(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085016
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】データ収集装置、データ収集方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 11/34 20060101AFI20240619BHJP
G06F 11/30 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
G06F11/34 176
G06F11/30 155
G06F11/30 140A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199315
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】500112146
【氏名又は名称】サイレックス・テクノロジー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上田 裕二郎
【テーマコード(参考)】
5B042
【Fターム(参考)】
5B042JJ29
5B042KK20
5B042MA08
5B042MC09
5B042MC40
(57)【要約】 (修正有)
【課題】データサイズを削減しつつ無線環境や機器動作に関する情報を適切に取得する。
【解決手段】通信システムにおいて、データ収集装置である通信装置103は、イベント条件及びイベント条件毎に定められた収集期間を含む特定イベント条件テーブル並びに保持期限を記憶する記憶部206、機器状態情報及び無線通信状態情報を取得する状態取得部202、機器状態情報及び無線通信状態情報を時刻情報と紐づけて状態データとして、保持期限が指定する期間の間一時記憶する一時記憶部204、状態データのうち、特定イベントが発生したか否かを判定する判定部203及び判定部が特定イベントが発生したと判定した場合に、一時記憶部204が記憶する特定状態データと、特定イベントが発生した時刻を基準に前後の収集期間における状態データである特定イベント前後補足情報とを記録対象データとして記憶部206に記憶させる記録対象情報収集部205を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末と自装置との間の通信に関するデータ収集装置であって、
イベント条件およびイベント条件ごとに定められた収集期間を含む特定イベント条件テーブル、ならびに状態データを保持する期間である保持期限を記憶する記憶部と、
機器状態情報および無線通信状態情報を取得する状態取得部と、
前記機器状態情報および無線通信状態情報を、その時の時刻情報と紐づけて状態データとして、前記保持期限が指定する期間の間一時記憶する一時記憶部と、
前記状態データのうち、前記特定イベント条件テーブルを参照して特定イベントが発生したか否かを判定する判定部と、
前記判定部が前記特定イベントが発生したと判定した場合に、前記一時記憶部が記憶する特定イベントを含む前記状態データと、前記特定イベントが発生した時刻を基準に前後の前記収集期間における前記状態データである特定イベント前後補足情報とを記録対象データとして前記記憶部に記憶させる記録対象情報収集部と、
を備える、データ収集装置。
【請求項2】
少なくとも前記イベント条件および前記収集期間を、自装置と接続された管理端末から受け付ける受付部を更に備える、
請求項1に記載のデータ収集装置。
【請求項3】
更に通信部を備え、
前記通信部は外部のサーバ装置と通信可能に接続され、前記記憶部が記憶した前記記録対象データを前記サーバ装置に送信する、
請求項1または2に記載のデータ収集装置。
【請求項4】
通信端末と自装置との間の通信に関するデータを収集するデータ収集方法であって、
イベント条件およびイベント条件ごとに定められた収集期間を含む特定イベント条件テーブル、ならびに状態データを保持する期間である保持期限を記憶する記憶ステップと、
機器状態情報および無線通信状態情報を取得する取得ステップと、
前記機器状態情報および無線通信状態情報を、その時の時刻情報と紐づけて状態データとして、前記保持期限が指定する期間の間一時記憶する一時記憶ステップと、
前記状態データのうち、前記特定イベント条件テーブルを参照して特定イベントが発生したか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップが、前記特定イベントが発生したと判定した場合に、前記一時記憶ステップが記憶する特定イベントを含む前記状態データと、前記特定イベントが発生した時刻を基準に前後の前記収集期間における前記状態データである特定イベント前後補足情報とを記録対象データとして記憶する記録対象情報収集ステップと、
を含む、データ収集方法。
【請求項5】
