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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084987
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】乾燥システム
(51)【国際特許分類】
   F26B 21/04 20060101AFI20240619BHJP
   B05C 9/14 20060101ALI20240619BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
F26B21/04 B
B05C9/14
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199244
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西森 豊
(72)【発明者】
【氏名】元井 昌司
【テーマコード(参考)】
3L113
4F042
【Fターム(参考)】
3L113AA02
3L113AB02
3L113AC01
3L113AC67
3L113AC86
3L113BA34
3L113DA02
4F042AA22
4F042BA08
4F042BA13
4F042BA19
4F042CC01
4F042CC09
4F042DB02
4F042DB26
4F042DB28
4F042DB29
4F042DB30
4F042DB31
4F042DB36
4F042DB37
(57)【要約】
【課題】塗膜を乾燥させる際に消費するエネルギーを従来よりも削減することができる乾燥システムを提供することを目的としている。
【解決手段】搬送される基材上に形成された塗膜を筐体部内で加熱することによって乾燥させる第1の乾燥ユニットと第2の乾燥ユニットが並べられた乾燥システムであって、前記第1の乾燥ユニットには、前記第1の乾燥ユニットの前記筐体部内からガスを排出する第1の排出部と、前記第1の排出部により排出されたガスに対して溶剤の回収処理を行う溶剤回収ユニットが設けられ、前記第2の乾燥ユニットには、前記第1の乾燥ユニットにおいて前記溶剤回収ユニットにより前記溶剤を回収された後の常温よりも高い温度のガスを、前記第2の乾燥ユニットの前記筐体部内で塗膜を加熱するためのガスとして供給する再利用流路が設けられている構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される基材上に形成された塗膜を筐体部内で加熱することによって乾燥させる第1の乾燥ユニットと第2の乾燥ユニットが並べられた乾燥システムであって、
前記第1の乾燥ユニットには、前記第1の乾燥ユニットの前記筐体部内からガスを排出する第1の排出部と、前記第1の排出部により排出されたガスに対して溶剤の回収処理を行う溶剤回収ユニットが設けられ、
前記第2の乾燥ユニットには、前記第1の乾燥ユニットにおいて前記溶剤回収ユニットにより前記溶剤を回収された後の常温よりも高い温度のガスを、前記第2の乾燥ユニットの前記筐体部内で塗膜を加熱するためのガスとして供給する再利用流路が設けられていることを特徴とする乾燥システム。
【請求項2】
前記第2の乾燥ユニットには、第2の乾燥ユニットの前記筐体部内のガスを排出する第2の排出部が設けられており、前記第2の排出部は、前記再利用流路により供給されるガスの量よりも多くのガスを排出することを特徴とする請求項1に記載の乾燥システム。
【請求項3】
前記第2の乾燥ユニットは、前記第1の乾燥ユニットおよび前記第2の乾燥ユニットによる塗膜の乾燥工程において前記筐体部内で塗膜から気化する溶剤の量が比較的少ない位置に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乾燥システム。
【請求項4】
前記第2の乾燥ユニットは、前記第1の乾燥ユニットおよび前記第2の乾燥ユニットによる塗膜の乾燥工程において最初に塗膜の加熱を行う位置に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乾燥システム。
【請求項5】
前記第2の乾燥ユニットは、前記第1の乾燥ユニットおよび前記第2の乾燥ユニットによる塗膜の乾燥工程において最後に塗膜の加熱を行う位置に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乾燥システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に形成された塗膜を、加熱して溶剤を気化させることによって乾燥させ、塗膜から気化した溶剤を回収する乾燥システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、ロールツーロールで搬送されるアルミ箔や、銅箔などのシート状の基材に対して、電極材料のスラリーを塗布して塗膜を形成し、形成した塗膜を乾燥させることで正極、負極が形成されている。なお、正極を形成する場合は、主にNMP(N‐メチル‐ピロリドン)を含有するスラリーが基材に塗布される。
【0003】
塗膜の乾燥は、塗膜を加熱して塗膜に含まれる溶剤等を気化させることによって行われている。正極を形成する場合は、塗膜から溶剤であるNMPが気化する。このNMPが、大気に放出されると環境を汚染してしまう問題がある。これに対して、塗膜の加熱、乾燥を行い、塗膜から気化したNMP(以下、溶剤と呼ぶ)を回収する設備として、図7に示す乾燥システム900が用いられている。
