(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084934
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】かつら用留め具及びこれを備えたかつら
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
A41G3/00 K
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199139
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000126676
【氏名又は名称】株式会社アデランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小菅 俊彦
(57)【要約】
【課題】マイクロソレノイド、マイクロモータなどの超小型の駆動機器を用いることで、かつらの装着に際して、人が手を大きく上方に上げることなく、留め具を容易に、自毛に掛け止めることができ、かつらを外す際にも手を大きく上げることなく留め具を容易に外すことができる。
【解決手段】かつらベース62に取り付けられる枠部材2と、枠部材2に可動自在に取り付けられた、自毛を挟む可動部材3、枠部材2に取り付けられた、可動部材3を当てる止め板材6と、枠部材2に取り付けられた、可動部材3を枠部材2から離し、その間に、頭部の自毛を挟みこみ、可動部材3を該止め板材6側へ可動させるマイクロソレノイドなどの超小型の駆動機器と、この駆動機器を駆動するバッテリ9と、を備えた。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かつら(61)を人の頭部に載せ、その頭部周囲に生えている自毛に固定するかつら用留め具(1,21)であって、
かつらベース(62)に取り付けられる枠部材(2)と、
前記枠部材(2)に可動自在に取り付けられた、自毛を挟む可動部材(3,22)と、
前記枠部材(2)に取り付けられた、可動部材(3,22)を当てる止め板材(6)と、
前記枠部材(2)に取り付けられた、該可動部材(3,22)を枠部材(2)から離し、その間に、頭部の自毛を挟みこみ、該可動部材(3,22)を該止め板材(6)側へ可動させる駆動手段と、
前記駆動手段を駆動するバッテリ(9)と、を備え、
かつら(61)を人の頭部に載せる前に、前記駆動手段が前記可動部材(3,22)を前記止め板材(6)から離し、前記駆動手段で該可動部材(3,22)を該止め板材(6)側に近づけて自毛に固定し得るように構成した、ことを特徴とするかつら用留め具。
【請求項2】
前記可動部材(3,22)を前記止め板材(6)側へ付勢する弾性部材を、前記枠部材(2)に取り付けた、ことを特徴とする請求項1に記載のかつら用留め具。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記枠部材(2)に取り付けたソレノイド(7)である、ことを特徴とする請求項1に記載のかつら用留め具。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記枠部材(2)に取り付けたモータ(24)である、ことを特徴とする請求項1に記載のかつら用留め具。
【請求項5】
前記駆動手段は、リモコンスイッチ(11,12)で操作する、ことを特徴とする請求項1に記載のかつら用留め具。
【請求項6】
前記駆動手段は、タッチスイッチ(静電容量スイッチ)で操作する、ことを特徴とする請求項1に記載のかつら用留め具。
【請求項7】
請求項1に記載のかつら用留め具(1,21)が、頭部に載せる状態のかつらベース(62)に該可動部材(3,22)の先端部と前記止め板材(6)が装着状態において下向き配置になるように取り付けられた、ことを特徴とするかつら。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かつらを人の頭部に固定する留め具に係り、特に手指で部材を強く押す動作をしなくても留めることができ、かつその狭持力に優れたかつら用留め具及びこれを備えたかつらに関する。
【背景技術】
【0002】
