(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084923
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
H01G4/30 311E
H01G4/30 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199125
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 和幸
(72)【発明者】
【氏名】森田 健
(72)【発明者】
【氏名】金本 雄吾
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AH01
5E001AJ03
5E082AA01
5E082AB03
5E082GG10
5E082GG21
5E082GG28
(57)【要約】
【課題】導電性樹脂層の厚みを所望の厚みに容易に制御し得る電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】電子部品の製造方法は、素体3を準備することと、導電性樹脂ペースト30を準備することと、凹部21を有する治具20を準備することと、凹部21内に、導電性樹脂ペースト30を充填することと、導電性樹脂ペースト30を充填した凹部21内に、素体3の端部を挿入することと、素体3の端部を凹部21内に挿入した状態で、凹部21内に充填した導電性樹脂ペースト30を硬化させて、素体3に導電性樹脂層を形成することと、凹部21から、導電性樹脂層を取り出すことと、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体を準備することと、
導電性樹脂ペーストを準備することと、
凹部を有する治具を準備することと、
前記凹部内に、前記導電性樹脂ペーストを充填することと、
前記導電性樹脂ペーストを充填した前記凹部内に、前記素体の端部を挿入することと、
前記素体の前記端部を前記凹部内に挿入した状態で、前記凹部内に充填した前記導電性樹脂ペーストを硬化させて、前記素体に導電性樹脂層を形成することと、
前記凹部から、前記導電性樹脂層を取り出すことと、を含む、電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記治具を準備することは、前記凹部の側面を規定する貫通孔が形成されている第一部分と、前記第一部分から着脱可能であると共に前記貫通孔の一方の開口端を塞ぐことにより前記凹部の底面を規定する第二部分とを含む前記治具を準備することを含む、請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記導電性樹脂層を取り出すことは、
前記第一部分から前記第二部分を外すことと、
前記導電性樹脂層のうち、前記一方の開口端から露出する部位を、前記一方の開口端側から押し出し、前記導電性樹脂層を前記貫通孔の他方の開口端側から取り出すことと、を含む、請求項2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記素体を準備することは、前記端部に焼結金属層が形成されている前記素体を準備することを含み、
前記治具を準備することは、前記凹部の深さが、前記焼結金属層の端面を基準としたときの、前記焼結金属層の前記素体への回り込み長さより大きい前記治具を準備することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記導電性樹脂ペーストを充填することは、前記凹部内に充填された前記導電性樹脂ペーストに含まれる気泡を除去することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記導電性樹脂ペーストを充填することと、前記素体の前記端部を挿入することと、前記素体に導電性樹脂層を形成することと、前記導電性樹脂層を取り出すことと、を少なくとも繰り返すことにより、前記素体の両端部に前記導電性樹脂層を形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
知られている電子部品は、素体と、素体に形成されている導電性樹脂層とを備える(たとえば、特許文献1を参照)。導電性樹脂層は、素体に付与された導電性樹脂ペーストを硬化させることにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導電性樹脂層は、たとえば、以下のように形成される。
