(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084904
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】電池用包装材および電池用ケース
(51)【国際特許分類】
H01M 50/193 20210101AFI20240619BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240619BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240619BHJP
H01M 50/197 20210101ALI20240619BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20240619BHJP
H01M 50/198 20210101ALI20240619BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20240619BHJP
【FI】
H01M50/193
H01M50/105
H01M50/121
H01M50/197
H01M50/129
H01M50/198
H01M50/184 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199089
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】南堀 勇二
(72)【発明者】
【氏名】唐津 誠
(72)【発明者】
【氏名】中村 学
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011CC10
5H011DD13
5H011FF02
5H011HH02
5H011HH13
5H011KK00
5H011KK02
5H011KK04
(57)【要約】
【課題】温度上昇に伴って徐々にシール強度が低下して緩やかに開封する電池用包装材を提供する。
【解決手段】本発明は、外側層としての基材層13と、内側層としてのシーラント層20Aと、これら両層間に配設されたバリア層11を含む電池用包装材1を対象とする。シーラント層20Aは1層以上からなり、そのシーラント層20Aの最も内側に第1シーラント層21が配置される。第1シーラント層21を構成する樹脂は、ブテン-エチレン共重合体、ブテン-プロピレン共重合体、炭素数5以上のαオレフィンとブテン-1の共重合体の少なくとも1つ以上を含むポリブテン共重合体Aを含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側層としての基材層と、内側層としてのシーラント層と、これら両層間に配設されたバリア層を含む電池用包装材であって、
前記シーラント層は1層以上からなり、そのシーラント層の最も内側に第1シーラント層が配置され、
前記第1シーラント層を構成する樹脂は、ブテン-エチレン共重合体、ブテン-プロピレン共重合体、炭素数5以上のαオレフィンとブテン-1の共重合体の少なくとも1つ以上を含むポリブテン共重合体Aを含むことを特徴とする電池用包装材。
【請求項2】
前記第1シーラント層を構成する樹脂は、前記ポリブテン共重合体Aを30質量%~50質量%含み、プロピレンランダム共重合体を50質量%~70質量%含む請求項1に記載の電池用包装材。
【請求項3】
前記ポリブテン共重合体Aの融点が120℃以下である請求項1または2に記載の電池用包装材。
【請求項4】
前記シーラント層は、前記第1シーラント層と、前記バリア層に最も近い第3シーラント層と、前記第1および第3シーラント層間に設けられた第2シーラント層とを含む多層構造であり、
前記第2シーラント層は、プロピレンブロック共重合体と、プロピレンランダム共重合体とを含むポリプロピレン系樹脂である請求項1または2に記載の電池用包装材。
【請求項5】
前記シーラント層は、前記第1シーラント層と、前記バリア層に最も近い第3シーラント層とを含む多層構造であり、
前記第3シーラント層は、前記第1シーラント層よりも融点が高いプロピレンランダム共重合体を含む請求項1または2に記載の電池用包装材。
【請求項6】
前記シーラント層同士がヒートシールされた状態で、ヒートシール部における100℃環境下でのシール強度が、20N/15mm幅以上である請求項1または2に記載の電池用包装材。
【請求項7】
請求項1または2に記載の電池用包装材のシーラント層同士がヒートシールされることによって形成される電池用ケースであって、
ヒートシール部における100℃環境下でのシール強度が、20N/15mm幅以上であることを特徴とする電池用ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車載用、定置型、ノートパソコン用、携帯電話用、カメラ用の二次電池、特に小型携帯用のリチウムイオン二次電池のケースとして好適に用いられる電池用包装材および電池用ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池を代表とする蓄電デバイスは、缶やケースからアルミニウムの両面に樹脂層を貼り合わせたラミネートタイプの包装材料を用いることで、多様な形状に加工することが可能となり、さらに薄型、軽量化も可能となった。包装材料としてラミネート材を用いた蓄電デバイスでは、デバイスの高容量化に伴って電池内温度が上昇すると、電解質の揮発等によってガスが発生して内圧が上昇してケースが膨張し、場合によっては破裂する。また、可燃性ガスであれば発火する危険性もある。このため、蓄電デバイスのケースには破裂を予防して緩やかにガスを放出させる対策がとられている(特許文献1~3参照)。
