(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000850
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】蒸着装置及び蒸着方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/56 20060101AFI20231226BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231226BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20231226BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C23C14/56 G
H05B33/14 A
H05B33/10
C23C14/24 J
C23C14/24 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099797
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 篤
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107GG04
3K107GG32
3K107GG42
4K029AA09
4K029AA11
4K029AA24
4K029AA25
4K029BA04
4K029BA21
4K029BA42
4K029BA62
4K029BD01
4K029CA01
4K029DA10
4K029DB04
4K029DB05
4K029DB06
4K029DB12
4K029DB14
4K029DB17
4K029JA02
4K029JA05
4K029KA01
4K029KA09
(57)【要約】
【課題】コストを削減し、設置スペースを縮小する。
【解決手段】一実施形態によれば、蒸着装置は、第1搬送方向に沿って一列に並んだ複数の蒸着チャンバーを有する第1チャンバー群と、第2搬送方向に沿って一列に並んだ複数の蒸着チャンバーを有する第2チャンバー群と、第1搬送方向の最も上流に位置する第1蒸着チャンバー及び第2搬送方向の最も下流に位置する第2蒸着チャンバーに連結され処理基板を回転させる第1ローテーションチャンバーと、第1搬送方向の最も下流に位置する第3蒸着チャンバー及び第2搬送方向の最も上流に位置する第4蒸着チャンバーに連結され処理基板を回転させる第2ローテーションチャンバーと、を備える。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理基板が搬送される第1搬送方向に沿って一列に並んだ複数の蒸着チャンバーを有する第1チャンバー群と、
前記第1搬送方向とは逆向きの第2搬送方向に沿って一列に並んだ複数の蒸着チャンバーを有する第2チャンバー群と、
前記第1チャンバー群のうち前記第1搬送方向の最も上流に位置する第1蒸着チャンバー、及び、前記第2チャンバー群のうち前記第2搬送方向の最も下流に位置する第2蒸着チャンバーに連結され、前記第2蒸着チャンバーから搬出された前記処理基板を前記第1蒸着チャンバーに搬入するように前記処理基板を回転させる第1ローテーションチャンバーと、
前記第1チャンバー群のうち前記第1搬送方向の最も下流に位置する第3蒸着チャンバー、及び、前記第2チャンバー群のうち前記第2搬送方向の最も上流に位置する第4蒸着チャンバーに連結され、前記第3蒸着チャンバーから搬出された前記処理基板を前記第4蒸着チャンバーに搬入するように前記処理基板を回転させる第2ローテーションチャンバーと、
を備える、蒸着装置。
【請求項2】
さらに、前記第1ローテーションチャンバーに連結された基板脱着チャンバーを備え、
前記基板脱着チャンバーは、搬入された前記処理基板をキャリアに装着し、前記キャリアを前記第1ローテーションチャンバーに搬出するとともに、前記第1ローテーションチャンバーから搬出された前記キャリアから前記処理基板を取り外すように構成されている、請求項1に記載の蒸着装置。
【請求項3】
さらに、
前記第1蒸着チャンバーから前記第3蒸着チャンバーに亘って延出し、前記キャリアを搬送するように構成された第1搬送レールと、
前記第2蒸着チャンバーから前記第4蒸着チャンバーに亘って延出し、前記キャリアを搬送するように構成された第2搬送レールと、を備える、請求項2に記載の蒸着装置。
【請求項4】
前記複数の蒸着チャンバーの各々は、材料を放射するように構成された蒸着源と、前記蒸着源が収容される第1空間と前記処理基板が搬送される第2空間とを仕切る仕切り板と、を備え、
前記第1搬送レールは、前記第1蒸着チャンバーから前記第3蒸着チャンバーまでの各蒸着チャンバーの前記第2空間に設けられ、
前記第2搬送レールは、前記第2蒸着チャンバーから前記第4蒸着チャンバーまでの各蒸着チャンバーの前記第2空間に設けられ、
前記仕切り板は、前記蒸着源と対向する開口を有し、
前記蒸着源は、放射した材料を前記処理基板に蒸着しないモードでは前記第1空間に吐出口を向け、放射した材料を前記処理基板に蒸着するモードでは前記第2空間に吐出口を向けるように構成されている、請求項3に記載の蒸着装置。
【請求項5】
前記複数の蒸着チャンバーの各々に設けられた前記蒸着源は、互いに異なる材料を放射するように構成されている、請求項4に記載の蒸着装置。
【請求項6】
前記第1蒸着チャンバーの前記蒸着源から放射される材料は、正孔注入層を形成するための材料である、請求項5に記載の蒸着装置。
【請求項7】
前記第2蒸着チャンバーの前記蒸着源から放射される材料は、マグネシウム及び銀の混合物である、請求項6に記載の蒸着装置。
【請求項8】
前記第2蒸着チャンバーの前記蒸着源から放射される材料は、フッ化リチウムである、請求項6に記載の蒸着装置。
【請求項9】
前記第1チャンバー群は、正孔注入層を形成するための前記第1蒸着チャンバーと、正孔輸送層を形成するための蒸着チャンバーと、電子ブロック層を形成するための蒸着チャンバーと、発光層を形成するための蒸着チャンバーと、正孔ブロック層を形成するための前記第3蒸着チャンバーと、を有し、
前記第2チャンバー群は、n型電荷発生層を形成するための前記第4蒸着チャンバーと、p型電荷発生層を形成するための蒸着チャンバーと、電子輸送層を形成するための蒸着チャンバーと、電子注入層を形成するための蒸着チャンバーと、上電極を形成するための前記第2蒸着チャンバーと、を有している、請求項1に記載の蒸着装置。
【請求項10】
前記第1チャンバー群は、正孔注入層を形成するための前記第1蒸着チャンバーと、正孔輸送層を形成するための蒸着チャンバーと、電子ブロック層を形成するための蒸着チャンバーと、発光層を形成するための蒸着チャンバーと、正孔ブロック層を形成するための蒸着チャンバーと、n型電荷発生層を形成するための前記第3蒸着チャンバーと、を有し、
前記第2チャンバー群は、p型電荷発生層を形成するための前記第4蒸着チャンバーと、電子輸送層を形成するための蒸着チャンバーと、電子注入層を形成するための蒸着チャンバーと、上電極を形成するための蒸着チャンバーと、第1透明層を形成するための蒸着チャンバーと、第2透明層を形成するための前記第2蒸着チャンバーと、を有している、請求項1に記載の蒸着装置。
【請求項11】
基板の上方に下電極を形成し、前記下電極と重なる開口を有するリブを形成し、前記リブの上に位置する下部及び前記下部の上に位置し前記下部の側面から突出した上部を含む隔壁を形成した処理基板を用意し、
マスクを設置せずに前記処理基板を蒸着装置に搬入し、有機層を形成し、前記有機層の上に上電極を形成し、前記上電極を形成し、前記処理基板を前記蒸着装置から搬出し、
前記蒸着装置において、搬入された前記処理基板は、
第1ローテーションチャンバーを通過し、
第1搬送方向に沿って一列に並んだ複数の蒸着チャンバーを有する第1チャンバー群を経由し、
第2ローテーションチャンバーにおいて180°回転され、
前記第1搬送方向とは逆向きの第2搬送方向に沿って一列に並んだ複数の蒸着チャンバーを有する第2チャンバー群を経由し、
前記第1ローテーションチャンバーにおいて180°回転され、
前記第1チャンバー群を経由し、
第2ローテーションチャンバーにおいて180°回転され、
前記第2チャンバー群を経由し、
前記第1ローテーションチャンバーを通過して前記蒸着装置から搬出され、
前記蒸着装置から搬出された前記処理基板において、前記隔壁の上に形成された前記有機層及び前記上電極は、前記開口において前記下電極の上に形成された前記有機層及び前記上電極から離間している、蒸着方法。
【請求項12】
前記第1チャンバー群及び前記第2チャンバー群を経由する際に、
前記下電極の上に正孔注入層を形成し、
前記正孔注入層の上に第1正孔輸送層を形成し、
前記第1正孔輸送層の上に第1電子ブロック層を形成し、
前記第1電子ブロック層の上に第1発光層を形成し、
前記第1発光層の上に第1正孔ブロック層を形成し、
前記第1正孔ブロック層の上にn型電荷発生層を形成し、
前記n型電荷発生層の上にp型電荷発生層を形成し、
前記p型電荷発生層の上に第2正孔輸送層を形成し、
前記第2正孔輸送層の上に第2電子ブロック層を形成し、
前記第2電子ブロック層の上に第2発光層を形成し、
前記第2発光層の上に第2正孔ブロック層を形成し、
前記第2正孔ブロック層の上に電子輸送層を形成し、
前記電子輸送層の上に電子注入層を形成し、
前記電子注入層の上に前記上電極を形成する、請求項11に記載の蒸着方法。
【請求項13】
前記第1正孔輸送層及び前記第2正孔輸送層は、同一の蒸着チャンバーにおいて同一材料で形成し、
前記第1電子ブロック層及び前記第2電子ブロック層は、同一の蒸着チャンバーにおいて同一材料で形成し、
前記第1発光層及び前記第2発光層は、同一の蒸着チャンバーにおいて同一材料で形成し、
前記第1正孔ブロック層及び前記第2正孔ブロック層は、同一の蒸着チャンバーにおいて同一材料で形成する、請求項12に記載の蒸着方法。
【請求項14】
前記第2チャンバー群を経由する際に、さらに、
前記上電極の上に第1透明層を形成し、
前記第1透明層の上に第2透明層を形成する、請求項12に記載の蒸着方法。
【請求項15】
前記第1チャンバー群及び前記第2チャンバー群を経由する際の前記処理基板の搬送速度は、一定である、請求項11に記載の蒸着方法。
【請求項16】
前記処理基板が前記第2チャンバー群を経由する際に、少なくとも1つの蒸着チャンバーでは、蒸着源から放射された材料が前記処理基板に蒸着されない、請求項11に記載の蒸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蒸着装置及び蒸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。この表示素子は、薄膜トランジスタを含む画素回路と、画素回路に接続された下電極と、下電極を覆う有機層と、有機層を覆う上電極と、を備えている。有機層は、発光層の他に、正孔輸送層や電子輸送層などの機能層を含んでいる。
このような複数の機能層を含む有機層を形成するための製造装置において、コストの削減、及び、設置スペースの縮小といった要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2018/179308号
