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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008500
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】固相抵抗スポット接合装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B23K20/00 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110429
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高本 敬司
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA02
4E167AA05
4E167AA06
4E167AA29
4E167BB04
(57)【要約】
【課題】被接合物が傾斜して配置される場合に、被接合物に電極を均一に接触させる。
【解決手段】複数の第1弾性部材151は、加圧軸100の周りに互いに間隔をあけて配置され、電極110を複数の被接合物2に向かって付勢する。駆動源30が接合ユニット10を駆動させることによって、複数の被接合物2のうちの電極110側に位置する被接合物2aに電極110を当接させて、複数の第1弾性部材151の各々の付勢力によって電極110を複数の被接合物2に押圧させつつ、加圧軸100を複数の被接合物2に押圧させる。電極110は、電極110側に位置する被接合物2aとの接触面に倣って当接するように姿勢を変更可能に支持されている。複数の第1弾性部材151の各々は、電極110側に位置する被接合物2aに接触した際の電極110の姿勢に応じて弾性変形している。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
前記駆動源によって軸方向に駆動される接合ユニットとを備え、
前記接合ユニットは、
重ね合わされた複数の被接合物を前記軸方向から塑性変形可能に押圧する加圧軸と、
前記加圧軸に隙間をあけつつ前記加圧軸の周りに配置され、前記複数の被接合物に電圧を印加する電極と、
前記加圧軸の周りに互いに間隔をあけて配置され、前記電極を前記複数の被接合物に向かって付勢する複数の第1弾性部材とを含み、
前記駆動源が前記接合ユニットを駆動させることによって、前記複数の被接合物のうちの電極側に位置する被接合物に前記電極を当接させて、前記複数の第1弾性部材の各々の付勢力によって前記電極を前記複数の被接合物に押圧させつつ、前記加圧軸を前記複数の被接合物に押圧させ、
前記電極は、前記電極側に位置する被接合物との接触面に倣って当接するように姿勢を変更可能に支持されており、
前記複数の第1弾性部材の各々は、前記電極側に位置する被接合物に接触した際の前記電極の姿勢に応じて弾性変形している、固相抵抗スポット接合装置。
【請求項2】
前記接合ユニットは、前記加圧軸を囲むように隙間をあけつつ前記軸方向に延在し、前記電極と接続された接続端部および前記軸方向において前記複数の第1弾性部材と並ぶフランジ部を有するベース部材をさらに含み、
前記複数の第1弾性部材の各々は、前記フランジ部に当接して、前記ベース部材を介して前記電極を付勢し、
前記電極は、前記電極および前記ベース部材の各々の前記加圧軸に対する隙間によって、前記軸方向に対して傾斜可能な範囲が規定されている、請求項1に記載の固相抵抗スポット接合装置。
【請求項3】
前記接合ユニットは、前記加圧軸に隙間をあけつつ前記加圧軸の周りに配置され、前記複数の第1弾性部材を支持するガイド部材をさらに含み、
前記ガイド部材には、前記軸方向に貫通している複数の貫通孔が設けられ、
前記複数の貫通孔の各々には、前記複数の第1弾性部材のうちの対応する第1弾性部材が挿通している、請求項1または請求項2に記載の固相抵抗スポット接合装置。
【請求項4】
前記接合ユニットは、前記加圧軸の周りにおける前記複数の第1弾性部材の内側に配置され、前記ガイド部材を介して前記電極を前記複数の被接合物に向かって付勢する1つの第2弾性部材をさらに含む、請求項3に記載の固相抵抗スポット接合装置。
【請求項5】
前記接合ユニットは、
前記加圧軸の周りに位置して前記複数の第1弾性部材を内部に収容し、前記軸方向において前記電極とは反対側から前記複数の第1弾性部材と当接するケース部材と、
前記フランジ部に対向しつつ、前記ケース部材の前記電極側の端に接続される蓋部と、
前記蓋部と前記フランジ部との間に配置される球体とをさらに含み、
前記フランジ部の蓋部側には第1凹部が設けられ、
前記蓋部のフランジ部側には第2凹部が設けられ、
