(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024084996
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】光コネクタ構成品および光コネクタ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/36 20060101AFI20240619BHJP
G02B 6/26 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
G02B6/36
G02B6/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199263
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502226380
【氏名又は名称】株式会社オプトハブ
(71)【出願人】
【識別番号】598163064
【氏名又は名称】学校法人千葉工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陵沢
(72)【発明者】
【氏名】榊原 忍
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 亮
【テーマコード(参考)】
2H036
2H137
【Fターム(参考)】
2H036JA01
2H036KA02
2H036QA03
2H036QA14
2H036QA17
2H036QA18
2H036QA43
2H036QA44
2H036QA46
2H036QA49
2H036QA56
2H137AB01
2H137BA01
2H137BA15
2H137BC16
2H137BC51
2H137BC58
2H137BC71
2H137CA15A
2H137CA49
2H137CA74
2H137CA75
2H137CC27
2H137CD33
2H137CD50
2H137DB11
2H137HA01
2H137HA05
(57)【要約】
【課題】光ファイバから漏れ出す光などによって発生する熱の抑制をはかることができる光コネクタ構成品および光コネクタを得る。
【解決手段】光コネクタの構成部品となるプラグ100は、貫通孔内に光ファイバ200の先端部分を保持するフェルール110と、フェルール110と光ファイバ200との間に設置される反射材140とを備えるものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔内に光ファイバの先端部分を保持するフェルールと、
前記フェルールと前記光ファイバとの間に設置される反射材と
を備える光コネクタ構成品。
【請求項2】
前記反射材は、金属を含む材料を有する請求項1に記載の光コネクタ構成品。
【請求項3】
前記フェルールを保持するケースを備え、
前記ケース内において、前記光ファイバからの光を、前記光が前記フェルールに当たらない位置に放出させる請求項1または請求項2に記載の光コネクタ構成品。
【請求項4】
前記フェルールを保持するケースと、
前記光ファイバから前記ケース内に放出される光を吸収する光吸収手段と
を備える請求項1または請求項2に記載の光コネクタ構成品。
【請求項5】
前記光吸収手段は、前記光ファイバより熱伝導性の高い材料である請求項4に記載の光コネクタ構成品。
【請求項6】
前記光吸収手段は、前記光ファイバからの光が直接当たる部分の材料を、前記光ファイバの被覆より光の吸収が大きい材料とする請求項4に記載の光コネクタ構成品。
【請求項7】
前記光吸収手段は、前記光の吸収により発生する熱を前記ケースに伝える請求項4に記載の光コネクタ構成品。
【請求項8】
前記光吸収手段は、前記ケース内外に連なって設置され、前記ケース内において吸収した前記光により発生する熱を前記ケース外で放熱させる請求項4に記載の光コネクタ構成品。
【請求項9】
前記フェルールを保持するケースを備え、
前記ケース内において、前記光ファイバの前記反射材で覆われていない部分に曲げ部を有する請求項1または請求項2に記載の光コネクタ構成品。
【請求項10】
前記光ファイバの前記曲げ部に接触させて放熱させる放熱手段を備える請求項9に記載の光コネクタ構成品。
【請求項11】
前記放熱手段は、前記光ファイバより熱伝導性の高い材料である請求項10に記載の光コネクタ構成品。
【請求項12】
前記放熱手段は、前記曲げ部において前記光が放出される部分以外の部分を覆う溝を有する請求項10に記載の光コネクタ構成品。
【請求項13】
前記フェルールを保持するケースと、
前記ケース内において、前記光ファイバのクラッドよりも高い屈折率の材料で構成され、前記光ファイバに接触させた高屈折率材と
を備える請求項1または請求項2に記載の光コネクタ構成品。
【請求項14】
