(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085013
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】車両制御装置及び車両制御方法
(51)【国際特許分類】
F02D 29/06 20060101AFI20240619BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240619BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20240619BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240619BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240619BHJP
B60W 20/19 20160101ALI20240619BHJP
【FI】
F02D29/06 D
B60L15/20 J
B60K6/485 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W20/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199306
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大林 恒介
(72)【発明者】
【氏名】房▲崎▼ 晃士
【テーマコード(参考)】
3D202
3G093
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA09
3D202BB01
3D202BB11
3D202CC03
3D202DD01
3D202DD05
3G093AA02
3G093AA07
3G093BA15
3G093CA05
3G093CB05
3G093CB06
3G093DA01
3G093DA06
3G093DA14
3G093DB05
3G093DB11
3G093DB19
3G093DB20
3G093DB21
3G093EA02
3G093EA03
3G093EA05
3G093EA13
3G093EB01
5H125AA01
5H125AB03
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA01
5H125CA10
5H125CD02
5H125DD01
5H125EE42
5H125EE52
(57)【要約】
【課題】状況に応じて適切な運転フィーリングを実現しながらブースト要求を満たす。
【解決手段】処理回路は、ブースト要求が発生していないときに、通常規則に従って、加速要求量に応じた原動機の目標トルクを通常トルクとして決定することと、第1条件下で前記ブースト要求が発生すると、第1ブースト規則に従って、前記通常トルクに第1追加トルクを加えてなる第1ブーストトルクを前記原動機の目標トルクとして決定することと、前記第1条件とは異なる第2条件下で前記ブースト要求が発生すると、前記第1ブースト規則とは異なる第2ブースト規則に従って、前記通常トルクに第2追加トルクを加えてなる第2ブーストトルクを目標トルクとして決定することと、を行うように構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪と、運転者の加速要求量を検出するアクセル開度センサと、前記アクセル開度センサが検出する前記加速要求量に応じて前記駆動輪に伝達するためのトルクを発生する原動機と、を備えた車両を制御する装置であって、
前記原動機を制御する処理回路を備え、前記処理回路は、
ブースト要求が発生していないときに、通常規則に従って、前記加速要求量に応じた前記原動機の目標トルクを通常トルクとして決定することと、
第1条件下で前記ブースト要求が発生すると、第1ブースト規則に従って、前記通常トルクに第1追加トルクを加えてなる第1ブーストトルクを前記原動機の目標トルクとして決定することと、
前記第1条件とは異なる第2条件下で前記ブースト要求が発生すると、前記第1ブースト規則とは異なる第2ブースト規則に従って、前記通常トルクに第2追加トルクを加えてなる第2ブーストトルクを目標トルクとして決定することと、
を行うように構成されている、車両制御装置。
【請求項2】
前記第1条件は、前記車両が停車状態であると判定されたとの条件を含み、
前記第2条件は、前記車両が所定の走行状態であると判定されたとの条件を含む、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記第1条件は、前記加速要求量が第1加速要求閾値以下であると判定されたとの条件、及び、車速が第1車速閾値以下であると判定されたとの条件、の少なくとも1つを含み、
前記第2条件は、前記第1加速要求閾値以上に設定される第2加速要求閾値よりも前記加速要求量が大きいとの条件、又は、前記第1車速閾値以上に設定される第2車速閾値よりも車速が大きいとの条件、の少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記第1追加トルクは、前記加速要求量の増加に伴って増加するように設定されている、請求項1又は2に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記第1ブースト規則及び前記第2ブースト規則は、前記加速要求量の単位増加あたりの前記第1ブーストトルクの増加量が、前記加速要求量の単位増加あたりの前記第2ブーストトルクの増加量よりも大きくなるように設定されている、請求項4に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記第1ブースト規則及び前記第2ブースト規則は、前記第2条件下での前記ブースト要求の発生時点における前記第2追加トルクが、前記第1条件下での前記ブースト要求の発生時点における前記第1追加トルクよりも大きくなるように設定されている、請求項1又は2に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記第1条件は、前記車両が停車状態であると判定されたとの条件を含み、
前記処理回路は、前記第1条件下で前記ブースト要求が発生すると、報知器にブースト制御待機中を示す報知を出力させるように構成されている、請求項1又は2に記載の車両制御装置。
【請求項8】
駆動輪と、運転者の加速要求量を検出するアクセル開度センサと、前記アクセル開度センサが検出する前記加速要求量に応じて前記駆動輪に伝達するためのトルクを発生する原動機と、ディスプレイと、を備えた車両を制御する装置であって、
前記原動機を制御する処理回路を備え、前記処理回路は、
ブースト要求が発生していないときに、通常規則に従って、前記加速要求量に応じた前記原動機の目標トルクを通常トルクとして決定することと、
前記車両が停止状態であると判定されたとの条件下で前記ブースト要求が発生すると、報知器にブースト制御待機中を示す報知を出力させることと、
前記報知器が前記報知を出力する状態で前記車両が走行開始したと判定されると、ブースト規則に従って前記通常トルクに追加トルクを加えてなるブーストトルクを目標トルクとして決定させることと、
を行うように構成されている、車両制御装置。
【請求項9】
駆動輪と、運転者の加速要求量を検出するアクセル開度センサと、前記アクセル開度センサが検出する前記加速要求量に応じて前記駆動輪に伝達するためのトルクを発生する原動機と、を備えた車両を制御する方法であって、
ブースト要求が発生していないときに、通常規則に従って、前記加速要求量に応じた前記原動機の目標トルクを通常トルクとして決定することと、
第1条件下で前記ブースト要求が発生すると、第1ブースト規則に従って、前記通常トルクよりも大きい第1ブーストトルクを目標トルクとして決定することと、