【0003】
発火に対する安全基準として例えば、JIS C8714(2007)「携帯電子機器用リチウムイオン蓄電池の単電池及び組電池の安全性試験」がある。この安全性試験は、5±2℃で130℃±2℃まで昇温させ10分間保持し、発火、破裂を引き起こさないことを確認することで電池の安全性を確保している。前記安全性試験に合格した電池は、通常の使用温度範囲内ではケースのシール部が剥離せず安全性が確保されている。一方、過昇温時には電池本体から発生したガスがケースの内圧を上昇させるが一定の温度を超えるとシール部が剥離してケースが開封され、ケース外にガスを逃がすことで内圧上昇によるケースの破裂を防止することができる。
【0004】
特許文献1の蓄電デバイスは、ケースの構造による予防策であり、ケース内圧力が上昇した時に該圧力を低下させる弁機構と、ケース内のガスを前記弁機構に誘導する通気路とを備えている。
【0005】
前記特許文献2および特許文献3は電池用包装材を規定することにより高温時にケースのシール部を開封させる技術に関するものである。引用文献2には、熱融着性樹脂層(シーラント層)の融解ピーク温度を規定することにより90℃~120℃程度の高温環境に曝された時に開封する技術が示されている。また、引用文献3には、熱融着性樹脂層同士のヒートシール強度を規定することにより高温時に開封する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6540871号公報
【特許文献2】特許第7019991号公報
【特許文献3】WO 2021/201293 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された予防策は弁機構や通気路といった追加部材を要するものであるから、材料コストも製造コストも高くなるという課題があった。特許文献2および特許文献3は弁装置のような追加部材は不要であるが、高温に曝されるとシール強度が低下してシール部が急激に開封して、瞬時に多量のガスが噴出するおそれがあるという課題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、温度上昇に伴って徐々にシール強度が低下してシール部が緩やかに開封する電池用包装材および電池用ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を有するものである。
【0010】
[1]外側層としての基材層と、内側層としてのシーラント層と、これら両層間に配設されたバリア層を含む電池用包装材であって、
前記シーラント層は1層以上からなり、そのシーラント層の最も内側に第1シーラント層が配置され、
前記第1シーラント層を構成する樹脂は、ブテン-エチレン共重合体、ブテン-プロピレン共重合体、炭素数5以上のαオレフィンとブテン-1の共重合体の少なくとも1つ以上を含むポリブテン共重合体Aを含むことを特徴とする電池用包装材。
【0011】
[2]前記第1シーラント層を構成する樹脂は、前記ポリブテン共重合体Aを30質量%~50質量%含み、プロピレンランダム共重合体を50質量%~70質量%含む前項1に記載の電池用包装材。
【0012】
[3]前記ポリブテン共重合体Aの融点が120℃以下である前項1または2に記載の電池用包装材。
【0013】
[4]前記シーラント層は、前記第1シーラント層と、前記バリア層に最も近い第3シーラント層と、前記第1および第3シーラント層間に設けられた第2シーラント層とを含む多層構造であり、
前記第2シーラント層は、プロピレンブロック共重合体と、プロピレンランダム共重合体とを含むポリプロピレン系樹脂である前項1~3のいずれか1項に記載の電池用包装材。
【0014】
[5]前記シーラント層は、前記第1シーラント層と、前記バリア層に最も近い第3シーラント層とを含む多層構造であり、
前記第3シーラント層は、前記第1シーラント層よりも融点が高いプロピレンランダム共重合体を含む前項1~4のいずれか1項に記載の電池用包装材。
【0015】
[6]前記シーラント層同士がヒートシールされた状態で、ヒートシール部における100℃環境下でのシール強度が、20N/15mm幅以上である前項1~5のいずれか1項に記載の電池用包装材。
【0016】
[7]前項1~6のいずれか1項に記載の電池用包装材のシーラント層同士がヒートシールされることによって形成される電池用ケースであって、
ヒートシール部における100℃環境下でのシール強度が、20N/15mm幅以上であることを特徴とする電池用ケース。
【発明の効果】
【0017】
発明[1]の電池用包装材によれば、シーラント層の最内層である第1シーラント層を構成する樹脂が、ブテン-1成分を含有するポリブテン共重合体Aを含んでいるため、ポリプロピレンやポリエチレンと比較して側鎖が嵩高くなり、立体障害によって樹脂の結晶化度を下げる効果が生じ、融点が低くなる。このため、第1シーラント層同士をヒートシールして作製される電池用ケースの過昇温時に、ケース内の電池本体において発生したガスが蓄積されて内圧が上昇した際に、温度上昇によって低融点成分が軟化し、シール強度が低下してシール部が徐々に開封されることにより、電池用ケース内部のガスが外部に効率良く放出され、電池用ケースの内圧上昇による包装材の破裂等の不具合を防止することができる。
【0018】
発明[2]の電池用包装材によれば、第1シーラント層を構成する樹脂のポリブテン共重合体Aの含有量およびプロピレンランダム共重合体の含有量を規定の範囲に特定しているため、低温時におけるシール部の不用意な剥離を防止しつつ、過昇温による内圧上昇時には、シール部を適切に開封できて電池用ケース内部のガスを外部に確実に放出でき、電池用ケースの内圧上昇による包装材の破裂等の不具合をより確実に防止することができる。
