(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084928
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
H01R13/52 301F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199131
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】吉村 健太郎
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE06
5E087FF07
5E087LL03
5E087LL04
5E087LL14
5E087RR12
(57)【要約】
【課題】ポッティング剤を注入することで防水性能を満たすコネクタにおいて、ポッティング剤の注入量を高精度に制御することが可能なコネクタを提供する。
【解決手段】
コネクタ10は、窪んだ形状に形成され互いに同じ向きに開いた開口13A,14Aを有するポッティング溜まり13,14と、ポッティング溜まり13,14に注入されるポッティング剤の注入量を指し示す指標51と、ポッティング溜まり13,14に注入されたポッティング剤が硬化したポッテイング塊61,62とを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水構造を備えたコネクタであって、
前記コネクタの互いに接する複数の構成部品の接触部分の端縁を含む領域に窪んだ形状に形成されたポッティング溜まりと、
前記ポッティング溜まりに注入されるポッティング剤の注入量を指し示す指標と、
前記ポッティング溜まりに注入されたポッティング剤とを有することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ポッティング溜まりが、当該コネクタの構成部品の外壁を周回する窪みからなり、該窪みの、周回方向の一部分が該一部分を除く部分よりも広がっていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
棒状に延びる信号コンタクトを有し、
前記ポッティング溜まりが、該信号コンタクトを周回する窪みからなり、
前記指標として、前記信号コンタクトの該ポッティング溜まりに突き出た部分に、該信号コンタクトが延びる方向に対する横向きに突き出た指標を有することを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記指標が、複数の注入量のそれぞれを指し示す複数の個別指標からなることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ポッティング溜まりと該ポッティング溜まりに対応した前記指標とのペアを複数有し、該複数のポッティング溜まりが互いに同一方向に開いた開口を有することを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
当該コネクタが、第1の相手コネクタと嵌合する第1の嵌合部と第2の相手コネクタと嵌合する第2嵌合部とを備えて該第1の相手コネクタと該第2の相手コネクタとの間で伝送される信号を仲介するコネクタであって、
当該コネクタが、前記第1の相手コネクタと嵌合し前記第2の相手コネクタとは非嵌合の状態にあるときに、当該コネクタに浸入した水が該第1の相手コネクタ側に漏れるのを防止する防水構造を有することを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水構造を備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、防水構造を備えたコネクタが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、棒状に延びる信号コンタクトと、その信号コンタクトから離れてその信号コンタクトの周りを取り巻く筒状のアウタシールドとを有し、信号コンタクトとアウタシールドとの間に第1のシール部材を嵌め込むとともに、アウタシールドの外周に第2のシール部材を嵌め込んだ構造のコンタクトが開示されている。
【0004】
このコネクタはカメラモジュール側の第1の相手コネクタとケーブルが接続された第2の相手コネクタとの双方に嵌合してカメラモジュールとケーブル側との信号の伝送を仲介するコネクタである。そして、このコネクタは、カメラモジュール側の第1の相手コネクタと嵌合するとともにケーブルが接続された第2の相手コネクタとは未嵌合の状態にあるときに、このコネクタに浸入した水がカメラモジュール側の第1の相手コネクタに漏れるのを防止する役割を担っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、上掲の公報に記載されたコネクタの分野においても、益々の小型化、信号の高速化がすすんでおり、このため、信号コンタクトも径の細いコンタクトが使用されてきている。この信号コンタクトの径が細いと、その信号コンタクトの周りを防水するためにその信号コンタクトを貫通させる孔も狭くなり、十分な防水性を確保した孔を設けることが困難となるおそれがある。
