(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084989
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】通知可否の判定装置、判定方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/0962 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
G08G1/0962
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199248
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 裕一
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF17
5H181FF27
5H181JJ01
5H181JJ05
5H181JJ11
5H181MC02
(57)【要約】
【課題】 車両走行の安全性と業務の迅速性との両立を図る。
【解決手段】 本開示の一態様に係る判定装置は、交差点の信号灯器の動作状態を表す信号情報を取得する取得部と、端末装置が受信するメッセージの読解時間を記憶する記憶部と、前記端末装置による前記メッセージの通知可否の判定処理を行う制御部と、を備え、前記判定処理は、前記信号情報に基づいて、前記端末装置のユーザが運転する車両の前記交差点における信号待ちによる停止時間を算出する処理と、前記停止時間が前記読解時間以上である場合に、前記メッセージの通知を許可する処理と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点の信号灯器の動作状態を表す信号情報を取得する取得部と、
端末装置が受信するメッセージの読解時間を記憶する記憶部と、
前記端末装置による前記メッセージの通知可否の判定処理を行う制御部と、を備え、
前記判定処理は、
前記信号情報に基づいて、前記端末装置のユーザが運転する車両の前記交差点における信号待ちによる停止時間を算出する処理と、
前記停止時間が前記読解時間以上である場合に、前記メッセージの通知を許可する処理と、を含む、通知可否の判定装置。
【請求項2】
前記制御部は、
判定対象の車両状態として赤信号で停止中と走行中を含む状態判定を実行可能であり、
前記判定処理は、
前記状態判定の判定結果が赤信号で停止中である場合に行われる第1判定処理を含み、
前記第1判定処理は、
前記赤信号を現在表示中である前記交差点における前記停止時間を、前記信号情報に基づいて算出する処理を含む、請求項1に記載の通知可否の判定装置。
【請求項3】
前記判定処理は、
前記状態判定の判定結果が走行中である場合に行われる第2判定処理を含み、
前記第2判定処理は、
前記車両が通行する予定経路に含まれる複数の前記交差点の中から、前記停止時間が前記読解時間以上となる候補地点を抽出する処理を含む、請求項2に記載の通知可否の判定装置。
【請求項4】
前記第2判定処理は、
前記停止時間が前記読解時間以上となる前記候補地点のうち前記車両の現在位置から最も近い前記交差点を、前記メッセージの通知を許可する許可地点とする処理を含む、請求項3に記載の通知可否の判定装置。
【請求項5】
前記制御部は、
赤信号で停止中の前記車両を運転するユーザに対して青信号の開始を事前に知らせる注意喚起処理を実行する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の通知可否の判定装置。
【請求項6】
前記読解時間は、
前記端末装置のユーザによる文字情報の読解速度に応じて変動する設定値である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の通知可否の判定装置。
【請求項7】
前記読解時間は、
前記メッセージの内容に応じて変動する設定値である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の通知可否の判定装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記メッセージの送信元の種別に応じて、当該メッセージを前記通知可否の判定対象とするか否かを決定する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の通知可否の判定装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記メッセージを送受信するためのアプリケーションソフトの種別に応じて、当該メッセージを前記通知可否の判定対象とするか否かを決定する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の通知可否の判定装置。
【請求項10】
通知可否の判定装置が実行する判定方法であって、
交差点の信号灯器の動作状態を表す信号情報を取得するステップと、
端末装置が受信するメッセージの読解時間を記憶するステップと、
前記端末装置による前記メッセージの通知可否の判定処理を行うステップと、を含み、
前記判定処理は、
前記信号情報に基づいて、前記端末装置のユーザが運転する車両の前記交差点における信号待ちによる停止時間を算出する処理と、
前記停止時間が前記読解時間以上である場合に、前記メッセージの通知を許可する処理と、を含む、通知可否の判定方法。
【請求項11】
交差点の信号灯器の動作状態を表す信号情報を取得する取得部と、
端末装置が受信するメッセージの読解時間を記憶する記憶部と、
前記端末装置による前記メッセージの通知可否の判定処理を行う制御部と、を備える判定装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、
前記判定処理は、
前記信号情報に基づいて、前記端末装置のユーザが運転する車両の前記交差点における信号待ちによる停止時間を算出する処理と、
前記停止時間が前記読解時間以上である場合に、前記メッセージの通知を許可する処理と、を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通知可否の判定装置、判定方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、低速範囲(例えば0~20km/時)を超える中高速範囲で車両が走行中である場合に、操作実行部による操作の実行を規制する車載情報機器が記載されている。特許文献1の車載情報機器によれば、車両の走行中における運転者による操作が制限されるので、運転者を車両の運転に注力させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の運転者が、携帯端末による通知を許可する設定にしている場合がある。この場合、メールの受信などにより携帯端末の通知が作動すると、車両の走行中に拘わらず携帯端末を見てしまったり気を取られたりして不安全な運転となり得る。
