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特開2024-8504モータ制御装置、アクチュエータおよびモータ制御方法
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  • 特開-モータ制御装置、アクチュエータおよびモータ制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008504
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】モータ制御装置、アクチュエータおよびモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/024 20160101AFI20240112BHJP
【FI】
H02P29/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110434
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 勇人
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA20
5H501AA22
5H501FF05
5H501JJ03
5H501JJ12
5H501JJ17
5H501JJ18
5H501KK06
5H501LL52
5H501MM09
(57)【要約】
【課題】上位コントローラがハングアップした場合に、モータの回転を安全に停止することができるモータ制御装置を提供する。
【解決手段】モータ制御装置は、第1のチャネルを通じてモータの動作に関する動作指令を送信するとともに、第1のチャネルと異なる第2のチャネルを通じて周期的信号を送信する上位コントローラと、モータに駆動電流を供給する駆動回路と、上位コントローラから受信した動作指令に基づいて駆動回路を制御する制御演算部と、上位コントローラから周期的信号が継続して受信されるか否か判断する上位監視部とを有するモータドライバとを備える。上位監視部は、上位コントローラから周期的信号が一定期間受信されない場合、駆動回路からモータへの駆動電流の供給を強制的に遮断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のチャネルを通じてモータの動作に関する動作指令を送信するとともに、前記第1のチャネルと異なる第2のチャネルを通じて周期的信号を送信する上位コントローラと、
前記モータに駆動電流を供給する駆動回路と、前記上位コントローラから受信した前記動作指令に基づいて前記駆動回路を制御する制御演算部と、前記上位コントローラから前記周期的信号が継続して受信されるか否か判断する上位監視部とを有するモータドライバとを備え、
前記上位監視部は、前記上位コントローラから前記周期的信号が一定期間受信されない場合、前記駆動回路から前記モータへの前記駆動電流の供給を強制的に遮断する
モータ制御装置。
【請求項2】
前記上位監視部は、時間の経過につれて増加し、前記上位コントローラから前記周期的信号を受信するたびにリセットされるタイマカウント値を管理し、前記タイマカウント値が閾値に達すると、前記駆動回路から前記モータへの前記駆動電流の供給を強制的に遮断する
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記第2のチャネルは、前記上位コントローラが前記モータドライバに前記モータドライバの設定を変更するコマンドを送信するためのチャネルであり、前記周期的信号は前記コマンドと区別可能な文字列を表す
請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記第2のチャネルは、前記上位コントローラと前記上位監視部を接続するワイヤであり、前記周期的信号は電気的なオン・オフ信号である
請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記モータドライバは、前記モータの動作に関するデータを格納する記憶部をさらに備え、
前記上位監視部が前記モータへの前記駆動電流の供給を遮断する時、前記上位監視部は前記記憶部に記憶された前記モータの回転角度に関するデータを消去しない
請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記駆動回路から前記モータへの前記駆動電流の供給を強制的に遮断する前記上位監視部の機能は、有効化および無効化することが切り替え可能である