まず、導電性樹脂ペーストが素体の端部に付与される。導電性樹脂ペーストの付与は、素体の端部を、導電性樹脂ペーストに浸漬し、続いて導電性樹脂ペーストから引き上げることにより行われる。すなわち、導電性樹脂ペーストの付与は、浸漬法により行われる。その後、付与された導電性樹脂ペーストが硬化される。
【0005】
導電性樹脂ペーストの付与が浸漬法により行われる場合、素体の端部に付与される導電性樹脂ペーストの形状は、浸漬及び引き上げ条件に依存する傾向がある。素体の端部に付与される導電性樹脂ペーストの形状は、導電性樹脂ペーストの粘度に依存する傾向もある。このため、導電性樹脂ペーストの硬化により得られる導電性樹脂層の厚みは、所望の厚みに制御されにくい。
【0006】
本発明の一つの態様は、導電性樹脂層の厚みを所望の厚みに容易に制御し得る電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様に係る電子部品の製造方法は、素体を準備することと、導電性樹脂ペーストを準備することと、凹部を有する治具を準備することと、凹部内に、導電性樹脂ペーストを充填することと、導電性樹脂ペーストを充填した凹部内に、素体の端部を挿入することと、素体の端部を凹部内に挿入した状態で、凹部内に充填した導電性樹脂ペーストを硬化させて、素体に導電性樹脂層を形成することと、凹部から、導電性樹脂層を取り出すことと、を含む。
【0008】
上記一つの態様では、素体の端部が治具の凹部内に挿入された状態で、導電性樹脂層が形成される。たとえば、凹部の形状を変更することにより、導電性樹脂層の厚みが制御され得る。たとえば、素体の端部の挿入深さを調整することによっても、導電性樹脂層の厚みが制御され得る。したがって、上記一つの態様は、導電性樹脂層の厚みを所望の厚みに容易に制御し得る。
【0009】
上記一つの態様では、治具を準備することが、凹部の側面を規定する貫通孔が形成されている第一部分と、第一部分から着脱可能であると共に貫通孔の一方の開口端を塞ぐことにより凹部の底面を規定する第二部分とを含む治具を準備することを含んでもよい。
この場合、凹部を有する治具が、簡易に準備される。
【0010】
上記一つの態様では、導電性樹脂層を取り出すことが、第一部分から第二部分を外すことと、導電性樹脂層のうち、一方の開口端から露出する部位を、一方の開口端側から押し出し、導電性樹脂層を貫通孔の他方の開口端側から取り出すことと、を含んでもよい。
この場合、導電性樹脂層が、凹部から容易に取り出される。
【0011】
上記一つの態様では、素体を準備することが、端部に焼結金属層が形成されている素体を準備することを含んでもよい。治具を準備することが、凹部の深さが、焼結金属層の端面を基準としたときの、焼結金属層の素体への回り込み長さより大きい治具を準備することを含んでもよい。
この場合、導電性樹脂層が、焼結金属層を覆うように確実に形成され得る。
【0012】
上記一つの態様では、導電性樹脂ペーストを充填することが、凹部内に充填された導電性樹脂ペーストに含まれる気泡を除去することを含んでもよい。
この場合、導電性樹脂層が、気泡を含みがたい。
【0013】
上記一つの態様では、導電性樹脂ペーストを充填することと、素体の端部を挿入することと、素体に導電性樹脂層を形成することと、導電性樹脂層を取り出すことと、を少なくとも繰り返すことにより、素体の両端部に導電性樹脂層を形成してもよい。
この場合、導電性樹脂層が、素体の両端部に確実に形成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一つの態様は、導電性樹脂層の厚みを所望の厚みに容易に制御し得る電子部品の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る積層コンデンサの端面構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る積層コンデンサの製造過程を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る積層コンデンサの製造過程を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る積層コンデンサの製造過程を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る積層コンデンサの製造過程を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る積層コンデンサの製造過程を示す模式図