請求項1または請求項2に記載の光コネクタ構成品から構成される光コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この技術は、複数の光ファイバを接続する光コネクタ構成品および光コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバのケーブルを、他の光ファイバ、他の装置などと接続して光を伝搬させるため、光ファイバの端部に光コネクタが設置される。光コネクタには、プラグ2つとアダプタ1つからなるもの、プラグ1つとレセプタクル1つからなるものなどがある。光コネクタの構成品であるプラグ、レセプタクルなどにはフェルールが用いられ、フェルールが有する貫通孔に光ファイバの先端を通し、接着などにより光ファイバを保持する。たとえば、2つのプラグを、スリーブなどを有するアダプタの両側から挿入し、プラグが保持する2つの光ファイバの端面を突き合わせて、バネなどで押し付け、光を伝搬可能に、光ファイバを接続する(たとえば、特許文献1および非特許文献1参照)。
【0003】
ここで、フェルールは、硬質で加工精度の高いセラミックが材料として用いられることが多いが、プラスチックを材料とするものもある(たとえば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】JIS C 5973:2014 F04形光ファイバコネクタ(SCコネクタ)
【非特許文献2】JIS C 5982:2020 F13形多心光ファイバコネクタ(MPOコネクタ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、光ファイバに入力する光のパワーを大きくすれば、光ファイバはより遠方まで光を伝搬することができる。しかしながら、光のパワーを大きくすると、光コネクタで突き合わせた光ファイバの端面において漏れる光のパワーも大きくなる。このため、たとえば、プラスチック製のフェルールの場合、突き合わせた光ファイバから漏れ出した光で、光コネクタおよび光コネクタの周辺が発熱する。そして、熱に弱いプラスチック製のフェルール、光ファイバとフェルールとを接着した接着剤、光ファイバの被覆などが熱によって損傷する。
【0007】
また、セラミック製のフェルールの場合、突き合わせた光ファイバから漏れ出した光で、フェルールが発熱して光ファイバより膨張する。このため、突き合わせた光ファイバの端面が離れてしまい、端面から漏れ出す光がさらに多くなって、光コネクタなどがさらに過熱する。したがって、フェルール自体が熱に強い材料であったとしても、光ファイバとフェルールとを接着した接着剤および光ファイバの被覆などが熱によって損傷する。
【0008】
そこで、光ファイバから漏れ出す光などによって発生する熱の抑制をはかることができる光コネクタ構成品および光コネクタの実現が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示に係る光コネクタ構成品および光コネクタは、貫通孔内に光ファイバの先端部分を保持するフェルールと、フェルールと光ファイバとの間に設置される反射材とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
開示に係る光コネクタ構成品および光コネクタによれば、フェルールと光ファイバとの間に反射材を設置するようにしたので、光ファイバ外への光の放出を抑え、光コネクタにおける発熱を抑えることができる。このため、光ファイバに入力する光のパワーを大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係るプラグ100を中心とする光ファイバシステムの構成例を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係るプラグ100の内部構成を示す図である。
【
図3】実施の形態2に係るプラグ100を中心とする光ファイバシステムの構成例を示す図である。
【
図4】実施の形態2に係るプラグ100の内部構成を示す図である。
【
図5】実施の形態3に係るプラグ100を中心とする光ファイバシステムの構成例を示す図である。
【
図6】実施の形態3に係るプラグ100の内部構成を示す図である。
【
図7】実施の形態3に係るプラグ100における放熱ブロック160の形状について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態に係る光コネクタについて、図面などを参照しながら説明する。光コネクタは、プラグ2つとアダプタ1つからなるもの、プラグ1つとレセプタクル1つからなるものなどがある。プラグおよびレセプタクルは、光コネクタ構成品である。以下の実施の形態では、プラグ2つおよびアダプタ1つの光コネクタの光コネクタ構成品におけるプラグの例を説明するが、レセプタクルについても、同様の構成を用いることができる。以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、以下に記載する実施の形態の全文において共通することとする。