【0019】
発明[3]の電池用包装材によれば、第1シーラント層に含まれるポリブテン共重合体Aの融点が120℃以下であるため、第1シーラント層の融点の制御が行い易くなり、電池用包装材の第1シーラント層同士を確実に融着できて電池用ケースを製作できるとともに、過昇温時に電池ケース内のガスの放出をより効率良く行うことができる。
【0020】
発明[4]の電池用包装材によれば、第2シーラント層に耐熱性のあるブロック共重合体が含まれるため、電池用ケースを作製するに際してヒートシール時に第2シーラント層が十分なスペース(層厚)を残して存在するようになり、第2シーラント層の残留により絶縁性を確実に維持できるとともに、第1シーラント層同士のみを確実に融着でき、過昇温による内圧上昇時に、比較的低温領域において所望のガス排出機能を適切に発揮できて、電池用ケースの内圧上昇による不具合をより一層確実に防止することができる。
【0021】
発明[5]の電池用包装材によれば、第3シーラント層が第1シーラント層より融点が高いため、シール時に第3シーラント層が溶融する前に第1シーラント層同士をより確実に熱融着させることができる。このため、第3シーラント層の残留により絶縁性をより確実に維持できるとともに、第1シーラント層同士のみをより確実に融着でき、電池用ケースの内圧上昇による不具合をなお一層防止することができる。さらに第3シーラント層にプロピレンランダム共重合体を含むため、エラストマー成分が少なく、ボイドが発生しにくくなり、また構造上立体障害が小さいため接着層と密着性が良くなり、ヒートシール時に液噛み等が起こった場合においても電解質の浸食を防止でき、接着層間例えば、接着層および金属箔間や接着層およびシーラント層間の界面剥離を防止でき、過昇温時に第1シーラント層間で確実に剥離が起きる可能性を高めることができ、この点においても電池用ケースの内圧上昇による不具合を防止することができる。
【0022】
発明[6]の電池用包装材および発明[7]の電池用ケースによれば、シール部において、所定の過昇温度域に到達するまで適切なシール状態を確実に維持でき、低温時におけるシール部の不用意な剥離を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は本発明の電池用包装材の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は本発明の電池用包装材の他の例を示す断面図である。
【
図3】
図3は本発明の電池用包装材のさらに他の例を示す断面図である。
【
図4】
図4は
図1~
図3の電池用包装材で作製した電池用ケースを備えた電池の断面図である。
【
図5】
図5は
図4の一点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1~3に、本発明の電池用包装材の3つの実施形態を示す。
【0025】
以下の説明において、同一符号を付した層は同一物または同等物を表しており、重複する説明を省略する。
【0026】
電池用包装材1、2、3は、バリア層11の一方の面(外面)に第1接着剤層12を介して基材層13が貼り合わされ、他方の面(内面)に第2接着剤層14を介してシーラント層20A、20B、20Cが貼り合わされている。
【0027】
図4および
図5に示すように、前記電池用包装材1、2、3を用いた電池用ケース50は、シーラント層20A、20B、20C同士を向かい合わせにして、該電池用包装材1、2、3の周囲をヒートシールすることにより作製され、電池用ケース50内にベアセル(電池本体)51が封入される。作製された電池用ケース50において、前記基材層13が外側層となり、前記シーラント層20A、20B、20Cが内側層となる。本発明において、電池用包装材1、2、3を構成する各層の位置を方向で説明する場合に、基材層13の方向を外側、シーラント層20A、20B、20Cの方向を内側と称する。
【0028】
(シーラント層の構成)
本発明の電池用包装材は内側層となるシーラント層の材料に特徴を有する。シーラント層は腐食性の強い電解質などに対しても優れた耐薬品性を具備させるとともに、電池用包装材1、2、3にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0029】
シーラント層は1層以上からなり、単層、複層のいずれでもよいが、電池用包装材の最内層である第1シーラント層の材料、即ち向かい合わせに配置した電池用包装材をヒートシールする際に互いに接触し合う層の材料を規定し、要すればさらに第1シーラント層以外の層の材料を規定する。
【0030】
図1の電池用包装材1のシーラント層20Aは、電池用包装材1の内側からバリア層11側に向かって順に、前記第1シーラント層21、第2シーラント層22、第3シーラント層23が積層された3層構造である。前記第1シーラント層21がバリア層11から最も離れた電池用包装材1の最内層であり、前記第3シーラント層23がバリア層11に最も近く第2接着剤層14に接する層であり、第2シーラント層22が第1シーラント層21と第3シーラント層23の間の中間層である。
【0031】
図2の電池用包装材2のシーラント層20Bは、最内層である第1シーラント層21と、バリア層11に最も近い第3シーラント層23との2層構造である。
図3の電池用包装材3のシーラント層20Cは最内層である第1シーラント層21の単層である。
【0032】
本発明において、シーラント層20A、20B、20Cの層数に関係なく、最内層を第1シーラント層21と称する。第1シーラント層21は本発明において必須の層である。2層以上のシーラント層20A、20Bでは、バリア層11に最も近い層を第3シーラント層23と称する。3層以上のシーラント層20Aでは、第1シーラント層21と第3シーラント層23の間の全ての層を第2シーラント層22と称する。従って、4層以上のシーラント層(図示なし)では第2シーラント層22が2層以上で構成される。
