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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084964
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】固体撮像装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199194
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】515026362
【氏名又は名称】タワー パートナーズ セミコンダクター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504168846
【氏名又は名称】タワー セミコンダクター リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TOWER SEMICONDUCTOR LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】横山 敏史
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA01
4M118AB01
4M118BA09
4M118CA02
4M118CA34
4M118EA14
4M118FA06
4M118FA27
4M118GB03
4M118GB07
4M118GC08
4M118GD04
4M118GD20
(57)【要約】
【課題】固体撮像装置において、画質の低下を抑制しながら量子効率を向上する。
【解決手段】固体撮像装置50は、基板1上に、2次元マトリクス状に配列された複数の画素30を備える。それぞれの画素30は、光電変換を行う受光部2と、受光部2に光を集光するマイクロレンズ10と、受光部2及びマイクロレンズ10の間に少なくとも1つ設けられた光散乱構造6とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、2次元マトリクス状に配列された複数の画素を備え、
それぞれの前記画素は、光電変換を行う受光部と、当該受光部に光を集光するマイクロレンズと、前記受光部及び前記マイクロレンズの間に少なくとも1つ設けられた光散乱構造とを有することを特徴とする固体撮像装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記光散乱構造の屈折率は、当該光散乱構造の周囲の屈折率よりも低いことを特徴とする固体撮像装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記光散乱構造を構成する材料の屈折率は、当該光散乱構造の周囲の材料の屈折率よりも0.3以上低いことを特徴とする固体撮像装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記光散乱構造は、空隙からなることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項5】
請求項1又は2において、
前記光散乱構造は、中空のシリカからなることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項6】
請求項1又は2において、
前記受光部と前記マイクロレンズとの間にブルーフィルタが設けられ、
前記光散乱構造は、前記ブルーフィルタ内に設けられていることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項7】
請求項1又は2において、
前記光散乱構造は、顔料凝集体からなることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記光散乱構造は、前記画素毎に1つ設けられていることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項9】
請求項1又は8において、
前記光散乱構造は、前記受光部近傍に設けられていることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項10】
請求項1又は8において、
