(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084918
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】住宅提供システムおよび住宅提供方法ならびに住宅提供プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/16 20240101AFI20240619BHJP
【FI】
G06Q50/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199119
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】592041753
【氏名又は名称】シーエフ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166132
【弁理士】
【氏名又は名称】木船 英雄
(72)【発明者】
【氏名】梅山 保吉
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC27
5L050CC27
(57)【要約】
【課題】定期使用権販売方式による住宅の取得に必要な情報を正確かつ迅速に入居者や所有者などに提供できる新規な住宅提供システムおよび方法ならびにプログラムの提供。
【解決手段】住宅の設定価格に基づいてその頭金に相当する使用権利金を算出した後、その残金に金利を合算した総支払額を算出し、その総支払額の月額の使用権料を算出し、それぞれの算出額を表示する。これによって、必要な情報を入力するだけで、頭金に相当する使用権利金や月額の使用権料といった重要な情報を直ちに算出できるため、定期使用権販売方式による住宅の取得に必要な情報を正確かつ迅速に入居者に提供することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅を提供する所有者がその住宅への入居を希望する入居者に対して当該住宅を所定の期間使用する権利を販売することで住宅を提供するシステムであって、
前記所有者と入居者間で交わされた特約付定期使用権住宅契約に従って前記住宅の設定価格から使用権利金を算出する使用権利金算出手段と、
算出された使用権利金を前記住宅の設定価格から差し引いた残金に、前記特約付定期使用権住宅契約で定められた期間内の金利を合算した総支払額を算出する総支払額算出手段と、
算出された総支払額を前記特約付定期使用権住宅契約で定められた期間内の月数で割った月額の使用権料を算出する月額使用権料算出手段と、
算出された前記使用権利金と前記総支払額と前記月額の使用権料とを表示する算出額表示手段とを備えたことを特徴とする住宅提供システム。
【請求項2】
請求項1に記載の住宅提供システムにおいて、
前記使用権利金算出手段は、前記住宅の建築費用と土地取得費用と登記費用と各種税金を合計した総工費に第1の係数を乗算し、その総額に第2の係数を乗算した数値を前記使用権利金として算出することを特徴とする住宅提供システム。
【請求項3】
請求項1に記載の住宅提供システムにおいて、
前記使用権利金算出手段は、前記住宅が集合住宅からなるときは、その集合住宅全体の建築費用と土地取得費用と登記費用と各種税金を合計した総工費を前記集合住宅の戸数で除算した数値に第1の係数を乗算し、その総額に第2の係数を乗算した数値を前記使用権利金として算出することを特徴とする住宅提供システム。
【請求項4】
請求項2に記載の住宅提供システムにおいて、
前記総支払額算出手段は、前記住宅の建築費用と土地取得費用と登記費用と各種税金を合計した総工費に第1の係数を乗算し、その総額から前記使用権利金算出手段で算出した使用権利金を除いた額に、契約年数分の金利を加えた額を総支払額として算出することを特徴とする住宅提供システム。
【請求項5】
請求項3に記載の住宅提供システムにおいて、
前記総支払額算出手段は、前記住宅が集合住宅からなるときは、その集合住宅全体の建築費用と土地取得費用と登記費用と各種税金を合計した総工費を前記集合住宅の戸数で除算した数値に第1の係数を乗算し、その額から前記使用権利金算出手段で算出した使用権利金を除いた額に、契約年数分の使用権料の金利を加えた額を総支払額として算出することを特徴とする住宅提供システム。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれかに記載の住宅提供システムにおいて、
前記第1の係数は、1.4~1.8であると共に、前記第2の係数は0.10~0.20であることを特徴とする住宅提供システム。
【請求項7】
請求項1に記載の記載の住宅提供システムにおいて、
前記月額使用権料算出手段は、前記総支払額算出手段で算出した総支払額を、契約から35年間の420ヶ月で割った月額の使用権料を算出すると共に、契約から36年から45年目までの間に前記住宅を使用した場合の月々の家賃を表示することを特徴とする住宅提供システム。
【請求項8】
請求項1に記載の記載の住宅提供システムにおいて、
前記使用権利金算出手段で算出された権利使用金に相当する売買権利金を算出する売買権利金算出手段をさらに備えたことを特徴とする住宅提供システム。
【請求項9】
住宅を提供する所有者がその住宅への入居を希望する入居者に対して当該住宅を所定の期間使用する権利を販売することで住宅を提供する方法であって、
前記所有者と入居者間で交わされた特約付定期使用権住宅契約に従って前記住宅の設定価格から使用権利金を算出する使用権利金算出ステップと、
