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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084969
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】傾斜検出装置及び傾斜検出方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/08 20060101AFI20240619BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
G02B26/08 E
G01S7/481 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199200
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213702
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 芳則
(72)【発明者】
【氏名】加園 修
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 充
(72)【発明者】
【氏名】小柳 一
【テーマコード(参考)】
2H141
5J084
【Fターム(参考)】
2H141MA11
2H141MB24
2H141MC05
2H141MD13
2H141MD20
2H141MD23
2H141MD24
2H141MD40
2H141MF28
2H141MG10
2H141MZ12
5J084AA05
5J084BA04
5J084BA33
5J084BA36
5J084BA47
5J084BA48
5J084BB02
5J084BB14
5J084BB20
5J084BB28
5J084DA02
5J084DA03
5J084EA01
5J084EA31
(57)【要約】
【課題】部材の傾斜(傾斜方向、傾斜角度)の検出機能を有する小型の傾斜検出装置及び傾斜検出方法を提供すること。
【解決手段】傾斜検出装置は、回動中心点周りに回動制御される光学部材と、光学部材における機能面とは反対側において回動中心点から離れた位置に配置され、光学部材に対して固定された再帰反射部材と、再帰反射部材に対して検出光を照射する光源と、再帰反射部材により反射された検出光を検出する検出部と、検出部により検出された検出光の光軸位置信号から、光学部材の傾斜を検出する制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動中心点周りに回動制御される光学部材と、
前記光学部材における機能面とは反対側において前記回動中心点から離れた位置に配置され、前記光学部材に対して固定された再帰反射部材と、
前記再帰反射部材に対して検出光を照射する光源と、
前記再帰反射部材により反射された前記検出光を検出する検出部と、
前記検出部により検出された光軸位置信号から、前記光学部材の傾斜を検出する制御部と、
を備える傾斜検出装置。
【請求項2】
前記再帰反射部材はボールレンズミラーである請求項1に記載の傾斜検出装置。
【請求項3】
前記ボールレンズミラーの屈折率は1.8から2.1の範囲である請求項2に記載の傾斜検出装置。
【請求項4】
前記ボールレンズミラーは、前記回動中心点側における球冠状の領域に反射膜を有する請求項2に記載の傾斜検出装置。
【請求項5】
前記ボールレンズミラーは、前記反射膜を、前記光学部材の最大振れ角度の2倍以上の範囲に有する請求項4に記載の傾斜検出装置。
【請求項6】
前記検出部は、4分割光検出素子である請求項1に記載の傾斜検出装置。
【請求項7】
前記検出部は、光位置検出素子である請求項1に記載の傾斜検出装置。
【請求項8】
前記検出部は、2次元のイメージセンサである請求項1に記載の傾斜検出装置。
【請求項9】
前記光学部材は、前記ボールレンズミラーを固定し且つヨーク部材により磁気制御される永久磁石を更に備える請求項2に記載の傾斜検出装置。
【請求項10】
前記永久磁石は、前記ボールレンズミラーを収容する収容部を有する請求項9に記載の傾斜検出装置。
【請求項11】
前記収容部は、前記ボールレンズミラーを内縁により支持する窪み部である請求項10に記載の傾斜検出装置。
【請求項12】
前記収容部は、前記ボールレンズミラーを、内縁及び底部により支持する窪み部である請求項10に記載の傾斜検出装置。
【請求項13】
前記収容部は、前記ボールレンズミラーを、内壁及び前記光学部材の前記機能面とは反対側の面により支持する貫通孔である請求項10に記載の傾斜検出装置。
【請求項14】
前記光源は、前記光学部材が最大振れ角度である場合の前記ボールレンズミラーを含む領域に前記検出光を照射する請求項2に記載の傾斜検出装置。
【請求項15】
前記再帰反射部材は反射シート又は反射板である請求項1に記載の傾斜検出装置。
【請求項16】
回動中心点周りに回動制御される偏向部材と、
前記偏向部材における反射面とは反対側において前記回動中心点から離れた位置に配置され、前記偏向部材に対して固定されたボールレンズミラーと、
前記ボールレンズミラーに対して検出光を照射する光源と、
前記ボールレンズミラーにより反射された前記検出光を検出する4分割光検出素子と、
前記4分割光検出素子により検出された前記検出光の光軸位置信号から、前記偏向部材の傾斜を検出する制御部と、
を備える傾斜検出装置。
【請求項17】
ヨーク部材により磁気制御される永久磁石を有し、回動中心点周りに回動制御される光学部材と、
前記光学部材における機能面とは反対側において前記回動中心点から離れた位置に配置され、前記永久磁石に固定された再帰反射部材と、
前記再帰反射部材に対して検出光を照射する光源と、
前記再帰反射部材により反射された前記検出光を検出する検出部と、