その一方で、運転者の携帯端末が業務用である場合に、携帯端末の通知を常に禁止する設定にすると、運転者が業務関連のメッセージに気づくのが遅れ、業務に支障が生じる可能性がある。
【0005】
本開示は、かかる問題点に鑑み、車両走行の安全性と業務の迅速性との両立を図る装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る判定装置は、交差点の信号灯器の動作状態を表す信号情報を取得する取得部と、端末装置が受信するメッセージの読解時間を記憶する記憶部と、前記端末装置による前記メッセージの通知可否の判定処理を行う制御部と、を備え、前記判定処理は、前記信号情報に基づいて、前記端末装置のユーザが運転する車両の前記交差点における信号待ちによる停止時間を算出する処理と、前記停止時間が前記読解時間以上である場合に、前記メッセージの通知を許可する処理と、を含む。
【0007】
本開示の一態様に係る判定方法は、通知可否の判定装置が実行する判定方法であって、交差点の信号灯器の動作状態を表す信号情報を取得するステップと、端末装置が受信するメッセージの読解時間を記憶するステップと、前記端末装置による前記メッセージの通知可否の判定処理を行うステップと、を含み、前記判定処理は、前記信号情報に基づいて、前記端末装置のユーザが運転する車両の前記交差点における信号待ちによる停止時間を算出する処理と、前記停止時間が前記読解時間以上である場合に、前記メッセージの通知を許可する処理と、を含む。
【0008】
本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、交差点の信号灯器の動作状態を表す信号情報を取得する取得部と、端末装置が受信するメッセージの読解時間を記憶する記憶部と、前記端末装置による前記メッセージの通知可否の判定処理を行う制御部と、を備える判定装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、前記判定処理は、前記信号情報に基づいて、前記端末装置のユーザが運転する車両の前記交差点における信号待ちによる停止時間を算出する処理と、前記停止時間が前記読解時間以上である場合に、前記メッセージの通知を許可する処理と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、車両走行の安全性と業務の迅速性との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、情報提供システムと交通信号制御システムの全体構成図である。
【
図2】
図2は、端末装置、サーバ、車両の車載装置、及び中央装置の内部構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、交差点の信号情報の一例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、動作モードの切り替え処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、車両の状態判定の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、通知可否の第1判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、通知可否の第2判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、通知許可を行った後の注意喚起処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
(1) 本実施形態に係る判定装置は、交差点の信号灯器の動作状態を表す信号情報を取得する取得部と、端末装置が受信するメッセージの読解時間を記憶する記憶部と、前記端末装置による前記メッセージの通知可否の判定処理を行う制御部と、を備え、前記判定処理は、前記信号情報に基づいて、前記端末装置のユーザが運転する車両の前記交差点における信号待ちによる停止時間を算出する処理と、前記停止時間が前記読解時間以上である場合に、前記メッセージの通知を許可する処理と、を含む。
【0012】
本実施形態の判定装置によれば、交差点における信号待ちによる停止時間がメッセージの読解時間以上である場合に、メッセージの通知が許可される。このため、停止時間がメッセージの読解時間未満の場合は、メッセージの通知が許可されない。
このように、車両の運転者がメッセージを閲覧するのに十分な時間長である停止時間の場合にだけ、端末装置によるメッセージの通知が許可されるので、車両走行の安全性と業務の迅速性との両立を図ることができる。
【0013】
(2) 本実施形態の判定装置において、前記制御部は、判定対象の車両状態として赤信号で停止中と走行中を含む状態判定を実行可能であり、前記判定処理は、前記状態判定の判定結果が赤信号で停止中である場合に行われる第1判定処理を含み、前記第1判定処理は、前記赤信号を現在表示中である前記交差点における前記停止時間を、前記信号情報に基づいて算出する処理を含んでいてもよい。
このようにすれば、既に赤信号で停止中の場合の停止時間が読解時間との比較対象となるので、赤信号で停止中の車両を運転するユーザの端末装置について、メッセージの通知可否を適切に判定することができる。
【0014】
(3) 本実施形態の判定装置において、前記判定処理は、前記状態判定の判定結果が走行中である場合に行われる第2判定処理を含み、前記第2判定処理は、前記車両が通行する予定経路に含まれる複数の前記交差点の中から、前記停止時間が前記読解時間以上となる候補地点を抽出する処理を含んでいてもよい。
このようにすれば、走行中の車両を運転するユーザの端末装置について、メッセージの通知を許可し得る地点を適切に判断することができる。
【0015】
(4) 本実施形態の判定装置において、前記第2判定処理は、前記停止時間が前記読解時間以上となる前記候補地点のうち前記車両の現在位置から最も近い前記交差点を、前記メッセージの通知を許可する許可地点とする処理を含んでもよい。
このようにすれば、最も近い将来にメッセージの通知許可が行われるので、他の候補地点を許可地点とする場合に比べて、業務の迅速性を向上することができる。
【0016】
(5) 本実施形態の判定装置において、前記制御部は、赤信号で停止中の前記車両を運転するユーザに対して青信号の開始を事前に知らせる注意喚起処理を実行してもよい。
このようにすれば、メッセージを閲覧中のユーザによる発進遅れを防止できるので、渋滞の発生原因を抑制することができる。
【0017】
(6) 本実施形態の判定装置において、前記読解時間は、前記端末装置のユーザによる文字情報の読解速度に応じて変動する設定値であってもよい。このようにすれば、メッセージの読解時間をユーザごとに適切に設定することができる。
【0018】
(7) 本実施形態の判定装置において、前記読解時間は、前記メッセージの内容に応じて変動する設定値であってもよい。このようにすれば、メッセージの読解時間をメッセージの内容ごとに適切に設定することができる。