前記球体は、前記第1凹部および前記第2凹部の各々に線接触可能である、請求項2に記載の固相抵抗スポット接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固相抵抗スポット接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固相抵抗スポット接合装置を開示した先行技術文献として、国際公開第2021/182444号(特許文献1)がある。特許文献1に記載された固相抵抗スポット接合装置は、中心加圧軸と、銅電極とを備える。中心加圧軸は、接合温度における金属板材の降伏強度以上の外部応力を金属板材に印加する。銅電極は、金属板材に電流を通電して金属板材を加熱する。銅電極は、中心加圧軸とは別駆動で制御されている。電極はエアシリンダにより駆動し、金属板材に荷重を印加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/182444号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された固相抵抗スポット接合装置においては、エアシリンダによって被接合物に押圧される電極が中心加圧軸の軸方向に駆動する。この軸方向に直交する方向に延在する被接合物が傾斜して配置される場合、被接合物への電極の接触が片当たりになることで不均一になる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、被接合物が傾斜して配置される場合に、被接合物に電極を均一に接触させることができる、固相抵抗スポット接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく固相抵抗スポット接合装置は、駆動源と、接合ユニットとを備える。接合ユニットは、駆動源によって軸方向に駆動される。接合ユニットは、加圧軸と、電極と、複数の第1弾性部材とを含む。加圧軸は、重ね合わされた複数の被接合物を上記軸方向から塑性変形可能に押圧する。電極は、加圧軸に隙間をあけつつ加圧軸の周りに配置され、複数の被接合物に電圧を印加する。複数の第1弾性部材は、加圧軸の周りに互いに間隔をあけて配置され、電極を複数の被接合物に向かって付勢する。駆動源が接合ユニットを駆動させることによって、複数の被接合物のうちの電極側に位置する被接合物に電極を当接させて、複数の第1弾性部材の各々の付勢力によって電極を複数の被接合物に押圧させつつ、加圧軸を複数の被接合物に押圧させる。電極は、電極側に位置する被接合物との接触面に倣って当接するように姿勢を変更可能に支持されている。複数の第1弾性部材の各々は、電極側に位置する被接合物に接触した際の電極の姿勢に応じて弾性変形している。
【0007】
この場合、複数の第1弾性部材を加圧軸周りに配置して電極を付勢することによって、被接合物が傾斜して配置される場合に、複数の第1弾性部材の各々が被接合物の傾斜に合わせて弾性変形することができる。これにより、電極を加圧軸の軸方向に対して傾斜させることができるため、被接合物が傾斜して配置される場合に、被接合物に電極を均一に接触させることができる。
【0008】
本発明の一形態においては、接合ユニットは、ベース部材をさらに含む。ベース部材は、加圧軸を囲むように隙間をあけつつ上記軸方向に延在し、電極と接続された接続端部および上記軸方向において複数の第1弾性部材と並ぶフランジ部を有する。複数の第1弾性部材の各々は、フランジ部に当接して、ベース部材を介して電極を付勢する。電極は、電極およびベース部材の各々の加圧軸に対する隙間によって、上記軸方向に対して傾斜可能な範囲が規定されている。
【0009】
この場合、ベース部材を設けて、複数の第1弾性部材をベース部材のフランジ部に当接させることによって、複数の第1弾性部材を電極に直接当接させる場合と比較して、広範囲に複数の第1弾性部材を当接させることができるため、ベース部材を介して複数の第1弾性部材により安定的に電極を付勢することができる。
【0010】
本発明の一形態においては、接合ユニットは、ガイド部材をさらに含む。ガイド部材は、加圧軸に隙間をあけつつ加圧軸の周りに配置され、複数の第1弾性部材を支持する。ガイド部材には、上記軸方向に貫通している複数の貫通孔が設けられている。複数の貫通孔の各々には、複数の第1弾性部材のうちの対応する第1弾性部材が挿通している。
【0011】
この場合、ガイド部材を設けることによって、複数の第1弾性部材の位置ずれを抑制することができる。
【0012】
本発明の一形態においては、接合ユニットは、1つの第2弾性部材をさらに含む。1つの第2弾性部材は、加圧軸の周りにおける複数の第1弾性部材の内側に配置され、ガイド部材を介して電極を複数の被接合物に向かって付勢する。