また、図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。さらに、断面図では、視認性に鑑みて、一部の図および機器において、ハッチングを省略している場合がある。そして、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、明細書に記載された形態に限定するものではない。明細書に記載された機器がすべて含まれていなくてもよい場合がある。特に構成要素の組み合わせは、各実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、他の実施の形態に記載した構成要素を別の実施の形態に適用することができる。また、添字で区別などしている複数の同種の機器などについて、特に区別したり、特定したりする必要がない場合には、符号、添字などを省略して記載する場合がある。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るプラグ100を中心とする光ファイバシステムの構成例を示す図である。また、
図2は、実施の形態1に係るプラグ100の内部構成を示す図である。
図2は、
図1のA-A断面で切断したときの断面を示している。
【0014】
実施の形態1の光ファイバシステムにおいて、プラグ100は、光ファイバ200の先端部分に設置される端子である。プラグ100の詳細については後述する。実施の形態1における光ファイバシステムでは、光ファイバ200を接続するときには、光コネクタの他の構成品となるアダプタ300におけるハウジング310の両側から、2つのプラグ100をそれぞれ挿入する。そして、アダプタ300は、ハウジング310内に設置されたスリーブ320に、後述するプラグ100のフェルール110を沿わせて光ファイバ200の端面を突き合わせて押し付けた状態を保ち、光を伝搬可能に接続する。ここで、光が伝搬可能であれば、端面が接触していなくてもよい。
図1では、光コネクタを構成するアダプタ300および1つのプラグ100を点線で示している。
【0015】
光ファイバ200は、コア、クラッドおよび被覆で構成されるケーブルである。芯となる屈折率の高いコアの外周を、コアよりも屈折率が低いクラッドで覆う。さらに、クラッドの外周を、被覆で覆って保護する。ただ、実施の形態1における光ファイバ200は、後述するフェルール110内など、プラグ100内において被覆で覆われていない部分もある。ここで、実施の形態1における光ファイバ200は、単心の線であるものとする。
【0016】
実施の形態1におけるプラグ100は、フェルール110およびケース120を有する。また、
図2に示すように、プラグ100は、バネ130、光吸収ブロック150、放熱ブロック160、断熱材170および放熱材180をケース120内に有する。
【0017】
フェルール110は、光ファイバ200の先端部分を保持する貫通孔を有する部材である。フェルール110の貫通孔からは、光ファイバ200の端面が露出している。フェルール110は、石英ガラス、プラスチックなどを材料とする。フェルール110は、一部がケース120に入れられ、ファイバ線の軸方向に沿って移動可能に保持される。光ファイバ200端面側からフェルール110が押されると、弾性体であるバネ130で生じる反発力が、フェルール110を介して、光ファイバ200端面に加わる。
【0018】
反射材140は、光ファイバ200を伝搬する光が光ファイバ200外に放出されないように光ファイバ200内に反射させる部材である。実施の形態1においては、フェルール110の貫通孔と光ファイバ200のクラッドの外側との間に反射材140を設ける。反射材140は、光を反射する金、銀などの金属を含む材料である。反射材140は、光ファイバ200を伝搬する光が赤外光の場合は、金を含む材料がよく、可視光の場合は、銀を含む材料がよい。また、光ファイバ200の周囲が反射材140で覆われた構造とすることが望ましい。フェルール110と光ファイバ200との間に反射材140を付ける方法としては、蒸着またはスパッタにより、光ファイバ200に膜を付着させる方法がある。また、反射材140の粉末を入れた樹脂を塗布する方法、反射材140のスリーブに光ファイバ200を挿入して接着または圧着する方法、メッキ、銀鏡反応などの化学処理を用いる方法などがある。たとえば、単一モードファイバのプラグ100のように、フェルール110内での光ファイバ200の位置精度を高くする必要がある場合、蒸着またはスパッタリングで光ファイバ200に薄膜を付着させる方法が適している。また、たとえば、石英ガラス製のクラッドに、金の膜を付着させる場合には、石英ガラスと金との間に、プライマとなるクロム、チタン、ニッケルなどの膜を設けることで、剥がれやすさを改善することができる。
【0019】