前記光散乱構造は、前記基板表面に対して垂直な方向から見たとき、前記受光部の中央付近に設けられていることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項11】
請求項1又は8において、
前記光散乱構造は、前記基板表面に対して垂直な方向に長い形状であることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項12】
請求項1又は8において、
前記光散乱構造は、前記基板表面に対して垂直な方向から見たとき、複数の鋭角を伴う形状であることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項13】
請求項1又は8において、
前記光散乱構造は、前記基板表面に対して垂直な方向から見たとき、十字型であることを特徴とする固体撮像装置。
【請求項14】
基板上に、2次元マトリクス状に配列された複数の受光部を形成する工程と、
それぞれの前記受光部上に、光散乱構造を形成する工程とを備えることを特徴とする固体撮像装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14において、
前記光散乱構造を形成する工程は、
前記受光部上を覆う第1の材料膜を形成する工程と、
前記第1の材料膜をパターニングして、それぞれの前記受光部上に所定形状の第1の材料膜を残す工程と、
前記第1の材料膜よりも屈折率の大きい第2の材料膜を形成し、パターニングされた前記第1の材料膜の周囲を覆う工程とを備えることを特徴とする固体撮像装置の製造方法。
【請求項16】
請求項14において、
前記光散乱構造を形成する工程は、
前記基板上に、それぞれの前記受光部の周囲を囲む遮光層を形成することにより、前記受光部上に凹部を構成する工程と、
等方性の化学的気相成長法により、前記遮光層の側面及び上面に材料膜を成膜することにより、前記受光部上に空隙を残しながら前記凹部を埋め込む工程とを備えることを特徴とする固体撮像装置の製造方法。
【請求項17】
請求項14において、
前記光散乱構造を形成する工程は、
前記基板上に、中空シリカ又は顔料凝集体が含まれるレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜をパターニングする工程とを含むことを特徴とする固体撮像装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体撮像装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、監視、測距、認証、車載及びセンシング等の用途に適することから、近赤外光(波長700~1100nm付近)に対して高感度なイメージセンサが要望されている。特に、波長940nm付近において高感度なイメージセンサへの要求が大きい。これは、地表に到達する太陽光の波長スペクトルにおいて波長940nm付近の成分が少ないので、昼間の撮像において太陽光の影響を受けにくいからである。
【0003】
従来、固体撮像装置では、基板に2次元マトリクス状に配列して形成された画素毎にフォトダイオード(PD)が形成されている。また、集光のために画素毎にマイクロレンズが形成される。マイクロレンズにより集光された光は、Si基板を用いた場合、その屈折率が4程度と高いので、基板に対してほぼ垂直に入射する。各PDでは、入射した光の受光量に応じて信号電荷が生成される。
【0004】
ここで、近赤外光は、イメージセンサにSi基板を用いた場合、吸収されにくい。特に、波長940nm付近では、一般的なイメージセンサにおける量子効率は20%程度である。この量子効率を上げる手段としては、フォトダイオードの深さを大きくすることが一般的である。しかし、吸収を十分にするには深さ10μm以上を要する。また、PDの深さを大きくすると、隣接画素との混色が大きくなる弊害が生じる。
【0005】
以上に対し、特許文献1には、Si基板の表面に周期的な凹凸(例えば逆ピラミッド状の凹凸)を形成する。これにより基板表面にて光を屈折させ、基板内における光路長を長くする技術が開示されている。この技術によると、Si基板内において入射光の吸収が多くなり、量子効率が改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-001633号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の構造では、Si基板表面を直接加工するので、界面準位が不安定化する。これは暗電流及び白キズ(白点)が増加して画質が低下する原因になるので、Si基板表面の界面準位を修復することが必要となる。また、凹凸の形状が逆ピラミッド状であることから、入射角特性が不規則になり、出力される画像にシェーディング、モアレ等が発生しやすく、画質低下の原因となる。