前記第1条件とは異なる第2条件下で前記ブースト要求が発生すると、前記第1ブースト規則とは異なる第2ブースト規則に従って、前記通常トルクよりも大きく、第1ブーストトルクとは異なる第2ブーストトルクを目標トルクとして決定することと、を含む、車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御装置及び車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動車両において、モータの最大電流値を超える電流を当該モータに所定時間通電するブースト制御が開示されている。このブースト制御では、アクセル開度に対応したモータへの電流指令値に対し、加速状態に対応したブースト電流を付加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ブースト制御によってモータから出力されるブーストトルクは、状況によっては運転フィーリングを悪くしてしまう可能性がある。他方、運転フィーリングを優先してブースト制御を許可する機会を制限し過ぎると、運転者の要求に十分に応えられなくなる。
【0005】
そこで本開示の一態様は、状況に応じて適切な運転フィーリングを実現しながらブースト要求を満たすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車両制御装置は、駆動輪と、運転者の加速要求量を検出するアクセル開度センサと、前記アクセル開度センサが検出する前記加速要求量に応じて前記駆動輪に伝達するためのトルクを発生する原動機と、を備えた車両を制御する装置であって、前記原動機を制御する処理回路を備え、前記処理回路は、ブースト要求が発生していないときに、通常規則に従って、前記加速要求量に応じた前記原動機の目標トルクを通常トルクとして決定することと、第1条件下で前記ブースト要求が発生すると、第1ブースト規則に従って、前記通常トルクに第1追加トルクを加えてなる第1ブーストトルクを前記原動機の目標トルクとして決定することと、前記第1条件とは異なる第2条件下で前記ブースト要求が発生すると、前記第1ブースト規則とは異なる第2ブースト規則に従って、前記通常トルクに第2追加トルクを加えてなる第2ブーストトルクを目標トルクとして決定することと、を行うように構成されている。
【0007】
本開示の他態様に係る車両制御装置は、駆動輪と、運転者の加速要求量を検出するアクセル開度センサと、前記アクセル開度センサが検出する前記加速要求量に応じて前記駆動輪に伝達するためのトルクを発生する原動機と、ディスプレイと、を備えた車両を制御する装置であって、前記原動機を制御する処理回路を備え、前記処理回路は、ブースト要求が発生していないときに、通常規則に従って、前記加速要求量に応じた前記原動機の目標トルクを通常トルクとして決定することと、前記車両が停止中と判定されたとの条件下で前記ブースト要求が発生すると、報知器にブースト制御待機中を示す報知を出力させることと、前記報知器が前記報知を出力する状態で前記車両が走行開始したと判定されると、ブースト規則に従って前記通常トルクに追加トルクを加えてなるブーストトルクを目標トルクとして決定させることと、を行うように構成されている。
【0008】
本開示の一態様に係る車両制御方法は、駆動輪と、運転者の加速要求量を検出するアクセル開度センサと、前記アクセル開度センサが検出する前記加速要求量に応じて前記駆動輪に伝達するためのトルクを発生する原動機と、を備えた車両を制御する方法であって、ブースト要求が発生していないときに、通常規則に従って、前記加速要求量に応じた前記原動機の目標トルクを通常トルクとして決定することと、第1条件下で前記ブースト要求が発生すると、第1ブースト規則に従って、前記通常トルクよりも大きい第1ブーストトルクを目標トルクとして決定することと、前記第1条件とは異なる第2条件下で前記ブースト要求が発生すると、前記第1ブースト規則とは異なる第2ブースト規則に従って、前記通常トルクよりも大きく、第1ブーストトルクとは異なる第2ブーストトルクを目標トルクとして決定することと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、ブースト要求が発生したときの状況に応じてブーストトルクを変えることができる。よって、状況に応じて適切な運転フィーリングを実現しながらブースト要求を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る自動二輪車の側面図である。
【
図3】
図3は、
図1の自動二輪車のハンドル及びメータの運転者から見た図である。
【
図4】
図4は、
図1の自動二輪車の制御系統のブロック図である。
【
図5】
図5は、各制御マップを説明するグラフである。
【
図6】
図6は、
図4の車両制御装置の制御を説明するフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図6の第1ブースト制御に関する車速と時間との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、
図6の第2ブースト制御に関する車速と時間との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、
図5の各制御マップの第1変形例を説明するグラフである。
【0011】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、自動二輪車1に乗車した運転者から見た方向を基準とする。即ち、車長方向を前後方向とし、車幅方向を左右方向とする。
【0012】
図1は、実施形態に係る自動二輪車1の側面図である。
図1に示すように、自動二輪車1は、運転者が跨って乗る鞍乗車両の一例である。自動二輪車1は、ハイブリッド車両であるが、走行駆動源を電気モータのみとした電動車両であってもよいし、走行駆動源を内燃エンジンのみとしたエンジン車両でもよい。なお、車両は、自動二輪車に限られず、例えば、電気自転車、自動三輪車や自動四輪車等であってもよい。
【0013】
自動二輪車1は、従動輪である前輪2と、駆動輪である後輪3と、前輪2及び後輪3に支持される車体フレーム4と、を備える。車体フレーム4は、ヘッドパイプ4aと、ヘッドパイプ4aから後方に延びたメインフレーム4bとを有する。ヘッドパイプ4aには、操舵軸5が回動自在に挿通されている。操舵軸5には、運転者が両手で握るバー状のハンドル6が設けられている。ハンドル6の近傍には、ディスプレイ7が設けられている。ハンドル6の後側には、燃料タンク8が設けられる。燃料タンク8の後側には、運転者が着座するシート9が設けられる。車体フレーム4には、前輪2と後輪3と間において原動機アッセンブリ10が搭載されている。
【0014】
原動機アッセンブリ10は、原動機として、内燃エンジンE及び電気モータMを備える。自動二輪車1は、電気モータMに供給する電力を蓄えるバッテリ11と、内燃エンジンE及び電気モータMを制御する車両制御装置12と、を備える。電気モータMは、バッテリ11が放電する電力によって駆動力を発生する一方、外部から駆動力が与えられることで発電する。内燃エンジンEの後側には、内燃エンジンE及び電気モータMから出力される動力を変速する変速機14が配置されている。変速機14から出力される動力は、チェーン又はベルトのような出力伝達構造15を介して後輪3に伝達される。車体フレーム4には、後輪3を支持して前後方向に延びるスイングアーム16が角変位可能に支持されている。
【0015】
図2は、
図1の自動二輪車1の動力系統の模式図である。