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る積層コンデンサの製造過程を示す模式図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る積層コンデンサの製造過程を示す模式図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る積層コンデンサの製造過程を示す模式図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る積層コンデンサの製造過程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
まず、本実施形態に係る電子部品の製造方法の説明に先立って、本製造方法から得られる電子部品の構成を、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る積層コンデンサの端面構成を示す図である。本実施形態では、電子部品は、たとえば、積層コンデンサC1である。
図1に示されるように、積層コンデンサC1は、素体3と、複数の外部電極5,6と、複数の内部電極7と、複数の内部電極8と、を備える。
【0018】
素体3は、たとえば、直方体形状を呈している。直方体形状は、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、又は、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含む。素体3は、一対の端面3a,3bと、四つの側面3cと、を含む。一対の端面3a,3bは、互いに対向している。四つの側面3cは、互いに対向している一対の側面3cと、互いに対向している別の一対の側面3cと、を含む。四つの側面3cは、一対の端面3a,3bを連結するように、一対の端面3a,3bが互いに対向している方向に延在している。一対の端面3a,3bが互いに対向している方向は、たとえば、素体3の長さ方向を含む。四つの側面3cのうち一つの側面3cは、積層コンデンサC1が電子機器に実装される際に、実装面を構成するように配置される。電子機器は、たとえば、回路基板又は電子部品を含む。
【0019】
複数の外部電極5,6は、素体3上に配置されている。複数の外部電極5,6は、素体3の両端部にそれぞれ配置されている。外部電極5は、一対の端面3a,3bのうち対応する端面3aに配置されている。外部電極6は、一対の端面3a,3bのうち対応する端面3bに配置されている。本実施形態では、外部電極5は、端面3aと、四つの側面3cとに配置されており、外部電極6は、端面3bと、四つの側面3cとに配置されている。外部電極5は、端面3a上に位置する電極部と、四つの側面3cの各一部上に位置する電極部と、を含む。外部電極5は、端面3aから、四つの側面3cの上記各一部上に回り込むように形成されている。外部電極6は、端面3b上に位置する電極部と、四つの側面3cの各一部上に位置する電極部と、を含む。外部電極6は、端面3bから、四つの側面3cの上記各一部上に回り込むように形成されている。
各外部電極5,6は、第一電極層E1、第二電極層E2、及び第三電極層(不図示)を含む。本実施形態では、上述した各電極部が、第一電極層E1、第二電極層E2、及び第三電極層を含む。四つの側面3cの各一部上に位置する電極部は、第一電極層E1を含まなくてもよい。
【0020】
第一電極層E1は、焼結金属層を含む。第一電極層E1は、素体3に形成された焼結金属層を含む。第一電極層E1は、たとえば、Cuからなる焼結金属層を含む。第一電極層E1は、Niからなる焼結金属層であってもよい。
第一電極層E1は、素体3の表面に付与された導電性ペーストを焼き付けることにより形成されている。第一電極層E1は、導電性ペーストに含まれる金属成分(金属粒子)が焼結することにより形成されている。導電性ペーストは、たとえば、Cu又はNiからなる粉末、ガラス成分、有機バインダ、及び有機溶剤を含む。
【0021】
第二電極層E2は、導電性樹脂層を含む。第二電極層E2は、第一電極層E1を覆う導電性樹脂層を含む。本実施形態では、第二電極層E2は、第一電極層E1の全体を覆っている。第一電極層E1は、第二電極層E2を形成するための下地金属層を含む。第二電極層E2は、電気絶縁性を有する樹脂と、導電性フィラーとを含む。樹脂は、たとえば、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂は、たとえば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂を含む。導電性フィラーは、たとえば、複数の金属粒子を含む。金属粒子は、たとえば、銀粒子又は銅粒子を含む。
