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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008501
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】固相抵抗スポット接合装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B23K20/00 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110430
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高本 敬司
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA02
4E167AA05
4E167AA06
4E167AA29
4E167BB04
(57)【要約】
【課題】電極内を流れる電流の偏流を抑制する。
【解決手段】加圧軸100は、重ね合わされた複数の被接合物2を第1方向から塑性変形可能に押圧する。電極110は、加圧軸100の周りに配置され、複数の被接合物2に電圧を印加する。接続導体180は、第1方向において電極110より駆動源30寄りに位置し、第1方向に直交する第2方向に延在する。複数の配線部材190は、接続導体180と電極110とを電気的に接続するために設けられる。接続導体180は、基部181と、延出部182とを有する。基部181は、第1方向から見て、電極110を覆うように位置する。延出部182は、基部181の縁183の一部から第2方向に延出する。複数の配線部材190の各々は、第1端191と、第2端192とを有する。第1端191は、基部181における縁183の一部以外の位置に接続される。第2端192は、電極110側に位置する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
前記駆動源によって第1方向に駆動される接合ユニットとを備え、
前記接合ユニットは、
重ね合わされた複数の被接合物を前記第1方向から塑性変形可能に押圧する加圧軸と、
前記加圧軸の周りに配置され、前記複数の被接合物に電圧を印加する電極と、
前記第1方向において前記電極より駆動源寄りに位置し、前記第1方向に直交する第2方向に延在する接続導体と、
前記接続導体と前記電極とを電気的に接続するための複数の配線部材とを含み、
前記接続導体は、
前記第1方向から見て、前記電極を覆うように位置する基部と、
前記基部の縁の一部から前記第2方向に延出する延出部とを有し、
前記複数の配線部材の各々は、
前記基部における前記縁の一部以外の位置に接続される第1端と、
電極側に位置する第2端とを有する、固相抵抗スポット接合装置。
【請求項2】
前記複数の配線部材の各々は、前記第1方向から見て、前記第1端が前記基部の前記縁において互いに間隔をあけて等間隔に接続されている、請求項1に記載の固相抵抗スポット接合装置。
【請求項3】
前記第2端は、前記第1方向から見て、前記電極を中心として前記第1端と同じ回転角度で配置されている、請求項2に記載の固相抵抗スポット接合装置。
【請求項4】
前記接合ユニットは、
前記電極を前記複数の被接合物に向かって付勢する弾性部材と、
前記加圧軸の周りに位置して前記弾性部材を内部に収容するケース部材とをさらに含み、
前記第2端は、前記第1方向から見て、前記電極を中心として前記ケース部材より外側に位置している、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の固相抵抗スポット接合装置。
【請求項5】
前記接合ユニットは、
前記第1方向から見て、前記電極の外縁から外側に延在し、前記複数の配線部材の各々の前記第2端と接続される導電性を有する板状部材をさらに含み、
前記電極は、前記板状部材を介して前記複数の配線部材の各々と電気的に接続されており、
前記第2端と前記板状部材との接続箇所は、前記第1方向から見て、前記電極を中心として前記ケース部材より外側に位置している、請求項4に記載の固相抵抗スポット接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固相抵抗スポット接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固相抵抗スポット接合装置を開示した先行技術文献として、国際公開第2021/182444号(特許文献1)がある。特許文献1に記載された固相抵抗スポット接合装置は、中心加圧軸と、銅電極と、ブスバーとを備える。中心加圧軸は、接合温度における金属板材の降伏強度以上の外部応力を金属板材に印加する。