請求項4に記載のデータ収集方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ収集装置、データ収集方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、無線通信品質を維持するために、無線環境の異常を監視したり、無線フレームをキャプチャして、これらの収集データをローカルのコンピュータまたはクラウド上のサーバ装置等を用いて解析する手法が用いられる。通常、無線環境の監視にあたっては、無線フレームや機器の動作状態に係る動作ログ等の情報(監視情報)を、監視を行う機器が備える記憶領域に蓄積しておき、無線通信に異常が発生した後に蓄積しておいた当該監視情報を取得することで解析が行われる。例えば、特許文献1には無線環境情報を取得する装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような手法では、無線通信に問題が発生するまで無線フレームや動作ログ等の情報を記録し続ける必要があり、膨大な記憶領域の搭載が無線環境の監視を行う機器に要求され、機器のコストが増大する原因となる。また、クラウド上のサーバ装置等に向けてこれら監視情報を送信しようとする場合、送信するデータのサイズが膨大となり、データ送信に係る通信費やサーバ装置の記憶領域の維持に係るコストが上昇するという課題がある。本発明の目的は、記憶領域や送信すべきデータのサイズを削減しつつ、無線環境や機器の動作異常に関する情報を適切に記憶することができるデータ収集装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るデータ収集装置は、通信端末と自装置との間の通信に関するデータ収集装置であって、イベント条件およびイベント条件ごとに定められた収集期間を含む特定イベント条件テーブル、ならびに状態データを保持する期間である保持期限を記憶する記憶部と、機器状態情報および無線通信状態情報を取得する状態取得部と、機器状態情報および無線通信状態情報を、その時の時刻情報と紐づけて状態データとして、保持期限が指定する期間の間一時記憶する一時記憶部と、状態データのうち、特定イベント条件テーブルを参照して特定イベントが発生したか否かを判定する判定部と、判定部が特定イベントが発生したと判定した場合に、一時記憶部が記憶する特定イベントを含む状態データと、特定イベントが発生した時刻を基準に収集期間における状態データである特定イベント前後補足情報とを記録対象データとして記憶部に記憶させる記録対象情報収集部とを備える。
【0006】
これによれば、データ収集装置は、通信端末と自装置(データ収集装置)との間の通信において、特定イベントが発生した場合においても、特定イベントに係る特定状態データおよび収集期間に基づく期間の特定イベント前後補足情報のみ記憶するので、記憶領域や送信すべきデータのサイズを削減できるとともに、無線環境や機器動作の異常に関する情報を適切に取得できる。
【0007】
また、データ収集装置は、少なくともイベント条件および収集期間を、自装置と接続された管理端末から受け付ける受付部を更に備えてもよい。
【0008】
これによれば、受付部は、特定イベントに係る種々の情報を定義したイベント条件、および、特定イベントが発生した時間前後における状態データであるイベント前後補足情報を収集する範囲を指定する収集期間を含む要求情報を管理端末から受け付けることができる。よって、管理者は、管理端末を利用して、無線環境や機器動作の異常に関する情報を随時適切に取得できる。
【0009】
また、データ収集装置は更に通信部を備え、通信部は外部のサーバ装置と通信可能に接続され、記憶部が記憶した記録対象データをサーバ装置に送信してもよい。
【0010】
これによれば、データ収集装置は、自装置に記憶した記録対象データを外部のサーバ装置等に送信することができる。
【0011】
本発明の一態様に係るデータ収集方法は、通信端末と自装置との間の通信に関するデータを収集するデータ収集方法であって、イベント条件およびイベント条件ごとに定められた収集期間を含む特定イベント条件テーブル、ならびに状態データを保持する期間である保持期限を記憶する記憶ステップと、機器状態情報および無線通信状態情報を取得する取得ステップと、機器状態情報および無線通信状態情報を、その時の時刻情報と紐づけて状態データとして、保持期限が指定する期間の間一時記憶する一時記憶ステップと、状態データのうち、特定イベント条件テーブルを参照して特定イベントが発生したか否かを判定する判定ステップと、判定ステップが、特定イベントが発生したと判定した場合に、一時記憶ステップが記憶する特定イベントを含む状態データと、特定イベントが発生した時刻を基準に収集期間における状態データである特定イベント前後補足情報とを記録対象データとして記憶する記録対象情報収集ステップと、を含む。
【0012】
