は略矩形断面の棒状体である。第1、第2ベルトガイド45、46及びホルダ60はそれぞれ、複数箇所に設けられた凸部及び凹部の嵌合によりステイ43に固定されている。
【0060】
図3に示すように、ステイ43における回転軸心X30方向の両端は、第1、第2ベルトガイド45、46及びホルダ60よりも回転軸心X30方向の外側に突出している。
【0061】
図5に示すように、加熱ローラ30と加圧ユニット40とが並ぶ方向DL1においてホルダ60における加熱ローラ30とは反対を向く裏面は、ステイ43における加熱ローラ30に対向する基面43Aに当接している。
【0062】
第1ベルトガイド45は、ホルダ60の裏面側においてステイ43と接続されている。第2ベルトガイド46は、ホルダ60の裏面側においてステイ43と接続されている。
【0063】
第1ベルトガイド45における搬送方向D1の上流を向く面は、第1ガイド面45Gである。第1ガイド面45Gは、搬送方向D1の上流に膨らむように湾曲している。第1ガイド面45Gは、ホルダ60よりも搬送方向D1の上流において加熱ローラ30に接近するように突出しており、搬送方向D1の下流を向いてホルダ60と対向する対向面45Aを有している。
【0064】
第2ベルトガイド46における搬送方向D1の下流を向く面は、第2ガイド面46Gである。第2ガイド面46Gは、搬送方向D1の下流に膨らむように湾曲している。第2ガイド面46Gは、ホルダ60よりも搬送方向D1の下流において加熱ローラ30に接近するように突出しており、搬送方向D1の上流を向いてホルダ60と対向する対向面46Aを有している。
【0065】
図2に示すように、第3ベルトガイド47は、図示しない中間部材を介してステイ43に固定されている。第3ベルトガイド47における加熱ローラ30とは反対を向いて湾曲する面は、第3ガイド面47Gである。
【0066】
第1~第3ガイド面45G、46G、47Gは、無端ベルト41の内周面41Bに接触し、無端ベルト41の回転を案内する。
【0067】
<ホルダ>
図4及び図5に示すように、ホルダ60は、基板65、規制壁66及び側壁67A、67Bを有している。
【0068】
基板65は、回転軸心X30方向及び搬送方向D1に延びる略平板形状である。基板65の回転軸心X30方向の長さは、基板65の搬送方向D1の長さよりも大幅に大きい。
【0069】
基板65の裏面は、ホルダ60の裏面を形成する平坦面である。基板65は、加熱ローラ30に対向する側において、凸条63、上流支持面61及び下流支持面62を有している。
【0070】
凸条63は、基板65における搬送方向D1の中間部から加熱ローラ30に接近するように短く突出し、かつ回転軸心X30方向に延びている。
【0071】
上流支持面61は、凸条63よりも搬送方向D1の上流に位置している。上流支持面61は、回転軸心X30方向及び搬送方向D1に延びる平坦面であり、加熱ローラ30と対向している。
【0072】
下流支持面62は、上流支持面61及び凸条63よりも搬送方向D1の下流に位置している。下流支持面62も、回転軸心X30方向及び搬送方向D1に延びる平坦面であり、加熱ローラ30と対向している。本実施例では、上流支持面61と下流支持面62とは同一平面上にあって、凸条63よりも一段低くなっている。
【0073】
規制壁66は、基板65における下流支持面62よりも搬送方向D1の下流に位置する端縁に接続している。規制壁66は、加熱ローラ30に接近するように凸条63よりも長く突出し、かつ回転軸心X30方向に延びている。
【0074】
図5に示すように、基板65は、規制面64を有している。規制面64は、規制壁66における搬送方向D1の上流を向く面であって、加熱ローラ30と加圧ユニット40とが並ぶ方向DL1及び回転軸心X30方向に延びる平坦面である。規制面64は、下流支持面62よりも搬送方向D1の下流、かつ下流支持面62よりも加熱ローラ30に近い側に位置している。
【0075】