銅電極は、円筒形状を有し、金属板材に電流を通電して金属板材を加熱する。ブスバーは、銅電極における円筒形状の全周に接続され、銅電極から中心加圧軸の軸方向に直交する一方向に延在している。銅電極には、電源からブスバーを通じて電流が流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/182444号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、電流は通電経路のうちの短い経路に多く流れる傾向がある。特許文献1に記載された固相抵抗スポット接合装置においては、銅電極のうちのブスバーが延在する側に近い部分が通電経路のうちの短い経路となるため、電流が当該経路に集中して流れる。これにより、電極内を流れる電流が偏流する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、電極内を流れる電流の偏流を抑制することができる、固相抵抗スポット接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく固相抵抗スポット接合装置は、駆動源と、接合ユニットとを備える。接合ユニットは、駆動源によって第1方向に駆動される。接合ユニットは、加圧軸と、電極と、接続導体と、複数の配線部材とを含む。加圧軸は、重ね合わされた複数の被接合物を第1方向から塑性変形可能に押圧する。電極は、加圧軸の周りに配置され、複数の被接合物に電圧を印加する。接続導体は、第1方向において電極より駆動源寄りに位置し、第1方向に直交する第2方向に延在する。複数の配線部材は、接続導体と電極とを電気的に接続するために設けられる。接続導体は、基部と、延出部とを有する。基部は、第1方向から見て、電極を覆うように位置する。延出部は、基部の縁の一部から第2方向に延出する。複数の配線部材の各々は、第1端と、第2端とを有する。第1端は、基部における縁の一部以外の位置に接続される。第2端は、電極側に位置する。
【0007】
この場合、電極へ流入する電流の通電経路の一部が接続導体における基部の縁に接続された複数の配線部材により構成され、複数の配線部材が基部のうちの延出部が接続された一部以外の縁に接続されている。これにより、接続導体における基部の延出部と接続された縁の一部と電極とを最短で接続する場合の通電経路から電流を迂回させて、接続導体から複数の配線部材を介して電極に電流を通電させることができるため、電極内を流れる電流の偏流を抑制することができる。
【0008】
本発明の一形態においては、複数の配線部材の各々は、第1方向から見て、第1端が基部の縁において互いに間隔をあけて等間隔に接続されている。
【0009】
この場合、接続導体と複数の配線部材との通電経路を第1方向の軸周りに等間隔で配置することによって、接続導体と複数の配線部材との接続における電流の偏流を抑制することができる。
【0010】
本発明の一形態においては、第2端は、第1方向から見て、電極を中心として第1端と同じ回転角度で配置されている。
【0011】
この場合、第1端と第2端との距離を短くすることができるため、複数の配線部材の経路を短くして通電効率をあげることができる。複数の配線部材から電極への電流の流入する箇所を等間隔で配置することによって、電極と複数の配線部材との接続における電流の偏流を抑制することができる。
【0012】
本発明の一形態においては、接合ユニットは、弾性部材と、ケース部材とをさらに含む。弾性部材は、電極を複数の被接合物に向かって付勢する。ケース部材は、加圧軸の周りに位置して弾性部材を内部に収容する。第2端は、第1方向から見て、電極を中心としてケース部材より外側に位置している。
【0013】
この場合、弾性部材による電極の駆動機構を収容するケース部材より配線部材を外側に配置することによって、複数の配線部材により電極の駆動動作が阻害されることを抑制することができる。
【0014】
本発明の一形態においては、接合ユニットは、導電性を有する板状部材をさらに含む。板状部材は、第1方向から見て、電極の外縁から外側に延在し、複数の配線部材の各々の第2端と接続される。電極は、板状部材を介して複数の配線部材の各々と電気的に接続されている。第2端と板状部材との接続箇所は、第1方向から見て、電極を中心としてケース部材より外側に位置している。
【0015】
この場合、弾性部材による電極の駆動機構を収容するケース部材より板状部材を幅広にすることによって、板状部材に接続された複数の配線部材をケース部材より外側に配置することができるため、複数の配線部材により電極の駆動動作が阻害されることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電極内を流れる電流の偏流を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置の構成を示す正面図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置の接合ユニット周辺の構成を示す断面図である。