【特許文献7】米国特許出願公開第2022/0077251号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、コストを削減し、設置スペースを縮小することが可能な蒸着装置及び蒸着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、蒸着装置は、
処理基板が搬送される第1搬送方向に沿って一列に並んだ複数の蒸着チャンバーを有する第1チャンバー群と、前記第1搬送方向とは逆向きの第2搬送方向に沿って一列に並んだ複数の蒸着チャンバーを有する第2チャンバー群と、前記第1チャンバー群のうち前記第1搬送方向の最も上流に位置する第1蒸着チャンバー、及び、前記第2チャンバー群のうち前記第2搬送方向の最も下流に位置する第2蒸着チャンバーに連結され、前記第2蒸着チャンバーから搬出された前記処理基板を前記第1蒸着チャンバーに搬入するように前記処理基板を回転させる第1ローテーションチャンバーと、前記第1チャンバー群のうち前記第1搬送方向の最も下流に位置する第3蒸着チャンバー、及び、前記第2チャンバー群のうち前記第2搬送方向の最も上流に位置する第4蒸着チャンバーに連結され、前記第3蒸着チャンバーから搬出された前記処理基板を前記第4蒸着チャンバーに搬入するように前記処理基板を回転させる第2ローテーションチャンバーと、を備える。
【0006】
一実施形態によれば、蒸着方法は、
基板の上方に下電極を形成し、前記下電極と重なる開口を有するリブを形成し、前記リブの上に位置する下部及び前記下部の上に位置し前記下部の側面から突出した上部を含む隔壁を形成した処理基板を用意し、マスクを設置せずに前記処理基板を蒸着装置に搬入し、有機層を形成し、前記有機層の上に上電極を形成し、前記上電極を形成し、前記処理基板を前記蒸着装置から搬出し、前記蒸着装置において、搬入された前記処理基板は、第1ローテーションチャンバーを通過し、第1搬送方向に沿って一列に並んだ複数の蒸着チャンバーを有する第1チャンバー群を経由し、第2ローテーションチャンバーにおいて180°回転され、前記第1搬送方向とは逆向きの第2搬送方向に沿って一列に並んだ複数の蒸着チャンバーを有する第2チャンバー群を経由し、前記第1ローテーションチャンバーにおいて180°回転され、前記第1チャンバー群を経由し、第2ローテーションチャンバーにおいて180°回転され、前記第2チャンバー群を経由し、前記第1ローテーションチャンバーを通過して前記蒸着装置から搬出され、前記蒸着装置から搬出された処理基板において、前記隔壁の上に形成された前記有機層及び前記上電極は、前記開口において前記下電極の上に形成された前記有機層及び前記上電極から離間している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、表示装置DSPの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2中のA-B線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、表示装置DSPの製造方法の一例を説明するためのフロー図である。
【
図5】
図5は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、表示装置DSPの製造方法を説明するための図である。
【
図10】
図10は、表示素子201乃至203の構成の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、表示素子201乃至203の構成の他の例を示す図である。
【
図12】
図12は、蒸着装置100の一構成例を説明するための図である。
【
図14】
図14は、
図12に示した基板脱着チャンバー130及び第1ローテーションチャンバー140を説明するための図である。
【
図16】
図16は、
図12に示した蒸着装置100により
図10に示した表示素子201の有機層OR1及び上電極UE1を形成する工程を説明するための図である。
【
図17】
図17は、
図12に示した蒸着装置100により
図11に示した表示素子201の有機層OR1及び上電極UE1を形成する工程を説明するための図である。
【
図18】
図18は、
図12に示した蒸着装置100により
図11に示した表示素子201の有機層OR1及び上電極UE1を形成する工程を説明するための図である。
【
図19】
図19は、蒸着装置100の他の構成例を説明するための図である。
【
図20】
図20は、
図19に示した蒸着装置100により
図10に示した表示素子201の有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1を形成する工程を説明するための図である。
【
図21】
図21は、
図19に示した蒸着装置100により
図11に示した表示素子201の有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1を形成する工程を説明するための図である。
【
図22】
図22は、
図19に示した蒸着装置100により
図11に示した表示素子201の有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1を形成する工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向を第1方向と称し、Y軸に沿った方向を第2方向と称し、Z軸に沿った方向を第3方向と称する。第3方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0010】
本実施形態に係る表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末等に搭載され得る。
【0011】
図1は、表示装置DSPの構成例を示す図である。
表示装置DSPは、絶縁性の基板10の上に、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAの周辺の周辺領域SAと、を有している。基板10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0012】
本実施形態においては、平面視における基板10の形状が長方形である。ただし、基板10の平面視における形状は長方形に限らず、正方形、円形あるいは楕円形などの他の形状であってもよい。
【0013】
表示領域DAは、第1方向X及び第2方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを含む。一例では、画素PXは、第1色の副画素SP1、第2色の副画素SP2、及び、第3色の副画素SP3を含む。第1色、第2色、及び、第3色は、互いに異なる色である。なお、画素PXは、副画素SP1,SP2,SP3とともに、あるいは副画素SP1,SP2,SP3のいずれかに代えて、白色などの他の色の副画素SPを含んでもよい。
【0014】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子20と、を備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4と、を備えている。画素スイッチ2及び駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0015】
画素スイッチ2のゲート電極は、走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極及びドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極及びキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極及びドレイン電極の一方は電源線PL及びキャパシタ4に接続され、他方は表示素子20のアノードに接続されている。
【0016】
なお、画素回路1の構成は図示した例に限らない。例えば、画素回路1は、より多くの薄膜トランジスタ及びキャパシタを備えてもよい。
【0017】
表示素子20は、発光素子としての有機発光ダイオード(OLED)であり、有機EL素子と称する場合がある。
【0018】
図2は、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトの一例を示す図である。
図2の例においては、副画素SP2及び副画素SP3が第2方向Yに並んでいる。さらに、副画素SP2及び副画素SP3がそれぞれ副画素SP1と第1方向Xに並んでいる。
【0019】
副画素SP1,SP2,SP3がこのようなレイアウトである場合、表示領域DAには、副画素SP2及び副画素SP3が第2方向Yに交互に配置された列と、複数の副画素SP1が第2方向Yに繰り返し配置された列とが形成される。これらの列は、第1方向Xに交互に並ぶ。
【0020】
なお、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトは
図2の例に限られない。他の一例として、各画素PXにおける副画素SP1,SP2,SP3が第1方向Xに順に並んでいてもよい。
【0021】
表示領域DAには、リブ5及び隔壁6が配置されている。リブ5は、副画素SP1,SP2,SP3においてそれぞれ開口AP1,AP2,AP3を有している。
【0022】
隔壁6は、平面視においてリブ5と重なっている。隔壁6は、第1方向Xに延びる複数の第1隔壁6xと、第2方向Yに延びる複数の第2隔壁6yと、を有している。複数の第1隔壁6xは、第2方向Yに隣り合う開口AP2,AP3の間、及び、第2方向Yに隣り合う2つの開口AP1の間にそれぞれ配置されている。第2隔壁6yは、第1方向Xに隣り合う開口AP1,AP2の間、及び、第1方向Xに隣り合う開口AP1,AP3の間にそれぞれ配置されている。
【0023】
図2の例においては、第1隔壁6x及び第2隔壁6yは、互いに接続されている。これにより、隔壁6は、全体として開口AP1,AP2,AP3を囲う格子状に形成されている。隔壁6は、リブ5と同様に副画素SP1,SP2,SP3において開口を有するということもできる。
【0024】
副画素SP1,SP2,SP3は、表示素子20として、それぞれ表示素子201,202,203を備えている。
副画素SP1は、開口AP1とそれぞれ重なる下電極LE1、上電極UE1及び有機層OR1を備えている。副画素SP2は、開口AP2とそれぞれ重なる下電極LE2、上電極UE2及び有機層OR2を備えている。副画素SP3は、開口AP3とそれぞれ重なる下電極LE3、上電極UE3及び有機層OR3を備えている。
【0025】
図2の例においては、下電極LE1、LE2、LE3の外形は点線で示し、有機層OR1、OR2、OR3、及び、上電極UE1、UE2、UE3の外形は一点鎖線で示している。下電極LE1、LE2、LE3のそれぞれの周縁部は、リブ5に重なっている。なお、図示した下電極、有機層、上電極のそれぞれの外形は、正確な形状を反映したものとは限らない。
【0026】
