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  • 特開-樹脂組成物 図1
  • 特開-樹脂組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084961
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/00 20060101AFI20240619BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
C08L51/00
C08L27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199190
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】502269354
【氏名又は名称】大同化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】古賀 重宏
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD04X
4J002BD08Y
4J002BN12W
4J002FB28W
(57)【要約】
【課題】機械的物性に優れた塩化ビニル樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】塩化ビニル樹脂0~90重量%と、酢酸ビニル含有量1.0~20.0重量%を含む塩化ビニル・酢酸ビニル共重合物100~10重量%の合計100重量部に対して、架橋成分を含むコア層とアクリル酸系樹脂又はメタクリル酸系樹脂とこれらのアルキルエステルとの共重合物を含むシェル層とからなる軟質アクリル系ゴム状樹脂を30~200重量部を含む、樹脂組成物とした
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂0~90重量%と、酢酸ビニル含有量1.0~20.0重量%を含む塩化ビニル・酢酸ビニル共重合物100~10重量%の合計100重量部に対して、架橋成分を含むコア層とアクリル酸系樹脂又はメタクリル酸系樹脂とこれらのアルキルエステルとの共重合物を含むシェル層とからなる軟質アクリル系ゴム状樹脂を30~200重量部を含む、樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。特に、軟質塩化ビニル樹脂のもう一つの主成分である液状可塑剤に起因する諸問題の解決とそのリサイクルを容易にする樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル樹脂と液状可塑剤よりなる軟質塩化ビニル樹脂組成物は、そのバランスの取れた物性と価格の安さで広範囲で使用されている。近年液状可塑剤に起因する衛生安全問題や環境汚染問題で使用を忌避する動きも出てきている(例えばROHS対応)。これは可塑剤が主に液状成分であるため、可塑剤が使用中に軟質塩化ビニル樹脂組成物の表面に吹き出したり(ブリード)、軟質塩化ビニル樹脂組成物に接触した他の物質に移行(マイグレーション)したり、長期間の屋外使用で飛散することによるものである。これら問題を解決するために、軟質塩化ビニル樹脂組成物については、各種の共重合や混合物等が提案されている。
【0003】
ここで、塩化ビニル樹脂と相溶性のある樹脂としてアクリル系樹脂が挙げられる。しかし、アクリル系樹脂は、本質的には硬質系樹脂であり、軟質化するための各種共重合が試みられ、一定の成果は得られているが、軟質塩化ビニル樹脂組成物のような弾性に欠けるという課題があった。この課題は、架橋部分を含むコア部分と柔軟性のあるシェル部分とを有する二重構造を持つアクリル系ゴム状樹脂の開発によりかなり解決された(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-221711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、他の樹脂、特にアクリル系樹脂と相溶性の良いとされる塩化ビニル樹脂との組成物においては、上述したアクリル系ゴム状樹脂の場合、コア部分の架橋成分が異物的役割を果たし、上述した軟質塩化ビニル樹脂組成物の機械的物性(相溶性、引張強度、伸び等)が損なわれるという課題が生じた。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものでありアクリル系樹脂、特にアクリル系ゴム状樹脂を含む塩化ビニル樹脂組成物において、機械的物性に優れた塩化ビニル樹脂組成物、特に軟質塩化ビニル樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂0~90重量%と、酢酸ビニル含有量1.0~20.0重量%を含む塩化ビニル・酢酸ビニル共重合物100~10重量%の合計100重量部に対して、架橋成分を含むコア層とアクリル酸系樹脂又はメタクリル酸系樹脂とこれらのアルキルエステルとの共重合物を含むシェル層とからなる軟質アクリル系ゴム状樹脂を30~200重量部を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来の塩化ビニル樹脂組成物に関する液状可塑剤に起因する問題を解決するとともに、機械的物性に優れた塩化ビニル樹脂組成物を提供することができる。また、軟質塩化ビニル樹脂は、最もリサイクルし易い樹脂と言われてきが、上述した液状可塑剤に起因する問題がリサイクルの障害になっていた。しかし、本発明により、液状可塑剤に起因する問題が解決したことにより、リサイクルは格段にしやすくなった。さらに、可塑剤の劣化も少なくなるので水平リサイクル(元の製品に戻す)の可能性が高くなった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る樹脂組成物の実施例を示す図である。
図2】比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されない。なお、本明細書において、数値の範囲を「A~B」と記載する場合、A以上B以下の範囲、又は、A以下B以上の範囲であることを意味する。
【0011】