【0008】
本開示は、画質の低下を抑制しながら、量子効率を向上可能な固体撮像装置及びその製造方法を実現する技術を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の固体撮像装置は、基板上に、2次元マトリクス状に配列された複数の画素を備える。それぞれの画素は、光電変換を行う受光部と、当該受光部に光を集光するマイクロレンズと、受光部及びマイクロレンズの間に少なくとも1つ設けられた光散乱構造とを有する。
【0010】
本開示の固体撮像装置の製造方法は、基板上に、2次元マトリクス状に配列された複数の受光部を形成する工程と、それぞれの受光部上に、光散乱構造を形成する工程とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によると、固体撮像装置において、画質の低下を抑制しながら量子効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の第1の実施形態の固体撮像装置の断面を模式的に示す図である。
図2図2は、比較例の固体撮像装置の断面を示す図である。
図3図3は、一般的なイメージセンサにおける分光特性を示す図である。
図4図4は、本開示の固体撮像装置における入射角特性を示す図である。
図5図5は、従来例の固体撮像装置における入射角特性を示す図である。
図6図6は、カラーフィルタの屈折率の波長依存性を示す図である。
図7図7は、本開示の第1の実施形態の変形例の固体撮像装置の断面を模式的に示す図である。
図8図8は、本開示の実施形態の固体撮像装置の模式的な平面図である。
図9図9は、本開示の実施形態の固体撮像装置の模式的な平面図である。
図10図10は、本開示の実施形態の固体撮像装置の模式的な平面図である。
図11図11は、本開示の第2の実施形態の固体撮像装置の断面を模式的に示す図である。
図12図12は、本開示の実施形態の固体撮像装置における量子効率について示す図である。
図13図13は、本開示の実施形態の固体撮像装置における量子効率について示す図である。
図14図14は、本開示の固体撮像装置の製造方法を示す図である。
図15図15は、図14に続く固体撮像装置の製造方法を示す図である。
図16図16は、図15に続く固体撮像装置の製造方法を示す図である。
図17図17は、図15に続く固体撮像装置の製造方法を示す図である。
図18図18は、本開示の固体撮像装置の他の製造方法を示す図である。
図19図19は、図18に続く固体撮像装置の製造方法を示す図である。
図20図20は、図19に続く固体撮像装置の製造方法を示す図である。
図21図21は、本開示の更に他の固体撮像装置の他の製造方法を示す図である。
図22図22は、図22に続く固体撮像装置の製造方法を示す図である。
図23図23は、図22に続く固体撮像装置の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、本開示の技術が以下の実施形態に限定されるものではなく、効果を奏する範囲において適宜変更可能である。
【0014】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態の例示的固体撮像装置50について、断面を模式的に示す図である。固体撮像装置50は、例えばシリコン基板である基板1上に、2次元マトリクス状に配列された複数の画素30を備える。図1では、2つの画素30について断面が示されている。
【0015】
それぞれの画素30は、基板1の表面近傍に設けられ、入射光31に応じて光電変換により電荷を発生させる受光部2を備える。受光部2は、例えばフォトダイオードである。受光部2を囲むように、基板1にDTI(Deep Trench Isolation)領域3が形成されている。DTI領域3は、画素30同士を区切る領域となっている。
【0016】