【0019】
(8) 本実施形態の判定装置において、前記制御部は、前記メッセージの送信元の種別に応じて、当該メッセージを前記通知可否の判定対象とするか否かを決定してもよい。
このようにすれば、特定の送信元のみを通知可否の判定対象とし、他の送信元は常に通知を禁止するなど、送信元ごとに柔軟な設定を行うことができる。
【0020】
(9) 本実施形態の判定装置において、前記制御部は、前記メッセージを送受信するためのアプリケーションソフトの種別に応じて、当該メッセージを前記通知可否の判定対象とするか否かを決定してもよい。
このようにすれば、特定のアプリケーションソフトのみを通知可否の判定対象とし、他のアプリケーションソフトは常に通知を禁止するなど、アプリケーションごとに柔軟な設定を行うことができる。
【0021】
(10) 本実施形態に係る方法は、上述の(1)の判定装置が実行する判定方法である。従って、本実施形態の判定方法は、上述の(1)の判定装置と同様の作用効果を奏する。
【0022】
(11) 本実施形態に係るプログラムは、上述の(1)の判定装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムである。従って、本実施形態のプログラムは、上述の(1)の判定装置と同様の作用効果を奏する。
【0023】
本開示の実施形態は、上記のような特徴的な構成を備えるシステム及び装置として実現できるだけでなく、かかる特徴的な構成をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現することができる。また、本開示の実施形態は、システム及び装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現することができる。
【0024】
<本発明の実施形態の詳細>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0025】
〔用語の定義〕
本実施形態の詳細を説明するに当たり、まず、本明細書で用いる用語の定義を行う。
「車両」:道路を通行する車両全般のことをいう。車両の駆動方式は、内燃機関に限らず、電気自動車及びハイブリットカーも車両に含まれる。
本実施形態では、単に「車両」というときは、プローブ情報を送信可能な車載装置を有するプローブ車両と、プローブ情報を外部に提供しない通常の車両の双方を含む。
【0026】
「プローブ情報」:道路を走行中のプローブ車両がセンシングした当該車両に関する各種のデータを含む情報のことをいう。プローブ情報は、プローブデータ又はフローティングカーデータともいう。プローブ情報には、プローブ車両の識別情報、走行位置、走行速度、進行方位及びこれらの発生時刻(走行時刻)などの車両属性データが含まれる。
「プローブ車両」:自車両の車両属性データをセンシングして、センシングしたデータを含むプローブ情報を外部に送信する車両のことをいう。
【0027】
「信号制御パラメータ」:信号表示の時間的要素であるサイクル長、スプリット及びオフセットを総称して信号制御パラメータという。信号制御定数ともいう。
「サイクル長」:交通信号機の青(又は赤)開始時刻から次の青(又は赤)開始時刻までの1サイクルの時間のことをいう。なお、日本では、緑色の信号灯色を青と呼ぶことが法令で定められている。
【0028】
「スプリット」:各現示に割り当てられる時間の長さのサイクル長に対する割合のことである。一般に、百分率あるいは割合で表す。厳密には、有効青時間をサイクル長で割った値である。
「オフセット」:系統制御又は地域制御において、信号表示のある時点、例えば、主道路青信号の開始時点の当該信号機群に共通な基準時点からのずれ、或いは、隣接交差点間の同一表示開始点のずれのことをいう。前者を絶対オフセット、後者を相対オフセットといい、時間(秒)又は周期の百分率で表す。
【0029】
「定周期制御」:交通信号制御を信号制御パラメータの設定方式により分類すると、定周期制御、交通感応制御、及び交通順応制御の3つに分類できる。
定周期制御は、時間帯に応じて予め信号制御パラメータが設定される方式である。時間帯や曜日(平日、土曜日、日曜日及び祝日)などに応じて予め設定された信号制御パラメータの組み合せ(プログラムと呼ぶ。)の中から1つを選んで実施される。
【0030】
「交通感応制御」:車両感知器を用いる交通信号制御のうち、信号制御機ごとに実行される方式である。端末感応制御ともいう。
交通感応制御では、短時間の交通需要の変化に対応して青表示の開始や終了時点を決定し、その結果、青時間長及びサイクル長を変化させる。
【0031】
「交通順応制御」:交通管制センターの中央装置が、重要交差点の交通信号制御機、系統制御が行われる複数の交差点などを対象として、信号制御パラメータを変化させる制御方式である。中央装置が交通信号制御機を遠隔で制御するため、「遠隔制御」ともいう。
交通順応制御は、交通流の変動に対応した高度な系統制御が可能であり、交通量やその時間変動が大きく、高い交通処理効率が要求される道路に適用される。交通順応制御は、「プログラム選択方式」と「プログラム形成方式」の2種類に分類される。
【0032】
「プログラム選択方式」は、予め用意された複数の組合せ(プログラム)の中から、車両感知器の情報などから現時点の交通状況に適した組み合わせを選択する方式である。
「プログラム形成方式」は、有限個の信号制御パラメータの組み合せを用意せず、車両感知器の情報などに基づいて、即時に信号制御パラメータ又は信号灯色の切り替えタイミングを決定する方式である。
【0033】
〔システムの全体構成〕
図1は、情報提供システム100と交通信号制御システム200の全体構成図である。
図2は、端末装置1、サーバ2、車両3の車載装置4、及び中央装置5の内部構成の一例を示すブロック図である。
図1及び
図2に示すように、情報提供システム100は、情報提供装置として機能するサーバ2と、サーバ2と通信可能なプローブ車両3とを備える。プローブ車両3の車載装置4は、車内ネットワークを構成する複数の車載機器を含む。
【0034】
車両3には、車載装置4と有線又は無線により通信可能に接続される端末装置1が一時的に搭載される。
端末装置1は、例えば車両3の運転者が所有する携帯端末、或いは運転者が勤務先などから配布された携帯端末である。携帯端末は、例えば、移動体通信の移動局として機能する、スマートフォン、タブレット型コンピュータ又はノード型パソコンなどである。
【0035】
サーバ2は、プローブ情報S1の収集と車両3への情報提供を行うサーバである。サーバ2は、自動車メーカー又はIT(Information Technology)企業などにより運用される。サーバ2は、オンプレミスサーバ及びクラウドサーバのいずれでもよい。
車両3の車載装置4は、各地の無線基地局9(例えば携帯基地局)との無線通信が可能である。無線基地局9は、移動体通信のコアネットワーク及びインターネットなどを含む公衆通信網10を介してサーバ2と通信可能である。
【0036】
