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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084978
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
B41J2/01 103
B41J2/01 307
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199217
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐登
(72)【発明者】
【氏名】小池 良和
(72)【発明者】
【氏名】大橋 一順
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB58
2C056EC12
2C056EC28
2C056FA13
2C056HA07
2C056HA29
2C056HA30
2C056HA32
(57)【要約】
【課題】媒体の両面に記録を行う為に媒体を反転させる為の経路を設けると、装置の大型化を招き易い。
【解決手段】液体吐出装置は、媒体の第1面を吸着して搬送する第1搬送ベルト機構と、第1搬送ベルト機構と対向して配置され、媒体の第1面に対し反対の第2面に対して液体を吐出する第1液体吐出部と、第1搬送ベルト機構から媒体が引き渡される搬送ベルト機構であって、媒体の第2面を吸着して搬送する第2搬送ベルト機構と、第2搬送ベルト機構と対向して配置され、媒体の第1面に対して液体を吐出する第2液体吐出部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の第1面を吸着して搬送する第1搬送ベルト機構と、
前記第1搬送ベルト機構と対向して配置され、媒体の前記第1面に対し反対の第2面に対して液体を吐出する第1液体吐出部と、
前記第1搬送ベルト機構から媒体が引き渡される搬送ベルト機構であって、媒体の前記第2面を吸着して搬送する第2搬送ベルト機構と、
前記第2搬送ベルト機構と対向して配置され、媒体の前記第1面に対して液体を吐出する第2液体吐出部と、を備える、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置において、前記第1液体吐出部による液体吐出方向と前記第2液体吐出部による液体吐出方向とが鉛直方向に沿っている、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出装置において、前記第1液体吐出部による液体吐出方向が鉛直上方であり、前記第2液体吐出部による液体吐出方向が鉛直下方である、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吐出装置において、前記第1搬送ベルト機構の一部と前記第2搬送ベルト機構の一部とが、媒体搬送方向において重なる、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液体吐出装置において、前記第1搬送ベルト機構の少なくとも一部と前記第2液体吐出部の少なくとも一部とが、鉛直方向において重なり、
前記第2搬送ベルト機構の少なくとも一部と前記第1液体吐出部の少なくとも一部とが、鉛直方向において重なる、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の液体吐出装置において、前記第1搬送ベルト機構は、
複数の孔が形成された無端状の搬送ベルトと、
前記孔を通じて吸引することによって前記搬送ベルトに媒体を吸着させる吸引機構と、を備え、
前記搬送ベルトにおいて媒体の前記第1面と対面する領域は、
前記吸引機構によって媒体を前記搬送ベルトに吸着する吸着領域と、
前記吸着領域に対し媒体搬送方向の下流に位置し、前記吸引機構で生じる排気を前記孔を通じて排出することにより前記搬送ベルトから媒体を剥離させる剥離領域と、
を有する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液体吐出装置において、前記吸引機構は、
吸引ファンと、
前記吸引ファンによって負圧が形成される負圧室であって、前記搬送ベルトの前記孔を通じて吸引する負圧室と、
前記吸引ファンによって正圧が形成される正圧室であって、前記搬送ベルトの前記孔を通じて前記排気を排出する正圧室と、
前記負圧室と前記正圧室とを仕切る仕切壁であって、前記負圧室と前記正圧室との容積比率を変更する方向に移動することにより、前記吸着領域と前記剥離領域との面積比率を変更する仕切壁と、
を有する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液体吐出装置において、前記仕切壁の移動を制御する制御部を備え、
前記制御部は、記録条件に応じて前記仕切壁を制御する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項9】
請求項1に記載の液体吐出装置において、前記第1搬送ベルト機構から媒体を剥離する剥離爪を備える、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記第1搬送ベルト機構は、
複数の孔が形成された無端状の搬送ベルトと、
前記孔を通じて吸引することによって前記搬送ベルトに媒体を吸着させる吸引機構と、を備え、
前記吸引機構は、
