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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084942
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20240619BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20240619BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20240619BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B32B27/36
C09J7/35
C09J167/00
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199159
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川端 裕介
(72)【発明者】
【氏名】森 健太郎
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK41B
4F100AK42A
4F100AK42D
4F100AK52C
4F100AR00B
4F100BA02
4F100BA04
4F100BA07
4F100EH46
4F100EJ42
4F100GB41
4F100JA05B
4F100JA07B
4F100JB16B
4F100JL11
4F100JL12B
4F100JN01
4F100YY00
4F100YY00B
4F100YY00C
4J004AA02
4J004AA05
4J004AA07
4J004AA09
4J004AA10
4J004AA15
4J004AA16
4J004AB03
4J004CA03
4J004CA04
4J004CA05
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004CD01
4J004CD06
4J004CE01
4J004DA02
4J004DA03
4J004DA04
4J004DB02
4J004FA05
4J004FA08
4J040CA142
4J040DA002
4J040DA052
4J040DF002
4J040ED031
4J040EG002
4J040JA09
4J040JB01
4J040LA06
4J040LA07
4J040LA08
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA19
4J040PA23
4J040PA30
(57)【要約】
【課題】常温及び高温環境下での難接着材質との密着力を維持しつつ、水濡れや湿度の影響により接着不良及び外観不良が発生しない層体を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも、層A、層Bを有する積層体であって、前記積層体を温度80℃以上の界面活性剤を含む水溶液に浸漬後の全光線透過率が70%以上99%以下であり、前記積層体の層Bがホットメルト接着剤層であり、前記積層体の層B面側に被着体を貼り合わせた後に80℃以上の界面活性剤を含む水溶液に浸漬後の密着力が3N/cm以上であることを特徴とする積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、層A、層Bを有する積層体であって、前記積層体を温度80℃以上の界面活性剤を含む水溶液に浸漬後の全光線透過率が70%以上99%以下であり、前記積層体の層Bがホットメルト接着剤層であり、前記積層体の層B面側に被着体を貼り合わせた後に密着力を測定した値と80℃以上の界面活性剤を含む水溶液に浸漬後の密着力の値がともに3N/cm以上であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記層Bは少なくともポリエステル樹脂を含有し、前記層Bは2つ以上のガラス転移温度を持ち、前記層Bの流動開始温度は100℃~150℃であり前記層Bの厚みは5~40μmであることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記層Bのガラス転移温度が、低温側は-5℃~25℃、高温側は40℃~185℃であり、前記層Bの重量平均分子量が5000以上30000以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記層Bがポリエステル樹脂を45重量%以上99.9%重量以下含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項5】
前記積層体が少なくとも層A、層B、層C、層Dをこの順で有する積層体であって、前記層Cがシリコーン樹脂を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項6】
前記層Cのシリコーン樹脂の前記層Bへの転写量が0.2kpcs以下であることを特徴とする請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記層A及び前記層Dがポリエチレンテレフタレート樹脂からなることを特徴とする請求項5に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも層A、層Bを、有する積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にフィルムや紙などの基材を貼り合わせるために接着剤や粘着剤が使用される。その接着剤として使用される材料としてホットメルト接着剤があり、使用材料別でゴム系、アクリル系、シリコーン系に分けられ、状態別では有機溶剤溶液、エマルション、固形(ホットメルト)、水溶液に分けられる。
【0003】
主な用途としては難接着材質(ポリカーボネート:PC、ポリプロピレン:PP、ポリエチレン:PE、ポリテトラフルオロエチレン:PTFE、エチレンプロピレンジエンゴム:EPDMなど)の貼り合わせ、仮接着(銘板の粘着加工の他、ラベル、フィルムの粘着コーティングなど)、粘着部材への一次加工(両面粘着テープなど)、再剥離粘着(仮接着よりも再粘着性、易剥離性が要求される)などがあり、各々の用途に適したホットメルト粘着剤を選択する必要がある。また、上の分類の他にも最近では、一時的な仮接着(粘着)の後に反応硬化する「粘接着剤」と呼ばれるタイプの商品も上市されている。
【0004】
一方で近年、上記ホットメルト接着剤の上記特性に加えて、電子デバイス部品等の複雑な形状への追従性、家電製品のヒーター部材への補修等による100℃を超える高温環境下での接着力維持、更に多湿環境や水濡れ等による接着力低下防止や外観不良防止の要求を受けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-249474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記要求に対し、従来のホットメルト樹脂では耐熱性及び耐水性が不十分であり、高温環境下での難接着材質との密着力維持に問題があったため、耐熱性向上、及び、耐水性向上を目的にホットメルト樹脂を結晶化する提案(特許文献1)がされているが、常温時の樹脂の溶融が不十分になるため、常温時の接着力低下により仮接着ができなくなる問題や、常温時にホットメルトが硬化するため、複雑な形状に追従できなくなる等の問題があった。また結晶化することによりホットメルトが白化し外観不良(不透明化)が発生することがある。このような課題を解決するため、常温及び高温環境下での難接着材質との密着力を維持しつつ、水濡れや湿度の影響により接着不良及び外観不良が発生しないホットメルト接着剤を積層した積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、次によって解決することを見出し、本発明に至ったものである。すなわち、本発明の積層体は以下のとおりである。