プローブ車両3の車載装置4は、アップリンクデータを含むサーバ2宛ての通信パケットを無線基地局9に無線送信する。アップリンクデータには、プローブ車両3がセンシングしたプローブ情報S1などが含まれる。
サーバ2は、ダウンリンクデータを含む車載装置4宛ての通信パケットを公衆通信網10に送信する。ダウンリンクデータには、車両3の運転支援に用いられる提供情報として交差点の信号情報S2が含まれる。なお、後述の通り、信号情報S2は交通信号制御システム200の路側通信機8から提供される場合もある。
【0037】
このように、サーバ2は、交差点の信号情報S2を作成して外部に送信する「情報提供装置」の一種である。サーバ2が送信した信号情報S2は、公衆通信網10及び無線基地局9を経由して通行中の車両3に配信される。
【0038】
交差点の信号情報S2は、現時点から近未来までの所定期間(例えば2サイクル)における信号灯器の動作状態を表す情報である。具体的には、信号情報S2には、例えば以下の情報を算出可能なデータが含まれる。
従って、車両3による信号情報S2の利用方法には、例えば、現時点の信号灯色の残り秒数(赤残り秒数など)を算出することが含まれる。
【0039】
情報1:提供対象となる交差点の位置及び名称
情報2:提供対象となる流入路の位置及び名称
情報3:流入路に通行権を与える信号灯器の点灯順序と灯器点灯時に通行可能な方向
情報4:流入路の現在の灯色内容(どの灯器が点灯しているか)
情報5:各灯器を点灯又は消灯させるタイミング(絶対時刻又は基準時刻からの残り秒数のいずれでもよい。)
【0040】
図1及び
図2に示すように、交通信号制御システム200は、交通管制センターなどに設置された中央装置5と、専用の通信回線6により中央装置5と有線通信を行う交通信号制御機7と、車両3と無線通信を行う路側通信機8とを備える。
路側通信機8は、信号情報S2などの車両向けの提供情報を無線で送信可能な通信機であり、例えば、DSSS(Driving Safety Support Systems)対応の無線通信機、或いはTSPS(Traffic Signal Prediction Systems)対応の光ビーコンなどである。
【0041】
本実施形態の交通信号制御機7には、以下の2種類の交通信号制御機が含まれる。
第1制御機7A:中央装置5による遠隔制御の対象ではなく、単独で信号灯色を決定する地点制御(例えば定周期制御)を行う交通信号制御機
第2制御機7B:中央装置5による遠隔制御(交通順応制御)の対象である交通信号制御機
従って、中央装置5は、第2制御機7Bに対してのみ遠隔制御を行う。
【0042】
後述の通り、第2制御機7Bは、交差点の信号情報S2を作成して外部に送信する「情報提供装置」の一種である。第2制御機7Bが送信した信号情報S2は、路側通信機8を経由して通行中の車両3に配信される。
従って、本実施形態の交通信号制御システム200は、車両3に信号情報S2を提供可能であるという意味で、「情報提供システム」でもある。
【0043】
〔サーバの構成〕
図2に示すように、サーバ2は、制御部21、記憶部22、通信部23、同期処理部24、及び複数種類のデータベース(DB)を備える。複数種類のデータベースには、地図データベース25、プローブデータベース26、信号情報データベース27、及び会員データベース28が含まれる。
複数種類のデータベースは、記憶部22に所定のデータ配列で構築される電子データである。もっとも、複数種類のデータベースの一部又は全部をサーバ2に接続された外部記憶装置(図示せず)に構築してもよい。
【0044】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)などを含む演算処理装置である。制御部21には、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの集積回路が含まれていてもよい。
制御部21は、記憶部22に格納されたコンピュータプログラム30をメインメモリ(RAM)に読み出し、当該プログラム30に従って各種の情報処理を実行する。この情報処理には、信号情報S2を生成する処理などが含まれる。
【0045】
例えば、制御部21は、複数のプローブ車両3から収集したプローブ情報S1に基づいて、信号情報S2を生成する。制御部21は、生成した信号情報S2を自機の信号情報データベース27に記録する。
信号情報S2の生成方法としては、例えば、交差点の手前で停止中のプローブ車両3についての、走行の再開時刻と再開位置の統計データから、各流入路の青開始時刻(サイクル開始時刻)とサイクル長を推定する方法を採用し得る。
【0046】
また、制御部21は、交差点で運用中の時限表(階梯の進行順序と各階梯の秒数を規定したテーブル)を中央装置5などかから取得し、上記の推定方法で求めた青開始時刻に基づいて、黄信号灯、赤信号灯、及び矢印信号灯の点灯開始時刻(点灯継続時間でもよい。)などを算出する。
【0047】
記憶部22は、HDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリを含む補助記憶装置である。
記憶部22は、フラッシュROM(Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、又はSD(Secure Digital)メモリカードなどが含まれていてもよい。
【0048】
通信部23は、公衆通信網10を介した通信が可能な通信インタフェースである。
通信部23は、車載装置4が送信元であるプローブ情報S1を無線基地局9から受信すると、受信したプローブ情報S1を制御部21に転送する。制御部21は、受信したプローブ情報S1をプローブデータベース26に記録する。
通信部23は、制御部21から信号情報S2を受信すると、受信した信号情報S2を含む車載装置4宛ての通信パケットを生成して無線基地局9に送信する。
【0049】
複数種類のデータベース25,26,27,28は、地図データベース25、プローブデータベース26、信号情報データベース27、及び会員データベース28を含む。
会員データベース28には、登録会員(例えば車両3の所有者)の個人情報、及び登録会員の車載装置4に含まれる通信端末の識別情報(例えばMACアドレスやIPアドレス)などが記録される。
【0050】
地図データベース25には、国内を網羅する道路地図データ29が記録される。道路地図データ29は、「交差点データ」(ノードデータ)と「リンクデータ」を含む。
交差点データは、国内の交差点に付与された交差点IDと、交差点の位置情報とを対応付けたデータである。リンクデータは、国内の道路に対応して付与された特定リンクのリンクIDに対して、少なくとも次の4種類の情報を対応付けたデータである。
【0051】
情報A:特定リンクの始点・終点・補間点の位置情報
情報B:特定リンクの始点・終点・補間点の方位情報
情報C:特定リンクの始点に接続するリンクID
情報D:特定リンクの終点に接続するリンクID
【0052】
道路地図データ29は、実際の道路線形と道路の走行方向に対応したネットワークを構成する。このため、道路地図データ29は、交差点を表すノード間の道路区間を有向リンクl(小文字のエル)で繋いだネットワークになっている。