【0004】
この乾燥システム900は、搬送される基材910が内部を通過する筐体部920と、筐体部920の内部に空気などのガスを加熱して供給する供給機構930と、筐体部920内のガスを排出する排出部940と、排出部940により排出された溶剤を含むガスから溶剤を回収する溶剤回収ユニット950と、を備えている。
【0005】
上記構成の乾燥システム900は、供給機構930により筐体部920内に高温のガスを供給することによって、筐体部920内で基材910上の塗膜を一定時間、高温環境にさらして塗膜を加熱する。この加熱によって、塗膜から気化した溶剤を含むガスを筐体部920内から排出部940により排出する。そして、溶剤回収ユニット950は、排出部940により排出された溶剤を含むガスから溶剤を回収している(たとえば、下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-069435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記乾燥システム900では、筐体部920内からガスを漏れ出ることを防ぐために、溶剤回収ユニット950により溶剤を回収された後のガスの一部(以下、排ガス)を大気中に放出することによって、筐体部920の内部を外部に対して負圧にしている。
【0008】
このように、上記乾燥システム900では、一度加熱したガスの一部を、溶剤回収ユニット950による溶剤の回収後に再利用することなく排ガスとして大気中に放出していた。すなわち、上記乾燥システム900では、排ガスを活用することなく捨てていたため、エネルギーに無駄が生じていた。
【0009】
本発明は、上記問題を鑑みてされたものであり、塗膜を乾燥させる際に消費するエネルギーを従来よりも削減することができる乾燥システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するための本発明の乾燥システムは、搬送される基材上に形成された塗膜を筐体部内で加熱することによって乾燥させる第1の乾燥ユニットと第2の乾燥ユニットが並べられた乾燥システムであって、前記第1の乾燥ユニットには、前記第1の乾燥ユニットの前記筐体部内からガスを排出する第1の排出部と、前記第1の排出部により排出されたガスに対して溶剤の回収処理を行う溶剤回収ユニットが設けられ、前記第2の乾燥ユニットには、前記第1の乾燥ユニットにおいて前記溶剤回収ユニットにより前記溶剤を回収された後の常温よりも高い温度のガスを、前記第2の乾燥ユニットの前記筐体部内で塗膜を加熱するためのガスとして供給する再利用流路が設けられていることを特徴している。
【0011】
上記乾燥システムによれば、再利用流路を介して第2の乾燥ユニットの筐体部内に、第1の乾燥ユニットにおいて溶剤回収ユニットにより溶剤を回収された後の常温よりも温度が高いガスを供給している。そのため、常温のガスを第2の乾燥ユニットに供給する場合と比較して、第2の乾燥ユニットにおいて塗膜を加熱するために必要な温度までガスを加熱するために消費するエネルギーを削減することができる。このように、従来では第1の乾燥ユニットの筐体部の内部を外部に対して負圧にするために大気中に放出していたガスを、第2の乾燥ユニットで再利用することができるため、塗膜を乾燥させる際に消費するエネルギーを従来よりも削減することができる。
【0012】
また、前記第2の乾燥ユニットには、第2の乾燥ユニットの前記筐体部内のガスを排出する第2の排出部が設けられており、前記第2の排出部は、前記再利用流路により供給されるガスの量よりも多くのガスを排出する構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、再利用流路を介して第2の乾燥ユニットに大量のガスが供給されたとしても、第2の乾燥ユニットの筐体部の内部を外部に対して負圧にすることができるため、第2の乾燥ユニットの筐体部内からガスが漏れ出ることを防ぐことができる。
【0014】
また、前記第2の乾燥ユニットは、前記第1の乾燥ユニットおよび前記第2の乾燥ユニットによる塗膜の乾燥工程において前記筐体部内で塗膜から気化する溶剤の量が比較的少ない位置に配置される構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、第2の乾燥ユニットが、塗膜から気化する溶剤の量が比較的少ない位置に配置されるため、再利用流路を介して第2の乾燥ユニットに第1の乾燥ユニットから溶剤を含むガスが供給されたとしても、第2の乾燥ユニットにおいて溶剤が爆発する可能性のある濃度まで上昇しにくくなる。これにより、第2の乾燥ユニットが他の位置に配置される場合よりも安全にガスを再利用することができる。
【0016】
また、前記第2の乾燥ユニットは、前記第1の乾燥ユニットおよび前記第2の乾燥ユニットによる塗膜の乾燥工程において最初に塗膜の加熱を行う位置に配置される構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、第2の乾燥ユニットが、塗膜から溶剤がほぼ気化しない位置に配置されているため、再利用流路を介して第2の乾燥ユニットに第1の乾燥ユニットから溶剤を含むガスが供給されたとしても、第2の乾燥ユニットにおいてガスを安全に再利用することができる。これにより、安全性を保ちつつ消費するエネルギーを削減することができる。