吸引ファンと、
前記吸引ファンによって負圧が形成される負圧室であって、前記搬送ベルトの前記孔を通じて吸引する負圧室と、を備え、
前記吸引ファンを制御する制御部は、記録条件に応じて前記吸引ファンを制御する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項11】
請求項1に記載の液体吐出装置において、前記第1搬送ベルト機構における搬送方向下流部位が前記第2搬送ベルト機構に近づく様に、前記第1搬送ベルト機構が前記第2搬送ベルト機構に対して傾斜して配置されている、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項12】
請求項1に記載の液体吐出装置において、前記第1液体吐出部による液体吐出方向と前記第2液体吐出部による液体吐出方向とが水平方向に沿っている、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一例であるインクジェット記録装置では、記録用紙に代表される媒体を搬送ベルトに吸着させつつ搬送する構成が知られており、またこの様な構成において特許文献1に示される様に媒体を反転させる為の経路を設け、媒体の両面に記録を行う構成も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-112571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
媒体の両面に記録を行う為に媒体を反転させる為の経路を設けると、装置の大型化を招き易い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する為の、本発明の液体吐出装置は、媒体の第1面を吸着して搬送する第1搬送ベルト機構と、前記第1搬送ベルト機構と対向して配置され、媒体の前記第1面に対し反対の第2面に対して液体を吐出する第1液体吐出部と、前記第1搬送ベルト機構から媒体が引き渡される搬送ベルト機構であって、媒体の前記第2面を吸着して搬送する第2搬送ベルト機構と、前記第2搬送ベルト機構と対向して配置され、媒体の前記第1面に対して液体を吐出する第2液体吐出部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】プリンターの媒体搬送経路を示す図。
図2】第1搬送ベルト機構の構成を示す図。
図3】第2搬送ベルト機構の構成を示す図。
図4】搬送ベルトの平面図。
図5】圧力ケースを構成する壁部の平面図。
図6】第1搬送ベルト機構の他の実施形態を示す図。
図7】仕切壁の動作推移を示す図。
図8】第1搬送ベルト機構の他の実施形態を示す図。
図9】第1搬送ベルト機構と第2搬送ベルト機構の他の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を概略的に説明する。
第1の態様に係る液体吐出装置は、媒体の第1面を吸着して搬送する第1搬送ベルト機構と、前記第1搬送ベルト機構と対向して配置され、媒体の前記第1面に対し反対の第2面に対して液体を吐出する第1液体吐出部と、前記第1搬送ベルト機構から媒体が引き渡される搬送ベルト機構であって、媒体の前記第2面を吸着して搬送する第2搬送ベルト機構と、前記第2搬送ベルト機構と対向して配置され、媒体の前記第1面に対して液体を吐出する第2液体吐出部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、媒体は前記第1搬送ベルト機構から前記第2搬送ベルト機構へ引き渡される構成であり、また前記第1搬送ベルト機構では前記第1液体吐出部によって媒体の前記第2面に液体が吐出され、前記第2搬送ベルト機構では前記第2液体吐出部によって媒体の前記第1面に液体が吐出される構成であることから、前記第1液体吐出部と前記第2液体吐出部との間で媒体を反転させる為の経路を設けることなく媒体の両面に記録が可能となり、装置の大型化を大幅に抑制できる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記第1液体吐出部による液体吐出方向と前記第2液体吐出部による液体吐出方向とが鉛直方向に沿っていることを特徴とする。
本態様によれば、前記第1液体吐出部による液体吐出方向と前記第2液体吐出部による液体吐出方向とが鉛直方向に沿っている為、媒体に記録を行う際の媒体搬送経路を水平方向に沿った直線状にでき、装置の高さ方向寸法を抑制できる。
【0010】
第3の態様は、第2の態様に従属する態様であって、前記第1液体吐出部による液体吐出方向が鉛直上方であり、前記第2液体吐出部による液体吐出方向が鉛直下方であることを特徴とする。
本態様によれば、前記第1液体吐出部による液体吐出方向が鉛直上方であり、前記第2液体吐出部による液体吐出方向が鉛直下方である為、前記第1搬送ベルト機構から前記第2搬送ベルト機構へ媒体を引き渡す際に重力の作用を利用でき、前記第1搬送ベルト機構から前記第2搬送ベルト機構への媒体の引き渡しが容易となり易い。
【0011】
第4の態様は、第3の態様に従属する態様であって、前記第1搬送ベルト機構の一部と前記第2搬送ベルト機構の一部とが、媒体搬送方向において重なることを特徴とする。
本態様によれば、前記第1搬送ベルト機構の一部と前記第2搬送ベルト機構の一部とが、媒体搬送方向において重なることから、前記第1搬送ベルト機構から前記第2搬送ベルト機構へと媒体をより確実に引き渡すことができるとともに、媒体搬送方向の装置寸法も抑制できる。