基板1上には、絶縁膜4が形成されている。絶縁膜4は、絶縁膜下層4a及びその上の絶縁膜上層4bからなる。絶縁膜下層4aは、HfO、SiO等により形成され、基板1表面の界面準位を安定化させて、暗電流及び白キズ(白点)の発生を抑制している。絶縁膜上層4bは、屈折率が高く紫外線波長域まで透明なSiN膜等により形成され、反射防止の効果を担っている。絶縁膜4上には、SiO等からなる保護膜5が形成されている。
【0017】
受光部2を囲むように、DTI領域3の上方に、遮光層7が形成されている。遮光層7により、受光部2上方には凹部が構成されている。尚、保護膜5は、遮光層7の側面及び上面も覆っている。
【0018】
受光部2上方に構成された前記の凹部を埋め込むように、カラーフィルタ8が形成されている。カラーフィルタ8は、画素30毎に所定の色を有しており、全体としてその上面には凹凸が生じ得る。これに対し、カラーフィルタ8上を覆うように平坦化膜9が設けられている。平坦化膜9の平坦な上面に対し、マイクロレンズ10が形成されている。尚、固体撮像装置50は近赤外光及び可視光の両方から画像を取得することができるものであり、カラーフィルタ8は可視光による画像に利用される。
【0019】
また、受光部2とマイクロレンズ10との間において、光散乱構造6が設けられている。より具体的には、光散乱構造6は、カラーフィルタ8内に設けられている。この例では、光散乱構造6は、高さ方向(基板1の表面に垂直な方向)について受光部2に近い位置であり、また、基板1の表面に垂直な方向から見たとき(つまり、平面図において)、受光部2の中央付近に位置する。光散乱構造6の屈折率は、周囲(この例ではカラーフィルタ8)の屈折率よりも低く設定されている。
【0020】
図1の左側の画素30に示すように、固体撮像装置50に対する入射光31は、マイクロレンズ10によって集光される。入射光31は、平坦化膜9、カラーフィルタ8等を透過し、光散乱構造6に入射する。光散乱構造6において、屈折率差により反射、回折及び散乱が発生し、様々な角度で受光部2に入射する。この結果、受光部2内を進む入射光の実効的な光路長が長くなり、近赤外線の吸収量が増えて、量子効率が向上する。
【0021】
遮光層7及びDTI領域3を備えることにより、この効果は大きくなる。この理由として、まず、DTI領域3は、基板1にエッチング等により形成した溝に絶縁膜を充填した構造であり、DTI領域3と基板1とでは屈折率が異なる。この屈折率差により、光散乱構造6によって斜めに散乱した入射光が反射され、受光部2に戻る。この結果、更に受光部2内における光路長が長くなり、量子効率が向上する。これについても、図1に入射光31の散乱及び反射を矢印にて例示する通りである。
【0022】
図2には、比較例の固体撮像装置51を示す。これは、光散乱構造6を備えないことを除いて、本実施形態の固体撮像装置50(図1)と同様である。光散乱構造6を備えないので、マイクロレンズ10により集光された入射光は、基板1の表面に対して垂直に近い角度で受光部2に入射し、そのまま進むことになる。この結果、固体撮像装置50の場合に比べ、受光部2内における光路長が短いので量子効率が低い。これに対し、本実施形態の固体撮像装置50では、上記の通り光散乱構造6を備えることにより量子効率が向上している。
【0023】
また、図3は、一般的な固体撮像装置(比較例の固体撮像装置51であっても良い)の分光特性を示す。R、G、Bの線は順に赤色、緑色、青色に対応する画素の分光特性である。図3に示す通り、赤色よりも更に波長の長い近赤外領域では、波長が長くなるに従ってシリコン基板の吸収係数が小さくなり、量子効率が低くなっていく。波長940nm付近では、量子効率は20%程度である。そこで、光路長を長くして量子効率を向上することが有効である。
【0024】
また、光散乱構造6による光の反射を増やすためには、光散乱構造6とその周囲(カラーフィルタ8)との屈折率の差を大きくすることが好ましい。具体的には、光散乱構造6における光の反射、回折、散乱を顕著にする観点から、当該屈折率の差を0.3以上とすることが好ましく、0.5以上とすることが更に好ましい。
【0025】
カラーフィルタ8の屈折率は光の波長に依存するが、一般的には1.6~2.0程度である。そこで、光散乱構造6の屈折率を1.3以下とすると、入射光31を散乱させる効果がより確実に発揮される。
【0026】
上記のような屈折率差を実現するための単純な方法としては、適切な材料を選択すれば良い。つまり、光散乱構造6を構成する材料の屈折率を、その周囲を形成する材料の屈折率よりも低くする。