(1)少なくとも、層A、層Bを有する積層体であって、前記積層体を温度80℃以上の界面活性剤を含む水溶液に浸漬後の全光線透過率が70%以上99%以下であり、前記積層体の層Bがホットメルト接着剤層であり、前記積層体の層B面側に被着体を貼り合わせた後に80℃以上の界面活性剤を含む水溶液に浸漬後の密着力が3N/cm以上であることを特徴とする積層体。
(2)前記層Bは少なくともポリエステル樹脂を含有し、前記層Bは2つ以上のガラス転移温度を持ち、前記層Bの流動開始温度は100℃~150℃であり前記層Bの厚みは5~40μmであることを特徴とする(1)に記載の積層体。
(3)前記層Bのガラス転移温度が、低温側は-5℃~25℃、高温側は40℃~185℃であり、前記層Bの重量平均分子量が5000以上30000以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の積層体。
(4)前記層Bがポリエステル樹脂を45重量%以上99.9%重量以下含有していることを特徴とする(1)または(2)に記載の積層体。
(5)前記積層体が少なくとも層A、層B、層C、層Dをこの順で有する積層体であって、前記層Cがシリコーン樹脂を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の積層体。
(6)前記層Cのシリコーン樹脂の前記層Bへの転写量が0.2kpcs以下であることを特徴とする(5)に記載の積層体。
(7)前記層A及び前記層Dがポリエチレンテレフタレート樹脂からなることを特徴とする(5)に記載の積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、常温及び高温環境下での難接着材質との密着力を維持しつつ、水濡れや湿度の影響により接着不良及び外観不良が発生しないホットメルト接着剤を積層した積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】層Aおよび層Bを備える積層体の模式図である。
図2】層A/層B/層C/層D積層体の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の積層体の好ましい一態様は、少なくとも、層A、層Bを有する積層体であって、前記積層体を温度80℃以上の界面活性剤を含む水溶液に浸漬後の全光線透過率が70%以上99%以下であり、前記積層体の層Bがホットメルト接着層であり、前記積層体の層B面側に被着体を貼り合わせた後に80℃以上の界面活性剤を含む水溶液に浸漬後の密着力が3N/cm以上であることを特徴とする積層体である。
【0011】
本発明により、常温及び高温環境下での難接着材質である被着体との密着力を維持しつつ、水濡れや湿度の影響により接着不良及び外観不良が発生しないホットメルト接着剤を積層した積層体を提供することができる。以下、本発明の積層体の好ましい一態様について具体的に説明する。本発明での常温とは10℃~25℃をいい、高温とは80℃~120℃をいうものとする。
【0012】
上記の被着体は特に限定されないが、ホットメルト接着の用途から難接着材質が想定される。より具体的には、例えばポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などからなる成形品を挙げることができ、特にポリカーボネート(PC)は耐熱及び耐水用途に適しており、被着体として好ましい。また被着体の形状は特に限定されないが、シート状が好ましく用いられる。
【0013】
まず、本発明の積層体を、図を用いて説明する。図1は、層Aおよび層Bを備える積層体の模式図を示す。図1に示されるのは、層A(符号1で示される)と層B(符号2で示される)が積層されてなる積層体である。また、図2は、図1に示す積層体とは異なる態様の積層体の模式図を示す。図2に示されるのは、層A(符号1で示される)、層B(符号2で示される)、層C(符号3で示される)および層D(符号4で示される)がこの順に積層されてなる積層体である。
【0014】
(ホットメルト接着剤の層:層B)
本発明の層Bはホットメルト接着剤の層である。ここでホットメルト接着剤とは、ある特定の温度以上で溶融し、接着性を発現するものをいう。つまり、熱をかけて融解させて基材等を接着させる接着剤であり、熱可塑性プラスチックが使用されることが多い。そして、上記の層Bはポリエステル樹脂を含有することが好ましい。本発明の層Bにポリエステル樹脂を含むホットメルト接着剤を使用することで、貼り合わせる基材との接着力や、耐熱性などの点から良好である。さらに層Bは2つ以上のガラス転移温度を持ち、層Bの流動開始温度は100℃以上150℃以下であることが好ましい。流動開始温度が100℃以上150℃以下であると、高温環境下で接着剤が溶融しないため接着性が維持でき、基材や被着体が熱で損傷することを抑制することができる。層Bに複数の樹脂や添加剤が混合されている場合、複数の流動開始温度が存在する可能性があるが、本発明の場合、一番低い温度の溶融開始温度を層Bの溶融開始温度とする。
【0015】
また、層Bのホットメルト樹脂のポリエステル樹脂は結晶化樹脂と非結晶樹脂を混合していることが好ましい。結晶化樹脂は耐熱性、耐水性に優れているが、常温時の溶融性が不足するため、複雑な形状の被着体への追従性や、常温時の仮接着性が失われる。また、結晶化によるホットメルト樹脂の白化による外観不良が発生する。本発明では、非結晶樹脂を最適に混合させることで、上記課題が発生せず、耐熱性及び耐水性に優れたホットメルト樹脂を提供できる。層Bのホットメルト樹脂に含まれるポリエステル樹脂の重量に対して、結晶化樹脂の比率は50重量%以上90重量%以下が好ましく、60重量%以上80重量%以下がより好ましい。結晶化樹脂が50重量%以上90重量%以下だと、高温環境下での密着力や耐水性を維持でき、かつ複雑な形状の被着体への追従性や、常温時の仮接着性も維持できる。
【0016】
本発明の層Bには、ポリエステル樹脂以外に(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂およびクロロプレン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂が含有されていることが好ましく、さらにこれらポリエステル樹脂およびポリエステル樹脂以外の樹脂は芳香族骨格を有することが好ましい。芳香族骨格を有することで層Bを構成する樹脂の凝集力が向上し、基材、被着体との接着強度が向上するため好ましい。また、層Bに上述したポリエステル樹脂以外の樹脂を1種類のみ含有してもよいし、複数の樹脂を用いてもよい。被着体の樹脂組成が判明している場合は被着体と同様もしくは近い骨格を持つ樹脂を選定することで被着体と層Bの密着力をより向上させることができる。
【0017】
層Bはポリエステル樹脂を45質量%以上含有していることが好ましく、60質量%以上含有していることがより好ましい。ポリエステル樹脂が45質量%以上含有することで上記層Aや被着体との密着性がより優れたものとなり、例えば剪断加工中に層Bと層Aとの剥離の発生や層Bと被着体との剥離の発生を抑制することができる。