尚、本態様は上記第3の態様に限らず、上記第1のまたは第2の態様に従属しても良い。
【0012】
第5の態様は、第4の態様に従属する態様であって、前記第1搬送ベルト機構の少なくとも一部と前記第2液体吐出部の少なくとも一部とが、鉛直方向において重なり、前記第2搬送ベルト機構の少なくとも一部と前記第1液体吐出部の少なくとも一部とが、鉛直方向において重なることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、前記第1搬送ベルト機構の少なくとも一部と前記第2液体吐出部の少なくとも一部とが、鉛直方向において重なり、前記第2搬送ベルト機構の少なくとも一部と前記第1液体吐出部の少なくとも一部とが、鉛直方向において重なることから、装置の鉛直方向寸法を抑制できる。
尚、本態様は上記第4の態様に限らず、上記第2のまたは第3の態様に従属しても良い。
【0014】
第6の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記第1搬送ベルト機構は、複数の孔が形成された無端状の搬送ベルトと、前記孔を通じて吸引することによって前記搬送ベルトに媒体を吸着させる吸引機構と、を備え、前記搬送ベルトにおいて媒体の前記第1面と対面する領域は、前記吸引機構によって媒体を前記搬送ベルトに吸着する吸着領域と、前記吸着領域に対し媒体搬送方向の下流に位置し、前記吸引機構で生じる排気を前記孔を通じて排出することにより前記搬送ベルトから媒体を剥離させる剥離領域と、を有することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、前記搬送ベルトにおいて媒体の前記第1面と接する領域は、前記吸引機構によって媒体を吸着する吸着領域と、前記吸着領域に対し媒体搬送方向の下流に位置し、前記吸引機構で生じる排気を前記孔を通じて排出することにより前記搬送ベルトから媒体を剥離させる剥離領域と、を有することから、前記剥離領域によって媒体を前記搬送ベルトから適切に剥離させることができ、ひいては前記第2搬送ベルト機構へ媒体を適切に引き渡すことができる。
加えて前記剥離領域は、前記吸引機構で生じる排気を前記孔を通じて排出することにより前記搬送ベルトから媒体を剥離させる構成である為、前記吸引機構で生じる排気を有効利用することで前記剥離領域を低コストに形成することができる。
尚、本態様は上記第1の態様に限らず、上記第2から第5の態様のいずれかに従属しても良い。
【0016】
第7の態様は、第6の態様に従属する態様であって、前記吸引機構は、吸引ファンと、前記吸引ファンによって負圧が形成される負圧室であって、前記搬送ベルトの前記孔を通じて吸引する負圧室と、前記吸引ファンによって正圧が形成される正圧室であって、前記搬送ベルトの前記孔を通じて前記排気を排出する正圧室と、前記負圧室と前記正圧室とを仕切る仕切壁であって、前記負圧室と前記正圧室との容積比率を変更する方向に移動することにより、前記吸着領域と前記剥離領域との面積比率を変更する仕切壁と、を有することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、前記仕切壁の移動により、前記吸着領域と前記剥離領域との面積比率を変更することができる為、前記吸着領域による媒体の吸着の程度と前記剥離領域による媒体の剥離の程度とを調整することができ、より適切に媒体の吸着と剥離とを行うことができる。
【0018】
第8の態様は、第7の態様に従属する態様であって、前記仕切壁の移動を制御する制御部を備え、前記制御部は、記録条件に応じて前記仕切壁を制御することを特徴とする。
本態様によれば、前記仕切壁の移動を制御する制御部は、記録条件に応じて前記仕切壁を制御することから、前記記録条件に応じて適切に媒体の吸着と剥離とを行うことができる。
【0019】
第9の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記第1搬送ベルト機構から媒体を剥離する剥離爪を備えることを特徴とする。
本態様によれば、前記第1搬送ベルト機構から媒体を剥離する剥離爪を備えることから、前記第1搬送ベルト機構から前記第2搬送ベルト機構へと媒体を適切に引き渡すことができる。
尚、本態様は上記第1の態様に限らず、上記第2から第8の態様のいずれかに従属しても良い。
【0020】
第10の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記第1搬送ベルト機構は、複数の孔が形成された無端状の搬送ベルトと、前記孔を通じて吸引することによって前記搬送ベルトに媒体を吸着させる吸引機構と、を備え、前記吸引機構は、吸引ファンと、前記吸引ファンによって負圧が形成される負圧室であって、前記搬送ベルトの前記孔を通じて吸引する負圧室と、を備え、前記吸引ファンを制御する制御部は、記録条件に応じて前記吸引ファンを制御する、ことを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、前記吸引ファンを制御する制御部は、記録条件に応じて前記吸引ファンを制御することから、記録条件に応じて媒体を適切に吸引することができる。
尚、本態様は上記第1の態様に限らず、上記第2から第9の態様のいずれかに従属しても良い。
【0022】
第11の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記第1搬送ベルト機構における搬送方向下流部位が前記第2搬送ベルト機構に近づく様に、前記第1搬送ベルト機構が前記第2搬送ベルト機構に対して傾斜して配置されていることを特徴とする。