【0013】
この場合、1つの第2弾性部材によって電極を中央付近から付勢することによって、被接合物の接合後に被接合物から電極を離間させる際、被接合物に対応して傾斜した電極を傾斜した状態から元の状態に矯正することができる。
【0014】
本発明の一形態においては、接合ユニットは、ケース部材と、蓋部と、球体とをさらに含む。ケース部材は、加圧軸の周りに位置して複数の第1弾性部材を内部に収容し、上記軸方向において電極とは反対側から複数の第1弾性部材と当接する。蓋部は、フランジ部に対向しつつ、ケース部材の電極側の端に接続される。球体は、蓋部とフランジ部との間に配置される。フランジ部の蓋部側には第1凹部が設けられる。蓋部のフランジ部側には第2凹部が設けられる。球体は、第1凹部および第2凹部の各々に線接触可能である。
【0015】
この場合、ベース部材と蓋部との接触を線接触にすることによって、接触する部材の接触抵抗を減らすことができるため、被接合物に対して電極を傾斜させやすくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被接合物が傾斜して配置される場合に、被接合物に電極を均一に接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置の構成を示す正面図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置の接合ユニット周辺の構成を示す断面図である。
図3図2におけるIII部を拡大して被接合物が接合される前の装置の状態を示す断面図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置の第1接合ユニットにおける複数の第1弾性部材周辺の構成を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置により被接合物が接合された直後の装置の状態を示す断面図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置の第1接合ユニットにおける電極が傾斜した場合の構成を示す模式図である。
図7】本発明の一実施の形態の変形例に係る固相抵抗スポット接合装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置について図面を参照して説明する。以下の実施の形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0019】
なお、図面においては、加圧軸の軸方向に直交かつ接続導体の延在方向に平行な方向をX方向とする。また、加圧軸の軸方向をY方向とする。さらに、加圧軸の軸方向および接続導体の延在方向に直交する方向をZ方向とする。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置の構成を示す正面図である。図2は、本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置の接合ユニット周辺の構成を示す断面図である。
【0021】
図1および図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置1は、重ね合わされた複数の被接合物2に電流を通電させることによって複数の被接合物2に軟化領域を形成させつつ、当該軟化領域を塑性変形させて複数の被接合物2同士を固相状態のまま接合する装置である。
【0022】
固相抵抗スポット接合装置1は、接合ユニットとしての第1接合ユニット10および第2接合ユニット20と、駆動源30と、電源部40とを備える。
【0023】
第1接合ユニット10は、複数の被接合物2を塑性変形可能に押圧し、かつ複数の被接合物2に電圧を印加するためのユニットである。第1接合ユニット10は、駆動源30によって軸方向(Y方向)に駆動される。第1接合ユニット10の構成については後述する。
【0024】
第2接合ユニット20は、第1接合ユニット10とともに複数の被接合物2を押圧し、かつ複数の被接合物2に電圧を印加するためのユニットである。第2接合ユニット20は、固相抵抗スポット接合装置1の筐体に固定されている。
【0025】
図2に示すように、本実施の形態における第2接合ユニット20は、第1接合ユニット10に対してXZ平面を基準として面対称に、第1接合ユニット10と同じ構成を有している。なお、第2接合ユニット20は、この構成に限定されず、たとえば後述する弾性部材150が設けられていない構成であってもよい。
【0026】
図1に示すように、駆動源30は、第1接合ユニット10をY方向に駆動させる。本実施の形態における駆動源30は、たとえば、サーボプレス機である。
【0027】