【0018】
一方で、層Bはポリエステル樹脂を99.9質量%以下含有していることが好ましく、90質量%以上含有していることがより好ましい。ポリエステル樹脂が99.9質量%以下含有することで上記層Aや被着体との密着性がより優れたものとなる。
【0019】
前記の通り、層Bは2つ以上の樹脂を含有していることが好ましい。この場合、層Bはガラス転移温度を2つ以上持つことになり、低温側は-5℃以上25℃以下であり、高温側は40℃以上185℃以下であることが好ましい。なお、ガラス転移温度が3つ以上ある場合は、最も低温側にあるガラス転移温度を低温側、最も高温側にあるガラス転移温度を高温側とする。低温側のガラス転移温度が、-5℃以上もしくは高温側のガラス転移温度が40℃以上だと、高温でホットメルト樹脂が溶解せず、高温環境下での密着性がより優れたものとなる。また、低温側のガラス転移温度が25℃以下である、かつ、高温側のガラス転移温度が185℃以下であると常温時に層Bが柔らかくなることで複雑な形状を持つ被着体に追従することができる。なお、ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)により、JIS K 7121:2012に従い測定を実施する。
【0020】
なお、層Bの樹脂を特定する方法は特に限定されないが、例えば層Bのみを切り出し、フーリエ変換赤外分析装置:通称FT-IR装置(例えば、(株)島津製作所、IR Spirit)のATR法(JISK0117:2017参照)を用いてIRスペクトルを測定し、予めデータベースに記録された標準試料スペクトルと照合することで特定することができる。また、熱分析ガスクロマトグラフ質量分析装置:通称GC-MS装置(例えば、(株)島津製作所、GCMS-QP2020NX)を用いて、層Cの分子イオン及び分解イオンのマススペクトルを測定し、検量線を用いて予め測定された一般化合物スペクトルと照合することで樹脂を定量化することができる。
【0021】
層Bをゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析(以下、GPC分析と称することがあある)した場合における、重量平均分子量が5,000以上30,000以下であることが好ましい。層Bの重量平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による測定値でポリスチレン換算値)が5,000以上30,000以下であるとき、凝集力や、接着強度、特に、高温での接着強度を維持することができるとともに、塗工時の溶融粘度が下がり、層Aに積層する工程において、生産効率が高くなる。また、層Bを被着体に熱接着する際には、接着温度を高くする必要がなくなり、この結果、基材および/または被着体の熱収縮や、分解、溶融等の熱負けを防ぐことができる。また、層BのGPC分析をした場合における重量平均分子量は10,000以上25,000以下であることがより好ましい。
【0022】
層BをGPC分析する方法は次の方法とする。層Bを0.03g採取し、それをテトラヒドロフランで希釈した約15gの約0.2質量%の溶液を用いてGPC測定装置(株式会社島津製作所製Nexra、カラムGPC-801 カラム温度40℃)で測定したGPCクロマトグラムから、ポリスチレンを標準物質として換算することにより求める(JISK7252-1:2016参照)。
【0023】
上記の事情により、層Bは以下の特徴を有することが好適である。すなわち、層Bのガラス転移温度は、低温側が-5℃~25℃であり、高温側が40℃~185℃であり、さらに、層Bの重量平均分子量は5000以上30000以下である。
【0024】
本発明で用いるポリエステル樹脂は、共重合モノマーである酸成分とポリオール成分とから構成されるものであることが好ましい。ポリエステル樹脂は、結晶性であってもよいし、非晶性であってもよい。層Bのポリエステル樹脂を構成する共重合モノマーである酸成分およびポリオール成分は、特に限定されるものではないが、以下の成分が使用できる。酸成分としては、芳香族二塩基性酸、脂肪族二塩基性酸および脂環式二塩基性酸等が使用できる。
【0025】
芳香族二塩基性酸の具体的例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、α-ナフタレンジカルボン酸、β-ナフタレンジカルボン酸、及び、そのエステル形成体等が、脂肪族二塩基性酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ウンデシレン酸、ドデカン二酸、及びそのエステル形成体等が、脂環式二塩基性酸の具体例としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。かかる酸成分のうち、テレフタル酸及びそのエステル形成体が、接着強度の点で好ましく、テレフタル酸の含有割合は、全酸成分に対して30モル%以上であることが好ましい。テレフタル酸成分が30モル%以上であると、樹脂の凝集力や硬さが向上し、接着強度が強くなる。また、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸もポリエステル合成時のゲル化や接着強度を損なわない範囲内で併用することが可能であり、全酸成分に対して5モル%以下の範囲で使用することができる。
【0026】
ポリオール成分としては、脂肪族グリコールや脂環式グリコールの2価アルコールおよび多価アルコールが使用できる。脂肪族グリコールの具体例としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチルペンタンジオール、2,2,3-トリメチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が、脂環式グリコールの具体例としては、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等が挙げられる。また、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールも全アルコール成分に対し、5モル%以下の範囲で使用することができる。二価アルコールとしては、1,4-ブタンジオールを使用することが好ましく、1,4-ブタンジオールの全アルコール成分に対する割合は30モル%以上であることが好ましい。1,4-ブタンジオールが30モル%以上のときは、得られたポリエステル樹脂は、凝集力が強くなり、常温及び高温環境下での接着強度を維持できる。
【0027】
層Bのポリエステル樹脂は、特に限定するものではないが、通常の方法により合成・製造することができる。例えば、原料及び触媒を仕込み、生成物の融点以上の温度で加熱する溶融重合法、生成物の融点以下で重合する固相重合法、溶媒を使用する溶液重合法などがあり、いずれの方法を採用してもよいが、本発明の目的に沿う適度な重合度のポリエステルを得るため、及び、経済性の面から溶融重合法が好ましく、エステル交換法や直接エステル化法により製造されることが好ましい。
【0028】
層Bに含有されるポリエステル樹脂を構成する成分について、ポリオールの合計を100質量%とした場合、繰返し数が3~50であるポリアルキレングリコールを骨格として有する化合物が50質量%以下であることが、ポリエステル系樹脂組成物より得られる層Bの密着力が強くなるため好ましい。同様の観点から繰返し数が3~50であるポリアルキレングリコールを骨格として有する化合物が30質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。当該ポリアルキレングリコールを骨格として有する化合物の含有量が、50重量%以下だと層Bと層Aに対する密着力を高くすることでできる。