請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載のモータ制御装置を備えるアクチュエータ。
【請求項8】
上位コントローラにより、第1のチャネルを通じてモータの動作に関する動作指令を送信することと、
前記上位コントローラにより、前記第1のチャネルと異なる第2のチャネルを通じて周期的信号を送信することと、
前記上位コントローラから受信した前記動作指令に基づいて、モータドライバにより、前記モータに駆動電流を供給する駆動回路を制御することと、
前記上位コントローラから前記周期的信号が継続して受信されるか否か、前記モータドライバにより判断することと、
前記上位コントローラから前記周期的信号が一定期間受信されない場合、前記駆動回路から前記モータへの前記駆動電流の供給を強制的に遮断することとを備える
モータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置およびモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの制御には、一般的に、動作指令を与える上位コントローラと、動作指令に従ってモータを駆動するモータドライバが使用される。
【0003】
特許文献1は、モータの動作異常をモータ制御装置が上位コントローラに報告し、この報告に応じて上位コントローラがモータ制御装置をリセットすることを開示する。特許文献1のモータ制御装置はモータドライバであると理解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-048387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータに通電し、上位コントローラからの動作指令に従ってモータドライバがモータを制御している最中に、上位コントローラ側でなんらかの異常が発生して、ハングアップしてしまうことがありうる。この場合、異常な動作指令がモータドライバに与えらえ続けてしまう。上位コントローラが与える動作指令がアナログ電圧指令である場合、異常な動作指令とは、例えば、ある一定値、とりわけ大きな値の電圧値が出力され続けてしまうことである。上位コントローラが与える動作指令がパルス列指令(例えばモータの回転角度に対応する)である場合、異常な動作指令とは、例えば、想定外のパルスが出力され続けてしまうことである。モータドライバが異常な動作指令を受け取ると、モータが異常に動作してしまい、モータが使用されているシステムに損傷を与える可能性がある。
【0006】
通常、モータドライバは与えられた動作指令が異常であることを知ることはできない。特許文献1に記載の技術は、この点では役に立たない。
【0007】
そこで、本発明は、上位コントローラがハングアップした場合に、モータの回転を安全に停止することができるモータ制御装置およびモータ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、モータ制御装置を提供し、このモータ制御装置は、第1のチャネルを通じてモータの動作に関する動作指令を送信するとともに、前記第1のチャネルと異なる第2のチャネルを通じて周期的信号を送信する上位コントローラと、前記モータに駆動電流を供給する駆動回路と、前記上位コントローラから受信した前記動作指令に基づいて前記駆動回路を制御する制御演算部と、前記上位コントローラから前記周期的信号が継続して受信されるか否か判断する上位監視部とを有するモータドライバとを備える。前記上位監視部は、前記上位コントローラから前記周期的信号が一定期間受信されない場合、前記駆動回路から前記モータへの前記駆動電流の供給を強制的に遮断する。
【0009】
本発明の態様においては、動作指令が供給される第1のチャネルと異なる第2のチャネルを介して、周期的信号が上位コントローラからモータドライバに供給される。上位コントローラがハングアップした場合に、周期的信号の送信は停止する。モータドライバの上位監視部は、周期的信号が継続して受信されるか否か判断し、周期的信号が一定期間受信されない場合、モータドライバの駆動回路からモータへの駆動電流の供給を強制的に遮断する。したがって、上位コントローラがハングアップした場合に、上位監視部は、モータの回転を安全に停止することができる。この場合、モータの回転を停止するために、上位監視部は、制御演算部をリセットする必要がなく、モータへの駆動電流の供給を遮断するので、確実にモータの回転を停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の実施形態に係るモータ制御装置を示すブロック図である。
図2図2はモータ制御装置の上位コントローラが送信する周期的信号を示すタイムチャートである。