図2に示すように、内燃エンジンEには、スロットルT、燃料インジェクタF及び点火プラグPが設けられている。スロットルTは、内燃エンジンEの吸気量を調節する弁である。燃料インジェクタFは、燃料タンク8に貯留された燃料を内燃エンジンEの吸気通路に噴射する。点火プラグPは、内燃エンジンEの燃焼室の混合気に点火する。電気モータMにはバッテリ11が電気的に接続されている。電気モータMは、インバータ13を内蔵しているが、インバータ13は電動モータMの外部に設けられてもよい。
【0016】
車両制御装置12は、複数のセンサ21~30からの情報に基づいて内燃エンジンE、電気モータMを制御する。車両制御装置12は、電気モータMに供給する電流を増加させることで、電気モータMから出力させるトルクを増加させることができる。車両制御装置12は、スロットルTを制御して吸気量を増加させることで、内燃エンジンEから出力させるトルクを増加させることができる。この場合、車両制御装置12は、空燃比を維持するために、吸気量の増加に伴って燃料噴射量を増加させるように燃料インジェクタFを制御する。
【0017】
変速機14は、入力軸14aと、出力軸14bと、減速比の異なる複数組のギヤ列14cとを有する。変速機14では、複数組のギヤ列14cを介して入力軸14aから出力軸14bに動力を伝達する。その伝達される動力は、複数組のギヤ列14cのうち任意の1組が選択されることで変速される。内燃エンジンEのクランク軸Eaの一端部は、プライマリギヤ17に接続されている。クランク軸Eaの他端部は、インテグレーテッド・スタータジェネレータ18に接続されている。クランク軸Eaは、プライマリギヤ17を介してメインクラッチ19に接続されている。メインクラッチ19は、入力軸14aに接続されている。即ち、クランク軸Eaは、プライマリギヤ17及びメインクラッチ19を介して入力軸14aに動力を伝達する。
【0018】
電動モータMの駆動軸は、チェーン、ベルト又はギヤのような動力伝達構造20を介して入力軸14aに接続されている。内燃エンジンE及び電気モータMは、並列的に変速機14の入力軸14aに接続されており、後輪3は、内燃エンジンE及び電気モータMの少なくとも一方の駆動力によって駆動される。即ち、自動二輪車1は、パラレルハイブリッド車両である。
【0019】
図3は、
図1の自動二輪車1のハンドル6及びディスプレイ7の運転者から見た図である。
図3に示すように、ハンドル6は、バーハンドルである。ハンドル6は、運転者が右手で把持する右グリップ6aと、運転者が左手で把持する左グリップ6bとを有する。右グリップ6aは、アクセルグリップであり、運転者の手首の捻りによって回動する。ハンドル6は、右グリップ6aの左右方向中央側に隣接した右ベース6cと、左グリップ6bの左右方向中央側に隣接した左ベース6dとを有する。
【0020】
右ベース6c又は左ベース6dには、運転者がブースト指令を入力するためのブーストスイッチ21が設けられている。ブーストスイッチ21は、アクセル操作部材である右グリップ6aとは別にハンドル6に設けられている。ブーストスイッチ21は、OFF位置とON位置との間で動作可能でOFF位置に向けて付勢されている。例えば、ブーストスイッチ21は、押ボタンスイッチであり、OFF位置である押上位置と、ON位置である押下位置との間で動作可能で押上位置に向けてバネで付勢されている。ブーストスイッチ21は、一回操作するとON位置に保持され、もう一度操作するとOFF位置に戻るように構成された公知の押ボタンスイッチでもよい。
【0021】
左右方向における右グリップ6aと左グリップ6bとの間には、ディスプレイ7が配置されている。ディスプレイ7は、液晶表示装置、有機EL表示装置、プロジェクタ、又は、LEDのような表示装置とし得る。ディスプレイ7は、ハンドル6近傍に設置されるものの代わりに、ヘッドマウントディスプレイ、又は、VRディスプレイとしてもよい。
【0022】
ディスプレイ7の表示は、通常制御実行中を示す表示態様と、ブースト制御実行中を示す表示態様と、ブースト制御待機中を示す表示態様と、を互いに異ならせる。即ち、ディスプレイ7は、ブースト制御の状態を運転者に報知する報知器の役目を果たす。例えば、ディスプレイ7は、所定のマークであるブースト表示Bを表示可能な画面7aを有する。ブースト表示Bは、消灯、点灯及び点滅を含む表示態様を提示可能となっている。本実施形態では、ブースト表示Bの消灯は、通常制御実行中を示す。ブースト表示Bの点灯は、ブースト制御実行中を示す。ブースト表示Bの点滅は、ブースト制御待機中を示す。
【0023】
図4は、
図1の自動二輪車1の制御系統のブロック図である。
図4に示すように、車両制御装置12の入力側には、ブーストスイッチ21、アクセル開度センサ22、車速センサ23、エンジン回転数センサ24、変速比センサ25、ジャイロセンサ26、衛星測位センサ27、温度センサ28、バッテリ残量センサ29、及び、モード選択スイッチ30が接続されている。車両制御装置12の出力側には、内燃エンジンE及び電動モータMが接続されている。なお、ブーストスイッチ21以外のセンサ及びスイッチは、それぞれ任意であり、特に限定されるものではない。
【0024】
ブーストスイッチ21は、運転者によってON-OFF操作可能なものであり、運転者によってON操作されるとブースト要求を車両制御装置12に入力する。アクセル開度センサ22は、右グリップ6aのアクセル操作量であるアクセル開度を検出する。アクセル開度は、全閉のアクセル開度を0%とし且つ全開のアクセル開度を100%としたときの開き割合の値である。アクセル開度は、運転者の加速要求量を意味する。運転者は、アクセル操作量を大きくすることで加速要求量を増やす入力を行う。アクセル開度センサ22は、アクセル操作量に応じて変化する信号を車両制御装置12に入力する。車速センサ23は、自動二輪車1の走行速度を検出する。例えば、車速センサ23は、前輪2の回転数を検出するセンサとし得る。エンジン回転数センサ24は、内燃エンジンEのクランク軸Eaの回転数を検出する。変速比センサ25は、変速機14の変速比を検出する。例えば、変速比センサ25は、変速機14のシフトドラムの位相角を検出するセンサとし得る。
【0025】
ジャイロセンサ26は、自動二輪車1の角速度を検出する。衛星測位センサ27は、GPSのような衛星測位システムと通信して自動二輪車1の位置を検出する。温度センサ28は、電気モータM又はバッテリ11の温度を検出する。バッテリ残量センサ29は、バッテリ11の残量を検出する。モード選択スイッチ30は、運転者によって複数の走行モードから1つを選択操作可能なものであり、運転者によって選択操作されると選択された走行モードでの走行を要求する指令を車両制御装置12に入力する。前記複数の走行モードは、例えば、内燃エンジンEを使わずに電気モータMの駆動力のみで走行するEVモードと、内燃エンジンE及び電気モータMの両方の駆動力で走行するHEVモードと、含み得る。
【0026】
車両制御装置12は、プロセッサ32、システムメモリ33及びストレージメモリ34を含む。プロセッサ32は、例えば、CPUである。システムメモリ33は、例えば、RAMである。ストレージメモリ34は、コンピュータ可読媒体の例であり、非一時的で有形な媒体である。ストレージメモリ34は、ROMを含み得る。ストレージメモリ34は、ハードディスク、フラッシュメモリ又はそれらの組合せを含み得る。ストレージメモリ34は、プログラム35を記憶している。システムメモリ33に読み出されたプログラム35をプロセッサ32が実行する構成は、処理回路31の一例である。
【0027】
プロセッサ32は、スロットルT、燃料インジェクタF及び点火プラグPを制御することで内燃エンジンEを制御する。プロセッサ32は、インバータ13を制御することで電気モータMを制御する。プログラム35は、通常制御のための通常制御マップ、第1ブースト制御のための第1ブースト制御マップ、及び、第2ブースト制御のための第2ブースト制御マップを有する。通常制御マップ、第1ブースト制御マップ、及び、第2ブースト制御マップは、それぞれ通常規則、第1ブースト規則、及び、第2ブースト規則の例である。なお、第1ブースト制御は発進ブースト制御と称してもよく、第2ブースト制御は走行中ブースト制御と称してもよい。