制御部と、
を備える傾斜検出装置の傾斜検出方法であって、
前記検出部により検出された前記検出光の光軸位置信号から、前記光学部材の傾斜を検出する、
傾斜検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学部材の傾斜検出技術に適用できる傾斜検出装置及び傾斜検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光の反射方向を制御するミラーを備えたスキャナ装置に関する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、レーザ光源から出射されたレーザ光の出射方向を変更するミラーと、ミラーに設けられた第1反射面及び第2反射面のうちの第2反射面を反射した反射光を受光する受光センサを有するミラー回転角度検出手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5293686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のスキャナ装置では、ミラーの角度を検出するために、ミラーの傾斜に対応する反射角度で反射された光を検出するため、反射光の角度範囲が広い。反射光の角度範囲が広いと、反射光を受光する受光センサの検出範囲も広くする必要がある。そのため、受光センサが大きくなり、スキャナ装置の小型化が容易ではない。
【0005】
本開示は、部材の傾斜(傾斜方向、傾斜角度)の検出機能を有する小型の傾斜検出装置及び該傾斜検出装置を小型化できる傾斜検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る傾斜検出装置は、回動中心点周りに回動制御される光学部材と、前記光学部材における機能面とは反対側において前記回動中心点から離れた位置に配置され、前記光学部材に対して固定された再帰反射部材と、前記再帰反射部材に対して検出光を照射する光源と、前記再帰反射部材により反射された前記検出光を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記検出光の光軸位置信号から、前記光学部材の傾斜を検出する制御部と、を備える。
【0007】
本開示に係る傾斜検出方法は、ヨーク部材により磁気制御される永久磁石を有し、回動中心点周りに回動制御される光学部材と、前記光学部材における機能面とは反対側において前記回動中心点から離れた位置に配置され、前記永久磁石に固定された再帰反射部材と、前記再帰反射部材に対して検出光を照射する光源と、前記再帰反射部材により反射された前記検出光を検出する検出部と、制御部と、を備える傾斜検出装置の傾斜検出方法であって、前記検出部により検出された前記検出光の光軸位置信号から、前記光学部材の傾斜を検出する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る傾斜検出装置及び傾斜検出方法は、部材の傾斜(傾斜方向、傾斜角度)の検出機能を有する傾斜検出装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る光源装置の構成図である。
図2】スキャナ装置の一部の構成の斜視図である。
図3】傾斜検出装置の側面図であり光学部材の初期の傾斜状態を示している。
図4】傾斜検出装置の側面図であり光学部材が傾斜した状態を示している。
図5】変形例1の傾斜検出装置の側面図である。
図6】変形例2の傾斜検出装置の側面図である。
図7】変形例3の傾斜検出装置の側面図である。
図8】変形例4の傾斜検出装置の側面図である。
図9】変形例5の傾斜検出装置の側面図である。
図10】実施形態2に係る傾斜検出装置の側面図である。
図11】実施形態3に係る傾斜検出装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を図面に基づき説明する。図1は、光源装置1の構成図である。光源装置1は、レーザ光を空間に出射する機能を有する。光源装置1は、例えば、レーザ測距装置又はLiDAR(Light Detection And Ranging)センサ等の光源に適用できる。光源装置1は、制御部11、測距光光学系12、光学系駆動回路13、及びスキャナ装置2を備える。
【0011】
制御部11は、光学系駆動回路13、スキャナ装置駆動回路14及び角度センサ回路15等の動作を制御する。制御部11は、記憶部(不図示)に記憶されるプログラムに含まれるコード又は命令によって実現する機能、及び/又は方法を実行する。制御部11は、例として、中央処理装置(CPU,Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU、MCU(Microcontroller Unit)、プロセッサコア、マルチプロセッサ、ASIC、FPGA等を適用することができる。制御部11は、集積回路等に形成された論理回路や専用回路によって各実施形態に開示される各処理を実現してもよい。また、これらの回路は、1又は複数の集積回路により実現されてよく、各実施形態に示す複数の処理を1つの集積回路により実現されることとしてもよい。
【0012】
光源装置1の図示しない記憶部は、必要とする各種プログラムや各種データを記憶する機能を有する。また、測定した信号等の取得した情報を記憶可能である。記憶部は、HDD、SSD、フラッシュメモリなど各種の記憶媒体により実現される。
【0013】
測距光光学系12は、レーザ光を出射する発光素子、レーザ発光素子から出射されたレーザ光を導光するレンズ又はミラー等を含む光学部材、及び、レーザ光を検出する受光素子を含む。この光学部材には、光線幅の調整又は輝度分布の調整を行う拡散板、ライトトンネル、マイクロレンズアレイ、集光レンズ、又はフィルタ等を含んでもよい。受光素子は、レーザ発光素子が出射し、光源装置1の外部の物体が反射した戻り光を受光することができる。測距光光学系12は、スキャナ装置2の偏向部材6に対して測距光であるレーザ光L1を出射する。
