IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 光洋サーモシステム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-熱処理装置 図1
  • 特開-熱処理装置 図2
  • 特開-熱処理装置 図3
  • 特開-熱処理装置 図4
  • 特開-熱処理装置 図5
  • 特開-熱処理装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084916
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 5/02 20060101AFI20240619BHJP
   F27B 5/12 20060101ALI20240619BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20240619BHJP
   F27D 19/00 20060101ALN20240619BHJP
   F27D 3/12 20060101ALN20240619BHJP
【FI】
F27B5/02
F27B5/12
C21D1/00 112B
F27D19/00 Z
F27D3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199117
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000167200
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトサーモシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】中谷 淳司
【テーマコード(参考)】
4K034
4K055
4K056
4K061
【Fターム(参考)】
4K034AA01
4K034AA02
4K034DB02
4K034DB04
4K034DB05
4K034EA07
4K034EB39
4K034EB41
4K055AA06
4K055CA06
4K055HA02
4K055HA07
4K056AA09
4K056BC03
4K056CA18
4K056FA10
4K061AA01
4K061BA09
4K061EA01
4K061EA10
(57)【要約】
【課題】複数の加熱室を有する熱処理装置において、加熱室からの熱の移動を抑制する。
【解決手段】熱処理装置1は、第1加熱室10と、第2加熱室20と、第1加熱室10の内外で被処理物102を移動させる第1搬送手段30と、第1加熱室10と第2加熱室20との間で被処理物102を移動させる第2搬送手段50と、第1加熱室10と第2加熱室20との間で第2搬送手段50が通過する第1開口15を閉じる第1扉25と、を有する。第1搬送手段30は、第1加熱室10の外部から、第1加熱室10における第1扉25と対面側の壁に隣接する第1領域R1へ、被処理物102を移動させる。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を加熱処理する第1加熱室と、
前記被処理物を加熱処理する第2加熱室と、
前記第1加熱室の内外で前記被処理物を移動させる第1搬送手段と、
前記第1加熱室と前記第2加熱室との間で前記被処理物を移動させる第2搬送手段と、
前記第1加熱室と前記第2加熱室との間で前記第2搬送手段が通過する開口を閉じる第1扉と、を備え、
前記第1搬送手段は、前記第1加熱室の外部から、前記第1加熱室における前記第1扉と対面側の壁に隣接する第1領域へ、前記被処理物を移動させることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱処理装置において、
前記第1加熱室の内外で前記第1搬送手段が通過する開口を閉じる第2扉を備え、
前記第1加熱室における前記第2扉と対面側の壁に隣接する第2領域を設け、
前記第2搬送手段は、前記第1領域と前記第2領域とが重なる領域から、前記第2加熱室へ、前記被処理物を移動させることを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の熱処理装置において、
前記第2加熱室における前記第1扉と対面側の壁に隣接する第3領域を設け、
前記第2加熱室の内外で前記被処理物を移動させる第3搬送手段と、
前記第2加熱室の内外で前記第3搬送手段が通過する開口を閉じる第3扉と、を備え、
前記第2加熱室における前記第3扉と対面側の壁に隣接する第4領域を設け、
前記第2搬送手段は、前記第1領域と前記第2領域とが重なる領域から、前記第3領域と前記第4領域とが重なる領域へ、前記被処理物を移動させることを特徴とする熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の熱処理室の間で被処理材を搬送して熱処理を行う熱処理炉が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の構成では、熱処理炉は、複数の熱処理室(2a~2c)を備えられ、これらの加熱室(2a~2c)の雰囲気が異なる温度に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-7675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の熱処理室を有する熱処理装置は、通常、熱処理室間に扉が設けられている。被処理物の搬送時に熱処理室間の扉を開けると、高温側の熱処理室から、低温側の熱処理室に熱が移動する。この熱の移動により、低温側の熱処理室は温度が上昇し、高温側の熱処理室は温度が低下し、被処理物における熱処理の品質に影響を及ぼす。とりわけ、熱処理室間の扉の近傍は、熱処理室間の熱の移動の影響を受けやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる熱処理装置は、