【0033】
(第1シーラント層)
本発明において、第1シーラント層21は、ブテン-エチレン共重合体、ブテン-プロピレン共重合体、炭素数(C)5以上のαオレフィンとブテン-1の共重合体の少なくとも1つ以上を含むポリブテン共重合体Aを含む樹脂によって構成する必要がある。 ポリブテン共重合体Aとしては、ブテン-エチレン共重合体、ブテン-プロピレン共重合体、炭素数(C)5以上のαオレフィンとブテン-1の共重合体から少なくとも1種以上含む樹脂等を例示することができる。
本発明において、第1シーラント層を構成する樹脂が、ブテン-1成分を含有するポリブテン共重合体Aを含んでいるため、ポリプロピレンやポリエチレンと比較して側鎖が嵩高くなり、立体障害によって樹脂の結晶化度を下げる効果が生じ、融点が低くなる。このため、第1シーラント層同士をヒートシールして作製される電池用ケースの過昇温時に、ケース内の電池本体において発生したガスが蓄積されて内圧が上昇した際に、温度上昇によって低融点成分が軟化し、シール強度が低下してシール部が徐々に開封されることにより、電池用ケース内部のガスが外部に効率良く放出され、電池用ケースの内圧上昇による包装材の破裂等の不具合を防止することができる。
【0034】
本発明において、上記第1シーラント層に含まれる前記ポリブテン共重合体Aを30質量%~50質量%を含有させるのが好ましい。すなわちポリブテン共重合体Aの含有量が30質量%以上であることから、第1シーラント層同士をヒートシールして作製される電池用ケースの過昇温時において内圧が上昇した際にガスの排出を効率良く行うことができる一方、ポリブテン共重合体Aの含有量が50質量%以下であることから、100℃付近まで十分なシール強度を維持することができ、低温時におけるシール部の不用意な剥離を防止することができる。 また本発明において、ポリブテン共重合体Aとしては、融点が80℃~120℃の範囲のものを使用するのが良く、より好ましくは融点が105℃~115℃の範囲のもの使用するのが好ましい。すなわちこの構成を採用する場合には、低温時におけるシール部の不用意な剥離をより確実に防止しつつ、過昇温時のガスの放出をより確実に行うことができる。
本発明においては、第1シーラント層を構成する樹脂として、上記ポリブテン共重合体Aと、以下のプロピレンランダム共重合体Bとの混合物を用いることによって、過昇温時に電池用ケース内のガスをより適切に放出でき、電池用ケースの内圧上昇による不具合をより一層確実に防止することができる。
【0035】
上記プロピレンランダム共重合体Bとしては、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体、メタロセン触媒を用いて作成したプロピレン、メタロセン触媒を用いて作成したプロピレン化合物の中から選択されるから少なくとも1種以上のものを含む樹脂を例示することができる。
【0036】
上記ポリブテン共重合体Aと、上記プロピレンランダム共重合体Bとの配合比は、30:70~50:50に設定するのが良く、より好ましい配合比は、35:65~50:50である。すなわちこの構成を採用する場合には、上記の過昇温時のガス放出をより効果的に行うことができる。
【0037】
さらに上記プロピレンランダム共重合体Bとしては、融点が80℃~120℃の範囲のものを使用するのが良く、より好ましいは融点が90℃~110℃の範囲のものを使用するのが良い。すなわちこの構成を採用する場合には、上記の効果をより一層確実に得ることができる。
【0038】
なおポリブテン共重合体Aを含む第1シーラント層21は、上記プロピレンランダム共重合体B以外に、他の樹脂を含有しても良い。
【0039】
(第2シーラント層)
本発明において、第2シーラント層22としては、プロピレンブロック共重合体と、プロピレンランダム共重合体とを含むポリプロピレン系樹脂を採用することができる。具体的に第2シーラント層22としては、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体、メタロセン触媒を用いて作製したプロピレン(メタロセン系プロピレン)、メタロセン触媒を用いて作製したプロピレン化合物(メタロセン系プロピレン化合物)、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-ブテンブロック共重合体、プロピレン-エチレン-ブテンブロック共重合体の中から選択される少なくとも1種以上の樹脂を例示することができる。
【0040】
第2シーラント層22を構成する樹脂の特に好ましい融点は130℃以上である。
【0041】
本発明においては、第2シーラント層に耐熱性のあるブロック共重合体が含まれるため、電池用ケースを作製するに際してヒートシール時に第2シーラント層が十分なスペース(層厚)を残して存在するため、第2シーラント層の残留により絶縁性を確実に維持できるとともに、第1シーラント層同士のみを確実に融着させることができ、過昇温による内圧上昇時に、比較的低温の所望の温度域においてガス排出機能を確実に発揮させることができ、電池用ケースの内圧上昇による不具合をより一層確実に防止することができる。
【0042】
(第3シーラント層)
本発明において、第3シーラント層23としては、上記第1シーラント層21よりも融点が高いプロピレンランダム共重合体を採用することができる。具体的に第3シーラント層23としては、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体、メタロセン触媒を用いて作製したプロピレン、メタロセン触媒を用いて作製したプロピレン化合物、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-ブテンブロック共重合体、プロピレン-エチレン-ブテンブロック共重合体、プロピレンホモポリマーの中から選択される少なくとも1種以上の樹脂を例示することができる。