本態様によれば、前記第1搬送ベルト機構における搬送方向下流部位が前記第2搬送ベルト機構に近づく様に、前記第1搬送ベルト機構が前記第2搬送ベルト機構に対して傾斜して配置されていることから、前記第1搬送ベルト機構から前記第2搬送ベルト機構へ媒体を引き渡す際の媒体の湾曲を弱めることができ、特に前記第2搬送ベルト機構における吸着領域での媒体の浮きを抑制できる。
尚、本態様は上記第1の態様に限らず、上記第2から第10の態様のいずれかに従属しても良い。
【0023】
第12の態様は、第1の態様に従属する態様であって、前記第1液体吐出部による液体吐出方向と前記第2液体吐出部による液体吐出方向とが水平方向に沿っていることを特徴とする。
本態様によれば、前記第1液体吐出部による液体吐出方向と前記第2液体吐出部による液体吐出方向とが水平方向に沿っている為、媒体搬送経路を鉛直方向に沿った直線状にでき、装置の水平方向寸法を抑制できる。
尚、本態様は上記第1の態様に限らず、上記第2から第10の態様のいずれかに適用しても良い。
【0024】
以下、本発明を具体的に説明する。
以下では記録用紙に代表される媒体に対し、インクに代表される液体を吐出することで記録を行うインクジェットプリンター1を、液体吐出装置の一例として説明する。以下においてインクジェットプリンター1は、プリンター1と略称する。
【0025】
各図において示すX-Y-Z座標系は直交座標系であって、X軸方向が媒体の搬送方向と交差する媒体幅方向であり、また装置奥行き方向である。またX軸方向は、後述する搬送ベルト11、31の幅方向となる。尚、X軸方向のうち-X方向を装置前面から装置背面に向かう方向とし、+X方向は装置背面から装置前面に向かう方向とする。
またY軸方向は装置幅方向であり、プリンター1の操作者から見て矢印の向く方向である+Y方向が左側、その反対の-Y方向が右側となる。Z軸方向は鉛直方向即ち装置高さ方向であり、矢印の向く方向である+Z方向が上方向、その反対の-Z方向が下方向となる。
尚、以下では媒体が送られていく方向を「下流」と言い、またその反対方向を「上流」と言う場合がある。
【0026】
図1において媒体搬送経路は破線で示されている。プリンター1において媒体は、破線で示す媒体搬送経路を通って搬送される。
プリンター1は装置本体2の下部に媒体カセット3を備えている。媒体カセット3は、装置前方側から着脱可能に設けられている。符号Pは、媒体カセット3に収容された媒体を示している。以降において媒体は符号Pを付して媒体Pと称する。
媒体カセット3に対しては、収容された媒体Pを送り出す給送ローラー4が設けられている。
【0027】
媒体カセット3から送り出された媒体Pは、湾曲した給送経路Tsを経由して第1搬送ベルト機構10へと送られる。尚、第1搬送ベルト機構10の上流には媒体検出部51が設けられ、後述する制御部50は、媒体検出部51により媒体Pの先端を検出することで、第1搬送ベルト機構10や後述する第2搬送ベルト機構30の各種制御を実行できる。
第1搬送ベルト機構10は、搬送ベルト11に媒体Pの第1面S1(図2参照)を吸着しつつ搬送する機構である。媒体Pの第1面S1は、媒体カセット3に収容されている状態では媒体Pの下側の面となる。第1搬送ベルト機構10の詳細については後に改めて説明する。
【0028】
第1搬送ベルト機構10と対向する位置には、媒体Pの第1面S1に対し反対の第2面S2(図2参照)に対してインクを吐出する第1ラインヘッド5が設けられている。媒体Pの第2面S2は、媒体カセット3に収容されている状態では媒体Pの上側の面となる。第1ラインヘッド5は、媒体Pの第2面S2に液体を吐出する第1液体吐出部の一例である。
第1ラインヘッド5は、インクを吐出するインク吐出面5aにインク吐出ノズル(不図示)が配置されている。第1ラインヘッド5は、インク吐出ノズル(不図示)が媒体幅方向の全域をカバーする様に配置されたインク吐出ヘッドであり、媒体幅方向への移動を伴わないで媒体幅全域に記録が可能なインク吐出ヘッドとして構成されている。
但し第1ラインヘッド5に代えて、媒体幅方向への移動を伴って記録を行うタイプのインク吐出ヘッドを採用しても良い。
【0029】
第1搬送ベルト機構10によって搬送されつつ第1面S1に記録が行われた媒体Pは、第1搬送ベルト機構10から第2搬送ベルト機構30へと引き渡される。
第2搬送ベルト機構30は、搬送ベルト31に媒体Pの第2面S2(図3参照)を吸着しつつ搬送する機構である。第2搬送ベルト機構30の詳細については後に改めて説明する。
【0030】
第2搬送ベルト機構30と対向する位置には、媒体Pの第1面S1に対してインクを吐出する第2ラインヘッド6が設けられている。第2ラインヘッド6は、媒体Pの第1面S1に液体を吐出する第2液体吐出部の一例である。
第2ラインヘッド6は、インクを吐出するインク吐出面6aにインク吐出ノズル(不図示)が配置されている。第2ラインヘッド6は、インク吐出ノズル(不図示)が媒体幅方向の全域をカバーする様に配置されたインク吐出ヘッドであり、媒体幅方向への移動を伴わないで媒体幅全域に記録が可能なインク吐出ヘッドとして構成されている。
但し第2ラインヘッド6に代えて、媒体幅方向への移動を伴って記録を行うタイプのインク吐出ヘッドを採用しても良い。
【0031】