上流支持面61の搬送方向D1の長さは、下流支持面62の搬送方向D1の長さよりも大きい。ホルダ60は、基板65における上流支持面61よりも搬送方向D1の上流において、規制壁66と同様の壁を有していない。
【0076】
加熱ローラ30の回転軸心X30を通過し、上流支持面61及び下流支持面62に直交する直線を仮想線K1とする。仮想線K1は、加熱ローラ30と加圧ユニット40とが並ぶ方向DL1と平行であり、搬送方向D1に直交している。凸条63における搬送方向D1の中央は、仮想線K1上に位置している。
【0077】
図4及び図5に示すように、側壁67Aは、基板65における回転軸心X30方向の一端側に位置している。側壁67Aは、加熱ローラ30に接近するように凸条63よりも長く突出し、かつ搬送方向D1に延びている。
【0078】
側壁67Aの下端には、搬送方向D1に並ぶ一対の係止穴68が回転軸心X30方向に貫設されている。一対の押さえ部材49における回転軸心X30方向の一端は、一対の係止穴68に嵌入することにより、ホルダ60に係止されている。
【0079】
図4に示すように、側壁67Bは、基板65における回転軸心X30方向の他端側に位置している。側壁67Bは、側壁67Aと勝手違いの同一構成であるので説明は省略する。
【0080】
図示は省略するが、側壁67Bの下端にも、側壁67Aと同様に、搬送方向D1に並ぶ一対の係止穴68が回転軸心X30方向に貫設されている。一対の押さえ部材49における回転軸心X30方向の他端も、一対の係止穴68に嵌入することにより、ホルダ60に係止されている。
【0081】
<板バネ>
図4及び図5に示すように、板バネ50は、回転軸心X30方向から見て、板バネ材料である薄板が略台形状に曲げられており、略台形の角部が湾曲し、また、略台形の底辺の中央が存在しない形状となっている。
【0082】
板バネ50は、ニップ形成面55、上流被支持面51、下流被支持面52、上流接続面53及び下流接続面54を有している。
【0083】
図5に示すように、ニップ形成面55は、ホルダ60の上流支持面61、下流支持面62及び凸条63よりも加熱ローラ30に近い側に位置して回転軸心X30方向及び搬送方向D1に延びる面であり、加熱ローラ30と対向している。
【0084】
板バネ50が弾性変形していない状態において、ニップ形成面55は、回転軸心X30方向から見て、搬送方向D1の上流端55Aから下流端55Bまで直線状である。ニップ形成面55における搬送方向D1の中央は、仮想線K1上に位置している。
【0085】
上流被支持面51は、凸条63よりも搬送方向D1の上流に位置している。上流被支持面51は、加熱ローラ30とは反対を向き、回転軸心X30方向及び搬送方向D1に延びる面である。上流被支持面51は、上流支持面61に接触して支持されている。
【0086】
下流被支持面52は、上流被支持面51及び凸条63よりも搬送方向D1の下流に位置している。下流被支持面52は、加熱ローラ30とは反対を向き、回転軸心X30方向及び搬送方向D1に延びる面である。下流被支持面52は、下流支持面62に接触して支持されている。
【0087】
上流接続面53は、ニップ形成面55における搬送方向D1の上流端55Aよりも搬送方向D1の上流に位置している。上流接続面53は、ニップ形成面55の上流端55Aと上流被支持面51とを接続している。上流接続面53は、搬送方向D1の上流に膨らむように湾曲している。
【0088】
下流接続面54は、ニップ形成面55における搬送方向D1の下流端55Bよりも搬送方向D1の下流に位置している。下流接続面54は、ニップ形成面55の下流端55Bと下流被支持面52とを接続している。下流接続面54は、搬送方向D1の下流に膨らむように湾曲している。下流接続面54は、規制面64に接触して支持されている。
【0089】
板バネ50が弾性変形していない状態において、下流接続面54における規制面64に接触する部分54Tは、加熱ローラ30と加圧ユニット40とが並ぶ方向DL1において、ニップ形成面55よりも下流被支持面52に近い位置にある。
【0090】
こうして、ホルダ60は、無端ベルト41の内周側で板バネ50を支持している。