【0043】
第3シーラント層23を構成する樹脂の特に好ましい融点は130℃以上、より好ましくは140℃以上である。さらに第3シーラント層23は、第2シーラント層22よりも融点が高い方がより一層好ましい。
【0044】
本発明において、第3シーラント層は第1シーラント層より融点が高いため、シール時に第3シーラント層が溶融する前に第1シーラント層同士を確実に熱融着させることができるため、第3シーラント層の残留により絶縁性をより確実に維持できるとともに、第1シーラント層同士のみをより確実に融着でき、電池用ケースの内圧上昇による不具合を適切に防止することができる。さらに第3シーラント層にプロピレンランダム共重合体を含むため、エラストマー成分が少なく、ボイドが発生しにくくなり、また構造上立体障害が小さいため接着層と密着性が良くなり、ヒートシール時に液噛みなどが起こった場合においても電解質の浸食を防止でき、接着層間例えば、接着層および金属箔間や接着層およびシーラント層間の界面剥離を防止でき、過昇温時に第1シーラント層間で確実に剥離が起きる可能性を向上させることができ、この点においても電池用ケースの内圧上昇による不具合を防止することができる。
【0045】
(シーラント層の添加物等)
前記シーラント層20A、20B、20Cの各層は、上述した樹脂の他に滑剤、アンチブロック剤等の添加剤を配合することができる。滑剤およびアンチブロック剤は滑り性を高めて成形性を向上させる効果がある。
【0046】
滑剤としては、特に限定するものではないが、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族系ビスアミド等が挙げられる。
【0047】
飽和脂肪酸アミドとして、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドを挙げることができる。
【0048】
不飽和脂肪酸アミドとして、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドを挙げることができる。
【0049】
置換アミドとして、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミドを挙げることができる。
【0050】
メチロールアミドとして、メチロールステアリン酸アミドを挙げることができる。
【0051】
飽和脂肪酸ビスアミドとして、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミドを挙げることができる。
【0052】
不飽和脂肪酸ビスアミドとして、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドを挙げることができる。
【0053】
脂肪酸エステルアミドとして、ステアロアミドエチルステアレートを挙げることができる。
【0054】
芳香族系ビスアミドとして、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミドを挙げることができる。
【0055】
アンチブロック剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリカ、アクリル樹脂、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、酸化チタン、タルク、カオリン等の粒子等が挙げられる。
【0056】
前記シーラント層20A、20B、20Cにおける各種添加剤の好ましい濃度は以下のとおりである。滑剤濃度は100ppm~3000ppm、アンチブロック剤濃度は100ppm~5000ppmである。
【0057】
前記シーラント層20A、20B、20Cの厚みは総厚(T)で20μm~100μmが好ましく、より好ましい総厚は20μm~80μmである。総厚が25μm~50μmであればなお一層好ましい。第1シーラント層21と第3シーラント層23とからなる2層構造のシーラント層20Bにおいては、総厚(T)を10としたときの第1シーラント層21の厚み(t1)と第3シーラント層23の厚み(t3)の比率t1:t3を2~8:8~2と配分するのが好ましく、4~8:6~2であればなお一層好ましい。また、第1シーラント層21、第2シーラント層22、第3シーラント層23からなる3層構造のシーラント層20Aにおいては、同じく総厚(T)を10としたときの第1シーラント層21の厚み(t1)、第2シーラント層22の厚み(t2)、第3シーラント層23の厚み(t3)の比率t1:t2:t3を1~4:2~7:1~7と配分するのが好ましく、2~4:2~4:3~6であればなお一層好ましい。
【0058】
(電池用包装材のシーラント層以外の層)
本発明の電池用包装材において、シーラント層以外の層は周知の材料を適宜用いることができ、貼り合わせ方法も特に限定されない。以下に、シーラント層を除く層の好適材料について説明する。
【0059】
(基材層)