【0029】
また、ポリアルキレングリコールの繰返し数は、3~50の範囲であることが好ましい。本態様とすることによりポリエステル系樹脂組成物より得られる層Bと被着体との密着力がより強くなり好ましい。
【0030】
ポリエステル樹脂の構成成分である、繰返し数が3~50であるポリアルキレングリコールを骨格として有する化合物におけるポリアルキレングリコールは、下記式(1)または(2)に示す構造を有することが好ましい。
HO-((CHO)-H (1)
HO-(CHCH((CHCH)O)-H (2)
(ここで、a:2~4、c:0~1、bおよびd:3~50)
この構造を有することにより、ポリエステル系樹脂組成物より得られる層Bと被着体との密着力が強くなる。
【0031】
層Bに含まれ得るポリエステル樹脂以外の樹脂は、エポキシ樹脂を挙げることができる。層Bにエポキシ樹脂が含有されることで、耐熱性や耐水性の向上が見込まれる。
【0032】
また、層Bの厚みは、5~40μmであることが好ましく、より好ましくは10~35μmである。層Bの厚みが5μm~40μmであると層Bと被着体との接着強度の向上により加工時の擦り傷等による層Bの脱落や、層Bにおけるピンホールの発生を抑制することができる。また、スリット刃やトムソン刃等で積層体を所定の大きさに切断する際、スリット刃やトムソン刃の表面に層Bが付着することを防止できる。
【0033】
上記の事情から、層Bは、少なくともポリエステル樹脂を含有し、層Bは2つ以上のガラス転移温度を持ち、層Bの流動開始温度は100℃~150℃であり、さらに、前記層Bの厚みは5~40μmであることが好ましい。
【0034】
(層Aと層D:プラスチックフィルム)
本発明で用いられる層A及び、本発明で用いられ得る層Dとしては、特に制限はないが、例えばプラスチックフィルム、合成紙、紙または表面処理が施された複合シートが好ましく、中でも寸法安定性や耐久性等の点からプラスチックフィルムが好ましい。そのプラスチックフィルムの材質としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ-ρ-フェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられこれらの共重合体やブレンド物やさらに架橋した化合物を用いることもできる。
【0035】
さらに、上記プラスチックフィルムの中でも、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6-ナフタレート、ポリエチレンα,β-ビス(2-クロルフェノキシ)エタン4,4’-ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレートなどからなるフィルムが好ましく、これらの中で機械的特性、作業性などの品質、経済性などを総合的に勘案すると、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムが特に好ましく用いられる。すなわち、層A及び層Dは、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなるものであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなるからフィルムであることがさらに好ましい。
【0036】
本発明に用いる層Aまたは層Dの厚みは特に限定はないが、フレキシブル性を確保する観点から500μm以下が好ましく、引張りや衝撃に対する強度を確保する観点から10μm以上が好ましい。さらに、基材として層Aまたは層Dに前記プラスチックフィルムを用いる場合、フィルムの加工やハンドリングの容易性から、厚みは、20~300μmが好ましく、より好ましくは30~250μmである。
【0037】
(層C:離型層)
本発明に用いられ得る層Cは、離型性を付与するため、シリコーン樹脂を主成分とすることが好ましい。ここで、シリコーン樹脂を主成分とするとは、層Cを構成する全成分を100質量%としたときに、層C中のシリコーン樹脂の含有量が80質量%以上含むことをいう。層Cの主成分をシリコーン樹脂とすることで、離型性を付与できるため、層Bを別の被着体に接着させる際に層Bと層C間で剥離でき層Bを別の被着体に接着できるようになる。
【0038】
ここで、シリコーン樹脂とは従来からシリコーン系離型剤として一般的に知られているシリコーン系化合物を指す。シリコーンとは、有機基(例えばアルキル基やフェニル基など)をもつケイ素と酸素が交互に結合してできた主鎖より成るポリマーである。例えば、基本骨格としてジメチルポリシロキサンを有するシリコーン系化合物がよく知られている。
【0039】
シリコーン樹脂としては、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、付加反応型シリコーン樹脂、縮重合反応型シリコーン樹脂、紫外線硬化型シリコーン樹脂、電子線硬化型シリコーン樹脂、及び無溶剤型シリコーン樹脂が好ましく、生産性を向上させる観点から、付加反応型シリコーン樹脂がさらに好ましく、末端ビニル基を含有するポリジメチルシロキサンとハイドロジェンシロキサンを白金触媒のもとに、加熱硬化させたシリコーン樹脂がより好ましい。
【0040】
層Cをシリコーン樹脂層とすることで、層Cの表面自由エネルギーを30mN/m以下とすることが可能となる。層Cの表面自由エネルギーを30mN/m以下とすることで、層Cを離型層として使用することができ、層Bと層C間で剥離が可能となることで、層A/層B/層C/層D積層体を層A/層Bと層C/層Dで剥離することができ、層Bと別の被着体を接着させることが可能になる。
【0041】
層Cの塗布厚みは、乾燥後塗布厚みで0.02以上0.5μm以下とすることが好ましく、さらには、0.05μm以上0.3μm以下とすることがより好ましい。塗布厚みが0.02μm 以上0.5μm以下にすることで層Cの面内の剥離性能のバラツキを防ぎ、乾燥性後のシリコーン移行量を少なくすることができる。
【0042】
本発明の積層体が層Cおよび層Dを備える場合には、層Cと層Dの間に、密着力向上のためのプライマー層を設けることが好ましい。層Cと層Dとの密着性を向上させ、層Cのシリコーン樹脂やそれ由来の遊離成分が層Bへ転写することを防ぐことができる。層Cのへシリコーン樹脂やそれ由来の遊離成分の転写を防ぐことで、層Cおよび層Dの積層体からの剥離後の層Bと被着体との密着力を維持できる。プライマー層の主成分は有機ケイ素化合物であることが好ましい。有機ケイ素化合物を主成分とするとは、プライマー層を構成する全成分を100質量%としたときに、プライマー層中の有機ケイ素化合物の含有量が80質量%以上含むことをいう。
【0043】
さらに層Cと層Dの密着性を向上させるため、有機ケイ素化合物として、層Cおよび層Dは有機アルミニウム化合物を含有することが好ましい。
【0044】
有機ケイ素化合物としては、γ-メタクリロキシ基含有オルガノアルコキシシラン、エポキシ基含有オルガノアルコキシシラン、ビニル基含有オルガノアルコキシシラン、ビニル基含有アセトキシシランおよびこれらの混合物からなる群より選ばれる有機ケイ素化合物が好ましく用いられる。有機ケイ素化合物の含有される有機アルミニウム化合物としては、(MeO)Al、(EtO)Al、(n-Pro)Alなどのアルミニウムアルコラート、ナフテン酸、ステアリン酸、オクチル酸、安息香酸などのアルミニウム塩、アルミニウムアルコラートにアセト酢酸エステルまたはジアルキルマロネートを反応させて得られるアルミニウムキレート、アルミニウムオキサイドの有機酸塩、アルミニウムアセチルアセトネートなどが挙げられる。これらの中でも、有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムキレートが好ましい。具体的には、有機アルミニウム化合物として、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートヒス(エチルアセトアセテート)が挙げられる。