第二電極層E2は、第一電極層E1上及び素体3上に付与された導電性樹脂ペーストを硬化させることにより形成されている。導電性樹脂ペーストは、たとえば、電気絶縁性を有する樹脂、導電性フィラー、及び有機溶媒を含む。
【0022】
第三電極層は、めっき層を含む。第三電極層は、第二電極層E2を覆うめっき層を含む。本実施形態では、第三電極層は、第二電極層E2の全体を覆っている。第三電極層は、たとえば、Niめっき層とはんだめっき層とを含む。Niめっき層は、第二電極層E2上に形成される。はんだめっき層は、Niめっき層上に形成される。はんだめっき層は、Niめっき層を覆っている。Niめっき層は、第二電極層E2に含まれる金属よりも耐はんだ喰われ性に優れている。第三電極層は、Niめっき層の代わりに、Snめっき層、Cuめっき層、又はAuめっき層を含んでもよい。はんだめっき層は、たとえば、Snめっき層、Sn-Ag合金めっき層、Sn-Bi合金めっき層、又はSn-Cu合金めっき層を含む。
第三電極層は、第二電極層E2上にめっき法により形成されている。
【0023】
複数の内部電極7と、複数の内部電極8とは、素体3内に配置されている。複数の内部電極7,8は、素体3内に配置されている内部導体に含まれる。各内部電極7,8は、積層型電子部品の内部導体として通常用いられる導電性材料からなる。導電性材料は、たとえば、卑金属を含む。導電性材料は、たとえば、Ni又はCuを含む。各内部電極7,8は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。各内部電極7,8は、たとえば、Niからなる。
【0024】
内部電極7と内部電極8とは、一対の側面3cが互いに対向している方向において、異なる位置(層)に配置されている。内部電極7と内部電極8とは、素体3内において、一対の側面3cが互いに対向している方向に間隔を有して対向するように交互に配置されている。複数の内部電極7と複数の内部電極8とは、一対の側面3cが互いに対向している方向で交互に並んでいる。内部電極7と内部電極8とは、互いに極性が異なる。複数の内部電極7の各一端は、端面3aに露出している。各内部電極7は、端面3aに露出している一端を含む。複数の内部電極8の各一端は、端面3bに露出している。各内部電極8は、端面3bに露出している一端を含む。
【0025】
複数の内部電極7のそれぞれは、端面3aに露出している一端において、外部電極5に接続されている。各内部電極7は、複数の外部電極5,6のうち対応する外部電極5に電気的に接続されている。各内部電極7の一端は、外部電極5に含まれる第一電極層E1に、物理的かつ電気的に接続されている。
複数の内部電極8のそれぞれは、端面3bに露出している一端において、外部電極6に接続されている。各内部電極8は、複数の外部電極5,6のうち対応する外部電極6に電気的に接続されている。各内部電極8の一端は、外部電極6に含まれる第一電極層E1に、物理的かつ電気的に接続されている。
【0026】
次に、
図2~
図10を参照して、本実施形態に係る電子部品の製造方法を説明する。
図2~
図10は、本実施形態に係る積層コンデンサの製造過程を示す模式図である。本実施形態の製造過程は、第二電極層E2を形成する過程を含む。
【0027】
本実施形態の製造過程は、素体3を準備する過程を含む。本実施形態では、素体3を準備する過程は、素体3と第一電極層E1とを含むチップを準備する過程を含む。
誘電体層を形成するためのセラミックペーストと、内部電極7,8を形成するための内部電極ペースト(導電性ペースト)と、を準備する。
セラミックペーストは、たとえば、上述した誘電体材料の原料粉末と、有機ビヒクルとを含んでいる。有機ビヒクルは、バインダと溶剤とを含んでいる。溶剤は、たとえば、有機溶剤である。セラミックペーストは、分散剤、可塑剤、誘電体、ガラスフリット、又は絶縁体を含んでいてもよい。セラミックペーストは、この技術分野では既知であり、これ以上の詳細な説明を省略する。
内部電極ペーストは、たとえば、上述した導電性材料の粉末と、有機ビヒクルとを含んでいる。内部電極ペーストは、導電性材料の粉末は、たとえば、金属粉末である。粉末は、たとえば、球状又は鱗片状を呈している。有機ビヒクルは、バインダと溶剤とを含んでいる。溶剤は、たとえば、有機溶剤である。内部電極ペーストは、無機化合物を含んでいてもよい。内部電極ペーストは、可塑剤を含んでいてもよい。内部電極ペーストは、この技術分野では既知であり、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0028】