【0014】
光学系駆動回路13は、測距光光学系12の発光素子の発光を制御する。また、光学系駆動回路13は、測距光光学系12の受光素子が受光した光を検出して電気信号に変換した情報を、制御部11に伝達する。
【0015】
スキャナ装置2は、測距光光学系12が出射したレーザ光L1を、予め定めた立体角の範囲のうち選択された方向及び角度で反射して光源装置1の外部に測距光として出射する。スキャナ装置2は、偏向部材6の角度を制御することにより、レーザ光L1を、レーザ光L11又はレーザ光L12に例示する異なる方向へ出射することができる。また、スキャナ装置2は、光源装置1の外部から入射した光を測距光光学系12に導光する。光源装置1の外部から入射する光は、光源装置1の外部の物体を反射した反射光L3である。なお、光源装置1の構成によっては、光源装置1は、外部に出射するレーザ光L1を、光源装置1内の他の光学系を介して導光してもよい。
【0016】
スキャナ装置2は、偏向制御装置3及び傾斜検出装置4を備える。本実施形態の偏向制御装置3は、ヨーク部材5、偏向部材6及びスキャナ装置駆動回路14を有する。また、本実施形態の傾斜検出装置4は、レーザ光L2を出射する光源41、レンズ42、検出回路基板43、ビームスプリッタ44及び角度センサ回路15を有する。傾斜検出装置4は、レーザ光L2を、偏向部材6の傾斜を検出するための検出光として利用する。偏向部材6は、傾斜検出装置4の一部としても機能する。
【0017】
図2は、スキャナ装置2の偏向制御装置3及び傾斜検出装置4の一部の構成の斜視図である。なお、スキャナ装置2の説明において、偏向部材6側をスキャナ装置2の上、基部材55側を下とする。
【0018】
ヨーク部材5は、第一ヨーク51と、第一ヨーク51とは異なり、かつスキャナ装置2の軸線P周りの回転対称位置に配置される第二ヨーク52と、を備える。第一ヨーク51は、それぞれ第一端部532a,532aを有する一対の第一腕部材53,53と、第一腕部材53,53の第一端部532a,532aとは反対側の部位と接続される基部材55とを有する。また、第二ヨーク52は、それぞれ第二端部542a,542aを有する一対の第二腕部材54,54と、第二腕部材54,54の第二端部542a,542aとは反対側の部位と接続される基部材55とを有する。
【0019】
第一ヨーク51及び第二ヨーク52は、磁性特性を有する。第一腕部材53及び第二腕部材54は、矩形状の断面形状を有する略四角柱状の胴部531,541と、胴部531,541の一方側において略L字状に屈曲するように延設した突出部532,542とを有する。突出部532,542は、先端に、それぞれ平面状の第一端部532a及び第二端部542aを有する。
【0020】
第一腕部材53の胴部531は、外周に巻回されたヨークコイル533を有する(図1参照)。一対の第一腕部材53のヨークコイル533同士は、互いに直列に接続される。また、第二腕部材54の胴部541は、外周に巻回されたヨークコイル543を有する(図1では一方の第二腕部材54及びヨークコイル543を図示)。一対の第二腕部材54のヨークコイル543同士も、互いに直列に接続される。従って、ヨーク部材5と、ヨークコイル533,543は、電磁石を構成する。スキャナ装置駆動回路14は、制御部11の指示により、電磁石を駆動することにより偏向部材6の角度を制御する。
【0021】
基部材55は、二組の対向する側縁55aに切欠部551を有する略円板状の部材である。基部材55は、平面視略矩形状の切欠部551を有する(詳細は不図示)。
【0022】
第一腕部材53及び第二腕部材54は、それぞれ、切欠部551内に収容されて、基部材55と接続される。第一腕部材53は、切欠部551において、基部材55の中心方向の内面551aと面当接する。
【0023】
図2に示す組み状態において、一対の第一ヨーク51の第一端部532a,532aは、対向して配置される。また、一対の第二ヨーク52の第二端部542a,542aは、第一端部532a,532aの対向方向(第一方向D1)に対して平面視直交する方向(第二方向D2)に対向している。
【0024】
図3は、傾斜検出装置4を模式的に示した側面図である。光源41は、レーザ光L2を検出光として出射する、レーザ発光素子である。レンズ42は、光源41から出射されたレーザ光L2を集光する集光レンズである。ビームスプリッタ44は、ハーフミラーである。ビームスプリッタ44は、レンズ42から出射されたレーザ光L2の一部を軸線Pに沿って偏向部材6のボールレンズミラー63に反射する。またビームスプリッタ44は、ボールレンズミラー63により反射されたレーザ光L2の一部を透過して検出部431に導光する。
【0025】
偏向部材6は、一対の第一端部532aの間、且つ、一対の第二端部542aの間に配置される光学部材である。偏向部材6は、円形平板状の形状を有する反射板61を備える(図2も参照)。反射板61は、レーザ光L1を反射する機能面である反射面611を有する(図1参照)。反射面611は、蒸着等の方法により設けられた金属反射膜を有する。
【0026】
偏向部材6は、反射板61に対して固定される永久磁石62を備える。制御部11は、ヨークコイル533,543に電流を流すことで、ヨーク部材5及び永久磁石62を介して偏向部材6に外力を加え、偏向部材6の傾斜方向及び傾斜角度を制御する。永久磁石62は、偏向部材6が傾斜しない図3の初期状態において、軸線P周りに回転対称の略円板状の形状を有する。永久磁石62は、厚み方向(軸線P方向)の一端側にS極及びN極の一方の磁極を有し、他の一端側にS極及びN極の他の一方の磁極を有する。永久磁石62は、球体状のボールレンズミラー63を収容する収容部621を有する。収容部621は、略円形に窪んだ窪み部である。収容部621は、軸線Pと同軸である。収容部621の内径は、ボールレンズミラー63の外径と略同じ径である。収容部621は、球体状のボールレンズミラー63の外周面を、円形の面である底部621a及び内壁621bと当接することにより、ボールレンズミラー63を位置決め及び支持し、ボールレンズミラー63を接着等により固定する。