かつらを人の頭部に固定する手段として、かつらベースに取り付けられる留め具がある。このかつら用留め具は、縫い糸等によりかつらベースの裏面側(使用者の頭部に接する側)に取り付けられる。この留め具は、使用者の自毛を挟み込むことにより、かつらベースを使用者の頭部に固定する。例えば、反転自在の金属製の薄板から成り、複数の櫛歯が形成されたかつら用留め具が提案されている。
【0003】
この従来の一般的なかつら用の留め具51は、
図11(a)の正面図、(b)の背面図に示すように、薄い弾性を有する金属板製の略コ字形状の枠部材52に、櫛部53が一体形成されている。この櫛部53は、図示するように、櫛部53の根元部54がコ字形状の一辺に一体形成されている。櫛部53の先端がコ字形状の開放側に向けられている。この略コ字形状の枠部材52の開放側の両先端に止め板材55が掛け渡されている。この止め板材55は、ある程度の弾力性と粘着性がある素材のものである。
【0004】
コ字形状の枠部材52と櫛部53は、全体として人の頭部の曲面形状に会うように湾曲形成されている。この湾曲形状の枠部材52を反転させると、櫛部53の先端が、枠部材52のコ字形状の開放側に向けて広がるようになる。枠部材52を反転させると、櫛部53の先端が、止め板材55に当たるようになっている。
【0005】
かつらベース62に取り付けられた留め具51を、自毛に挟むときは、
図11(c)の側断面図に示すように、枠部材52を反転させて、櫛部53の先端を、止め板材55から離れた状態にする。この状態で、留め具51を自毛に差し込む。かつら全体の位置が適正な位置になったら、
図11(d)の側断面図に示すように、この枠部材52を手指で押して反転させ、枠部材52が頭部の曲面と同じように湾曲形状にする。この枠部材52の反転と同時に、櫛部53の先端は止め板材55に当たり、この櫛部53と止め板材55に挟まれた自毛が強固に固定される。
留め具51を外すときは、枠部材52を手指で押して反転させ、櫛部53の先端と止め板材55に隙間を作り、自毛から外す。
【0006】
このように従来の留め具51は、図示するような構成以外にも板バネ材を用いた種々のものが提案されている。板バネ材から成るものが多く、留め具51を手指で強く押して装着し、また取り外すようになっている。但し、この板バネ材を反転させる際には手指である程度の強い力をかけて曲げる必要がある。
【0007】
そこで、弱い力でも反転でき、かつ毛髪の狭持力に優れたストッパ(留め具)に関する技術が提案されている。例えば、特許文献1の特開2016-37667号公報「かつら用ストッパ、及びこれを備えたかつら」のように、複数の薄板を牽引固定して反転性を有するように形成され、かつらに固定されて、前記薄板を反転させることにより毛髪を挟んで、かつらを頭部に取付けるためのかつら用ストッパであって、複数の櫛歯が並設された根元部を有するコの字型薄板と、前記複数の櫛歯に対向する挟持部を有するL字型薄板とを備え、前記複数の櫛歯が前記根元部及び前記挟持部の短手方向に対して斜めに設けられ、前記挟持部に孔又は凹部が形成され、前記薄板を反転させて毛髪を挟んだ際に、前記複数の櫛歯と前記挟持部との間に毛髪を挟圧保持するかつら用ストッパが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
人は年齢を重ねると、肩の関節がスムーズに動かなくなることがある。関節痛の一種の「五十肩」になると、腕を肩まで上げたり水平に保つのが難しくなる。そのため、肩よりも上のものが取りづらくなり、背中に手が回らないなどの症状が現れることがある。このような症状があらわれた人は、かつらを装着したり、外したりすることも困難になることがある。特に腕を上げた状態で留め具を強く押して、かつらを固定することが困難になるという問題を有していた。
【0010】
本発明の発明者は、長さ10mm程度、厚さ3~5mmの超軽量な駆動機器であるマイクロソレノイドとマイクロモータに着目した。このマイクロソレノイドとマイクロモータはバッテリの重さを合わせても数グラム程度である。技術の進歩が進めば更に小さくなり、軽量になる傾向にある。そこで、この超小型の駆動機器を留め具の駆動手段に用いることに着目した。