【0018】
また、前記第2の乾燥ユニットは、前記第1の乾燥ユニットおよび前記第2の乾燥ユニットによる塗膜の乾燥工程において最後に塗膜の加熱を行う位置に配置される構成としてもよい。
【0019】
この構成によれば、第2の乾燥ユニットが、塗膜から溶剤がほぼ気化しない位置に配置されているため、再利用流路を介して第2の乾燥ユニットに第1の乾燥ユニットから溶剤を含むガスが供給されたとしても、第2の乾燥ユニットにおいてガスを安全に再利用することができる。これにより、安全性を保ちつつ消費するエネルギーを削減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の乾燥システムによれば、消費するエネルギーを従来よりも削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態における乾燥システムを概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態における第1の乾燥ユニットを説明するための図である。
図3】本発明の一実施形態における第2の乾燥ユニットを説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態における塗膜の温度と塗膜に含まれる溶剤の含有率の関係を示す図である。
図5】本発明の一実施形態における乾燥システムの1つのバリエーションを示す図である。
図6】本発明の一実施形態における乾燥システムの1つのバリエーションを示す図である。
図7】従来の乾燥システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施形態における乾燥システムについて図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX軸方向、Y軸方向と表現し、XY平面と垂直な方向(つまり、鉛直方向)をZ軸方向と表現する。
【0023】
図1は、本実施形態における乾燥システム100を概略的に示す図である。図2は、本実施形態における第1の乾燥ユニット2を説明するための図であり、図2(a)は第1の乾燥ユニット2を拡大して示しており、図2(b)は溶剤回収ユニット4を拡大して示している。図3は、第2の乾燥ユニット3を説明するための図であり、第2の乾燥ユニット3を拡大して示している。図4は、本実施形態における塗膜の温度と塗膜に含まれる溶剤の含有率の関係を示す図である。図5および図6は、本実施形態における乾燥システム100の1つのバリエーションを示す図である。
【0024】
本発明の乾燥システム100は、図示しない塗布装置により基材1上に形成された塗膜を乾燥させるためのものであり、本実施形態では、図1に示すように塗膜を加熱することによって乾燥させる第1の乾燥ユニット2と、第2の乾燥ユニット3と、を備えている。
【0025】
本実施形態における塗布装置は、リチウムイオン電池の正極を生産するためのものであり、基材1を搬送する図示しない搬送部と、搬送される基材1上にスラリーを塗布して塗膜を形成する図示しない塗布部と、を備えている。この塗布装置は、アルミ箔などの金属箔を一方向に長いシート状に形成した基材1を搬送部により搬送し、搬送される基材1上に活物質、バインダー、導電助剤をNMP(N‐メチル‐ピロリドン)などの溶剤により混合させたスラリーを塗布部により塗布することによって、基材1上に塗膜を形成している。この基材1上に形成した塗膜を乾燥システム100により加熱して乾燥させることによって、リチウムイオン電池の正極が形成される。
【0026】
以下、第1の乾燥ユニット2について説明する。
【0027】
第1の乾燥ユニット2は、基材1上に形成された塗膜を加熱して乾燥させるためのものである。本実施形態では、図1に示すように同じ構造の第1の乾燥ユニット2が3つ設けられており、基材1の搬送経路に沿って上流側から順に第1の乾燥ユニット2a、第1の乾燥ユニット2b、第1の乾燥ユニット2cが並べられている。以下の説明では、第1の乾燥ユニット2a、第1の乾燥ユニット2b、第1の乾燥ユニット2cを区別しない場合には、単に第1の乾燥ユニット2と呼ぶ。
【0028】
各々の第1の乾燥ユニット2は、図2(a)に示すように内部に基材1が通過する空間を有する筐体部21と、筐体部21内に供給されるガスを加熱する加熱部22と、筐体部21内に加熱部22により加熱されたガスを導入する図示しないノズルと、筐体部21内からガスを排出する第1の排出部23と、を有している。ここでいうガスは、空気のことである。なお、ガスは、N2ガスやHeガス、Arガスのような不活性ガスであってもよい。
【0029】
筐体部21は、図2(a)に示すように基材1の搬送方向に長く形成された箱体であり、搬送部による基材1の搬送経路上に設けられている。この筐体部21は、内部に基材1が通過する空間と、この空間に基材1が出入りするための入口および出口を有している。これにより、搬送部により搬送される基材1が筐体部21内を通過するようになっている。そして、第1の乾燥ユニット2a、第2の乾燥ユニット2b、および第2の乾燥ユニット2cは、各々の筐体部21が基材1の搬送経路に沿って連通するように並べられている。これにより、搬送部により搬送される基材1が各々の第1の乾燥ユニット2の筐体部21を連続して通過するようになっている。