これによれば、上記データ収集装置と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のデータ収集装置等は、記憶領域や送信すべきデータのサイズを削減しつつ、無線環境や機器動作の異常に関する情報を適切に取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施の形態の通信システムの一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態の通信装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態の通信装置が状態データを取得し、一時記憶部に記憶する一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本実施の形態の通信装置においてイベント情報の通知を受けて当該通知の特定イベント情報に関する状態データおよびイベント前後補足情報を記憶部に記憶するまでの一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本実施の形態の通信装置が記憶する特定イベント条件テーブルの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。なお、同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0016】
[実施の形態]
図1を使用して本発明の実施の形態に係る通信システムの概要について説明する。
図1に例示されるように、通信システム100は、サーバ装置101、ネットワーク102、通信装置103、管理端末104、子機端末105、通信リンク106、および通信リンク107を備える。
【0017】
サーバ装置101は、例えば通信システム100の稼働状況を監視する通信装置103で取得したデータ(例えばデータフレームや機器の動作ログ等)の重要部分を記録するサーバである。サーバ装置101は、例えば、クラウド上に存在し、ネットワーク102を介して通信装置103から特定イベント(後述)の情報に関わる状態データおよびイベント前後補足情報(後述)に係るデータを受信し得る。また、サーバ装置101は、通信装置103から受信した通信システム100に係る稼働状況を加工し、ネットワーク102に接続され得る他の管理者端末(図示せず)に対して図示したりすることで、通信システム100の稼働状況等に関する情報端末の役割を担う。
【0018】
ネットワーク102は、例えばイントラネット等の狭域のネットワークおよびインターネット回線等の広域に接続するネットワークを含む汎用的なネットワークである。ネットワーク102は、サーバ装置101と通信装置103との間を接続し、サーバ装置101と通信装置103との間で相互にデータを伝送する。また、ネットワーク102は、管理端末104と接続することにより、サーバ装置101と管理端末104との間の通信に用いられてもよい。
【0019】
通信装置103は、例えば無線アクセスポイントであり、本発明におけるデータ収集装置を具現化する一例である。通信装置103は、例えばIEEE802.11やIEEE802.15等の無線通信規格に準拠し、通信リンク106を介して子機端末105との間で無線通信を行う。通信装置103は、通信リンク106を介して接続され得る複数の子機端末105同士における通信またはネットワーク102と通信リンク106との間における通信の中継を行う。また、通信装置103は、自装置の動作状態および無線通信を介して送受信されるデータフレームに含まれるパケットデータ(通信データ)を監視および蓄積し、ネットワーク102を介してサーバ装置101やネットワーク102に接続される端末(図示せず)に当該蓄積した情報を送信し得る。通信装置103が蓄積する通信データは、データフレームに限定されず、管理フレームやアクションフレーム等の無線通信を制御するデータが含まれてもよい。なお、本実施の形態の通信装置103が中継する通信は無線通信としたが、これに限定されず、例えばIEEE802.3等の有線通信規格に準拠する有線通信と、USB(Universal Serial Bus(登録商標))等のネットワーク以外のバス通信との間の通信を中継する通信装置(USBデバイスサーバ)の態様であってもよい。
【0020】
管理端末104は、通信リンク107を介して通信装置103と接続される。管理端末104は例えばPC(Personal Computer)や、タブレット端末等である。通信システム100を管理する管理者は、例えば管理端末104に備わる、通信装置103に種々の設定を行うための設定ツールを使用し、通信リンク107を介して通信装置103にアクセスし、通信装置103と子機端末105との間の通信およびそれぞれの機器の稼働状況を示すデータの収集に関する条件(例えば、イベント条件、保持期限、収集期間等であり、その詳細は後述する)を設定する。なお、本実施の形態では1つの管理端末104が図示されているが、これに限定されず通信装置103に対して複数の管理端末が接続されてもよい。
【0021】