実施の形態1のプラグ100では、光ファイバ200端面から入力した光がフェルール110の中を通過した後のケース120内において、光ファイバ200に反射材140が付されていない部分がある。反射材140のない部分(以下、無反射部分という場合がある)は、そこから放出される光の強い部分がフェルール110に当たらないような位置に配置される。ただし、無反射部分から放出される光でも、反射、拡散、散乱などによりフェルール110の温度上昇が問題のない範囲までパワーが小さくなった光は、フェルール110に当たっても問題ない。
図2には、反射材140の端部となる位置の例を示している。
【0020】
放熱手段となる放熱ブロック160は、光ファイバ200が発する熱を放熱させる。ケース120内において、光ファイバ200は、放熱ブロック160に沿って設置される。また、放熱ブロック160は、表面が曲面160Aとなっている。放熱ブロック160に曲面160Aを設けることで、曲面160Aに沿って設置された光ファイバ200は、曲線状態の曲げ部を有することになる。光ファイバ200がケース120内に曲げ部を有することで、光の直進性を利用して、クラッドを伝搬する光が曲げ部においてクラッドの外側に向かって進み、クラッドから放出されるようにする。曲げ部においてクラッドの外に放出された光が光ファイバ200の被覆などに吸収されると、熱が発生する。ここで、放出された光により発生する熱が拡散するように、放熱ブロック160には、低くても光ファイバ200より熱伝導性の高い素材を用いる。熱伝導性の高い素材には、銅、鉄、アルミニウムなどの金属およびこれらの金属を含む素材が適している。
【0021】
光吸収手段となる光吸収ブロック150は、曲げ部においてクラッドの外に放出され、光ファイバ200の被覆で吸収されなかった光を吸収する。光吸収ブロック150の素材には、吸収した光により発生した熱が拡散するように、低くても光ファイバ200より熱伝導性の高い素材を用いる。光吸収ブロック150において、光ファイバ200からの光が当たる部分の表面付近は、乱反射を起こして光の吸収率が高くなるように、細かい凹凸を有する。そして、光吸収ブロック150は、低くても光ファイバ200の被覆より吸収率の高い酸化物、炭素などの材料にするとよい。一例として、実施の形態1における光吸収ブロック150は、アルミニウム合金を光吸収ブロック150の材料として用い、光が当たる部分にサンドブラストによって凹凸を作ってから、黒色アルマイト処理を施す構造とする。
【0022】
ここで、光ファイバ200は、少なくとも放熱ブロック160に取り付けられる曲げ部において被覆を剥がしておくことで、被覆による発熱を抑えられる利点がある。一方で、被覆を剥がすと、光ファイバ200が破断しやすくなる。このため、対応する光の透過性が高く、発熱を抑えることができる被覆を付けることが望ましい。たとえば、被覆を付けておく場合、放熱ブロック160と光吸収ブロック150との間に空間を設け、光の吸収により光吸収ブロック150に発生した熱が、放熱ブロック160に取り付けられた光ファイバ200の被覆に直接伝わらないような構造にする。
【0023】
フェルール110と放熱ブロック160の間およびフェルール110と光吸収ブロック150との間には、断熱材170を有する。断熱材170は、放熱ブロック160および光吸収ブロック150からの熱をフェルール110に伝わらないようにする部材である。断熱材170により、フェルール110の加熱を抑制することができる。
【0024】
プラグ100は、放熱ブロック160とケース120の間および光吸収ブロック150とケース120との間には放熱材180を有する。放熱材180は、光吸収ブロック150および放熱ブロック160からの熱をケース120に伝えて放熱させる。放熱材180には、耐熱性が高く、バネ130による光ファイバ200端面の押し付けを妨げない柔軟性のある材料を用いる。たとえば、グリスなどの流動性のある放熱材180を用いる場合は、ケース120外に流れ出て光ファイバ200の端面を汚すことのないように粘度のあるものを用いる。または、Oリングなどで放熱材180の漏れ出しを防ぐ機構を追加するなどする。
【0025】
次に、実施の形態1におけるプラグ100について説明する。端面から光ファイバ200に入った光のうち、コアに結合した光は遠方まで伝搬する。一方、クラッドに漏れた光は、反射材140で反射しながらクラッド内を伝搬する。そして、クラッドに漏れた光は、放熱ブロック160に取り付けられた曲げ部において、クラッドの外に放出される。放出された光は、一部は被覆に吸収されて熱となる。被覆の熱は放熱ブロック160に伝わり、放熱材180を介してケース120外に放熱される。また、被覆に吸収されなかった光は被覆外に出て光吸収ブロック150に当たって吸収されて熱に変わる。光吸収ブロック150の熱は拡散され、放熱材180を介してケース120外に放熱される。
【0026】