【0011】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、マイクロソレノイド、マイクロモータなどの超小型の駆動機器を用いることで、かつらの装着に際して、人が手を大きく上方に上げることなく、留め具を容易に自毛に掛け止めることができ、かつらを外す際にも手を大きく上げることなく留め具を容易に外すことができるかつら用留め具及びこれを具備するかつらを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のかつら用留め具は、かつら(61)を人の頭部に載せ、その頭部周囲に生えている自毛に固定するかつら用留め具(1,21)であって、
かつらベース(62)に取り付けられる枠部材(2)と、
前記枠部材(2)に可動自在に取り付けられた、自毛を挟む可動部材(3,22)と、
前記枠部材(2)に取り付けられた、可動部材(3,22)を当てる止め板材(6)と、
前記枠部材(2)に取り付けられた、該可動部材(3,22)を枠部材(2)から離し、その間に、頭部の自毛を挟みこみ、該可動部材(3,22)を該止め板材(6)側へ可動させる駆動手段と、
前記駆動手段を駆動するバッテリ(9)と、を備え、
かつら(61)を人の頭部に載せる前に、前記駆動手段が前記可動部材(3,22)を前記止め板材(6)から離し、前記駆動手段で該可動部材(3,22)を該止め板材(6)側に近づけて自毛に固定し得るように構成した、ことを特徴とする。
【0013】
前記可動部材(3,22)を前記止め板材(6)側へ付勢する弾性部材を、前記枠部材(2)に取り付けたものである。
例えば、前記駆動手段は、前記枠部材(2)に取り付けたソレノイド(7)又はモータ(24)である。
前記駆動手段は、リモコンスイッチ(11,12)又はタッチスイッチ(静電容量スイッチ)で操作する。
【0014】
本発明のかつらは、かつら用留め具(1,21)が、頭部に載せる状態のかつらベース(62)に該可動部材(3,22)の先端部と前記止め板材(6)が装着状態において下向き配置になるように取り付けられた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のかつら用留め具では、かつらを装着する際に、かつらベース(62)に取り付けられている数個の留め具(1,21)の可動部材(3,22)を駆動手段で駆動して可動部材(3,22)の先端部と止め板材(6)との間に隙間を作る。かつらベース(62)を頭部に載せ、この隙間に自毛を挟み込む。自毛を挟んだ可動部材(3,22)を駆動手段で駆動してその先端部の櫛部(3a、22b)を止め板材(6)へ移動させ、自毛を挟んで固定する。このときは、従来のように反転したバネ材から成る留め具を強い力で押すことなく、容易に留め具(1,21)の装着作業が完了する。従来の反転式の留め具のように腕を大きく上げる必要がないので、五十肩になった人でも、その頭部にかつらを容易に固定することができる。
【0016】
本発明では、駆動手段のソレノイド(7)は、いわゆるマイクロソレノイドを用いているので、超小型バッテリ(9)と合わせて数グラムである。従来の反転バネ式の留め具と大きさは変わらず、少し重くなる程度である。従来のかつらと違和感がなく、頭部に装着することができる。
【0017】
可動部材(3,22)と枠部材(2)の間に、この可動部材(3,22)を枠部材(2)側へ付勢する弾性部材を取り付けた留め具では、常時は閉止した状態にある。自毛を挟んだ状態のときは電力を消費しない。ソレノイド(7)又はモータ(24)の駆動手段を駆動する時間は、装着するときと、外すときのみであるため、電力の消費量は極端に少ない。バッテリを長持ちさせることができる。
【0018】
本発明の留め具を具備するかつらでは、留め具(1,21)の可動部材(22)が駆動手段にモータ(24)を用いたものでは、自毛を捉える際に可動部材(22)の先端部(22b)の位置が変位する。即ち、留め具(21)の自毛を挟持する位置(作動点)も変化するので、頭部に載せたかつら(61)(かつらベース(62))を、頭部側へ強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のかつら用留め具を取り付けたかつらを、かつらベース側から見た状態を示す正面図である。
【
図2】実施例1の「マイクロソレノイド」を駆動手段として用いたかつら用留め具を示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【