子機端末105は、通信システム100を利用するユーザが使用する通信端末である。子機端末105は、通信装置103と通信リンク106を介して接続される。子機端末105は、通信装置103を介してネットワーク102上に接続され得る他の端末や、サーバ装置101と通信を行ったり、通信リンク106を介して接続され得る他の子機端末と通信を行ったりする。なお、本実施の形態では1つの子機端末105が図示されているが、これに限定されず、通信装置103に対して複数の子機端末が接続されてもよい。また、子機端末105はネットワーク機器に限定されず、USB等のバス通信規格により通信装置103と接続される周辺機器等であってもよい。
【0022】
通信リンク106は、通信装置103および子機端末105との間を接続する。通信リンク106は、例えばIEEE802.11ac等の無線通信規格により子機端末105との間の通信データを伝送する。なお、通信リンク106と子機端末105の間の接続は、通信リンク106の代わりに、例えばUSB等のバス通信規格等に置き換えられてもよい。
【0023】
通信リンク107は、例えば、ネットワーク102、または、通信リンク106等のネットワークインタフェースにより実現されてもよいし、RS―232C、または、USB等のバス通信インタフェースにより実現されてもよい。また、通信リンク107は、通信リンク106に通信リンク107に相当する通信内容を伝送させて管理端末104が通信装置103にアクセスしてもよい。
【0024】
図2は本発明の実施の形態に係る通信装置の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように通信装置103は、計時部201、状態取得部202、判定部203,一時記憶部204、記録対象情報収集部205、記憶部206、通信部207、および、受付部208を備える。通信装置103における上記各機能は、通信装置103が備えるCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、記憶装置(例えば、eMMC(Embedded Multimedia Card)や、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置)、通信モジュール等のハードウェアにより実現される。具体的には、ROM等に格納されたプログラムをCPUが読み出してこれらハードウェアと協調しつつ実行することにより実現される。
【0025】
計時部201は、状態取得部202が通知する時刻情報取得要求を受信すると、時刻情報取得要求を受信した時点の現在時刻情報を状態取得部202に通知する。計時部201は、例えばRTC(Real Time Clock)等のデバイスにより構成され、時刻を計時する。
【0026】
状態取得部202は、通信装置103の動作状況を示す機器状態情報(例えば、syslog、kernel message等に含まれる機器のエラー情報、または通信インタフェース等に対する接続状態の変化に関する情報等。)および、無線通信状態情報(例えば、子機端末105との無線通信に係る無線通信フレームおよび無線モジュール等を制御する無線ドライバや、認証制御および接続制御に係るアプリケーションソフトウェアの動作ログ、または、ノイズフロア値、帯域占有率等)を、OS(Operating System)の動作ログ情報、無線通信モジュール等を制御するソフトウェア、または、無線通信モジュール等が授受したフレームを管理するインタフェース等から定期的に収集する。また、状態取得部202は、機器状態情報および無線通信状態情報を取得すると、前述のとおり、当該状態情報が取得された時点でのタイミングで、計時部201に対して時刻情報取得要求を通知する。また、状態取得部202は、計時部201から通知された時刻情報を機器状態情報および無線通信状態情報に紐づけた状態データを判定部203に通知する。なお、機器状態情報、および無線通信状態情報を定期的に収集するための周期は、管理端末104の設定ツールによって決められる。
【0027】
判定部203は、状態取得部202から通知を受けた状態データを、管理者が受付部208を通じて例えば設定ツール等から入力したイベント条件に照らし合わせる。イベント条件とは、例えば、通信リンク106の切断を示すフレームの受信、無線ネットワークに参加するための認証手続きの失敗に関連する制御ソフトウェアのログ情報、無線環境情報における受信強度の低下、または、通信装置103上で動作するOSが記録する機器状態情報に含まれ得るエラー情報等の条件を組み合わせた情報である。イベント条件は、1つまたは複数種類設定され、後述する特定イベント条件テーブル500にまとめられて管理される。判定部203は、状態データについて特定イベント条件テーブル500を参照した結果、特定イベント条件テーブルに記載されたいずれかのイベント条件に合致するイベント(特定イベントのうちのいずれかのイベント)が発生したと判定すると、記録対象情報収集部205に対して当該特定イベントが発生した旨を示すイベント情報を通知する。以下、特定イベントを含む状態データを特定状態データと呼ぶこととする。また、判定部203は、一時記憶部204が保持している状態データの各々について、保持期限が超過した状態データが存在するか否かを判定する。そこで、保持期限を超過する時刻情報を持つ状態データが存在すると判定すると、判定部203は、一時記憶部204に対して当該状態データの削除を指示する。保持期限とは、状態取得部202により定期的に取得されたそれぞれの状態データを保持する期間である。