【0007】
ここで、これを解決する手段として、ポッティング溜まりを作っておいてそこに液状のポッティング剤を注入し、そのポッティング剤を硬化させることで防水性能を確保する技術が知られている。しかしながら、小型化されたコネクタの小さいポッティング溜まりに高精度に制御された量のポッティング剤を注入することは難しく、少量過ぎて十分な防水性能を得ることができなかったり、あるいはポッティング剤を多量に注入しすぎてその後工程での組み立てに悪影響を与えるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、ポッティング剤を注入することで防水性能を満たすコネクタにおいて、ポッティング剤の注入量を高精度に制御することが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明のコネクタは、防水構造を備えたコネクタであって、
このコネクタの互いに接する複数の構成部品の接触部分の端縁を含む領域に窪んだ形状に形成されたポッティング溜まりと、
そのポッティング溜まりに注入されるポッティング剤の注入量を指し示す指標と、
そのポッティング溜まりに注入されたポッティング剤とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明のコネクタは、ポッティング溜まりに注入されるポッティング剤の注入量を指し示す指標を有するため、その指標を観察しながらポッティング剤を注入することにより、注入を終えるタイミングを正しく判定することができ、ポッティング剤の注入量を高精度に制御することが可能である。
【0011】
ここで、本発明のコネクタにおいて、上記ポッティング溜まりが、そのコネクタの構成部品の外壁を周回する窪みからなり、該窪みの、周回方向の一部分がその一部分を除く部分よりも広がっていることが好ましい。
【0012】
一部分が広がっていることにより、ポッティング剤注入工程における、ポッティング剤注入ノズルの位置精度を緩めることができる。
【0013】
また、本発明のコネクタにおいて、
棒状に延びる信号コンタクトを有し、
上記ポッティング溜まりが、信号コンタクトを周回する窪みからなり、
上記指標として、信号コンタクトのポッティング溜まりに突き出た部分に、信号コンタクトが延びる方向に対する横向きに突き出た指標を有することが好ましい。
【0014】
この指標を有する信号コンタクトの場合、ポッティング剤の注入量を高精度に制御することができることに加え、表面張力により信号コンタクトに沿って伝わってくるポッティング剤をこの指標で食い止めることができる。
【0015】
さらに、本発明のコネクタにおいて、上記指標が、複数の注入量のそれぞれを指し示す複数の個別指標からなることも好ましい態様である。
【0016】
複数の個別指標からなる指標を採用すると、例えば、ポッティング剤の適正注入量の下限値および上限値を知ることができる。
【0017】
さらに、本発明のコネクタにおいて、上記ポッティング溜まりとそのポッティング溜まりに対応した上記指標とのペアを複数有し、それら複数のポッティング溜まりが互いに同一方向に開いた開口を有することも好ましい態様である。
【0018】
仮に、複数のポッティング溜まりが別々の方向に開いた開口を持っている場合、ある1つの方向に開いた開口を持つポッティング溜まりにポッティング剤を注入し、そのポッティング剤が硬化してから姿勢を変えて別の方向に開いた開口を持つポッティング溜まりにポッティング剤を注入する必要があり、ポッティング剤注入処理の効率が悪い。
【0019】
これに対し、複数のポッティング溜まりが互いに同一方向に開いた開口を有すると、1つのポッティング溜まりにポッティング剤を注入した後、そのポッティング剤の硬化を待たずに別のポッティング溜まりにポッティング剤を注入することができ、ポッティング剤注入処理の効率が向上する。
【0020】
ここで、本発明のコネクタが、第1の相手コネクタと嵌合する第1の嵌合部と第2の相手コネクタと嵌合する第2嵌合部とを備えて第1の相手コネクタと第2の相手コネクタとの間で伝送される信号を仲介するコネクタであって、
このコネクタが、第1の相手コネクタと嵌合し第2の相手コネクタとは非嵌合の状態にあるときに、このコネクタに浸入した水が第1の相手コネクタ側に漏れるのを防止する防水構造を有するコネクタであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上の本発明によれば、ポッティング剤を注入することで防水性能を満たすコネクタにおいて、ポッティング剤の注入量を高精度に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態としてのコネクタの斜視図である。
【
図2】
図1に示すコネクタの使用法の一例を示した図である。
【
図5】
図1に示すコネクタを下側から見た底面図である。
【
図6】第1および第2のポッティング溜まりの部分の斜視図である。