算出された使用権利金を前記住宅の設定価格から差し引いた残金に、前記特約付定期使用権住宅契約で定められた期間内の金利を合算した総支払額を算出する総支払額算出ステップと、
算出された総支払額を前記特約付定期使用権住宅契約で定められた期間内の月数で割った月額の使用権料を算出する月額使用権料算出ステップと、
算出された前記使用権利金と前記総支払額と前記月額の使用権料とを表示する算出額表示ステップとを備えたことを特徴とする住宅提供方法。
【請求項10】
請求項9に記載の住宅提供方法において、
前記使用権利金算出ステップでは、前記住宅の建築費用と土地取得費用と登記費用と各種税金を合計した総工費に第1の係数を乗算し、その総額に第2の係数を乗算した数値を前記使用権利金として算出することを特徴とする住宅提供方法。
【請求項11】
請求項9に記載の住宅提供方法において、
前記使用権利金算出ステップでは、前記住宅が集合住宅からなるときは、その集合住宅全体の建築費用と土地取得費用と登記費用と各種税金を合計した総工費を前記集合住宅の戸数で除算した数値に第1の係数を乗算し、その総額に第2の係数を乗算した数値を前記使用権利金として算出することを特徴とする住宅提供方法。
【請求項12】
請求項10に記載の住宅提供方法において、
前記総支払額算出ステップでは、前記住宅の建築費用と土地取得費用と登記費用と各種税金を合計した総工費に第1の係数を乗算し、その総額から前記使用権利金算出手段で算出した使用権利金を除いた額に、契約年数分の金利を加えた額を総支払額として算出することを特徴とする住宅提供方法。
【請求項13】
請求項10に記載の住宅提供方法において、
前記総支払額算出ステップでは、前記住宅が集合住宅からなるときは、その集合住宅全体の建築費用と土地取得費用と登記費用と各種税金を合計した総工費を前記集合住宅の戸数で除算した数値に第1の係数を乗算し、その額から前記使用権利金算出手段で算出した使用権利金を除いた額に、契約年数分の使用権料の金利を加えた額を総支払額として算出することを特徴とする住宅提供方法。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれかに記載の住宅提供方法において、
前記第1の係数は、1.4~1.8であると共に、前記第2の係数は0.10~0.20であることを特徴とする住宅提供方法。
【請求項15】
請求項9に記載の記載の住宅提供方法において、
前記月額使用権料算出ステップでは、前記総支払額算出手段で算出した総支払額を、契約から35年間の420ヶ月で割った月額の使用権料を算出すると共に、契約から36年から45年目までの間に前記住宅を使用した場合の月々の家賃を表示することを特徴とする住宅提供方法。
【請求項16】
請求項1に記載の記載の住宅提供方法において、
前記使用権利金算出ステップで算出された権利使用金に相当する売買権利金を算出する売買権利金算出手段をさらに備えたことを特徴とする住宅提供方法。
【請求項17】
住宅を提供する所有者がその住宅への入居を希望する入居者に対して当該住宅を所定の期間使用する権利を販売することで住宅を提供するシステムを実現するコンピュータープログラムであって、コンピューターを、
前記所有者と入居者間で交わされた特約付定期使用権住宅契約に従って前記住宅の設定価格から使用権利金を算出する使用権利金算出手段と、
算出された使用権利金を前記住宅の設定価格から差し引いた残金に、前記特約付定期使用権住宅契約で定められた期間内の金利を合算した総支払額を算出する総支払額算出手段と、
算出された総支払額を前記特約付定期使用権住宅契約で定められた期間内の月数で割った月額の使用権料を算出する月額使用権料算出手段と、
算出された前記使用権利金と前記総支払額と前記月額の使用権料とを表示する算出額表示手段として機能させることを特徴と住宅提供プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅を安価に提供できると共に資産として有効活用できる新規な住宅提供システムおよび住宅提供方法ならびに住宅提供プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マンションなどの集合住宅を建設した所有者(オーナー)が、その個々の住宅を入居者に提供する方式としては、その個々の住宅を販売して所有権を移転してしまう分譲方式と、所有権は保持しつつ毎月その家賃を支払ってもらう賃貸方式がある。分譲方式ではそのときの景気の動向や金利などによって販売価格が変動しやすく売れ残りが生じると大幅な値引きなどをしなければならないリスクがある。一方、賃貸方式では、家賃の滞納問題や空室率、入居者によるトラブルといった管理リスクがある。
【0003】
また、いずれの方式であっても集合住宅の建設には莫大な費用がかかり、そのための資金繰りや金融機関からの多額の借り入れなどが必要となる。また、借入後は長期に亘ってローンの返済と相応の金利を支払わなければならず、経済的、精神的な負担が大きい。そのため、本発明者は以下の特許文献1に示すようにこれら従来方式とは異なる方式、すなわちその住宅を分譲したり賃貸するのではなく所定期間、例えば35~45年の一定期間独占的に使用する権利(定期使用権)を入居者に販売することでこれら従来の問題を解決するアイデアを提案している。
【0004】