電源部40は、第1接合ユニット10および第2接合ユニット20に電圧を印加する。電源部40は、電源側導体41を有する。電源側導体41が第1接合ユニット10および第2接合ユニット20の各々に接続されている。
【0028】
固相抵抗スポット接合装置1により接合される被接合物2は、たとえばハイテン材などの鋼板である。なお、被接合物2は、鋼板に限定されず、アルミニウム板などであってもよいし、鋼板とアルミニウム板との異種材料であってもよい。
【0029】
以下、第1接合ユニット10について説明する。図3は、図2におけるIII部を拡大して被接合物が接合される前の装置の状態を示す断面図である。図4は、本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置の第1接合ユニットにおける複数の第1弾性部材周辺の構成を示す斜視図である。なお、図4においては、発明の理解を容易にするため、ケース部材を透視して示している。
【0030】
図2図4に示すように、本発明の一実施の形態における第1接合ユニット10は、加圧軸100と、電極110と、ベース部材120と、ケース部材130と、蓋部140と、球体142と、弾性部材150と、ガイド部材160と、板状部材170と、接続導体180と、配線部材190とを含む。本実施の形態における弾性部材150は、複数の第1弾性部材151と、1つの第2弾性部材152とを有する。
【0031】
加圧軸100は、Y方向に延在する円柱部材である。加圧軸100の材質は、たとえばタングステンカーバイドである。ただし、加圧軸100の材質は、被接合物2に対して必要な押圧力を印加することができれば、特に限定されず、工具鋼、耐熱鋼またはセラミックスなどであってもよい。
【0032】
図3に示すように、加圧軸100は、先端101および後端102を有する。先端101は、複数の被接合物2のうちの第1接合ユニット側に位置する被接合物2aと接触する部分である。後端102は、加圧軸100を支持するホルダ103に接続されている。後端102は、テーパ形状を有し、ホルダ103の内周面に係合している。
【0033】
加圧軸100は、重ね合わされた複数の被接合物2を軸方向(Y方向)から塑性変形可能に押圧する。具体的には、本実施の形態の加圧軸100は、駆動源30の駆動によって30~50kNの押圧力により複数の被接合物2を押圧する。
【0034】
電極110は、加圧軸100とともに駆動源30によって駆動される。電極110は、加圧軸100に隙間をあけつつ加圧軸100の周りに配置されている。本実施の形態における電極110の先端111は、Y方向から見て、円筒形状を有している。
【0035】
電極110は、導電性を有している。電極110は、たとえば銅により構成されている。電極110は、複数の被接合物2に電圧を印加する。電極110は、複数の被接合物2への電圧の印加によって、複数の被接合物2に3500~10000Aの電流を通電させて複数の被接合物2を加熱する。
【0036】
ベース部材120は、導電性を有し、軸方向(Y方向)に延在している。ベース部材120は、たとえば銅により構成されている。ベース部材120は、加圧軸100に隙間をあけつつ加圧軸100の周りに配置されている。
【0037】
ベース部材120は、本体部121と、接続端部122と、フランジ部123とを有している。本体部121は、ベース部材120のうちのY方向に延在する円筒部分である。
【0038】
接続端部122は、本体部121のY方向の被接合物2側に位置している。接続端部122は、加圧軸100を囲むように隙間をあけつつ軸方向(Y方向)に延在している。接続端部122は、電極110と接続されている。
【0039】
フランジ部123は、本体部121における接続端部122が配置される側とは反対側の端部からXZ平面上に延在している。フランジ部123は、軸方向(Y方向)において複数の第1弾性部材151と並んでいる。
【0040】
フランジ部123は、接触面124を有している。フランジ部123は、接触面124において複数の第1弾性部材151と接触している。
【0041】
フランジ部123の蓋部140側には、第1凹部125が設けられている。本実施の形態に係る第1凹部125は、円錐面形状を有している。なお、第1凹部125は円錐面形状に限定されず、曲面であってもよい。
【0042】
電極110は、電極110およびベース部材120の各々の加圧軸100に対する隙間によって、軸方向(Y方向)に対して傾斜可能な範囲が規定されている。このため、電極110およびベース部材120は、XZ平面に延在する被接合物2がXZ平面に対して傾斜した場合、電極110が被接合物2に接触しつつY方向に対して傾斜することができる。
【0043】