【0030】
加熱部22は、筐体部21内に供給されるガスを加熱するための加熱源であり、塗膜を加熱するために必要な温度になるまでガスを加熱する。なお、加熱部22は、たとえば、電気ヒータや熱媒ヒータなどのヒータであるとよい。この加熱部22により加熱されたガスは、循環路51(図2(a)を参照)を通じてノズルから筐体部21内に導入される。これにより、筐体部21内を搬送される基材1上の塗膜を高温環境にさらして加熱し、塗膜から溶剤を気化させる。そして、塗膜を加熱した後のガスは、第1の排出部23により筐体部21外に排出される。
【0031】
また、各々の第1の乾燥ユニット2には、図2(a)に示すように第1の排出部23により排出されたガスに対して溶剤の回収処理を行う溶剤回収ユニット4と、筐体部21と溶剤回収ユニット4との間でガスを循環させる循環路5が設けられている。
【0032】
溶剤回収ユニット4は、筐体部21内で塗膜から気化した溶剤を液化させて回収する処理を行うためのものであり、筐体部21に付設するように設けられている。本実施形態における溶剤回収ユニット4は、図2(a)および図2(b)に示すように塗膜から気化した溶剤を含むガスを冷却する冷却部41と、冷却部41により冷却されたことによって液化した溶剤を貯留する回収部42と、冷却部41と回収部42とを接続する回収路43と、を有している。
【0033】
冷却部41は、溶剤を含むガスを冷却して溶剤を液化させるためのものである。本実施形態では、冷却部41が水冷方式を用いる冷却器であることを例に説明する。この冷却部41は、図2(b)に示すようにガスが流れる空洞を有する本体部44と、冷媒である水が流れる冷媒流路45と、を有している。
【0034】
本体部44は、内部にガスが流れる空洞を有する筐体であり、循環路5により筐体部21と接続されている。これにより、筐体部21内で塗膜から気化した溶剤を含むガスが、循環路5を介して本体部44内に流入する。
【0035】
また、冷媒流路45は、冷媒が流れる流路であり、図2(b)に示すように本体部44内に設けられている。この冷媒流路45に冷媒を流すことによって、循環路5を介して筐体部21から流入した本体部44内のガスを冷却する。これにより、ガスに含まれる溶剤を液化させる。
【0036】
回収部42は、冷却部41で液化した溶剤を回収するためのものであり、回収路43により冷却部41と接続されている。そして、回収路43には、冷却部41から回収部42に液化した溶剤を送る図示しないポンプが設けられており、このポンプによって溶剤を回収部42に送っている。これにより、溶剤が回収部42に回収される。そして、溶剤を回収された後のガスは、含まれる溶剤の濃度が低減された低濃度ガスとして冷却部41の本体部44内から循環路5に排出される。具体的には、溶剤回収ユニット4は、筐体部21から排出されて含む溶剤の濃度が40%LEL(爆発下限界濃度)程度になったガスから、冷却部41の本体部44内で溶剤を回収することによって、10%LEL程度の溶剤の濃度に低減してから循環路54に排出している。
【0037】
循環路5は、第1の乾燥ユニット2と溶剤回収ユニット4との間でガスを循環させるためのものである。本実施形態における循環路5は、図2(a)に示すように加熱部22から筐体部21にガスを送るよう接続された循環路51、筐体部21から熱交換ユニット56にガスを送るよう接続された循環路52、熱交換ユニット56から冷却部41にガスを送るよう接続された循環路53、冷却部41から熱交換ユニット56にガスを送るよう接続された循環路54、熱交換ユニット56から加熱部22にガスを送るよう接続された循環路55により構成されている。
【0038】
そして、循環路5の各所には、ガスを循環させるためのファンが設けられている。このファンにより、ガスが循環路5を介して加熱部22から筐体部21、熱交換ユニット56、冷却部41、熱交換ユニット56、加熱部22へ、というように循環する。
【0039】
ここで、循環路5を介して冷却部41から熱交換ユニット56へと向かうように流れるガスの一部が、再利用流路9を介して第2の乾燥ユニット3に供給されるようになっている。すなわち、溶剤回収ユニット4により溶剤を回収された後のガスの一部が、循環路5を介して再び第1の乾燥ユニット2の筐体部21に供給されないように再利用流路9により循環路5から排出されている。以下の説明では、再利用流路9により第1の乾燥ユニット2から排出されたガスを排ガスと呼ぶ。この排ガスの温度は常温よりも高い。
【0040】
また、各々の第1の乾燥ユニット2には、循環路5により循環させられるガスを供給する供給部61が設けられている。この供給部61は、少なくとも溶剤回収ユニット4により溶剤が回収された後の排ガス中に含まれる溶剤の濃度よりも含まれる溶剤の濃度が低いガス(以下、低濃度ガスと呼ぶ)を第1の乾燥ユニット2に供給するための供給源である。本実施形態では、図2(a)に示すように供給する低濃度ガスが熱交換ユニット56よりも手前側で再利用流路9により排出されなかったガス(以下、循環ガスと呼ぶ)に合流することができるよう供給路62を介して循環路5に接続されている。そして、図示しないファンにより供給部61から循環路5にガスを送っている。これにより、循環ガスに含まれる溶剤の濃度を低減することができる。
【0041】