上述したセラミックペーストを用い、セラミックグリーンシートを形成する。本過程では、たとえば、キャリアシート上に、セラミックペーストをシート状に付与した後、シート状のセラミックペーストを乾燥させる。これにより、セラミックグリーンシートが得られる。キャリアシートは、たとえば、PET(Polyethylene terephthalate)からなる。セラミックペーストは、たとえば、ドクターブレード法により付与される。
【0029】
内部電極ペーストを用い、セラミックグリーンシート上に、複数の内部電極パターンを形成する。本過程では、たとえば、セラミックグリーンシート上に、内部電極ペーストを、パターン化して付与した後に、内部電極ペーストを乾燥させる。これにより、複数の内部電極パターンが得られる。内部電極ペーストは、たとえば、スクリーン印刷法により付与される。
【0030】
内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートから、グリーン積層体を形成する。本過程では、たとえば、セラミックグリーンシートを、所定の大きさに揃えた後、所定の枚数のセラミックグリーンシートを積層する。その後、たとえば、積層されたセラミックグリーンシートを、積層方向から加圧する。これにより、グリーン積層体が得られる。
【0031】
グリーン積層体から、複数のグリーンチップを得る。本過程では、たとえば、切断機で、グリーン積層体をチップ状に切断する。これにより、所定の大きさを有する複数のグリーンチップが得られる。
【0032】
グリーンチップから、バインダを除去した後、このグリーンチップを焼成する。この焼成により、複数の内部電極7,8が内部に配置されている素体3が得られる。その後、素体3に、R面取り加工を施す。R面取り加工は、たとえば、バレル研磨である。バインダの除去は、たとえば、グリーンチップを、還元雰囲気下で加熱することにより行う。還元雰囲気は、たとえば、空気、又は、N2及びH2の混合ガスで構成される。焼成は、たとえば、バインダが除去されたグリーンチップを、たとえば、還元雰囲気下で加熱することにより行う。バインダの除去及び焼成は、この技術分野では既知であり、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0033】
素体3に、第一電極層E1を形成する。本過程では、上述したように、導電性ペーストを、素体3の表面における所定の領域に付与し、付与した導電性ペーストを加熱処理により素体3に焼き付ける。これにより、第一電極層E1が得られる。導電性ペーストは、たとえば、浸漬法、印刷法、又は転写法により付与される。導電性ペーストの加熱処理は、この技術分野では既知であり、これ以上の詳細な説明を省略する。本実施形態では、導電性ペーストは、素体3の両端部にそれぞれ付与される。すなわち、導電性ペーストは、端面3a及び四つの側面3cの各一部と、端面3b及び四つの側面3cの各一部とのそれぞれに付与される。第一電極層E1は、たとえば、物理蒸着法(PVD法)又は化学蒸着法(CVD法)により形成されていてもよい。
以上の過程により、素体3と第一電極層E1とを含むチップ11が準備される(
図3参照)。素体3を準備する過程は、端部に第一電極層E1が形成されている素体3を準備する過程を含む。
【0034】
次に、チップ11に、第二電極層E2を形成する。この過程は、以下の複数の過程を含む。本過程は、導電性樹脂ペーストを準備する過程、治具20を準備する過程、チップ11に第二電極層E2を形成する過程を含む。
【0035】
導電性樹脂ペーストを準備する。準備する導電性樹脂ペーストは、上述したように、たとえば、電気絶縁性を有する樹脂、導電性フィラー、及び有機溶媒を含む。
治具20を準備する(
図2参照)。治具20は、少なくとも一つの凹部21を有する。本実施形態では、治具20は、複数の凹部21を有する。凹部21は、有底状である。凹部21の深さD1は、たとえば、第一電極層E1の端面を基準としたときの、第一電極層E1の素体3への回り込み長さL1より大きい。治具20は、たとえば、金属材料又は非金属材料からなる。非金属材料は、たとえば、セラミック、カーバイド、樹脂、又はゴムである。
【0036】