図3】実施例1の留め具を示す拡大側断面図であり、(a)は可動部材が「開」の状態、(b)は可動部材が「閉」の状態である。
【
図4】押圧スイッチから成る留め具の回路図である。
【
図5】リモリコンスイッチから成る留め具の回路図である。
【
図6】スライド式の可動部材から成る実施例1の変形例を示し、(a)は可動部材が「開」の状態の拡大側断面図、(b)は可動部材が「閉」の状態の拡大側断面図である。
【
図7】スライド式の可動部材から成る実施例1の変形例を示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。
【
図8】実施例2の「マイクロモータ」を駆動手段として用いたかつら用留め具を示し、(a)は可動部材が「開」状態の正面図、(b)は可動部材が「閉」状態の正面図、(c)は可動部材が「閉」状態の背面図である。
【
図9】実施例2の留め具を示す拡大側断面図であり、(a)は可動部材が「開」の状態、(b)は可動部材が「閉」の状態である。
【
図10】2本の可動部材から成る実施例2の変形例を示し、(a)は可動部材が「開」状態の正面図、(b)は可動部材が「閉」状態の正面図、(c)は可動部材が「閉」状態の背面図である。
【
図11】従来の留め具を示すものであり、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は「開」状態の側断面図、(d)は「閉」状態の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、かつらを人の頭部に載せ、その頭部周囲に生えている自毛に固定するかつら用留め具である。自毛を固定する部材を駆動する手段としてマイクロソレノイド、マイクロモータを用いたものである。
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
<かつらの一般的な構成>
図1は本発明のかつら用留め具を取り付けたかつらを、かつらベース側から見た状態を示す正面図である。
かつら61は、人の頭頂部の略半球形状をした、かつらベース62の表面側に、人毛又は人工毛63を植え付けたものである。かつらベース62の裏面側に数個の本発明の留め具1,21が取り付けられている。この留め具1,21は、開閉自在になる部材が、このかつら61を装着する人の自毛に挟むことによって、かつら61が頭部に固定されるようになる。
【実施例0022】
<マイクロソレノイドを用いたかつら用留め具>
図2は実施例1の「マイクロソレノイド」を駆動手段として用いたかつら用留め具を示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。
実施例1は、「マイクロソレノイド」を駆動手段として用いたかつら用留め具1である。留め具1は、図示するように、略コ字形状の枠部材2に、自毛を挟む可動部材3が可動自在に取り付けられたものである。枠部材2は長辺とその両端に鉤状に2本の短辺とから成る形状を有する。コ字形状の枠部材2と可動部材3は、全体として人の頭部の曲面形状に会うように湾曲形成されている。
【0023】
この可動部材3には櫛形状の櫛部3aが一体成形されている。可動部材3の根元部3bは、枠部材2の長辺にあるヒンジ4に取り付けられている。枠部材2のコ字形状の一辺に、可動部材3の櫛部3aの先端側がコ字形状の開放側に向けて可動するように取り付けられている。枠部材3には、これをかつらベース62に縫い付ける際に用いる穴5が数か所に開けられている。枠部材2と可動部材3の素材は、金属製、プラスチック製の何れでもよい。
【0024】
この枠部材2の他辺(開放側)の両先端に止め板材6が掛け渡すように取り付けられている。この止め板材6は、可動部材3の櫛部3aの先端と共に、自毛を挟み、固定する部分である。この止め板材6は、ある程度の弾力性と粘着性を有する素材のものが好ましい。例えば塩化ビニルやシリコンゴムのような部材が好ましい。但し、止め板材6は、櫛部3aと共に自毛を挟み、固定する機能を奏することができる程度の剛性は必要である。
【0025】
図示例の可動部材3に形成されている櫛部3aは、自毛に挿しやすく、かつ留めやすい形状であれば、このような複数本の直線部材から成る形状に限定されない。例えば、網目形状、ジグザグ形状にすることが可能である。
【0026】
<可動手段の構成>