下電極LE1、上電極UE1、及び、有機層OR1は、副画素SP1の表示素子201を構成する。下電極LE2、上電極UE2、及び、有機層OR2は、副画素SP2の表示素子202を構成する。下電極LE3、上電極UE3、及び、有機層OR3は、副画素SP3の表示素子203を構成する。
【0027】
下電極LE1、LE2、LE3は、例えば、表示素子のアノードに相当する。上電極UE1、UE2、UE3は、表示素子のカソード、あるいは、共通電極に相当する。
【0028】
下電極LE1は、コンタクトホールCH1を通じて副画素SP1の画素回路1(
図1参照)に接続されている。下電極LE2は、コンタクトホールCH2を通じて副画素SP2の画素回路1に接続されている。下電極LE3は、コンタクトホールCH3を通じて副画素SP3の画素回路1に接続されている。
【0029】
図2の例においては、開口AP1の面積が開口AP2の面積よりも大きく、開口AP2の面積が開口AP3の面積よりも大きい。換言すると、開口AP1から露出した下電極LE1の面積は開口AP2から露出した下電極LE2の面積よりも大きく、開口AP2から露出した下電極LE2の面積は開口AP3から露出した下電極LE3の面積よりも大きい。
【0030】
例えば、副画素SP1の表示素子201は、青波長域の光を放つように構成される。また、副画素SP2の表示素子202は、緑波長域の光を放つように構成され、また、副画素SP3の表示素子203は、赤波長域の光を放つように構成される。
【0031】
図3は、
図2中のA-B線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。
上述の基板10の上に回路層11が配置されている。回路層11は、
図1に示した画素回路1、走査線GL、信号線SL、及び、電源線PLなどの各種回路や配線を含む。回路層11は、絶縁層12により覆われている。絶縁層12は、回路層11により生じる凹凸を平坦化する平坦化膜として機能する。
【0032】
下電極LE1,LE2,LE3は、絶縁層12の上に配置されている。リブ5は、絶縁層12及び下電極LE1,LE2,LE3の上に配置されている。下電極LE1,LE2,LE3の端部は、リブ5により覆われている。つまり、下電極LE1,LE2,LE3の端部は、絶縁層12とリブ5との間に配置されている。下電極LE1,LE2,LE3のうち、互いに隣接する下電極の間では、絶縁層12がリブ5により覆われている。
【0033】
隔壁6は、リブ5の上に配置された下部(茎)61と、下部61の上に配置された上部(笠)62と、を含む。図の左側に示した隔壁6の下部61は、開口AP1と開口AP2との間に位置している。図の右側に示した隔壁6の下部61は、開口AP2と開口AP3との間に位置している。上部62は、下部61よりも大きい幅を有している。これにより、上部62の両端部が下部61の側面よりも突出している。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状ということもできる。上部62のうち、下部61よりも開口AP1に向かって突出した部分は突出部621と称し、下部61よりも開口AP2に向かって突出した部分は突出部622と称し、下部61よりも開口AP3に向かって突出した部分は突出部623と称する。
【0034】
有機層OR1は、開口AP1を通じて下電極LE1に接触し、下電極LE1を覆うとともに、リブ5の一部に重なっている。上電極UE1は、下電極LE1と対向するとともに、有機層OR1の上に配置されている。さらに、上電極UE1は、下部61の側面に接触している。有機層OR1及び上電極UE1は、上部62よりも下方に位置している。
【0035】
有機層OR2は、開口AP2を通じて下電極LE2に接触し、下電極LE2を覆うとともに、リブ5の一部に重なっている。上電極UE2は、下電極LE2と対向するとともに、有機層OR2の上に配置されている。さらに、上電極UE2は、下部61の側面に接触している。有機層OR2及び上電極UE2は、上部62よりも下方に位置している。
【0036】
有機層OR3は、開口AP3を通じて下電極LE3に接触し、下電極LE3を覆うとともに、リブ5の一部に重なっている。上電極UE3は、下電極LE3と対向するとともに、有機層OR3の上に配置されている。さらに、上電極UE3は、下部61の側面に接触している。有機層OR3及び上電極UE3は、上部62よりも下方に位置している。
【0037】
図示した例では、副画素SP1,SP2,SP3は、有機層OR1,OR2,OR3の発光層が発する光の光学特性を調整するためのキャップ層(光学調整層)CP1、CP2、CP3を含む。
キャップ層CP1は、開口AP1に位置し、上部62よりも下方に位置し、上電極UE1の上に配置されている。キャップ層CP2は、開口AP2に位置し、上部62よりも下方に位置し、上電極UE2の上に配置されている。キャップ層CP3は、開口AP3に位置し、上部62よりも下方に位置し、上電極UE3の上に配置されている。
【0038】
副画素SP1,SP2,SP3には、封止層SE1,SE2,SE3がそれぞれ配置されている。
封止層SE1は、キャップ層CP1、及び、隔壁6の下部61及び上部62に接し、副画素SP1の各部材を連続的に覆っている。封止層SE1は、隔壁6の突出部621の下方に、空隙を有していない。
封止層SE2は、キャップ層CP2、及び、隔壁6の下部61及び上部62に接し、副画素SP2の各部材を連続的に覆っている。封止層SE2は、隔壁6の突出部622の下方に、空隙を有していない。
封止層SE3は、キャップ層CP3、及び、隔壁6の下部61及び上部62に接し、副画素SP3の各部材を連続的に覆っている。封止層SE3は、隔壁6の突出部623の下方に、空隙を有していない。
封止層SE1,SE2,SE3は、保護層13により覆われている。
【0039】
図示した例では、有機層OR1の一部、上電極UE1の一部、及び、キャップ層CP1の一部は、隔壁6と封止層SE1との間に位置し、上部62の上に配置され、上部62よりも下方に位置する部分とは離間している。
また、有機層OR2の一部、上電極UE2の一部、及び、キャップ層CP2の一部は、隔壁6と封止層SE2との間に位置し、上部62の上に配置され、上部62よりも下方に位置する部分とは離間している。
また、有機層OR3の一部、上電極UE3の一部、及び、キャップ層CP3の一部は、隔壁6と封止層SE3との間に位置し、上部62の上に配置され、上部62よりも下方に位置する部分とは離間している。
【0040】
絶縁層12は、有機絶縁層である。リブ5、及び、封止層SE1,SE2,SE3は、無機絶縁層である。
【0041】
リブ5は、無機絶縁材料の一例であるシリコン窒化物(SiNx)で形成されている。なお、リブ5は、他の無機絶縁材料として、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン酸窒化物(SiON)、または、酸化アルミニウム(Al2O3)のいずれかの単層体として形成されてもよい。また、リブ5は、シリコン窒化物層、シリコン酸化物層、シリコン酸窒化物層、及び、酸化アルミニウム層のうちの少なくとも2つの組合せによる積層体として形成されてもよい。
封止層SE1,SE2,SE3は、例えば、同一の無機絶縁材料で形成されている。
封止層SE1,SE2,SE3は、無機絶縁材料の一例であるシリコン窒化物(SiNx)で形成されている。なお、封止層SE1,SE2,SE3は、他の無機絶縁材料として、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン酸窒化物(SiON)、または、酸化アルミニウム(Al2O3)のいずれかの単層体として形成されてもよい。また、封止層SE1,SE2,SE3は、シリコン窒化物層、シリコン酸化物層、シリコン酸窒化物層、及び、酸化アルミニウム層のうちの少なくとも2つの組合せによる積層体として形成されてもよい。このため、封止層SE1,SE2,SE3は、リブ5と同一材料で形成される場合があり得る。
【0042】
隔壁6の下部61は、導電材料によって形成され、各上電極UE1,UE2,UE3と電気的に接続されている。隔壁6の下部61及び上部62がいずれも導電材料によって形成されてもよい。
【0043】
リブ5の厚さは、隔壁6や絶縁層12の厚さに比べて十分に小さい。一例では、リブ5の厚さは、200nm以上かつ400nm以下である。
隔壁6の下部61の厚さ(リブ5の上面から上部62の下面までの厚さ)は、リブ5の厚さより大きい。
封止層SE1の厚さ、封止層SE2の厚さ、及び、封止層SE3の厚さは、ほぼ同等であり、例えば、1μm程度である。
【0044】
下電極LE1,LE2,LE3は、ITOなどの透明導電材料で形成されてもよいし、銀(Ag)などの金属材料と透明導電材料との積層構造を有してもよい。上電極UE1,UE2,UE3は、例えばマグネシウム及び銀の合金(MgAg)などの金属材料で形成されている。上電極UE1,UE2,UE3は、ITOなどの透明導電材料で形成されてもよい。
【0045】
有機層OR1,OR2,OR3の各々は、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層などの複数の機能層を含む。また、有機層OR1は、発光層EM1を含む。有機層OR2は、発光層EM2を含む。発光層EM2は、発光層EM1とは異なる材料で形成されている。有機層OR3は、発光層EM3を含む。発光層EM3は、発光層EM1及びEM2とは異なる材料で形成されている。
【0046】
発光層EM1を形成する材料、発光層EM2を形成する材料、及び、発光層EM3を形成する材料は、互いに異なる波長域の光を放つ材料である。
一例では、発光層EM1は、青波長域の光を放つ材料によって形成され、発光層EM2は、緑波長域の光を放つ材料によって形成され、発光層EM3は、赤波長域の光を放つ材料によって形成されている。
【0047】
キャップ層CP1、CP2、CP3は、例えば、透明な薄膜の多層体によって形成されている。多層体は、薄膜として、無機材料によって形成された薄膜及び有機材料によって形成された薄膜を含んでいてもよい。また、これらの複数の薄膜は、互いに異なる屈折率を有している。多層体を構成する薄膜の材料は、上電極UE1、UE2、UE3の材料とは異なり、また、封止層SE1、SE2、SE3の材料とも異なる。なお、キャップ層CP1、CP2、CP3は、省略してもよい。
【0048】
保護層13は、透明な薄膜の多層体によって形成され、例えば、薄膜として、無機材料によって形成された薄膜及び有機材料によって形成された薄膜を含んでいる。
【0049】
隔壁6には、共通電圧が供給されている。この共通電圧は、下部61の側面に接触した各上電極UE1,UE2,UE3にそれぞれ供給される。下電極LE1,LE2,LE3には、副画素SP1,SP2,SP3がそれぞれ有する画素回路1を通じて画素電圧が供給される。
【0050】
下電極LE1と上電極UE1の間に電位差が形成されると、有機層OR1のうちの発光層EM1が青波長域の光を放つ。下電極LE2と上電極UE2の間に電位差が形成されると、有機層OR2のうちの発光層EM2が緑波長域の光を放つ。下電極LE3と上電極UE3の間に電位差が形成されると、有機層OR3のうちの発光層EM3が青波長域の光を放つ。
【0051】
次に、表示装置DSPの製造方法の一例について説明する。
【0052】
図4は、表示装置DSPの製造方法の一例を説明するためのフロー図である。