【
図7】
図6と同様、第1および第2のポッティング溜まりの部分の斜視図である。
【
図8】ポッティング剤を注入する前の第1のポッティング溜まりの一部分を示す斜視図である。
【
図9】アウタシールドの内壁面に形成された指標の変形例を示した図である。
【
図10】ポッティング剤を注入する前の第2のポッティング溜まりの一部分を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態としてのコネクタの斜視図である。
【0025】
また、
図2は、
図1に示すコネクタの使用法の一例を示した図である。
【0026】
図1に示されている本発明の一実施形態としてのコネクタ10は、
図2では、
図2(B)に示されている。
【0027】
このコネクタ10は、
図2に示した姿勢における下側に第1の嵌合部11を有し、上側に第2の嵌合部12を有する。そして、このコネクタ10は、ケース91内に収納されている第1の相手コネクタ92を第1の嵌合部11で覆うようにして、その第1の相手コネクタ92と嵌合する。ここに示す例では、第1の相手コネクタ92は、カメラが搭載されているモジュールに組み込こまれていて、そのカメラの信号を外部に送り出すためのコネクタである。
【0028】
また、上側の第2の嵌合部12は、第2の相手コネクタ93と嵌合する。この第2の相手コネクタ93にはケーブル94が接続されている。ケーブル94は、長く延びているが、ここでは、第2の相手コネクタ93に接続されている先端部分のみ、図示している。
【0029】
図2(B)に示すコネクタ10は、第1の相手コネクタ92と第2の相手コネクタ93との双方の相手コネクタと嵌合し、それら双方の相手コネクタ間で伝送される信号を仲介する。第1の相手コネクタ92は、車に搭載されるカメラを内蔵したモジュールに組み込こまれていて、そのカメラからの信号を送り出す役割のコネクタである。
図2(B)に示すコネクタ10は、第1の相手コネクタ92からカメラの信号を受け取って第2の相手コネクタ93に伝える。第2の相手コネクタ93にはケーブル94が接続されていて、第2の相手コネクタ93に伝えられた信号は、ケーブル94により、離れた位置にあるモニタ等の不図示の装置に伝送される。
【0030】
ここで、コネクタ10は、車の製造過程で、あるいは、車のメンテナンスの過程で、第1の相手コネクタ92と嵌合し、第2の相手コネクタ93とは未嵌合の状態が存在する。カメラが搭載されたモジュールは水分を嫌うため、コネクタ10は、第2の相手コネクタ93とは未嵌合の状態であってもそのコネクタ10に浸入した水が第1の相手コネクタ92側に漏れることがないように防水対策が施されたコネクタである必要がある。このコネクタ10の防水は、第2の相手コネクタ93との嵌合よりも前の段階における防水であり、嵌合前防水あるいは未嵌合防水と呼ばれている。
【0031】
【0032】
また、
図4は、
図1に示すコネクタの縦断面図である。
【0033】
このコネクタ10は、
図3に示した上から順に、樹脂製のアウタハウジング20、金属製のアウタシールド30、樹脂製のインナハウジング40、金属製の信号コンタクト50、ポッティング塊60、および、金属製のケースシェル70で構成されている。
【0034】
信号コンタクト50は、棒形状を有し、
図2に示す第1の相手コンタクト92からカメラの信号を受け取って第2の相手コンタクト93に伝える役割を有している。この信号コンタクト50は、インナハウジング40に支えられている。
【0035】
アウタシールド30は、筒状の部材であり、その内部にインナハウジング40を支持し、さらにその中心に信号コンタクト50を支持している。
【0036】
ポッティング塊60は、このコネクタ10の防水を担当している。ここには、硬化後のポッティング剤の塊りとしての形状が示されている。このポッティング塊60は、内側の第1のポッティング塊61と外側の第2のポッティング塊62とに分かれている。これらのポッティング塊61,62は、このコネクタ10の組立の途中の工程で
図6に示す2つのポッティング溜まり13,14に液状のポッティング剤が注入されて硬化したものであり、本来は、ポッティング溜まり13,14を構成している部品とは分離不能であるが、
図3では、あえて、硬化後のポッティング塊61,62を取り出して、それらの形状を示している。そして、2つのポッティング溜まり13,14に液状のポッティング剤が注入されて硬化することにより、防水構造が完成する。
【0037】
これら2つのポッティング溜まり13,14は、いずれも、このコネクタ10の、互いに接する複数の構成部品の接触部分の端縁を含む領域に窪んだ形状に形成されている。
【0038】
具体的には、第1のポッティング溜まり13は、信号コンタクト50の、インナハウジング40から下に突き出た部分の周りに、窪み形状に形成されている。すなわち、この第1のポッティング溜まり13は、信号コンタクト50とインナハウジング40との接触部分、および、インナハウジング40とアウタシールド30との接触部分を含む領域に形成されていて、信号コンタクト50とインナハウジング40の底面41と、アウタシールド30の内壁面31とで区画されている。