この定期使用権方式によれば、例えば分譲方式の頭金に相当する資金をまず使用権利金として個々の入居者から申し受け、その使用権利金を住宅の建設費用の一部に充当し、残金は毎月の使用権料として家賃と同様の方式で入居者から支払いを受けるものである。これによって所有者側にとっては建設時に金融機関からの借入額を大幅に減らすことができるため、ローンの返済額や支払い金利を大幅に削減できるか、もしくは借り入れが不要となるなどのメリットがある。
【0005】
一方、定期使用権を購入した入居者は頭金に相当する使用権利金を用意するだけで残金を住宅ローンなどとして金融機関から借り入れる必要がなくなるため、総支払額を低く抑えることができるだけでなく、さらに特約を付けることによって分譲方式と同様にその契約期間は自由にその住居を利用できるため、自ら居住する他にその住宅を転貸したり使用権を転売するなどの資産活用が可能となるなどのメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1で示したような定期使用権方式では、個々の使用権利金やその後の家賃に相当する使用権料などの計算方式が複雑であるため、所有者や入居者への説明に時間がかかり、賛同を得るのは容易でなかった。また、建物の立地条件やそのときの金利などの社会情勢によっては計算結果と大きく異なることもあり、必ずしも経済的なメリットが得られない可能性もある。
【0008】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、定期使用権方式による住宅の提供に必要な情報を正確かつ迅速に入居者や所有者に提供できる新規な住宅提供システムおよび住宅提供方法ならびに住宅提供プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために第1の発明は、住宅を提供する所有者がその住宅への入居を希望する入居者に対して当該住宅を所定の期間使用する権利を販売することで住宅を提供するシステムであって、前記所有者と入居者間で交わされた特約付定期使用権住宅契約に従って前記住宅の設定価格から使用権利金を算出する使用権利金算出手段と、算出された使用権利金を前記住宅の設定価格から差し引いた残金に、前記特約付定期使用権住宅契約で定められた期間内の金利を合算した総支払額を算出する総支払額算出手段と、算出された総支払額を前記特約付定期使用権住宅契約で定められた期間内の月数で割った月額の使用権料を算出する月額使用権料算出手段と、算出された前記使用権利金と前記総支払額と前記月額の使用権料とを表示する算出額表示手段とを備えたことを特徴とする住宅提供システムである。
【0010】
このような構成をした本発明の住宅提供システムによれば、使用権利金算出手段が住宅の設定価格に基づいてその頭金に相当する使用権利金を算出した後、総支払額算出手段がその残金に金利とを合算した総支払額を算出し、月額使用権料算出手段がその総支払額の月額の使用権料を算出し、算出額表示手段が、それぞれの算出額を表示するようになる。これによって、必要な情報を入力するだけで、頭金に相当する使用権利金や月額の使用権料といった重要な情報を直ちに算出できるため、定期使用権方式による住宅の提供に必要な情報を正確かつ迅速に入居者や所有者などに提供することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記使用権利金算出手段は、前記住宅の建築費用と土地取得費用と登記費用と各種税金を合計した総工費に第1の係数を乗算し、その総額に第2の係数を乗算した数値を前記使用権利金として算出することを特徴とする住宅提供システムである。このような計算式に基づいて算出すれば、入居者が無理なく用意できる適切な使用権利金を算出することができる。
【0012】
第3の発明は、第1の発明において、前記使用権利金算出手段は、前記住宅が集合住宅からなるときは、その集合住宅全体の建築費用と土地取得費用と登記費用と各種税金を合計した総工費を前記集合住宅の戸数で除算した数値に第1の係数を乗算し、その総額に第2の係数を乗算した数値を前記使用権利金として算出することを特徴とする住宅提供システムである。入居する住宅がマンションのような集合住宅である場合は、このような計算式に基づいて算出することにより、個々の入居者が無理なく用意できる適切な使用権利金を算出することができる。
【0013】
第4の発明は、第2の発明において、前記総支払額算出手段は、前記住宅の建築費用と土地取得費用と登記費用と各種税金を合計した総工費に第1の係数を乗算し、その総額から前記使用権利金算出手段で算出した使用権利金を除いた額に、契約年数分の金利を加えた額を総支払額として算出することを特徴とする住宅提供システムである。このような計算式によれば、入居者が入居から契約期間終了までに支払う使用権料の総額を算出することができる。
【0014】
第5の発明は、第3の発明において、前記総支払額算出手段は、前記住宅が集合住宅からなるときは、その集合住宅全体の建築費用と土地取得費用と登記費用と各種税金を合計した総工費を前記集合住宅の戸数で除算した数値に第1の係数を乗算し、その額から前記使用権利金算出手段で算出した使用権利金を除いた額に、契約年数分の使用権料の金利を加えた額を総支払額として算出することを特徴とする住宅提供システムである。入居する住宅が集合住宅である場合は、このような計算式により、個々の入居者が入居から契約期間終了までに支払う使用権料の総額を算出することができる。
【0015】
第6の発明は、第2乃至第5のいずれかの発明において、前記第1の係数は、1.4~1.8であると共に、前記第2の係数は0.10~0.20であることを特徴とする住宅提供システムである。このような係数を用いることにより、入居者が無理なく用意できる適切な使用権利金や月々の使用権料を算出することができる。