【0091】
一対の押さえ部材49は、板バネ50における上流被支持面51が形成された平板状部分と、下流被支持面52が形成された平板状部分とを押さえている。これにより、一対の押さえ部材49は、上流被支持面51が上流支持面61から離隔することを規制し、また、下流被支持面52が下流支持面62から離隔することを規制している。
【0092】
下流被支持面52は、凸条63における搬送方向D1の下流を向く面によって、搬送方向D1の上流への移動が規制されている。また、下流被支持面52は、下流接続面54が規制面64に接触することにより、搬送方向D1の下流への移動が規制されている。つまり、下流被支持面52は、搬送方向D1に移動不能な状態で下流支持面62に接触している。
【0093】
上流被支持面51は、凸条63における搬送方向D1の上流を向く面によって、搬送方向D1の下流への移動が規制されている。その一方、ホルダ60は、上流被支持面51の搬送方向D1の上流への移動を規制するものを有していない。つまり、上流被支持面51は、搬送方向D1の上流に移動可能な状態で上流支持面61に接触している。
【0094】
<付勢機構>
図2に示すように、定着装置7は、付勢機構70をさらに備えている。付勢機構70は幅方向両側に設けられ、アーム71、引っ張りコイルバネ73及びカム75を有している。図2では、幅方向の一方のアーム71、引っ張りコイルバネ73及びカム75を図示している。
【0095】
アーム71は、回転軸心X30方向から見て略L字形状の板金部材である。アーム71は、揺動軸心X71周りに揺動可能に定着フレーム80に支持されている。揺動軸心X71は、加熱ローラ30よりも下方、かつ定着ユニット40よりも前方の位置で、回転軸心X30と平行に延びている。
【0096】
アーム71は、回転軸心X30から後向きに延び、定着ユニット40の下方で向きを変えて上向きに延びている。アーム71は、その後向きから上向きに向きを変える部分において、ステイ43における回転軸心X30方向の外側の端部を支持している。
【0097】
アーム71が回転軸心X30周りに図2の紙面反時計方向に揺動することにより、加圧ユニット40が加熱ローラ30に接近する。その一方、アーム71が回転軸心X30周りに図2の紙面時計方向に揺動することにより、加圧ユニット40が加熱ローラ30から離隔する。つまり、アーム71は、加熱ローラ30と加圧ユニット40とを互いに接近及び離隔可能に支持している。
【0098】
引っ張りコイルバネ73は、アーム71の上端と、定着フレーム80における上方かつ前方の角部とに係止されている。アーム71における上端に近い部分には、凸部71Cが前向きに突出するように固定されている。
【0099】
カム75は、凸部71Cよりも前方に位置するカム軸心X75周りに1周未満で回動可能に定着フレーム80に支持されている。カム75は、カム面75Cを有している。カム面75Cは、カム軸心X75周りに図2の紙面反時計方向に進むにつれてカム軸心X75から離隔する距離が大きくなる湾曲面である。
【0100】
引っ張りコイルバネ73は、アーム71を回転軸心X30周りに図2の紙面反時計方向に揺動させて、凸部71Cをカム面75Cに押し付ける。
【0101】
図2に示すように、カム面75Cの第1部分75C1が凸部71Cに当接する状態では、付勢機構70は、加圧ユニット40を加熱ローラ30に向けて押圧する第1付勢力F1を発揮する。
【0102】
これにより、図6に示すように、板バネ50は、弾性変形して無端ベルト41の内周面41Bに接触し、加熱ローラ30との間で無端ベルト41を挟む。ニップ形成面55は、搬送方向D1の上流端55A及びその近傍を除く一部であって、搬送方向D1の下流端55Bを含む一部が加熱ローラ30との間で無端ベルト41を挟んでニップN1(N11)を形成する。
【0103】
つまり、第1付勢力F1によって板バネ50が弾性変形するときに、ニップ形成面55における搬送方向D1の下流端55BがニップN1(N11)を形成する。
【0104】