【0027】
例えば、カラーフィルタ8が有機アクリル膜により形成されるのに対し、光散乱構造6がシリコンフィラーを含有する低屈折率な有機膜により形成されるのであっても良い。
【0028】
また、光散乱構造6について、カラーフィルタ8等の中に設けられたボイド(空隙、中空構造)として形成しても良い。この場合、空気の屈折率は1程度であるから、光散乱構造6と周囲との屈折率差が大きくなり、より顕著な効果が実現する。
【0029】
また、光散乱構造6は、マイクロレンズ10の集光点に近く、且つ、基板1の表面に近い位置(受光部2の中央の近傍)に設けると、量子効率を向上する効果が高くなる。図1には、そのような望ましい位置に設けられた光散乱構造6を示している。この理由は次の通りである。尚、図1において、光散乱構造6は楕円形に示されているが、特に形状を限定するものではない。
【0030】
仮に、光散乱構造6がカラーフィルタ8における平坦化膜9近傍に位置したとする。この場合、受光部2から離れた位置で入射光31が散乱するので、受光部2に入射する光が少なくなる虞がある。また、光散乱構造6がマイクロレンズ10の集光点を外れるので、入射光31の一部に対してしか散乱の効果を発揮できない。従って、光散乱構造6は、受光部2(基板1)に近い位置に設けることが好ましい。特に、カラーフィルタ8の最も受光部2に近い位置が好ましい。
【0031】
また、光散乱構造6が受光部2(画素30)の周縁部(遮光層7の付近)に位置したとすると、この場合もマイクロレンズ10の集光点を外れることになる。この結果、光を散乱させる効果が低下する。従って、光散乱構造6は、受光部2の中央付近に位置することが好ましい。
【0032】
また、図4は、固体撮像装置50の入射角特性を示す。つまり、固体撮像装置50に対して光が垂直に入射する場合を0、垂直から一方に傾く場合をプラス(+)、その反対側に傾く場合をマイナス(-)と表すものとする。同じ強さの光の入射角が異なると、入射角が0の時に最も効率が良いので、受光部2において生じる電荷は最大となる。入射角が大きくなると電荷は小さくなるが、固体撮像装置50の場合、入射角に対する電荷の大きさの変化は滑らかである。これは、光散乱構造6による光の散乱は入射角に対して特異性を持たないことによる。
【0033】
これに対し、図5は、特許文献1の固体撮像装置に生じ得る入射角特性を示す。この場合、Si基板の表面に周期的な逆ピラミッド形状が形成されているので、入射角に対して特異的な屈折が発生する。その結果、図5のように、入射角に対して電荷の大きさが不規則になり、出力される画像にシェーディング、モアレ等が発生しやすく、画質低下の原因となる。本開示の構造では、これを避けることができる。
【0034】
(カラーフィルタに関する変形例)
次に、第1の実施形態のカラーフィルタに関する変形例を説明する。
【0035】
以上では、画素30にカラーフィルタ8が設けられ、カラー画像を撮像する固体撮像装置の例を説明した。しかし、モノクロ画像を撮像する固体撮像装置においても、同様の効果を得ることは可能である。この場合、図1におけるカラーフィルタ8に代えて、透明膜を形成する。透明膜中に光散乱構造6を備えることにより、上記と同様に量子効率を向上することができる。
【0036】
また、カラーフィルタ8について、青色の顔料を含むブルーフィルタとしても良い。図6に示す通り、カラーフィルタの屈折率は光の波長に依存する。R、G、Bの曲線は、赤色、緑色、青色の顔料を含むカラーフィルタについて、可視光及び近赤外線に対する屈折率を示す。図6の通り、近赤外線に関し、ブルーフィルタの屈折率が高い。従って、光散乱構造6の周囲のカラーフィルタ8をブルーフィルタとすることにより、これらの屈折率差が大きくなる。この結果、量子効率を向上する効果が顕著になる。この構成は、近赤外光のみを用いた画像を取得する際に有用である。
【0037】
(光散乱構造6に関する変形例)
次に、第1の実施形態の光散乱構造6に関する変形例を説明する。
【0038】
図7は、当該変形例の固体撮像装置52を示す。固体撮像装置52は、図1の固体撮像装置50と比較すると、光散乱構造の形状を特定するものである。それ以外の構成は固体撮像装置50と同じであるから、以下では主に差異を説明する。
【0039】