被処理物を加熱処理する第1加熱室と、
前記被処理物を加熱処理する第2加熱室と、
前記第1加熱室の内外で前記被処理物を移動させる第1搬送手段と、
前記第1加熱室と前記第2加熱室との間で前記被処理物を移動させる第2搬送手段と、
前記第1加熱室と前記第2加熱室との間で前記第2搬送手段が通過する開口を閉じる第1扉と、を備え、
前記第1搬送手段は、前記第1加熱室の外部から、前記第1加熱室における前記第1扉と対面側の壁に隣接する第1領域へ、前記被処理物を移動させる。
【0006】
(2)前記熱処理装置は、前記第1加熱室の内外で前記第1搬送手段が通過する開口を閉じる第2扉を備え、
前記第1加熱室における前記第2扉と対面側の壁に隣接する第2領域を設け、
前記第2搬送手段は、前記第1領域と前記第2領域とが重なる領域から、前記第2加熱室へ、前記被処理物を移動させてもよい。
【0007】
(3)前記熱処理装置は、前記第2加熱室における前記第1扉と対面側の壁に隣接する第3領域を設け、
前記第2加熱室の内外で前記被処理物を移動させる第3搬送手段と、
前記第2加熱室の内外で前記第3搬送手段が通過する開口を閉じる第3扉と、を備え、
前記第2加熱室における前記第3扉と対面側の壁に隣接する第4領域を設け、
前記第2搬送手段は、前記第1領域と前記第2領域とが重なる領域から、前記第3領域と前記第4領域とが重なる領域へ、前記被処理物を移動させてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、複数の熱処理室を有する熱処理装置において、加熱室からの熱の移動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の熱処理装置の構成を説明するための模式的な断面図である。
図2図2は、熱処理装置の第1加熱室、および第1搬送手段などの模式的な断面図である。
図3図3は、熱処理装置の第1加熱室、第2加熱室、および第2搬手段などの模式的な断面図である。
図4図4は、熱処理装置の第2加熱室、および第3搬送手段などの模式的な断面図である。
図5図5(A)は、搬送ロッドの動作を説明するための模式図である。図5(B)は、第1領域,第2領域,第3領域,および第4領域を説明するための模式図である。
図6図6は、第2実施形態の熱処理装置の構成を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0011】
<熱処理装置の全体構成>
図1は、熱処理装置1の構成を説明するための模式的な断面図であり、熱処理装置1の全体構成を示している。
【0012】
熱処理装置1は、第1加熱室10と、第2加熱室20と、第1搬送手段30と、第2搬送手段50と、第3搬送手段70と、図示しない制御部と、を有している。
【0013】
第1加熱室10内には、第1ヒータ13と、被処理物102(図2参照)が載せられる第1ワーク台14とが設置されている。第1ヒータ13により、第1加熱室10の雰囲気が所定温度に加熱される。第2加熱室20内には、第2ヒータ23と、被処理物102が載せられる第2ワーク台24とが設置されている。第2ヒータ23により、第2加熱室20の雰囲気が所定温度に加熱される。また、第1加熱室10と第2加熱室20の間を被処理物102が通過する第1開口15が設けられる。また、第1加熱室10に第2開口16と第4開口18が設けられ、第2加熱室20に第3開口18が設けられる。
【0014】
第1搬送手段30は第1加熱室10の内部と外部との間で被処理物102を移動する搬送装置であり、第2搬送手段50は第1加熱室10と第2加熱室20との間で被処理物102を移動する搬送装置であり、第3搬送手段70は第2加熱室20の内部と外部との間で被処理物102を移動する搬送装置である。これらの各搬送手段30,50,70は、アクチュエータにより動作する。
【0015】
また、第1開口15に第1扉25が設けられる。第1扉25はアクチュエータにより開閉する。また、第1搬送手段30と、第1加熱室10の第2開口16と、の間に第2扉26が設けられ、第1搬送手段30は第2開口16を通過して被処理物102を移動する。また、第3搬送手段70と、第2加熱室20の第3開口17と、の間に第3扉27が設けられ、第3搬送手段70は第3開口17を通過して被処理物102を移動する。また、第2搬送手段50と、第1加熱室10の第4開口18と、の間に第4扉28が設けられ、第2搬送手段50は第4開口18を通過して被処理物102を移動する。これらの第1~第4扉25~28がアクチュエータにより開閉することで、第1~第4開口15~18が開閉される。
【0016】
制御部は、各ヒータ13,23と、各第1~第4扉25~28のアクチュエータと、各第1~び第3搬送手段30,50,70のアクチュエータとに電気的に接続されており、それらを制御する。
【0017】
被処理物(ワーク)102として、電子部品を例示できる。電子部品として、セラミック電子部品(例えば、MLCC(Multi Layered Ceramic Capacitor))と、フェライトコア、EMIフィルタ(Electromagnetic Interference Filter)、磁性シート、インダクタといった高周波部品およびデバイスと、GPSなどのGNSS(Global Navigation Satellite System)用アンテナおよびモジュールと、パワーインダクタと、全固体電池、SOFC(Solid Oxide Fuel Cell)といった二次電池部品と、を例示できる。