【0027】
偏向部材6は、仮想的な点である回動中心点Qを有する。偏向部材6は、反射面611とは反対側であり且つ回動中心点Qから離れた位置に、再帰反射部材であるボールレンズミラー63を有する。ボールレンズミラー63は、図3の拡大図に示すように、球体状のボールレンズ631と、ボールレンズ631の外面に沿って配置される反射部632と、を有する。ボールレンズ631は、ガラス又はプラスチック等の透光部材であり、1.8から2.1の範囲の屈折率を有する。
【0028】
反射部632は、回動中心点Q側における球冠状の領域に成膜又は塗工された反射膜である。ボールレンズミラー63は、反射部632を、偏向部材6の最大傾斜角度θMAXの2倍以上の範囲に有する。偏向部材6の最大傾斜角度θMAXの範囲が±θMAXであるとき、ボールレンズの成膜範囲は、成膜角度φ≧2θMAXに予め設定される。図4の拡大図に示すように、偏向部材6が傾斜しているとき、ボールレンズミラー63に照射されたレーザ光L2に含まれる光成分L21は、ボールレンズミラー63に入射して、レーザ光L2の入射面側とは反対側に位置する集光点632aで反射される。光成分L21は、レーザ光L2のうち、傾斜した偏向部材6の収容部621の開口縁に干渉しない範囲の光である。ボールレンズミラー63は、レーザ光L2の光成分L21を、中心点Rを通る光軸Bを有する光として、検出部431側に出射する。一方、レーザ光L2のうち、中心点Rを通る光軸Bに対して光成分L21よりもやや外側を通る一部の光成分L22は、収容部621の内壁621b等の永久磁石62の一部と干渉し、再帰反射はされない。このような構成により、ボールレンズミラー63は、ボールレンズミラー63に対して照射された大部分のレーザ光L2を、再帰反射することができる。
【0029】
本実施形態では、光源41は、レーザ光L2を、最大傾斜角度θMAXである場合のボールレンズミラー63を含む領域に照射する。従って、ボールレンズミラー63は、偏向部材6が予め設定された最大傾斜角度θMAXの範囲内のいずれの傾斜角度であっても、入射した大部分のレーザ光L2を反射させることができる。
【0030】
偏向部材6は、図示しない支持部によって2軸回動可能に支持される。スキャナ装置駆動回路14は、偏向部材6を、回動中心点Q周りに回動制御する。例えば、偏向部材6は、回動中心点Qに対して第一方向D1周り又は第二方向D2周りに回動することができる。なお、偏向部材6は、回動中心点Q周りに回動可能となるように3軸以上の多軸回動可能な支持部によって支持されていてもよい。また、偏向部材6は、電磁石による磁界が作用しない無負荷状態では、ヨーク部材5の軸線Pと反射面611とが略垂直となる基準位置(図1の偏向部材6の状態)へ弾発力等により付勢される。
【0031】
図1に示すスキャナ装置駆動回路14は、負荷回路としてのヨークコイル533,543及び図示しないドライバ回路(又は、スイッチング回路)等を有する。制御部11は、スキャナ装置駆動回路14によりヨークコイル533及びヨークコイル543に励磁電流を供給するよう制御する。これにより、第一ヨーク51の第一磁路C1及び第二ヨーク52の第二磁路C2には、磁界が発生し、第一ヨーク51の第一端部532a間の第一方向D1の磁界を及び第二ヨーク52の第二端部542a間の第二方向D2の磁界を制御部11によって指示された強度で発生させる。永久磁石62は、第一方向D1及び第二方向D2に発生した磁界より、引力又は斥力を受ける。これらの磁界の強度に応じて、偏向部材6は、所定の傾斜方向及び傾斜角度となるように回動中心点Qを中心に傾斜方向及び傾斜角度を制御される。
【0032】
検出回路基板43は、受光素子である検出部431を有する。検出部431は、偏向部材6に対し反射面611とは反対側、すなわちボールレンズミラー63側に配置される(図4等参照)。検出部431は、ボールレンズミラー63により反射されたレーザ光L2を検出する。
【0033】
図3及び図4は、検出部431に設けられる受光部432の平面模式図も示す。検出部431は、四分割光検出素子(QPD,quadrant photodetector 又は quadrant photodiode)であり、4つの受光部432a~432dを有する。受光部432a~432dの中心点Oは、スキャナ装置2の軸線P上に位置するように配置される。受光部432が受光するレーザ光L2の照射領域の大きさは、ボールレンズミラー63の大きさで決定される。ボールレンズミラー63の軸線Pに対して直交する方向の移動範囲は、偏向部材6の回動中心点Qからボールレンズミラー63の中心点Rまでの距離で決まる。従って、受光部432におけるレーザ光L2の受光範囲は、ボールレンズミラー63の大きさ及びボールレンズミラー63の中心点Rの位置により決まる。受光部432は、このレーザ光L2の照射領域が収まる大きさを有する。
【0034】
制御部11は、検出部431により検出されたレーザ光L2の光軸B(又は重心)の位置又はレーザ光L2の分布位置に対応した信号(以下、両位置を「光軸位置信号」ともいう。)から、光軸位置を演算して求め、偏向部材6の傾斜(傾斜方向及び傾斜角度)を検出することができる。具体的に、制御部11は、四分割光検出素子の各受光部432a~432dが検出したレーザ光L2の受光強度により、偏向部材6の傾斜を検出する機能を有する。
【0035】