図3図2におけるIII部を拡大して被接合物が接合される前の装置の状態を示す断面図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置の第1接合ユニットにおける接続導体および配線部材の構成を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置における電極への電流の通電経路を示す下面図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置により被接合物が接合された直後の装置の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置について図面を参照して説明する。以下の実施の形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0019】
なお、図面においては、加圧軸の軸方向に直交かつ接続導体の延在方向に平行な方向を第2方向としてのX方向とする。また、加圧軸の軸方向を第1方向としてのY方向とする。さらに、加圧軸の軸方向および接続導体の延在方向に直交する方向を第3方向としてのZ方向とする。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置の構成を示す正面図である。図2は、本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置の接合ユニット周辺の構成を示す断面図である。
【0021】
図1および図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置1は、重ね合わされた複数の被接合物2に電流を通電させることによって複数の被接合物2に軟化領域を形成させつつ、当該軟化領域を塑性変形させて複数の被接合物2同士を固相状態のまま接合する装置である。
【0022】
固相抵抗スポット接合装置1は、第1接合ユニット10と、第2接合ユニット20と、駆動源30と、電源部40とを備える。
【0023】
第1接合ユニット10は、複数の被接合物2を塑性変形可能に押圧し、かつ複数の被接合物2に電圧を印加するためのユニットである。第1接合ユニット10は、駆動源30によって第1方向(Y方向)に駆動される。第1接合ユニット10の構成については後述する。
【0024】
第2接合ユニット20は、第1接合ユニット10とともに複数の被接合物2を押圧し、かつ複数の被接合物2に電圧を印加するためのユニットである。第2接合ユニット20は、固相抵抗スポット接合装置1の筐体に固定されている。
【0025】
図2に示すように、本実施の形態における第2接合ユニット20は、第1接合ユニット10に対してXZ平面を基準として面対称に、第1接合ユニット10と同じ構成を有している。なお、第2接合ユニット20は、この構成に限定されず、たとえば後述する弾性部材150が設けられていない構成であってもよい。
【0026】
図1に示すように、駆動源30は、第1接合ユニット10をY方向に駆動させる。本実施の形態における駆動源30は、たとえば、サーボプレス機である。
【0027】
電源部40は、第1接合ユニット10および第2接合ユニット20に電圧を印加する。電源部40は、電源側導体41を有する。電源側導体41が第1接合ユニット10および第2接合ユニット20の各々に接続されている。
【0028】
固相抵抗スポット接合装置1により接合される被接合物2は、たとえばハイテン材などの鋼板である。なお、被接合物2は、鋼板に限定されず、アルミニウム板などであってもよいし、鋼板とアルミニウム板との異種材料であってもよい。
【0029】
以下、第1接合ユニット10について説明する。図3は、図2におけるIII部を拡大して被接合物が接合される前の装置の状態を示す断面図である。図4は、本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置の第1接合ユニットにおける接続導体および配線部材の構成を示す斜視図である。図5は、本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置における電極への電流の通電経路を示す下面図である。
【0030】
図2図5に示すように、本発明の一実施の形態における第1接合ユニット10は、加圧軸100と、電極110と、ベース部材120と、ケース部材130と、蓋部140と、球体142と、弾性部材150と、ガイド部材160と、板状部材170と、接続導体180と、複数の配線部材190とを含む。本実施の形態における弾性部材150は、複数の第1弾性部材151と、1つの第2弾性部材152とを有する。