図3図3はモータ制御装置のモータドライバの動作を示すタイムチャートである。
図4図4は本発明の実施形態の変形例に係るモータ制御装置を示すブロック図である。
図5図5は本発明に係るモータ制御装置を使用可能な車両の振動抑制機構を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施形態を説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るモータ制御装置は、上位コントローラ1とモータドライバ2を有する。上位コントローラ1とモータドライバ2は、第1のチャネルc1と第2のチャネルc2を介して接続されている。
上位コントローラ1は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサである。上位コントローラ1は、第1のチャネルc1を通じてモータ3の動作に関する動作指令をモータドライバ2に送信し、第2のチャネルc2を通じて周期的信号をモータドライバ2に送信する。図2は、周期的信号を示すタイムチャートである。周期的信号の送信周期は、例えば、数ms~数秒である。
【0012】
動作指令は、モータ3の回転の方向、回転角度および回転速度を指令する。動作指令はアナログ電圧指令であってもよいし、パルス列指令であってもよい。第1のチャネルc1は、上位コントローラ1がモータドライバ2に動作指令を伝送するためのチャネルであって、アナログ電圧指令またはパルス列指令を伝送するのに適したタイプであれば、タイプは限定されない。例えば、第1のチャネルc1は、第2のチャネルc2とは別に設けられたRS-232Cに準拠したシリアル通信のためのチャネルであってもよい。
第2のチャネルc2は、上位コントローラ1がモータドライバ2にモータドライバ2の設定を変更するための各種のコマンドを伝送するためのチャネルであって、例えばRS-232Cに準拠したシリアル通信のためのチャネルである。上記の周期的信号はコマンドの一種と考えることができるが、この明細書では、理解の容易のため、周期的信号はコマンドとは異なるものとして説明する。
【0013】
モータドライバ2は、CPU、MPUなどのプロセッサ21、記憶部22および駆動回路23を有する。プロセッサ21は、記憶部22に記憶されたコンピュータプログラムに従って動作し、上位コントローラ1から供給される動作指令およびコマンドに従って、駆動回路23ひいてはモータ3を制御する。
記憶部22は、コンピュータプログラムおよびモータ3の動作に必要な各種のデータを格納する。モータ3の動作に必要なデータは、モータ3の現在の回転角度に関するデータを含む。図1では、モータドライバ2は単一の記憶部22を有するが、モータドライバ2は、コンピュータプログラムを格納する記憶部とモータの動作に必要なデータを格納する他の記憶部を有していてもよい。
駆動回路23は、プロセッサ21からの指令に従って、モータ3に駆動電流を供給する。
【0014】
プロセッサ21は、制御演算部21a、上位監視部21bおよびタイマ21cを有する。制御演算部21a、上位監視部21bおよびタイマ21cは、プロセッサ21がコンピュータプログラムに従って動作することにより、実行される制御機能と考えてよい。
【0015】
制御演算部21aは、上位コントローラ1から受信した動作指令に基づいて駆動回路23を制御して、これによりモータ3の回転の方向、回転角度および回転速度を制御する。
上位監視部21bは、上位コントローラ1から受信したコマンドに従って、制御演算部21aの設定を変更する。また、上位監視部21bは、コマンドに従って変更した制御演算部21aの設定状態をモータの動作に必要なデータとして記憶部22に記憶する。
さらに、上位監視部21bは、上位コントローラ1から周期的信号が継続して受信されるか否か判断する。上位監視部21bは、上位コントローラ1から周期的信号が一定期間受信されない場合、駆動回路23からモータ3への駆動電流の供給を強制的に遮断する。上位コントローラ1から周期的信号が受信される場合、上位監視部21bは、駆動電流の供給を遮断しない。
【0016】
上位コントローラ1は、上位コントローラ1がハングアップしない限り、周期的信号を送信し続ける。換言すれば、上位コントローラ1がハングアップした場合には、上位コントローラ1は周期的信号の送信を継続できなくなる。したがって、上位コントローラ1がハングアップした場合に、上位コントローラ1が動作指令を送信し続けたとしても、上位監視部21bは、モータ3の回転を安全に停止することができる。この場合、モータ3の回転を停止するために、上位監視部21bは、制御演算部21aをリセットする必要がなく、モータ3への駆動電流の供給を遮断するので、確実にモータ3の回転を停止することができる。