前記基材層13には電池用包装材1、2、3をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂フィルムを用いる。前記耐熱性樹脂としては、シーラント層20A、20B、20Cを構成する樹脂の融点より10℃以上、好ましくは20℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いる。この条件を満たす樹脂として、例えば、ナイロンフィルム等のポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、前記基材層13としては、二軸延伸ナイロンフィルム等の二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。前記ナイロンフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。なお、前記基材層13は、単層で形成されていても良いし、或いは、例えばポリエステルフィルム/ポリアミドフィルムからなる複層(PETフィルム/ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。
【0060】
前記基材層13の厚さは、9μm~50μmであるのが好ましく、包装材として十分な強度を確保でき、かつ張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。前記基材層13のさらに好ましい厚さは12μm~30μmである。
【0061】
(バリア層)
前記バリア層11は、電池用包装材1、2、3に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記バリア層11としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、SUS箔(ステンレス箔)、銅箔、ニッケル箔、チタン箔、クラッド箔等の金属箔が挙げられる。前記バリア層11の厚さは、20μm~100μmであるのが好ましい。20μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、100μm以下であることで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。前記バリア層11の特に好ましい厚さは30μm~80μmである。
【0062】
また、前記バリア層11は前記金属箔の少なくともシーラント層20A、20B、20C側の面に、化成処理等の下地処理が施されていることが好ましい。このような化成処理が施されていることによって内容物(電池の電解質等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。
【0063】
例えば次のような処理をすることによって金属箔に化成処理を施す。
【0064】
脱脂処理を行った金属箔の表面に、下記1)~3)のうちのいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥することにより、化成処理を施す。
1)リン酸と、クロム酸と、フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
2)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
3)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む混合物の水溶液
前記化成皮膜は、クロム付着量(片面当たり)として0.1mg/m2~50mg/m2が好ましく、特に2mg/m2~20mg/m2が好ましい。
【0065】
(第1接着剤層)
前記第1接着剤層12としては、特に限定されるものではないが、例えば、2液硬化型接着剤により形成された接着剤層等が挙げられる。前記2液硬化型接着剤としては例えば、ポリウレタン系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール及びポリエステルウレタン系ポリオールからなる群より選ばれるポリオールの1種または2種以上からなる第1液(主剤)と、イソシアネートからなる第2液(硬化剤)とで構成される2液硬化型接着剤などが挙げられる。中でも、ポリエステル系ポリオール及びポリエステルウレタン系ポリオールからなる群より選ばれるポリオールの1種または2種以上からなる第1液と、イソシアネートからなる2液(硬化剤)とで構成される2液硬化型接着剤を用いるのが好ましい。前記第1接着剤層12の好ましい厚さは1μm~5μm、より好ましい厚さは2μm~5μmである。
【0066】
(第2接着剤層)
前記第2接着剤層14としては、特に限定されるものではないが、ドライラミネート法の場合、例えば、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エラストマー系樹脂、フッ素系樹脂、酸変性ポリプロピレン系樹脂のうちの1種以上を含む接着剤を推奨できる。中でも、酸変性ポリオレフィンを主剤とするポリウレタン複合樹脂からなる接着剤が好ましい。また、サンドラミネート法や熱ラミネート法の場合は、例えば、酸変性ポリプロピレン系樹脂や酸変性ポリエチレン系樹脂といった変性ポリオレフィン系樹脂を推奨できる。前記第2接着剤層14の好ましい厚さはラミネート方法によって異なり、ドライラミネート法の場合は2μm~5μmが好ましく、サンドラミネート法または熱ラミネート法の場合は2μm~20μmが好ましい。
【0067】
(電池用包装材の他の積層形態)
本発明の電池用包装材において、第1接着剤層および第2接着剤層は必須の層ではなく、基材層が直接バリア層に貼り合わされていてもよく、またシーラント層が直接バリア層に貼り合わされていてもよい。
【0068】
また、本発明の電池用包装材は、前記基材層の外側に別の層を形成して、外側層を基材層を含む複数の層で構成することもできる。前記基材層の外側に形成する層として保護層やマットコート層を例示できる。これらの層は、電池用包装材の最外層となって基材層を保護するとともに、表面に良好な滑り性を付与して成形性を高める効果がある。
【0069】