【0031】
加圧軸100は、Y方向に延在する円柱部材である。加圧軸100の材質は、たとえばタングステンカーバイドである。ただし、加圧軸100の材質は、被接合物2に対して必要な押圧力を印加することができれば、特に限定されず、工具鋼、耐熱鋼またはセラミックスなどであってもよい。
【0032】
図3に示すように、加圧軸100は、先端101および後端102を有する。先端101は、複数の被接合物2のうちの第1接合ユニット側に位置する被接合物2aと接触する部分である。後端102は、加圧軸100を支持するホルダ103に接続されている。後端102は、テーパ形状を有し、ホルダ103の内周面に係合している。
【0033】
加圧軸100は、重ね合わされた複数の被接合物2を第1方向(Y方向)から塑性変形可能に押圧する。具体的には、本実施の形態の加圧軸100は、駆動源30の駆動によって30~50kNの押圧力により複数の被接合物2を押圧する。
【0034】
電極110は、加圧軸100とともに駆動源30によって駆動される。電極110は、加圧軸100に隙間をあけつつ加圧軸100の周りに配置されている。本実施の形態における電極110の先端111は、Y方向から見て、円筒形状を有している。
【0035】
電極110は、導電性を有している。電極110は、たとえば銅により構成されている。電極110は、複数の被接合物2に電圧を印加する。電極110は、複数の被接合物2への電圧の印加によって、複数の被接合物2に3500~10000Aの電流を通電させて複数の被接合物2を加熱する。
【0036】
ベース部材120は、導電性を有し、第1方向(Y方向)に延在している。ベース部材120は、たとえば銅により構成されている。ベース部材120は、加圧軸100に隙間をあけつつ加圧軸100の周りに配置されている。
【0037】
ベース部材120は、本体部121と、接続端部122と、フランジ部123とを有している。本体部121は、ベース部材120のうちのY方向に延在する円筒部分である。
【0038】
接続端部122は、本体部121のY方向の被接合物2側に位置している。接続端部122は、加圧軸100を囲むように隙間をあけつつ第1方向(Y方向)に延在している。接続端部122は、電極110と接続されている。
【0039】
フランジ部123は、本体部121における接続端部122が配置される側とは反対側の端部からXZ平面上に延在している。フランジ部123は、第1方向(Y方向)において複数の第1弾性部材151と並んでいる。
【0040】
フランジ部123は、接触面124を有している。フランジ部123は、接触面124において複数の第1弾性部材151と接触している。
【0041】
フランジ部123の蓋部140側には、第1凹部125が設けられている。本実施の形態に係る第1凹部125は、円錐面形状を有している。なお、第1凹部125は円錐面形状に限定されず、曲面であってもよい。
【0042】
電極110は、電極110およびベース部材120の各々の加圧軸100に対する隙間によって、第1方向(Y方向)に対して傾斜可能な範囲が規定されている。このため、電極110およびベース部材120は、XZ平面に延在する被接合物2がXZ平面に対して傾斜した場合、電極110が被接合物2に接触しつつY方向に対して傾斜することができる。
【0043】
ケース部材130は、加圧軸100の周りに位置して複数の第1弾性部材151および1つの第2弾性部材152を内部に収容している。ケース部材130は、たとえば絶縁材料によって構成されている。
【0044】
ケース部材130には、第1方向(Y方向)に沿って延在する溝部131が設けられている。溝部131に、複数の第1弾性部材151が収容されている。ケース部材130は、第1方向(Y方向)において電極110とは反対側から弾性部材150と当接している。
【0045】
蓋部140は、球体142を介してフランジ部123を支持する部材である。蓋部140は、フランジ部123に対向しつつ、ケース部材130の電極110側の端に接続されている。蓋部140は、たとえば鋼により構成されている。
【0046】
蓋部140のフランジ部123側には第2凹部141が設けられている。本実施の形態に係る第2凹部141は、円錐面形状を有している。なお、第2凹部141は円錐面形状に限定されず、曲面であってもよい。
【0047】
球体142は、蓋部140とフランジ部123との間に配置されている。球体142は、たとえば鋼球である。球体142は、複数の第1弾性部材151の各々に対応するように、Y方向に複数の第1弾性部材151に並んで複数配置されている。
【0048】