【0045】
プライマー層の厚みは、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、0.01μm以上0.5μm以下が好ましく、0.02μm以上0.2μm以下がより好ましく、0.04μm以上0.1μm以下がより好ましい。
【0046】
上記の事情により、本発明の積層体は、少なくとも層A、層B、層C、層Dをこの順で有し、かつ、層Cがシリコーン樹脂を含有することが好ましい。
【0047】
(積層体の作製方法)
本発明の積層体の製造方法は特に限定されないが、以下に好適な製造方法について記載する。また、ここで例示する製造方法は、層A、層B、層Cおよび層Dをこの順に備える積層体の製造方法である。
【0048】
本発明の製造方法の好ましい一態様は、以下の工程1~4をこの順に有する態様である。
工程1:層Aの片面に層Bを積層する工程。
工程2:層Dの片面に層Cを積層する工程。
工程3:工程1で作成した層A/層Bの層B面に工程2で作成した層C/層Dを層C面に層B面側にして貼り合わせる工程。
【0049】
<工程1>
工程1は、層Aの片面に層Bを積層する工程である。まず、ポリエステル樹脂含む層Bの塗布組成物を準備する。塗布組成物には塗工性を向上させる観点から有機溶媒を混合することが好ましい。有機溶媒は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、酢酸エチル、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0050】
その後、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、コンマコート法、アプリケーター法、ディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、リバースコート法、キスコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などにより層Bを得るための組成物を塗布することにより層Bを形成することが好ましく、加工性の観点からワイヤーバーコート法、リバースコート法、及びグラビアコート法が更に好ましい。
【0051】
<工程2>
工程2は、層Dの片面に層Cを積層する工程である。まず、シリコーン樹脂を主成分とする層Cの塗布組成物を準備する。塗布組成物には層B同様に基材に対する塗工性を向上させる観点から有機溶媒を混合することが好ましい。有機溶媒は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、酢酸エチル、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0052】
その後、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、コンマコート法、アプリケーター法、ディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、リバースコート法、キスコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などにより層Cを得るための組成物を塗布することにより層Cを形成することが好ましく、加工性の観点からワイヤーバーコート法、リバースコート法、及びグラビアコート法が更に好ましい。
【0053】
<工程3>
工程3は、工程1で作成した層A/層Bの層B面に工程2で作成した層C/層Dを層C面に層B面側にして貼り合わせる工程である。層A/層Bの層B面に層C/層Dの層C面を合わせてラミネートにより貼り合わせることが一般的な作製方法である。ラミネート時は層Bの接着性を向上させるため、ラミネートロールを30℃以上50℃未満に温度設定することが好ましい。また、工程1で作製される層A/層B積層品をロール形状で巻き取ると層Aと層Bが接着する可能性があるため、工程1と工程3は同時に実施されることが好ましい。
【0054】
[積層体の用途]
本発明の積層体を使用し、スリット加工や打ち抜き加工など剪断加工を実施し、その後、層C/層D積層体を剥離し、層A/層Bの層B面に所望の基材を貼り合わせすることができる。例えば、複雑な形状をしている電子デバイス部品や家電製品のヒーター部に好ましく用いられ、金属積層フィルムと別の基材を貼り合せる際に接着剤として用いたり、金属積層フィルムの金属部を保護するカバー材として貼り合せたりすることができる。同時に、接着剤と貼り合せたフィルムを所望の寸法や形状に打抜き加工を行った際に工程を汚さずクリーン化を維持できる。
【0055】
本発明の層Bへのシリコーン樹脂転写量は、層A/層B/層C/層D積層体としてロール状に巻き取られ、温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下で1000時間静置したのち、層C/層D積層体を剥離し、層Bの表面における、波長分散蛍光X線分析で測定されるケイ素元素のピーク強度が0.2kcps以下であることが好ましい。ケイ素元素のピーク強度が0.2kcps以下、より好ましくは0.1kcps以下であることは、層Cのシリコーン樹脂が層Bに転写するのが抑えられ、層Bの接着性が維持されていることを意味し、層Bと被着体との密着性が維持できる。すなわち、上記のとおり、層Cのシリコーン樹脂の層Bへの転写量は0.2kpcs以下であることが好ましい。
【0056】
層Bへのシリコーン樹脂の転写による影響は層C/層D積層体を剥離し、層Bと被着体との密着力を測定することで確認することができる。密着力の測定方法は特に限定されないが、例えば層C/層D積層体を剥離し、層A/層B積層体の層B面に三菱ガス化学社製ポリカーボネート(PC)フィルム“ユーピロン”(登録商標)(タイプNF2000)に積層させた後、株式会社MCK製MLP-600W型ラミネータを使用し、ラミネータ温度130℃、ライン速度0.5m/分、線圧2kgf・cmで熱接着加工行い密着力測定用のサンプルを作成し、その密着力測定用試験片を23℃の恒温室に1時間放置後、(株)島津製作所製オートグラフを用いて、層AとPCフィルムをつまみ剥離角度180度、剥離速度50mm/分の条件で密着力を測定することができ、その密着力は3N/cm以上が好ましく、5N/cm以上がより好ましい。密着力が3N/cm以上だと層Bと被着体を貼り合わせ後に剪断加工した際に層Bと被着体が剥離する、また層Bと被着体が工程搬送中に剥離することを防止できる。なお、この測定で得られた密着力は、表2における「密着力1 常温 (N/cm)」である。そして、本発明の積層体は、積層体の層B面側に被着体を貼り合わせた後に密着力を測定した値が3N/cm以上であるが、ここでいう密着力は「密着力1 常温 (N/cm)」である。
【0057】