【0028】
各制御マップは、プロセッサ32で検出されるアクセル開度と目標トルクとの対応関係を定義している。プロセッサ32は、各制御マップのいずれか1つを参照し、アクセル開度センサ22で検出されたアクセル開度に応じて、内燃エンジンE及び電気モータMからの動力によって入力軸14aに生じるトルクの目標値である目標トルクを決定する。即ち、各制御マップで定義される目標トルクは、内燃エンジンE及び電気モータMの全体の総目標トルクに対応する。
【0029】
図5は、各制御マップを説明するグラフである。
図5に示すように、各制御マップは、アクセル開度と目標トルクとの間の対応関係を定義している。実線NTは、通常制御マップが定義する目標トルクである通常トルクを示す。一点鎖線BT1は、第1ブースト制御マップが定義する目標トルクである第1ブーストトルクを示す。二点鎖線BT2は、第2ブースト制御マップが定義する目標トルクである第2ブーストトルクを示す。
【0030】
実線NTに示されるように、ブースト要求が発生していないときに参照される通常制御マップでは、アクセル開度が増加するにつれて目標トルクが増加する。プロセッサ32は、ブースト要求を受信していないとき、通常制御マップに従って、アクセル開度に応じた目標トルクを通常トルクNTとして決定し、その決定した目標トルクに基づいて内燃エンジンE及び電気モータMを制御する。本実施形態の通常制御マップは、アクセル開度がゼロのときに目標トルクがゼロとなるように定義されている。通常制御マップは、アクセル開度がゼロから増加するにつれて目標トルクが増加するように定義されている。例えば、
図5のグラフに示すように、通常トルクNTは、アクセル開度の増加に応じて予め定められる一定の変化率αn(傾き)で目標トルクが増加する線形直線で表される。
【0031】
プロセッサ32は、走行モードをEVモードにすべきかHEVモードにすべきかをプログラムで予め決められた規則に従って決定する。プロセッサ32は、走行モードをEVモードにすべきかHEVモードにすべきかをモード選択スイッチ30の選択操作に従って決定することもできる。プロセッサ32は、バッテリ11の残量、燃料タンク8の燃料残量、電気モータMの温度、又は、バッテリ11の温度の少なくとも1つを含む車両状態に基づいて、走行モードを決定してもよい。
【0032】
プロセッサ32は、その決定された走行モードに応じ、通常制御マップを参照して決定された目標トルクのうち、内燃エンジンEに負担を求める割合と、電気モータMに負担を求める割合と、を決定する。即ち、プロセッサ32は、目標トルク及び走行モードに基づいて、内燃エンジンEの個別目標トルクを示すエンジン目標トルクと、電気モータMの個別目標トルクを示すモータ目標トルクとを決定する。
【0033】
一点鎖線BT1に示すように、プロセッサ32は、後述する第1条件下でブースト要求を受信すると、第1ブースト制御マップに従って目標トルクを決定する。具体的には、プロセッサ32は、後述する第1条件下でブースト要求を受信すると、通常トルクNTに第1追加トルクΔT1を加えてなる第1ブーストトルクBT1を目標トルクとして決定する。第1ブースト制御マップは、アクセル開度が所定の第1開度閾値A1以下のときに参照され得る。第1開度閾値A1は、例えば、0%以上かつ15%未満の値、好ましくは0%以上かつ10%未満の値である。アクセル操作子である右グリップ6aの遊びを考慮して運転者の加速要求を判断できるように、第1開度閾値A1が0%よりも大きい値であってもよい。
【0034】
アクセル開度が大きい場合には、アクセル開度が小さい場合に比べて、第1ブーストトルクBT1と通常トルクNTとの差である第1追加トルクΔT1が大きくなる。例えば、第1追加トルクΔT1は、アクセル開度の増加に伴って増加する。例えば、アクセル開度がゼロのとき、第1追加トルクΔT1はゼロである。
【0035】
本実施形態では、第1追加トルクΔT1は、アクセル開度の増加に応じて予め定められる一定の変化率β(傾き)で増加する。言い換えると、
図5に示すように、アクセル開度の増加に対する第1ブーストトルクBT1の変化率α1は、アクセル開度の増加に対する通常トルクNTの変化率αnよりも大きく設定されている(α1>αn、α1=αn+β)。第1ブーストトルクBT1は、通常トルクNTと同様に、アクセル開度がゼロのときに目標トルクがゼロ(切片がゼロ)に設定されている。
【0036】
二点鎖線BT2に示すように、プロセッサ32は、後述する第2条件下でブースト要求が受信すると、第2ブースト制御マップに従って目標トルクを決定する。具体的には、プロセッサ32は、後述する第2条件下でブースト要求を受信すると、通常トルクNTに第2追加トルクΔT2を加えてなる第2ブーストトルクBT2を目標トルクとして決定する。第2ブースト制御マップは、アクセル開度が所定の第2開度閾値A2より大きいときに参照され得る。第2開度閾値A2は、第1開度閾値A1より大きく設定されている。たとえば第2開度閾値A2は、発進による加速状態が終了したと推測される状況のアクセル開度に設定されることが好ましい。第2開度閾値A2は、例えば、0%より大きく且つ100%未満の値であり、好ましくは10%より大きく且つ90%未満の値であり、更に好ましくは20%より大きく且つ80%未満の値であり、更に好ましくは30%より大きく且つ70%未満の値である。
【0037】
本実施形態では、第2追加トルクΔT2は、アクセル開度量の増加に拘らずに一定の値に設定されている。後述の第2条件下において、アクセル開度が大きい場合でもアクセル開度が小さい場合でも、第2ブーストトルクBT2と通常トルクNTとの差である第2追加トルクΔT2は一定となる。言い換えると、
図5に示すように、アクセル開度の増加に対する第2ブーストトルクBT2の変化率α2は、アクセル開度の増加に対する通常トルクNTの変化率αnと同じ値に設定されている(α2=αn)。
【0038】
本実施形態では、第1追加トルクΔT1及び第2追加トルクΔT2の各々は、電気モータMの目標トルクに加算される。第1ブースト制御マップは、通常トルクNTと第1追加トルクΔT1とを分けた情報を有してもよい。第2ブースト制御マップは、通常トルクNTと第2追加トルクΔT2とを分けた情報を有してもよい。これにより、応答性の良いブースト制御が実現される。なお、第1追加トルクΔT1及び第2追加トルクΔT2の各々は、内燃エンジンE及び電気モータMの両方の目標トルクに分配して加算されてもよいし、内燃エンジンEの目標トルクに加算されてもよい。
【0039】
アクセル開度の単位増加あたりの第1ブーストトルクBT1の増加量は、アクセル開度の単位増加あたりの第2ブーストトルクBT2の増加量よりも大きい。即ち、アクセル開度の増加に対する第1ブーストトルクBT1の変化率α1は、アクセル開度の増加に対する第2ブーストトルクBT2の変化率α2よりも大きい。例えば、第1追加トルクΔT1は、アクセル開度の増加に伴って増加する一方で、第2追加トルクΔT2は、アクセル開度によらず一定である。なお、第2追加トルクΔT2は、アクセル開度の増加に伴って増加してもよい。
【0040】
ブースト要求の発生時点における第2追加トルクΔT2は、ブースト要求の発生時点における第1追加トルクΔT1よりも大きくなるように設定されている。第1ブースト制御におけるブースト要求の発生時点は、アクセル開度が所定の第1開度閾値A1以下のときである。第2ブースト制御におけるブースト要求の発生時点は、アクセル開度が第2開度閾値A2より大きいときである。第1追加トルクΔT1の最大値は、第2追加トルクΔT2の最大値以下に設定されている。第1追加トルクΔT1の最小値は、第2追加トルクΔT2の最小値以下に設定されている。
【0041】