前記保護層の材料として、フェノキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂等を推奨できる。また、前記マットコート層は樹脂にマット剤を配合した樹脂組成物からなり、上述した樹脂と、前記マット剤として、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等の無機物の微粒子、アクリルビーズ等の樹脂ビーズ等を推奨できる。
【0070】
(電池の作製)
図4および
図5に示すように、必要に応じて成形された上記電池用包装材1、2、3の周囲が、包装材内部にベアセル(電池本体)51が収容された状態でヒートシールされることによって、電池用ケース50内にベアセル51が封入された電池(蓄電デバイス)が作製される。
【0071】
本発明において、電池用ケース50は、ヒートシール部における100℃環境下でのシール強度が、20N/15mm幅以上に調整するのが好ましい。すなわちこの場合には、ヒートシール部において、所定の過昇温度域に到達するまで所望のシール状態を確実に維持でき、低温時におけるシール部の不用意な剥離を防止することができ、高品質、高性能の電池製品を得ることができる。
【実施例0072】
以下に本発明の要旨を含む実施例と、その効果を立証するための比較例について説明する。
【0073】
【0074】
【0075】
実施例1~16および比較例1~3の電池用包装材を作製した。これらの電池用包装材は、
図1~3の電池用包装材1、2、3に参照されるように、バリア層11の一方の面に第1接着剤層12を介して基材層13が貼り合わされ、他方の面に第2接着剤層14を介してシーラント層20A、20B、20Cが貼り合わされている。前記電池用包装材はバリア層11、基材層13、第1接着剤層12、第2接着剤層14が共通であり、シーラント層20A、20B、20Cの層構成および材料が異なる。
【0076】
実施例1の電池用包装材のシーラント層20Cは第1シーラント層21の単層構造である(
図3参照)。実施例2のシーラント層20Bは第1シーラント層21と第3シーラント層23の2層構造(
図2参照)である。実施例3~16および比較例1~3のシーラント層20Aは第1シーラント層21、第2シーラント層22、第3シーラント層23の3層構造である(
図1参照)。
【0077】
各例の電池用包装材は、後述する材料と方法で単層または複層のシーラント層用フィルムを作製しておき、各例共通材料で作製した基材層、第1接着剤層、バリア層の積層フィルム(ラミネートフィルム)に第2接着剤を介してシーラント層用フィルムを貼り合わせた。各例のシーラント層用フィルムの詳細および電池用包装材の作製方法は以下のとおりである。
【0078】
<実施例1>
表1に示す第1シーラント層の樹脂A(ポリブテン共重合体A)である1-ブテン-プロピレン共重合体(融点110℃)と、表1に示す第1シーラント層の樹脂B(プロピレンランダム共重合体B)であるプロピレン-1-ブテン共重合(融点130℃)とを表1に示す含有率(質量%)で相溶させ、その混合樹脂に滑剤として1000ppmのエルカ酸アミドおよびアンチブロック剤として2000ppmのシリカ粒子を配合して第1シーラント層用樹脂組成物を調製した。この組成物をTダイにより押出して厚さ30μmの単層構造のシーラント層用フィルムを作製した。
【0079】
<実施例2>
表1に示す第1シーラント層の樹脂A、Bを用いて上記と同様に第1シーラント層用樹脂組成物を調整し、上記と同様に単層構造のシーラント層用フィルムを作製した。
【0080】
<実施例3、4>
表1に示す第1シーラント層の樹脂A、Bを用いて上記と同様に第1シーラント層用樹脂組成物を調整した。さらに表2に示す第3シーラント層の樹脂(プロピレン-エチレンランダム共重合体:融点142℃)に、1000ppmのエルカ酸アミド(滑材)および2000ppmのシリカ粒子(アンチブロッキング剤)を配合して第3シーラント層用樹脂組成物を調整した。この第1および第3シーラント層用樹脂組成物を、それらが積層されるようにTダイを用いて共押出することにより、厚さ15μmの第1シーラント層と、厚さ15μmの第3シーラント層とが積層された2層構造の厚さ30μmのシーラント層用フィルムを作製した。
【0081】
<実施例5>
表1に示す第1シーラント層の樹脂A、Bを用いて上記と同様に第1シーラント層用樹脂組成物を調整した。さらに表2に示す第2シーラント層の樹脂であるrPP(プロピレン-エチレンランダム共重合体)とbPP(プロピレン-エチレンブロック共重合体)の混合樹脂(融点135℃)に、1000ppmのエルカ酸アミド(滑材)および2000ppmのシリカ粒子(アンチブロッキング剤)を配合して第2シーラント層用樹脂組成物を調整した。さらに表2に示す第3シーラント層の樹脂であるプロピレン-エチレンランダム共重合体を用いて上記と同様に第3シーラント層用樹脂組成物を調整した。
【0082】
第1~第3シーラント層用樹脂組成物を、それらが積層されるようにTダイを用いて共押出することにより、厚さ6μmの第1シーラント層と、厚さ18μmの第2シーラント層と、厚さ6μmの第3シーラント層とがこの順で3層積層された3層構造の厚さ30μmのシーラント層用フィルムを作製した。
【0083】
<実施例6~10、12~16>
表1に示す第1シーラント層の樹脂A、Bを用いて上記と同様に第1シーラント層用樹脂組成物を調整した。さらに表2に示す第2および第3シーラント層の樹脂を用いて上記と同様に、第2および第3シーラント層用樹脂組成物を調整した。そして第1~第3シーラント層用樹脂組成物を用いて上記と同様に、シーラント層用フィルムを作製した。
【0084】
<実施例11>