例えば、図3に示すように、レーザ光L2の光軸Aと軸線Pとが一致し、かつ偏向部材6が、光軸Aに対して傾斜していない状態である場合、検出部431は、中心点Oと光軸Bとが略一致するレーザ光L2を受光する。また、図4に示すように、偏向部材6が、第一方向D1のうちの図4の左方に傾斜すると、ボールレンズミラー63の中心点Rは、軸線Pに対して右側へ移動する。ボールレンズミラー63は、レーザ光L2を、入射時の光軸Aに対して図4の右方に移動した光軸Bを有する光として出射する。光軸Aと光軸Bは平行であるため、図4に示す検出部431には、光軸Bが中心点Oよりも右方に位置するレーザ光L2として照射される。反対に、偏向部材6が、第一方向D1のうちの図4の右方に傾斜すると、ボールレンズミラー63は、レーザ光L2を、入射時の光軸Aに対して図4の左方に移動した光軸Bを有する光として出射する。この場合、図4に示す検出部431は、光軸Bが中心点Oよりも左方に位置するレーザ光L2を受光する。
【0036】
このように、ボールレンズミラー63は、図4に示すように偏向部材6の傾斜に対応してレーザ光L2の光軸位置を光軸Aから光軸Bに変位量d分だけ変位させる機能を有する。
【0037】
制御部11は、各受光部432a~432dが受信したレーザ光L2の受光強度の比によって偏向部材6の傾斜(傾斜方向及び傾斜角度)を決定する。制御部11は、受光部432に照射されたレーザ光L2の中心点Oに対する光軸B(又は受光強度の重心)の位置(第一方向D1及び第二方向D2の位置)を演算し、偏向部材6の傾斜を求めることができる。中心点Oに対する光軸Bの距離は、偏向部材6の傾斜角度に対応する。また、中心点Oに対する光軸Bの第一方向D1及び第二方向D2の変位成分は、偏向部材6の傾斜方向に対応する。制御部11は、中心点Oに対する光軸Bの位置と、偏向部材6の傾斜との対応関係を、計算により決定してもよいし、予め対応テーブルを参照して決定してもよい。
【0038】
レーザ光L2の移動範囲は、レーザ光L2の照射径(半径)に対して最大で50%以下とすることが望ましい。すなわち、偏向部材6が最大傾斜角度θMAXで傾斜する場合でも、レーザ光L2の光軸Bの移動幅は、レーザ光L2の照射径(半径)に対して最大で50%以下となるよう設定される。これにより、偏向部材6の角度変化に伴う検出信号の直線性を確保することができる。また、経時変化や振動等の外乱の影響をうけた場合であってもレーザ光L2の照射領域が受光部432a~432dの境界線を越える等して検出可能範囲外となることを防止することができる。
【0039】
図4では、ボールレンズミラー63により反射されたレーザ光L2が第一方向D1に移動した様子を示しているが、検出部431は、レーザ光L2が第二方向D2に移動した場合も同様に、制御部11に第二方向D2に対する偏向部材6の傾斜を検出させる光軸位置信号を出力することができる。
【0040】
本実施形態の傾斜検出装置4は、光軸A及び光軸Bが平行であることから、レーザ光L2の位置の移動量がボールレンズミラー63から検出部431までの距離に依存しない為、検出部431は、受光部432a~432dの中心点Oが軸線P上に配置されていればよい。そのため、スキャナ装置2は、検出部431の配置について高い自由度を有する。
【0041】
なお、光軸Aと中心点Oは必ずしも一致していなくてもよい。偏向部材6が傾斜していない状態で検出部431が検出したレーザ光L2の光軸Bの位置(重心位置)を基準位置として求めておくことで、検出部431が検出するレーザ光L2の光軸Bの位置と、偏向部材6の傾斜の関係を予め補正することができる。
【0042】
実施形態1の傾斜検出装置4は、偏向部材6のうち比較的大きな質量を有するボールレンズミラー63が回動中心点Qの近くに配置されており、偏向部材6全体の重心点が回動中心点Qに近い。そのため、傾斜検出装置4は、偏向部材6を駆動する為に必要な駆動力を、小さくすることができる。
【0043】
(変形例1)
次に、実施形態1の変形例1について説明する。図5は、変形例1の傾斜検出装置4の側面図である。変形例1の傾斜検出装置4の説明において、図1乃至図4と同様の構成については、同一の符号を付す等して、その説明を省略又は簡略化する。
【0044】
変形例1の偏向部材6は、永久磁石62の代わりに永久磁石62Aを備える。永久磁石62Aは、回転対称の略円板状の形状を有する。永久磁石62Aは、ボールレンズミラー63を収容する収容部621Aを有する。収容部621Aは、略円形の貫通孔である。従って、永久磁石62Aは、略円環状(ドーナツ状)の形状を有する。収容部621Aは、偏向部材6の傾斜しない初期状態において軸線Pと同軸である。収容部621Aの内径はボールレンズミラー63の外径と略同じ径である。収容部621Aは、ボールレンズミラー63を、内壁621Ab及び偏向部材6の反射面611(機能面)とは反対側の面612と当接することにより、ボールレンズミラー63を位置決め及び支持し、ボールレンズミラー63を接着等により固定する。
【0045】
変形例1の偏向部材6は、ボールレンズミラー63を回動中心点Qに対してより近い位置に配置することができる。
【0046】
(変形例2)
次に、実施形態1の変形例2について説明する。図6は、変形例2の傾斜検出装置4の側面図である。変形例2の傾斜検出装置4の説明において、図1乃至図4と同様の構成については、同一の符号を付す等して、その説明を省略又は簡略化する。
【0047】
変形例2の偏向部材6は、永久磁石62の代わりに永久磁石62Bを備える。永久磁石62Bは、回転対称の略円板状の形状を有する。永久磁石62Bは、ボールレンズミラー63を収容する収容部621Bを有する。収容部621Bは、略円形に窪んだ窪み部である。収容部621Bは、偏向部材6が傾斜しない初期状態において軸線Pと同軸である。収容部621Bの内径はボールレンズミラー63の外径よりも小径である。収容部621Bは、円形の面である底部621a及び円形の開口の内縁621cと当接することにより、ボールレンズミラー63を位置決め及び支持し、ボールレンズミラー63を接着等により固定する。
【0048】