図3は実施例1の留め具を示す拡大側断面図であり、(a)は可動部材が「開」の状態、(b)は可動部材が「閉」の状態である。
実施例1の可動部材3は、ソレノイド7で「閉」と「開」の動作をさせるようになっている。実施例1の可動部材3のソレノイド7には、いわゆるマイクロソレノイドと称される超小型のソレノイドを用いた。ソレノイド7の本体7aを、枠部材2の一方の短辺に取り付け、そのロッド7b部分を可動部材3のヒンジ4の回動軸4aに連結した作動片8に取り付けた。このロッド7bの前進後退動作により、作動片8が回動軸4aを回動して可動部材3がヒンジ4を回動中心として可動する。可動部材3の櫛部3aの先端は止め板材6に当たり、又は離れる動作をするようになっている。ソレノイド7のロッド7bと、ヒンジ4の回転軸4a部分には髪の毛が巻き付かないようにカバーで覆うことが好ましい(図示せず)。
【0027】
このソレノイド7のロッド7bの後退動作、
図3(a)に示すように、ソレノイド7の本体7a内に後退したときに、可動部材3の櫛部3aが止め板材6から離れる動作をする。逆に、このロッド7bの前進動作、
図3(b)に示すように、ソレノイド7の本体7aから進出したときに、可動部材3の櫛部3aが止め板材6に当接する動作をする。
【0028】
逆の動作のとき、即ちソレノイド7のロッド7bの前進動作のときに、可動部材3の櫛部3aが止め板材6から離れる動作をする。ロッド7bの後退動作のときに、櫛部3aの先端が止め板材6に当接する動作をさせることも可能である。このソレノイド7のロッド7bの前進後退動作を可動部材3のヒンジ4を回動中心として回動動作に変換する機構は、この図示の構成に限定されない。
なお、実施例1の留め具1の可動部材3の駆動手段として、ソレノイド7に代えて後述するモータ(マイクロモータ)24を用いることも可能である。
【0029】
また、可動部材3のヒンジ4に、この可動部材3を枠部材2側へ付勢するコイルばねのような弾性部材(図示せず)を取り付けることができる。このように弾性部材を取り付けた留め具1では、常時は自毛を固定した状態にある。自毛を挟んだ状態のときは電力を消費しない。ソレノイド7又は後述するモータ24の駆動手段を駆動する時間は、装着するときと、外すときのみであるため、電力の消費量は極端に少なくなる。バッテリを長持ちさせることができる。
【0030】
<回路構成1>
図4は押圧スイッチから成る留め具の回路図である。
ソレノイド7の駆動は、留め具1に備えた小型バッテリ9とスイッチ10の操作により行う。このスイッチ10は、従来の金属片を反転させる程度の押圧力まで必要ないので、簡単に操作できる。
なお、図示していないが、1個の留め具1のみに、バッテリ9とスイッチ10を備え、他の留め具1に備えないように構成することも可能である。1か所のスイッチ10の操作で、複数のソレノイド7を作動させることができる。このように構成することで、かつら全体の総重量を低減することができる。
【0031】
スイッチ10は押圧スイッチに代えて、タッチスイッチ(静電容量スイッチ)を用いることも可能である(図示せず)。このタッチスイッチを用いることで、可動部材3の「閉」と「開」の動作を容易に変えることができる。特に、かつらを装着した後に、腕を上げて「閉」動作をするときも、留め具1に指先を触れさせるだけで容易に装着が完了する。
【0032】
<回路構成2>
図5はリモリコンスイッチから成る留め具の回路図である。
ソレノイド7の駆動操作は、スイッチ10の直接的なオン・オフ操作に限定されない。リモコン11を用いて、留め具1に備えた小型バッテリ9のスイッチの受信部12で操作することが可能である。このリモコンスイッチ11、12は複数の留め具1を同時に操作することが好ましい。かつらを装着する際に、かつらを外すときのいずれも、すべて手元で容易に操作することができる。
【0033】
留め具1に取り付けるソレノイド7、バッテリ9、スイッチ10などの各機構部は、かつらベース62側に配置する。これらの各機構部が、頭皮に当たらないようにして、頭部に違和感を生じさせないためである。
【0034】
<留め具の使用方法>
本発明のかつら用留め具1は、次のような順番で使用する。
かつらベース62の取り付けられた留め具1を、自毛に挟むときは、