【0017】
図3を参照して、モータドライバ2のプロセッサ21の動作をさらに具体的に説明する。図3の上部は、タイマ21cがカウントするタイマカウント値の変化を示し、図3の下部はモータ3の通電状態の変化を示す。
上位監視部21bは、タイマ21cがカウントするタイマカウント値を管理する。タイマ21cは、図示しないクロック発生回路と連動し、経過時間をカウントする。タイマ21cがカウントする経過時間をタイマカウント値と呼ぶ。図3に示すように、タイマカウント値は、時間の経過につれて増加する。
しかし、上位監視部21bは、上位コントローラ1から周期的信号を受信すると、タイマカウント値をゼロにリセットする。図3において、「R」はタイマカウント値がゼロにリセットされる時刻を示す。上位コントローラ1がハングアップしていない正常な状態にある場合には、モータドライバ2が周期的信号を周期的に受信するので、上位監視部21bはタイマカウント値をほぼ周期的にリセットする。但し、上位コントローラ1が周期的信号を完全に周期的に送信するとは限らず、またタイマ21cのカウントが完全に周期的であるとは限らないので、タイマカウント値がゼロにリセットされる時刻Rは完全に周期的ではない場合もある。図3において、タイマカウント値の局所的最大値が一定でないのは、このためである。
【0018】
一方、上位コントローラ1がハングアップして、周期的信号を送信しなくなった場合、モータドライバ2が周期的信号を受信しなくなるので、タイマカウント値はリセットされずに増加し続ける。上位監視部21bは、タイマカウント値が閾値に達すると、駆動回路23からモータ3への駆動電流の供給を強制的に遮断する。遮断の方法としては、上位監視部21bが駆動回路23内のスイッチ素子を動作させてもよいし、上位監視部21bが駆動回路23に遮断のための指令信号を供給してもよい。図3の電流遮断はこれを示す。
図3において、閾値は、モータドライバ2が上位コントローラ1から周期的信号を通常通り受信する限り、タイマカウント値が達しないレベルに設定されている。
このように、タイマカウント値を管理して、監視するだけで、上位コントローラ1がハングアップした場合に、上位監視部21bは簡単にモータ3の回転を安全に停止することができる。
【0019】
上記の通り、周期的信号が伝送される第2のチャネルc2は、上位コントローラ1がモータドライバ2にモータドライバ2の設定を変更する各種のコマンドを送信するためのチャネルである。つまり、モータドライバ2の設定を変更する各種のコマンドを送信するための第2のチャネルc2を介して、周期的信号が送信される。したがって、第2のチャネルc2は既存のチャネルであってよく、モータ制御装置への部品の増加の必要性がない。
周期的信号はコマンドと区別可能な文字列を表す。モータドライバ2に与えられるモータ制御のためのコマンドは、復調されるとアルファベットから構成された文字列を表す。周期的信号は、復調されるとアルファベットから構成された、他の種類のコマンドとは異なる文字列を表す。したがって、上位監視部21bは、周期的信号をコマンドと容易に区別することができる。周期的信号を表す文字列は、コマンドと区別可能であれば、どのような文字列であってもよい。
好ましくは、周期的信号を表す文字列は、モータ制御装置のユーザが任意に決定および変更することができる。この場合には、モータ制御装置のユーザの要望に応じて、使い勝手を向上させることができる。
【0020】
上記の通り、モータドライバ2は、モータ3の動作に関するデータを格納する記憶部22を有する。上位監視部21bがモータ3への駆動電流の供給を遮断する時、上位監視部21bは記憶部22に記憶されたモータ3の回転角度(駆動電流供給遮断時すなわちモータ3の回転停止時の回転角度)に関するデータを消去しない。
モータ3の回転を再開する場合、モータ3の回転停止時のモータ3の回転角度に関するデータを利用して、演算制御部はモータ3の駆動を再開することができる。したがって、モータ3の原点復帰などの動作が不要であり、円滑に(時間をかけずに)モータ3の駆動を再開することができる。
【0021】
駆動回路23からモータ3への駆動電流の供給を強制的に遮断する上位監視部21bの機能は、必要に応じて有効化および無効化することが切り替え可能であることが好ましい。例えば、モータ3を有する装置の試験中は、上位監視部21bの駆動電流の供給の遮断の機能を無効化してもよい。そして、モータ3を有する装置を実際に使用する場合に、上位監視部21bの駆動電流の供給の遮断の機能を有効化してもよい。
【0022】