アクセル開度が第2開度閾値A2であるときの第1追加トルクΔT1は、アクセル開度が第2開度閾値A2であるときの第2追加トルクΔT2より小さい。本実施形態では、アクセル開度が100%のときに、第1追加トルクΔT1が第2追加トルクΔT2と同じになる。しかし、アクセル開度が100%未満の値のときに、第1追加トルクΔT1が第2追加トルクΔT2と同じ値になってもよい。また、アクセル開度が100%になっても、第1追加トルクΔT1が第2追加トルクΔT2よりも小さいままでもよい。
【0042】
図5では、線NT、線BT1及び線BT2は、アクセル開度の増加に伴って目標トルクが比例的に線形増加する例を示したが、後述するように、線形増加に限られない。線NT、線BT1及び線BT2の少なくとも1つは、アクセル開度の増加に伴って非線形に増加してもよい。
【0043】
本実施形態では、第1ブースト制御マップ及び第2ブースト制御マップは、変速機14に設定された複数の変速比毎に個別にそれぞれ用意される。すなわち選択される変速比に応じて、ブースト制御の追加トルクが異なる。例えば、ブースト制御の追加トルクは、変速比が低いほど(高速段であるほど)大きくなるように設定され得る。このように変速比に応じた目標トルクが決められることで、走行フィーリングと加速要求との両立を図ることができる。
【0044】
また、第1ブースト制御マップ及び第2ブースト制御マップは、入力軸14aの回転数に応じて異なるものが個別に用意されてもよい。HEVモードでは、第1ブースト制御マップ及び第2ブースト制御マップは、エンジンEの回転数に応じて異なるものが個別に用意されてもよい。EVモードでは、第1ブースト制御マップ及び第2ブースト制御マップは、電気モータMの回転数に応じて異なるものが個別に用意されてもよい。第1ブースト制御マップ及び第2ブースト制御マップは、車速に応じて異なるものが個別に用意されてもよい。
【0045】
また、第1ブーストトルクBT1及び第2ブーストトルクBT2は、自動二輪車1の加速度、車速、加速要求値の時間変化率、自動二輪車1の現在位置、走行路面推定、運転者の好みに応じた補正、電気モータM又はバッテリ11の温度、バッテリ11の残量、内燃エンジンEの吸気圧などの少なくとも1つによって補正されてもよい。
【0046】
第1ブーストトルクBT1の最大値と、第2ブーストトルクBT2の最大値とは、互いに異なっていてもよい。例えば、第1ブーストトルクBT1の最大値は、第2ブーストトルクBT2の最大値よりも大きくてもよい。また、入力軸14aの回転数又は車速が所定値未満である場合には、第1ブーストトルクBT1の最大値が第2ブーストトルクBT2の最大値よりも大きい一方で、入力軸14aの回転数が前記所定値以上である場合には、第2ブーストトルクBT2の最大値が第1ブーストトルクBT1の最大値よりも大きくなるようにしてもよい。
【0047】
図6は、
図4の車両制御装置12の制御を説明するフローチャートである。以下、
図4等の構成を適宜参照しながら
図6の流れに沿って車両制御装置12の処理を説明する。運転者が自動二輪車1の電源をオンにしてコントローラ12への電力供給が開始されると、プロセッサ32は、通常制御マップに従って、アクセル開度センサ22が検出するアクセル開度量に応じた目標トルクを通常トルクNTとして決定する(ステップS1)。プロセッサ32は、その目標トルク及び選択された走行モードに基づいて、内燃エンジンE及び電気モータMを制御する(通常制御)。
【0048】
プロセッサ32は、ブーストスイッチ21からブースト要求を受信しているか否かを判定する(ステップS2)。プロセッサ32は、ブースト要求を受信していなければ(ステップS2:N)、通常制御を継続して実行する。プロセッサ32は、ブースト要求を受信していれば(ステップS2:Y)、第1条件又は第2条件が成立するか否かを判定する(ステップS3)。
【0049】
第1条件は、自動二輪車1が停車状態であると判定されたとの条件を含む。例えば、プロセッサ32は、車速が所定の第1車速閾値以下であると判定されたとの条件、及び、運転者の加速要求量が所定の第1加速要求閾値以下であると判定されたとの条件の少なくとも1つを満たしたときに、自動二輪車1が第1条件である停車状態であると判定する。具体的には、車速は、車速センサ23で検出される走行速度である。加速要求量はアクセル開度センサ22で検出されたアクセル開度であり、第1加速要求閾値は前述する第1開度閾値A1である。
【0050】
第1車速閾値は、例えば、0km/h以上かつ15km/h以下の値、好ましくは0km/h以上10km/h以下の値、更に好ましくは0km/h以上5km/h以下の値である。車速センサ23の検出誤差などを考慮して、第1車速閾値は、0km/hより大きい設定範囲の値であってもよい。
【0051】
本実施形態では、アクセル開度が第1開度閾値A1以下であると判定されたとの条件と、車速が第1車速閾値以下であると判定されたとの条件と、の少なくとも一方が成立するときに、自動二輪車1が停車状態であると判定される。第1条件は、車速が第1車速閾値以下であると判定されたとの条件のみでもよいし、アクセル開度が第1開度閾値A1以下であると判定されたとの条件のみでもよいし、その両方の条件が成立したとの条件であってもよい。第1条件は、アクセル開度が第1開度閾値A1以下であると判定されたとの条件に代えて又は加えて、内燃エンジンE又は電気モータMの回転数が第1回転数閾値以下であると判定されたとの条件を含んでもよい。第1回転数閾値は、例えば、0rpm以上1500rpm以下の値とし得る。
【0052】
第2条件は、自動二輪車1が所定の走行状態であると判定されたとの条件を含む。例えば、本実施形態では、運転者の加速要求量が所定の第2加速要求閾値より大きいと判定されたとの条件と、車速が所定の第2車速閾値より大きいと判定されたとの条件と、の少なくとも一方が成立するときに、自動二輪車1が前記所定の走行状態であると判定される。第2加速要求閾値は、第1加速要求閾値より大きい値に設定される値である。具体的には、加速要求量はアクセル開度センサ22で検出されたアクセル開度であり、第2加速要求閾値は第2開度閾値A2である。第2車速閾値は、第1車速閾値より大きい値に設定される値である。第2車速閾値は、例えば、5km/h以上100km/h以下の値であり、好ましくは20km/h以上100km/以下の値であり、更に好ましくは、40km/h以上100km/h以下の値である。
【0053】
本実施形態では、アクセル開度が第2開度閾値A2より大きいと判定されたとの条件と、車速が第2車速閾値より大きいと判定されたとの条件と、の両方が成立するときに、自動二輪車1が所定の走行状態であると判定される。
【0054】
なお、第2条件は、車速が第2車速閾値より大きいと判定されたとの条件のみでもよいし、アクセル開度が第2開度閾値A2より大きいと判定されたとの条件のみでもよい。第2条件は、アクセル開度が第2開度閾値より大きいと判定されたとの条件に代えて又は加えて、内燃エンジンE又は電気モータMの回転数が第2回転数閾値より大きいと判定されたとの条件を含んでもよい。第2回転数閾値は、第1回転数閾値より大きい値に設定される値である。第2回転数閾値は、例えば、200rpm以上5000rpm以下の値とし得る。なお、第2回転数閾値は、第1回転数閾値と同じでもよい。
【0055】
本実施形態では、車両が所定の走行状態であると判定することは、車両の発進加速が終了した状態であると判定することを含む。この場合、第2条件は、車両の発進加速が終了したと判定できる条件であればよく、上述した車速及びアクセル開度に関する条件以外の条件であってもよい。たとえば、発進加速が終了したであろう変速比(たとえば低減速比)に車両の変速機14の変速比が達した状態、車両の加速度上昇が終了した状態、車両が発進開始してからの走行距離が所定値を超えた状態、車両の発進によるブースト状態が終了した状態などの少なくとも1つが、上述する所定の走行状態に含まれてもよい。たとえば、第1条件を満足して第1ブースト制御が実行されている状態であれば、第2条件を満たしていないとして、車速が第2車速閾値より大きくなっても、又は、アクセル開度が第2開度閾値より大きくなっても、第1ブースト制御を継続して実行する。これによって発進加速中にトルクが急増することを抑えることができる。