治具20は、複数の治具部分23,25を含む。本実施形態では、治具20は、二つの治具部分23,25を含む。治具部分23には、少なくとも一つの貫通孔23aが形成されている。本実施形態では、治具部分23には、複数の貫通孔23aが形成されている。貫通孔23aは、凹部21の側面を規定する。貫通孔23aの数は、たとえば、凹部21の数と同じである。治具部分25は、治具部分23から着脱可能である。治具部分25は、貫通孔23aの一方の開口端を塞ぐことにより、凹部21の底面を規定する。治具20は、治具部分25を治具部分23に付けた状態で、凹部21を有する。たとえば、治具部分23が第一部分を含む場合、治具部分25は第二部分を含む。
治具20は、一つの治具部分から構成されてもよい。この場合、治具20を構成する一つの治具部分に、有底の凹部が形成される。
【0037】
第二電極層E2をチップ11に形成する。この過程は、導電性樹脂ペースト30を充填する過程と、チップ11を凹部21に挿入する過程と、導電性樹脂ペースト30を硬化させる過程と、チップ11を取り出す過程と、を含む。
【0038】
凹部21内に、導電性樹脂ペースト30を充填する(
図3参照)。凹部21は、導電性樹脂ペースト30で完全に満たされる必要はない。導電性樹脂ペースト30が所望の領域に所望の厚みで付与され得る量の導電性樹脂ペースト30が、凹部21内に充填されていればよい。
図3では、導電性樹脂ペースト30が存在する領域は、ドットハッチングで示されている。
導電性樹脂ペースト30を充填する過程は、凹部21内に充填された導電性樹脂ペースト30に含まれる気泡を除去する過程を含んでもよい。気泡を除去する過程は、たとえば、導電性樹脂ペースト30が凹部21内に充填されている治具20を、減圧雰囲気中に所定時間おくことを含む。
【0039】
導電性樹脂ペースト30を充填した凹部21内に、チップ11(素体3)の端部を挿入する(
図4及び
図5参照)。この過程により、導電性樹脂ペースト30が、チップ11の端部に付与される。
図4及び
図5でも、
図3と同様に、導電性樹脂ペースト30が存在する領域は、ドットハッチングで示されている。
チップ11(素体3)は、保持治具40に保持される。保持治具40に保持されたチップ11が、凹部21内に挿入される。保持治具40は、治具20と対向するように配置される。保持治具40には、少なくとも一つの貫通孔40aが形成されている。本実施形態では、保持治具40には、複数の貫通孔40aが形成されている。貫通孔40aの数は、たとえば、凹部21の数と同じである。チップ11は、素体3の端部、すなわち、第一電極層E1が貫通孔40aから露出している状態で、保持治具40に保持されている。素体3が保持治具40から突出している量は、チップ11ごとに揃えられている。
保持治具40は、たとえば、キャリアプレートを含む。保持治具40は、たとえば、粘着プレートを含んでもよい。粘着プレートは、たとえば、ベース板と、ベース板に形成された粘着層とを含む。ベース板は、たとえば、金属からなる。金属は、ステンレス鋼を含む。粘着層は、たとえば、粘着性高分子からなる。粘着性高分子は、シリコーンゴムを含む。
【0040】
治具20と保持治具40との間に、スペーサ50が配置される。スペーサ50は、治具20と保持治具40とに当接する。スペーサ50は、治具20と保持治具40との間隔を規定する。凹部21へのチップ11の挿入深さは、スペーサ50の高さに応じて調整され得る。スペーサ50の高さは、治具20と保持治具40とが互いに対向している方向での長さである。
スペーサ50には、治具20(凹部21)と保持治具40(貫通孔40a)との位置を規定する位置決め部が設けられていてもよい。治具20と保持治具40との位置を規定する位置決め部は、スペーサ50とは別に、治具20及び保持治具40に設けられていてもよい。位置決め部は、凹部21と貫通孔40aとの位置、すなわち、凹部21と素体3との位置を規定する。
この過程では、たとえば、第一電極層E1の全体が導電性樹脂ペースト30により覆われるように、チップ11が、凹部21内に挿入される。
【0041】
チップ11(素体3)の端を凹部21内に挿入した状態で、凹部21内に充填した導電性樹脂ペースト30を硬化させる(
図6参照)。この過程により、素体3に第二電極層E2が形成される。第二電極層E2は、第一電極層E1の全体を覆うように形成される。
導電性樹脂ペースト30が、たとえば、熱硬化性樹脂を含んでいる場合、導電性樹脂ペースト30を加熱する。導電性樹脂ペースト30の加熱処理は、たとえば、導電性樹脂ペースト30を、100~250℃程度の温度下で、30~120分程度加熱する。導電性樹脂ペースト30が、たとえば、光硬化性樹脂を含んでいる場合、導電性樹脂ペースト30に所定の波長の光を照射する。