【0018】
<熱処理方法の概要>
熱処理装置1は、被処理物102を熱処理する装置であり、本実施形態では、被処理物102を2種類の温度で熱処理する。熱処理装置1は、被処理物102を第1加熱室10において第1温度(例えば、600℃)の雰囲気下で熱処理し、さらに、被処理物102を第2加熱室20において第2温度(例えば、1300℃)の雰囲気下で熱処理する。なお、第1温度および第2温度は、上述した一定値に限定されず、時間ともに変化する値であってもよく、互いに異なる値であってもよい。本実施形態では、熱処理装置1は、複数の(2つの)加熱室10,20を有しており、被処理物102を第1加熱室10から第2加熱室20に移動することで、被処理物102を上記2種類の温度で連続して熱処理する。本実施形態では、熱処理装置1は、加熱室10,20内に所定の熱処理ガスを供給しながら被処理物102に熱処理を行う。なお、熱処理装置1は、第1加熱室10と第2加熱室20を個別に運用することで2つの熱処理装置として運用されることも可能である。
【0019】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。
【0020】
なお、以下では、各図に示すように、左右、前後、および、上下を規定する。
【0021】
被処理物102として、例えば上述した電子部品であるMLCC(積層セラミックコンデンサ)を用いる。なお、本実施形態では、被処理物102は、セッター101に載せられた状態で、搬送および熱処理が行われる。セッター101は、例えば、セラミック系材料で形成された矩形状の平板部材である。
【0022】
主に図1~4を参照しつつ、熱処理装置1における、第1加熱室10と、第2加熱室20と、第1搬送手段30と、第2搬送手段50と、第3搬送手段70と、の詳細について説明する。
【0023】
各加熱室10,20は中空の立方体である。第1加熱室10と第2加熱室20は、第2搬送方向D2に並んでいる。第2搬送方向D2は、本実施形態では、水平方向であり、左右方向である。第1加熱室10と第2加熱室20は、隣接している。
【0024】
第1加熱室10の壁11は、壁11aと、壁11bと、壁11cと、壁11dと、壁11eと、を有している。第2加熱室20の壁21は、壁21aと、壁21bと、壁21cと、壁21dと、壁21eと、を有している。
【0025】
第1加熱室10の壁12は、壁11の壁11a,壁11d,壁11c、および壁11eに囲まれている。また、第2加熱室20の壁22は、壁21の壁21a,壁21d,壁21c、および壁21eに囲まれている。また、これらの壁12,22が互いに突き合わされている。これらの壁12,22には、セッター101が通過するための第1開口15が形成されている。また、第1開口15を開閉する第1扉25が設置されている。この第1扉25は、油圧シリンダなどのアクチュエータ3によって開閉される。
【0026】
第1加熱室10の壁11には、第2開口16が形成されている。第2開口16は、第1搬送手段30により、第1加熱室10の内部と外部との間で搬送されるセッター101が通過する開口である。第2開口16には、第1搬送手段30が通過する。第2開口16は、壁11aに配置されている。
【0027】
第1搬送手段30は、上記のように第1加熱室10の内部と外部との間でセッター101を搬送し、当該第1搬送手段30の一部(例えば、後述する第1搬送ロッド31)が第1搬送方向D1における第1加熱室10の壁11(壁11a)を通過する構成である。すなわち、第1搬送手段30が第2開口16を通ることで、セッター101が搬送される。
【0028】
また、第1加熱室10の壁11には、第4開口18が形成されている。第4開口18は、第2搬送手段50の一部が通過する開口であり、第4開口18は、壁11bに配置されている。
【0029】
第2搬送手段50は、第1加熱室10と第2加熱室20との間でセッター101を搬送し、当該第2搬送手段50の一部(例えば、後述する第2搬送ロッド51)が第2搬送方向D2における第1加熱室10または第2加熱室20のいずれかの壁11,21(本実施形態では、第1加熱室10の壁11)を通過する構成である。すなわち、第2搬送手段50が第4開口18を通ることで、セッター101が搬送される。
【0030】
また、第2加熱室20の壁11には、第3開口17が形成されている。第3開口17は、第3搬送手段70により、第2加熱室20の内部と外部との間で搬送されるセッター101が通過する開口である。第3開口17には、第3搬送手段70が通過する。第3開口17は、壁21aに配置されている。
【0031】
第3搬送手段70は、第2加熱室20の内部と外部との間でセッター101を搬送し、当該第3搬送手段70の一部(例えば、後述する第3搬送ロッド71)が第3搬送方向D3における第2加熱室20の壁21(壁21a)を通過する構成である。すなわち、第3搬送手段70が第3開口17を通ることで、セッター101が搬送される。
【0032】
図1の矢印A1~A3に示す通り、第1搬送手段30は、第1加熱室10の外部から内部へセッター101を移動する。第2搬送手段50は、第1加熱室10から第2加熱室20へセッター101を移動する。第3搬送手段70は、第2加熱室20の内部から外部へセッター101を移動する。
【0033】
<搬送手段の構造と、セッター101の搬送方法>