【0028】
ここで、
図5を用いて、本実施の形態に係る特定イベント条件テーブルについて詳細に説明する。
【0029】
図5は特定イベント条件テーブルの一例を示す。
図5に示されるように、特定イベント条件テーブル500は、IDフィールド501、特定イベントフィールド502、収集期間フィールド503を備える。IDフィールド501は、特定イベントフィールド502と収集期間フィールド503とを紐づけて管理する項目である。IDフィールド501は、識別番号で管理されてもよいし、特定の名称(例えばテキスト名)等によって管理されてもよい。特定イベントフィールド502は状態取得部202が取得した機器状態情報または無線通信状態情報に含まれる情報において、管理者が特定イベントとして検出を所望する条件(例えばIDフィールド番号1では、通信リンク106が切断されたことを意味するdeauthenticationまたはdisassociationフレームを受信したことを示すログの指定)を格納する。収集期間フィールド503は、イベント前後補足情報を収集する期間を指定する値(例えば時間による期間指定)を格納する。特定イベント条件テーブル500は記憶部206に記憶される。
【0030】
図2に戻って、一時記憶部204は、判定部203で特定イベントが発生したか否かの判定結果を問わず、状態取得部202から通知を受けた状態データを記憶する。また、一時記憶部204は、保持期限の間のみ状態データを保持する。一時記憶部204は、記憶領域に限界があるため、保持期間には上限を設ける。すなわち、判定部203により保持期限を過ぎたと判定された時刻情報を持つ状態データは破棄され、後に新たに取得され得る状態データを保存するための領域を確保する。一時記憶部204は、例えばRAM等の揮発性記憶手段、またはeMMC等に一時記憶をするための特定の領域を設けた不揮発性記憶手段により実現される。
【0031】
記録対象情報収集部205は、判定部203が特定イベントの発生を検出した旨を示すために行うイベント情報通知の受信を契機に、一時記憶部204から特定状態データを取得し、記憶部206に記憶させる。また、記録対象情報収集部205は、特定イベント条件テーブル500に格納された収集期間(Δt)の情報に基づいて、特定状態データが持つ時刻情報(T)の前後の収集期間(T-Δt~TおよびT~T+Δt)の間に記録された状態データも、イベント前後補足情報として一時記憶部204から取得し、記憶部206に記憶させる。特定イベント発生から収集期間Δtが経過し、イベントの解析のために必要最小限の情報収集、および、記憶部206に当該収集した情報を記録させる処理を完了すると、記録対象情報収集部205は、通信部207に対してイベント情報に基づく処理が完了した旨の通知(イベント情報処理完了通知)を行ってもよい。
【0032】
また、記録対象情報収集部205は、当該取得した前後の期間を含む一群の状態データを記録対象データとして記憶部206に記憶させることに加えて、通信部207に通知してネットワーク102により接続されているサーバ装置101に送信させてもよい。なお、収集期間Δtは、
図5に例示されるとおり、特定イベントに対してそれぞれ個別の数値を設定してもよいし、イベント発生前とイベント発生後の収集期間は互いに異なってもよい。イベントの種類に応じて、その解析のために必要なデータ期間がイベント発生前後でも異なることがあり得るからである。
【0033】
記憶部206は、記録対象情報収集部205が通知する状態データを記憶する。記憶部206は不揮発性メモリ等で構成される記憶装置である。記憶部206は例えば、eMMC、SSD、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性記憶装置で実現されるが、RAM等の揮発性記憶装置上に特定の記憶領域を設定し、状態データを記憶する態様としてもよい。
【0034】
通信部207は、ネットワーク102と通信装置103とを接続する。通信部207は無線通信モジュール等を利用して無線ネットワークによりネットワーク102と接続されてもよいし、有線通信モジュール等を利用して有線ネットワークによりネットワーク102と接続されてもよい。
【0035】