以上のように、実施の形態1におけるプラグ100によれば、フェルール110と光ファイバ200との間に反射材140を備え、光ファイバ200のクラッドに漏れた光を反射材140で反射させるようにした。このため、光ファイバ200から漏れた光によるフェルール110の加熱を抑えることができ、プラスチック製のフェルール110、光ファイバ200とフェルール110を接着した接着剤などの損傷、劣化などを防ぐことができる。したがって、従来のプラグ100より入力できる光のパワーを大きくすることができ、光ファイバ200およびシステムの性能向上をはかることができる。また、フェルール110の中を通過した後で、ケース120内に放出された光がフェルール110に直接当たらないようにする。このため、さらに、フェルール110の加熱を抑えることができる。
【0027】
さらに、ケース120内に光吸収ブロック150を備えることで、ケース120内に放出された光を熱に変えて放出することで、ケース120内における光ファイバ200の被覆の加熱を抑えることができる。また、ケース120内に放熱ブロック160を備え、放熱ブロック160に光ファイバ200を取り付けることで、被覆による熱を放熱ブロック160で放熱させることができる。このとき、放熱ブロック160の表面を曲面160Aとして、光ファイバ200を曲面160Aに沿わせて取り付け、光ファイバ200に曲げ部を設けることで、ケース120内における光の放出部分を制御することができる。
【0028】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2に係るプラグ100を中心とする光ファイバシステムの構成例を示す図である。また、
図4は、実施の形態2に係るプラグ100の内部構成を示す図である。ここで、
図4は、
図3のA-A断面で切断したときの断面を示している。
図3および
図4において、
図1および
図2と同じ符号を付しているものについては、実施の形態1で説明したことと同様の機能を果たす部材である。
【0029】
実施の形態2におけるプラグ100は、2つの点で実施の形態1におけるプラグ100と異なる。1つ目は、放熱ブロック160の代わりに、ケース120内において光ファイバ200の被覆および反射材140のない無反射部分を高屈折率材190で接触させる構造にしたことである。たとえば、光ファイバ200のクラッドより屈折率の高いガラスを高屈折率材190として、被覆を除去した光ファイバ200のクラッドに接触させた構造にする。光は、屈折率の高い方向に屈折する性質がある。このため、高屈折率材190は、クラッド内を伝搬した光を、光ファイバ200の外側(高屈折率材190の方)に屈折させることで、光吸収ブロック150に向けて放出させる。高屈折率材190は、クラッドの周囲全体を覆って接触させるようにすることが望ましい。光ファイバ200の破断リスクは曲げによる歪が少ないほど軽減されることから、破断抑制を優先させる場合には、曲げ部が少ない方がよい。実施の形態2のプラグ100では、光ファイバ200において被覆を除去した部分は、実施の形態1のように曲げ部を設けることなく、直線状の構造にすることができる。また、高屈折率材190が光ファイバ200を保護する被覆の役割を果たす。
【0030】
また、もう1つは、実施の形態2におけるプラグ100の光吸収ブロック150は、一部がケース120内で高屈折率材190を覆い、他の一部はケース120内から外に連なって配置される構造とした点で実施の形態1と異なる。そして、実施の形態2におけるプラグ100は、光吸収ブロック150とケース120との間に、放熱材180に代わって、断熱材170を設けるものである。
【0031】
次に、実施の形態2におけるプラグ100について説明する。端面から光ファイバ200に入った光のうち、コアに結合した光は遠方まで伝搬する。一方、クラッドに漏れた光は、反射材140で反射しながらクラッド内を伝搬する。クラッド内を伝搬した光は、光ファイバ200が反射材140で覆われていない無反射部分において、高屈折率材190の方に屈折してクラッドの外に放出され、光吸収ブロック150に吸収される。光吸収ブロック150に吸収された光は、熱に変わり拡散される。光吸収ブロック150は、ケース120内において光ファイバ200から放出した光を吸収することで生じた熱を、ケース120外において放出する。断熱材170は、光吸収ブロック150が放出した熱を断熱し、熱がケース120に伝わらないようにする。
【0032】
以上のように、実施の形態2におけるプラグ100によれば、実施の形態1で説明した効果に加え、光ファイバ200のクラッド内を伝搬した光が放出されるまでの伝搬経路に、熱に弱い光ファイバ200の被覆がない。このため、クラッドからの光の放出による発熱を抑えることができる。したがって、実施の形態1におけるプラグ100よりも光ファイバ200に入力する光のパワーを大きくすることができる。また、ケース120内における光ファイバ200の被覆がない部分を直線状にすることができるので、曲げによる歪が少ないほど破断リスクを軽減することができる。また、フェルール110の移動などによって光ファイバ200が周囲の光吸収ブロック150などに押し付けられて破断するリスクを抑えることができる。
【0033】
実施の形態3.