球体142は、第1凹部125および第2凹部141の各々に線接触可能である。これにより、フランジ部123と球体142との接触抵抗を減らすことができるため、電極110およびベース部材120がY方向に傾斜しやすい。また、球体142の線接触によって、電極110への通電による熱をフランジ部123から蓋部140へ伝熱させにくくすることができるため、第1接合ユニット10の耐熱性を向上させることができる。
【0049】
弾性部材150は、電極110を複数の被接合物2に向かって付勢する。本実施の形態においては、電極110は、弾性部材150の付勢によって、たとえば1~2kNの押圧力により複数の被接合物2を押圧する。
【0050】
弾性部材150における複数の第1弾性部材151は、加圧軸100の周りに互いに間隔をあけて配置され、電極110を複数の被接合物2に向かって付勢する。具体的には、複数の第1弾性部材151は、ベース部材120のフランジ部123の接触面124に当接し、ベース部材120を介して電極110を付勢している。
【0051】
複数の第1弾性部材151の各々は、弾性体153と、台座部154とを有する。本実施の形態における弾性体153は、たとえば、ばねである。なお、弾性体153は、ばねに限定されず、ゴムなどの他の弾性体であってもよい。
【0052】
台座部154は、弾性体153のベース部材120側の端部に配置されている。本実施の形態における台座部154は、たとえば、ばね受けである。
【0053】
1つの第2弾性部材152は、加圧軸100の周りにおける複数の第1弾性部材151の内側に配置されている。1つの第2弾性部材152は、たとえば、ばねである。なお、第2弾性部材152は、ばねに限定されず、ゴムなどの他の弾性体であってもよい。
【0054】
1つの第2弾性部材152は、ガイド部材160を介して電極110を複数の被接合物2に向かって付勢する。1つの第2弾性部材152は、ベース部材120がXZ平面に対して傾斜して接合した後、被接合物2から第1接合ユニット10を離間させる際に、XZ平面上にベース部材120の傾斜を矯正させる役割を有している。
【0055】
ガイド部材160は、加圧軸100に隙間をあけつつ加圧軸100の周りに配置されている。ガイド部材160には、第1方向(Y方向)に貫通している複数の貫通孔161が設けられている。複数の貫通孔161の各々には、複数の第1弾性部材151のうちの対応する第1弾性部材151が挿通している。これにより、ガイド部材160は、複数の第1弾性部材151の各々を支持する。
【0056】
板状部材170は、導電性を有し、第1方向(Y方向)から見て、電極110の外縁から外側に延在している。本実施の形態における板状部材170は、ベース部材120の本体部121の周面に接続されている。
【0057】
板状部材170の内部には、冷却水が流れる流路171が設けられている。流路171を流れる冷却水によって、電極110および板状部材170を冷却することができる。なお、板状部材170には、流路171が設けられていなくてもよい。
【0058】
接続導体180は、第1方向(Y方向)において電極110より駆動源30寄りに位置し、第1方向(Y方向)に直交する第2方向(X方向)に延在している。
【0059】
図4および図5に示すように、本実施の形態における接続導体180は、基部181と、延出部182とを有している。
【0060】
基部181は、第1方向(Y方向)から見て、電極110を覆うように位置している。本実施の形態における基部181は、Y方向から見て、電極110および板状部材170を覆うように位置している。基部181は、Y方向から見て、八角形状の縁183を有している。
【0061】
延出部182は、基部181の縁183の一部から第2方向(X方向)に延出している。本実施の形態においては、基部181の八角形状の縁183においてその1辺に仮想境界184が規定され、延出部182が仮想境界184からX方向に延出している。なお、延出部182の延出する方向はX方向に限定されず、XZ平面上においてX方向以外の一方向に延在していてもよい。
【0062】
延出部182は、X方向に延在する基部181に接続される側とは反対側の端部において電源側導体41に接続されている。これにより、電源部40から接続導体180へ通電可能である。
【0063】
基部181は、Z方向の幅が延出部182の幅より広い。これにより、延出部182から基部181に流入した電流Iが、基部181の内部で集中して偏流することが抑制される。
【0064】
複数の配線部材190は、接続導体180と電極110とを電気的に接続するために設けられている。本実施の形態においては、複数の配線部材190の各々は、板状部材170およびベース部材120を介して電極110と電気的に接続されている。配線部材190は、たとえば銅線によって構成されている。