受付部208は、管理端末104と接続され、管理端末104(設定ツール)から送信される情報保存設定および保持期限を含む要求を受け付ける。情報保存設定とは、管理者が保存を所望する特定イベントに係る種々の条件を定義したイベント条件、および、特定イベントが発生した時間(T)前後における状態データであるイベント前後補足情報を収集する範囲を指定する収集期間(Δt)を含む要求情報である。受付部208は、管理端末104から送信される情報保存設定を受け取ると、当該情報保存設定に含まれる要求情報を記憶部206に格納された特定イベント条件テーブル500に追加する。
【0036】
[実施の形態に係る状態データ取得フローの説明]
次に
図3を使用して通信装置103が状態データを取得してから記録対象データを記憶するまでの一連の処理について説明する。
ステップS301は、一時記憶部204が状態データを保持しているか否かを、判定部203が判定するステップである。一時記憶部204が状態データを保持している場合はステップS302を実行(ステップS301のYes)し、一時記憶部204が状態データを保持していない場合はステップS304を実行する(ステップS301のNo)。
【0037】
ステップS302は、一時記憶部204が保持している状態データの各々について、保持期限が超過した状態データが存在するか否かを、判定部203が判定するステップである。一時記憶部204が保持している状態データのうち保持期限が超過している状態データが存在する場合はステップS303を実行(ステップS302のYes)し、一時記憶部204が保持している状態データのうち、保持期限が超過している状態データが存在しない場合はステップS304を実行(ステップS302のNo)する。
【0038】
ステップS303は、一時記憶部204が保持している状態データのうち、保持期限が超過している状態データを一時記憶部204から削除するステップである。本ステップで該当する状態データの削除が完了するとステップS304に進む。
【0039】
ステップS304は、状態取得部202が通信装置103の動作状況に関する機器状態情報や、無線通信状態情報を、OSの動作ログ情報、無線通信モジュール等を制御するソフトウェア、または、無線通信モジュール等が授受したフレームを管理するインタフェース等から取得するステップである。
【0040】
ステップS305は、状態取得部202が取得した機器状態情報および無線通信状態情報と計時部201から通知された現在時刻とを紐づけるステップである。より具体的には、状態取得部202は機器状態情報および無線通信状態情報を取得すると、計時部201に対して当該状態情報が取得された時点でのタイミングで、時刻情報取得要求を通知する。当該通知を受けた計時部201は通知を受け付けた時点における時刻を状態取得部202に対して通知し、状態取得部202は当該通知を受けた時刻情報を機器状態情報および無線通信状態情報に紐づけることで状態データを生成する。生成された状態データは判定部203に通知され、ステップS305の動作が完了するとステップS306に移行する。
【0041】
ステップS306は、一時記憶部204が状態取得部202から状態データの通知を受けて状態データを一時記憶するステップである。状態取得部202が取得した状態データは特定イベントを含むか否かに関わらず、一時記憶部204に一旦記憶される。
【0042】
ステップS307は、判定部203が、ステップS306にて一時記憶部204に新たに記憶された状態データの内容から、管理者により予め入力された複数のイベント条件を格納する特定イベント条件テーブル500を検索し、特定イベントに該当するイベントが発生したか否かを判定するステップである。判定部203は、状態取得部202から通知された状態データのうち、特定イベント条件テーブル500に格納された複数のイベント条件を順に照合を行い、特定イベントを検出したと判定すると、ステップS308を実行し、特定イベントが検出されなかった場合はステップS302に戻る。
【0043】
ステップS308は、判定部203がステップS306で検出した特定イベントを、イベント情報として記録対象情報収集部205に通知するステップである。イベント情報には判定部203が発生を検出した特定イベントの情報が含まれる。ステップS308の通知が完了すると、ステップS302に戻り、再び新たな状態データを取得するための一連の処理を継続する。
【0044】
[実施の形態に係る特定イベントおよびイベント前後補足情報取得フローの説明]
次に
図4を使用して通信装置103が備える記録対象情報収集部205が特定イベントに関する特定状態データ、および、イベント前後補足情報を含む記録対象データを収集する処理について説明する。なお、
図4に示す各処理は、
図3のステップS308における処理を契機に
図3の処理とは別に並行して実行される。
【0045】
ステップS401は、記録対象情報収集部205が判定部203からイベント情報の通知を受信するステップである。記録対象情報収集部205は、イベント情報の通知を受信するとステップS402を実行する。
【0046】
ステップS402は、記録対象情報収集部205が特定状態データを一時記憶部204から取得するステップである。