図2図4に示すように、ケース部材130は、加圧軸100の周りに位置して複数の第1弾性部材151および1つの第2弾性部材152を内部に収容している。ケース部材130は、たとえば絶縁材料によって構成されている。
【0044】
図3および図4に示すように、ケース部材130には、軸方向(Y方向)に沿って延在する複数の溝部131が設けられている。複数の溝部131の各々に、複数の第1弾性部材151の各々が収容されている。ケース部材130は、軸方向(Y方向)において電極110とは反対側から複数の第1弾性部材151と当接している。
【0045】
蓋部140は、球体142を介してフランジ部123を支持する部材である。蓋部140は、フランジ部123に対向しつつ、ケース部材130の電極110側の端に接続されている。蓋部140は、たとえば鋼により構成されている。
【0046】
蓋部140のフランジ部123側には第2凹部141が設けられている。本実施の形態に係る第2凹部141は、円錐面形状を有している。なお、第2凹部141は円錐面形状に限定されず、曲面であってもよい。
【0047】
球体142は、蓋部140とフランジ部123との間に配置されている。球体142は、たとえば鋼球である。球体142は、複数の第1弾性部材151の各々に対応するように、Y方向に複数の第1弾性部材151に並んで配置されている。
【0048】
球体142は、第1凹部125および第2凹部141の各々に線接触可能である。これにより、フランジ部123と球体142との接触抵抗を減らすことができるため、電極110およびベース部材120がY方向に傾斜しやすい。また、球体142の線接触によって、電極110への通電による熱をフランジ部123から蓋部140へ伝熱させにくくすることができるため、第1接合ユニット10の耐熱性を向上させることができる。
【0049】
弾性部材150は、電極110を複数の被接合物2に向かって付勢する。本実施の形態においては、電極110は、弾性部材150の付勢によって、たとえば1~2kNの押圧力により複数の被接合物2を押圧する。
【0050】
複数の第1弾性部材151は、加圧軸100の周りに互いに間隔をあけて配置され、電極110を複数の被接合物2に向かって付勢する。具体的には、複数の第1弾性部材151は、ベース部材120のフランジ部123に当接し、ベース部材120を介して電極110を付勢している。
【0051】
本実施の形態における複数の第1弾性部材151は、加圧軸100を中心としてXZ平面の円周上に等間隔で8個配置されている。なお、複数の第1弾性部材151の数量は、8個に限定されず、電極110およびベース部材120がY方向に対し、いずれか方向に傾斜することができればよく、少なくとも3個以上であればよい。
【0052】
複数の第1弾性部材151の各々は、弾性体153と、台座部154とを有する。本実施の形態における弾性体153は、たとえば、ばねである。なお、弾性体153は、ばねに限定されず、ゴムなどの他の弾性体であってもよい。
【0053】
台座部154は、弾性体153のベース部材120側の端部に配置されている。本実施の形態における台座部154は、たとえば、ばね受けである。
【0054】
台座部154は、ベース部材120側に球面155を有している。球面155がフランジ部123の接触面124に点接触している。これにより、接触面124がXZ平面に対して傾斜した際、台座部154が円柱形状である場合と比較して、台座部154が接触面124に対して片当たりして複数の第1弾性部材151から接触面124へ偏った付勢力が加わることを抑制することができる。
【0055】
1つの第2弾性部材152は、加圧軸100の周りにおける複数の第1弾性部材151の内側に配置されている。1つの第2弾性部材152は、たとえば、ばねである。なお、第2弾性部材152は、ばねに限定されず、ゴムなどの他の弾性体であってもよい。
【0056】
1つの第2弾性部材152は、ガイド部材160を介して電極110を複数の被接合物2に向かって付勢する。1つの第2弾性部材152は、電極110およびベース部材120がXZ平面に対して傾斜しつつ被接合物2を接合した後、被接合物2から第1接合ユニット10を離間させる際に、ベース部材120の傾斜を矯正させる役割を有している。
【0057】
複数の第1弾性部材151の各々のY方向におけるヤング率は、1つの第2弾性部材152より高いことが望ましい。これにより、電極110およびベース部材120がY方向から傾斜した場合に、複数の第1弾性部材151の付勢力によって、電極110を被接合物2に密着させやすくすることができる。
【0058】
ガイド部材160は、加圧軸100に隙間をあけつつ加圧軸100の周りに配置されている。ガイド部材160には、軸方向(Y方向)に貫通している複数の貫通孔161が設けられている。複数の貫通孔161の各々には、複数の第1弾性部材151のうちの対応する第1弾性部材151が挿通している。これにより、ガイド部材160は、複数の第1弾性部材151の各々を支持する。