第1搬送手段30は、セッター101が搭載される第1搬送ロッド31と、第1搬送ロッド31を第1搬送方向D1に移動させるとともに回転させるアクチュエータ32と、を有している。なお、第1搬送方向D1は、本実施形態では、水平方向であり、前後方向である。
【0034】
第1搬送ロッド31は、例えば、第1搬送方向D1を長手方向とする棒状に形成されている。第1搬送ロッド31は、棒状の本体35と、本体35の先端に突起状の凸部36と、を有している。本実施形態では、1つの本体35に、複数(2つ)の凸部36が第1搬送方向D1に並んで設けられている。
【0035】
また、第1搬送ロッド31は、セッター101を搭載した状態で、第1搬送ロッド31の本体35の先端にある凸部36がセッター101の裏面に当接している。これにより、セッター101は第1搬送ロッド31に支持される。
【0036】
図5(A)は、搬送ロッド31(51,71)の動作を説明するための模式図である。図5(A)に示すように、第1搬送ロッド31(第2搬送ロッド51,第3搬送ロッド71)が回転すると、凸部36は、上向きまたは下向きになる。本実施形態では、各搬送ロッド31(51,71)は、左右一対設置されている。左右一対の搬送ロッド31(51,71)が回転し、凸部36が下向きから上向きになることで、セッター101を持ち上げる。また、左右一対の搬送ロッド31(51,71)が回転し、凸部36が上向きから下向きになることで、セッター101を下ろしてセッター101をワーク台14(24)に載せる。
【0037】
第1搬送手段30に関連して、熱処理装置1には、第1チャンバユニット40が設けられている。この第1チャンバユニット40は、本実施形態では、第1加熱室10の壁11aに設置されている。
【0038】
第1チャンバユニット40は、チャンバ41と、第1扉25と、扉25を開閉する電動モータ、エアシリンダなどのアクチュエータ44と、を有している。
【0039】
チャンバ41は、第1開口15を覆うようにして壁11の壁11aに設置される箱である。チャンバ41内の空間が、第1開口15につながっている。このチャンバ41には、第1搬送ロッド31が通されている。
【0040】
チャンバ41には、扉45が設けられており、扉45を開いた状態でセッター101をチャンバ41内の空間に対して出し入れする。扉45は、例えば作業員の手作業などによって、開閉される。なお、扉45をアクチュエータで開閉させてもよい。
【0041】
第1扉25は、本実施形態では、2つ設けられており、第2開口16に近い扉は断熱材を用いて形成され、第2開口16から遠い扉はシール材を用いて形成され、第2開口16に近い扉と扉45との間に、第2開口16から遠い扉が配置されている。
【0042】
第2搬送手段50は、第1加熱室10のうち第2搬送方向D2の一端側の壁である壁11bに設置されている点以外は、第1搬送手段30と同様の構成を有している。より具体的には、第2搬送手段50は、セッター101が搭載される第2搬送ロッド51と、第2搬送ロッド51を第2搬送方向D2に移動させるとともに回転させるアクチュエータ32と、を有している。なお、第2搬送方向D2は、水平方向であり、左右方向である。
【0043】
第2搬送ロッド51は、本実施形態では、第1搬送ロッド31と同じ形状に形成されている。
【0044】
第2搬送手段50に関連して、熱処理装置1には、第2チャンバユニット60が設けられている。この第2チャンバユニット60は、第1加熱室10の壁11bに設置されている点と、断熱材を用いて形成された扉および扉45が設けられていない点以外は、第1チャンバユニット40と同様の構成を有している。
【0045】
第2チャンバユニット60は、チャンバ41と、第4扉28と、この扉28を開閉する電動モータ、エアシリンダなどのアクチュエータ44とを有している。
【0046】
第2チャンバユニット60のチャンバ41は、第4開口18を覆うようにして壁11の壁11bに設置された箱部材であり、当該チャンバ41内の空間が、第4開口18につながっている。このチャンバ41には、第2搬送ロッド51が通されている。
【0047】
第2チャンバユニット60の第4扉28は、第4開口18に隣接して配置されている。
【0048】
第3搬送手段70は、第2加熱室20の壁である壁21aに設置されている点以外は、第1搬送手段30と同様の構成を有している。より具体的には、第3搬送手段70は、セッター101が搭載される第3搬送ロッド71と、第3搬送ロッド71を第3搬送方向D3に移動させるとともに回転させるアクチュエータ32と、を有している。なお、第3搬送方向D3は、本実施形態では、水平方向であり、前後方向である。第1搬送方向D1と第3搬送方向D3とは、平行である。
【0049】
第3搬送ロッド71は、本実施形態では、第1搬送ロッド31と同じ形状に形成されている。
【0050】
第3搬送手段70に関連して、熱処理装置1には、第3チャンバユニット80が設けられている。この第3チャンバユニット80は、第2加熱室20の壁21aに設置されており、第1チャンバユニット40と同じ構成を有している。
【0051】
第3チャンバユニット80は、チャンバ41と、第3扉27と、扉27を開閉する電動モータ、エアシリンダなどのアクチュエータ44と、扉45と、を有している。
【0052】
第3チャンバユニット80のチャンバ41は、第3開口17を覆うようにして壁21の壁21aに設置されている。第3チャンバユニット80のチャンバ41には、第3搬送ロッド71が通されている。
【0053】
第3扉27は第3開口17に隣接して配置されている。
【0054】