【0056】
第1条件及び第2条件の各々は、バッテリ11の残量が所定値以上であるとの条件、バッテリ11の温度が所定値未満であるとの条件、又は、電気モータMの温度が所定値未満であるとの条件、の少なくとも1つを含んでもよい。第1条件及び第2条件の各々は、自動二輪車1が旋回走行中でないとの条件、又は、運転者がブレーキ操作していないとの条件を含んでもよい。
【0057】
第1条件及び第2条件のいずれも成立していない場合には(ステップS3:N)、プロセッサ32は、通常制御を継続する(ステップS1)。ステップS3において、第1条件が成立している場合には(
図7:時刻t1)、プロセッサ32は、ディスプレイ7がブースト待機表示を表示するようにディスプレイ7を制御する(ステップS4)。言い換えると、プロセッサ32は、ブースト制御の開始準備ができていることを示す待機状態を報知する。ブースト待機表示は、例えば、ブースト表示Bの点滅である。このとき、プロセッサ32は、アクセル開度が第1開度閾値A1以下であるので、未だ第1ブースト制御を開始しない。即ち、プロセッサ32は、自動二輪車1が停車状態であるので、未だ第1ブースト制御を開始しない。自動二輪車1の停車中にブースト表示Bが点滅することで、運転者はブースト制御の開始前の待機中であることを知ることができる。
【0058】
プロセッサ32は、ブースト待機表示が表示された状態において、自動二輪車1が発進したか否かを判定する(ステップS5)。例えば、プロセッサ32は、アクセル開度が第1開度閾値A1より大きくなったことを検出すると、自動二輪車1が発進したと判定する(
図7:時刻t2)。プロセッサ32は、車速が第1車速閾値より大きくなったことを検出すると、自動二輪車1が発進したと判定してもよい。上述するように、アクセル開度に関して、第1開度閾値A1は、第2開度閾値A2よりも小さい。また、車速に関して、第1車速閾値は、第2車速閾値よりも小さい。プロセッサ32は、アクセル開度が第1開度閾値より大きくなったことを検出することに代えて又は加えて、内燃エンジンE又は電気モータMの回転数が第1回転数閾値より大きくなったことを検出すると、自動二輪車1が発進したと判定してもよい。
【0059】
自動二輪車1が発進していないと判定された場合には(ステップS5:N)、ステップS4に戻る。自動二輪車1が発進したと判定された場合には(ステップS5:Y)、プロセッサ32は、ブースト制御が実行中であることを報知するために、ディスプレイ7がブースト実行表示を表示するようにディスプレイ7を制御し(ステップS6)、第1ブースト制御を実行する(ステップS7)。ブースト実行表示は、例えば、ブースト表示Bの点灯である。自動二輪車1が発進したと判定されることは、第1ブースト制御の開始トリガーである。例えば、アクセル開度が第1開度閾値A1を超えたこと、車速が第1車速閾値を超えたこと、又は、エンジンEの回転数が第1回転数閾値を超えたこと、の少なくとも1つを検出することが、第1ブースト制御の開始トリガーである。第1ブースト制御は、
図5の第1ブーストトルクBT1を目標トルクとする制御である。第1ブースト制御では、アクセル開度が増えるにつれて第1追加トルクΔT1が増えるため、滑らかな運転フィーリングで良好な加速を得ることができる。言い換えると、アクセル開度が低い発進初期段階では、目標トルクの急増を防ぐことができ、発進時のショックを緩和することができる。
【0060】
プロセッサ32は、ブースト終了条件が成立した否かを判定する(ステップS8)。プロセッサ32は、ブースト終了条件が成立したと判定すると(
図7:時刻t3)、ブースト制御の終了を報知するために、ディスプレイ7がブースト実行表示を消すようにディスプレイ7を制御し(ステップS12)、第1ブースト制御を終了して通常制御に戻る(ステップS1)。ブースト実行表示を消すことは、例えば、ブースト表示Bを消灯状態にすることである。
【0061】
ブースト終了条件は、ブーストスイッチ21がOFF位置になったことが検出されたとの第1終了条件を含み得る。即ち、ブーストスイッチ21がON位置である間は第1ブースト制御が継続し、ブーストスイッチ21がOFF位置に戻ると第1ブースト制御が終了して通常制御に戻る。第1終了条件は、ブーストスイッチ21の操作のほかにブレーキの操作、変速機14の操作、又は、クラッチ19の操作の少なくとも1つを含んでもよい。このように、運転者の操作によって加速状態を終了することを示す操作を検出することがブースト終了条件に含まれてもよい。
【0062】
ブースト終了条件は、アクセル開度が所定の終了閾値以下になったことが検出されたとの第2終了条件を含み得る。終了閾値は、例えば、0%以上30%以下の値、好ましくは0%以上20%以下の値、更に好ましくは0%以上10%以下の値である。即ち、運転者が右グリップ6aを減速側に操作すると、第1ブースト制御が終了して通常制御に戻る。
【0063】
ブースト終了条件は、第1ブースト制御の継続時間の増加とともに増加するカウントパラメータが所定の制限値に達したことが検出されたとの第3終了条件を含み得る。カウントパラメータは、例えば、第1ブースト制御の継続時間自体としてもよい。カウントパラメータは、電気モータM又はバッテリ11の温度としてもよい。また、カウントパラメータは、ブースト制御中に供給する電流の時間累積値である電流量としてもよい。このように第3終了条件が設定されることで、電気モータ及びバッテリ11の損傷を防いだうえでブースト加速を行うことができる。プロセッサ32は、第1~第3終了条件のいずれか1つが成立すると、ブースト終了条件が成立したと判定する。
【0064】
ステップS3において、第2条件が成立している場合には(
図8:時刻t4)、ブースト制御の実行中を報知するために、ディスプレイ7がブースト実行表示を表示するようにディスプレイ7を制御し(ステップS9)、第2ブースト制御を実行する(ステップS10)。ブースト実行表示は、例えば、ブースト表示Bの点灯である。第2ブースト制御は、
図5の第2ブーストトルクBT2を目標トルクとする制御である。第2ブースト制御は、自動二輪車1の走行中に開始され、第1ブースト制御に比べて初期の追加トルクΔT2が大きくなるため、運転者の加速要求を良好に満たすことができる。
【0065】
プロセッサ32は、ブースト終了条件が成立した否かを判定する(ステップS11)。ステップS11のブースト終了条件は、ステップS8のブースト終了条件と同じである。プロセッサ32は、ブースト終了条件が成立したと判定すると(
図8:時刻t5)、ブースト制御の終了を報知するために、ディスプレイ7がブースト実行表示を消すようにディスプレイ7を制御し(ステップS12)、第2ブースト制御を終了して通常制御に戻る(ステップS1)。ブースト実行表示を消すことは、例えば、ブースト表示Bを消灯状態にすることである。
【0066】
以上に説明した構成によれば、ブースト要求が発生したときの状況に応じてブーストトルクBT1,BT2を変えることができる。よって、状況に応じて適切な運転フィーリングを実現しながらブースト要求を満たすことができる。このような構成は、ブーストによる加速度変化が大きい軽量の鞍乗型車両に好適に用いられる。
【0067】
図9は、
図5の各制御マップの第1変形例を説明するグラフである。
図9に示すように、通常トルクNTの変化率αn、第1ブーストトルクBT1の変化率α1、及び、第2ブーストトルクBT2の変化率α2の少なくとも1つは、アクセル開度の変化に伴って変化してもよい。例えば、通常トルクNT、第1ブーストトルクBT1及び第2ブーストトルクBT2は、アクセル開度の増加に伴って曲線的に増加してもよい。