図4は、実施形態の変形例に係るモータ制御装置を示す。この変形例では、上位コントローラ1とモータドライバ2は、第1のチャネルc1とコマンド用のチャネルc3と周期的信号用のチャネルc4を介して接続されている。
上記の実施形態と同様に、上位コントローラ1は、上位コントローラ1は、第1のチャネルc1を通じてモータ3の動作に関する動作指令をモータドライバ2に送信する。但し、コマンド用のチャネルc3と周期的信号用のチャネル(第2のチャネル)c4は別個に設けられており、上位コントローラ1は、第2のチャネルc4を通じて周期的信号をモータドライバ2に送信し、チャネルc3を通じてコマンドをモータドライバ2に送信する。
この変形例では、第2のチャネルc4は上位コントローラ1と上位監視部21bを接続するワイヤであり、周期的信号は電気的なオン・オフ信号である。上位コントローラ1は、上位コントローラ1がハングアップしない限り、オン・オフ信号を繰り返し送信する。上位コントローラ1がハングアップした場合には、信号は常にオフまたはオンになる。
【0023】
上位監視部21bは、第2のチャネルc4の電気的な信号がオンまたはオフになると、タイマカウント値をゼロにリセットする。
一方、上位コントローラ1がハングアップして、信号が常にオフまたはオンになると、タイマカウント値はリセットされずに増加し続ける。上位監視部21bは、タイマカウント値が閾値に達すると、駆動回路23からモータ3への駆動電流の供給を強制的に遮断する。したがって、上位コントローラ1がハングアップした場合に、上位コントローラ1が動作指令を送信し続けたとしても、上位監視部21bは、モータ3の回転を安全に停止することができる。
この変形例では、モータ制御装置にワイヤを追加するだけで、上位コントローラ1が周期的信号をモータドライバ2に送信することができる。
【0024】
この変形例の他の特徴は、実施形態の特徴と同じである。駆動回路23からモータ3への駆動電流の供給を強制的に遮断する上位監視部21bの機能は、必要に応じて有効化および無効化することが切り替え可能であってよい。
【0025】
実施形態および変形例に係るモータ制御装置は、振動が激しく上位コントローラがハングアップしやすい環境で好適に使用可能である。例えば、車両、建設機械、ロボットにおいて、モータ制御装置は使用されうる。
一例として、図5は、本発明に係るモータ制御装置を使用可能な車両の振動抑制機構を示す。図5に示すように、車両には、下方支持台30、上方支持台31、および積載台32が設けられている。下方支持台30、上方支持台31、および積載台32は剛性材料、例えば金属から形成されている。下方支持台30は、図示しないシャーシに支持されている。積載台32には、運搬対象物が積載される。
【0026】
下方支持台30には、アクチュエータ33,34が取り付けられ、アクチュエータ33,34には上方支持台31が支持されており、アクチュエータ33,34の駆動によって上方支持台31は鉛直方向に移動可能である。アクチュエータ33,34の各々は、上記のモータ制御装置を備える。
上方支持台31には、アクチュエータ35,36が取り付けられ、アクチュエータ35,36には積載台32が支持されており、アクチュエータ35,36の駆動によって積載台32は水平方向(例えば車両の前後方向)に移動可能である。
詳細な図示は省略するが、各アクチュエータ機構は、ボールねじ機構であり、その機構のボールねじ軸はモータ3で回転させられる。したがって、アクチュエータ33,34のモータ3が回転すると、上方支持台31は鉛直方向に移動し、アクチュエータ35,36のモータ3が回転すると、積載台32は水平方向に移動する。
車両の揺れに応じて、上位コントローラ1は、揺れを打ち消すようにモータ3を制御するため、モータドライバ2に動作指令を供給する。したがって、積載台32の振動を抑制することができる。
【0027】
揺れが激しい車両においては、上位コントローラ1がハングアップする懸念がある。しかし、本発明の実施形態および変形例によれば、上位コントローラ1がハングアップしても、モータ3の回転を安全に停止することができる。モータ3が停止した場合には、車両の振動を抑制する機能が達成されなくなるが、モータ3が異常な回転を続けて、ボールねじ機構の部品(ボールねじ軸、直動ナットなど)および/または車両の部品(上方支持台31、積載台32など)を破壊するおそれが払しょくされる。
【0028】
以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。
【0029】
本発明の態様は、下記の番号付けされた条項にも記載される。
条項1. 第1のチャネルを通じてモータの動作に関する動作指令を送信するとともに、前記第1のチャネルと異なる第2のチャネルを通じて周期的信号を送信する上位コントローラと、