また収容部621Bは、底部621aがボールレンズミラー63と当接しない程度に深くてもよい。この場合、収容部621Aは、ボールレンズミラー63を内縁により支持することができる。
【0049】
変形例2の偏向部材6は、ボールレンズミラー63の永久磁石62Bの外側に配置することができるため、ボールレンズミラー63の露出範囲が広くなる。従って、ボールレンズミラー63は、より広範囲の面でレーザ光L2を入射及び反射することができ、受光部432が受光するレーザ光L2の受光強度を高くすることができる。
【0050】
(変形例3)
次に、実施形態1の変形例3について説明する。図7は、変形例3の傾斜検出装置4の側面図である。変形例3の傾斜検出装置4の説明において、図1乃至図4と同様の構成については、同一の符号を付す等して、その説明を省略又は簡略化する。
【0051】
変形例3の偏向部材6は、永久磁石62の代わりに永久磁石62Cを備える。永久磁石62Cは、回転対称の略円板状の形状を有する。永久磁石62Cは、ボールレンズミラー63を収容する収容部621Cを有する。収容部621Cは、略円錐台状に窪んだ窪み部である。収容部621Cは、円形の底部621Caと、断面視において開口縁から底部621Caまで傾斜した面である傾斜部621Cbとを有する。収容部621Cは、偏向部材6の傾斜しない初期状態において軸線Pと同軸である。収容部621Cの円形の底部621Caは、ボールレンズミラー63の外径よりも小径である。また、収容部621Cの傾斜部621Cbの開口縁は、ボールレンズミラー63の外径よりも大径である。図7の例では、収容部621Cは、ボールレンズミラー63を、傾斜部621Cbの傾斜面及び底部621Caと当接することにより、ボールレンズミラー63を位置決め及び支持し、ボールレンズミラー63を接着等により固定する。収容部621Cの傾斜部621Cbの開口縁は、ボールレンズミラー63と傾斜部621Cbとが環状に線当接する当接円の外径よりも大径であって、且つ、ボールレンズミラー63の外径よりも小径であってもよい。
【0052】
変形例3の偏向部材6は、収容部611C又はボールレンズミラー63の寸法精度が高くない場合であっても、収容部611Cとボールレンズミラー63とを、図7の断面視において3点接触(底部621Caによる点接触及び傾斜部621Cbによる環状の略線接触)させることができる。従って、収容部611Cは、ボールレンズミラー63を安定して支持することができる。
【0053】
(変形例4)
次に、実施形態1の変形例4について説明する。図8は、変形例4の傾斜検出装置4の側面図である。変形例4の傾斜検出装置4の説明において、図1乃至図4と同様の構成については、同一の符号を付す等して、その説明を省略又は簡略化する。
【0054】
変形例4の偏向部材6は、永久磁石62の代わりに永久磁石62Dを備える。永久磁石62Dは、回転対称の略円板状の形状を有する。永久磁石62Dは、ボールレンズミラー63を収容する収容部621Dを有する。収容部621Dは、略円形の貫通孔である。従って、永久磁石62Dは、略円環状(ドーナツ状)の形状を有する。収容部621Dは、反射板61とは反対側の開口縁に、環状のC面取り部である傾斜部621Daを有する。収容部621Dは、偏向部材6の傾斜しない初期状態において軸線Pと同軸である。収容部621Dの貫通孔の内径は、ボールレンズミラー63の外径よりも小径である。また、収容部621Dの傾斜部621Daの開口縁は、ボールレンズミラー63の外径よりも大径である。図7の例では、収容部621Dは、ボールレンズミラー63を、内縁に相当する傾斜部621Daの傾斜面と当接することにより、ボールレンズミラー63を位置決め及び支持し、ボールレンズミラー63を接着等により固定する。収容部621Dの傾斜部621Daの開口縁は、ボールレンズミラー63と傾斜部621Daとが環状に線当接する当接円の外径よりも大径であって、且つ、ボールレンズミラー63の外径よりも小径であってもよい。
【0055】
変形例4の偏向部材6は、収容部611D又はボールレンズミラー63の寸法精度が高くない場合であっても、収容部611Dとボールレンズミラー63とを、図7の断面視において2点接触(具体的には、傾斜部621Daによる環状の略線接触)させることができる。従って、収容部611Dは、ボールレンズミラー63を安定して支持することができる。
【0056】
(変形例5)
次に、実施形態1の変形例1について説明する。図9は、変形例5の傾斜検出装置4の側面図である。変形例5の傾斜検出装置4の説明において、図1乃至図4と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
【0057】
変形例5の偏向部材6は、永久磁石62の代わりに永久磁石62Eを備える。永久磁石62Eは、回転対称の略円板状の形状を有する。永久磁石62Eは、ボールレンズミラー63を収容する収容部621Eを有する。収容部621Eは、永久磁石62Eと接続される反射板61とは反対側の平坦面である。収容部621Eは、ボールレンズミラー63と面当接して、ボールレンズミラー63を接着等により固定する。
【0058】
変形例5の偏向部材6は、ボールレンズミラー63を、回動中心点Qから比較的離れた位置に配置しているため、偏向部材6の傾斜に対する光軸Bの移動量が大きい。従って、傾斜検出装置4は、偏向部材6の傾斜の検出感度及び検出精度を高くすることができる。また、永久磁石62Eの構造をシンプルにできる。永久磁石62Eを低いコストで製造できる。
【0059】
[実施形態2]
次に実施形態2について説明する。図10は、実施形態2の傾斜検出装置4の側面図である。実施形態2の傾斜検出装置4の説明において、実施形態1の図1乃至図9と同様の構成については、同一の符号を付す等して、その説明を省略又は簡略化する。
【0060】