ここで、供給部61は、少なくとも循環路52を流れるガスの量と循環路54から熱交換ユニット56へと向かって流れるガスの量の差分よりも少ない低濃度ガスを第1の乾燥ユニット2に供給するようになっている。本実施形態では、供給部61は、排ガスの量よりも少ない低濃度ガスを第1の乾燥ユニット2に供給する。
【0042】
具体的に説明する。たとえば、図2(a)に示すように第1の乾燥ユニット2の筐体部21から循環路5を介して溶剤回収ユニット4を経由して溶剤を回収された後に循環路54を流れる190Nm/mのガスから再利用流路9を介して13Nm/mの排ガスを排出する場合、供給部61により6Nm/mのガスを第1の乾燥ユニット2に供給する。そして、再利用流路9を介して排出されなかった177Nm/mのガスと供給部61により供給した6Nm/mのガスが、循環路54で合流し、熱交換ユニット56、循環路55、加熱部22を経由して再度筐体部21内に供給される。なお、ここで示すガスの流量は一例である。
【0043】
これにより、第1の乾燥ユニット2の筐体部21の内部を外部に対して負圧にすることができる。そして、供給部61は、第1の乾燥ユニット2、溶剤回収ユニット4、循環路5の各部を流れるガスに含まれる溶剤の濃度が基準値である50%LELを超えることがないように溶剤を希釈するためのガスを乾燥システム100の動作中は供給し続けるようになっている。ここでいう基準値とは、溶剤が爆発する限界値のことである。
【0044】
なお、本実施形態では、第1の乾燥ユニット2bにおいて溶剤回収ユニット4により溶剤を回収された後のガスの一部を、第2の乾燥ユニット3に供給せずに大気中に放出している。
【0045】
また、循環路5の途中には、熱交換ユニット56が設けられている。熱交換ユニット56は、循環路5を介して第1の乾燥ユニット2から溶剤回収ユニット4に向かうガスと、循環路5を介して溶剤回収ユニット4から第1の乾燥ユニット2に向かうガスとの間で熱交換を行うための熱交換器である。具体的には、熱交換ユニット56は、図2(a)に示すように筐体部21から冷却部41に向かうガスが通過するように循環路52と循環路53に接続され、冷却部41から筐体部21に向かうガスが通過するように循環路54と循環路55に接続されるように配置されている。
【0046】
そして、熱交換ユニット56は、その内部を筐体部21から冷却部41に向かうよう循環路52を通る高温のガスと冷却部41から加熱部22に向かうよう循環路54を通る低温のガスが通過することで、高温のガスと低温のガスとで熱交換を行う。これにより、筐体部21から冷却部41に向かうガスは、循環路52を通るガスよりも熱交換ユニット56を通過後の循環路53を通るガスの方が低温になり、冷却部41から加熱部22に向かうガスは、循環路54を通るガスよりも熱交換ユニット56を通過後の循環路55を通るガスの方が高温になる。すなわち、筐体部21から冷却部41に向かうガスが冷却部41に到達するまでに冷却され、冷却部41から加熱部22に向かうガスが加熱部22に到達するまでに加熱されている。
【0047】
以下、第2の乾燥ユニット3について説明する。なお、第1の乾燥ユニット2と同様の構成については詳細な説明を省略して説明する。
【0048】
第2の乾燥ユニット3は、基材1上に形成された塗膜を加熱して乾燥させるためのものである。本実施形態では、図1に示すように同じ構造の第2の乾燥ユニット3が2つ設けられており、基材1の搬送経路において第1の乾燥ユニット2よりも上流側に位置する第2の乾燥ユニット3を第2の乾燥ユニット3a、基材1の搬送経路において第1の乾燥ユニット2よりも下流側に位置する第2の乾燥ユニット3を第2の乾燥ユニット3bとする。以下の説明では、第2の乾燥ユニット3a、第2の乾燥ユニット3bを区別しない場合には、単に第2の乾燥ユニット3と呼ぶ。
【0049】
各々の第2の乾燥ユニット3は、図3に示すように内部を基材1が通過する筐体部31と、筐体部31内に供給されるガスを加熱する加熱部32と、筐体部31内に加熱部32により加熱されたガスを導入する図示しないノズルと、筐体部21内からガスを排気する第2の排出部33、第3の排出部34と、を有している。これら構成は、前述した第1の乾燥ユニット2とほぼ同様な構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0050】
そして、各々の第2の乾燥ユニット3は、第1の乾燥ユニット2および第2の乾燥ユニット3による塗膜の乾燥工程において筐体部31内で塗膜から気化する溶剤の量が比較的少ない位置に配置されるように設けられている。本実施形態では、各々の第2の乾燥ユニット3は、図1に示すように基材1の搬送経路において第1の乾燥ユニット2よりも上流側と下流側のそれぞれに位置するように、第2の乾燥ユニット3aの筐体部31が第1の乾燥ユニット2aの筐体部21と連通するように設けられ、第2の乾燥ユニット3bの筐体部31が第1の乾燥ユニット2cの筐体部21と連通するよう設けられている。すなわち、各々の第2の乾燥ユニット3は、第1の乾燥ユニット2と第2の乾燥ユニット3による塗膜の乾燥工程における最初と最後の加熱を行う位置に配置されている。
【0051】