【0059】
ガイド部材160は、1つの第2弾性部材152によりY方向に付勢されることによって、その位置が固定されている。1つの第2弾性部材152は、ボルト締結などの固定方法を用いることなく、ガイド部材160の位置を簡素に固定することができる。
【0060】
板状部材170は、導電性を有し、ベース部材120の本体部121の周面に接続されている。接続導体180は、第1接合ユニット10のうちの駆動源30側に固定されている。接続導体180の一端が電源側導体41と接続されている。配線部材190は、板状部材170および接続導体180を電気的に接続する。配線部材190は、たとえば銅線によって構成されている。
【0061】
電源部40から供給される電流は、電源側導体41、接続導体180、配線部材190、板状部材170、ベース部材120および電極110の順に電流が流れて、被接合物2に電流が流れる。固相抵抗スポット接合装置1においては、被接合物2に対する加圧軸100および電極110の押圧によって、被接合物2a,2b同士が接触表面において密着することにより接触抵抗が低くなる。これにより、接触抵抗が低くなった接触表面が通電経路になって、当該通電経路に電流が流れる。
【0062】
なお、第1接合ユニット10において、1つの第2弾性部材152は必ずしも必要ではない。第1接合ユニット10に1つの第2弾性部材152を設けない場合、ガイド部材160はベース部材120にボルト締結などの公知の接続方法により固定される。
【0063】
以下、固相抵抗スポット接合装置1による被接合物2の固相抵抗スポット接合について説明する。図5は、本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置により被接合物が接合された直後の装置の状態を示す断面図である。
【0064】
固相抵抗スポット接合装置1の被接合物2の固相抵抗スポット接合の動きとしては、まず、図1図3に示すように、駆動源30が第1接合ユニット10を駆動させることによって、複数の被接合物2のうちの第1接合ユニット10の電極110側に位置する被接合物2aに電極110を当接させる。加圧軸100より前に電極110を被接合物2aに接触させて予圧をかけることにより、被接合物2の仮の位置決めをすることができる。また、複数の被接合物2のうちの被接合物2bには、第2接合ユニット20の電極110が当接する。
【0065】
次に、電極110から複数の被接合物2に電圧を印加する。被接合物2同士が密着して接触抵抗が低くなった接触表面が通電経路になって、当該通電経路に電流が流れる。これにより、複数の被接合物2が加熱されて、複数の被接合物2の間に軟化領域Rが形成される。
【0066】
次に、図4に示すように、複数の第1弾性部材151の各々の付勢力によって電極110を複数の被接合物2に押圧させつつ、加圧軸100を複数の被接合物2に押圧させる。
【0067】
具体的には、駆動源30が第1接合ユニット10をさらに駆動させることによって、加圧軸100により被接合物2同士の間の軟化領域Rを塑性変形させる。この際、電極110は、ベース部材120を介して弾性部材150によって付勢されているため、第1接合ユニット10において加圧軸100から独立して駆動し、弾性部材150の付勢力によって複数の被接合物2を押圧する。電極110の駆動によって、フランジ部123の第1凹部125と球体142との間には、Y方向において隙間があく。
【0068】
電極110から被接合物2に通電されつつ加圧軸100により押圧されることによって、被接合物2の軟化領域Rが塑性変形する。被接合物2は、軟化領域R以外の位置において被接合物2a,2b同士の間に隙間をあけつつ塑性変形する。軟化領域Rの塑性変形によって、軟化領域Rにおいて新生面が形成される。この新生面同士が当接することによって、被接合物2a,2b同士が固相抵抗スポット接合される。
【0069】
なお、加圧軸100および電極110が被接合物2に接触する順番は、限定されない。加圧軸100が電極110より前に被接合物2に接触してもよいし、加圧軸100と電極110とが同時に被接合物2に接触してもよい。
【0070】
図6は、本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置の第1接合ユニットにおける電極が傾斜した場合の構成を示す模式図である。
【0071】
図6に示すように、上述した固相抵抗スポット接合装置1による被接合物2の接合において、固相抵抗スポット接合装置1に対する被接合物2を位置決めする際の位置ずれ、または被接合物2の厚みのばらつきなどによって、被接合物2がXZ平面に対して傾斜して配置される場合がある。