また、層Bの常温時の密着力は剪断加工前の接着位置決めの際の仮接着時に必要になるが、この密着力も上記密着力測定サンプル作製時のラミネータ温度を40℃にする以外は上記層Bと被着体の密着力測定サンプル作製と同様にすることでサンプルが作製でき、同様の方法で測定することができる。その密着力は0.1N/cm以上3.0N/cm以下が好ましく、1.0N/cm以上2.0N/cm以下がより好ましい。密着力が0.1N/cm以上3.0N/cm以下にすることで、仮接着時に層Bと被着体が密着でき、工程搬送時の剥離防止につながる。なお、この測定で得られた密着力は、表2における「密着力2 仮接着 (N/cm)」である。
【0058】
また、高温時の層Bと被着体の密着力は上記と同様のサンプルを用い、上記密着力測定に用いられる(株)島津製作所製オートグラフに付属している恒温槽を用いて、120℃環境下での密着力を測定することができ、その密着力は3N/cm以上が好ましく、5N/cm以上がより好ましい。密着力が3N/cm以上だと層Bと被着体を貼り合わせ後に剪断加工した際に層Bと被着体が剥離する、また層Bと被着体が工程搬送中に剥離することを防止できる。なお、この測定で得られた密着力は、表2における「密着力3 高温 (N/cm)」である。
【0059】
本発明の積層体はホットメルト樹脂の被着体への追従性や、被着体の意匠性を損なわないため、常温且つ高温環境下で密着力を維持、かつ透明であることが好ましい。また、水濡れの際にも同様に密着力と透明性を維持することが好ましい。
【0060】
水濡れ時の密着力は積層体を適度な大きさに切り出し、層B面に三菱ガス化学社製ポリカーボネート(PC)フィルムに積層させた後、ラミネータを使用し、ラミネータ温度130℃、ライン速度0.5m/分、線圧2kgf・cmで熱接着加工行い密着力測定用のサンプルを作成し、その密着力測定用試験片を23℃の恒温室に1時間放置する。その後界面活性剤である4級アンモニウム塩を10wt%溶解させた水溶液を準備し、その水溶液を90℃に加熱後、密着力測定用試験片を1時間浸水させる。その後、水溶液より取り出し、(株)島津製作所製オートグラフで層AとPCフィルムをつまみ剥離角度180度、剥離速度50mm/分の条件で接着力測定を行った。なお、この測定で得られた密着力は、表2における「密着力4 耐水性 (N/cm)」である。
【0061】
また本発明の積層体の透明性は、積層体の全光線透過率で求めることができる。その全光線透過率はヘイズメータ(日本電色工業株式会社製SH7000)を用いて、JIS K7361-1:1997に従い、測定することで得られる。そして、得られた全光線透過率は、表2における「全光線透過率(%)」の「常温 20℃」である。この全光線透過率は70%以上99%以下であることが好ましい。この全光線透過率が70%以上99%以下であることで、本発明の積層体を用いて被着体と貼り合わせた後に、被着体の意匠性を維持することができる。
【0062】
更に水濡れの際の透明性は、積層体の全光線透過率で求めることができ、本発明の積層体は、積層体を温度80℃以上の界面活性剤を含む水溶液に浸漬後の全光線透過率は70%以上99%以下である。また、水濡れの際の透明性は、界面活性剤である4級アンモニウム塩を10wt%溶解させた水溶液を準備し、その水溶液を90℃に加熱後、積層体を1時間前記水溶液に浸水させ、水溶液より取り出して30秒以内に測定した全光線透過率が、前記範囲内であることをいう。なお全光線透過率はヘイズメータ(日本電色工業株式会社製 SH7000)を用いて、JIS K7361-1:1997に従い、測定した。なお、この測定で得られた全光線透過率は、表2における「全光線透過率(%)」の「高温 90℃」である。この全光線透過率が70%以上99%以下であると、本発明の積層体を用いて被着体と貼り合わせた後に、高温環境下で水に濡れたとしても積層体が外観不良(白化)を起こさず被着体の意匠性を維持することができる。
【実施例0063】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0064】
(測定および評価方法)
(1)密着力1
本発明の積層体を100mm×100mmの大きさに切り出し、層B面に三菱ガス化学社製ポリカーボネート(PC)フィルム“ユーピロン”(登録商標)(タイプNF2000)に積層させた後、株式会社MCK製MLP-600W型ラミネータを使用し、ラミネータ温度130℃、ライン速度0.5m/分、線圧2kgf・cmで熱接着加工行い密着力測定用のサンプルを作成した。その密着力測定用試験片を23℃の恒温室に1時間放置後、(株)島津製作所製オートグラフを用いて、層AとPCフィルムをつまみ剥離角度180度、剥離速度50mm/分の条件で接着力測定を行った。
【0065】
(2)密着力2
本発明の積層体を100mm×100mmの大きさに切り出し、層B面に三菱ガス化学社製ポリカーボネート(PC)フィルム“ユーピロン”(登録商標)(タイプNF2000)に積層させた後、株式会社MCK製MLP-600W型ラミネータを使用し、ラミネータ温度40℃、ライン速度0.5m/分、線圧2kgf・cmで熱接着加工行い密着力測定用のサンプルを作成した。その密着力測定用試験片を23℃の恒温室に1時間放置後、(株)島津製作所製オートグラフを用いて、層AとPCフィルムをつまみ剥離角度180度、剥離速度50mm/分の条件で密着力測定を行った。
【0066】
(3)密着力3
本発明の積層体を100mm×100mmの大きさに切り出し、層B面に三菱ガス化学社製ポリカーボネート(PC)フィルム“ユーピロン”(登録商標)(タイプNF2000)に積層させた後、株式会社MCK製MLP-600W型ラミネータを使用し、ラミネータ温度130℃、ライン速度0.5m/分、線圧2kgf・cmで熱接着加工行い密着力測定用のサンプルを作成した。その密着力測定用試験片を23℃の恒温室に1時間放置後、(株)島津製作所製オートグラフに付属している恒温槽内でサンプル設置後に120℃に設定し、1時間放置後、恒温槽内で層AとPCフィルムをつまみ剥離角度180度、剥離速度50mm/分の条件で接着力測定を行った。
【0067】
(4)密着力4
本発明の積層体を100mm×100mmの大きさに切り出し、層B面に三菱ガス化学社製ポリカーボネート(PC)フィルム“ユーピロン”(登録商標)(タイプNF2000)に積層させた後、株式会社MCK製MLP-600W型ラミネータを使用し、ラミネータ温度130℃、ライン速度0.5m/分、線圧2kgf・cmで熱接着加工行い密着力測定用のサンプルを作成した。その密着力測定用試験片を23℃の恒温室に1時間放置する。その後、界面活性剤である4級アンモニウム塩を10wt%溶解させた水溶液を準備し、その水溶液を90℃に加熱後、密着力測定用試験片を1時間浸水させる。その後、水溶液より取り出し、(株)島津製作所製オートグラフで層AとPCフィルムをつまみ剥離角度180度、剥離速度50mm/分の条件で接着力測定を行った。
【0068】
(5)層A、層B、層Dの定性および定量評価
〔層A、層B、層Dに含まれる樹脂の定性・定量〕
層A、層B、層Dに含まれる樹脂の定性および定量は、LC/MS/MSを用い以下の手順で分析を行うことにより可能である。LC/MS/MSとはLC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)では分析困難である不揮発性の化合物にも適用可能な質量分析手法である。
【0069】
<層A、層B、層Dに含まれる樹脂の溶液調製>
(a)積層体から層Aもしくは層Bもしくは層Dをそぎとり、そのうちそれぞれ0.04gを25mLメスフラスコに秤量する。
(b)メスフラスコにHFIP(1,1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール)/クロロホルム(1/1)を1mL加えて層Bを溶解させる。
(c)クロロホルムを2mL 加えた後に、アセトニトリルを徐々に加えて樹脂成分を不溶化させる。