【0039】
また、第2のポッティング溜まり14は、アウタシールド30とアウタハウジング20との接触部分を含む領域に形成されていて、アウタシールド30の外壁面32とアウタハウジング20の内壁面21とで区画されている。
【0040】
これら第1のポッティング溜まり13および第2のポッティング溜まり14は、いずれも、同一の方向、具体的には
図4における下方に開いた開口を有する。そこで、これら第1のポッティング溜まり13および第2のポッティング溜まり14にポッティング剤を注入するにあたっては、ケースシェル70を組み立てる前のコネクタ10を、
図4に示す姿勢とは上下逆向きにした状態に保持し、その逆向きにした状態で第1のポッティング溜まり13および第2のポッティング溜まり14にポッティング剤を注入し、その注入したポッティング剤が硬化してポッティング塊61,62となるまでその逆向きにした状態が保持される。
【0041】
ここでは、第1のポッティング溜まり13および第2のポッティング溜まり14の双方が同一の下向きの方向に開いた開口を有するため、逆向きにした姿勢のまま、第1のポッティング溜まり13および第2のポッティング溜まり14の双方にポッティング剤を注入することができる。
【0042】
ポッティングについてのさらなる説明については、後に譲る。
【0043】
ケースシェル70は、第1のポッティング溜まり13および第2のポッティング溜まり14にポッティング剤が注入されて硬化した後に取り付けられる。このケースシェル70は、その切片71がアウタシールド30に接してグランド電位に保たれる。そして、このコネクタ10が第1の相手コネクタ92に嵌合した際に第1の相手コネクタ92に覆いかぶさるとともに第1の相手コネクタ92のグランド(不図示)に接して、第1の相手コネクタ92をシールドする。
【0044】
アウタハウジング20は、その下方に大きく開いた第1の嵌合開口22を有し、さらに上方に開いた第2の嵌合開口23を有する。
【0045】
第1の嵌合開口22には、ケースシェル70が配置されている。このコネクタ10が第1の相手コネクタ92と嵌合すると、ケースシェル70が第1の相手コネクタ92を覆うとともにアウタハウジング20がケース91に嵌まり込む。
【0046】
第2の嵌合開口23には、第2の相手コネクタ93との嵌合に当たり、その第2の相手コネクタ93が嵌まり込む。
【0047】
以上で、コネクタ10の全体の説明は終了し、ポッティング溜まりの周りの部分についてさらに説明を続ける。
【0048】
図5は、
図1に示すコネクタを下側から見た底面図である。ここで、
図5(A)は、ケースシェルを取り付けた状態の底面図、
図5(B)は、ケースシェルを取り外した状態における底面図である。
【0049】
また、
図6は、第1および第2のポッティング溜まりの部分の斜視図である。
【0050】
前述のとおり、第1および第2のポッティング溜まり13,14には、組立中のコネクタ10を上下逆向きにした姿勢で、ポッティング剤が注入される。
【0051】
図5(A)には、アウタハウジング20の第1の嵌合開口22の内側にケースシェル70が広がっていることが示されている。そして、そのケースシェル70は、そのケースシェル70の切片71がアウタシールド30に接していて、グランド電位に保たれている。
【0052】
また、アウタシールド30の中心には、信号コンタクト50が示されている。そして、信号コンタクト50の周りの、アウタシールド30に取り巻かれた領域に第1のポッティング溜まり13が形成されていて、第1のポッティング溜まり13には、そこに注入されたポッティング剤による第1のポッティング塊61が形成されている。
【0053】
また、アウタシールド30の外側には、第2のポッティング溜まり14が形成されている。そして、その第2のポッティング溜まり14には、そこに注入されたポッティング剤による第2のポッティング塊62が形成されている。この第2のポッティング溜まり14は、
図5(A)においては、ケースシェル70の切片71どうしの間から一部のみ表れている。
図5(B)および
図6には、その全体の形が現れている。
【0054】
ここで、第2のポッティング溜まり14は、アウタシールド30の外壁32を周回する周回方向の一部分14'が、その一部分14'を除く部分よりも広がっている。これは、ポッティング剤を注入するノズル(不図示)の、第2のポッティング溜まり14に対する位置合わせ精度を緩めるためであり、この広がっている部分14'を形成することにより、ポッティング剤を注入する作業の効率化が図られている。
【0055】
図7は、
図6と同様、第1および第2のポッティング溜まりの部分の斜視図である。ただし、この
図7の場合、ポッティング剤を注入する前の第1のポッティング溜まり13が示されている。第2のポッティング溜まり14については、
図6と同様、既にポッティング剤が注入されている。
【0056】
また、
図8は、ポッティング剤を注入する前の第1のポッティング溜まりの一部分を示す斜視図である。