【0016】
第7の発明は、第1の発明において、前記月額使用権料算出手段は、前記総支払額算出手段で算出した総支払額を、契約から35年間の420ヶ月で割った月額の使用権料を算出すると共に、契約から36年から45年目までの間に前記住宅を使用した場合の月々の家賃を算出することを特徴とする住宅提供システムである。このような計算式によれば、契約から35年間の具体的な月額の使用権料の支払額と、契約から36年から45年目までの間の具体的な月々の家賃を算出することができる。
【0017】
第8の発明は、第1の発明において、前記使用権利金算出手段で算出された権利使用金に相当する売買権利金を算出する売買権利金算出手段をさらに備えたことを特徴とする住宅提供システムである。このような構成によれば、定期使用権を有する入居者が入居後、任意の時期にその定期使用権を他人に譲渡するに際して、当初支払った使用権利金に相当する売買権利金を適切に算出し、提示することができる。
【0018】
第9の発明は、住宅を提供する所有者がその住宅への入居を希望する入居者に対して当該住宅を所定の期間使用する権利を販売することで住宅を提供する方法であって、前記所有者と入居者間で交わされた特約付定期使用権住宅契約に従って前記住宅の設定価格から使用権利金を算出する使用権利金算出ステップと、算出された使用権利金を前記住宅の設定価格から差し引いた残金に、前記特約付定期使用権住宅契約で定められた期間内の金利を合算した総支払額を算出する総支払額算出ステップと、算出された総支払額を前記特約付定期使用権住宅契約で定められた期間内の月数で割った月額の使用権料を算出する月額使用権料算出ステップと、算出された前記使用権利金と前記総支払額と前記月額の使用権料とを表示する算出額表示ステップとを備えたことを特徴とする住宅提供方法である。このような方法によれば、第1の発明の住宅提供システムと同様な効果を得ることができる。
【0019】
第10の発明は、第9の発明において、前記使用権利金算出ステップでは、前記住宅の建築費用と土地取得費用と登記費用と各種税金を合計した総工費に第1の係数を乗算し、その総額に第2の係数を乗算した数値を前記使用権利金として算出することを特徴とする住宅提供方法である。このような方法によれば、第2の発明の住宅提供システムと同様な効果を得ることができる。
【0020】
第11の発明は、第9の発明において、前記使用権利金算出ステップでは、前記住宅が集合住宅からなるときは、その集合住宅全体の建築費用と土地取得費用と登記費用と各種税金を合計した総工費を前記集合住宅の戸数で除算した数値に第1の係数を乗算し、その総額に第2の係数を乗算した数値を前記使用権利金として算出することを特徴とする住宅提供方法である。このような方法によれば、第3の発明の住宅提供システムと同様な効果を得ることができる。
【0021】
第12の発明は、第10の発明において、前記総支払額算出ステップでは、前記住宅の建築費用と土地取得費用と登記費用と各種税金を合計した総工費に第1の係数を乗算し、その総額から前記使用権利金算出手段で算出した使用権利金を除いた額に、契約年数分の金利を加えた額を総支払額として算出することを特徴とする住宅提供方法。このような方法によれば、第4の発明の住宅提供システムと同様な効果を得ることができる。
【0022】
第13の発明は、第11の発明において、前記総支払額算出ステップでは、前記住宅が集合住宅からなるときは、その集合住宅全体の建築費用と土地取得費用と登記費用と各種税金を合計した総工費を前記集合住宅の戸数で除算した数値に第1の係数を乗算し、その額から前記使用権利金算出手段で算出した使用権利金を除いた額に、契約年数分の使用権料の金利を加えた額を総支払額として算出することを特徴とする住宅提供方法である。このような方法によれば、第5の発明の住宅提供システムと同様な効果を得ることができる。
【0023】
第14の発明は、第10乃至13のいずれかの発明において、前記第1の係数は、1.4~1.8であると共に、前記第2の係数は0.10~0.20であることを特徴とする住宅提供方法である。このような方法によれば、第6の発明の住宅提供システムと同様な効果を得ることができる。
【0024】
第15の発明は、第9の発明において、前記月額使用権料算出ステップでは、前記総支払額算出手段で算出した総支払額を、契約から35年間の420ヶ月で割った月額の使用権料を算出すると共に、契約から36年から45年目までの間に前記住宅を使用した場合の月々の家賃を表示することを特徴とする住宅提供方法である。このような方法によれば、第7の発明の住宅提供システムと同様な効果を得ることができる。
【0025】
第16の発明は、第9の発明において、前記使用権利金算出ステップで算出された権利使用金に相当する売買権利金を算出する売買権利金算出手段をさらに備えたことを特徴とする住宅提供方法である。このような方法によれば第8の発明の住宅提供システムと同様な効果を得ることができる。
【0026】