(d)アセトニトリルを加え25mLに定容後、調製した溶液をアセトニトリルで100倍希釈する。
(e)調製した100倍希釈液をPTFEディスクフィルター(0.45μm)でろ過して得られたろ液を測定溶液とする。
【0070】
<層Bに含まれる樹脂の定性>
(f)手順(e)で得られた溶液をLC/MS/MSに供し、クロマトグラムからポリエチレンテレフタレート由来、もしくはポリエステル樹脂由来のピークが検出されるリテンションタイムおよびピーク面積を確認する。
(g)層A及び層Dはポリエチレンテレフタレート由来、層Bはポリエステル樹脂由来のピークについてMS分析を行うことで、ポリエチレンテレフタレート由来もしくはポリエステル樹脂由来のイオンの式量を確認する。
【0071】
<標準溶液調製および検量線の作成>
(h)定性済みのポリエチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエステル樹脂の標品(0.01g)を10mLメスフラスコに秤量後、メタノールで溶解して10mLに定容することで標準溶液とする。
(i)標準溶液を分取し、メタノールでそれぞれ希釈することで計4種類の任意の濃度の標準溶液を得る。
(j)手順(i)で得た標準溶液をそれぞれLC/MS/MSに供することで、各濃度に対するクロマトグラムのピーク面積を確認する。
(k)溶液濃度とピーク面積の関係について直線近似することで検量線を得る。
【0072】
<層A、層B、層Dに含まれるポリエチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエステル樹脂の定量>
(l)手順(f)にて把握したピーク面積を手順(k)で得た検量線の式に代入し、層A及び層Dに含まれるポリエチレンテレフタレート樹脂もしくは層Bに含まれるポリエステル樹脂の濃度を算出することでポリエチレンテレフタレート樹脂もしくはポリエステル樹脂の含有量を求める。
【0073】
なお、手順(a)~(g)および(k)、(l)については、n=2で実施し、その平均値を結果とする。
【0074】
本分析は、LCシステム:LC-20A(株式会社島津製作所製)、MSシステム:API4000(株式会社AB SCIEX製)、カラム:Inertsil ODS-3(2.1×150mm、5μm)(ジーエルサイエンス株式会社製)を用い、カラム温度:50℃、流量:0.25mL/min、注入量:1μL、イオン化法:APCI(大気圧化学イオン化法)、検出:正イオン検出、測定モード:SRM(Selected reaction monitoring)の条件にて実施する。
【0075】
(6)層BをGPC分析した場合における重量平均分子量
本発明の積層体を準備し、積層体から層Bを0.03g採取する。それをテトラヒドロフランで希釈した約15gの約0.2質量%の溶液を用いてGPC測定装置(株式会社島津製作所製Nexra、カラムGPC-801 カラム温度40℃)で測定したGPCクロマトグラムから、ポリスチレンを標準物質として換算することにより求めた。なお、本明細書において、GPCとは、ゲル浸透クロマトグラフィーを意味する。
【0076】
(7)層Bの流動開始温度
本発明の積層体を準備し、層Aから層Bを除去、採取したのちに有機溶媒を揮発させて、層B組成物を作成する。そして、(株)島津製作所社製示差走査熱量計「DSC-60 Plus」を使用し、昇温速度10℃/minで常温から400℃までの熱量を測定し、そのピークから融点を測定した。流動開始温度が複数確認できた場合は一番温度が低い値を流動開始温度とした。
【0077】
(8)層B厚み測定
本発明の積層体を準備し、積層体の厚みを測定したうえで(測定結果をaとする)、層Bを除去後に層Aの厚みを測定し(測定結果をbとする)、a-bを計算することで層Bの厚みを測定した。(株)ミツトヨ製、ダイヤルゲージ(7-547シリーズ、7050)を用いて測定し、サンプルは10cm角に切り出して、1つのサンプルで3回測定を行い、得られた値の平均値でもって評価した。
【0078】
(9)層Bのガラス転移温度測定
本発明の積層体を準備し、層を0.1gそぎ取り、示差走査熱量測定装置(DSC)(株式会社パーキンエルマージャパン製DSC6500)を用い、JIS K 7121:2012に従い測定を実施した。ガラス転移温度が複数確認できた場合は一番温度が低い値を低温側の値、一番高い値を高温側の値とした。
【0079】
(10)積層体の全光線透過率(常温時及び高温時)
本発明の積層体を準備し、5cm×5cmに切り出しヘイズメータ(日本電色工業株式会社製 SH7000)を用いて、JIS K7361-1:1997に従い、常温時の全光線透過率を測定した。次に、界面活性剤である4級アンモニウム塩を10wt%溶解させた水溶液を準備し、その水溶液を90℃に加熱後、切り出した積層体を1時間浸水させる。水溶液より取り出して30秒以内にヘイズメータ(日本電色工業株式会社製 SH7000)を用いて、JIS K7361-1:1997に従い、高温時の全光線透過率を測定した。
【0080】
(11)層C表面におけるケイ素元素のピーク強度
本発明の積層体から層C/層D積層体を無作為に抽出した3箇所で50mm×50mmの正方形状に積層体を切り出した。それを波長分散型蛍光X線分析装置(株式会社リガク製、製品名「Mini-Z」、出力200W)を用いて、得られた層C表面におけるケイ素元素のピーク強度を測定し、3箇所の平均値を算出した。
【0081】
(12)層B表面におけるケイ素元素のピーク強度
ロール状に巻き取った本発明の積層体を25℃50%RH雰囲気下で1000時間静置したのち、ロールから無作為に抽出した3箇所で50mm×50mmの正方形状に積層体を切り出して、積層体から層C/層Dを剥離後に層A/層B積層体をサンプルとした。波長分散型蛍光X線分析装置(株式会社リガク製、製品名「Mini-Z」、出力200W)を用いて、得られた層B表面におけるケイ素元素のピーク強度を測定し、3箇所の平均値を算出した。
【0082】
(実施例1)
〔各部材の作成方法〕
各部材の作成方法について以下に説明する。
【0083】
まず、層Bを形成するための塗布液として流動開始温度が128℃で重量平均分子量が22,000、ガラス転移温度が10℃の熱可塑性の結晶性ポリエステル樹脂A(三菱ケミカル(株)製“ポリエスター”(商標登録)SP-182)(以下、樹脂Aと称することがある)と流動開始温度が114℃で重量平均分子量が16,000、ガラス転移温度が65℃の熱可塑性で非結晶性ポリエステル樹脂B(三菱ケミカル(株)製“ポリエスター”(商標登録)TP-235)(以下、樹脂Bと称することがある)を準備し、樹脂A/樹脂Bを7/3(重量比)で混合した層B組成物を作製し、さらにトルエン/メチルエチルケトン(MEK)/塩化メチレン=4/1/1(質量比)に溶解した25質量%の塗布液Hを用意した。
【0084】
次に、積層体である層C/層Dを以下の手順にて作製した。まず、ダウ・東レ株式会社製“DOWSIL”(登録商標)“LTC”(登録商標)750A、付加反応型シリコーン樹脂を90質量%、ダウ・東レ株式会社製“DOWSIL”(登録商標)SRX212Catalystを10質量%で混合し、層C塗布組成物を作製した。次いで、この層C塗布組成物をメチルエチルケトンに溶解して、ホモディスパー(プライミクス株式会社製)を用いて混合分散し、固形分3.0質量%層C調整溶液とした。また、東レ(株)製ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム“ルミラー”(登録商標)(タイプS10)(厚み38μm)を層Dとし、前記層Dの片面表面に、前記層C調整溶液をグラビアコート法で塗工し、120℃で乾燥後、厚み0.05μmの撥水層を有する層C/層Dの積層体を得て、これをロール状に巻き取った。