ここに示す製造方法は、大別して、副画素SP1、副画素SP2、及び、副画素SP3を有する処理基板SUBを用意する工程(ステップST1)と、副画素SP1の表示素子201を形成する工程(ステップST2)と、副画素SP2の表示素子202を形成する工程(ステップST3)と、副画素SP3の表示素子203を形成する工程(ステップST4)と、を含む。
【0053】
ステップST1においては、まず、基板10の上に、副画素SP1の下電極LE1、副画素SP2の下電極LE2、副画素SP3の下電極LE3、リブ5、及び、隔壁6を形成した処理基板SUBを用意する。
図3に示したように、基板10と下電極LE1、LE2、LE3との間には、回路層11及び絶縁層12も形成される。
【0054】
ステップST2においては、まず、副画素SP1、副画素SP2、及び、副画素SP3に亘って、発光層EM1を含む第1薄膜31を形成する(ステップST21)。第1薄膜31は、
図3に示した有機層OR1、上電極UE1、キャップ層CP1、及び、封止層SE1の積層体である。その後、第1薄膜31の上に所定の形状にパターニングされた第1レジスト41を形成する(ステップST22)。その後、第1レジスト41をマスクとしたエッチングにより第1薄膜31の一部を除去する(ステップST23)。このとき、例えば、副画素SP2及び副画素SP3に配置された第1薄膜31が除去される。その後、第1レジスト41を除去する(ステップST24)。これにより、副画素SP1が形成される。副画素SP1は、所定の形状の第1薄膜31を有する表示素子201を備える。
【0055】
ステップST3においては、まず、副画素SP1、副画素SP2、及び、副画素SP3に亘って、発光層EM2を含む第2薄膜32を形成する(ステップST31)。第2薄膜32は、
図3に示した有機層OR2、上電極UE2、キャップ層CP2、及び、封止層SE2の積層体である。その後、第2薄膜32の上に所定の形状にパターニングされた第2レジスト42を形成する(ステップST32)。その後、第2レジスト42をマスクとしたエッチングにより第2薄膜32の一部を除去する(ステップST33)。このとき、例えば、副画素SP1及び副画素SP3に配置された第2薄膜32が除去される。その後、第2レジスト42を除去する(ステップST34)。これにより、副画素SP2が形成される。副画素SP2は、所定の形状の第2薄膜32を有する表示素子202を備える。
【0056】
ステップST4においては、まず、副画素SP1、副画素SP2、及び、副画素SP3に亘って、発光層EM3を含む第3薄膜33を形成する(ステップST41)。第3薄膜33は、
図3に示した有機層OR3、上電極UE3、キャップ層CP3、及び、封止層SE3の積層体である。その後、第3薄膜33の上に所定の形状にパターニングされた第3レジスト43を形成する(ステップST42)。その後、第3レジスト43をマスクとしたエッチングにより第3薄膜33の一部を除去する(ステップST43)。このとき、例えば、副画素SP1及び副画素SP2に配置された第3薄膜33が除去される。その後、第3レジスト43を除去する(ステップST44)。これにより、副画素SP3が形成される。副画素SP3は、所定の形状の第3薄膜33を有する表示素子203を備える。
【0057】
なお、第2薄膜32、第2レジスト42、第3薄膜33、及び、第3レジスト43の詳細な図示は省略する。
【0058】
以下、ステップST1及びステップST2について
図5乃至
図9を参照しながら説明する。なお、
図5乃至
図9に示す各断面は、例えば
図2中のA-B線に沿う断面に相当する。
【0059】
まず、ステップST1においては、
図5に示すように、処理基板SUBを用意する。処理基板SUBを用意する工程は、基板10の上に回路層11を形成する工程と、回路層11の上に絶縁層12を形成する工程と、絶縁層12の上に、副画素SP1の下電極LE1、副画素SP2の下電極LE2、副画素SP3の下電極LE3を形成する工程と、下電極LE1、LE2、LE3の各々と重なる開口AP1、AP2、AP3を有するリブ5を形成する工程と、リブ5の上に配置された下部61及び下部61の上に配置され下部61の側面から突出した上部62を含む隔壁6を形成する工程と、を含む。リブ5は、例えばシリコン窒化物で形成される。隔壁6のうち、少なくとも下部61は、導電材料で形成する。なお、
図6乃至
図9の各図においては、絶縁層12よりも下層の基板10及び回路層11の図示を省略する。
【0060】
続いて、ステップST21においては、
図6に示すように、副画素SP1、副画素SP2、及び、副画素SP3に亘って、第1薄膜31を形成する。第1薄膜31を形成する工程は、処理基板SUBの上に、発光層EM1を含む有機層OR1を形成する工程と、有機層OR1の上に上電極UE1を形成する工程と、上電極UE1の上にキャップ層CP1を形成する工程と、キャップ層CP1の上に封止層SE1を形成する工程と、を含む。つまり、図示した例では、第1薄膜31は、有機層OR1、上電極UE1、キャップ層CP1、及び、封止層SE1を含む。
【0061】
有機層OR1は、下電極LE1、下電極LE2、及び、下電極LE3の上にそれぞれ形成されるとともに、隔壁6の上にも形成されている。有機層OR1のうち、上部62の上に形成された部分は、各下電極の上に形成された部分から離間している。有機層OR1の各種機能層及び発光層EM1は、蒸着法により形成される。
【0062】
上電極UE1は、下電極LE1、下電極LE2、及び、下電極LE3の直上において、有機層OR1の上にそれぞれ形成され、リブ5を覆い、隔壁6の下部61に接している。また、上電極UE1は、上部62の直上において、有機層OR1の上にも形成されている。上電極UE1のうち、上部62の直上に形成された部分は、各下電極の直上に形成された部分から離間している。上電極UE1は、蒸着法により形成される。
【0063】
キャップ層CP1は、下電極LE1、下電極LE2、及び、下電極LE3の直上において、上電極UE1の上にそれぞれ形成されるとともに、上部62の直上において、上電極UE1の上にも形成されている。キャップ層CP1のうち、上部62の直上に形成された部分は、各下電極の直上に形成された部分から離間している。キャップ層CP1に含まれる第1透明層及び第2透明層は、蒸着法により形成される。
【0064】
封止層SE1は、キャップ層CP1、及び、隔壁6を覆うように形成されている。つまり、封止層SE1は、下電極LE1、下電極LE2、及び、下電極LE3の直上において、キャップ層CP1の上にそれぞれ形成されるとともに、上部62の直上において、キャップ層CP1の上にも形成されている。封止層SE1において、上部62の直上に形成された部分は、各下電極の直上に形成された部分と繋がっている。封止層SE1は、CVD法により形成される。上電極UE1はリブ5と封止層SE1との間に介在し、封止層SE1はリブ5から離間している。
【0065】
続いて、ステップST22においては、
図7に示すように、封止層SE1の上のパターニングした第1レジスト41を形成する。第1レジスト41は、副画素SP1の第1薄膜31を覆い、副画素SP2及び副画素SP3の第1薄膜31を露出する。つまり、第1レジスト41は、下電極LE1の直上に位置する封止層SE1に重なっている。また、第1レジスト41は、副画素SP1から隔壁6の上方に延出している。副画素SP1と副画素SP2との間の隔壁6上において、第1レジスト41は、副画素SP1側(図の左側)に配置され、副画素SP2側(図の右側)では封止層SE1を露出している。また、第1レジスト41は、副画素SP2及び副画素SP3において、封止層SE1を露出している。
【0066】
その後、ステップST23においては、
図8に示すように、第1レジスト41をマスクとしてエッチングを行い、第1レジスト41から露出した副画素SP2及び副画素SP3の第1薄膜31を除去し、副画素SP1に第1薄膜31が残留する。
【0067】
第1薄膜31を除去する工程は、例えば、以下の通りである。
まず、第1レジスト41をマスクとして利用し、ドライエッチングを行い、第1レジスト41から露出した封止層SE1を除去する。
その後、第1レジスト41をマスクとして利用し、ウエットエッチングを行い、封止層SE1から露出したキャップ層CP1の第2透明層を除去する。
その後、第1レジスト41をマスクとして利用し、ドライエッチングを行い、第2透明層から露出したキャップ層CP1の第1透明層を除去する。
その後、第1レジスト41をマスクとして利用し、ウエットエッチングを行い、第1透明層から露出した上電極UE1を除去する。
その後、第1レジスト41をマスクとして利用し、ドライエッチングを行い、上電極UE1から露出した有機層OR1を除去する。
これにより、副画素SP2において下電極LE2が露出し、また、下電極LE2を囲むリブ5が露出する。また、副画素SP3において下電極LE3が露出し、また、下電極LE3を囲むリブ5が露出する。また、副画素SP1と副画素SP2との間の隔壁6において、副画素SP2側が露出する。また、副画素SP2と副画素SP3との間の隔壁6が露出する。
【0068】
その後、ステップST24においては、
図9に示すように、第1レジスト41を除去する。これにより、副画素SP1の封止層SE1が露出する。これらのステップST21乃至ST24を経て、副画素SP1において、表示素子201が形成される。表示素子201は、下電極LE1、発光層EM1を含む有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1によって構成される。また、表示素子201は、封止層SE1によって覆われている。
【0069】
副画素SP1と副画素SP2との間の隔壁6上には、発光層EM1を含む有機層OR1、上電極UE1、キャップ層CP1、及び、封止層SE1の積層体が形成される。また、隔壁6のうち、副画素SP1の側の部分は、封止層SE1で覆われる。なお、
図9に示した隔壁6上の積層体は、完全に除去される場合があり得る。
【0070】
図4に示したステップST31乃至ST34は、上記のステップST21乃至ST24と同様である。これらのステップST31乃至ST34を経て、
図3に示した副画素SP2において、表示素子202が形成される。表示素子202は、下電極LE2、発光層EM2を含む有機層OR2、上電極UE2、及び、キャップ層CP2によって構成される。また、表示素子202は、封止層SE2によって覆われている。
【0071】
また、
図4に示したステップST41乃至ST44も、上記のステップST21乃至ST24と同様である。これらのステップST41乃至ST44を経て、
図3に示した副画素SP3において、表示素子203が形成される。表示素子203は、下電極LE3、発光層EM3を含む有機層OR3、上電極UE3、及び、キャップ層CP3によって構成される。また、表示素子203は、封止層SE3によって覆われている。
【0072】
図10は、表示素子201乃至203の構成の一例を示す図である。
なお、ここでは、下電極がアノードに相当し、上電極がカソードに相当する場合を例について説明する。
【0073】
表示素子201は、下電極LE1と上電極UE1との間に有機層OR1を含む。
有機層OR1において、正孔注入層HIL1、正孔輸送層HTL1、電子ブロック層EBL1、発光層EM1、正孔ブロック層HBL1、電子輸送層ETL1、及び、電子注入層EIL1は、この順に積層されている。