第17の発明は、住宅を提供する所有者がその住宅への入居を希望する入居者に対して当該住宅を所定の期間使用する権利を販売することで住宅を提供するシステムを実現するコンピュータープログラムであって、コンピューターを、前記所有者と入居者間で交わされた特約付定期使用権住宅契約に従って前記住宅の設定価格から使用権利金を算出する使用権利金算出手段と、算出された使用権利金を前記住宅の設定価格から差し引いた残金に、前記特約付定期使用権住宅契約で定められた期間内の金利を合算した総支払額を算出する総支払額算出手段と、算出された総支払額を前記特約付定期使用権住宅契約で定められた期間内の月数で割った月額の使用権料を算出する月額使用権料算出手段と、算出された前記使用権利金と前記総支払額と前記月額の使用権料とを表示する算出額表示手段として機能させることを特徴と住宅提供プログラムである。このような住宅提供プログラムを用いれば、PCやスマートフォン、タブレットなどの汎用の情報処理装置を用いることで第1の発明と同様な効果を容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、必要な情報を入力するだけで、住宅の設定価格に基づいてその頭金に相当する使用権利金と、その残金に金利を合算した総支払額と、その総支払額の月額の使用権料などといった重要な情報を直ちに算出して表示できるため、定期使用権方式による住宅の取得に必要な情報を正確かつ迅速に入居者や所有者などに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る住宅提供システムおよび住宅提供方法ならびに住宅提供プログラムを適用する定期使用権方式の概要を示す説明図である。
【
図2】本発明に係る住宅提供システムおよび住宅提供方法ならびに住宅提供プログラムを適用する定期使用権方式の流れを示すフローチャート図である。
【
図3】本発明に係る住宅提供システム100の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明に係る住宅提供システム100を実現するためのハードウェアの構成図である。
【
図5】本発明に係る住宅提供システム100の基本的な処理の流れを示すフローチャート図である。
【
図6】本発明に係る住宅提供システム100の詳細な処理の流れを示すフローチャート図である。
【
図7】建設時の所有者側の収支の一例を示す表図である。
【
図9】所有者側の運用時(実務)の収支の一例を示す表図である。
【
図10】所有者側の運用時(帳簿:減価償却方式)の収支の一例を示す表図である。
【
図11】本発明に係る住宅提供システム100の他の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施の一形態を添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の住宅提供システムおよび住宅提供方法ならびに住宅提供プログラムを適用する特約付定期使用権販売による住宅提供方式(以下、定期使用権方式という)の概要を示したものであり、
図2はその流れを示したフローチャート図である。
図1に示すようにこの定期使用権方式の実現に際しては、登場人物として主にこの方式を立案する販売仲介会社P1と、その立案による提案を受けて集合住宅(マンション)を建設する所有者(オーナー)P2と、集合住宅の建設工事を請け負う建設会社P3と、その集合住宅の管理業務を行う管理会社P4と、その集合住宅に入居を希望する個々の入居者P5がいる。
【0030】
図示するようにまず、販売仲介会社P1は、所有者(オーナー)P2に対して不動産や預貯金、株などの金融資産を有効利用する計画について定期使用権方式による資産運用を立案して提案する(符号1、
図2のステップS100)。提案を受けた所有者P2は、その案に同意したならば販売仲介会社P1との間で特約付定期使用権住宅に関する販売仲介業務について契約を交わすことになる(符号2、ステップS102)。
【0031】
次に、所有者P2は、建設会社P3との間で集合住宅(マンション)の設計および建設ついて契約する(符号3、ステップS104)。また、所有者P2は、管理会社P4との間で建設後の集合住宅に関する管理業務を委託する契約などを交わす(符号4、ステップS106)。これと同時または前後して販売仲介会社P1は、大々的に広告宣伝を行うなどしてその集合住宅への入居希望者を募り、応募してきた個々の入居者P5に対してその集合住宅の魅力を説明すると
図3に示す本発明の住宅提供システム100を用いて定期使用権方式による住宅取得の仕組みやメリット、各種支払い方法、支払額などについて具体的な説明を行って購入を勧める(符号5、ステップS108)。この住宅提供システム100を用いた定期使用権の購入に関する各種支払い内容などの具体例については、後に詳述する。
【0032】
購入を決意した入居者P5は、販売仲介会社P1に対して定期使用権の購入の申し込みを行い(符号6,ステップS110)、これを受けた販売仲介会社P1は、所有者P2と入居者P5との契約の仲介を行う。これによって、所有者P2と入居者P5との間で特約付定期使用権住宅契約が成立する(符号7,ステップS112)。なお、ここでいう「特約」とは、例えば契約した住宅の改築や転貸し、定期使用権の転売などのような、単なる住居としての利用だけでなく資産活用を目的とした行為を認める契約などをいう。
【0033】
その後、建設会社P3は所有者P2との契約内容に基づいてその集合住宅の建設に着工する(符号8、ステップS114)。そして、着工した集合住宅が完成したならば、管理会社P4はその住宅の管理業務を開始する(符号9,ステップS116)と共に、入居者はその集合住宅に入居する(符号10、ステップS118)。
【0034】
また、入居者P5は、その契約に従って所定の使用権利金を用意して所有者P2に対して一括で支払うと共に、入居後はその契約に従ってその契約期間内は毎月、所定の使用権料と管理費など管理会社P4に送金する(符号11、ステップS120)。支払いを受けた管理会社P4は所有者P2との契約に基づいて受け取った使用権料を所有者P2に送金すると共に、所定の管理業務報告を行う(符号12、ステップS122)。