第2搬送ベルト機構30によって搬送される媒体Pは、湾曲した排出経路Teを経由して排出ローラー対7へ送られ、排出ローラー対7によって排出トレイ8へ排出される。
尚、装置本体2はプリンター1の各種制御を行う制御部50を備えている。プリンター1における可動部位は、全て制御部50によって動作が制御される。制御部50はプリンター1に設けられた操作部(不図示)を介して設定された各種設定情報、及び操作部を介して指示された実行指令に基づき、各種制御を行う。但し制御部50は、プリンター1にアクセス可能な外部コンピュータ(不図示)から送信される情報に基づいて、各種設定や各種実行指令を受け付け可能であることは勿論である。
制御部50は、不図示のCPU、RAMや不揮発性メモリ等を備えており、以降説明する各種制御を実現するプログラムや当該プログラムの実行に必要な各種パラメーターは、上記不揮発性メモリに格納されている。
【0032】
続いて図2図4図5を参照して第1搬送ベルト機構10について詳説する。
第1搬送ベルト機構10は、搬送ベルト11、駆動プーリー12、従動プーリー13、及び吸引機構15を備えている。
搬送ベルト11は、駆動プーリー12と従動プーリー13とに掛け回される無端ベルトである。搬送ベルト11は、駆動プーリー12がベルト駆動モーター(不図示)により駆動されることで回転する。
【0033】
搬送ベルト11の内側には、吸引機構15が設けられている。吸引機構15は、搬送ベルト11に形成された孔11a(図4参照)を通じて吸引することによって搬送ベルト11に媒体Pを吸着させる機構であり、圧力ケース16と、吸引ファン21とを備えている。
圧力ケース16には負圧室17が形成される。圧力ケース16は壁部16aを有し、搬送ベルト11は壁部16aに沿って移動する。
【0034】
搬送ベルト11には、図4に示す様に孔11aが複数形成されている。また圧力ケース16の壁部16aには、図5に示す様に開口16bが複数形成されている。そして搬送ベルト11の周回動作に伴って搬送ベルト11の孔11aが壁部16aの開口16bと重なることができる様に構成されている。これにより圧力ケース16内の負圧室17に負圧が形成されると、壁部16aの開口16bと搬送ベルト11の孔11aとを介して媒体Pが吸引され、媒体Pが搬送ベルト11に吸着して搬送される。
【0035】
吸引ファン21は、吸引ダクト22を介して負圧室17と接続される。吸引ファン21が回転すると、吸引ダクト22には矢印で示す気流が生じ、これにより負圧室17内に負圧が形成される。
尚、吸引ファン21で生じる排気は、排気ダクト23を介して不図示の排気口から排出される。
図2において符号As1は吸着領域を示している。吸着領域As1において、媒体Pは吸着作用を受ける。
【0036】
吸引ファン21は、制御部50により制御される不図示のモーターにより駆動される。吸引ファン21は、制御部50により回転と停止が制御され、また回転する際には回転数が制御される。
尚、図2において吸引ファン21は搬送ベルト11の内側に設けられているが、搬送ベルト11の外側に設けられていても良い。
【0037】
吸着領域As1の下流には、剥離爪25が設けられている。剥離爪25は、上流端が搬送ベルト11に接触する様に設けられており、搬送ベルト11によって搬送される媒体Pを搬送ベルト11から剥離させる。
【0038】
続いて図3を参照して第2搬送ベルト機構30について詳説する。
第2搬送ベルト機構30は、搬送ベルト31、駆動プーリー32、従動プーリー33、及び吸引機構35を備えている。
搬送ベルト31は、駆動プーリー32と従動プーリー33とに掛け回される無端ベルトである。搬送ベルト31は、駆動プーリー32がベルト駆動モーター(不図示)により駆動されることで回転する。尚、搬送ベルト31を駆動するベルト駆動モーターは、第1搬送ベルト機構10の搬送ベルト11を駆動するベルト駆動モーター(不図示)と共通であっても良いし、別個であっても良い。
【0039】
搬送ベルト31の内側には、吸引機構35が設けられている。吸引機構35は、搬送ベルト31に形成された孔(不図示)を通じて吸引することによって搬送ベルト31に媒体Pを吸着させる機構であり、圧力ケース36と、吸引ファン41とを備えている。尚、搬送ベルト31に形成された孔(不図示)は、図4を参照して説明した搬送ベルト11の孔11aと同様である。
圧力ケース36は壁部36aを有し、搬送ベルト31は壁部36aに沿って移動する。
【0040】
また圧力ケース36の壁部36aには、開口(不図示)が複数形成されている。壁部36aに形成された開口(不図示)は、図5を参照して説明した開口16bと同様である。そして搬送ベルト31の周回動作に伴って搬送ベルト31の孔(不図示)が壁部36aの開口(不図示)と重なることができる様に構成されている。これにより圧力ケース36内の負圧室37に負圧が形成されると、壁部36aの開口(不図示)と搬送ベルト31の孔(不図示)とを介して媒体Pが吸引され、媒体Pが搬送ベルト31に吸着して搬送される。
【0041】
吸引ファン41は、吸引ダクト42を介して負圧室37と接続される。吸引ファン41が回転すると、吸引ダクト42には矢印で示す気流が生じ、これにより負圧室37内に負圧が形成される。
尚、吸引ファン41で生じる排気は、排気ダクト43を介して不図示の排気口から排出される。図3において符号As2は吸着領域を示しており、吸着領域As2において、媒体Pは吸着作用を受ける。
【0042】
吸引ファン41は、制御部50により制御される不図示のモーターにより駆動される。吸引ファン41は、制御部50により回転と停止が制御され、また回転する際には回転数が制御される。