ここで、各々の第2の乾燥ユニット3には、溶剤回収ユニット4をあえて設けていない。具体的に説明する。本実施形態における第1の乾燥ユニット2と第2の乾燥ユニット3による塗膜の乾燥工程は、乾燥初期、乾燥中期、および乾燥後期に分けられる。乾燥初期は、図4に示すように塗膜の温度を比較的急速に上げる領域となり、塗膜における溶剤の含有率が含有率aのようにほぼ横ばいになる。すなわち、乾燥初期は、塗膜の温度を常温から所定の温度まで予熱する領域になっており、塗膜から溶剤が気化しにくくなっている。本実施形態では、塗膜を最初に加熱する第2の乾燥ユニット3aの筐体部31による乾燥工程が乾燥初期にあたり、溶剤を回収する必要がないため、第2の乾燥ユニット3aには溶剤回収ユニット4を設けていない。
【0052】
乾燥中期は、図4に示すように溶剤が気化し、塗膜における溶剤の含有率が含有率bから含有率cのように下がって塗膜が乾燥する領域である。本実施形態では、第2の乾燥ユニット3aの筐体部31と第2の乾燥ユニット3bの筐体部31の間に位置する各々の第1の乾燥ユニット2の筐体部21による乾燥工程が乾燥中期にあたり、溶剤を回収する必要がある。そのため、各々の第1の乾燥ユニット2には、溶剤回収ユニット4が1つずつ設けている。
【0053】
乾燥後期は、図4に示すように塗膜の温度が所定温度まで上がり、塗膜中の溶剤が僅かな量となっているため、溶剤が気化しにくい領域になっている。本実施形態では、塗膜を最後に加熱する第2の乾燥ユニット3bの筐体部31による乾燥工程が乾燥後期にあたり、溶剤を回収する必要がないため、第2の乾燥ユニット3bには溶剤回収ユニット4を設けていない。
【0054】
このように溶剤の回収を必要としない第2の乾燥ユニット3には、溶剤回収ユニット4を設けていない。これにより、第1の乾燥ユニット2と第2の乾燥ユニット3のすべてに溶剤回収ユニット4を設ける場合に比べて設備の設置費と設備を稼働するためのランニングコストを削減している。
【0055】
また、各々の第2の乾燥ユニット3には、図3に示すように第3の排出部34により筐体部31から排出されたガスを再びノズルから筐体部31に導入するよう循環させる循環路7と、第2の排出部33により筐体部31から排出されたガスを大気に放出する放出部81と、第2の排出部33と放出部81を接続する放出路82、放出路83が設けられている。
【0056】
循環路7は、第3の排出部34により筐体部31から排出されたガス(以下、循環ガスと呼ぶ)を再びノズルから筐体部31に導入するよう循環させるためのものである。本実施形態における循環路7は、図3に示すように加熱部32から筐体部31に循環ガスを送るよう接続された循環路71と、筐体部31から加熱部31に循環ガスを送るよう接続された循環路72により構成されている。
【0057】
そして、循環路7の各所には、循環ガスを循環させるためのファンが設けられている。このファンにより、循環ガスが循環路7を介して加熱部32から筐体部31、加熱部32へ、というように循環する。すなわち、循環路7により筐体部31内で塗膜を加熱した後のガスの一部を循環ガスとして循環させている。
【0058】
放出部81は、第2の排出部33より筐体部31から排出されたガス(以下、廃ガスと呼ぶ)を大気に放出するためのものである。本実施形態における放出部81は、放出路82と放出路83により第2の排出部33と接続されている。そして、これら放出路82と放出路83の各所には、廃ガスを送るためのファンが設けられている。このファンにより廃ガスが、放出路82と放出路83を介して第2の排出部33から放出部81へと送られて大気中に放出される。すなわち、筐体部31で塗膜を加熱した後のガスの一部を廃ガスとして大気中に放出している。
【0059】
ここで、本実施形態における各々の第2の乾燥ユニット3には、各々の第1の乾燥ユニット2において溶剤回収ユニット4により溶剤を回収された後のガスの一部(排ガス)を、各々の第2の乾燥ユニット3の筐体部31内で塗膜を加熱するためのガスとして供給する再利用流路9が設けられている。本実施形態では、図1に示すように第1の乾燥ユニット2aから排ガスを第2の乾燥ユニット3aの筐体部31に供給する再利用流路9を再利用流路9a、第1の乾燥ユニット2cから排ガスを第2の乾燥ユニット3bの筐体部31に供給する再利用流路9を再利用流路9bとする。以下の説明では、再利用流路9aと再利用流路9bを区別しない場合には、単に再利用流路9を呼ぶ。
【0060】
再利用流路9aは、図1に示すように第1の乾燥ユニット2aの循環路54と、第2の乾燥ユニット3aの循環路72とを接続するように設けられている。これにより、排ガスが、再利用流路9aを介して循環ガスが流れる循環路72に導入されるようになっている。
【0061】
そして、再利用流路9aの各部には、図示しないファンが設けられており、このファンにより第1の乾燥ユニット2aから排ガスが、第2の乾燥ユニット3aの循環路72、加熱部32、循環路71を経由して筐体部31に供給される。これにより、第2の乾燥ユニット3aの筐体部31内には、第2の乾燥ユニット3aの筐体部31内で塗膜を加熱した後に循環路7により循環させられる循環ガスと、再利用流路9を介して第1の乾燥ユニット3aにおいて溶剤回収ユニット4により溶剤を回収されて溶剤の濃度が低減させられた状態で排出された排ガスが、加熱部32により加熱された状態で供給される。
【0062】
再利用流路9bは、図1に示すように第1の乾燥ユニット2cの循環路54と、第2の乾燥ユニット3bの循環路72とを接続するように設けられている。これにより、排ガスが、再利用流路9bを介して循環ガスが流れる循環路72に導入されるようになっている。
【0063】