具体的には、道路地図データ29のデータ構造は、交差点ごとにノードnが設定され、隣接する一対のノードn間が逆向きの一対の有向リンクlで繋がった有向グラフを含む。従って、一方通行の道路の場合は、一方向の有向リンクlのみノードnが接続される。
【0053】
プローブデータベース26には、プローブ車両3から受信したプローブ情報S1が蓄積される。具体的には、制御部21は、現時点から過去に遡る所定期間(例えば1か月)のプローブ情報S1をプローブデータベース26に蓄積する。
信号情報データベース27には、制御部21が生成した信号情報S2が記録される。制御部21は、車載装置4から所定の交差点の信号情報S2を要求されると、当該交差点の信号情報S2を信号情報データベース27から読み出し、読み出した信号情報S2を車載装置4に送信する。
【0054】
同期処理部24は、所定の同期方式により、車載装置4などの他の通信ノードと時刻同期を図るための処理部である。
同期処理部24の同期方式は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機の出力に基づく同期方式や、NTP(Network Time Protocol)及びPTP(Precision Time Protocol)などの通信フレームを用いた同期方式などを採用し得る。
【0055】
〔車載装置の構成〕
図2に示すように、車載装置4は、制御部41、記憶部42、車外通信部43、同期処理部44、センサ45、車載カメラ46、車内通信部47、及びナビゲーション部48を備える。このうち、制御部41、記憶部42、及び同期処理部44は、1つ又は複数の電子制御ユニット(ECU)から構成される。当該ECU、車外通信部43、センサ45、カメラ46、車内通信部47、及びナビゲーション部48は、所定の通信ケーブルを通信経路とする車内ネットワークの通信ノードである。
【0056】
制御部41は、CPU及びRAMなどを含む演算処理装置である。制御部41には、FPGAなどの集積回路が含まれていてもよい。記憶部42は、HDD及びSSDなどの不揮発性メモリを含む補助記憶装置である。
制御部41は、記憶部42に格納されたコンピュータプログラム49をメインメモリ(RAM)に読み出し、当該コンピュータプログラム49に従って各種の情報処理を実行する。
【0057】
制御部41が行う情報処理には、上述のプローブ情報S1の生成処理の他、端末装置1が受信するメッセージの通知可否の判定処理(
図6及び
図7)などが含まれる。従って、本実施形態の車載装置4は、端末装置1が受信するメッセージの「通知可否の判定装置」としての機能を有する。
【0058】
車外通信部43は、例えば、車両3に恒常的に搭載されたゲートウェイなどの無線通信機である。車外通信部43には、DSSS対応又はTSPS対応の通信インタフェースも含まれる。従って、車外通信部43は、生成元が第2制御機7Bである信号情報S2を、路側通信機8から受信することができる。
【0059】
車外通信部43は、制御部41からプローブ情報S1を受信すると、受信したプローブ情報S1を含む通信パケットを生成してサーバ2宛てに送信する。
車外通信部43は、生成元がサーバ2である信号情報S2を無線基地局9から受信すると、受信した信号情報S2を制御部41に送信する。車外通信部43は、生成元が第2制御機7Bである信号情報S2を路側通信機8から受信した場合も、受信した信号情報S2を制御部41に送信する。
【0060】
センサ45は、自車両の現在位置を計測する位置センサと、自車両の速度を計測する速度センサと、自車両の現在方位を検出する方位センサとを含む。
位置センサは、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機よりなり、自車両の現在位置を計測する。速度センサは、例えばギアの回転に応じてパルスを発生するMR(Magneto-Resistance)センサであり、自車両の現在速度を計測する。方位センサは、例えばジャイロセンサであり、自車両の現在方位を計測する。
【0061】
車載カメラ46は、所定のフレームレートでデジタル画像を取得可能なデジタルカメラである。車載カメラ46は、車両3の前方の風景を撮影可能な位置に設置される。
制御部41は、車載カメラ46から入力されるデジタルの撮影画像から、車両3の前方の信号灯器を識別可能である。制御部41は、識別した信号灯器のフレームごとの状態変化により、信号灯器に含まれる複数の信号灯のうちの、現在点灯中の信号灯の色(以下、「信号灯色」という。)をほぼリアルタイムに判定することができる。
【0062】
車内通信部47は、運転者が車両3に持ち込んだ端末装置1と通信するための通信インタフェースである。
車内通信部47の通信インタフェースは、例えば、ブルートゥース(登録商標)などの無線通信の規格、及びUSB(Universal Serial Bus)などの有線通信の規格のうちの少なくとも1つの規格に準拠するインタフェースである。
【0063】
ナビゲーション部48は、車両3が通行する予定経路の探索処理を実行し、探索結果を車内の表示装置(図示せず)に表示させるECUである。
具体的には、ナビゲーション部48は、出発地と目的地などの設定入力と、自身の記憶装置から或いはサーバ2などから取得する道路地図データ29を用いて、ダイクストラ法などのアルゴリズムにより最適な予定経路を探索する。なお、ナビゲーション部48が用いる道路地図データ29は、制御部41も利用可能である。
【0064】
上述の通り、車載装置4の制御部41は、端末装置1によるメッセージの通知可否の判定処理(
図6及び
図7)を実行可能である。
制御部41は、判定処理によりメッセージ通知を許可する場合には、端末装置1宛ての通知許可の制御情報を生成し、生成した制御情報を車内通信部47に出力する。車内通信部47は、入力された通知許可の制御情報を含む通信パケットを生成し、生成した通信パケットを端末装置1に送信する。
【0065】
同期処理部44は、所定の同期方式により、サーバ2などの他の通信ノードと時刻同期を図るための処理部である。制御部41は、同期処理部44が生成するローカル時刻に従って、プローブ情報S1に含める走行時刻(プローブ車両3の現在位置に対応する現在時刻)などを決定する。
同期処理部44の同期方式は、例えば、GNSS受信機の出力に基づく同期方式や、NTP及びPTPなどの通信フレームを用いた同期方式などを採用し得る。
【0066】
〔端末装置の構成〕
図2に示すように、端末装置1は、制御部11、記憶部12、通信部13、及び表示部14を備えるモバイルコンピュータである。具体的には、端末装置1は、スマートフォン、タブレット型PC、或いはノート型PCなどである。
制御部11は、CPU及びRAMなどを含む演算処理装置である。制御部11には、FPGAなどの集積回路が含まれていてもよい。
【0067】