以下、固体撮像装置52において、基板1の表面に垂直な方向を縦方向と呼び、この方向の寸法を高さと呼ぶことにする。また、基板1の表面に水平な方向を横方向と呼び、この方向の寸法を幅と呼ぶことにする。このとき、固体撮像装置52の光散乱構造12は、縦に長い形状、つまり、幅よりも高さが大きい形状である。
【0040】
このようにすると、画素30に対して斜めに光が入射した場合にも、以下のように、光散乱構造12が光を散乱する効果が維持されやすい。
【0041】
図1では、画素30に対して入射光が垂直に入射する場合を示している。この場合は、説明した効果が十分に発揮される。しかし、図1の固体撮像装置50において、画素30に対して図7のように入射光31が斜めに入射した場合、マイクロレンズ10による集光点と光散乱構造6とにズレが生じ、光を散乱する効果が低下する可能性がある。
【0042】
これに対し、図7の固体撮像装置52では、入射光31が斜めに入射したとしても、縦に長い形状の光散乱構造12に入りやすい。従って、光散乱構造12が光を散乱する効果の低下が抑制される。その結果、入射光31が斜めに入射する場合にも、より確実に量子効率が向上する。画素30が配列された撮像領域において、中央側と周辺側とでは入射光31の角度が異なるので、その違いの影響を抑制することは画質の向上の有用である。また、固体撮像装置52が用いられたカメラのレンズの違い(F値等)の影響も緩和できる。
【0043】
光散乱構造12について、カラーフィルタ8の厚さに対して、20%以上の高さを有することが好ましく、50%以上の高さを有することが更に好ましい。このようにすると、入射光31が斜めになった場合にも光拡散構造12に光が入りやすくなる。
【0044】
(光散乱構造の平面図における形状)
次に、光散乱構造の形状について更に説明する。図8は、固体撮像装置50について、基板1の表面に垂直な方向から見た平面図である。但し、2行2列の4つの画素30について、遮光層7と、マイクロレンズ10と、光散乱構造6aのみを示している。尚、当該光散乱構造6aについて、図7の光散乱構造12のように縦長の形状であっても良いし、そうでなくても良い。また、図8において、光散乱構造6aは、画素30(受光部2)の中央付近に位置している。前記の通り、これが望ましい位置である。
【0045】
平面図において、光散乱構造6aは、角を有する形状、特に、鋭角を含む形状であることが好ましい。その一例として、図8のように鋭角の突起を含む星形であっても良い。このような形状とすると、より効果的に入射光を散乱させることができる。その結果、量子効率が向上する。
【0046】
また、光散乱構造の平面図における形状として、凹凸のある形状が好ましく、十字形状であっても良い。図9及び図10に、十字形状の光散乱構造6b及び光散乱構造6cを示す。これらは、平面図において同じ形状であるが、向きが異なっている。このような構成についても、入射光31を散乱する効果、その結果として量子効率向上の効果がより確実に発揮される。
【0047】
<第2の実施形態>
図11は、第2の実施形態の例示的固体撮像装置53について示す模式的な断面図である。固体撮像装置53は、光散乱構造を除いて図1の固体撮像装置50と同様であり、以下では主に差異を説明する。
【0048】
図1の固体撮像装置50では、それぞれの画素30に1つの光散乱構造6が設けられている。これに対し、本実施形態の固体撮像装置53では、それぞれの画素30に複数の光散乱構造11が設けられている。
【0049】
光散乱構造11は、例えば、中空のシリカからなる。つまり、カラーフィルタ8が中空のシリカ粒子を含有している。マイクロレンズ10を透過した入射光31は、カラーフィルタ8に入射すると、多数のシリカ粒子(光散乱構造11)によって屈折及び反射し、様々な角度で受光部2に入射する。従って、図2のように光散乱構造11が無い場合に比べ、受光部2における光路が長くなる。この結果、受光部2における光の吸収量が増えて、量子効率が向上する。
【0050】
カラーフィルタ8及び光散乱構造11の屈折率差を大きく(例えば0.3以上と)すること、モノクロの撮像装置としてカラーフィルタ8に代えて透明膜を形成すること、カラーフィルタ8をブルーフィルタとすること等については、第1の実施形態と同様である。
【0051】
また、光散乱構造11は、別の例として、顔料の凝集体からなっていても良い。この場合、カラーフィルタ8との屈折率差は小さくなる傾向にある。しかし、顔料の凝集体は形状が歪で且つ不規則であるから、その点において光を散乱させる効果が高い。また、分散剤を設定して凝集体の大きさを調整することにより、光を散乱させる効果を制御することもできる。