尚、図3において吸引ファン41は搬送ベルト31の内側に設けられているが、搬送ベルト31の外側に設けられていても良い。
以上の様に本実施形態において第2搬送ベルト機構30は、上述した第1搬送ベルト機構10との対比において剥離爪25を備えていない他は基本的構成が同じである。
【0043】
続いて主として図1を参照してプリンター1の作用効果について説明する。プリンター1は、媒体Pの第1面S1を吸着して搬送する第1搬送ベルト機構10と、第1搬送ベルト機構10と対向して配置され、媒体Pの第1面S1に対し反対の第2面S2に対してインクを吐出する第1ラインヘッド5と、第1搬送ベルト機構10から媒体Pが引き渡される搬送ベルト機構であって、媒体Pの第2面S2を吸着して搬送する第2搬送ベルト機構30と、第2搬送ベルト機構30と対向して配置され、媒体Pの第1面S1に対してインクを吐出する第2ラインヘッド6とを備える。
即ち媒体Pは第1搬送ベルト機構10から第2搬送ベルト機構30へ引き渡される構成であり、また第1搬送ベルト機構10では第1ラインヘッド5によって媒体Pの第2面S2にインクが吐出され、第2搬送ベルト機構30では第2ラインヘッド6によって媒体Pの第1面S1にインクが吐出される構成であることから、第1ラインヘッド5と第2ラインヘッド6との間で媒体Pを反転させる為の経路を設けることなく媒体Pの両面に記録が可能となり、装置の大型化を大幅に抑制できる。
【0044】
また本実施形態において第1ラインヘッド5によるインク吐出方向と第2ラインヘッド6によるインク吐出方向とが鉛直方向に沿っている。
このことにより、媒体Pに記録を行う際の媒体搬送経路を水平方向に沿った直線状にでき、装置の高さ方向寸法を抑制できる。
【0045】
また本実施形態において第1ラインヘッド5によるインク吐出方向が+Z方向即ち鉛直上方であり、第2ラインヘッド6によるインク吐出方向が-Z方向即ち鉛直下方である。このことにより、第1搬送ベルト機構10から第2搬送ベルト機構30へ媒体Pを引き渡す際に重力の作用を利用でき、第1搬送ベルト機構10から第2搬送ベルト機構30への媒体Pの引き渡しが容易となり易い。
【0046】
また本実施系形態において、第1搬送ベルト機構10の一部と第2搬送ベルト機構30の一部とが、媒体搬送方向において重なる。図1において領域Y1は、媒体搬送方向において第1搬送ベルト機構10の一部と第2搬送ベルト機構30の一部とが重なる領域を示している。この様な構成により、第1搬送ベルト機構10から第2搬送ベルト機構30へと媒体Pをより確実に引き渡すことができるとともに、媒体搬送方向の装置寸法も抑制できる。
【0047】
また本実施形態において、第1搬送ベルト機構10の少なくとも一部と第2ラインヘッド6の少なくとも一部とが、鉛直方向において重なり、第2搬送ベルト機構30の少なくとも一部と第1ラインヘッド5の少なくとも一部とが、鉛直方向において重なる。
図1において領域Z1は、第1搬送ベルト機構10の一部と第2ラインヘッド6の一部とが鉛直方向で重なる領域を示している。また領域Z2は、第2搬送ベルト機構30の一部と第1ラインヘッド5の一部とが鉛直方向で重なる領域を示している。
この様な構成により、装置の鉛直方向寸法を抑制できる。
【0048】
尚、第1搬送ベルト機構10と第2ラインヘッド6は、第1搬送ベルト機構10の全部が第2ラインヘッド6の一部と鉛直方向で重なっていても良いし、或いは第2ラインヘッド6の全部が第1搬送ベルト機構10の一部と鉛直方向で重なっていても良いし、或いは第1搬送ベルト機構10の全部と第2ラインヘッド6の全部とが鉛直方向で重なっていても良い。
同様に第2搬送ベルト機構30と第1ラインヘッド5は、第2搬送ベルト機構30の全部が第1ラインヘッド5の一部と鉛直方向で重なっていても良いし、或いは第1ラインヘッド5の全部の第2搬送ベルト機構30の一部と鉛直方向で重なっていても良いし、或いは第2搬送ベルト機構30の全部と第1ラインヘッド5の全部とが鉛直方向で重なっていても良い。
【0049】
また本実施形態において、第1搬送ベルト機構10から媒体Pを剥離する剥離爪25を備える。これにより、第1搬送ベルト機構10から第2搬送ベルト機構30へと媒体Pを適切に引き渡すことができる。
【0050】
尚、第1搬送ベルト機構10の吸引ファン21を制御する制御部50が、記録条件に応じて吸引ファン21を制御することも好適である。これにより、記録条件に応じて媒体Pを適切に吸引することができる。
例えば第1媒体P1と、第1媒体P1よりも坪量の大きい第2媒体P2とがある場合、第2媒体P2は第1媒体P1よりも重さによって落下し易い。従って吸引ファン21の第1制御例として、第2媒体P2を搬送する場合に第1媒体P1を搬送する場合よりも吸引ファン21を高速に回転させて吸着力を確保する。これにより、第2媒体P2を適切に吸着することができる。この様に媒体Pの坪量は、記録条件の一例となる。
【0051】
また例えば、吸引ダクト22が媒体幅方向(X軸方向)の中央位置で負圧室17に接続される場合、媒体幅方向の端部に向かうに従って吸着力が低下し易くなる。従って吸引ファン21の第2制御例として、第3媒体P3と、当該第3媒体P3よりも媒体幅方向のサイズの大きい第4媒体P4とがある場合、第4媒体P4を搬送する場合に第3媒体P3を搬送する場合よりも吸引ファン21を高速に回転させて吸着力を確保する。これにより、第4媒体P4を適切に吸着することができる。この様に媒体幅方向の媒体サイズは、記録条件の一例となる。