導電性樹脂ペースト30を硬化させる過程は、導電性樹脂ペースト30を乾燥させる過程を含んでもよい。導電性樹脂ペースト30の乾燥により、導電性樹脂ペーストから有機溶剤が除去される。導電性樹脂ペースト30の乾燥処理では、たとえば、導電性樹脂ペースト30は、100~200℃程度の温度下で、3~60分程度加熱される。導電性樹脂ペースト30は、自然乾燥されてもよい。
【0042】
凹部21から、第二電極層E2を取り出す(
図7~
図9参照)。この過程により、第二電極層E2が形成されたチップ11(素体3)が、治具20から取り出される。
治具部分23から治具部分25を外す(
図7参照)。この過程により、第二電極層E2が、貫通孔23aの一方の開口端から露出する。
第二電極層E2のうち、貫通孔23aの一方の開口端から露出する部位を、一方の開口端側から押し出し、第二電極層E2を貫通孔23aの他方の開口端側から取り出す(
図8及び
図9参照)。この過程では、たとえば、押出ピン60が、第二電極層E2の上記部位を押し出す。
第二電極層E2を凹部21から容易に取り出すために、凹部21を画成する各面に離型処理が施されていてもよい。
治具20が一つの治具部分から構成される場合、治具20と保持治具40とを相反する方向に相対的に移動させることにより、第二電極層E2を凹部21から取り出してもよい。
【0043】
以上の過程により、第二電極層E2が、チップ11(素体3)の一方の端部に形成される。チップ11に第二電極層E2を形成する過程を繰り返し、チップ11(素体3)の他方の端部に第二電極層E2を形成する(
図10参照)。チップ11(素体3)の両端部において、第二電極層E2は、第一電極層E1を覆っている。
第一電極層E1及び第二電極層E2が両端部に形成されたチップ11を、保持治具40から取り出す。この過程により、第一電極層E1及び第二電極層E2が両端部に形成されたチップ11(素体3)が得られる。
【0044】
第一電極層E1及び第二電極層E2が形成されたチップ11に、第三電極層を形成する。この過程では、第三電極層は、上述したように、めっき法により形成される。第三電極層は、第二電極層E2上に形成される。第三電極層を形成するためのめっき法は、たとえば、電解めっき法である。第三電極層を形成するためのめっき法は、この技術分野では既知であり、これ以上の詳細な説明を省略する。
上述した過程を経ることにより、積層コンデンサC1が得られる。
【0045】
本実施形態に係る製造方法では、素体3の端部が治具20の凹部21内に挿入された状態で、第二電極層E2が形成される。たとえば、凹部21の形状を変更することにより、第二電極層E2の厚みが制御され得る。たとえば、素体3の端部の挿入深さを調整することによっても、第二電極層E2の厚みが制御され得る。たとえば、一対の端面3a,3b上に位置する各電極部において、第二電極層E2の厚みが、略一定に制御され得る。たとえば、各側面3c上に位置する電極部において、第二電極層E2の厚みが、略一定に制御され得る。
したがって、本実施形態に係る製造方法は、第二電極層E2の厚みを所望の厚みに容易に制御し得る。
【0046】
本実施形態に係る製造方法では、治具20を準備することが、複数の治具部分23,25を含む治具20を準備することを含む。治具部分23には、凹部21の側面を規定する貫通孔23aが形成されている。治具部分25は、治具部分23から着脱可能であると共に、貫通孔23aの一方の開口端を塞ぐことにより凹部21の底面を規定する。
したがって、本実施形態に係る製造方法では、凹部21を有する治具20が、簡易に準備される。
【0047】
本実施形態に係る製造方法では、第二電極層E2を取り出すことが、治具部分23から治具部分25を外すことと、第二電極層E2のうち、貫通孔23aの一方の開口端から露出する部位を、上述した一方の開口端側から押し出し、第二電極層E2を貫通孔23aの他方の開口端側から取り出すことと、を含む。
したがって、本実施形態に係る製造方法では、第二電極層E2が、凹部21から容易に取り出される。
【0048】
本実施形態に係る製造方法では、素体3を準備することが、端部に第一電極層E1が形成されている素体3を準備することを含む。治具20を準備することが、凹部21の深さD1が第一電極層E1の素体3への回り込み長さL1より大きい治具20を準備することを含む。
したがって、本実施形態に係る製造方法では、第二電極層E2が、第一電極層E1を覆うように確実に形成され得る。
【0049】
本実施形態に係る製造方法では、導電性樹脂ペースト30を充填することが、凹部21内に充填された導電性樹脂ペースト30に含まれる気泡を除去することを含む。