本実施形態では、第1開口15と、第2開口16と、第3開口17がセッター101の搬送時に開くことに起因して、加熱室10,20間での熱の移動や、加熱室10,20から外部への熱の移動(熱の漏れ)が生じる。この熱の移動に起因して第1加熱室10または第2加熱室20で加熱処理されている被処理物102の温度が変化すると、被処理物102への加熱プロファイルが所望の通りとならず、被処理物102における熱処理の品質に影響を及ぼす。とりわけ、セッター101が通過する第1開口15,第2開口16,および第3開口17の近傍は、上記した熱の移動の影響を受けやすい。
【0055】
本実施形態では、上記第1開口15,第2開口16,および第3開口17が開くことに起因する被処理物102への熱の変化が抑制されている。具体的には、被処理物102は、第1加熱室10では第1領域R1に配置され、第2加熱室20では第3領域R3に配置される。以下、第1領域R1,第2領域R2,第3領域R3,および第4領域R4について説明する。
【0056】
図5(B)は、第1領域R1,第2領域R2,第3領域R3,および第4領域R4を説明するための模式図である。本実施形態では、第1搬送手段30、第2搬送手段50、および第3搬送手段70によってセッター101が移動される領域である第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3、および第4領域R4が設けられている。
【0057】
<第1領域>
図1および図5(B)を参照して、第1領域R1は、第1加熱室10における第1扉25と対面側の壁に隣接する領域であり、壁11b(第1扉25が設置されている壁12と第2搬送方向D2に向かい合う壁)に隣接する領域である。第2搬送方向D2における第1加熱室10内の長さL1としたとき、第1領域R1は、壁11bの内面から長さL1の1/2までの範囲であってもよいし、長さL1の1/3までの範囲であってもよいし、長さL1の1/4以下までの範囲であってもよい。第1搬送手段30は、第1加熱室10の外部から第1領域R1へセッター101を移動させる。このため、被処理物102は第1加熱室10の第1領域R1において加熱処理を施される。第1領域R1において、セッター101は、壁11bと接触しない程度に第1扉25から遠ざけられていることが好ましい。第1扉25からのセッター101の距離が遠いほど、第1扉25を開いたときに加熱室10,20間で移動する熱を被処理物102に到達し難くできる。
【0058】
以上説明したように、第1加熱室10においては、第1扉25から遠く第2加熱室20からの熱の影響の低い第1領域R1に被処理物102を配置できるので、被処理物102における熱処理の品質に及ぼす影響を抑制できる。
【0059】
<第2領域>
第2領域R2は、第1加熱室10における第2扉26と対面側の壁に隣接する領域であり、第2扉26が設置されている壁11aと第1搬送方向D2に向かい合う壁11cに隣接する領域である。第1搬送方向D1における第1加熱室10内の長さを長さL2としたとき、第2領域R2は、壁11cの内面から長さL2の1/2までの範囲であってもよいし、長さL2の1/3までの範囲であってもよいし、長さL2の1/4以下までの範囲であってもよい。本実施形態では、第1搬送手段30は、第1領域R1と第2領域R2とが重なる領域R12へセッター101を移動させ、第2搬送手段50は、第1領域R1と第2領域R2とが重なる領域R12から、第2加熱室20へ、セッター101を移動させる。このため、第1領域R1と第2領域R2とが重なる領域R12において、第2搬送手段50が配置され、被処理物102が加熱処理を施される。第2領域R2において、セッター101は、後壁11cと接触しない程度に第2扉26から遠ざけられていることが好ましい。第2扉26からのセッター101の距離が遠いほど、第2扉26を開いたときに被処理物102の周囲から第1加熱室10の外部へ逃げる熱を少なくできる。
【0060】
以上説明したように、第1領域R1と第2領域R2とが重なる領域R12にセッター101が配置された状態で加熱処理が行われるので、第1加熱室10における第1扉25および第2扉26の双方から離れた領域に被処理物102が配置されることになる。よって、第1開口15および第2開口16が被処理物102における熱処理の品質に及ぼす影響をより抑制できる。
【0061】
<第3領域>
第3領域R3は、第2加熱室20における第1扉25と対面側の壁に隣接する領域であり、壁21b(第1扉25が設置されている壁22と第2搬送方向D2に向かい合う壁)に隣接する領域である。第2搬送方向D2における第2加熱室20内の長さを長さL3としたとき、第3領域R3は、壁21bの内面から長さL3の1/2までの範囲であってもよいし、長さL3の1/3までの範囲であってもよいし、長さL3の1/4以下までの範囲であってもよい。本実施形態では、第2搬送手段50は、第1加熱室10から、第2加熱室20の第3領域R3へ、セッター101を移動させる。このため、第2加熱室20では、第3領域R3において、第2搬送手段50が配置され、被処理物102が加熱処理を施される。第3領域R3において、セッター101は、壁21bと接触しない程度に第1扉25から遠ざけられていることが好ましい。第1扉25からのセッター101の距離が遠いほど、第1扉25を開いたときに被処理物102の周囲から第1加熱室10へ逃げる熱を少なくできる。
【0062】
以上説明したように、第2加熱室20においては、第1扉25から遠く第2加熱室20から第1加熱室10へ流れる熱の影響の低い第3領域R3に被処理物102を配置できるので、被処理物102における熱処理の品質に及ぼす影響を抑制できる。
【0063】
<第4領域>