【0057】
信号コンタクト50には、第1のポッティング溜まり13の中央に突き出た部分に、この信号コンタクト50が延びる上下方向に対する横向きに突き出た鍔部51が形成されている。この鍔部51は、第1のポッティング溜まり13にポッティング剤を注入するにあたっての適正な注入量を指し示す指標としての役割を担っている。すなわち、第1のポッティング溜まり13にポッティング剤を注入するにあたっては、この鍔部51に達する高さまでポッティング剤が注入される。また、この鍔部51は、第1のポッティング溜まり13にポッティング剤を注入したときに、ポッティング剤が表面張力により信号コンタクト50の壁面を更なる上方に伝ってくるのを防止する役割も担っている。これにより、信号コンタクト50の信号伝送性能の信頼性が保たれている。
【0058】
また、
図7に示すように、アウタシールド30の内壁面31には、途中の深さ位置まで延びる溝32が形成されている。この溝32も、第1のポッティング溜まり13にポッティング剤を注入するにあたっての適正な注入量を指し示す指標としての役割を担っている。すなわち、この溝32の下端の高さまでポッティング剤を注入すると、適量のポッティング剤が注入されたことを意味している。また、ここには、溝32は、周回方向4か所に形成されている。これにより、この溝32は、ポッティング剤を注入する際のコネクタ10が傾いていないかを示す指標ともなっている。
【0059】
図9は、アウタシールドの内壁面に形成された指標の変形例を示した図である。
【0060】
この
図9には、アウタシールド30の内壁面31に形成された、
図7と同様な、途中の深さ位置まで延びる溝32が形成されている。ただし、この
図9には2つの溝32a,32bが示されているが、それら2つの溝32a,32bは互いに長さが異なっている。すなわち、溝32aは、溝32bよりも第1のポッティング溜まり13の底に近い位置まで延びている。この溝32aは、第1のポッティング溜まり13に注入したポッティング剤がこの溝32aの下端にまで達しないときは、注入量が少なすぎることを意味している。一方、もう1つの溝32bは、注入したポッティング剤がこの溝32bの下端にまで達すると注入量が多すぎることを意味している。
【0061】
このように、複数の指標を組み合わせて、注入量の上下限値を指し示してもよい。
【0062】
なお、ここでは、溝32を指標としているが、指標は溝である必要はなく、突起あるいは突条等であってもよい。
【0063】
図10は、ポッティング剤を注入する前の第2のポッティング溜まりの一部分を示した斜視図である。
【0064】
この第2のポッティング溜まり14の周縁には、
図5(B)に示すように周回方向の3か所に、この
図9に示すような3段の階段15が形成されている。これら3段の階段15は、第2のポッティング溜まり14へのポッティング剤の注入量の指標としての役割を担っている。
【0065】
すなわち、ここでは、3段の階段15のうちの一番低い1段目の階段15aは、この1段目の階段15aがポッティング剤で埋まらないときはポッティング剤の注入量が少なすぎることを意味している。2段目の階段15bは、ポッティング剤がその高さまで注入されるとちょうど基準の注入量であることを意味している。また、3段目の階段15cは、この3段目の階段15cがポッティング剤で埋まると、ポッティング剤の注入量が多すぎることを意味している。
【0066】
すなわち、この3段の階段15は、ポッティング剤の適正注入量だけでなく、注入量の上下限値、すなわち注入量の許容値も指し示している。
【0067】
また、この3段の階段15も、周回方向3か所に形成されているため、コネクタ10の傾きの指標としても有効である。
【0068】
ここで、
図5(B)には、1段目と2段目の階段15a,15bがポッティング剤に埋まり、3段目の階段15cがポッティング剤表面から現れている状態が示されている。
【0069】
このように、本実施形態のコネクタによれば、注入量の指標を設けて適正な注入量のポッティング剤を注入して防水性能が付与されているため、例えば防水ゴム等では対応できない細径の信号コンタクト50の採用や、コネクタの小型化の要請に応えることができる
【符号の説明】
【0070】
10 コネクタ
11 第1の嵌合部
12 第2の嵌合部
13 第1のポッティング溜まり
13A 第1のポッティング溜まりの開口
14 第2のポッティング溜まり
14A 第2のポッティング溜まりの開口
15 3段の階段
15a 1段目の階段
15b 2段目の階段
15c 3段目の階段
20 アウタハウジング
21 アウタハウジングの内壁面
22 第1の嵌合開口
23 第2の嵌合開口
30 アウタシールド
31 アウタシールドの内壁面
32,32a,32b 溝
40 インナハウジング
41 インナハウジングの底面
50 信号コンタクト
51 信号コンタクトの鍔部
60 ポッティング塊
61 第1のポッティング塊
62 第2のポッティング塊
70 ケースシェル
71 ケースシェルの切片
91 ケース
92 第1の相手コネクタ
93 第2の相手コネクタ
94 ケーブル