【0052】
(光散乱構造の効果)
第2の実施形態の固体撮像装置53について、量子効率の光学シミュレーションを行った。図12は、光散乱構造11として中空シリカを用いた場合のシミュレーション結果を示す。尚、カラーフィルタ8に代えて透明膜を形成している場合である。横軸は中空シリカの半径であり、縦軸は波長940nmにおける量子効率である。半径0については、光散乱構造11が設けられていない場合に該当する。
【0053】
図12に示される通り、光散乱構造11としての中空シリカの半径が大きくなると、量子効率が向上する傾向にある。光散乱構造11を備えない場合の量子効率が22.9%であるのに対し、光散乱構造11の半径が0.15μmの場合の量子効率は23.6%である。これは、(23.6-22.9)/22.9×100≒3.1%の向上である。
【0054】
さらに、図13は、光散乱構造11をブルーフィルタ内に形成した場合のシミュレーション結果を示す。破線は図12に示すシミュレーション結果であり、実線がブルーフィルタを用いた場合のシミュレーション結果である。
【0055】
図13に示す通り、ブルーフィルタを用いることで量子効率は更に向上する。光散乱構造11の半径を0.15μmとし、ブルーフィルタを用いた場合、量子効率は24.5%である。これは、ブルーフィルタを用いず、光散乱構造11を備えない場合の量子効率22.9%に比べると、(24.5-22.9)/22.9×100≒7.0%の向上である。
【0056】
以上に説明した通り、本開示において形成する光散乱構造は、暗電流及び白点が増加する原因となること無しに、量子効率を向上することができる。また、入射角特性に特異的な屈折を生じることもない。この結果、感度及び画質の優れた固体撮像装置となる。
【0057】
<固体撮像装置の製造方法>
次に、本開示の固体撮像装置の製造方法(特に、光散乱構造の形成方法)について説明する。
【0058】
(第1の製造方法)
図14図17は、本開示の固体撮像装置の第1の製造方法を説明する図である。
【0059】
図14において、基板1に、受光部2、DTI領域3、絶縁膜4、保護膜5及び遮光層7が形成されている。これらは、例えば以下の方法により形成することができる。受光部2は、基板1に対してイオン注入等により不純物を導入して形成する。DTI領域3は、基板1に対してエッチング等により溝を形成し、当該溝に絶縁膜(シリコン酸化膜等)を埋め込むことにより形成する。絶縁膜4及び保護膜5は、CVD(chemical vapor deposition:化学気相成長)等により、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等として成膜する。遮光層7は、基板1上を覆うようにタングステン膜を形成した後、レジストパターンを形成して必要部分以外を除去することにより形成する。尚、いずれも他の方法であっても良い。
【0060】
画素30を囲むように遮光層7(及びその上の部分の保護膜5)が形成されると、画素30毎に受光部2上に凹部が構成された状態となる。
【0061】
その後、当該凹部を埋め込むように、低屈折率材料膜21を形成する。図14は、ここまでの工程が完了した状態を示している。
【0062】
次に、図15に示すように、低屈折率材料膜21上にレジストパターン22を形成する。これは、例えば低屈折率材料膜21上の全面にレジストを形成した後、リソグラフィ技術を用いてパターニングすることで形成する。
【0063】
次に、図16に示すように、レジストパターン22をマスクとしてエッチングを行い、低屈折率材料膜21による低屈折率材料パターン21aを形成する。
【0064】
次に、図17に示すように、この後、低屈折率材料膜21よりも屈折率が高い高屈折率材料膜23を形成し、低屈折率材料パターン21aを埋め込む。これにより、低屈折率材料パターン21aが光散乱構造となり、その周囲に高屈折率材料膜23としてカラーフィルタ8が形成された構造が形成される。その後、平坦化膜9及びマイクロレンズ10を形成することで、図1又は図7に示す固体撮像装置が製造される。
【0065】
尚、低屈折率材料膜21は例えばポリシロキサンを含有する透明膜であり、高屈折率材料膜23は例えばチタニアナノ粒子などのナノ粒子を含有した透明膜である。