【0072】
仮に、電極がエアシリンダなどによってY方向に駆動する場合、電極の先端の被接合物2と接触する面は、XZ平面に平行である。このため、被接合物2がXZ平面に対して傾斜して配置された場合に、電極の先端の被接合物2と接触する面は、被接合物2に対して片当たりするなどして不均一に接触する可能性がある。その結果、被接合物2a,2b同士の接触表面に電極から均一に押圧されないため、均一な通電経路が確保できず、軟化領域が確保されずに接合不良を引き起こす可能性がある。
【0073】
一方、図6に示すように、本実施の形態における電極110は、電極110側に位置する被接合物2aとの接触面に倣って当接するように姿勢を変更可能に支持されている。これにより、電極110を加圧軸100の軸方向(Y方向)に対して傾斜させることができるため、被接合物2が傾斜して配置される場合に、被接合物2に電極110を均一に接触させることができる。その結果、電極110と被接合物2との通電経路が確保されることにより、被接合物2に均一に軟化領域Rを形成することができるため、接合不良の発生を抑制することができる。
【0074】
また、仮に、電極が1つの弾性部材によって付勢される場合、1つの弾性部材は、主にY方向において弾性変形する。このため、被接合物2がXZ平面に対して傾斜して配置される場合に、被接合物2の傾斜に対応して電極を傾斜させにくい。
【0075】
一方、本実施の形態においては、複数の第1弾性部材151の各々が電極110側に位置する被接合物2aに接触した際の電極110の姿勢に応じて弾性変形している。これにより、被接合物2が傾斜した分だけ対応する位置に配置された複数の第1弾性部材151の各々がY方向に弾性変形するため、電極110およびベース部材120を傾斜させることができる。
【0076】
被接合物2が接合された後、第1接合ユニット10は、Y方向において被接合物2から離れる方向に駆動される。この際、1つの第2弾性部材152がガイド部材160を介して電極110およびベース部材120をY方向に付勢する。これにより、被接合物2の傾斜に合わせて電極110およびベース部材120がY方向に傾斜していた場合、電極110およびベース部材120の傾斜をXZ平面に対して元の平行状態に矯正することができる。
【0077】
本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置1においては、複数の第1弾性部材151を加圧軸100周りに配置して電極110を付勢することによって、被接合物2が傾斜して配置される場合に、複数の第1弾性部材151の各々が被接合物2の傾斜に合わせて弾性変形することができる。これにより、電極110を加圧軸100の軸方向(Y方向)に対して傾斜させることができるため、被接合物2が傾斜して配置される場合に、被接合物2に電極110を均一に接触させることができる。ひいては、電極110と被接合物2との通電経路が確保されることにより、被接合物2に均一に軟化領域Rを形成することができるため、接合不良の発生を抑制することができる。
【0078】
本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置1においては、ベース部材120を設けて、複数の第1弾性部材151をベース部材120のフランジ部123に当接させることによって、複数の第1弾性部材151を電極110に直接当接させる場合と比較して、広範囲に複数の第1弾性部材151を当接させることができるため、ベース部材120を介して複数の第1弾性部材151により安定的に電極110を付勢することができる。
【0079】
本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置1においては、ガイド部材160を設けることによって、複数の第1弾性部材151の位置ずれを抑制することができる。
【0080】
本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置1においては、1つの第2弾性部材152によって電極110を中央付近から付勢することによって、被接合物2の接合後に被接合物2から電極110を離間させる際、被接合物2に対応して傾斜した電極110を傾斜した状態から元の状態に矯正することができる。
【0081】
本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置1においては、ベース部材120と蓋部140との接触を線接触にすることによって、接触する部材の接触抵抗を減らすことができるため、被接合物2に対して電極110を傾斜させやすくすることができる。
【0082】