図5は、実施の形態3に係るプラグ100を中心とする光ファイバシステムの構成例を示す図である。また、
図6は、実施の形態3に係るプラグ100の内部構成を示す図である。ここで、
図6は、
図5のA-A断面で切断したときの断面を示している。
図5および
図6において、
図1~
図4と同じ符号を付しているものについては、実施の形態1および実施の形態2で説明したことと同様の機能を果たす部材である。実施の形態3においては、光ファイバ200は、多心光ファイバであるものとして説明する。光ファイバ200は、複数の芯線が並んで配列された角型である。フェルール110は、光ファイバ200の位置合わせに用いるガイドピン111を有する。
【0034】
実施の形態3におけるプラグ100は、2つの点で実施の形態1におけるプラグ100と相違する。1つ目は、実施の形態3におけるプラグ100は、放熱ブロック160と光吸収ブロック150とをケース120の外に配置している点である。実施の形態3のプラグ100は、放熱ブロック160と光吸収ブロック150とをケース120内に備えていないので、ケース120内の光ファイバ200にも、全体に反射材140を付けることが望ましい。実施の形態3のプラグ100の構造では、バネ130の内側の光ファイバ200が屈曲するので、屈曲しても剥がれにくい薄い膜の反射材140を付着させた構造にすることが望ましい。
【0035】
図7は、実施の形態3に係るプラグ100における放熱ブロック160の形状について説明する図である。ここで、
図7は、
図5のB-B断面で切断したときの断面を示している。もう1つは、実施の形態3におけるプラグ100は、放熱ブロック160の曲面160Aに溝161を設けている点で実施の形態1におけるプラグ100とは異なる。放熱ブロック160が溝161を有することで、光ファイバ200を溝161内に沿わせることができる。
図7に示すように、光ファイバ200の周囲のうち、クラッドを伝搬した光が放出される放出方向を開口し、その他の方向については、熱伝導性の高い素材を有する放熱ブロック160で囲われた構造にする。放熱ブロック160の素材については、実施の形態1で説明したことと同様である。
【0036】
次に、実施の形態3におけるプラグ100について説明する。端面から光ファイバ200に入った光のうち、コアに結合した光は遠方まで伝搬する。一方、クラッドに漏れた光は、反射材140で反射しながらクラッド内を伝搬する。そして、クラッドに漏れた光は、放熱ブロック160に取り付けられた曲げ部において、クラッドの外に放出される。放出された光は、一部は被覆に吸収されて熱となる。被覆の熱は放熱ブロック160に伝わってケース120外に放熱される。また、被覆に吸収されなかった光は被覆外に出て光吸収ブロック150に当たって吸収されて熱に変わる。光吸収ブロック150の熱は拡散されてケース120外に放熱される。断熱材170は、光吸収ブロック150および放熱ブロック160が放出した熱を断熱し、熱がケース120に伝わらないようにする。
【0037】
以上のように、実施の形態3におけるプラグ100によれば、実施の形態1で説明した効果に加え、放熱ブロック160と光吸収ブロック150をケース120の外に配置した。このため、放熱ブロック160と光吸収ブロック150とにおいて発生した熱の多くをケース120外に放熱することができる。したがって、ケース120を介して、フェルール110に伝わる熱を抑えることができる。さらに、光ファイバ200のクラッドから放出した光による被覆の熱を、効率よく放熱ブロック160に伝えることができる。このため、実施の形態1のプラグ100を用いた場合よりも光ファイバ200に入力する光のパワーを大きくすることができる。
【0038】
また、放熱ブロック160に溝161を設けることで、光ファイバ200において、被覆が光を吸収して発した熱を、効率よく放熱ブロック160に伝えることができる。
【0039】
実施の形態4.