【0035】
次に、
図3乃至
図11は、このようにして所有者P2と入居者P5との間で取り交わされる特約付定期使用権住宅契約の具体的な内容を決める本発明の住宅提供システム100およびそれを用いた住宅提供方法ならびにそのシステム100で用いる住宅提供プログラムの実施の一形態を示したものである。まず、
図3に示すようにこの住宅提供システム100は、使用権利金算出手段110と、総支払額算出手段120と、月額使用料算出手段130と、算出額表示手段140とから主に構成されており、具体的にはPCやスマートフォン、タブレットなどの汎用のコンピュータシステム(ハードウェア)と、専用のコンピュータープログラム(ソフトウェア)とによって実現される。
【0036】
図4は、そのコンピュータシステムのハードウェア構成の一例を示したものであり、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力部10と、情報処理部20と、モニターやプリンターなどの出力部30からなっている。情報処理部20は、演算装置(CPU)20a、主記憶装置(RAM)20c、クロック(CLC)20b、内部記憶装置(ROM)20d、外部記憶装置20gなどの内部機器をバス20eで接続すると共に、インタフェース(I/F)20fを介して入力部10や出力部30と情報通信可能に接続された構成となっている。内部記憶装置(ROM)20dまたは外部記憶装置20gには、専用のコンピュータープログラムがインストールされており、所定の操作に応じて前記各手段を実現するように機能する。
【0037】
図5は、本発明の住宅提供システム100によって行われる処理の流れの一例を示したものであり、使用権利金の算出ステップS200と、総支払額の算出ステップS202と、月額の使用権料の算出ステップS204と、各算出額の表示・保存ステップS208といった主な4つの処理を順に実行することで必要な情報を提供するようになっている。
【0038】
具体的には、
図6のフローに示すように、システムを起動してキーボードやマウス、タッチパネルなどを用いて計算に必要な各種パラメーターを入力すると(ステップS300)、使用権利金算出手段110が頭金に相当する権利使用金を算出した(ステップS302)後、総支払額算出手段120がその契約期間内に入居者P5が支払う使用権料の総支払額を算出する(ステップS304)。その後、月額使用料算出手段130が総支払額を契約期間の月数で割って月々の使用権料を算出し(ステップS306)、算出額表示手段140が算出されたこれら各数値をモニターやプリンターなどに出力して表示する(ステップS308)。その後、入力するパラメータの変更があるか否かを判断し(ステップS310)、変更があれば(YES)同様の処理を繰り返し、変更がなければ(NO)その情報を記憶装置や記録媒体に記録又は保存して処理を終了する(ステップS312)。以下、これら一連の処理について具体例を用いて説明する。
【0039】
(使用権利金算出ステップS200)
対象となる集合住宅(マンション)として、総戸数36戸、各住戸の平均専有面積90m
2のものを首都圏に建設した場合、
図7に示すように土地取得費用(価格)4億320万円、建築費9億7200万円に収得税などの各種税金や登記費用などの諸費用を含めた総工費として14億2560万円要すると仮定する。そして、
図8に示すようにその周辺にあるこの集合住宅(マンション)と同等の新築マンションの1戸あたりの分譲価格の相場を参考にして仮に分譲した場合の1戸あたりの価格を6500万円と仮定する。
【0040】
本発明に係る定期使用権方式による住宅は、同等の新築マンションの分譲価格と同じかそれよりも安くしないと魅力が無いことから、同図に示すようにその定期使用権の設定価格はそれより安価な、例えば160万円以上安い6336万円になるような計算式を用いて設定する。なお、
図8はこの住宅を本発明に係る定期使用権方式、分譲方式、賃貸方式でそれぞれ40年間居住した場合の費用の内訳の一例を示したものである。この例において本発明に係る定期使用権方式では、分譲方式の頭金に相当する使用権利金として950万円と設定されている。これは定期使用権方式のメリットを最大限に発揮できる金額として以下の計算式1に基づくものである。
【数1】
【0041】
すなわち、
図7に示したようにその集合住宅の建築総費用である14億2560万円を総戸数36で割り(除算)し、これに第1の係数「1.6」と、第2の係数「0.15」を掛け合わせた(乗算)ものである。ここで、第1の係数「1.6」は、建築総費用14億2560万円を「1」としてそれに販売管理費や利益としてその「60%」を加えるためのものであり、この第1の係数「1.6」を掛け合わせると、総額22億8096万円となる。そして、これを総戸数36で割ると1戸あたり6330万円となり、それに第2の係数「0.15」を掛け合わせると約950万円となる。この金額は、同図に示すようにこの価格帯の分譲マンションの平均的な頭金800万円とほぼ同じであり、分譲価格6500万円相当の住宅を40年間専用するための使用権利金として妥当な金額である。
【0042】
なお、この第2の係数「0.15」は、そのときの景気の動向や社会情勢、入居者の経済力などを考慮して「0.10~0.20(10~20%)」の範囲で調整することもできる。ただし、この数値は厳密なものでなく、過去30年間の首都圏のマンションを購入した入居者が支払った頭金の平均(中央値)から約±5%程度でその約8割を閉めることから導いたものである。また、同じく第1の係数「1.6」も販売管理費や利益の変動を見越して例えば「1.4」~「1.8」の範囲で調整することもできる。