【0085】
また、東レ(株)製ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム“ルミラー”(登録商標)(タイプT60)(厚み100μm)を層Aとし、上記の塗布液Hをコンマコータにて上記層Aの片面に塗布し、120℃で2分間乾燥した後、層A/層Bを作製後に前記層C/層D積層体を層C面が層B面と向い合せに貼り合わせることで積層体1を作製した。その時の層Bの厚みは16μmであった。
【0086】
各層の組成、表1に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にして積層体を製造し、同様に評価した。評価結果を表2に示す。
【0087】
(実施例2)
結晶性ポリエステル樹脂Aの代わりに流動開始温度が120℃で重量平均分子量が10,000、ガラス転移温度が10℃の熱可塑性の結晶性ポリエステル樹脂C(三菱ケミカル(株)製“ポリエスター”(商標登録)SP-180)を準備し、層B組成物を作製し、さらにトルエン/MEK(メチルエチルケトン)/塩化メチレン=4/1/1(質量比)に溶解した25質量%の塗布液Iを用意した以外は実施例1と同様にし、積層体2を作成した。
【0088】
(実施例3)
非結晶性ポリエステル樹脂Bの代わりに流動開始温度が125℃で重量平均分子量が16,000、ガラス転移温度が70℃の熱可塑性の非結晶性ポリエステル樹脂D(三菱ケミカル(株)製“ポリエスター”(商標登録)TP-220)を準備し、層B組成物を作製し、さらにトルエン/MEK(メチルエチルケトン)/塩化メチレン=4/1/1(質量比)に溶解した25質量%の塗布液Jを用意した以外は実施例1と同様にし、積層体3を作成した。
【0089】
(実施例4)
層Bの厚みを32μmにする以外は実施例1と同様にし、積層体4を作成した。
【0090】
(実施例5)
結晶性ポリエステル樹脂Aの代わりに流動開始温度が150℃で重量平均分子量が22,000、ガラス転移温度が15℃の熱可塑性の結晶性ポリエステル樹脂E(三菱ケミカル(株)製“ポリエスター”(商標登録)SP-181)を準備し、層B組成物を作製し、さらにトルエン/MEK(メチルエチルケトン)/塩化メチレン=4/1/1(質量比)に溶解した25質量%の塗布液Kを用意した以外は実施例1と同様にし、積層体5を作成した。
【0091】
(実施例6)
非結晶性ポリエステル樹脂Bの代わりに流動開始温度が109℃で重量平均分子量が16,000、ガラス転移温度が40℃の熱可塑性の非結晶性ポリエステル樹脂F(三菱ケミカル(株)製“ポリエスター”(商標登録)TP-217)を準備し、層B組成物を作製し、さらにトルエン/MEK(メチルエチルケトン)/塩化メチレン=4/1/1(質量比)に溶解した25質量%の塗布液Lを用意した以外は実施例1と同様にし、積層体6を作成した。
【0092】
(実施例7)
重量平均分子量が20,000、ガラス転移温度が156℃のポリカーボネート樹脂G(三菱ガス化学(株)製“ユピゼータ”(商標登録)FPC-8225)(以下、樹脂Gと称することがある。)を準備し、樹脂A/樹脂B/樹脂Gを7/2/1(重量比)で混合した層B組成物を作製し、層B組成物を作製し、さらにトルエン/MEK(メチルエチルケトン)/塩化メチレン=4/1/1(質量比)に溶解した25質量%の塗布液Mを用意した以外は実施例1と同様にし、積層体6を作成した。
【0093】
(実施例8)
層C塗布組成物をメチルエチルケトンに溶解して、ホモディスパー(プライミクス株式会社製)を用いて混合分散し、固形分10.0質量%層C調整溶液とした。前記層Dの片面表面に、前記層C調整溶液をグラビアコート法で塗工し、120℃で乾燥後、厚み1.0μmの撥水層を有する層Cにした以外は実施例1と同様にし、積層体7を作成した。
【0094】
(比較例1)
結晶性ポリエステル樹脂Aの代わりに流動開始温度が98℃で重量平均分子量が19,000、ガラス転移温度が-20℃の熱可塑性の結晶性ポリエステル樹脂H(三菱ケミカル(株)製“ポリエスター”(商標登録)SP-170)を準備し、層B組成物を作製し、さらにトルエン/MEK(メチルエチルケトン)/塩化メチレン=4/1/1(質量比)に溶解した25質量%の塗布液Nを用意した以外は実施例1と同様にし、積層体8を作成した。
【0095】
(比較例2)
非結晶性ポリエステル樹脂Bの代わりに流動開始温度が65℃で重量平均分子量が16,000、ガラス転移温度が4℃の熱可塑性の非結晶性ポリエステル樹脂I(三菱ケミカル(株)製“ポリエスター”(商標登録)LP-011)を準備し、層B組成物を作製し、さらにトルエン/MEK(メチルエチルケトン)/塩化メチレン=4/1/1(質量比)に溶解した25質量%の塗布液Oを用意した以外は実施例1と同様にし、積層体9を作成した。
【0096】
(比較例3)
結晶性ポリエステル樹脂Aの代わりに非結晶性ポリエステル樹脂Bを使用した以外は実施例1と同様にし、積層体10を作成した。
【0097】
(比較例4)
非結晶性ポリエステル樹脂Bの代わりに結晶性ポリエステル樹脂Aを使用した以外は実施例1と同様にし、積層体11を作成した。
【0098】
(比較例5)
結晶性ポリエステル樹脂Aの代わりに流動開始温度が70℃で重量平均分子量が3000、ガラス転移温度が40℃の熱可塑性の非結晶性ポリエステル樹脂J(三菱ケミカル(株)製“ポリエスター”(商標登録)TP-219)を用い、非結晶性ポリエステル樹脂Bの代わりに結晶性ポリエステル樹脂C(三菱ケミカル(株)製“ポリエスター”(商標登録)SP-180)を用いた以外は実施例1と同様にし、積層体12を作成した。
【0099】
(比較例6)
結晶性ポリエステル樹脂Aの代わりに流動開始温度が65℃で重量平均分子量が16,000、ガラス転移温度が4℃の熱可塑性の非結晶性ポリエステル樹脂I(三菱ケミカル(株)製“ポリエスター”(商標登録)LP-011)(以下、樹脂Iと称することがある)を準備し、架橋剤としてイソシアネート樹脂J(以下、樹脂Jと称することがある)を準備し、樹脂I/樹脂B/樹脂Jを70/26/4(重量比)で混合した層B組成物を作製し、層B組成物を作製し、さらにトルエン/MEK(メチルエチルケトン)/塩化メチレン=4/1/1(質量比)に溶解した25質量%の塗布液Pを用意した以外は実施例1と同様にし、積層体13を作成した。
【0100】
(比較例7)
層Bの厚みを1μmにする以外は実施例1と同様にし、積層体14を作成した。
【0101】
(比較例8)
層Bの厚みを50μmにする以外は実施例1と同様にし、積層体15を作成した。
【0102】
実施例1~7に示す積層体はいずれも密着力1、密着力2、密着力3、密着力4を満足している。これに対し、比較例1、比較例2、比較例3、比較例5、比較例7に示す積層体は実施例1と比較して、高温環境下での密着力(密着力3)が低下することが確認できた。比較例4に示す積層体は実施例1と比較して、常温環境下での密着力(密着力1)が不十分であることが確認できた。比較例8に示す積層体は実施例1と比較して、常温環境下での密着力(密着力2)が高すぎるため、仮接着時の密着力が高く、剥離ができないことが確認できた。比較例6に示す積層体は実施例1と比較して、浸水後の密着力(密着力4)が不十分であることが確認できた。実施例1~7および比較例1~8の結果を表1および表2に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【符号の説明】
【0105】
1:層A
2;層B
3:層C
4:層D
図1
図2