実施形態2の偏向部材6は、実施形態1の偏向部材6に設けられたボールレンズミラー63の代わりに、再帰反射部材としてシートミラー64を備える。シートミラー64は、反射シート又は反射板である。シートミラー64は、例えば、実施形態1の変形例5で説明した永久磁石62Eの平坦面状の収容部621Eに固定される。
【0061】
傾斜検出装置4は、再帰反射部材としてシートミラー64を用いた場合であっても、偏向部材6の傾斜に応じた光軸Bで、レーザ光L2を検出部431に導光することができる。また、シートミラー64を用いることにより、再帰反射部材を小型に構成することができ、傾斜検出装置4を小型化することができる。
【0062】
[実施形態3]
次に実施形態3について説明する。図11は、実施形態3の傾斜検出装置4Gの側面図である。傾斜検出装置4Gの説明において、傾斜検出装置4と同様の構成については、同一の符号を付す等して、その説明を省略又は簡略化する。
【0063】
傾斜検出装置4Gは、ビームスプリッタ44の代わりにビームスプリッタの一つとして偏光ビームスプリッタ44Gを備える。また、傾斜検出装置4Gは、1/4波長板45を有する。偏向部材6は、実施形態1の傾斜検出装置4の偏向部材6と同様の構成を有する。
【0064】
光源41は、レーザ光L2を出射するレーザ発光ダイオードである。従って、レーザ光L2は、直線偏光の光である。偏光ビームスプリッタ44Gは、S偏光及びP偏光の一方の光を反射し、S偏光及びP偏光の他の一方の光を透過する分光特性を有する。本実施形態の傾斜検出装置4Gは、光源41から出射されたレーザ光L2を、直線偏光である第一偏光の光として1/4波長板45側に向けて反射する。
【0065】
1/4波長板45は、偏光ビームスプリッタ44Gにより導光された第一偏光の光であるレーザ光L2を、直線偏光から円偏光に変換し、偏向部材6のボールレンズミラー63に導光する。ボールレンズミラー63は、偏向部材6の傾斜に対応してレーザ光L2の光軸位置を光軸Aから光軸Bに変位量d分だけ変位させて、1/4波長板45に反射する。1/4波長板45は、ボールレンズミラー63から導光されたレーザ光L2を、円偏光から直線偏光に変換し、第一偏光の光と直交する偏光方向の第二偏光の光として、偏光ビームスプリッタ44Gに出射する。
【0066】
偏光ビームスプリッタ44Gは、1/4波長板45から導光されたレーザ光L2を透過して、検出部431に導光する。
【0067】
本実施形態3の傾斜検出装置4Gは、偏光ビームスプリッタ44Gにより導光されるレーザ光L2の漏れ成分を低減することができるため、検出部431が受光するレーザ光L2の光量を高くすることができる。従って、傾斜検出装置4Gの検出部431は、高い感度でレーザ光L2を検出できる。
【0068】
以上、本開示は、検出部431により検出された検出光の光軸B位置に対応する光軸位置信号から偏向部材6の傾斜を検出する傾斜検出装置4,4G及び傾斜検出方法について説明した。傾斜検出装置4,4Gは、回動中心点Q周りに回動制御される偏向部材6と、偏向部材6における機能面とは反対側において回動中心点Qから離れた位置に配置され、偏向部材6に対して固定された再帰反射部材と、再帰反射部材に対して検出光を照射する光源41と、再帰反射部材により反射された検出光を検出する検出部431と、を備える。
【0069】
傾斜検出装置4,4Gは、検出光を偏向部材6の機能面側から入射させなくても偏向部材6の傾斜を検出できるため、光源41及び検出部431を、ヨーク部材5の内部、又は、偏向部材6とは反対側のヨーク部材5の外部に設けることができる。従って、傾斜検出装置4,4G及び傾斜検出装置4,4Gを搭載した光源装置1等の装置を小型化することができる。例えば、LiDAR用測距装置は、本開示の傾斜検出装置4,4Gを適用することにより、傾斜検出機能を有しながら小型に構成することができる。
【0070】
また、傾斜検出装置4,4Gは、再帰反射部材を用いることにより、偏向部材6の傾斜を、大きな傾斜角度の範囲に亘って検出できる。さらに、傾斜検出装置4,4Gを用いた傾斜検出方法は、スキャナ装置2においてヨーク部材5の占有により減少する各部材の配置の自由度を向上させることができる。傾斜検出装置4,4Gは、構成部材の配置空間が少ない装置であっても搭載できる。偏向部材6の傾斜角度に対応する検出光の変位する範囲が広いと、検出部431の受光部432を大型化する必要があるが、本実施形態の傾斜検出装置4,4Gは構成部材の配置空間が少ない装置に搭載可能であるため、傾斜検出装置4,4Gが搭載される装置を小型に構成することができる。
【0071】
以上で本開示の実施形態の説明を終えるが、本開示の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0072】
例えば、検出部431は、偏向部材6の回動方向が一方向である場合は、2分割光検出素子であってもよい。この場合、反射部632は、円弧状に設けることができる。本開示では検出部431が、4分割光検出素子である例について説明したが、検出部431は、光位置検出素子(PSD,Position Sensitive Detector)、又は、2次元のイメージセンサであってもよい。
【0073】
また、傾斜検出装置4,4Gの構成において、光源41と検出部431は入れ替えて配置してもよい。傾斜検出装置4Gにおいて光源41と検出部431とを入れ替える場合、偏光ビームスプリッタ44Gは、前述した第一偏光の光を透過し、第一偏光の光と直交する偏光方向の第二偏光の光を反射する機能を有する。
【0074】
また、検出部431は、ヨーク部材5の外側に設けてもよい。例えば、基部材55は、厚み方向に貫通する円形の開口部を有する。この開口部は、一対の第一端部532aの間、且つ、一対の第二端部542aの間に設けられるギャップG(磁気ギャップ)を通る軸線P上に配置される。検出部431は、ボールレンズミラー63により反射され、ヨーク部材5の当該開口部を介して照射されたレーザ光L2を、検出してもよい。これにより、ヨーク部材5の磁気回路(第一磁路C1及び第二磁路C2)の全長を短くすることができ、磁気回路を効率化することができる。