以下、本発明の一実施の形態の変形例に係る固相抵抗スポット接合装置について図を参照して説明する。本変形例に係る固相抵抗スポット接合装置は、第1接合ユニットの構成が本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置1と異なるため、本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置1と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0083】
図7は、本発明の一実施の形態の変形例に係る固相抵抗スポット接合装置の構成を示す断面図である。図7に示すように、本変形例に係る固相抵抗スポット接合装置1Aは、第1接合ユニット10Aと、第2接合ユニット20と、駆動源と、電源部とを備える。
【0084】
第1接合ユニット10Aおよび第2接合ユニット20は、複数の被接合物3を塑性変形可能に押圧し、かつ複数の被接合物3に電圧を印加するためのユニットである。
【0085】
固相抵抗スポット接合装置1Aにより接合される被接合物3は、凸部Cを有する被接合物3aと、平板状の被接合物3bとにより構成されている。
【0086】
本変形例における第1接合ユニット10Aは、加圧軸200と、ベース部材220とを有する。
【0087】
加圧軸200は、第2接合ユニット20における加圧軸100と比較して、Y方向に長い。
【0088】
ベース部材220は、第2接合ユニット20におけるベース部材120と比較して、Y方向に長い。具体的には、ベース部材220は、本体部221と、接続端部122と、フランジ部123とを有している。本体部221が、第2接合ユニット20におけるベース部材120の本体部121と比較して、Y方向に長い。
【0089】
第2接合ユニット20における板状部材170から加圧軸100およびベース部材120が被接合物3に向かって突出している長さと比較して、第1接合ユニット10Aにおける板状部材170から突出している加圧軸200およびベース部材220が被接合物3に突出している長さは長い。これにより、被接合物3aの凸部Cに第1接合ユニット10Aが接触することなく、加圧軸200および電極110を被接合物3に押圧させることができるため、被接合物3を固相抵抗スポット接合装置1Aにより接合することができる。
【0090】
加圧軸200およびベース部材220は、蓋部140および板状部材170などの他の構成を取り外すことによって、長さの異なる他の加圧軸およびベース部材に交換することができる。このため、種々のワーク形状に合わせて容易に第1接合ユニット10AのY方向の長さを変更することができる。
【0091】
本発明の一実施の形態の変形例に係る固相抵抗スポット接合装置1Aにおいては、被接合物3の形状に合わせて第1接合ユニット10Aにおける加圧軸200およびベース部材220のY方向における長さを第2接合ユニット20の加圧軸100およびベース部材120に対して長くすることによって、被接合物3の形状に合わせて第1接合ユニット10Aの長さを変更することができる。これにより、固相抵抗スポット接合装置1Aを種々の形状を有する被接合物に対応した構成にすることができる。
【0092】
なお、上述した実施の形態においては、1対の電極を一方向に配置し、1対の電極によって被接合物を挟持する、いわゆるダイレクト方式の接合方法について説明したが、本願発明はダイレクト方式に限定されない。本願発明は、インダイレクト方式あるいはシリーズ方式などの他の抵抗接合方式についても適用することができる。
【0093】
また、上述した実施の形態においては、定置式の固相抵抗スポット接合装置について説明したが、この構成に限定されない。本願発明は、たとえばロボットなどの先端に取り付けるガンタイプの接合装置においても適用することができる。
【0094】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではない。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。上述した実施の形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1,1A 固相抵抗スポット接合装置、2,2a,2b,3,3a,3b 被接合物、10,10A 第1接合ユニット、30 駆動源、100,200 加圧軸、110 電極、120,220 ベース部材、122 接続端部、123 フランジ部、125 第1凹部、130 ケース部材、140 蓋部、141 第2凹部、142 球体、151 第1弾性部材、152 第2弾性部材、160 ガイド部材、161 貫通孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7