図9では、通常トルクNT、第1ブーストトルクBT1及び第2ブーストトルクBT2の各々は、上方に凸な曲線状であるが、下方に凸な曲線状であってもよい。通常トルクNT、第1ブーストトルクBT1及び第2ブーストトルクBT2の全てが曲線状である必要はなく、それらの少なくとも1つが曲線状であってもよい。また、通常制御マップは1つに限られず複数あってもよい。例えば、第1走行モードの通常トルクNT1と、第1走行モードよりも目標トルクが高い第2走行モードの通常トルクNT2とがあってもよい。
【0068】
図10は、
図5の各制御マップの第2変形例を説明するグラフである。
図10に示すように、通常トルクNT及び第1ブーストトルクBT1は、アクセル開度の増加に対する目標トルクの変化率αn,α1(傾き)が変化してもよい。例えば、アクセル開度が第1領域にあるときは、アクセル開度が第1領域よりも大きい第2領域にあるときよりも、アクセル開度の増加に対する目標トルクの変化率が大きくなっている。第2追加トルクΔT2は、一定でなくてもよく、アクセル開度の変化に応じて変化してもよい。例えば、第2追加トルクΔT2は、アクセル開度の増加に伴って小さくなってもよい(ΔT2a>ΔT2b)。逆に、第2追加トルクΔT2は、アクセル開度の増加に伴って大きくなってもよい。なお、第2ブーストトルクBT2も、アクセル開度の増加に対する目標トルクの変化率α2(傾き)が変化してもよい。
【0069】
図11は、
図5の各制御マップの第3変形例を説明するグラフである。
図11に示すように、アクセル開度が開度閾値A1を超えて自動二輪車1が発進したと判定された時点における第1追加トルクΔT1の初期値ΔT1aはゼロよりも大きい値でもよい。即ち、自動二輪車1が発進したと判定されると、第1ブーストトルクBT1は、滑らかに増加するのではなくステップ状に増加してもよい。また、アクセル開度が0%から100%までの範囲の一部領域では、アクセル開度の単位増加あたりの第1ブーストトルクBT1の増加量が、アクセル開度の単位増加あたりの第2ブーストトルクBT2の増加量よりも大きくなくてもよい。具体的には、アクセル開度が所定値以上の範囲、例えば、アクセル開度が100%に近い領域等では、において第1ブーストトルクBT1は第2ブーストトルクBT2と同じになってもよい。また、アクセル開度の増加時における第1ブーストトルクBT1の変化率α1は滑らかに変化してもよい。
【0070】
なお、本開示の技術は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、ブースト要求は、ブーストスイッチ21によらずに車両制御装置12のプログラムによって発生してもよい。ブーストスイッチ21は、押ボタンスイッチに限られず、運転者がブースト指令を入力できるものであればよい。例えば、運転者の足によるペダル操作がブースト指令の入力であってもよい。また、ブーストスイッチ21の代わりに、ブースト要求を入力可能な音声入力装置が設けられてもよい。
【0071】
第1ブースト規則及び第2ブースト規則は、通常制御マップを補正する規則であってもよい。例えば、第1ブースト規則は、アクセル開度と第1追加トルクΔT1との間の対応関係を定義した第1追加マップでもよい。即ち、第1ブースト制御では、通常制御マップから得られる通常トルクNTに第1追加マップから得られる第1追加トルクΔT1を加算したものが目標トルクとされてもよい。同様に、第2ブースト規則は、アクセル開度と第2追加トルクΔT2との間の対応関係を定義した第2追加マップでもよい。即ち、第2ブースト制御では、通常制御マップから得られる通常トルクNTに第2追加マップから得られる第2追加トルクΔT2を加算したものが目標トルクとされてもよい。また、第1ブースト規則及び第2ブースト規則は、通常制御マップから得られる値の補正を定義した数式、又は、通常制御マップから得られる値に乗じる補正係数を定義した補正係数マップであってもよい。通常規則、第1ブースト規則及び第2ブースト規則は、すべて数式であってもよい。
【0072】
第1条件は、自動二輪車1がコーナリング中であると判定されたとの条件、自動二輪車1が所定のスリップしやすい路面にいると判定されたとの条件、及び、自動二輪車1が交差点にいると判定されたとの条件の少なくとも1つを含んでもよい。第2条件は、変速機14が変速中であると判定されたとの条件、自動二輪車1が上り坂を走行中であると判定されたとの条件、及び、自動二輪車1が高速道路を走行中であると判定されたとの条件の少なくとも1つを含んでもよい。
【0073】
第1加速要求閾値と第2加速要求閾値とは互いに同じであってもよい。即ち、第1開度閾値A1と第2開度閾値A2とは互いに同じであってもよい。第1車速閾値と第2車速閾値とは互いに同じであってもよい。第2条件は、第1条件を満足しないとの条件のみを有する条件であってもよい。
【0074】
前記した構成はハイブリッド車両に適用することを例示したが、それに限られず、電動車両(BEV)に適用されてもよいし、エンジン車両に適用されてもよい。駆動輪を駆動するための駆動源のレイアウトは、他の態様でもよい。例えば、駆動源は、インホイールモータでもよい。スイングアームに駆動源としての電気モータが設けられてもよい。例えば、変速機及びクラッチが設けられなくてもよい。
【0075】
ディスプレイ7においてブースト表示Bを消灯、点灯又は点滅に切り替えることで、ブースト制御の状態を報知したが、これに限らず、ブースト制御の状態に応じて表示態様が変わる構成であればよい。例えば、ブースト制御の状態に応じてブースト表示Bの表示色を変化させてもよい。ブースト制御の状態に応じて画面に表示する領域を異ならせてもよい。表示のほか、音声又は振動でブースト制御の状態を運転者に報知してもよい。第1ブースト状態と第2ブースト状態とで表示態様を異ならせてもよい。これによって、運転者は、第1ブースト制御が実行されているか第2ブースト制御が実行されるかを把握することができる。
【0076】
第1条件の前記した内容は一例であって、停車判定できる条件であればよく、車速および加速要求量以外のもので第1条件の成立を判断してもよい。例えば、ブレーキ操作、クラッチ操作、又は、変速機操作又はサイドスタンドの状態の少なくとも1つに基づいて、停車判定されてもよい。また、衛星測位センサ又はジャイロセンサに基づいて、停車判定されてもよい。すなわち、車体姿勢、車両姿勢の時間変化、車両加速度、車両加速度の時間変化率に基づいて、停車判定されてもよい。第1条件は、下り坂又は運転者の踏み出しなどに起因する微速走行の開始を検出することを含んでもよい。
【0077】
また本実施形態では、第2条件は、車両の発進加速が終了した状態と判定されたとの条件に限らない。第2条件は、発進加速と異なる加速が要求されているとの条件に設定されてもよい。たとえば車線変更時の追い越し加速が要求されていると推定されたとの条件であってもよいし、コーナリング脱出時の加速が要求されていると推定されたとの条件であってもよいし、坂道走行時の加速が要求されていると推定されたとの条件であってもよい。第2条件は、発進加速とは状況が異なる状況での変速操作による加速が要求されていると推定されたとの条件であってもよい。このようにして第2条件が設定されることで、状況に応じた加速を実現することができる。
【0078】
また上述した第2加速要求閾値及び第2車速閾値についても、状況に応じた加速を実現するために、変速比、自動二輪車1の加速度、加速要求値の時間変化率、自動二輪車1の現在位置、走行路面推定、運転者の好みに応じた補正、電気モータM又はバッテリ11の温度、バッテリ11の残量、内燃エンジンEの吸気圧などによって補正されてもよい。