キャップ層CP1は、第1透明層TL11及び第2透明層TL12を含む。第1透明層TL11は、上電極UE1の上に配置されている。第2透明層TL12は、第1透明層TL11の上に配置されている。封止層SE1は、第2透明層TL12の上に配置されている。
【0074】
表示素子202は、下電極LE2と上電極UE2との間に有機層OR2を含む。
有機層OR2において、正孔注入層HIL2、正孔輸送層HTL2、電子ブロック層EBL2、発光層EM2、正孔ブロック層HBL2、電子輸送層ETL2、及び、電子注入層EIL2は、この順に積層されている。一例では、正孔輸送層HTL2の厚さT2は、正孔輸送層HTL1の厚さT1より大きい。
キャップ層CP2は、第1透明層TL21及び第2透明層TL22を含む。第1透明層TL21は、上電極UE2の上に配置されている。第2透明層TL22は、第1透明層TL21の上に配置されている。封止層SE2は、第2透明層TL22の上に配置されている。
【0075】
表示素子203は、下電極LE3と上電極UE3との間に有機層OR3を含む。
有機層OR3において、正孔注入層HIL3、正孔輸送層HTL3、電子ブロック層EBL3、発光層EM3、正孔ブロック層HBL3、電子輸送層ETL3、及び、電子注入層EIL3は、この順に積層されている。一例では、正孔輸送層HTL3の厚さT3は、正孔輸送層HTL2の厚さT2より大きい。
キャップ層CP3は、第1透明層TL31及び第2透明層TL32を含む。第1透明層TL31は、上電極UE3の上に配置されている。第2透明層TL32は、第1透明層TL31の上に配置されている。封止層SE3は、第2透明層TL32の上に配置されている。
【0076】
第1透明層TL11、TL21、TL31は、例えば有機材料によって形成された有機層であり、また、上電極UE1、UE2、UE3よりも大きい屈折率を有する高屈折率層である。
第2透明層TL12、TL22、TL32は、例えばフッ化リチウム(LiF)などの無機材料によって形成された無機層であり、第1透明層TL11、TL21、TL31よりも小さい屈折率を有する低屈折率層である。
なお、キャップ層CP1、CP2、CP3は、3層以上の積層体であってもよい。
【0077】
本明細書において、
図10に示す表示素子201乃至203の構成をシングル構成と称する。
【0078】
図11は、表示素子201乃至203の構成の他の例を示す図である。
なお、ここでは、下電極がアノードに相当し、上電極がカソードに相当する場合を例について説明する。
【0079】
表示素子201は、下電極LE1と上電極UE1との間に有機層OR1を含む。
有機層OR1において、正孔注入層HIL1、正孔輸送層HTL11、電子ブロック層EBL11、発光層EM11、正孔ブロック層HBL11、n型電荷発生層nCGL1、p型電荷発生層pCGL1、正孔輸送層HTL12、電子ブロック層EBL12、発光層EM12、正孔ブロック層HBL12、電子輸送層ETL1、及び、電子注入層EIL1は、この順に積層されている。
正孔輸送層HTL11及びHTL12は、同一材料によって形成されている。
電子ブロック層EBL11及びEBL12は、同一材料によって形成されている。
発光層EM11及びEM12は、同一材料によって形成されている。
正孔ブロック層HBL11及びHBL12は、同一材料によって形成されている。
n型電荷発生層nCGL1は、発光層EM11に電子を供給する機能層である。
p型電荷発生層pCGL1は、発光層EM12に正孔を供給する機能層である。
第1透明層TL11及び第2透明層TL12を含むキャップ層CP1は、上電極UE1の上に配置されている。封止層SE1は、第2透明層TL12の上に配置されている。
【0080】
表示素子202は、下電極LE2と上電極UE2との間に有機層OR2を含む。
有機層OR2において、正孔注入層HIL2、正孔輸送層HTL21、電子ブロック層EBL21、発光層EM21、正孔ブロック層HBL21、n型電荷発生層nCGL2、p型電荷発生層pCGL2、正孔輸送層HTL22、電子ブロック層EBL22、発光層EM22、正孔ブロック層HBL22、電子輸送層ETL2、及び、電子注入層EIL2は、この順に積層されている。
正孔輸送層HTL21及びHTL22は、同一材料によって形成されている。一例では、正孔輸送層HTL21の厚さT21は正孔輸送層HTL11の厚さT11より大きく、正孔輸送層HTL22の厚さT22は正孔輸送層HTL12の厚さT12より大きい。
電子ブロック層EBL21及びEBL22は、同一材料によって形成されている。
発光層EM21及びEM22は、同一材料によって形成されている。発光層EM21及びEM22の材料は、発光層EM11及びEM12の材料とは異なる。
正孔ブロック層HBL21及びHBL22は、同一材料によって形成されている。
n型電荷発生層nCGL2は、発光層EM21に電子を供給する機能層である。
p型電荷発生層pCGL2は、発光層EM22に正孔を供給する機能層である。
第1透明層TL21及び第2透明層TL22を含むキャップ層CP2は、上電極UE2の上に配置されている。封止層SE2は、第2透明層TL22の上に配置されている。
【0081】
表示素子203は、下電極LE3と上電極UE3との間に有機層OR3を含む。
有機層OR3において、正孔注入層HIL3、正孔輸送層HTL31、電子ブロック層EBL31、発光層EM31、正孔ブロック層HBL31、n型電荷発生層nCGL3、p型電荷発生層pCGL3、正孔輸送層HTL32、電子ブロック層EBL32、発光層EM32、正孔ブロック層HBL32、電子輸送層ETL3、及び、電子注入層EIL3は、この順に積層されている。
正孔輸送層HTL31及びHTL32は、同一材料によって形成されている。一例では、正孔輸送層HTL31の厚さT31は正孔輸送層HTL21の厚さT21より大きく、正孔輸送層HTL32の厚さT32は正孔輸送層HTL22の厚さT22より大きい。
電子ブロック層EBL31及びEBL32は、同一材料によって形成されている。
発光層EM31及びEM32は、同一材料によって形成されている。発光層EM31及びEM32の材料は、発光層EM11及びEM12の材料とは異なり、発光層EM21及びEM22の材料とは異なる。
正孔ブロック層HBL31及びHBL32は、同一材料によって形成されている。
n型電荷発生層nCGL3は、発光層EM31に電子を供給する機能層である。
p型電荷発生層pCGL3は、発光層EM32に正孔を供給する機能層である。
第1透明層TL31及び第2透明層TL32を含むキャップ層CP3は、上電極UE3の上に配置されている。封止層SE3は、第2透明層TL32の上に配置されている。
【0082】
本明細書において、
図11に示す表示素子201乃至203の構成をタンデム構成と称する。
【0083】
次に、表示素子の有機層及び上電極を形成するための蒸着装置について説明する。ここでは、一例として、表示素子201の有機層OR1及び上電極UE1を形成するための蒸着装置100について説明する。なお、表示素子202の有機層OR2及び上電極UE2を形成するための蒸着装置、及び、表示素子203の有機層OR3及び上電極UE3を形成するための蒸着装置についても、ここに説明する蒸着装置100と同様に構成することができる。
【0084】
図12は、蒸着装置100の一構成例を説明するための図である。この蒸着装置100は、
図4及び
図6を参照して説明した第1薄膜31を形成する工程のうち、有機層OR1及び上電極UE1を形成するのに適用される。
【0085】
蒸着装置100は、ロードロックチャンバー110と、搬送チャンバー120と、基板脱着チャンバー130と、第1ローテーションチャンバー140と、蒸着部150と、第2ローテーションチャンバー170と、を備えている。
【0086】
ロードロックチャンバー110においては、例えば
図5を参照して説明した処理基板SUBが投入された後に、真空ポンプを用いて減圧される。搬送チャンバー120、基板脱着チャンバー130、第1ローテーションチャンバー140、蒸着部150、及び、第2ローテーションチャンバー170においては、所定の減圧状態に維持されている。
【0087】
搬送チャンバー120は、ロードロックチャンバー110に連結されている。搬送チャンバー120は、後述するが、ロードロックチャンバー110に投入された処理基板SUBを基板脱着チャンバー130に搬送する基板搬送ロボットを備えている。
【0088】
基板脱着チャンバー130は、第1ローテーションチャンバー140に連結されている。基板脱着チャンバー130は、後述するが、搬入された処理基板SUBを専用のキャリアに装着してキャリアを第1ローテーションチャンバー140に搬出したり、第1ローテーションチャンバー140から搬出されたキャリアから処理基板SUBを取り外したりする機構を備えている。
【0089】
蒸着部150は、第1チャンバー群150Aと、第2チャンバー群150Bと、を備えている。第1チャンバー群150Aは、処理基板SUBが搬送される第1搬送方向TAに沿って一列に並んだ複数の蒸着チャンバー151乃至155を有している。これらの蒸着チャンバー151乃至155は、互いに連結されている。第2チャンバー群150Bは、第1搬送方向TAとは逆向きの第2搬送方向TBに沿って一列に並んだ複数の蒸着チャンバー156乃至160を有している。これらの蒸着チャンバー156乃至160は、互いに連結されている。
【0090】
図示した例では、蒸着部150は、10個の蒸着チャンバー151乃至160を備えている。これらの10個の蒸着チャンバー151乃至160は、5*2のマトリクス状に配列されている。
【0091】
蒸着チャンバー151は、正孔注入層HIL1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー152は、正孔輸送層HTL1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー153は、電子ブロック層EBL1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー154は、発光層EM1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー155は、正孔ブロック層HBL1を形成するように構成されている。
【0092】
蒸着チャンバー156は、n型電荷発生層nCGL1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー157は、p型電荷発生層pCGL1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー158は、電子輸送層ETL1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー159は、電子注入層EIL1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー160は、上電極UE1を形成するように構成されている。
【0093】