この状態で、上流被支持面51は、搬送方向D1の上流に距離M1だけ移動している。
【0105】
付勢機構70が第1付勢力F1を発揮するときの加熱ローラ30及び加圧ユニット40のモードは、通常圧接モードである。通常圧接モードは、ニップN1(N11)における面圧が一般的な厚みを有する普通紙に適した所定の大きさとなるモードである。
【0106】
図示は省略するが、カム75が図2の紙面時計方向に回動し、カム面75Cの第2部分75C2が凸部71Cに当接する状態になると、付勢機構70は、第1付勢力F1よりも小さい第2付勢力F2を発揮する。
【0107】
これにより、図7に示すように、板バネ50は、弾性変形の程度が小さくなって無端ベルト41の内周面41Bに小さい範囲で接触し、加熱ローラ30との間で無端ベルト41を挟む。ニップ形成面55は、搬送方向D1の上流端55A及びその近傍と、搬送方向D1の下流端55B及びその近傍と、を除く一部が加熱ローラ30との間で無端ベルト41を挟んでニップN1(N12)を形成する。
【0108】
つまり、第2付勢力F2によって板バネ50が弾性変形するときに、ニップ形成面55における搬送方向D1の下流端55BはニップN1(N12)を形成しない。
【0109】
この状態で、上流被支持面51は、搬送方向D1の上流に距離M2(<M1)だけ移動している。
【0110】
付勢機構70が第2付勢力F2を発揮するときの加熱ローラ30及び加圧ユニット40のモードは、軽圧接モードである。軽圧接モードは、ニップN1(N12)における面圧が通常圧接モードにおけるニップN1(N11)よりも小さいモードであって、普通紙よりも厚い封筒や厚紙等に適したモードである。
【0111】
図示は省略するが、カム75が図2の紙面時計方向にさらに回動し、カム面75Cの第3部分75C3が凸部71Cに当接する状態になると、図8に示すように、加熱ローラ30と無端ベルト41とが離隔し、付勢機構70が発揮する付勢力がゼロになる。
【0112】
図8に示す加熱ローラ30及び加圧ユニット40のモードは、離隔モードである。シートSHが通常圧接モード又は軽圧接モードにある加熱ローラ30と加圧ユニット40とに挟まれた状態で詰まった場合、加熱ローラ30と加圧ユニット40とを離隔モードに切り替えることで、その詰まったシートSHを加熱ローラ30と加圧ユニット40との間から抜き取ることができる。
【0113】
つまり、付勢機構70は、第1付勢力F1と、第2付勢力F2と、付勢力ゼロと、を選択的に発揮して、加熱ローラ30及び加圧ユニット40のモードを通常圧接モードと、軽圧接モードと、離隔モードと、に切り替え可能である。
【0114】
図6に示すように付勢機構70が第1付勢力F1を発揮する場合のニップN1(N11)における搬送方向D1の面圧分布の一例を図9において実線L1で示す。
【0115】
図7に示すように付勢機構70が第2付勢力F2を発揮する場合のニップN1(N12)における搬送方向D1の面圧分布の一例を図9において実線L2で示す。この例では、第2付勢力F2は、第1付勢力F1の2/3である。
【0116】
付勢機構70の付勢力が第1付勢力F1の1/3である場合のニップN1における搬送方向D1の面圧分布の一例を図9において二点鎖線L3で示す。
【0117】
付勢機構70の付勢力が第1付勢力F1の2/15である場合のニップN1における搬送方向D1の面圧分布の一例を図9において一点鎖線L4で示す。
【0118】
付勢機構70の付勢力が第1付勢力F1の4/3である場合のニップN1における搬送方向D1の面圧分布の一例を図9において破線L5で示す。
【0119】
<作用効果>
図5に示すように、定着装置7において、板バネ50は、上流被支持面51が上流支持面61に接触して支持され、下流被支持面52が下流支持面62に接触して支持され、下流接続面54が規制面64に接触して支持される。つまり、板バネ50は、ホルダ60に3か所で接触して支持される。
【0120】