【0075】
また、傾斜検出装置4,4Gは、光源41、レンズ42、ビームスプリッタ44及び検出部431を、ヨーク部材5の外側に設けてもよい。レーザ光L2は、基部材55の厚み方向に設けた上記開口部を介して導光される。
【0076】
また、本開示の測距光光学系12は、測距用の光以外の用途に用いられる光を導光するために用いてもよい。また傾斜検出装置4,4Gは、偏向部材6に限らず、回動中心点Q周りに回動する機能を有する他の光学部材の傾斜の検出に適用してもよい。傾斜検出装置4,4Gが傾斜を検出する光学部材は、光の反射又は透過等の他の機能面を有してもよい。さらに、傾斜検出装置4,4Gは、偏向部材6の代わりに光学部材以外のその他の部材の傾斜を検出する装置として利用できる。
【0077】
以上、本開示の構成を例示すると以下のとおりである。
[1]
回動中心点周りに回動制御される光学部材と、
前記光学部材における機能面とは反対側において前記回動中心点から離れた位置に配置され、前記光学部材に対して固定された再帰反射部材と、
前記再帰反射部材に対して検出光を照射する光源と、
前記再帰反射部材により反射された前記検出光を検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記検出光の傾斜検出信号から、前記光学部材の傾斜を検出する制御部と、
を備える傾斜検出装置。
[2]
前記再帰反射部材はボールレンズミラーである[1]に記載の傾斜検出装置。
[3]
前記ボールレンズミラーの屈折率は1.8から2.1の範囲である[2]に記載の傾斜検出装置。
[4]
前記ボールレンズミラーは、前記回動中心点側における球冠状の領域に反射膜を有する[2]に記載の傾斜検出装置。
[5]
前記ボールレンズミラーは、前記反射膜を、前記光学部材の最大振れ角度の2倍以上の範囲に有する[4]に記載の傾斜検出装置。
[6]
前記検出部は、4分割光検出素子である[1]に記載の傾斜検出装置。
[7]
前記検出部は、光位置検出素子である[1]に記載の傾斜検出装置。
[8]
前記検出部は、2次元のイメージセンサである[1]に記載の傾斜検出装置。
[9]
前記光学部材は、前記ボールレンズミラーを固定し且つヨーク部材により磁気制御される永久磁石を更に備える[2]に記載の傾斜検出装置。
[10]
前記永久磁石は、前記ボールレンズミラーを収容する収容部を有する[9]に記載の傾斜検出装置。
[11]
前記収容部は、前記ボールレンズミラーを内縁により支持する窪み部である[10]に記載の傾斜検出装置。
[12]
前記収容部は、前記ボールレンズミラーを、内縁及び底部により支持する窪み部である[10]に記載の傾斜検出装置。
[13]
前記収容部は、前記ボールレンズミラーを、内壁及び前記光学部材の前記機能面とは反対側の面により支持する貫通孔である[10]に記載の傾斜検出装置。
[14]
前記光源は、前記光学部材が最大振れ角度である場合の前記ボールレンズミラーを含む領域に前記検出光を照射する[2]に記載の傾斜検出装置。
[15]
前記再帰反射部材は反射シート又は反射板である請求項1に記載の傾斜検出装置。
[16]
回動中心点周りに回動制御される偏向部材と、
前記反射部材における反射面とは反対側において前記回動中心点から離れた位置に配置され、前記反射部材に対して固定されたボールレンズミラーと、
前記ボールレンズミラーに対して検出光を照射する光源と、
前記ボールレンズミラーにより反射された前記検出光を検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記検出光の傾斜検出信号から、前記反射部材の傾斜を検出する制御部と、
を備える傾斜検出装置。
[17]
ヨーク部材により磁気制御される永久磁石を有し、回動中心点周りに回動制御される光学部材と、
前記光学部材における機能面とは反対側において前記回動中心点から離れた位置に配置され、前記永久磁石に固定された再帰反射部材と、
前記再帰反射部材に対して検出光を照射する光源と、
前記再帰反射部材により反射された前記検出光を検出する検出部と、
制御部と、
を備える傾斜検出装置の傾斜検出方法であって、
前記検出部により検出された前記検出光の傾斜検出信号から、前記光学部材の傾斜を検出する、
傾斜検出方法。
【符号の説明】
【0078】
1 光源装置
2 スキャナ装置
3 偏向制御装置
4,4G 傾斜検出装置
5 ヨーク部材
6 偏向部材
11 制御部
12 測距光光学系
13 光学系駆動回路
14 スキャナ装置駆動回路
15 角度センサ回路
41 光源
42 レンズ
43 検出回路基板
44,44G ビームスプリッタ
45 1/4波長板
51 第一ヨーク
52 第二ヨーク
53 第一腕部材
54 第二腕部材
55 基部材
55a 側縁
61 反射板
62,62A~62E 永久磁石
63 ボールレンズミラー
64 シートミラー
431 検出部
432,432a~432d 受光部
531,541 胴部
532,542 突出部
532a 第一端部
533,543 ヨークコイル
542a 第二端部
551 切欠部
551a 内面
553 開口部
611 反射面
612 面
621,621A~621E 収容部
621a,621Ca 底部
621b,621Ab 内壁
621Cb,621Da 傾斜部
621c 内縁
631 ボールレンズ
632 反射部
632a 集光点
A,B 光軸
C1 第一磁路
C2 第二磁路
D1 第一方向
D2 第二方向
G ギャップ
L1,L11,L12,L2 レーザ光
L21,L22 光成分
L3 反射光
O 中心点
P 軸線
Q 回動中心点
R 中心点
d 変位量
θMAX 最大傾斜角度
φ 成膜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11