第4領域R4は、第2加熱室20における第3扉27と対面側の壁に隣接する領域であり、壁21c(第3扉27が設置されている壁21aと第3搬送方向D3に向かい合う壁)に隣接する領域である。第3搬送方向D3における第2加熱室20の長さを長さL4としたとき、第4領域R4は、壁21cの内面から長さL4の1/2までの範囲であってもよいし、長さL4の1/3までの範囲であってもよいし、長さL4の1/4以下までの範囲であってもよい。本実施形態では、第2搬送手段50は、第1加熱室10にける第1領域R1と第2領域R2とが重なる領域R12から、第2加熱室20における第3領域R3と第4領域R4とが重なる領域R34へ、セッター101を移動させる。このため、被処理物102は第2加熱室20において第3領域R3と第4領域R4とが重なる領域R34において加熱処理を施される。第4領域R4において、セッター101は、壁21cと接触しない程度に第3扉27から遠ざけられていることが好ましい。第3扉27からのセッター101の距離が遠いほど、第3扉27を開いたときに被処理物102の周辺から逃げる熱の量を少なくできる。
【0064】
以上説明したように、第3領域R3と第4領域R4とが重なる領域R34にセッター101が配置された状態で加熱処理が行われるので、第2加熱室20における第1扉25および第3扉27の双方から離れた領域に被処理物102が配置される。よって、第1扉25(第1開口15)および第3扉27(第3開口17)が被処理物102における熱処理の品質に及ぼす影響をさらに抑制できる。
【0065】
<熱処理装置1におけるセッター101の搬送動作>
次に、熱処理装置1におけるセッター101の搬送動作を説明する。
【0066】
以下では、(1)セッター101を第1加熱室10に搬入する動作、(2)セッター101を加熱室10,20間で移動する動作、(3)セッター101を第2加熱室20から搬出する動作を、順に説明する。これら(1)~(3)の動作では、セッター101は、図1の矢印A1~A3の順に搬送される。
【0067】
<(1)セッター101を第1加熱室10に搬入する動作>
セッター101を第1加熱室10に搬入する際には、まず、第1チャンバユニット40の扉45を開け、セッター101が第1チャンバユニット40内に入れられる。このとき、セッター101は、扉45の直下に配置された第1搬送ロッド31の凸部36に載せられる。
【0068】
次に、第1チャンバユニット40の扉45が閉じられた後、第2扉26が開かれ、セッター101が第1開口15と直接向かい合う。
【0069】
次に、第1搬送ロッド31が第1搬送方向D1に移動することで、第2開口16を通ってセッター101が第1加熱室10に搬入され、第1ワーク台14の上方に位置される。
【0070】
次に、第1搬送ロッド31が回転することでの凸部36が下向きになり、セッター101が第1ワーク台14に載せられる。
【0071】
次に、第1搬送ロッド31の凸部36は、第1チャンバユニット40の扉45の下方にまで後退し、第2扉26が閉じられる。この状態で、第1加熱室10にて被処理物102が熱処理された後、セッター101は、第1加熱室10から第2加熱室20へ搬送される。
【0072】
<(2)セッター101を加熱室10,20間で移動する動作>
第1搬送ロッド31が第1加熱室10から待避した状態において、第2チャンバユニット60では、第4扉28が開かれることで、第2搬送ロッド51と第4開口18とが直接向かい合う。
【0073】
次に、第2搬送ロッド51は、第4開口18を通って第1加熱室10に移動することで、第2搬送手段50の凸部36がセッター101の下方に位置される。次に、第2搬送ロッド51が回転することで凸部36が上向きになることで、セッター101が持ち上げられる。
【0074】
次に、第1扉25が開かれ、次いで、第2搬送ロッド51と共にセッター101が、第2搬送方向D2に沿って第1開口15を通過し第2加熱室20の第2ワーク台24まで搬送される。
【0075】
次に、第2搬送ロッド51の凸部36が下向きになり、セッター101が第2ワーク台24に載せられる。
【0076】
次に、第2搬送ロッド51は、第2チャンバユニット60のチャンバ41まで後退し、第1扉25が閉じられ、次いで、第4扉28が閉じられる。この状態で、第2加熱室20にて被処理物102が熱処理された後、セッター101は、第2加熱室20から第2加熱室20の外部へ搬送される。
【0077】
<(3)セッター101を第2加熱室20から搬出する動作>
第1搬送手段30に代えて第3搬送手段70が行う点以外は、説明した、第1加熱室10へのセッター101の搬入動作の手順と逆の手順によって、セッター101が搬送され、第3扉27が開かれた状態で第3開口17をセッター101が通過し、セッター101が第2加熱室20から第2チャンバユニット80内における扉45の下方に到達する。その後、扉45が開かれ、セッター101が扉45を通して第2チャンバユニット80から取り出されることで、熱処理装置1における被処理物102の熱処理が完了する。
【0078】
以上が第1実施形態の説明である。
【0079】
以下では、第1実施形態と異なる構成を主に説明し、第1実施形態と同様の構成には図に同様の符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
【0080】
<第2実施形態>
【0081】
図6は、第2実施形態の熱処理装置1の構成を説明するための模式的な断面図である。
【0082】
第2実施形態の熱処理装置1は、第1実施形態の熱処理装置1における第3搬送手段70と、第3チャンバユニット80と、第3開口17とを除いた構成である。
【0083】