【0066】
この方法によると、レジストパターン22の位置及び形状を設定することにより、光散乱構造6又は11の平面図における位置及び形状を決めることができる。これにより、光散乱構造を受光部2の中央に設定すること、図8図10に例示した光散乱構造の形状を設定することが可能である。また、低屈折率材料膜21の厚さ等を設定することで、光散乱構造11の縦長形状を実現することができる。
【0067】
(第2の製造方法)
図18図19は、本開示の固体撮像装置の第2の製造方法を説明する図である。
【0068】
図18において、基板1に、受光部2、DTI領域3、絶縁膜4、保護膜5及び遮光層7が形成されている。これらについては、第1の製造方法と同様に形成することができる。
【0069】
遮光層7によって受光部2上に凹部が構成された状態において、CVDにより材料膜24を形成する。この際、遮光層7の上面及び側面に等方的に膜が成長する。この結果、図18に示すように、平面図において受光部2の中央付近にボイド(空隙)25を残すことができる。つまり、凹部が完全には埋め込まれなように成膜を行う。
【0070】
その後、図19のように、材料膜24上に、全体が十分な厚さとなるまで更に材料膜26を形成する。
【0071】
続いて、図20のように、所定の厚さまで全面エッチバックして材料膜24及び26の上面を平坦にする。これにより、材料膜24及び36内にボイド25を構成する。この後、平坦化膜9及びマイクロレンズ10を形成することで、本開示の固体撮像装置が製造される。
【0072】
この製造方法によると、材料膜24及び26がカラーフィルタ8、ボイド25が光散乱構造として機能する固体撮像装置となる。
【0073】
(第3の製造方法)
図21図23は、本開示の固体撮像装置の第3の製造方法を説明する図である、第3の製造方法は、第2の実施形態の例示的固体撮像装置53を製造する方法である。
【0074】
図21において、基板1に、受光部2、DTI領域3、絶縁膜4、保護膜5及び遮光層7が形成されている。これらについては、第1の製造方法と同様に形成することができる。
【0075】
遮光層7によって受光部2上に構成された凹部を埋め込むように、光散乱構造11として中空のシリカ又は顔料の凝集体を含むカラーレジスト27を塗布する。カラーレジスト27に対し、露光及び現像を行い、所望の箇所に光散乱構造11を含むカラーレジスト27のパターンを形成する。
【0076】
図22は、一部の画素30においてカラーレジスト27のパターンが形成されている。
【0077】
この後、同様の塗布、露光及び現像の工程を行い、他の画素30について他の色に対応するカラーレジスト28のパターンを形成する。カラーレジスト28についても、光散乱構造11を含有する。この状態を図23に示す。
【0078】
図では画素30を2つのみ示すが、例えばRGB三色のカラーフィルタを有する固体撮像装置であれば、更にもう一度同様の工程を行う。その後、平坦化膜9及びマイクロレンズ10を形成することで、図11に示す固体撮像装置53が製造される。
【0079】
この製造方法によると、カラーレジストに光散乱構造11(中空シリカ、顔料の凝集体等)を混合する他は、一般的な従来の製造方法と同様である。つまり、光散乱構造11を設けるために、特別なプロセスを追加することは不要である。
【0080】
尚、モノクロの撮像装置の場合、カラーレジストに変えて、光散乱構造11を含む透明膜を形成すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示の画質の低下を抑制しながら量子効率を向上でき、固体撮像装置として有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 基板
2 受光部
3 DTI領域
4 絶縁膜
5 保護膜
6 光散乱構造
6a~6c 光散乱構造(平面図における形状)
7 遮光層
8 カラーフィルタ
9 平坦化膜
10 マイクロレンズ
11、12 光散乱構造
21 低屈折率材料膜
21a 低屈折率材料パターン
22 レジストパターン
23 高屈折率材料膜
24 材料膜
25 ボイド
26 材料膜
27、28 カラーレジスト
30 画素
31 入射光
50、52、53 固体撮像装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23