【0047】
ステップS403は、記録対象情報収集部205がステップS402にて取得した特定状態データに記録された、特定イベントが発生した時刻を特定するステップである。
【0048】
ステップS404は、記録対象情報収集部205がステップS403にて特定した時刻に基づいて、イベント前後補足情報のうち、特定イベントが発生した時刻より前に取得され、一時記憶部204に記憶された状態データを一時記憶部204から収集するステップである。記録対象情報収集部205は、特定イベントが発生した時刻を基準として、特定イベント条件テーブル500に記載された収集期間の範囲において、当該イベントが発生した時刻より所定時間前の状態データを一時記憶部204から収集する。なお、ステップS404において、記録対象情報収集部205は、特定イベントが発生した時刻よりも前の時刻に一時記憶部204に記憶された状態データが存在するか否かを判定するステップを含んでもよい。記録対象情報収集部205は、一時記憶部204に一時記憶された状態データのうちの一部は、保持期限を徒過して削除されてしまっている可能性もあるが、一時記憶部204が特定イベントの発生時刻よりも前に取得され一時記憶部に記憶され残っている状態データを部分的にでも取得する。一方、何らかの障害により一時記憶部204が特定イベントの発生時刻よりも前に取得された状態データを全く記憶していない場合もあり得るが、その場合はステップS404における情報収集の処理を行わずにステップS405に移行する処理フローとしてもよい。
【0049】
ステップS405は、記録対象情報収集部205がステップS403にて特定した時刻に基づいて、イベント前後補足情報のうち、特定イベントが発生した時刻より後に取得され、一時記憶部204に記憶された状態データを一時記憶部204から収集するステップである。記録対象情報収集部205は、特定イベントが発生した時刻を基準として、特定イベント条件テーブル500に記載された収集期間の範囲において、当該イベントが発生した時刻より後の状態データを一時記憶部204から収集する。
【0050】
ステップS406は、記録対象情報収集部205が、特定イベント発生後の状態データについて、追加収集を行うための収集期間が経過したか否かを判定するステップである。記録対象情報収集部205は、収集期間が指定する期間の状態データを取得し終えるまで、繰り返しステップS405を実行(ステップS406のNo)する。これにより、状態取得部202が並行して取得する特定イベント発生時刻より後の収集期間中(T~T+Δt)に取得された状態データが一時記憶部204に徐々に蓄積されるので、記録対象情報収集部205は当該蓄積された状態データを収集することができる。記録対象情報収集部205は、収集期間が経過するとステップS407を実行(ステップS406のYes)する。
【0051】
ステップS407は、記録対象情報収集部205がステップS402、S404、およびS405にて収集した一群の状態データ(つまり、特定状態データおよび特定イベント前後補足情報)を記録対象データとして記憶部206に記憶させるステップである。なお、記録対象情報収集部205は、このステップS407が実行されるタイミングで、記録対象データを記憶部206に記憶させる代わりに、通信部207を介してネットワーク102に接続されるサーバ装置101に送信させ、サーバ装置101が備える記憶手段に記憶させてもよいし、自装置およびサーバ装置101への記憶を双方が同じタイミングで実行されてもよい。また、記憶部206に記憶された記録対象データを任意のタイミングにてサーバ装置101等に送信してもよい。また、記録対象情報収集部205は、ステップS407を実行した後にイベント情報処理完了通知を通信部207に通知し、当該通知を受けた通信部207が、記憶部206に記録対象データが記憶された旨を管理端末104に通知してもよい。これにより、管理者は通信装置103が特定イベントを検出し、当該検出した特定イベントに関する記録対象データが記憶部206に記録されたことを知る事ができる。記録対象情報収集部205がステップS407の実行を終えると、判定部203が発生したと判定した特定イベントに対する記録対象データの一連の記録処理を完了する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、機器の状態情報や無線通信に関する状態情報に基づいて、通信状態を監視しつつ、通信を中継する通信装置等に利用され得る。
【符号の説明】
【0053】
100 通信システム
101 サーバ装置
102 ネットワーク
103 通信装置
104 管理端末
105 子機端末
106 通信リンク
107 通信リンク
201 計時部
202 状態取得部
203 判定部
204 一時記憶部
205 記録対象情報収集部
206 記憶部
207 通信部
208 受付部
500 特定イベント条件テーブル
501 IDフィールド
502 特定イベントフィールド
503 収集期間フィールド