【0043】
(総支払額の算出ステップS202)
次に、このようにして使用権利金が算出されたならば、以下の計算式2に従ってその住宅の設定価格6336万円から使用権利金を差し引いた残金に、契約年数分である35年分の金利(年利1.35%の元利均等払い)を加えた総支払額を算出する。なお、この年利は時代や借り入れする金融機関などによって変動することは勿論である。
【数2】
すなわち、使用権利金の計算式1は、設定価格6336万円に第2の係数「0.15(15%)」を掛け合わせた約950万円であることから、同じく第2の係数として「0.85(85%)」を掛け合わせた額にその35年分の金利(年利1.35%の元利均等払い)を加える。第2の係数として「0.85(85%)」を掛け合わせた額(残金)は5386万円であることから、これに35年分の金利(年利1.35%の元利均等払い)を加えると
図8に示すように35年分の支払額は約7800万円となる。さらに、この35年分の支払額に加え、月々の管理費と修繕積立金が加わることからそれら35年分を加えると35年間の総支払額は約8260万円となる。
【0044】
(月額使用権料の算出ステップS204)
このようにして35年分の支払額および35年間の総支払額が算出されたならば、以下の計算式3および4に従って月々の支払額および管理費と修繕積立費を加えた月々の総支払額を算出する。
【数3】
【数4】
【0045】
ここで、管理費は月2万円、修繕積立費は1万6千円であるが、その住居の所有権は所有者P2にあることから特約により修繕積立費は、所有者P2と入居者P5とで折半することになっているため、入居者が負担する修繕積立費はその半額の8千円とする。そして、35年間は月数で420であることから算出された35年分の支払額および35年間の総支払額をそれぞれ420で割る(除算)と、
図8に示すようにそれぞれ15万7517円、18万5517円となる。
【0046】
従って、入居者P5は毎月18万5517円を管理会社P4に送金することで、月々の使用権を留保し続けることができる。なお、この月々の使用権料の18万5517円は、同図に示すように分譲方式の場合の毎月の住宅ローンの返済額と比べても約4万円ほど少なく、また、賃貸方式の毎月の家賃に比べても6万円以上安くなることが分かる。
【0047】
そして、同図に示すように使用権料の支払いは、35年で完済することになるが契約は40年であることから、残りの5年(36~40年:60ヶ月)は、その使用権料を10万円に下げることで入居者P5は経済的負担が軽減されつつ引き続きその住居を独占的に使用することができる。そして、同図に示すように契約終了後の40年間の総支払額は約8860万円となり、分譲方式に比べると1000万円以上、賃貸方式に比べると約2000万円節約することができる。
【0048】
すなわち、分譲方式は頭金に加えて高額な住宅ローンを長期に亘って借り入れなくてはならないため、その高額な融資額に35年間の金利を加えると、35年で住宅ローンを支払い終えた時点で総額1億円近い負担となる。加えて、その後の5年間は大規模修繕費として200万円ほどかかることになる。そして、40年を経過したマンション価格は大きく下落して資産価値が激減する。また、老朽化による立て替えに際しては区分所有者数の4/5以上の同意が必要となるため、立て替えが行われなかったりする可能性が高く、仮に立て替えをするにしても、更なる追加資金が必要となり、経済的負担が大きい。
【0049】
これに対し、本発明に係る特約付使用権住宅方式では、入居者P5によっては高額な住宅ローンを借りる必要がないため、その金利の負担がなくなる上に、所有権を有していないことから、固定資産税もかからず、その分の費用も節約できる。また、特約によりその住宅の使用権を第三者に転売したり、その使用権に基づいて第三者にその住居を転貸ししたりして資産として運用することもできる。一方、所有者P2側にとっても頭金に相当する使用権利金を建築費用に充当することができるため、固定資産税を負担しても金融機関からの借入額がその分減るため、住宅ローンの返済額やその金利の支払いを低く抑えることができる。
【0050】
図9、
図10は、所有者P2側の運用上の収支を示したものであり、
図9は実務上、
図10は減価償却方式を用いた帳簿上の収支の試算例を示したものである。前述した条件のマンションをこの定期使用権販売方式によって運用した場合、1~35年間は、借入金返済に加えて固定資産税や修繕積立費を負担したとしても毎月200万円以上の収入が得られ、年間2600万円以上の収入になる。そして、35年間の総収入は9億円を超えることも可能である。さらに、借入金の返済が終了した36~40年間は、さらに月々の収入が増えるため、その年間で約3000万円、5年間トータルで1億4千万円以上の収入が期待できる。さらに、40年経過後はすべての使用権が消滅するため、その後は転売や賃貸によって活用したり、立て替えや相続などもスムースに行うことができる。
【0051】
(各算出額の表示・保存ステップS208)
このようにして使用権利金、総支払額、月額の使用権料などの重要な数値が算出されたならば、それらを例えば
図8に示したように分譲方式や賃貸方式と比較するような形式でモニター上に表示したり、プリンターで印刷するなどして応募してきた入居者P5に提示する。これによって、入居者P5はその定期使用権を取得するために必要な使用権利金、総支払額、月額の使用権料などを具体的な数値として認識し、この特約付定期使用権住宅の購入に際して重要な判断材料として用いることができる。