制御部11は、記憶部22に格納されたコンピュータプログラム15をメインメモリ(RAM)に読み出し、読み出したプログラム15に従って各種の情報処理を実行する。記憶部12は、HDD及びSSDなどの不揮発性メモリを含む補助記憶装置である。
記憶部12に格納されるプログラム15には、例えばEメール、SMS(Short Message Service)及びLINE(登録商標)などの、端末装置1のユーザ(運転者)に所定のメッセージ通信を提供するアプリケーションプログラムが含まれる。
【0068】
通信部13は、車内通信部47との狭域通信と、4G又は5Gなどの移動体通信の双方を実行可能な通信インタフェースである。表示部14は、例えば、ユーザによるタッチ操作が可能な液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイである。
通信部13は、メールサーバ(図示せず)などから自装置宛てのメッセージを受信すると、受信したメッセージを制御部11に出力する。
【0069】
制御部11は、自装置が車載装置4と接続されていない場合は、ユーザに対するメッセージの通知処理を行う。通知処理は、スピーカ(図示せず)から所定のメロディを出力する処理と、所定の表示形式でメッセージを表示部14に表示させる処理とを含む。
制御部11は、自装置が車載装置4と接続されている場合は、受信したメッセージを車載装置4に転送する。この場合、制御部11は、車載装置4からの通知許可の取得を条件として、上記の通知処理を行う。
【0070】
〔中央装置の構成〕
図2に示すように、中央装置5は、交通管制エリアに含まれる複数の交差点の交通信号制御機7を統括的に制御するサーバコンピュータである。中央装置5は、制御部51、記憶部52、及び通信部53を備える。
【0071】
制御部51は、CPU及びRAMを含む演算処理装置である。制御部51は、記憶部52に格納されたコンピュータプログラム54を読み出し、当該プログラム54に従って各種の情報処理を行う。
【0072】
記憶部52は、HDD及びSSDのうちの少なくとも1つの不揮発性メモリ(記録媒体)を含む補助記憶装置である。記憶部52は、フラッシュROM、USBメモリ、又はSDカードなどを含んでいてもよい。
中央装置5のコンピュータプログラム54には、交通信号制御機7(第2制御機7B)の遠隔制御を制御部51のCPUに実行させるプログラムなどが含まれる。
【0073】
制御部51は、プログラム選択方式又はプログラム形成方式により信号制御パラメータを算出し、算出した信号制御パラメータを含む信号制御指令を生成する。
信号制御指令は、新たに生成した信号制御パラメータや端末感応制御の許否情報などを含む所定フォーマットの制御指令である。信号制御指令は、遠隔制御の制御周期(例えば1.0~2.5分)ごとに生成される。
【0074】
通信部53は、公衆通信網10を介したサーバ2との通信、及び、専用の通信回線6を介した第2制御機7Bとの通信の双方を実行可能な通信インタフェースである。通信部53は、通信回線6を介してサーバ2と接続されていてもよい。
通信部53は、制御部51が信号制御パラメータの制御周期ごとに生成した信号制御指令を、遠隔制御の対象である第2制御機7Bに送信する。
【0075】
交通管制エリア内の第2制御機7Bには、DSSS対応又はTSPS対応の交通信号制御機7が含まれる。
この第2制御機7Bは、中央装置5から受信した信号制御指令に基づいて、信号情報S2を生成し、生成した信号情報S2を路側通信機8に送信する。路側通信機8は、受信した信号情報S2を、車両向けの提供情報として車両3にブロードキャスト送信する。
【0076】
〔交差点の信号情報〕
図3は、交差点Jiの信号情報S2の一例を示す説明図である。
図3に示すように、信号情報S2は、「現在時刻」、「交差点ID」、「サイクル長(秒)」、「サイクル開始時刻」、「ステップn秒数」(図例ではn=1~6)、及び「灯色遷移情報」を含むデータ構造を有する。
【0077】
「現在時刻」には、現時点の時刻値tc(例えば「時:分:秒」)が記される。時刻値tcは、ローカル時刻が経過するごとに、信号情報S2を保持する装置においてインクリメントされる。
図例では、時刻値tc(=11:30:00)がサイクル開始時刻(=11:28:30)に対して1サイクル(=90秒)だけ遅れている。従って、図例の信号情報S2は、現時点の時刻値tcにおいてちょうどサイクルが開始するタイミングとなっている。
【0078】
「交差点ID」には、交差点の識別情報Ji(i=1,2,3……)が記される。以下、
図3の説明において交差点の図面参照符号を「Ji」(iはサフィックス)とする。
「サイクル長(秒)」には、交差点Jiで適用中のサイクルの時間長が記される。
「サイクル開始時刻」には、交差点Jiで適用中のサイクルの開始時刻が記される。
【0079】
「ステップn秒数」には、例えば、1サイクルに含まれる各ステップ1,2……nの継続秒数が記される。
図例では、ステップ1の秒数が40秒、ステップ2の秒数が3秒、ステップ3の秒数が2秒であり、ステップ4の秒数が40秒、ステップ5の秒数が3秒、ステップ6の秒数が2秒である。なお、ステップの総数nは一例であり7以上であってもよい。
【0080】
「灯色遷移情報」には、1つの交差点Jiに向かって流入する各流入路L1,L2,L3,L4のステップ番号ごとの灯色が記される。
図例では、流入路L1の灯色は、ステップ1で青、ステップ2で黄、ステップ3からステップ6で赤の順に遷移する。流入路L2の灯色は、ステップ1からステップ3で赤、ステップ4で青、ステップ5で黄、ステップ6で赤の順に遷移する。流入路L3及び流入路L4の場合も同様である。
【0081】
〔動作モードの切り替え処理〕
図4は、端末装置1の制御部11が実行する、動作モードの切り替え処理の一例を示すフローチャートである。制御部11が実行可能な動作モードには、「通常モード」と「待機モード」が含まれる。
【0082】
図4に示すように、端末装置1の制御部11は、自装置宛てのメッセージを受信の有無を常に判定しており(ステップST11)、受信があった場合は車載装置4との通信が確立したか否かを判定する(ステップST12)。
ステップST12の判定は、例えば、所定の通信規格に基づく監視機能により実行される。端末装置1が車載装置4とブルートゥースで接続される場合は、制御部11は、車内通信部47とのペアリングが完了すると車載装置4との通信が確立中と判定する。
【0083】
ステップST11の判定結果が否定的である場合は、制御部41は、メッセージを車載装置4に転送せずに「通常モード」を実行する(ステップST16)。
通常モードは、車載装置4からの通知許可を待たずにメッセージを表示する動作モードである。従って、通常モードにおいては、制御部11は、受信したメッセージを即座に表示部14に出力する(ステップST15)。
【0084】
ステップST11の判定結果が肯定的である場合は、制御部41は、メッセージを車載装置4に転送して「待機モード」を実行する(ステップST13)。
待機モードは、車載装置4から通知許可を取得するまでメッセージの表示を待機する動作モードである。従って、待機モードにおいては、制御部11は、受信したメッセージを通知許可があるまで表示部14に出力しない。