ここでは、前述した実施の形態1~実施の形態3以外のプラグ100の利用形態について説明する。前述した実施の形態1~実施の形態3では、アダプタ300により光ファイバ200の端面同士を接続して光を伝搬可能にしたプラグ100を有する光コネクタについて説明したが、これに限定するものではない。たとえば、プラグ100と同様のフェルール、反射材などを有するレセプタクルとプラグ100とを接続して光コネクタを構成してもよい。他の接続形態の光コネクタでも適用することができる。
【0040】
また、実施の形態1および実施の形態2のプラグ100は、円形で単芯用のフェルール110を用い、アダプタ300のスリーブ320で、光ファイバ200端面の位置を合わせた。また、実施の形態3では、角型および多芯用のフェルール110を用い、ガイドピン111で光ファイバ200端面の位置を合わせた。しかしながら、フェルール110の形状および光ファイバ200の端面の位置合わせの方法については、これに限定するものではない。
【0041】
さらに、実施の形態1~実施の形態3のプラグ100においては、光吸収ブロック150と放熱ブロック160との間に断熱材170を入れる例を示した。たとえば、光吸収ブロック150が放熱ブロック160より高温にならない場合または温度差が小さい場合は、断熱材170を省いてもよい。
【0042】
さらに、実施の形態1および実施の形態3のプラグ100では、光吸収ブロック150と放熱ブロック160とをケース120内に備えるようにしたが、これに限定するものではない。放熱ブロック160の代わりに、光吸収ブロック150を備えるようにしてもよい。また、実施の形態1~実施の形態3のプラグ100において、光吸収ブロック150または放熱ブロック160にヒートシンクを取り付ける、水冷機構を設けるなど、さらに放熱性を向上させた構造にしてもよい。
【0043】
また、前述した実施の形態2では、光ファイバ200は、被膜を剥がして高屈折率材190を接触させるものとしたが、被膜を光透過性の高い高屈折率の材料で構成してもよい。
【0044】
また、実施の形態3のプラグ100において説明した放熱ブロック160が有する溝161を、実施の形態1の放熱ブロック160が有してもよい。
【0045】
実施の形態1~実施の形態3のプラグ100においては、バネ130を用いて、フェルール110に保持された光ファイバ200端面同士を押し付ける例について示したが、これに限定するものではない。他の方法で端面同士の接触を保持させるようにしてもよい。また、一方の光ファイバ200の端面同士を接触させず、一方の光ファイバ200から出た光を、空間を伝搬させて、他方の光ファイバ200の端面に入光するようにしてもよい。
【0046】
実施の形態2では、破断確率を抑えることを優先して、ケース120内において、光ファイバ200の被覆で覆っていない部分を直線状にする構造としたが、これに限定するものではない。光ファイバ200における光の放出を優先させる場合は、曲部を曲げた構造、または蛇行させた構造にしてもよい。
【0047】
そして、実施の形態1~実施の形態3のプラグ100においては、放熱ブロック160に金属の材料を用いたが、これに限定するものではない。たとえば、サファイアなどのような熱伝導性の高いセラミックなどを用いてもよい。
【符号の説明】
【0048】
100 プラグ
110 フェルール
111 ガイドピン
120 ケース
130 バネ
140 反射材
150 光吸収ブロック
160 放熱ブロック
160A 曲面
161 溝
170 断熱材
180 放熱材
190 高屈折率材
200 光ファイバ
300 アダプタ
310 ハウジング
320 スリーブ