【0079】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、1つの実施形態中又は1つの変形例中の一部の構成又は方法を他の実施形態又は変形例に適用してもよく、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【0080】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット若しくは手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、又は、列挙された機能を実行するようにプログラム若しくは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段若しくはユニットは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【0081】
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0082】
[項目1]
駆動輪と、運転者の加速要求量を検出するアクセル開度センサと、前記アクセル開度センサが検出する前記加速要求量に応じて前記駆動輪に伝達するためのトルクを発生する原動機と、を備えた車両を制御する装置であって、
前記原動機を制御する処理回路を備え、前記処理回路は、
ブースト要求が発生していないときに、通常規則に従って、前記加速要求量に応じた前記原動機の目標トルクを通常トルクとして決定することと、
第1条件下で前記ブースト要求が発生すると、第1ブースト規則に従って、前記通常トルクに第1追加トルクを加えてなる第1ブーストトルクを前記原動機の目標トルクとして決定することと、
前記第1条件とは異なる第2条件下で前記ブースト要求が発生すると、前記第1ブースト規則とは異なる第2ブースト規則に従って、前記通常トルクに第2追加トルクを加えてなる第2ブーストトルクを目標トルクとして決定することと、
を行うように構成されている、車両制御装置。
【0083】
この構成によれば、ブースト要求が発生したときの状況に応じてブーストトルクを変えることができる。よって、状況に応じて適切な運転フィーリングを実現しながらブースト要求を満たすことができる。
【0084】
[項目2]
前記第1条件は、前記車両が停車状態であると判定されたとの条件を含み、
前記第2条件は、前記車両が走行状態であると判定されたとの条件を含む、項目1に記載の車両制御装置。
【0085】
この構成によれば、シチュエーションが異なる2つの状況で、ブースト規則を異ならせることで、適切な運転フィーリングを実現しながらブースト要求を満たすことができる。
【0086】
[項目3]
前記第1条件は、前記加速要求量が第1加速要求閾値以下であると判定されたとの条件、又は、車速が第1車速閾値以下であると判定されたとの条件、の少なくとも1つを含み、
前記第2条件は、前記第1加速要求閾値以上に設定される第2加速要求閾値よりも前記加速要求量が大きいとの条件、又は、前記第1車速閾値以上に設定される第2車速閾値よりも車速が大きいとの条件、の少なくとも1つを含む、項目1又は2に記載の車両制御装置。
【0087】
この構成によれば、加速要求量及び/又は車速が小さい第1条件下でブーストトルクを決定する規則と、加速要求量及び/又は車速が大きい第2条件下でブーストトルクを決定する規則と、が異なるため、ブースト制御開始時の運転フィーリングに影響を与える要因に応じて適切にトルクをブーストできる。
【0088】
[項目4]
前記第1追加トルクは、前記加速要求量の増加に伴って増加するように設定されている、項目1乃至3のいずれかに記載の車両制御装置。
【0089】
この構成によれば、第1条件下でブースト要求が発生した場合には、運転者の加速要求量が増えるにつれて追加トルクが増えるため、第1条件下での滑らかな運転フィーリングで良好な加速を得ることができる。
【0090】
[項目5]
前記第1ブースト規則及び前記第2ブースト規則は、前記加速要求量の単位増加あたりの前記第1ブーストトルクの増加量が、前記加速要求量の単位増加あたりの前記第2ブーストトルクの増加量よりも大きくなるように設定されている、項目4に記載の車両制御装置。
【0091】
この構成によれば、加速要求量の増加に伴うトルク増加を状況に応じて変えることで、適切な運転フィーリングを実現しながらブースト要求を満たすことができる。
【0092】
[項目6]
前記第1ブースト規則及び前記第2ブースト規則は、前記第2条件下での前記ブースト要求の発生時点における前記第2追加トルクが、前記第1条件下での前記ブースト要求の発生時点における前記第1追加トルクよりも大きくなるように設定されている、項目1乃至5のいずれかに記載の車両制御装置。
【0093】
この構成によれば、第2条件下でブースト要求が発生した場合には、初期の追加トルクが比較的大きくなるため、運転者の加速要求を良好に満たすことができる。
【0094】
[項目7]
前記第1条件は、前記車両が停車状態であると判定されたとの条件を含み、
前記処理回路は、前記第1条件下で前記ブースト要求が発生すると、報知器にブースト制御待機中を示す報知を出力させるように構成されている、項目1乃至6のいずれかに記載の車両制御装置。
【0095】
この構成によれば、車両停車中にブースト制御が待機状態にあることを運転者に知らせることができ、運転者の認識を高めることができる。
【0096】
[項目8]
駆動輪と、運転者の加速要求量を検出するアクセル開度センサと、前記アクセル開度センサが検出する前記加速要求量に応じて前記駆動輪に伝達するためのトルクを発生する原動機と、ディスプレイと、を備えた車両を制御する装置であって、
前記原動機を制御する処理回路を備え、前記処理回路は、
ブースト要求が発生していないときに、通常規則に従って、前記加速要求量に応じた前記原動機の目標トルクを通常トルクとして決定することと、
前記車両が停止状態であると判定されたとの条件下で前記ブースト要求が発生すると、報知器にブースト制御待機中を示す報知を出力させることと、
前記報知器が前記報知を出力する状態で前記車両が走行開始したと判定されると、ブースト規則に従って前記通常トルクに追加トルクを加えてなるブーストトルクを目標トルクとして決定させることと、
を行うように構成されている、車両制御装置。
【0097】
この構成によれば、車両停車中にブースト制御が待機状態にあることを運転者に知らせることができ、運転者の認識を高めることができる。
【0098】
[項目9]
駆動輪と、運転者の加速要求量を検出するアクセル開度センサと、前記アクセル開度センサが検出する前記加速要求量に応じて前記駆動輪に伝達するためのトルクを発生する原動機と、を備えた車両を制御する方法であって、
ブースト要求が発生していないときに、通常規則に従って、前記加速要求量に応じた前記原動機の目標トルクを通常トルクとして決定することと、
第1条件下で前記ブースト要求が発生すると、第1ブースト規則に従って、前記通常トルクよりも大きい第1ブーストトルクを目標トルクとして決定することと、
前記第1条件とは異なる第2条件下で前記ブースト要求が発生すると、前記第1ブースト規則とは異なる第2ブースト規則に従って、前記通常トルクよりも大きく、第1ブーストトルクとは異なる第2ブーストトルクを目標トルクとして決定することと、を含む、車両制御方法。
【0099】
この方法によれば、ブースト要求が発生したときの状況に応じてブーストトルクを変えることができる。よって、状況に応じて適切な運転フィーリングを実現しながらブースト要求を満たすことができる。
【0100】
[項目10]
項目9に記載の前記車両制御方法を少なくとも1つのプロセッサに実行させる、車両制御プログラム。
【符号の説明】
【0101】
1 自動二輪車(車両)
3 後輪(駆動輪)
7 ディスプレイ(報知器)
10 原動機アッセンブリ
12 車両制御装置
22 アクセル開度センサ
31 処理回路
32 プロセッサ
35 プログラム
B ブースト表示
E 内燃エンジン(原動機)
M 電気モータ(原動機)
NT 通常トルク
BT1 第1ブーストトルク
BT2 第2ブーストトルク
ΔT1 第1追加トルク
ΔT2 第2追加トルク