【0085】
具体的には、制御部11は、車載装置4から通知許可の受信があるか否かを判定する(ステップST14)。
そして、制御部11は、通知許可を受信していない場合は待機モードを継続し(ステップST13)、通知許可を受信した場合はメッセージを表示部14に出力する(ステップST15)。
【0086】
〔車両の状態判定〕
図5は、車載装置4の制御部41が実行する、車両の状態判定の一例を示すフローチャートである。
図5に示すように、車載装置4の制御部41は、端末装置1からメッセージの転送があるか否かを常に判定しており(ステップST21)、転送があった場合は現時点の車両状態を判定する(ステップST22)。車両状態には、例えば次の3つの状態が含まれる。
【0087】
VS1:赤信号で停止中
VS2:走行中
VS3:駐車中
状態VS1は、例えば、車両3前方の信号灯器に関する現時点の信号灯色が赤である場合に、センサ45で検出される自車速度が所定の停止閾値(例えば2km/時)以下に変化したことによって判定することができる。
【0088】
状態VS2は、例えば、センサ45で検出される自車速度が所定の走行閾値(例えば10km/時)以上であることによって判定することができる。
状態VS3は、例えば、センサ45で検出される自車速度が所定の停止閾値(例えば0km/時)以下であり、かつ、パーキングブレーキの作動を検出したことによって判定することができる。
【0089】
ステップST22の判定結果が状態VS1の場合は、制御部11は、第1判定処理(
図6)を実行し(ステップST23)、処理を終了する。
ステップST22の判定結果が状態VS2の場合は、制御部11は、第2判定処理(
図7)を実行し(ステップST24)、処理を終了する。
【0090】
ステップST22の判定結果が状態VS3の場合は、制御部11は、通知許可を実行して(ステップST25)、処理を終了する。
具体的には、制御部41は、通知許可の制御情報を生成して車内通信部47に出力することにより、処理を終了する。
【0091】
〔通知可否の第1判定処理〕
図6は、車載装置4の制御部41が実行する、通知可否の第1判定処理(
図5のステップST23)の一例を示すフローチャートである。
図6において、「TS」は、赤信号による交差点での停止時間である。「TR」は、車両3の運転者である端末装置1のユーザが、メッセージの読解に要する所要時間(以下、「読解時間」ともいう。)である。メッセージの読解とは、ユーザがメッセージに含まれる文字情報から文意を理解することである。
【0092】
図6に示すように、車載装置4の制御部41は、まず、交差点Jiでの停止時間TSを算出する(ステップST31)。この停止時間TSは、現在表示中の赤信号の残り時間に相当し、信号情報S2(
図3参照)に基づいて、例えば以下の処理により算出される。
【0093】
処理1:自車両の現在位置と現在方位、及びナビゲーション部48から取得する道路地図データ29を用いて、車両3が現在どの流入路L1,L2,L3,L4を通行中かを判定する。ここでは、車両3が流入路L1を通行中であるとする。
処理2:現在時刻tcからサイクル開始時刻を減算する。
処理3:減算値をサイクル長で割った余りの秒数を算出する。
【0094】
処理4:流入路L1について、サイクルの開始時点から余りの秒数だけ経過した場合の経過時点を求める。
処理5:流入路L1について、経過始点から赤終了時点までの時間(赤残り時間)を停止時間TSとする。
【0095】
次に、制御部41は、メッセージの読解時間TRを算出する(ステップST32)。この算出は、例えば変換テーブルCTを用いて行われる。変換テーブルCTは、ユーザによる文字情報の読解速度の種別を予め定義するためのデータである。
例えば、「標準」は1秒で5文字の読解速度であり、「速読み」では1秒で7文字の読解速度であり、「ゆっくり読み」は1秒で3文字の読解速度である。読解速度の種別は、ユーザにより車載装置4の記憶部42に設定入力される。
【0096】
例えば、メッセージに含まれる文字数が100文字であり、ユーザ指定の読解速度の種別が「標準」である場合は、制御部41は、次の算出式により読解時間TRを算出する。
TR=100文字/(5文字/1秒)=20秒
次に、制御部41は、TS≧TRの不等式を充足するか否かを判定する(ステップST33)。
【0097】
ステップST33の判定結果が肯定的である場合は、制御部41は通知許可を実行する(ステップST34)。具体的には、制御部41は、通知許可の制御情報を生成して車内通信部47に出力し、処理を終了する。
ステップST33の判定結果が否定的である場合は、制御部41は、通知許可を実行しない(ステップST34)。具体的には、制御部41は、通知許可の制御情報を生成せずに、処理を終了する。
【0098】
〔通知可否の第2判定処理〕
図7は、車載装置4の制御部41が実行する、通知可否の第2判定処理(
図5のステップST24)の一例を示すフローチャートである。
図7の第2判定処理は、予定経路SRの取得を条件として実行される。ここでは予定経路SRは、4つの交差点J1,J2,J3,J4を含むものとする。また、車載装置4の制御部41のメモリには、最初の交差点J1への到達前に取得した各交差点Jk(k=1~4)の信号情報S2が記録されているとする。
【0099】
図7に示すように、車載装置4の制御部41は、まず、予定経路SRの経路情報を取得する(ステップST41)。
この処理は、例えば、予定経路SRの経路情報をナビゲーション部48から受信することにより行われる。予定経路SRの経路情報には、各交差点Jkの交差点IDと位置情報、各交差点Jk間のリンク旅行時間、及び、各交差点Jkの通過時間などが含まれる。
【0100】
次に、制御部41は、予定経路SRの経路情報から、連続する複数の交差点Jkの交差点IDと位置情報を抽出する(ステップST42)。
次に、制御部41は、抽出した位置情報を用いて各交差点Jkへの到着予定時刻tk(k=1~4)と、各交差点Jkにおける停止時間TSk(k=1~4)を算出する(ステップST43)。
【0101】
到着予定時刻tkは、例えば、予定経路SRの経路情報に含まれるリンク旅行時間と交差点通過時間を、今回の第2判定処理の開始時刻に加算することにより算出される。
停止時間TSkは、到着予定時刻tkにおける信号灯色が赤である交差点Jkについて算出される。従って、制御部41は、到着予定時刻tkに信号灯色が青である交差点については、停止時間TSkを算出しない。
【0102】
次に、制御部41は、予定経路SRに含まれる複数の交差点Jk(k=1~4)の中から、TSk≧TRを満たす交差点(以下、「候補地点」という。)を抽出する(ステップST44)。
次に、制御部41は、許可地点の決定処理を実行する(ステップST45)。この処理は、抽出した候補地点の中から、例えば車両3の現在位置から最も近い交差点Jkを選択する処理である。
【0103】