【0052】
このように本発明の住宅提供システム100および住宅提供方法ならびに住宅提供プログラムを用いれば、前記の計算式1乃至4に必要な情報を入力するだけで、その頭金に相当する使用権利金と、総支払額と、月額の使用権料などといった重要な情報を直ちに算出して表示できるため、定期使用権販売方式による住宅の取得に必要な情報を正確かつ迅速に入居者や所有者などに提供することができる。
【0053】
なお、本実施の形態では、マンションのような集合住宅の例で説明したが、1戸建て住宅でも同様に適用可能であり、また、その契約期間や特約内容、使用権利金などは入居者P5や所有者P2の事情に応じて自由にカスタマイズしてもよい。
【0054】
次に、この定期使用権を他人に譲渡する場合の価格算定方式の一例を説明する。前述したように特約によりその契約期間内においても入居者P5はその定期使用権を他人に譲渡(売買)するなどして資産活用することが可能となっている。この場合、最初に支払った使用権利金に相当する金銭(売買時の使用権利金、以下「売買権利金」という)を新たな入居者P5から譲り受けることになるが、この売買使用権利金は、集合住宅の使用年数や土地価格の変動、室内状況などによって変動する。そのため、この算定方式として例えば以下の計算式5~7を用いれば適切な売買権利金を自動的に算出することができる。なお、この売買権利金の算出は、
図11に示すように以下の計算式5~7に基づく本発明の住宅提供システム100の売買権利金算出手段150によって実現される。
【0055】
【0056】
まず、計算式5は建物の使用年数に基づいた第1の売買権利金(甲)を算出するものであり、契約の残存期間を契約期間で除算した数値に、第3の係数と当初の使用権利金を乗算したものである。ここで、この第3の係数とは契約当初の建物の価値を「1.0」とした場合に、それから譲渡時の住宅価値の変動を示す数値であり、通常は経年劣化などを考慮して初期の数値「1.0」を下回る数値、例えば「0.8」などが設定される。従って、この計算式5によれば、例えば契約期間が40年で住宅の使用年数が10年(契約残存期間30年)、第3の係数が「0.8」と設定して
図8の参考例を当てはめると、30/40×0.8×950=570となることから、入居から10年後の使用権利金(第1の売買権利金(甲))は570万円となる。
【0057】
次に、計算式6はこの計算式5で得られた第1の売買権利金(甲)を個々の部屋の現状況に応じて補正したものである。例えば、売買時の部屋を専門家が内覧するなどしてその現状況をA、B、Cの3つにランク付けし、Aランクは係数「1.1」:、Bランクは係数「1.0」、Cランクは係数「0.9」とし、計算式5で得られた第1の売買権利金(甲)にそれぞれ該当する係数を乗算することになる。従って、例えば、計算式5で得られた第1の売買権利金(甲)が570万円だった部屋の場合、評価がBランクであれば、価格に変動はないが、Aランク評価であれば、1.1倍の627万円に増額し、Cランク評価であれば0.9倍の513万円に減額することになる。なお、このランク付けの数や個々の係数はさらに細かく設定してもよい。また、一般に集合住宅の場合は階数が高いほど価値が高くなる傾向があるため、さらに階数による補正を考慮してもよい。
【0058】
そして、3つめの計算式7は、その住宅が建つ土地価格の変動を考慮したものであり、計算式6で得られた第2の売買権利金(乙)に、現在の土地価格から当初の土地価格を差し引き、それに土地の価値を乗算したものを総戸数で除算した価格を加算したものである。従って、例えば当初の土地価格が4億円、現在の土地価格が4.6億円に上昇していると仮定すると、その上昇分の6000万円に土地の価値として例えば「0.3」を乗算した1800万円を総戸数36で除算すると、50万円となり、これを計算式6で得られた第2の売買権利金(乙)に加算した数値が最終的な売買権利金(丙)の価格となる。なお、この土地の価値は、当初の土地価格を、その土地価格に建築費と登記費用と収得税を加算した数値で除算したものである(土地価格/(土地価格+建築費+登記費用+収得税))ため、これは物件ごとに適宜変動することになる。
【0059】
従って、この最終的な売買権利金(丙)の価格は、計算式6でAランクと判定された住宅の場合は、1戸あたり50万円増額の677万円(627万円+50万円)、Bランクと判定された住宅の場合は、620万円(570万円+50万円)、Cランクと判定された住宅の場合は、563万円(513万円+50万円)となる。なお、この例は土地価格が上昇した場合を示したが、土地価格が下落した場合は、その下落幅に応じて最終的な売買権利金(丙)の価格も下落することはもちろんである。
【0060】
このように本発明の住宅提供システム100は計算式5~7に基づく売買権利金算出手段150を設けることによって、定期使用権を有する入居者P5が入居後、任意の時期にその定期使用権を他人に譲渡するに際して、当初支払った使用権利金に相当する売買権利金を適切に算出し、提示することができるため、その権利の売買などをスムーズに行うことができる。
【符号の説明】
【0061】
10…入力部
20…情報処理部
30…出力部
100…住宅提供システム
110…使用権利金算出手段
120…総支払額算出手段
130…月額使用料算出手段
140…算出額表示手段
150…売買権利金算出手段
P1…販売仲介会社
P2…所有者
P3…建設会社
P4…管理会社
P5…入居者