図3(a)に示すように、留め具1のスイッチ操作で、ソレノイド7を駆動して可動部材3の櫛部3aを、止め板材6から離れた状態にする。この状態で、留め具1を自毛に差し込む。
その後、両手でかつら61が適正な位置になるようにする。
図3(b)に示すように、この可動部材3の櫛部3aを止め板材6に当て、この櫛部3aと止め板材6に挟まれた自毛が強固に固定される。かつら61を装着しているときは、ソレノイド7が可動部材3を強固に固定しているので、自毛が櫛部3aと止め板材6の間から外れることがない。
かつら61を外すときは、可動部材3を止め板材6から離し、櫛部3aの先端と止め板材6に隙間を作る。これでかつら61を頭部から外すことができる。
【0035】
<実施例1の変形例>
図6はスライド式の可動部材から成る実施例1の変形例を示し、(a)は可動部材が「開」の状態の拡大側断面図、(b)は可動部材が「閉」の状態の拡大側断面図である。
図7はスライド式の可動部材から成る実施例1の変形例を示し、(a)は正面図、(b)は背面図である。
可動部材3は、上述したように、ヒンジ4を回動中心とする開閉式の構成に限定されない。この実施例1の変形例は、可動部材3をスライド動作する構成にしたものである。可動部材3の櫛部3aを各櫛の長手方向にも湾曲形成し、この櫛部3aの基端部を支持部材13に取り付けた。この支持部材13をスライド動作させる支持受け部材14内に摺動自在に取り付けたものである。この支持受け部材14を枠部材2の長辺に設けたものである。櫛部3aのスライド動作は、ソレノイド7を用いた。
【0036】
櫛部3aの支持部材13に突起15を取り付け、この突起15にソレノイド7のロッド7bを連結した。ソレノイド7のロッド7bの進出後退動作に応じて、支持部材13がスライド動作する。この支持部材13のスライド動作する櫛部3aの先端部の進出前は、
図6(a)に示すように、止め板材6から離れた状態にある。この櫛部3aの先端部が進出した後は、この可動部材3の櫛部3aが止め板材6に当たる。そこで、この櫛部3aと止め板材6に挟まれた自毛が強固に固定される。
図示例の可動部材22の櫛部22bは、自毛に挿しやすく、かつ留めやすい形状であれば、この櫛形状に限定されない。例えば、網目形状、ジグザグ形状にすることが可能である。
本発明の可動手段として機能するモータ24は、いわゆるマイクロモータと称される超小型のモータを用いた。図示例は、モータ24を、枠部材2に取り付け、減速機構25を介して軸支部23に取り付けた。この減速機構25の回動動作により、可動部材22が軸支部23を中心として回動する。可動部材22の櫛部22bの先端は止め板材6に当たり、又は離れる動作をする。さらに、モータ24は、回転、停止、低速回転が可能なサーボモータが好ましい。
この傾斜配置により、可動部材22は、モータ24で「開」動作をさせると、可動部材22の櫛部22bの先端が止め板材6から離れている状態になる。可動部材22の面方向が、枠部材2の面方向に対して傾斜した状態になる。すなわち、留め具21が「開」状態になる。
この可動部材22の櫛部22bの先端が止め板材6に近づき当たる状態では、可動部材22の面方向が、枠部材2の面方向に対して平行状態になる。すなわち、留め具21が「閉」になる。
実施例2の留め具21の可動部材22が駆動手段にモータ24を用いたものでは、自毛を捉える際に可動部材22の位置が変位する。即ち、留め具21の自毛を挟持する位置(作動点)も変化するので、頭部に載せたかつら61(かつらベース62)を、頭部側へ強固に固定することができる。
実施例2の留め具21についても、モータ24の駆動は、留め具21に備えた小型バッテリ9とスイッチ10の操作により行う。リモコンスイッチ11,12で行うことも可能である。
また、実施例2の留め具21に取り付けるモータ24、バッテリ9、スイッチ10などの各機構部は、かつらベース62側に配置する。これらの各機構部が、頭皮に当たらないようにして、頭部に違和感を生じさせないためである。
なお、本発明は、マイクロソレノイド7、マイクロモータ24などの超小型の駆動機器を用いることで、かつらの装着に際して、人が手を大きく上方に上げることなく、留め具1,21を容易に、自毛に掛け止めることができ、かつらを外す際にも手を大きく上げることなく留め具1,21を容易に外すことができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。