第1ローテーションチャンバー140は、第1チャンバー群150Aのうち第1搬送方向TAの最も上流に位置する蒸着チャンバー151、及び、第2チャンバー群150Bのうち、第2搬送方向TBの最も下流に位置する蒸着チャンバー160に連結されている。第1ローテーションチャンバー140は、蒸着チャンバー160から搬出された処理基板SUBを蒸着チャンバー151に搬入するように、処理基板SUBを回転させる機構を備えている。
【0094】
第2ローテーションチャンバー170は、第1チャンバー群150Aのうち第1搬送方向TAの最も下流に位置する蒸着チャンバー155、及び、第2チャンバー群150Bのうち、第2搬送方向TBの最も上流に位置する蒸着チャンバー156に連結されている。第2ローテーションチャンバー170は、蒸着チャンバー155から搬出された処理基板SUBを蒸着チャンバー156に搬入するように、処理基板SUBを回転させる機構を備えている。
【0095】
図12に示す構成例においては、例えば、蒸着チャンバー151は第1蒸着チャンバーに相当し、蒸着チャンバー160は第2蒸着チャンバーに相当し、蒸着チャンバー155は第3蒸着チャンバーに相当し、蒸着チャンバー156は第4蒸着チャンバーに相当する。
【0096】
図13は、
図12に示した搬送チャンバー120を説明するための図である。
【0097】
搬送チャンバー120は、基板搬送ロボット121を備えている。基板搬送ロボット121は、回転軸AX120を中心に回転可能に構成されている。回転軸AX120は、例えば、水平面に対する法線に平行である。基板搬送ロボット121のアーム122は、伸縮自在であり、その先端部で処理基板SUBを支持するように構成されている。
【0098】
このような構成の基板搬送ロボット121は、まず、ロードロックチャンバー110にアーム122の先端部を挿入し、処理基板SUBを支持し、搬送チャンバー120に処理基板SUBを引き込む。そして、基板搬送ロボット121は、回転軸AX120を中心として水平面内で180°回転し、アーム122の先端部を基板脱着チャンバー130に挿入し、処理基板SUBをキャリアCRの上に配置し、アーム122を引き戻す。これにより、処理基板SUBがキャリアCRの上に載置される。処理基板SUBは、静電チャックによりキャリアCRに固定される。このとき、処理基板SUB及びキャリアCRは、水平面に平行である。
【0099】
図14は、
図12に示した基板脱着チャンバー130及び第1ローテーションチャンバー140を説明するための図である。
【0100】
搬送レールR0は、基板脱着チャンバー130及び第1ローテーションチャンバー140に亘って延出し、基板脱着チャンバー130と第1ローテーションチャンバー140との間でキャリアCRを搬送するように構成されている。
【0101】
基板脱着チャンバー130は、縦起こし機構131を備えている。縦起こし機構131は、回転軸AX130を中心に回転可能に構成されている。回転軸AX130は、水平面に平行である。
【0102】
縦起こし機構131は、回転軸AX130を中心として90°回転し、キャリアCRに固定された処理基板SUBを垂直に立ち上げる。そして、縦起こし機構131は、搬送レールR0の上にキャリアCRを配置する。そして、キャリアCR及び処理基板SUBは、搬送レールR0に沿って、第1ローテーションチャンバー140に搬送される。
【0103】
また、縦起こし機構131は、第1ローテーションチャンバー140から搬送されたキャリアCRを受け取り、回転軸AX130を中心として90°回転し、キャリアCRに固定された処理基板SUBを水平面に平行とする。その後、処理基板SUBは、静電チャックによる固定が解除され、基板搬送ロボット121により基板脱着チャンバー130から搬出される。
【0104】
第1ローテーションチャンバー140は、回転機構141を備えている。回転機構141は、回転軸AX140を中心に回転可能に構成されている。回転軸AX140は、水平面に対する法線に平行である。
【0105】
回転機構141は、処理基板SUB及びキャリアCRが蒸着チャンバー160から搬出されると、回転軸AX140を中心として水平面内で180°回転する。その後、処理基板SUB及びキャリアCRは、蒸着チャンバー151に向けて搬出される。あるいは、処理基板SUB及びキャリアCRは、基板脱着チャンバー130に向けて搬出される。
【0106】
なお、第2ローテーションチャンバー170も、第1ローテーションチャンバー140と同様の回転機構を備えている。
【0107】
図15は、
図12に示した蒸着部150を説明するための図である。
【0108】
第1搬送レールR1は、蒸着チャンバー151から蒸着チャンバー155に亘って延出し、処理基板SUBが装着されたキャリアCRを搬送するように構成されている。
第2搬送レールR2は、蒸着チャンバー156から蒸着チャンバー160に亘って延出し、処理基板SUBが装着されたキャリアCRを搬送するように構成されている。
【0109】
蒸着チャンバー151乃至160の各々は、蒸着源と、仕切り板と、を備えている。
具体的には、蒸着チャンバー151は、蒸着源S1と、仕切り板P1と、を備えている。仕切り板P1は、蒸着チャンバー151の第1空間151Aと第2空間151Bとを仕切っている。蒸着源S1は、第1空間151Aに収容されている。第2空間151Bは、キャリアCRとともに処理基板SUBが搬送される空間であり、第1搬送レールR1が設けられている。蒸着源S1は、正孔注入層HIL1を形成するための材料を放射するように構成されている。
【0110】
蒸着チャンバー152は、蒸着源S2と、仕切り板P2と、を備えている。蒸着源S2は、第1空間152Aに収容され、正孔輸送層HTL1を形成するための材料を放射するように構成されている。
【0111】
蒸着チャンバー153は、蒸着源S3と、仕切り板P3と、を備えている。蒸着源S3は、第1空間153Aに収容され、電子ブロック層EBL1を形成するための材料を放射するように構成されている。
【0112】
蒸着チャンバー154は、蒸着源S4と、仕切り板P4と、を備えている。蒸着源S4は、第1空間154Aに収容され、発光層EM1を形成するための材料を放射するように構成されている。
【0113】
蒸着チャンバー155は、蒸着源S5と、仕切り板P5と、を備えている。蒸着源S5は、第1空間155Aに収容され、正孔ブロック層HBL1を形成するための材料を放射するように構成されている。
【0114】
第1搬送レールR1は、蒸着チャンバー151乃至155の各々の第2空間151B乃至155Bに設けられている。これにより、キャリアCRは、蒸着チャンバー151から蒸着チャンバー155まで連続的に搬送される。
【0115】
蒸着チャンバー156は、蒸着源S6と、仕切り板P6と、を備えている。蒸着源S6は、第1空間156Aに収容され、n型電荷発生層nCGL1を形成するための材料を放射するように構成されている。
【0116】
蒸着チャンバー157は、蒸着源S7と、仕切り板P7と、を備えている。蒸着源S7は、第1空間157Aに収容され、p型電荷発生層pCGL1を形成するための材料を放射するように構成されている。
【0117】
蒸着チャンバー158は、蒸着源S8と、仕切り板P8と、を備えている。蒸着源S8は、第1空間158Aに収容され、電子輸送層ETL1を形成するための材料を放射するように構成されている。
【0118】
蒸着チャンバー159は、蒸着源S9と、仕切り板P9と、を備えている。蒸着源S9は、第1空間159Aに収容され、電子注入層EIL1を形成するための材料を放射するように構成されている。
【0119】
蒸着チャンバー160は、蒸着源S10と、仕切り板P10と、を備えている。蒸着源S10は、第1空間160Aに収容され、上電極UE1を形成するための材料(例えば、マグネシウム及び銀の混合物)を放射するように構成されている。
【0120】
第2搬送レールR2は、蒸着チャンバー156乃至160の各々の第2空間156B乃至160Bに設けられている。これにより、キャリアCRは、蒸着チャンバー156から蒸着チャンバー160まで連続的に搬送される。
【0121】
蒸着源S1乃至S10の各々は、蒸着部150が稼働している間、材料を加熱し、気化させ、連続的に材料を放射するように構成されている。蒸着源S1乃至S10の各々から放射される材料は、互いに異なるものである。蒸着源は、放射した材料を処理基板SUBに蒸着しないモードでは、吐出口を第1空間に向けている。また、蒸着源は、放射した材料を処理基板SUBに蒸着するモードでは、吐出口を第2空間に向けている。
【0122】
例えば、蒸着チャンバー151において、蒸着源S1は、回転軸AX1を中心に回転可能に構成されている。この蒸着源S1は、回転軸AX1に沿って延出している。仕切り板P1は、点線で示す開口OP1を有している。開口OP1は、蒸着源S1と対向している。
図示した例では、蒸着源S1は、放射した材料を処理基板SUBに蒸着するモードに設定されており、吐出口SA1が第2空間151Bを向いている。これにより、蒸着源S1から放射された材料は、キャリアCRとともに搬送された処理基板SUBに蒸着される。
【0123】
例えば、蒸着チャンバー160において、蒸着源S10は、回転軸AX10を中心に回転可能に構成されている。この蒸着源S10は、回転軸AX10に沿って延出している。仕切り板P10は、点線で示す開口OP10を有している。開口OP10は、蒸着源S10と対向している。
図示した例では、蒸着源S10は、放射した材料を処理基板SUBに蒸着しないモードに設定されており、吐出口SA10が第1空間160Aを向いている。これにより、蒸着源S10から放射された材料は、キャリアCRとともに搬送された処理基板SUBには蒸着されない。
【0124】
次に、
図12に示した蒸着装置100により
図10に示した表示素子201の有機層OR1及び上電極UE1を形成する工程について
図16を参照しながら説明する。
【0125】
まず、
図5を参照して説明した処理基板SUBを用意した後、ファインマスクを設置することなく処理基板SUBを蒸着装置100のロードロックチャンバー110に投入する。
【0126】
処理基板SUBは、搬送チャンバー120及び基板脱着チャンバー130を経て、第1ローテーションチャンバー140を通過する。その後、処理基板SUBは、第1チャンバー群150Aを経由し、第2ローテーションチャンバー170において180°回転され、第2チャンバー群150Bを経由する。
【0127】
処理基板SUBが第1チャンバー群150Aを経由する際、蒸着チャンバー151において下電極LE1の上に正孔注入層HIL1を形成し、蒸着チャンバー152において正孔注入層HIL1の上に正孔輸送層HTL1を形成し、蒸着チャンバー153において正孔輸送層HTL1の上に電子ブロック層EBL1を形成し、蒸着チャンバー154において電子ブロック層EBL1の上に発光層EM1を形成し、蒸着チャンバー155において発光層EM1の上に正孔ブロック層HBL1を形成する。
【0128】
処理基板SUBが第2チャンバー群150Bを経由する際、蒸着チャンバー156及び157においては蒸着源から放射された材料が処理基板SUBに蒸着されないモードに設定されている。このため、処理基板SUBは、材料が蒸着されることなく蒸着チャンバー156及び157を通過する。
そして、蒸着チャンバー158において正孔ブロック層HBL1の上に電子輸送層ETL1を形成し、蒸着チャンバー159において電子輸送層ETL1の上に電子注入層EIL1を形成し、蒸着チャンバー160において電子注入層EIL1の上に上電極UE1を形成する。