表1に示す第1シーラント層の樹脂A、B、Cを用いて上記と同様に第1シーラント層用樹脂組成物を調整した。さらに表2に示す第2および第3シーラント層の樹脂を用いて上記と同様に、第2および第3シーラント層用樹脂組成物を調整した。そして第1~第3シーラント層用樹脂組成物を用いて上記と同様に、シーラント層用フィルムを作製した。
【0085】
<比較例1~3>
表1に示す第1シーラント層の樹脂A、Bまたは樹脂Aを用いて上記と同様に第1シーラント層用樹脂組成物を調整した。さらに表2に示す第2および第3シーラント層の樹脂を用いて上記と同様に、第2および第3シーラント層用樹脂組成物を調整した。そして第1~第3シーラント層用樹脂組成物を用いて上記と同様に、シーラント層用フィルムを作製した。
【0086】
(融点の測定方法)
上記実施例および比較例で用いた各樹脂の融点は、JIS K7121に準拠し、昇温速度10℃/minで示差操作熱量測定(DSC)を行いて測定したピークの頂点の温度Tpmである。
【0087】
(電池用包装材の作製)
バリア層11として、厚さ40μmのA8079からなるアルミニウム箔の両面に、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、150℃で乾燥を行って、化成皮膜を形成したものを用いた。この化成皮膜のクロム付着量は片面当たり5mg/m2である。また、基材層13として厚さ15μmの二軸延伸6ナイロンフィルムを用いた。
【0088】
前記バリア層11の一方の面(外面)に2液硬化型ウレタン系接着剤(第1接着剤層)を塗布して厚さ3μmの第1接着剤層12を形成し、前記基材層13をドライラミネートした。
【0089】
次いで、前記バリア層11の他方の面(内面)に2液硬化型マレイン酸変性プロピレン接着剤(第2接着剤)を塗布して厚さ2μmの第2接着剤層14を形成し、上記実施例および比較例の各シーラント層用フィルムをドライラミネートした。このとき、単層のシーラント層用フィルムには第1シーラント層21が第2接着剤層14に接触し、2層または3層のシーラント層用フィルムには第3シーラント層23が第2接着剤層14に接触するようにラミネートした。
【0090】
そして、全ての層が貼り合わされたラミネートシートをゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートを完成させ、しかる後、40℃で10日間エージングする(加熱する)ことによって実施例および比較例の電池用包装材を得た。
【0091】
(電池用包装材の評価)
作製した各例の電池用包装材について、下記の項目について測定し評価した。その結果を表2に示す。
【0092】
(シール強度)
電池用包装材を幅15mm×長さ150mmに裁断して複数枚の試験材を作製した。2枚の前記試験材をシーラント層20A、20B、20C同士が向かい合うように重ね、ヒートシール装置(テスター産業株式会社製、TP-701-A)を用いて、ヒートシール温度:180℃、シール圧:0.3MPa(ゲージ表示圧)、シール時間:4秒の条件にて片面加熱によりヒートシールを行い、これをシール強度用試験体とした。前記シール強度測定用試験体は各例につき3個を準備した。
【0093】
3個のシール強度測定用試験体を25℃、100℃、130℃の3種類の温度で24時間静置した後、それぞれの温度でシール強度を測定した。
【0094】
シール強度の測定は、JIS Z0238-1998に準拠し、引張試験機として島津製作所製ストログラフ(AGS-5kNX)を用いて行った。前記引張試験機の一方のチャックで試験材の一方の試験片の端部を挟着固定するとともに、他方のチャックで他方の試験片の端部を掴み、引張速度100mm/分でT字剥離させたときの剥離強度を測定し、これをシール強度(N/15mm幅)とした。
【0095】
(開封試験)
電池用包装材を幅100mm×長さ200mmに裁断して長方形の試験材を作製した。この長方形の試験材を、シーラント層20A、20B、20Cを内側にして長手方向の中央部で二つ折りにし、折り山に続く2辺を、シール幅:5mm、ヒートシール温度:180℃、シール圧:0.3MPa(ゲージ表示圧)、シール時間:4秒の条件にて片面加熱し、折り山の対向辺が開口する袋体にした。次いで、袋体の開口部から2.0gの水を入れ、同じ条件で開口辺を他の2辺と同じ条件でヒートシールして袋体を密封し、これを開封試験用試験体とした。
【0096】
前記開封試験用試験体をオーブンに入れ、25℃から130℃までを昇温速度5℃/分で加熱し、130℃に到達後に130℃で30分保持して、昇温から130℃×30分保持が終了するまでの間の開封状態を観察し、下記の基準で評価した。なお下記の基準A~Dは合格であり、X、Yは不合格となる。
A:100℃~130℃までの昇温中に開封し、ガスが緩やかに抜けた。
B:130℃までの昇温中に開封せず、130℃保持中に開封してガスが緩やかに抜けた。
C:100℃~130℃までの昇温中に開封し、かつガスが急激に抜けた。
D:130℃までの昇温中に開封せず、130℃度保持中にガスが急激に抜けた。
X:130℃での保持中でも開封しなかった。
Y:100℃までの昇温中に開封した。
【0097】
なお、本試験は、外部加熱試験(JIS C8714)を参考にしたものであるが、JIS C8714が130℃到達後の130℃保持時間が10分であるのに対し、本試験は130℃保持時間を30分に設定し、より厳しい条件の加熱を行った。
【0098】
表2の結果より、実施例の電池用包装材は100℃以下で高いシール強度を保ち、100℃~130℃で徐々にシール強度が低下して緩やかに開封することを確認することができた。
本発明の電池用包装材は、車載用、定置型、ノートパソコン用、携帯電話用、カメラ用の二次電池、特に小型携帯用のリチウムイオン二次電池のケース材料として好適に利用できる。