第1実施形態では、搬送手段として、第1搬送手段30と第2搬送手段50と第3搬送手段70が設けられていた。この第1実施形態の場合、セッター101は、矢印A1~A3の順に搬送された。より具体的には、被処理物102の熱処理後にセッター101を第2加熱室20から取出す時に、第3搬送手段70によってセッター101を直接取り出した。一方で、第2実施形態は、一旦、第2搬送手段50によってセッター101を第2加熱室20から第1加熱室10へ戻し、その後第1搬送手段30でセッター101を取り出す構成になっている。なお、この構成では、第2搬送手段70にてセッター101を第2加熱室20から第1加熱室10に搬送してから、第1搬送手段30にて第1加熱室10からセッター101を取り出すようにしているが、例えば、第2加熱室20からセッター101を作業者が直接取り出すようにしてもよい。
【0084】
<第2実施形態におけるセッター101の搬送動作>
次に、第2実施形態におけるセッター101の搬送動作を説明する。
【0085】
第2実施形態の熱処理装置1では、(1)セッター101を第1加熱室10に搬入する動作、(2)セッター101を第1加熱室10から第2加熱室20へ移動する動作、(3)セッター101を第2加熱室20から第1加熱室10へ移動する動作、(4)セッター101を第1加熱室10から搬出する動作、が行われる。これら(1)~(4)の動作では、セッター101は、図6の矢印B1~B4の順に搬送される。
【0086】
<変形例>
以下では、変形例を説明する。
【0087】
(1)実施形態では、被処理物102が第1加熱室10において第1領域R1と第2領域R2とが重なる領域R12に配置される形態を例に説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、被処理物102は、第1領域R1において第2領域R2と重なっていない領域に配置されて加熱処理されてもよい。この場合、第1ワーク台13は、第1領域R1において第2領域R2と重なっていない領域に設置され、第1搬送手段30は、セッター101を、第1領域R1において第2領域R2と重なっていない領域に移動する。この場合、第1開口15、第1扉25、第2搬送手段50、および第4開口18は、第1領域R1において第2領域R2と重なっていない領域と第2搬送方向D2に向かい合う。第1加熱室10での加熱処理において、第2開口16からの熱の逃げが被処理物102の品質に与える影響が小さい場合は、このような配置も実現できる。
【0088】
(2)実施形態では、被処理物102が第2加熱室20において第3領域R3と第4領域R4とが重なる領域R34に配置される形態を例に説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、被処理物102は、第3領域R3において第4領域R4と重なっていない領域に配置されて加熱処理されてもよい。この場合、第2ワーク台23は、第3領域R3において第4領域R4と重なっていない領域に設置され、第2搬送手段50は、セッター101を、第3領域R3において第4領域R4と重なっていない領域に移動する。第2加熱室20での加熱処理において、第3開口17からの熱の逃げが被処理物102の品質に与える影響が小さい場合は、このような配置も実現できる。
【0089】
(3)実施形態では、被処理物102が第2加熱室20において第3領域R3に配置される形態を例に説明したが、この通りでなくてもよい。被処理物102は、第2加熱室20において、第3領域R3から外れた箇所に配置されて加熱処理されてもよい。この場合、第2ワーク台23は、第3領域R3から外れた箇所に設置される。第2加熱室20での加熱処理において、第1開口15からの熱の逃げが被処理物102の品質に与える影響が小さい場合は、このような配置も実現できる。
【0090】
(4)実施形態では、第2扉26,第3扉27,および第4扉28が、第2開口16,第3開口17,および第4開口18の外側に設置される形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよく、これらの扉26,27,28の少なくとも一つは、対応する開口16,17,18内に設置されてもよい。
【0091】
(5)実施形態では、第1搬送手段30および第3搬送手段70は、それぞれ、第1加熱室10の壁11a側、および第2加熱室20の壁21a側に設置される形態を例に説明したが、この通りでなくてもよい。第1搬送手段30および第3搬送手段70は、加熱室10,20の壁11のうち、壁11a,21a以外の壁側に設置されてもよい。また、第2加熱室20側に第2搬送手段50が設置されてもよい。
【0092】
(6)実施形態では、加熱室として第1加熱室10と第2加熱室20が合計で2つ備えられる構成を例に説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、熱処理装置1において、第1加熱室10と第2加熱室20との間に別の加熱室が備えられていてもよい。例えば、加熱室が3つ並べられる場合、これらの加熱室の雰囲気温度は、同一でもよいし、異なっていてもよいし、加熱室の並び順に低温、中温、高温と3段階に設定されていてもよい。また、この変形例では、熱処理装置1として第1搬送手に段30が少なくとも1つ備えられていればよく、搬送手段30,70の何れも設置されていない加熱室が存在していてもよい。
【0093】
(7)実施形態では、第1搬送方向D1、第2搬送方向D2、および第3搬送方向D3は、それぞれ、当該方向に進むと突き当たる壁11,21の外面に対して直交する方向であった。しかしながら、この通りでなくてもよい。第1搬送方向D1、第2搬送方向D2、および第3搬送方向D3は、そのうちの少なくとも1つが、当該方向に進むと突き当たる壁11,21の外面に対して斜めに交差する方向であってもよい。この場合、第1搬送手段30および第3搬送手段70のいずれかの長手方向が、前後方向、または上下方向に対して傾斜した方向となる、或いは、第2搬送手段50の長手方向が、左右方向に対して傾斜した方向となる。