【0129】
その後、処理基板SUBは、第1ローテーションチャンバー140を通過し、基板脱着チャンバー130及び搬送チャンバー120を経て、ロードロックチャンバー110に戻され、蒸着装置100から搬出される。
【0130】
蒸着装置100から搬出された処理基板SUBにおいては、
図6を参照して説明したように、隔壁6の上に形成された有機層OR1は、開口AP1において下電極LE1の上に形成された有機層OR1から離間している。隔壁6の上に形成された上電極UE1は、下電極LE1の直上に形成された上電極UE1から離間している。
【0131】
次に、
図12に示した蒸着装置100により
図11に示した表示素子201の有機層OR1及び上電極UE1を形成する工程について
図17及び
図18を参照しながら説明する。
【0132】
まず、
図17に示すように、ファインマスクを設置することなく処理基板SUBを蒸着装置100のロードロックチャンバー110に投入する。
【0133】
処理基板SUBは、搬送チャンバー120及び基板脱着チャンバー130を経て、第1ローテーションチャンバー140を通過する。その後、処理基板SUBは、第1チャンバー群150Aを経由し、第2ローテーションチャンバー170において180°回転され、第2チャンバー群150Bを経由する。
【0134】
処理基板SUBが第1チャンバー群150Aを経由する際、蒸着チャンバー151において下電極LE1の上に正孔注入層HIL1を形成し、蒸着チャンバー152において正孔注入層HIL1の上に正孔輸送層HTL11を形成し、蒸着チャンバー153において正孔輸送層HTL11の上に電子ブロック層EBL11を形成し、蒸着チャンバー154において電子ブロック層EBL11の上に発光層EM11を形成し、蒸着チャンバー155において発光層EM11の上に正孔ブロック層HBL11を形成する。
【0135】
処理基板SUBが第2チャンバー群150Bを経由する際、蒸着チャンバー156において正孔ブロック層HBL11の上にn型電荷発生層nCGL1を形成し、蒸着チャンバー157においてn型電荷発生層nCGL1の上にp型電荷発生層pCGL1を形成する。
蒸着チャンバー158乃至160においては蒸着源から放射された材料が処理基板SUBに蒸着されないモードに設定されている。このため、処理基板SUBは、材料が蒸着されることなく蒸着チャンバー158乃至160を通過する。
【0136】
その後、
図18に示すように、処理基板SUBは、第1ローテーションチャンバー140において180°回転され、第1チャンバー群150Aを経由し、第2ローテーションチャンバー170において180°回転され、第2チャンバー群150Bを経由する。
【0137】
処理基板SUBが第1チャンバー群150Aを経由する際、蒸着チャンバー151においては蒸着源から放射された材料が処理基板SUBに蒸着されないモードに設定されている。このため、処理基板SUBは、材料が蒸着されることなく蒸着チャンバー151を通過する。
そして、蒸着チャンバー152においてp型電荷発生層pCGL1の上に正孔輸送層HTL12を形成し、蒸着チャンバー153において正孔輸送層HTL12の上に電子ブロック層EBL12を形成し、蒸着チャンバー154において電子ブロック層EBL12の上に発光層EM12を形成し、蒸着チャンバー155において発光層EM12の上に正孔ブロック層HBL12を形成する。
【0138】
処理基板SUBが第2チャンバー群150Bを経由する際、蒸着チャンバー156及び157においては蒸着源から放射された材料が処理基板SUBに蒸着されないモードに設定されている。このため、処理基板SUBは、材料が蒸着されることなく蒸着チャンバー156及び157を通過する。
そして、蒸着チャンバー158において正孔ブロック層HBL12の上に電子輸送層ETL1を形成し、蒸着チャンバー159において電子輸送層ETL1の上に電子注入層EIL1を形成し、蒸着チャンバー160において電子注入層EIL1の上に上電極UE1を形成する。
【0139】
その後、処理基板SUBは、第1ローテーションチャンバー140を通過し、基板脱着チャンバー130及び搬送チャンバー120を経て、ロードロックチャンバー110に戻され、蒸着装置100から搬出される。
【0140】
蒸着装置100から搬出された処理基板SUBにおいては、
図6を参照して説明したように、隔壁6の上に形成された有機層OR1は、開口AP1において下電極LE1の上に形成された有機層OR1から離間している。また、隔壁6の上に形成された上電極UE1は、開口AP1において下電極LE1の直上に形成された上電極UE1から離間している。
【0141】
図示した例において、正孔輸送層HTL11は第1正孔輸送層に相当し、正孔輸送層HTL12は第2正孔輸送層に相当し、正孔輸送層HTL11及びHTL12は同一の蒸着チャンバー152において同一材料で形成される。
電子ブロック層EBL11は第1電子ブロック層に相当し、電子ブロック層EBL12は第2電子ブロック層に相当し、電子ブロック層EBL11及びEBL12は同一の蒸着チャンバー153において同一材料で形成される。
発光層EM11は第1発光層に相当し、発光層EM12は第2発光層に相当し、発光層EM11及びEM12は同一の蒸着チャンバー154において同一材料で形成される。
正孔ブロック層HBL11は第1正孔ブロック層に相当し、正孔ブロック層HBL12は第2正孔ブロック層に相当し、正孔ブロック層HBL11及びHBL12は同一の蒸着チャンバー154において同一材料で形成される。
なお、
図16乃至
図18を参照して説明した有機層OR1及び上電極UE1を形成する工程においては、第1チャンバー群150A及び第2チャンバー群150Bを経由する際の処理基板SUBの搬送速度は、一定である。
【0142】
以上説明したように、本実施形態によれば、1つの蒸着装置100において、シングル構成の表示素子、及び、タンデム構成の表示素子のいずれも容易に形成することができる。このため、タンデム構成の製品とシングル構成の製品との製造比率に大きな差が生じたとしても、蒸着装置100の稼働率の低下が抑制される。
【0143】
また、蒸着装置100において、蒸着部150を複数回周回させながら材料を蒸着する機能と、放射した材料の蒸着の有無を選択できるモード設定機能とを併せ持つことで、多様なタンデム構成を実現することができる。
【0144】
また、タンデム構成の表示素子を形成する場合に、1つの蒸着チャンバーで同一の機能層を複数形成することができる。このため、各層を形成するための蒸着チャンバーを備えた蒸着装置と比較して、蒸着チャンバーの台数が削減される。したがって、設備のコストが削減され、設置スペースあるいは設備の規模が縮小される。
【0145】
次に、表示素子の有機層及び上電極を形成するための他の蒸着装置について説明する。ここでは、一例として、表示素子201の有機層OR1及び上電極UE1を形成するための蒸着装置100について説明する。なお、表示素子202の有機層OR2及び上電極UE2を形成するための蒸着装置、及び、表示素子203の有機層OR3及び上電極UE3を形成するための蒸着装置についても、ここに説明する蒸着装置100と同様に構成することができる。
【0146】
図19は、蒸着装置100の他の構成例を説明するための図である。この蒸着装置100は、
図4及び
図6を参照して説明した第1薄膜31を形成する工程のうち、有機層OR1及び上電極UE1を形成するのに適用される。
【0147】
図19に示す例は、
図12に示した例と比較して、蒸着部150がさらに第1透明層TL1を形成するための蒸着チャンバー161と、第2透明層TL2を形成するための蒸着チャンバー162とを備える点で相違している。蒸着装置100のその他の構成については、
図12に示した例と同一であり、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0148】
蒸着部150は、第1チャンバー群150Aと、第2チャンバー群150Bと、を備えている。第1チャンバー群150Aは、処理基板SUBが搬送される第1搬送方向TAに沿って一列に並んだ複数の蒸着チャンバー151乃至156を有している。これらの蒸着チャンバー151乃至156は、互いに連結されている。第2チャンバー群150Bは、第1搬送方向TAとは逆向きの第2搬送方向TBに沿って一列に並んだ複数の蒸着チャンバー157乃至162を有している。これらの蒸着チャンバー157乃至162は、互いに連結されている。
【0149】
図示した例では、蒸着部150は、12個の蒸着チャンバー151乃至162を備えている。これらの12個の蒸着チャンバー151乃至162は、6*2のマトリクス状に配列されている。
【0150】
蒸着チャンバー151は、正孔注入層HIL1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー152は、正孔輸送層HTL1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー153は、電子ブロック層EBL1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー154は、発光層EM1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー155は、正孔ブロック層HBL1を形成するように構成されている。
【0151】
蒸着チャンバー156は、n型電荷発生層nCGL1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー157は、p型電荷発生層pCGL1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー158は、電子輸送層ETL1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー159は、電子注入層EIL1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー160は、上電極UE1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー161は、第1透明層TL1を形成するように構成されている。
蒸着チャンバー162は、第2透明層TL2を形成するように構成されている。例えば、蒸着チャンバー162は、第2透明層TL2を形成するための材料としてフッ化リチウムを放射するように構成されている。
【0152】
第1ローテーションチャンバー140は、第1チャンバー群150Aのうち第1搬送方向TAの最も上流に位置する蒸着チャンバー151、及び、第2チャンバー群150Bのうち、第2搬送方向TBの最も下流に位置する蒸着チャンバー162に連結されている。第1ローテーションチャンバー140は、蒸着チャンバー162から搬出された処理基板SUBを蒸着チャンバー151に搬入するように、処理基板SUBを回転させる機構を備えている。
【0153】