したがって、本実施形態に係る製造方法では、第二電極層E2が、気泡を含みがたい。
【0050】
本実施形態に係る製造方法では、導電性樹脂ペースト30を凹部21に充填することと、導電性樹脂ペースト30を充填した凹部21に素体3の端部を挿入することと、素体3に第二電極層E2を形成することと、第二電極層E2を凹部21から取り出すことと、を少なくとも繰り返すことにより、素体3の両端部に第二電極層E2を形成する。
したがって、本実施形態に係る製造方法では、第二電極層E2が、素体3の両端部に確実に形成される。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0052】
導電性樹脂ペースト30を準備することと、治具20を準備することとは、素体3(チップ11)を準備することより前に行ってもよく、素体3(チップ11)を準備することと同時に行ってもよい。
素体3を準備することは、端部に第一電極層E1が形成されている素体3を準備することを含まなくてよい。
素体3を準備することは、たとえば、端部に第一電極層E1が形成されていない素体3を準備することを含んでもよい。この場合、素体3の各端面3a,3bに、第二電極層E2が直接形成される。
【0053】
治具20を準備することは、凹部21の深さD1が第一電極層E1の素体3への回り込み長さL1より大きい治具20を準備することを含まなくてもよい。
治具20を準備することき、上記深さD1が上記回り込み長さL1以下である治具20を準備することを含んでもよい。この場合、第二電極層E2は、第一電極層E1の一部のみを覆うように形成される。
【0054】
上述した実施形態では、電子部品として積層コンデンサを例に説明したが、適用可能な電子部品は、積層コンデンサに限られない。適用可能な電子部品は、たとえば、積層インダクタ、積層バリスタ、積層圧電アクチュエータ、積層サーミスタ、積層固体電池部品、もしくは積層複合部品などの積層電子部品、又は、積層電子部品以外の電子部品を含む。
【0055】
上述した実施形態及び変形例の記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す態様の開示を含んでいる。
(付記1)
素体を準備することと、
導電性樹脂ペーストを準備することと、
凹部を有する治具を準備することと、
前記凹部内に、前記導電性樹脂ペーストを充填することと、
前記導電性樹脂ペーストを充填した前記凹部内に、前記素体の端部を挿入することと、
前記素体の前記端部を前記凹部内に挿入した状態で、前記凹部内に充填した前記導電性樹脂ペーストを硬化させて、前記素体に導電性樹脂層を形成することと、
前記凹部から、前記導電性樹脂層を取り出すことと、を含む、電子部品の製造方法。
(付記2)
前記治具を準備することは、前記凹部の側面を規定する貫通孔が形成されている第一部分と、前記第一部分から着脱可能であると共に前記貫通孔の一方の開口端を塞ぐことにより前記凹部の底面を規定する第二部分とを含む前記治具を準備することを含む、付記1に記載の電子部品の製造方法。
(付記3)
前記導電性樹脂層を取り出すことは、
前記第一部分から前記第二部分を外すことと、
前記導電性樹脂層のうち、前記一方の開口端から露出する部位を、前記一方の開口端側から押し出し、前記導電性樹脂層を前記貫通孔の他方の開口端側から取り出すことと、を含む、付記2に記載の電子部品の製造方法。
(付記4)
前記素体を準備することは、前記端部に焼結金属層が形成されている前記素体を準備することを含み、
前記治具を準備することは、前記凹部の深さが、前記焼結金属層の端面を基準としたときの、前記焼結金属層の前記素体への回り込み長さより大きい前記治具を準備することを含む、付記1~3のいずれか一つに記載の電子部品の製造方法。
(付記5)
前記導電性樹脂ペーストを充填することは、前記凹部内に充填された前記導電性樹脂ペーストに含まれる気泡を除去することを含む、付記1~4のいずれか一つに記載の電子部品の製造方法。
(付記6)
前記導電性樹脂ペーストを充填することと、前記素体の前記端部を挿入することと、前記素体に導電性樹脂層を形成することと、前記導電性樹脂層を取り出すことと、を少なくとも繰り返すことにより、前記素体の両端部に前記導電性樹脂層を形成する、付記1~5のいずれか一つに記載の電子部品の製造方法。
【符号の説明】
【0056】
3…素体、20…治具、21…凹部、23,25…治具部分、23a…貫通孔、30…導電性樹脂ペースト、60…押出ピン、C1…積層コンデンサ、D1…凹部の深さ、E1…第一電極層、E2…第二電極層、L1…第一電極層の素体への回り込み長さ。