次に、制御部41は、許可地点で自車両が実際に停止したか否かを判定する(ステップST46)。ステップST46の判定結果が肯定的である場合は、制御部41は、許可地点において通知許可を実行する(ステップST27)。すなわち、制御部41は、通知許可の制御情報を生成して車内通信部47に出力する。
ステップST46の判定結果が否定的である場合は、制御部41は、ステップST47の処理をスキップして処理を終了する。
【0104】
図7のステップST44において、TSk≧TRを満たす候補地点が存在しない場合は、制御部41は、ナビゲーション部48から別の予定経路SR(例えばJ5以降の交差点を含む予定経路)を取得し、第2判定処理を最初から繰り返すことが好ましい。
このようにすれば、TSk≧TRを満たす候補地点が見つかる可能性が高まり、端末装置1に通知許可を付与し易くなる。
【0105】
〔通知許可後の注意喚起処理〕
図8は、車載装置4の制御部41が実行する、通知許可を行った後の注意喚起処理の一例を示すフローチャートである。
通知許可は、第1判定処理(
図6)に基づく通知許可及び第2判定処理(
図7)に基づく通知許可のいずれでもよい。また、注意喚起とは、赤信号で停止中の車両3を運転するユーザ(運転者)に対して、次の青信号の開始を事前に知らせることである。
【0106】
図8に示すように、車載装置4の制御部41は、端末装置1に通知許可を送信したか否かを常に判定しており(ステップST51)、通知許可を送信済みである場合は、交差点の青開始時刻tsを算出する(ステップST52)。
具体的には、制御部41は、前述の停止時間TSの算出に用いた赤終了時点を青開始時刻tsとする。
【0107】
次に、制御部41は、青開始時刻tsから所定時間ΔT(例えば5秒)だけ前の時点に、ユーザの意識を車両前方に向けるための注意喚起を実行する(ステップST53)。
具体的には、制御部41は、端末装置1宛ての注意喚起の制御情報を車内通信部47に出力する。この場合、注意喚起を含む通信パケットが端末装置1に送信される。また、端末装置1の制御部11は、注意喚起の受信に応じて、青信号の開始を知らせるポップアップ表示(例えば「信号が青に変わります」など)を表示部14に出力させる。
【0108】
〔第1の変形例〕
上述の実施形態において、走行中の車両3の端末装置1に関して実行される第2判定処理(
図7)に基づく通知許可は、車両3が停止する「直前」で実施することが好ましい。
その理由は、通知許可を出すタイミングを車両3の停止後とすると、メッセージを読解する時間が侵食されるからである。逆に、通知許可を出すタイミングが早すぎて車両3の走行中に通知許可を与えると、走行中に通知を制限する意味がなくなるからである。
【0109】
具体的には、赤信号により車両速度がゼロになる時刻を「t0」とすると、車両3が停止する「直前」の時刻tbとは、例えば次の不等式を満たす時間範囲に含まれる時刻のことである。
時間範囲:t0-δ≦tb≦t0 (ただしδは例えば2秒)
【0110】
〔第2の変形例〕
上述の実施形態において、車載装置4の制御部41に対して、メッセージの文字数だけでなく、メッセージの内容に応じて変動する読解時間TRを設定してもよい。
例えば、メッセージの内容が、ユーザにとって定型的なフォーマットである場合は、他のフォーマットに比べて読解時間TRを短めに設定してもよい。具体的には、ユーザが宅配業者である場合は、例えば再配送連絡の読解時間TRを短く設定することが好ましい。
【0111】
また、ユーザが宅配業者である場合において、メッセージの内容がリマインドならば読解時間TRを短く設定し、メッセージの内容が配送時間の変更などを伴う場合には、リマインドの場合よりも読解時間TRを長めに設定すればよい。
更に、メッセージがEメールの場合は、件名に<返信要>などのタグを付きのメッセージの読解時間TRについては、長めに設定することが好ましい。
【0112】
〔第3の変形例〕
上述の実施形態において、車載装置4の制御部41は、メッセージの送信元の種別に応じて、通知可否の判定対象とするか否かを決定してもよい。
例えば、メッセージの送信元が業務関係者(例えばユーザの上司又は取引先など)の場合は通知可否の判定対象とし、送信元が私的関係者(例えばユーザの友人など)の場合は常に通知許可を行わないなどの運用が考えられる。また、ユーザが宅配業者である場合は、送信元が配送先であるメッセージを通知可否の判定対象に含めることが好ましい。
【0113】
〔第4の変形例〕
上述の実施形態において、車載装置4の制御部41は、アプリケーションソフトの種別に応じて、通知可否の判定対象とするか否かを決定してもよい。
具体的には、LINE、SMS及びEメールのうち、業務に使用するメッセージ送受信のためのアプリケーションを通知可否の判定対象とすればよい。この場合、判定対象がEメールに設定されると、制御部41は、LINEとSMSのメッセージについては常に通知許可を行わず、Eメールのメッセージについて通知可否を判定する。
【0114】
〔その他の変形例〕
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0115】
上述の実施形態において、第1及び第2判定処理(
図6及び
図7)の実行主体は、車載装置4の制御部41だけでなく、端末装置1の制御部11であってもよい。すなわち、端末装置1が「通知可否の判定装置」であってもよい。
この場合、端末装置1の制御部11は、車載装置4にメッセージを転送する必要はないが、
図5の状態判定の判定結果を車載装置4から取得する必要がある。
【0116】
また、端末装置1の制御部11は、通知可否の判定に必要な信号情報S2及び予定経路SRなどを車載装置4から取得し、第1及び第2判定処理(
図6及び
図7)を実行すればよい。更に、端末装置の制御部11は、通知許可を行った後に注意喚起処理(
図8)を実行してもよい。なお、端末装置1の制御部11は、信号情報S2についてはサーバ2から取得することしてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 端末装置(通知可否の判定装置)
2 サーバ
3 プローブ車両(車両)
4 車載装置(通知可否の判定装置)
5 中央装置
6 通信回線
7 交通信号制御機
7A 第1制御機
7B 第2制御機
8 路側通信機
9 無線基地局
10 公衆通信網
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
14 表示部
15 コンピュータプログラム
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
24 同期処理部
25 地図データベース
26 プローブデータベース
27 信号情報データベース
28 会員データベース
29 道路地図データ
30 コンピュータプログラム
41 制御部
42 記憶部
43 車外通信部
44 同期処理部
45 センサ
46 車載カメラ
47 車内通信部
48 ナビゲーション部
49 コンピュータプログラム
51 制御部
52 記憶部
53 通信部
54 コンピュータプログラム
100 情報提供システム
200 交通信号制御システム
S1 プローブ情報
S2 信号情報