第2ローテーションチャンバー170は、第1チャンバー群150Aのうち第1搬送方向TAの最も下流に位置する蒸着チャンバー156、及び、第2チャンバー群150Bのうち、第2搬送方向TBの最も上流に位置する蒸着チャンバー157に連結されている。第2ローテーションチャンバー170は、蒸着チャンバー156から搬出された処理基板SUBを蒸着チャンバー157に搬入するように、処理基板SUBを回転させる機構を備えている。
【0154】
図19に示す構成例においては、例えば、蒸着チャンバー151は第1蒸着チャンバーに相当し、蒸着チャンバー162は第2蒸着チャンバーに相当し、蒸着チャンバー156は第3蒸着チャンバーに相当し、蒸着チャンバー157は第4蒸着チャンバーに相当する。
【0155】
次に、
図19に示した蒸着装置100により
図10に示した表示素子201の有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1を形成する工程について
図20を参照しながら説明する。
【0156】
まず、
図5を参照して説明した処理基板SUBを用意した後、ファインマスクを設置することなく処理基板SUBを蒸着装置100のロードロックチャンバー110に投入する。
【0157】
処理基板SUBは、搬送チャンバー120及び基板脱着チャンバー130を経て、第1ローテーションチャンバー140を通過する。その後、処理基板SUBは、第1チャンバー群150Aを経由し、第2ローテーションチャンバー170において180°回転され、第2チャンバー群150Bを経由する。
【0158】
処理基板SUBが第1チャンバー群150Aを経由する際、蒸着チャンバー151において下電極LE1の上に正孔注入層HIL1を形成し、蒸着チャンバー152において正孔注入層HIL1の上に正孔輸送層HTL1を形成し、蒸着チャンバー153において正孔輸送層HTL1の上に電子ブロック層EBL1を形成し、蒸着チャンバー154において電子ブロック層EBL1の上に発光層EM1を形成し、蒸着チャンバー155において発光層EM1の上に正孔ブロック層HBL1を形成する。
蒸着チャンバー156においては蒸着源から放射された材料が処理基板SUBに蒸着されないモードに設定されている。このため、処理基板SUBは、材料が蒸着されることなく蒸着チャンバー156を通過する。
【0159】
処理基板SUBが第2チャンバー群150Bを経由する際、蒸着チャンバー157においては蒸着源から放射された材料が処理基板SUBに蒸着されないモードに設定されている。このため、処理基板SUBは、材料が蒸着されることなく蒸着チャンバー157を通過する。
そして、蒸着チャンバー158において正孔ブロック層HBL1の上に電子輸送層ETL1を形成し、蒸着チャンバー159において電子輸送層ETL1の上に電子注入層EIL1を形成し、蒸着チャンバー160において電子注入層EIL1の上に上電極UE1を形成し、蒸着チャンバー161において上電極UE1の上に第1透明層TL1を形成し、蒸着チャンバー162において第1透明層TL1の上に第2透明層TL2を形成する。
【0160】
その後、処理基板SUBは、第1ローテーションチャンバー140を通過し、基板脱着チャンバー130及び搬送チャンバー120を経て、ロードロックチャンバー110に戻され、蒸着装置100から搬出される。
【0161】
蒸着装置100から搬出された処理基板SUBにおいては、
図6を参照して説明したように、隔壁6の上に形成された有機層OR1は、開口AP1において下電極LE1の上に形成された有機層OR1から離間している。隔壁6の上に形成された上電極UE1は、下電極LE1の直上に形成された上電極UE1から離間している。隔壁6の上に形成された第1透明層TL1及び第2透明層TL2は、下電極LE1の直上に形成された第1透明層TL1及び第2透明層TL2から離間している。
【0162】
次に、
図19に示した蒸着装置100により
図11に示した表示素子201の有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1を形成する工程について
図21及び
図22を参照しながら説明する。
【0163】
まず、
図21に示すように、ファインマスクを設置することなく処理基板SUBを蒸着装置100のロードロックチャンバー110に投入する。
【0164】
処理基板SUBは、搬送チャンバー120及び基板脱着チャンバー130を経て、第1ローテーションチャンバー140を通過する。その後、処理基板SUBは、第1チャンバー群150Aを経由し、第2ローテーションチャンバー170において180°回転され、第2チャンバー群150Bを経由する。
【0165】
処理基板SUBが第1チャンバー群150Aを経由する際、蒸着チャンバー151において下電極LE1の上に正孔注入層HIL1を形成し、蒸着チャンバー152において正孔注入層HIL1の上に正孔輸送層HTL11を形成し、蒸着チャンバー153において正孔輸送層HTL11の上に電子ブロック層EBL11を形成し、蒸着チャンバー154において電子ブロック層EBL11の上に発光層EM11を形成し、蒸着チャンバー155において発光層EM11の上に正孔ブロック層HBL11を形成し、蒸着チャンバー156において正孔ブロック層HBL11の上にn型電荷発生層nCGL1を形成する。
【0166】
処理基板SUBが第2チャンバー群150Bを経由する際、蒸着チャンバー157においてn型電荷発生層nCGL1の上にp型電荷発生層pCGL1を形成する。
蒸着チャンバー158乃至162においては蒸着源から放射された材料が処理基板SUBに蒸着されないモードに設定されている。このため、処理基板SUBは、材料が蒸着されることなく蒸着チャンバー158乃至162を通過する。
【0167】
その後、
図22に示すように、処理基板SUBは、第1ローテーションチャンバー140において180°回転され、第1チャンバー群150Aを経由し、第2ローテーションチャンバー170において180°回転され、第2チャンバー群150Bを経由する。
【0168】
処理基板SUBが第1チャンバー群150Aを経由する際、蒸着チャンバー151においては蒸着源から放射された材料が処理基板SUBに蒸着されないモードに設定されている。このため、処理基板SUBは、材料が蒸着されることなく蒸着チャンバー151を通過する。
【0169】
そして、蒸着チャンバー152においてp型電荷発生層pCGL1の上に正孔輸送層HTL12を形成し、蒸着チャンバー153において正孔輸送層HTL12の上に電子ブロック層EBL12を形成し、蒸着チャンバー154において電子ブロック層EBL12の上に発光層EM12を形成し、蒸着チャンバー155において発光層EM12の上に正孔ブロック層HBL12を形成する。
蒸着チャンバー156においては蒸着源から放射された材料が処理基板SUBに蒸着されないモードに設定されている。このため、処理基板SUBは、材料が蒸着されることなく蒸着チャンバー156を通過する。
【0170】
処理基板SUBが第2チャンバー群150Bを経由する際、蒸着チャンバー157においては蒸着源から放射された材料が処理基板SUBに蒸着されないモードに設定されている。このため、処理基板SUBは、材料が蒸着されることなく蒸着チャンバー157を通過する。
【0171】
そして、蒸着チャンバー158において正孔ブロック層HBL12の上に電子輸送層ETL1を形成し、蒸着チャンバー159において電子輸送層ETL1の上に電子注入層EIL1を形成し、蒸着チャンバー160において電子注入層EIL1の上に上電極UE1を形成し、蒸着チャンバー161において上電極UE1の上に第1透明層TL1を形成し、蒸着チャンバー162において第1透明層TL1の上に第2透明層TL2を形成する。
【0172】
その後、処理基板SUBは、第1ローテーションチャンバー140を通過し、基板脱着チャンバー130及び搬送チャンバー120を経て、ロードロックチャンバー110に戻され、蒸着装置100から搬出される。
【0173】
蒸着装置100から搬出された処理基板SUBにおいては、
図6を参照して説明したように、隔壁6の上に形成された有機層OR1は、開口AP1において下電極LE1の上に形成された有機層OR1から離間している。隔壁6の上に形成された上電極UE1は、下電極LE1の直上に形成された上電極UE1から離間している。隔壁6の上に形成された第1透明層TL1及び第2透明層TL2は、下電極LE1の直上に形成された第1透明層TL1及び第2透明層TL2から離間している。
【0174】
図示した例において、正孔輸送層HTL11は第1正孔輸送層に相当し、正孔輸送層HTL12は第2正孔輸送層に相当し、正孔輸送層HTL11及びHTL12は同一の蒸着チャンバー152において同一材料で形成される。
電子ブロック層EBL11は第1電子ブロック層に相当し、電子ブロック層EBL12は第2電子ブロック層に相当し、電子ブロック層EBL11及びEBL12は同一の蒸着チャンバー153において同一材料で形成される。
発光層EM11は第1発光層に相当し、発光層EM12は第2発光層に相当し、発光層EM11及びEM12は同一の蒸着チャンバー154において同一材料で形成される。
正孔ブロック層HBL11は第1正孔ブロック層に相当し、正孔ブロック層HBL12は第2正孔ブロック層に相当し、正孔ブロック層HBL11及びHBL12は同一の蒸着チャンバー154において同一材料で形成される。
なお、
図20乃至
図22を参照して説明した有機層OR1、上電極UE1、及び、キャップ層CP1を形成する工程においては、第1チャンバー群150A及び第2チャンバー群150Bを経由する際の処理基板SUBの搬送速度は、一定である。
【0175】
このような蒸着装置によれば、上記した蒸着装置と同様の効果が得られる。加えて、有機層、上電極、及び、キャップ層を連続して蒸着することができる。
【0176】
以上説明したように、本実施形態によれば、コストを削減し、設置スペースを縮小することが可能な蒸着装置及び蒸着方法を提供することができる。
【0177】
以上、本発明の実施形態として説明した蒸着装置及び蒸着方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての蒸着装置及び蒸着方法も、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に属する。
【0178】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0179】
また、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0180】
DSP…表示装置
10…基板 SUB…処理基板
5…リブ AP1,AP2,AP3…開口
6…隔壁 61…下部 62…上部
SP1,SP2,SP3…副画素
20,201,202,203…表示素子(有機EL素子)
LE1,LE2,LE3…下電極(アノード)
UE1,UE2,UE3…上電極(カソード)
OR1,OR2,OR3…有機層
CP1,CP2,CP3…キャップ層
SE1,SE2,SE3…封止層
100…蒸着装置 110…ロードロックチャンバー 120…搬送チャンバー 130…基板脱着チャンバー 140…第1ローテーションチャンバー 150…蒸着部 170…第2ローテーションチャンバー
151~162…蒸着チャンバー
R1…第1搬送レール R2…第2搬送レール
SUB…処理基板 CR…キャリア S1…蒸着源 P1…仕切り板 OP1…開口