そして、再利用流路9bの各部には、図示しないファンが設けられており、このファンにより第1の乾燥ユニット2cから排ガスが、第2の乾燥ユニット3bの循環路72、加熱部32、循環路71を経由して筐体部31に供給される。これにより、第2の乾燥ユニット3bの筐体部31内には、第2の乾燥ユニット3bの筐体部31内で塗膜を加熱した後に循環路7により循環させられる循環ガスと、再利用流路9を介して第1の乾燥ユニット3cにおいて溶剤回収ユニット4により溶剤を回収された後に排出された排ガスが、加熱部32により加熱された状態で供給される。
【0064】
ここで、各々の第2の乾燥ユニット3では、再利用流路9を介して第1の乾燥ユニット2から供給される排ガスの量よりも多くガスを第2の排出部33から排出する。
【0065】
具体的に説明する。たとえば、図3に示すように第2の乾燥ユニット3の筐体部31内において塗膜の加熱および塗膜から気化した溶剤を希釈するために必要なガスの量が161Nm/mであって、再利用流路9を介して第1の乾燥ユニット2から13Nm/mの排ガスが第2の乾燥ユニット3に供給される場合、第2の乾燥ユニット3の筐体部31内の161Nm/mのガスのうち21Nm/mのガスを第2の排出部33により排出する。この21Nm/mのガスは、廃ガスとして放出部81から大気中に放出される。そして、残りの140Nm/mのガスが、循環ガスとして第3の排出部34より第2の乾燥ユニット3の筐体部31から排出されて循環路72を流れ、再利用流路9を流れる13Nm/mの排ガスと合流して加熱部32、循環路71を経由して再度筐体部31内に供給される。なお、ここで示すガスの流量は一例である。
【0066】
これにより、第2の乾燥ユニット3aの筐体部31の内部を外部に対して負圧にすることができるため、第2の乾燥ユニット3aの筐体部31内からガスが漏れ出ることを防ぐことができる。
【0067】
また、各々の第2の乾燥ユニット3には、図1に示すように熱交換ユニット84が設けられている。熱交換ユニット84は、再利用流路9を介して第1の乾燥ユニット2から第2の乾燥ユニット3の筐体部31に向かう排ガスと、放出路82と放出路83を介して第2の乾燥ユニット3の筐体部31から放出部81に向かう廃ガスとの間で熱交換を行うための熱交換器である。具体的には、熱交換ユニット84は、図3に示すように各々の第1の乾燥ユニット2から第2の乾燥ユニット3の筐体部31に向かう排ガスが通過するように再利用流路9の途中に配置され、第2の乾燥ユニット3の筐体部31から放出部81に向かう廃ガスが通過するように放出路82と放出路83に接続されるよう配置されている。
【0068】
そして、熱交換ユニット84は、その内部を各々の第1の乾燥ユニット2から第2の乾燥ユニット3の筐体部31に向かうよう再利用流路9を通る常温よりも高く廃ガスよりも低い温度の排ガスと第2の乾燥ユニット3の筐体部31から放出部81に向かうよう放出路82、83を通る排ガスよりも高い温度の廃ガスが通過することで、排ガスと廃ガスとで熱交換を行う。これにより、各々の第1の乾燥ユニット2から第2の乾燥ユニット3の筐体部31に向かうよう再利用流路9を通る排ガスが、第2の乾燥ユニット3の加熱部32に到達するまでに加熱される。これにより、加熱部32によりガスを加熱する際に消費するエネルギーを削減することができる。
【0069】
これら構成により乾燥システム100は、塗膜を乾燥させる際に消費するエネルギーを従来よりも削減することができる。
【0070】
具体的に説明する。図7に示す従来の乾燥システム900では、筐体部920内からガスを漏れ出ることを防ぐために、溶剤回収ユニット950により溶剤を回収された後のガスの一部を大気中に放出することによって、筐体部920の内部を外部に対して負圧にしている。このように従来の乾燥システム900では、一度加熱したガスの一部を、溶剤回収ユニット950による溶剤の回収後に再利用することなく排ガスとして大気に放出していた。すなわち、従来の溶剤回収ユニット950では、排ガスを活用することができていなかったため、塗膜を乾燥させる際に消費するエネルギーを削減することができていなかった。
【0071】
これに対して、本実施形態における乾燥システム100は、再利用流路9を介して第2の乾燥ユニット3の筐体部31内に、第1の乾燥ユニット2において溶剤回収ユニット4により溶剤を回収された後に排出された常温よりも温度が高い排ガスを供給している。そのため、常温のガスを第2の乾燥ユニット3に供給する場合と比較して、第2の乾燥ユニット3において塗膜を加熱するために必要な温度までガスを加熱するために消費するエネルギーを削減することができる。このように、従来では、第1の乾燥ユニット2の筐体部21の内部を外部に対して負圧にするために大気中に放出されていた排ガスを第2の乾燥ユニット3で再利用することができるため、塗膜を乾燥させる際に消費するエネルギーを従来よりも削減することができる。
【0072】
また、本実施形態における乾燥システム100では、第2の乾燥ユニット3が、第1の乾燥ユニット2と第2の乾燥ユニット3による塗膜の乾燥工程における最初と最後の加熱を行う位置に配置されている。すなわち、第2の乾燥ユニット3は、塗膜から溶剤がほぼ気化しない位置に配置されている。そのため、再利用流路9を介して第2の乾燥ユニット3に供給される排ガスが溶剤を含んでいたとしても、第2の乾燥ユニット3におけるガス中の溶剤の濃度が上昇しにくくなる。すなわち、第2の乾燥ユニット3において溶剤の濃度が溶剤が爆発する可能性のある濃度まで上昇しにくくなっている。これにより、本実施形態における乾燥システム100では、各々の第1の乾燥ユニット2におけるガス中の溶剤の濃度が溶剤が爆発する可能性がある濃度まで上昇するおそれがあるため、各々の第1の乾燥ユニット2間では再利用することができなかった排ガスを、第2の乾燥ユニット3で安全に再利用することができる。したがって、安全性を保ちつつ消費するエネルギーを削減することができる。