[塩化ビニル樹脂]
塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル単量体の重合によって得られた単独重合体である。重合度は、特に限定はないが、400~3000であることが好ましい。
【0012】
[塩化ビニル・酢酸ビニル共重合物]
塩化ビニル・酢酸ビニル共重合物は、主成分である塩化ビニル(モノマー)と酢酸ビニル(モノマー)を、懸濁重合して生成する共重合物である。酢酸ビニル(モノマー)を1.0~20.0重量%を含むのが好ましい。酢酸ビニルの含有量が1.0重量%未満では、機械的物性(相溶性、引張強度、伸び等)が損なわれる虞があり、20.0重量%を超えると技術的課題が多くなる。
【0013】
[アクリル系樹脂]
アクリル系樹脂としては、アクリル酸系樹脂、メタクリル酸系樹脂、アクリル系ゴム状樹脂等が挙げられるが、この中でもアクリル系ゴム状樹脂が好ましい。アクリル系ゴム状樹脂は、特に限定はないが軟質アクリル系ゴム状樹脂が好ましい。軟質アクリル系ゴム状樹脂は、アクリル系樹脂を主成分とし、このアクリル系樹脂にアクリロニトリル等を共重合させた架橋ゴム粒子からなるコア部分に、アクリル酸系モノマー又はメタクリル酸系モノマーをグラフト重合させたシェル層の二重構造を有する粒子よりなる。シェル層は、例えば、アクリル酸系樹脂又はメタクリル酸系樹脂に各種アクリル酸系アルキルエステル又は各種メタクリル酸系アルキルエステルをグラフト共重合することによって軟質化がはかられている。従って軟質アクリル系ゴム状樹脂を単独で使用する場合は、その特性が充分に発揮され機械的性能においても特に問題はない。しかし、他の樹脂と混合使用される場合は、架橋部分の分散性の問題が生ずる。特に塩化ビニル樹脂との混合・混錬においては機械的性能(引張強度、伸び)を低下させるという問題が生じる。これは、コア部分にある架橋アクリル成分が異物的役割をして、機械的性能(引張強度、伸び等)を低下させるためである。
【0014】
[配合割合]
本実施形態の樹脂組成物は、上記塩化ビニル樹脂0~90重量%と、酢酸ビニル含有量1.0~20.0重量%を含む上記塩化ビニル・酢酸ビニル共重合物100~10重量%との合計100重量部に対して、架橋成分を含むコア層とアクリル酸系樹脂又はメタクリル酸系樹脂とこれらのアルキルエステルとの共重合物を含む含むシェル層とからなる軟質アクリル系ゴム状樹脂を30~200重量部を含む。
【0015】
また、上記軟質アクリル系ゴム状樹脂は、好ましい範囲としては40~150重量部である。アクリル系ゴム状樹脂が30重量部以下ではJIS A硬度が95以上となり、実質硬質系組成物となり軟質用途には適さない。一方、アクリル系ゴム状樹脂が200重量部以上になると塩化ビニル樹脂の特性(難燃性、耐久性、コストパフォーマンス等)が失われる。
【0016】
本実施形態の樹脂組成物は、添加剤を含有していてもよい。添加剤は、公知の添加剤が使用できる。例えば、塩化ビニル樹脂用の各種安定剤、アクリル樹脂用の酸化防止剤、滑剤、スリップ剤、帯電防止剤、顔料、無機及び有機の充填剤が挙げられる。
【実施例0017】
続いて、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例により限定されるものではない。
【0018】
[実施例1~6]
塩化ビニル樹脂(カネカ社製 商品名:S-1001)90~0重量%の範囲内で、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合物(カネカ社製 商品名:M1008)10~100重量%の範囲内で、合わせて100重量部に対して、アクリル系ゴム状樹脂(クラレ社製 商品名:パラペットSA-CW001)を40~150重量部の範囲内で、及び安定剤(大協化成社製MW-614)を図1に示した割合で準備し、ロール温度160℃でセットした6インチロールに投入した。その後、約10分間混錬した後、厚み約0.5mmのシートを作成した。このシートをJIS A6008に準じて、引張試験機(島津製作所製オートグラフAGS-X型)にて引張強度、伸び、引き裂き強度を測定した。又JIS A6301に準じて硬度、比重の測定を行った。結果を図1に示す。
【0019】
[比較例1]
塩化ビニル樹脂(カネカ社製 商品名:S-1001)100重量部に対して、アクリル系ゴム状樹脂(クラレ社製パラペットSA-CW001)40重量部、安定剤(大協化成社製MW-614)3.8重量部を準備し、ロール温度160℃でセットした6インチロールに投入した。その後、約10分間混錬した後、厚み約0.5mmのシートを作成した。このシートをJIS A6008に準じて引張試験機(島津製作所製オートグラフAGS-X型)にて引張強度、伸び、引き裂き強度を測定した。又JIS A6301に準じて硬度、比重の測定を行った。結果を図2に示す。
【0020】
[比較例2及び3]
塩化ビニル樹脂と液状可塑剤を使用した場合の機械的物性をチェックするため、比較例1で使用した塩化ビニル樹脂100重量部に対して、アクリル系ゴム状樹脂(クラレ社製パラペットSA-CW001)、及び安定剤を図2に示した割合で準備し、比較例1と同様の方法で厚み約0.5mmのシートを作成した。このシートを比較例1と同様の測定方法で、引張強度、伸び、引き裂き強度、硬度、及び比重の測定を行った。結果を図2に示す
【0021】
図1図2示すように、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合物を含む塩化ビニル樹脂組成物にアクリル系ゴム状樹脂を混合混錬した組成物の方が(実施例1~実施例6)、塩化ビニル樹脂組成物にアクリル系ゴム状樹脂を混合混錬した組成物(比較例1から比較例3)より、引張強度、伸び、引裂強度等の機械的物性が全体的に改善されていることがわかる。
【0022】
以上、実施形態及び実施例について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、本発明に係る樹脂組成物は、通常の混合設備、例えばヘンシェルミキサー(商品名)、スーパーミキサー(商品名)リボンブレンダー等を用いて混合し、通常は押出し機で造粒されて、射出成型法、押出し成型法、ブロー成型法、カレンダー成型法等により目的とする成形品又は製品に供される。


図1
図2