前記モータに駆動電流を供給する駆動回路と、前記上位コントローラから受信した前記動作指令に基づいて前記駆動回路を制御する制御演算部と、前記上位コントローラから前記周期的信号が継続して受信されるか否か判断する上位監視部とを有するモータドライバとを備え、
前記上位監視部は、前記上位コントローラから前記周期的信号が一定期間受信されない場合、前記駆動回路から前記モータへの前記駆動電流の供給を強制的に遮断する
モータ制御装置。
【0030】
条項2. 前記上位監視部は、時間の経過につれて増加し、前記上位コントローラから前記周期的信号を受信するたびにリセットされるタイマカウント値を管理し、前記タイマカウント値が閾値に達すると、前記駆動回路から前記モータへの前記駆動電流の供給を強制的に遮断する
条項1に記載のモータ制御装置。
この条項によれば、タイマカウント値を管理して、監視するだけで、上位コントローラがハングアップした場合に、上位監視部は簡単にモータの回転を安全に停止することができる。
【0031】
条項3. 前記第2のチャネルは、前記上位コントローラが前記モータドライバに前記モータドライバの設定を変更するコマンドを送信するためのチャネルであり、前記周期的信号は前記コマンドと区別可能な文字列を表す
条項1または2に記載のモータ制御装置。
この条項によれば、モータドライバの設定を変更する各種のコマンドを送信するための第2のチャネルを介して、周期的信号が送信される。第2のチャネルは既存のチャネルであってよく、モータ制御装置への部品の増加の必要性がない。
【0032】
条項4. 前記第2のチャネルは、前記上位コントローラと前記上位監視部を接続するワイヤであり、前記周期的信号は電気的なオン・オフ信号である
条項1または2に記載のモータ制御装置。
この条項によれば、モータ制御装置にワイヤを追加するだけで、上位コントローラが周期的信号をモータドライバに送信することができる。
【0033】
条項5. 前記モータドライバは、前記モータの動作に関するデータを格納する記憶部をさらに備え、
前記上位監視部が前記モータへの前記駆動電流の供給を遮断する時、前記上位監視部は前記記憶部に記憶された前記モータの回転角度に関するデータを消去しない
条項1から4のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
この条項によれば、モータの回転を再開する場合、モータの回転停止時のモータの回転角度に関するデータを利用して、演算制御部はモータの駆動を再開することができる。したがって、モータの原点復帰などの動作が不要であり、円滑に(時間をかけずに)モータの駆動を再開することができる。
【0034】
条項6. 前記駆動回路から前記モータへの前記駆動電流の供給を強制的に遮断する前記上位監視部の機能は、有効化および無効化することが切り替え可能である
条項1から5のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
この条項によれば、駆動電流の供給の遮断の機能を必要に応じて、有効化および無効化することが可能である。例えば、モータを有する装置の試験中は、上位監視部の駆動電流の供給の遮断の機能を無効化してもよい。
【0035】
条項7. 条項1から6のいずれか1項に記載のモータ制御装置を備えるアクチュエータ。
【0036】
条項8. 上位コントローラにより、第1のチャネルを通じてモータの動作に関する動作指令を送信することと、
前記上位コントローラにより、前記第1のチャネルと異なる第2のチャネルを通じて周期的信号を送信することと、
前記上位コントローラから受信した前記動作指令に基づいて、モータドライバにより、前記モータに駆動電流を供給する駆動回路を制御することと、
前記上位コントローラから前記周期的信号が継続して受信されるか否か、前記モータドライバにより判断することと、
前記上位コントローラから前記周期的信号が一定期間受信されない場合、前記駆動回路から前記モータへの前記駆動電流の供給を強制的に遮断することとを備える
モータ制御方法。
【0037】
条項9. 前記周期的信号が継続して受信されるか否か判断することは、時間の経過につれて増加し、前記上位コントローラから前記周期的信号を受信するたびにリセットされるタイマカウント値が閾値に達するか否か判断することを有する
条項7に記載のモータ制御方法。
【符号の説明】
【0038】
1 上位コントローラ
2 モータドライバ
3 モータ
21 プロセッサ
22 記憶部
23 駆動回路
21a 制御演算部
21b 上位監視部
21c タイマ
c1 第1のチャネル
c2,c4 第2のチャネル
図1
図2
図3
図4
図5