【0052】
また例えば第5媒体P5と、第5媒体P5よりも搬送方向(Y軸方向)長さの長い第6媒体P6とがある場合、第6媒体P6は第5媒体P5よりも重く、落下し易い。従って吸引ファン21の第3制御例として、第6媒体P6を搬送する場合に第5媒体P5を搬送する場合よりも吸引ファン21を高速に回転させて吸着力を確保する。これにより、第6媒体P6を適切に吸着することができる。この様に媒体Pの搬送方向長さは、記録条件の一例となる。
【0053】
また例えば媒体搬送速度が第1速度の場合と、第1速度より高速の第2速度の場合とでは、第2速度の場合が第1速度の場合よりも媒体吸着時間が短く落下し易い。従って吸引ファン21の第4制御例として、第2速度で媒体Pを搬送する場合に第1速度で媒体Pを搬送する場合よりも吸引ファン21を高速に回転させて吸着力を確保する。これにより、第2速度で媒体Pを搬送する場合に媒体Pを適切に吸着することができる。この様に媒体Pの搬送速度は、記録条件の一例となる。
【0054】
また例えば、記録デューティが第1デューティの場合と第1デューティより高い第2デューティの場合とでは、第2デューティの場合が第1デューティの場合よりも媒体Pがカールし易く、吸着面積が減って落下し易い。ここで記録デューティとは、記録面の単位面積当たりをインクが覆う割合であり、例えば、50%の記録デューティであれば、記録面の単位面積の50%がインクで覆われることとなる。但し記録デューティは、単位面積当たりに形成可能なドットに対し実際に形成されたドットの割合としても良い。
従って吸引ファン21の第5制御例として、記録デューティが第2デューティの場合、第1デューティの場合よりも吸引ファン21を高速に回転させて吸着力を確保する。これにより、第2デューティで媒体Pを搬送する場合に媒体Pを適切に吸着することができる。この様に記録デューティは、記録条件の一例となる。
【0055】
同様に環境条件によっても媒体Pのカールし易さは変化し、例えば第1環境条件と第1環境条件よりも低温低湿の第2環境条件とでは、第2環境条件の場合が第1環境条件の場合よりも媒体Pがカールし易く、吸着面積が減って落下し易い。従って吸引ファン21の第6制御例として、第2環境条件の場合、第1環境条件の場合よりも吸引ファン21を高速に回転させて吸着力を確保する。これにより、第2環境条件で媒体Pを搬送する場合に媒体Pを適切に吸着することができる。この様に環境条件は、記録条件の一例となる。尚、制御部50は、不図示の温湿度検出部により温湿度情報を取得可能である。
【0056】
以上説明した第1~第6制御例は、第1搬送ベルト機構10に適用するものであるが、第1搬送ベルト機構10に加えて第2搬送ベルト機構30に適用しても良いし、或いは第1搬送ベルト機構10に代えて第2搬送ベルト機構30に適用しても良い。
また以上説明した第1~第6制御例は、いずれか一つのみを採用しても良いし、二以上を組み合わせて採用しても良い。
【0057】
続いて図6を参照して第1搬送ベルト機構の他の実施形態について説明する。図6において符号10Aは上述した第1搬送ベルト機構10の変形例であり、また符号15Aは上述した吸引機構15の変形例である。尚、図6において既に説明した構成と同一の構成には同一符号を付しており、以下では重複する説明は避けるものとする。
吸引機構15Aは、圧力ケース16Aを備えている。吸引ファン21は、吸引ダクト22を介して負圧室17と接続される。吸引ファン21が回転すると、吸引ダクト22には矢印で示す気流が生じ、これにより負圧室17内に負圧が形成される。
符号19は、圧力ケース16A内を区画する仕切壁であり、仕切壁19に対し-Y方向に負圧室17が形成され、仕切壁19に対し+Y方向に正圧室18が形成される。
【0058】
吸引ファン21は、排気ダクト23を介して正圧室18と接続される。吸引ファン21が回転すると、排気ダクト23には矢印で示す気流が生じ、これにより正圧室18内に正圧が形成される。
ここで壁部16aに形成された開口16b(図5)は、負圧室17に面する領域に加え、正圧室18に面する領域にも形成されている。これにより、排気ダクト23を介して正圧室18に排出される排気が壁部16aの開口16bと搬送ベルト11の孔11aとを介して搬送ベルト11の外側に排出される。その結果、媒体Pが搬送ベルト11から剥離される。
【0059】
図6において符号Bsは剥離領域を示している。剥離領域Bsは、吸着領域As1に対して+Y方向に形成される。吸着領域As1は、仕切壁19に対し-Y方向に形成された負圧室17のY軸方向範囲に対応しており、剥離領域Bsは、仕切壁19に対し+Y方向に形成された正圧室18のY軸方向範囲に対応している。吸着領域As1において、媒体Pは吸着作用を受け、剥離領域Bsにおいて、媒体Pは剥離作用を受ける。
【0060】
仕切壁19は、制御部50による制御のもと、Y軸方向に沿って移動可能に設けられている。仕切壁19は、一例としてベルト機構(不図示)とこれを駆動するモーター(不図示)によってY軸方向に移動可能に設けることができる。
尚、本実施形態において剥離領域BSはインク吐出中の第1ラインヘッド5と対向しない様に設定される。これにより正圧室18から排出される排気が第1ラインヘッド5から吐出されるインクの飛行に悪影響を及ぼすことを抑制できる。
図6において剥離爪25は、剥離領域Bsの下流に設けられているが、剥離爪25が搬送ベルト11と接する位置が剥離領域Bs内であっても良い。
【0061】