【0094】
(8)実施形態では、各搬送ロッド31,51,71が一対設けられてセッター101を両持ち支持する形態を例に説明したが、この通りでなくてもよい。各搬送ロッド31,51,71の少なくとも1つにおいて、一本のロッドでセッター101を片持ち支持する構成であってもよい。
【0095】
(9)実施形態では、第1搬送手段30の一部である第1搬送ロッド31が第1加熱室10の壁11(壁11a)を通過する例、第2搬送手段50の一部である第2搬送ロッド51が第2搬送方向D2における第1加熱室10または第2加熱室20のいずれかの壁11,21(壁11b,壁21b)を通過する例、第3搬送手段70の一部である第3搬送ロッド71が第2加熱室20の壁21(壁21a)を通過する例について説明した。すなわち、搬送手段の一部(搬送ロッド)が通過する例について説明したが、この通りでなくともよい。搬送手段の全てが通過するようにしてもよい。この場合、搬送手段の構成する搬送ロッドと、アクチュエータ32と、が全て加熱室の壁を通過することで、セッター101が搬送される。
【0096】
(10)実施形態では、各搬送手段30,50,70としてアクチュエータを介してロッドを直線移動させる搬送装置を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。第1搬送手段30は、第1加熱室10の内部と外部との間でセッター101を搬送できればよく、第2搬送手段50は、複数の加熱室間でセッター101を搬送できればよく、第3搬送手段70は、第2加熱室の内部と外部との間でセッター101を搬送できればよい。よって、各搬送手段30,50,70として、セッター101を載置する支持部と、搬送方向に伸縮するアームとそれらを動作させるアクチュエータを備えた搬送装置や、多関節アームの先端にセッター101を載せて移送する搬送装置などが用いられてもよい。これらの搬送装置にて、セッター101が対応する搬送方向D1,D2,D3にそれぞれ搬送される。また、第2搬送手段50として、コンベアローラなどの、加熱室10,20内に設置された搬送手段が用いられる場合、第4開口18を省略できるので、加熱室10からの熱の逃げをより抑制できる。また、各実施形態では、セッター101が直線移動される形態を例に説明したけれども、少なくとも1つの搬送手段においてセッター101は、直線ではない曲線などの搬送方向に沿って搬送されてもよい。
【0097】
(11)実施形態では、第1加熱室10と第2加熱室20との間の第1開口15に第1扉25が1つ設けられる形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。第1扉25は、第1開口15において、第2搬送方向D2に離隔して2つ設置されていてもよい。この場合、第1扉25は、第1加熱室10の壁12側に形成された第1開口15,および第2加熱室20の壁22側に形成された第1開口15のそれぞれに設置される。この際、第1扉25,25の間の雰囲気を冷却する冷却機構が設けられていてもよい。冷却機構は、例えば、石英などで形成されたパイプに冷媒として空気などガスが通過する構成とされる。冷却機構が設けられることにより、第1扉25,25間の雰囲気温度を、例えば第1加熱室10における第1温度と第2加熱室20における第2温度の中間の温度にすることができ、第1扉25,25の過熱を抑制できる。
【0098】
(12)実施形態において、2つの加熱室10,20のうち、低温側の加熱室の厚み(外壁の厚み)を、高温側の加熱室の厚みより薄くしてもよい。高温側の加熱室は、低温側の加熱室に比べ、自然放熱し難くするために、容積が大きく、壁が厚く設定されることで、加熱室の高温状態を維持し易い。なお、2つの加熱室10,20間の雰囲気温度差が小さければ、加熱室10,20の壁の厚みを同じとし、加熱室内の容積も同じとしてもよく、この場合、加熱室間に扉の冷却機構を設けなくてもよい。
【0099】
(13)実施形態では、被処理物102が小さい又は機械的強度が低く脆い素材で形成されているなど、被処理物102をセッター101に載せられた状態で、搬送および熱処理が行われる例について説明したが、搬送手段にて直接に掴んだり載せたりできる被処理物102は、セッター101に載せて搬送しなくてもよく、直接搬送されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、熱処理装置として、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 熱処理装置
10 第1加熱室
11b 壁(第1加熱室における第1扉と対面側の壁)
11c 壁(第1加熱室における第2扉と対面側の壁)
15 第1開口(第1加熱室と第2加熱室との間で第2搬送手段が通過する開口)
16 第2開口(第1搬送手段が通過する開口)
17 第3開口(第3搬送手段が通過する開口)
20 第2加熱室
21b 壁(第2加熱室における第1扉と対面側の壁)
21c 壁(第2加熱室における第3扉と対面側の壁)
25 第1扉
26 第2扉
27 第3扉
30 第1搬送手段
50 第2搬送手段
70 第3搬送手段
102 被処理物
R1 第1領域
R2 第2領域
R3 第3領域
R4 第4領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6