【0065】
複数の配線部材190は、第1配線部材190a、第2配線部材190b、第3配線部材190cおよび第4配線部材190dを有している。なお、複数の配線部材190の数量は、4つに限定されず、電極110内での偏流を抑制するために、少なくとも3つ以上の配線部材から構成されることが望ましい。
【0066】
複数の配線部材190の各々は、第1端191と、第2端192とを有している。第1端191は、基部181における延出部182が接続される縁183の一部以外の位置に接続されている。
【0067】
第2端192は、電極110側に位置している。複数の配線部材190の各々の第2端192は、板状部材170と接続されている。
【0068】
複数の配線部材190の各々は、第1方向(Y方向)から見て、第1端191が基部181の縁183において互いに間隔をあけて等間隔に接続されている。
【0069】
第2端192は、第1方向(Y方向)から見て、電極110を中心として第1端191と同じ回転角度で配置されている。第2端192は、第1方向(Y方向)から見て、電極11を中心としてケース部材130より外側に位置している。具体的には、第2端192と板状部材170との接続箇所は、第1方向(Y方向)から見て、電極110を中心としてケース部材130より外側に位置している。
【0070】
電源部40から供給される電流Iは、電源側導体41、接続導体180、複数の配線部材190、板状部材170、ベース部材120および電極110の順に電流が流れる。
【0071】
一般に、電流Iは通電経路のうちの短い経路に多く流れる傾向がある。仮に、基部181における縁183の全周と板状部材170の全周とが配線部材によって接続されている場合、仮想境界184に接続された配線部材が通電経路のうちの短い経路を構成する。この場合、電流Iは、基部181の縁183のうちの仮想境界184から板状部材170へ流れる。このため、仮想境界184から近い側から電極110へ電流Iが流れることにより、電極110内を電流Iが偏流する可能性がある。
【0072】
一方、本実施の形態においては、複数の配線部材190によって電流Iが分岐して流れる。具体的には、複数の配線部材190に流入した電流Iが分岐して、第1配線部材190aにおいて電流Iaが流れ、第2配線部材190bにおいて電流Ibが流れ、第3配線部材190cにおいて電流Icが流れ、第4配線部材190dにおいて電流Idが流れる。これにより、接続導体180における基部181の延出部182と接続された縁183の一部と電極110とを最短で接続する場合の通電経路から電流Iを迂回させて、接続導体180から複数の配線部材190を介して電極110に電流Iを通電させることができる。その結果、電極110内を流れる電流Iの偏流を抑制することができる。
【0073】
固相抵抗スポット接合装置1においては、被接合物2に対する加圧軸100および電極110の押圧によって、被接合物2a,2b同士が接触表面において密着することにより接触抵抗が低くなる。これにより、電極110に流入した電流Iは、電極110から接触抵抗が低くなった接触表面に流れる。
【0074】
以下、固相抵抗スポット接合装置1による被接合物2の固相抵抗スポット接合について説明する。図6は、本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置により被接合物が接合された直後の装置の状態を示す断面図である。
【0075】
固相抵抗スポット接合装置1の被接合物2の固相抵抗スポット接合の動作としては、まず、図1図3に示すように、駆動源30が第1接合ユニット10を駆動させることによって、複数の被接合物2のうちの第1接合ユニット10の電極110側に位置する被接合物2aに電極110を当接させる。
【0076】
次に、電極110から複数の被接合物2に電圧を印加する。被接合物2同士が密着して接触抵抗が低くなった接触表面が通電経路になって、当該通電経路に電流Iが流れる。これにより、複数の被接合物2が加熱されて、複数の被接合物2の間に軟化領域Rが形成される。
【0077】
次に、図6に示すように、弾性部材150の付勢力によって電極110を複数の被接合物2に押圧させつつ、加圧軸100を複数の被接合物2に押圧させる。
【0078】
具体的には、駆動源30が第1接合ユニット10をさらに駆動させることによって、加圧軸100により被接合物2同士の間の軟化領域Rを塑性変形させる。この際、電極110は、ベース部材120を介して弾性部材150によって付勢されているため、第1接合ユニット10において加圧軸100から独立して駆動し、弾性部材150の付勢力によって複数の被接合物2を押圧する。電極110の駆動によって、フランジ部123の第1凹部125と球体142との間には、Y方向において隙間があく。
【0079】