この構成により、図6及び図7に示すように、定着装置7は、板バネ50が弾性変形するときに、ニップ形成面55における搬送方向D1の下流端55Bが加熱ローラ30から離隔することを確実性高く抑制でき、ニップ形成面55が加熱ローラ30の外周面に沿って湾曲する状態を確実性高く維持できる。
【0121】
その結果、定着装置7は、ニップ形成面55における加熱ローラ30との間で無端ベルト41を挟む部分の面積を広くすることができる。
【0122】
したがって、定着装置7は、ニップN1の搬送方向D1の長さを大きくすることができ、ひいては、トナー像の定着性の向上を実現できる。
【0123】
また、定着装置7において、無端ベルト41は、板バネ50上に摺動しながら良好に回転できる。このため、定着装置7は、無端ベルト41と板バネ50との間に摺動シートを設けなくてもよいので部品点数を削減でき、製造コストの低廉化を実現できる。さらに、仮にゴムブロック状の弾性体を板バネ50の代わりに使用する場合と比較して、加熱ローラ30及び無端ベルト41の応力集中を緩和でき、また、付勢機構70の付勢力の変化に好適に追従できる。
【0124】
また、定着装置7において、図5に示すように、下流被支持面52は、規制面64と、凸条63における搬送方向D1の下流を向く面と、に規制されて、搬送方向D1に移動不能な状態で下流支持面62に接触している。この構成により、図9において実線L1、L2で示すように、シートSHを挟んだ状態のニップN1(N11、N12)における面圧のピークをニップ形成面55における搬送方向D1の中央よりも下流に位置させることを確実性高く実現でき、また、そのピークの位置が搬送方向D1においてばらつくことを抑制できる。その結果、定着装置7は、トナー像の定着性の一層の向上、例えば熱定着されるトナー像の光沢発現性の向上、を実現できる。
【0125】
さらに、定着装置7において、図5に示すように、上流被支持面51は、搬送方向D1の上流に移動可能な状態で上流支持面61に接触している。図6に示すように、第1付勢力F1によって板バネ50が弾性変形する状態において、上流被支持面51は、搬送方向D1の上流に距離M1だけ移動している。図7に示すように、第2付勢力F2によって板バネ50が弾性変形する状態において、上流被支持面51は、搬送方向D1の上流に距離M2(<M1)だけ移動している。この構成により、図9において実線L1、L2で示すように、ニップN1(N11、N12)における面圧をニップ形成面55における搬送方向D1の中央よりも上流で低減できる。その結果、定着装置7は、シートSHをニップN1に誘い込み易くなり、シートSHの搬送性の向上を実現できる。
【0126】
また、定着装置7において、図5に示すように、ホルダ60が規制面64を有している。この構成により、共にホルダ60に設けられた下流支持面62と規制面64との位置精度を高めることができる。
【0127】
また、定着装置7において、板バネ50が弾性変形していない状態において、下流接続面54における規制面64に接触する部分54Tは、加熱ローラ30と加圧ユニット40とが並ぶ方向DL1において、ニップ形成面55よりも下流被支持面52に近い位置にある。この構成により、図6及び図7に示すように、下流接続面54は、ニップ形成面55の変形に追従して変形する部分の長さが大きくなり、ニップ形成面55は、加熱ローラ30の外周面に沿って変形し易くなる。その結果、定着装置7は、ニップN1の搬送方向D1の長さを一層大きくすることができる。
【0128】
さらに、定着装置7において、図5に示すように、板バネ50が弾性変形していない状態において、ニップ形成面55は、回転軸心X30方向から見て、搬送方向D1の上流端55Aから下流端55Bまで直線状である。この構成により、定着装置7は、シートSHをニップN1に誘い込み易くなり、シートSHの搬送性の向上を実現できる。
【0129】