以上の様に搬送ベルト11において媒体Pの第1面S1と対面する領域は、媒体Pを搬送ベルト11に吸着する吸着領域AS1と、吸着領域AS1に対し媒体搬送方向の下流に位置し、吸引機構15Aで生じる排気を排出することにより搬送ベルト11から媒体Pを剥離させる剥離領域Bsと、を有する。
このことにより、剥離領域Bsによって媒体Pを搬送ベルト11から適切に剥離させることができ、ひいては第2搬送ベルト機構30へ媒体Pを適切に引き渡すことができる。
加えて剥離領域Bsは、吸引機構15Aで生じる排気を排出することにより搬送ベルト11から媒体Pを剥離させる構成である為、吸引機構15Aで生じる排気を有効利用することで剥離領域Bsを低コストに形成することができる。
【0062】
また吸引機構15Aは、吸引ファン21によって負圧が形成される負圧室であって、搬送ベルト11の孔11a(図4参照)を通じて吸引する負圧室17と、吸引ファン21によって正圧が形成される正圧室であって、搬送ベルト11の孔11a(図4参照)を通じて排気を排出する正圧室18と、負圧室17と正圧室18とを仕切る仕切壁であって、負圧室17と正圧室18との容積比率を変更する方向に移動することにより、吸着領域As1と剥離領域Bsとの面積比率を変更する仕切壁19と、を有する。これにより、吸着領域As1による媒体Pの吸着及び剥離領域Bsによる媒体Pの剥離を調整することができ、より適切に媒体Pの吸着と剥離とを行うことができる。
【0063】
尚、仕切壁19の移動を制御する制御部50は、記録条件に応じて仕切壁19を制御することも好適である。これにより、記録条件に応じて適切に媒体Pの吸着と剥離とを行うことができる。
例えば、仕切壁19を-Y方向に移動させて吸着領域As1を小さくするほど吸着領域As1における吸着力は強まる為、上述した第1~第6制御例と同様な制御を、記録条件に応じて採用することができる。
【0064】
また媒体Pの先端は吸着し難い為、媒体Pの先端を吸着する際には吸着領域As1を小さくして吸着力を確保し、媒体Pの搬送が進むに従って吸着領域As1を大きくすることも好適である。図7の上の図は、媒体Pの先端を吸着する際の仕切壁19の位置であり、仕切壁19は第1ラインヘッド5と対向しない範囲において最も-Y方向に位置している。この状態から媒体Pの搬送が進むに従い、図7の上の図から下の図への変化で示す様に仕切壁19を+Y方向即ち搬送方向下流に移動させる。この様に仕切壁19を移動させることで、媒体Pの先端を吸着する際に適切な吸着力を得られるとともに、媒体Pの先端を剥離させる際には剥離領域Bsによる剥離作用を強めることができ、適切に媒体Pを搬送ベルト11から剥離させることができる。
【0065】
続いて図8を参照して更に第1搬送ベルト機構の他の実施形態について説明する。図8において符号10Bは上述した第1搬送ベルト機構10の変形例である。図8においても既に説明した構成と同一の構成には同一符号を付しており、以下では重複する説明は避けるものとする。
本実施形態では、第1搬送ベルト機構10における搬送方向下流部位が第2搬送ベルト機構30に近づく様に、第1搬送ベルト機構10が第2搬送ベルト機構30に対して傾斜して配置されている。また第1ラインヘッド5によるインク吐出方向は鉛直方向に平行ではなく、+Z方向成分と+Y方向成分とを含む方向となる。
この様に構成することで、第1搬送ベルト機構10Bから第2搬送ベルト機構30へ媒体Pを引き渡す際の媒体Pの湾曲を弱めることができ、特に第2搬送ベルト機構30における吸着領域As2での媒体Pの浮きを抑制できる。
【0066】
続いて図9を参照して更に第1搬送ベルト機構の他の実施形態について説明する。図9において符号10C、30Cはそれぞれ上述した第1搬送ベルト機構10、第2搬送ベルト機構30の変形例である。図9においても既に説明した構成と同一の構成には同一符号を付しており、以下では重複する説明は避けるものとする。
本実施形態では、第1ラインヘッド5によるインク吐出方向と第2ラインヘッド6によるインク吐出方向とが水平方向に沿っている。この為、第1搬送ベルト機構10Cによる媒体搬送方向と第2搬送ベルト機構30Cとによる媒体搬送方向とが鉛直方向に沿っている。
この様な構成によれば、媒体搬送経路を鉛直方向に沿った直線状にでき、装置の水平方向寸法を抑制できる。
【0067】
更に本発明は上記において説明した各実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0068】
1…インクジェットプリンター、2…装置本体、3…媒体カセット、4…給送ローラー、5…第1ラインヘッド、6…第2ラインヘッド、7…排出ローラー対、8…排出トレイ、
10、10A、10B、10C…第1搬送ベルト機構、11…搬送ベルト、11a…孔、12…駆動プーリー、13…従動プーリー、15…吸引機構、16…圧力ケース、16a…壁部、17…負圧室、18…正圧室、19…仕切壁、21…吸引ファン、22…吸引ダクト、23…排気ダクト、25…剥離爪、
30、30C…第2搬送ベルト機構、31…搬送ベルト、32…駆動プーリー、33…従動プーリー、35…吸引機構、36…圧力ケース、37…負圧室、41…吸引ファン、42…吸引ダクト、43…排気ダクト、
50…制御部、51…媒体検出部、
As1、As2…吸着領域、Bs…剥離領域、Ts…給送経路、Te…排出経路、P…媒体、S1…第1面、S2…第2面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9