電極110から被接合物2に通電されつつ加圧軸100により押圧されることによって、被接合物2の軟化領域Rが塑性変形する。被接合物2は、軟化領域R以外の位置において被接合物2a,2b同士の間に隙間をあけつつ塑性変形する。軟化領域Rの塑性変形によって、軟化領域Rにおいて新生面が形成される。この新生面同士が当接することによって、被接合物2a,2b同士が固相抵抗スポット接合される。
【0080】
なお、加圧軸100および電極110が被接合物2aに接触する順番は、限定されない。加圧軸100が電極110より前に被接合物2aに接触してもよいし、加圧軸100と電極110とが同時に被接合物2aに接触してもよい。
【0081】
本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置1においては、電極110へ流入する電流Iの通電経路の一部が接続導体180における基部181の縁に接続された複数の配線部材190により構成され、複数の配線部材190が基部181のうちの延出部182が接続された一部以外の縁183に接続されている。これにより、接続導体180における基部181の延出部182と接続された縁183の一部と電極110とを最短で接続する場合の通電経路から電流Iを迂回させて、接続導体180から複数の配線部材190を介して電極110に電流Iを通電させることができるため、電極110内を流れる電流Iの偏流を抑制することができる。
【0082】
本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置1においては、接続導体180と複数の配線部材190との通電経路を第1方向(Y方向)の軸周りに等間隔で配置することによって、接続導体180と複数の配線部材190との接続における電流Iの偏流を抑制することができる。
【0083】
本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置1においては、第1端191と第2端192との距離を短くすることができるため、複数の配線部材190の経路を短くして通電効率をあげることができる。複数の配線部材190から電極110への電流Iの流入する箇所を等間隔で配置することによって、電極110と複数の配線部材190との接続における電流Iの偏流を抑制することができる。
【0084】
本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置1においては、弾性部材150による電極110の駆動機構を収容するケース部材130より配線部材190を外側に配置することによって、複数の配線部材190により電極110の駆動動作が阻害されることを抑制することができる。具体的には、弾性部材150による電極110の駆動機構を収容するケース部材130より板状部材170を幅広にすることによって、板状部材170に接続された複数の配線部材190をケース部材130より外側に配置することができるため、複数の配線部材190により電極110の駆動動作が阻害されることを抑制することができる。
【0085】
本発明の一実施の形態に係る固相抵抗スポット接合装置1においては、板状部材170に冷却水が流れる流路171を設けることによって、板状部材170を冷却水により冷却することができるため、通電により発熱する電極110および板状部材170の温度上昇を抑制することができる。
【0086】
なお、本実施の形態においては、1対の電極を一方向に配置し、1対の電極によって被接合物を挟持する、いわゆるダイレクト方式の接合方法について説明したが、本願発明はダイレクト方式に限定されない。本願発明は、インダイレクト方式あるいはシリーズ方式などの他の抵抗接合方式についても適用することができる。
【0087】
また、本実施の形態においては、据え置き型の固相抵抗スポット接合装置について説明したが、この構成に限定されない。本願発明は、ガンタイプの接合装置においても適用することができる。
【0088】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではない。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。上述した実施の形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 固相抵抗スポット接合装置、2,2a,2b 被接合物、10 第1接合ユニット、30 駆動源、100 加圧軸、110 電極、130 ケース部材、150 弾性部材、170 板状部材、171 流路、180 接続導体、181 基部、182 延出部、183 縁、190 複数の配線部材、191 第1端、192 第2端、I,Ia,Ib,Ic,Id 電流。
図1
図2
図3
図4
図5
図6