また、定着装置7において、図6に示すように、付勢機構70が発揮する第1付勢力F1によって板バネ50が弾性変形するときに、ニップ形成面55における搬送方向D1の下流端55BがニップN1(N11)を形成する。この構成により、図9に実線L1で示すように、ニップN1(N11)における面圧のピークをニップ形成面55における搬送方向D1の下流端55Bの近傍に位置させることができる。つまり、ニップN1(N11)における面圧をニップN1(N11)の出口側で強くすることができる。その結果、定着装置7は、トナー像の定着性の一層の向上を実現できる。
【0130】
さらに、定着装置7において、図7に示すように、付勢機構70が発揮する第2付勢力F2によって板バネ50が弾性変形するときに、ニップ形成面55における搬送方向D1の下流端55BはニップN1(N12)を形成しない。この構成により、通常のシートSHを挟んで搬送する場合には付勢機構70が第1付勢力F1を発揮して加熱ローラ30及び加圧ユニット40を通常圧接モードに切り替え、通常のシートSHよりも厚い封筒や厚紙等であるシートSHを挟んで搬送する場合には付勢機構70が第2付勢力F2を発揮して加熱ローラ30及び加圧ユニット40を軽圧接モードに切り替えることで、封筒等にシワが発生することを抑制できる。
【0131】
また、定着装置7において、板バネ50はステンレス製であることにより良好な弾性力を発揮できるので、ニップ形成面55が加熱ローラ30の外周面に沿って湾曲するように弾性変形し易くなる。
【0132】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0133】
例えば、図10に示すように、板バネ50が弾性変形していない状態において、ニップ形成面55は、回転軸心X30方向から見て、搬送方向D1の中間部55Cが加熱ローラ30から離隔するように湾曲していてもよい。
【0134】
図5において、ホルダ60が規制面64を有する構成としたが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、第2ベルトガイド46の対向面46Aが板バネ50の下流接続面54に接触する規制面であってもよい。
【0135】
図5において、板バネ50のニップ形成面55における搬送方向D1の中央は、仮想線K1上に位置しているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、板バネ50のニップ形成面55における搬送方向D1の中央は、仮想線K1よりも搬送方向の上流又は下流に位置していてもよい。
【0136】
図5において、上流支持面61と下流支持面62とは同一平面上にあって凸条63によって分断されているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、凸条を無くして上流支持面と下流支持面とを連続する平面とする構成、上流支持面が下流支持面に対して一段下がったり、一段上がったりする構成等であってもよい。
【0137】
定着装置7は、無端ベルト41と板バネ50との間に摺動シートを設けていないが、本発明はこの構成には限定されず、無端ベルトと板状の弾性体との間に摺動シートを設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は例えば、画像形成装置、又は、画像形成機能及び画像読取機能を備えた複合機等に利用可能である。
【符号の説明】
【0139】
1…画像形成装置、7…定着装置、30…加熱ローラ
40…加圧ユニット、SH…シート、D1…搬送方向、41…無端ベルト
X30…加熱ローラの回転軸心、41B…無端ベルトの内周面
50…板状の弾性体(板バネ)、60…ホルダ、61…上流支持面
62…下流支持面、64…規制面、N1…ニップ
55…ニップ形成面、51…上流被支持面、52…下流被支持面
53…上流接続面、54…下流接続面
54T…下流接続面における規制面に接触する部分
DL1…加熱ローラと加圧ユニットとが並ぶ方向
55C…ニップ形成面における搬送方向の中間部
F1…第1付勢力、F2…第2付勢力、70…付勢機構
55B…ニップ形成面における搬送方向の下流端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10