【0073】
また、再利用流路9を介して第2の乾燥ユニット3に供給される排ガスは、第1の乾燥ユニット2において溶剤回収ユニット4により溶剤を回収された後に排出されたガスであるため、含まれる溶剤の濃度は低くなっている。そのため、仮に第2の乾燥ユニット3の筐体部31内で塗膜から想定以上の溶剤が気化していたとしても、排ガスが供給されたことによって第2の乾燥ユニット3におけるガス中の溶剤の濃度が上昇しにくくなっている。これにより、安全に排ガスを再利用することができる。
【0074】
また、本実施形態に乾燥システム100では、第2の乾燥ユニット3に第2の乾燥ユニット3の筐体部31内のガスを排出する第2の排出部33が設けられており、この第2の排出部33により再利用流路9を介して第2の乾燥ユニット3の筐体部31内に供給される排ガスの量よりも多くのガスを排出している。これにより、再利用流路9を介して大量の排ガスが第2の乾燥ユニット3の筐体部31内に供給されたとしても、第2の乾燥ユニット3の筐体部31の内部を外部に対して負圧にすることができるため、その筐体部31内からガスが漏れ出ることを防ぐことができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。たとえば、上記実施形態では、第2の乾燥ユニット3を第1の乾燥ユニット2と第2の乾燥ユニット3による塗膜の乾燥工程における最初と最後の加熱を行う位置に配置されている例について説明したが、これに限らなくてもよい。たとえば、第2の乾燥ユニット3を、第1の乾燥ユニット2および第2の乾燥ユニット3による塗膜の乾燥工程において筐体部31内で塗膜から気化する溶剤の量が比較的少ない位置に配置されるように設けられてもよい。この場合、第2の乾燥ユニット3が、塗膜から気化する溶剤の量が比較的少ない位置に配置されるため、再利用流路9を介して第2の乾燥ユニット3に第1の乾燥ユニット2から溶剤を含むガスが供給されたとしても、第2の乾燥ユニット3において溶剤の濃度が上昇しにくくなる。これにより、第2の乾燥ユニット3が、第1の乾燥ユニット2と第2の乾燥ユニット3による塗膜の乾燥工程における最初と最後の加熱を行う位置以外の位置に配置されたとしても、安全にガスを再利用することができる。
【0076】
また、上記実施形態では、各々の第2の乾燥ユニット3に再利用流路9を設ける例について説明したが、片方の第2の乾燥ユニット3にのみ再利用流路9を設けてもよい。たとえば、第2の乾燥ユニット3aにのみ再利用流路9aを設け、この再利用流路9aを介して第2の乾燥ユニット3aに第1の乾燥ユニット2aにおいて溶剤回収ユニット4により溶剤を回収された後のガスを供給してもよい。この場合、第2の乾燥ユニット3bには、大気中のガスを供給するための図示しない供給部が設けられ、この供給部により第2の乾燥ユニット3bに大気中のガスを供給するとよい。
【0077】
また、上記実施形態では、再利用流路9が、1つの第1の乾燥ユニット2において溶剤回収ユニット4により溶剤を回収した後のガスを1つの第2の乾燥ユニット3に供給するよう設けられている例について説明したが、これに限らなくてもよい。たとえば、複数の第1の乾燥ユニット2のそれぞれにおいて溶剤回収ユニット4により溶剤を回収した後のガスを1つの第2の乾燥ユニット3に供給するように再利用流路9を設けてもよい。具体的には、図5に示すように第1の乾燥ユニット2aと第1の乾燥ユニット2bにおいて各々の溶剤回収ユニット4により溶剤を回収した後のガスを第2の乾燥ユニット3aに供給するように再利用流路9を設けてもよい。
【0078】
また、1つの第1の乾燥ユニット2において溶剤回収ユニット4により溶剤を回収した後のガスを複数の第2の乾燥ユニット3に供給するように再利用流路9を設けてもよい。具体的には、図6に示すように第1の乾燥ユニット2aにおいて溶剤回収ユニット4により溶剤を回収した後のガスを第2の乾燥ユニット3aと第2の乾燥ユニット3bに供給するように再利用流路9を設けてもよい。
【符号の説明】
【0079】
100 乾燥システム
1 基材
2 第1の乾燥ユニット
2a 第1の乾燥ユニット
2b 第1の乾燥ユニット
2c 第1の乾燥ユニット
21 筐体部
22 加熱部
23 第1の排出部
3 第2の乾燥ユニット
3a 第2の乾燥ユニット
3b 第2の乾燥ユニット
31 筐体部
32 加熱部
33 第2の排出部
34 第3の排出部
4 溶剤回収ユニット
41 冷却部
42 回収部
43 回収路
44 本体部
45 冷却路
5 循環路
51 循環路
52 循環路
53 循環路
54 循環路
55 循環路
56 熱交換ユニット
61 供給部
62 供給路
7 循環路
71 循環路
72 循環路
81 放出部
82 放出路
83 放出路
84 熱交換ユニット
9 再利用流路
9a 再利用流路
9b 再利用流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7