(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085052
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】電気接続ユニット
(51)【国際特許分類】
H01R 4/01 20060101AFI20240619BHJP
H01R 4/48 20060101ALI20240619BHJP
H01R 11/22 20060101ALN20240619BHJP
【FI】
H01R4/01
H01R4/48 Z
H01R11/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199376
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】北岡 賢一
(72)【発明者】
【氏名】林 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】舘 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大輔
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB13
5E085CC03
5E085DD07
5E085EE11
5E085EE24
5E085GG13
5E085GG35
5E085JJ01
(57)【要約】
【課題】接続部材とピン端子との高い接続信頼性を得つつ、接続作業を容易に行えるようにすることを目的とする。
【解決手段】ピン端子10が接続される電気接続ユニット10であって、第1挟持板部24Aと、第1挟持板部と対向する第2挟持板部24Bと、第1挟持板部と第2挟持板部とを連結する連結支持部30とを有する接続部材22と、第1挟持板部と第2挟持板部とを接近方向に付勢する付勢部材40と、を備え、第1挟持板部は、ピン端子と接する第1接触部26Aを含み、第2挟持板部は、第1接触部とは反対側でピン端子と接する第2接触部26Bを含み、付勢部材は、第1挟持板部と第2挟持板部とのそれぞれを接近方向に付勢して、第1挟持板部と第2挟持板部とのそれぞれからピン端子に対する接触圧を付与し、付勢部材は、温度上昇により、接触圧を高めるように形態記憶されている形状記憶合金によって構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン端子が接続される電気接続ユニットであって、
第1挟持板部と、前記第1挟持板部と対向する第2挟持板部と、前記第1挟持板部と前記第2挟持板部とを連結する連結支持部とを有する接続部材と、
前記第1挟持板部と前記第2挟持板部とを接近方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記第1挟持板部は、前記ピン端子と接する第1接触部を含み、
前記第2挟持板部は、前記第1接触部とは反対側で前記ピン端子と接する第2接触部を含み、
前記付勢部材は、前記第1挟持板部と前記第2挟持板部とのそれぞれを接近方向に付勢して、前記第1挟持板部と前記第2挟持板部とのそれぞれから前記ピン端子に対する接触圧を付与し、
前記付勢部材は、温度上昇により、前記接触圧を高めるように形態記憶されている形状記憶合金によって構成されている、電気接続ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の電気接続ユニットであって、
前記第1挟持板部は、長尺板状に形成されると共に、その長手方向中間部に前記第1接触部が形成され、
前記第2挟持板部は、長尺板状に形成されると共に、その長手方向中間部に前記第2接触部が形成され、
前記連結支持部は、前記第1挟持板部のうち前記第1接触部よりも一方の端側の部分と、前記第2挟持板部のうち前記第2接触部よりも一方の端側の部分とを連結し、
前記付勢部材は、前記第1挟持板部のうち前記第1接触部よりも他方の端側の部分と、前記第2挟持板部のうち前記第2接触部よりも他方の端側の部分とのそれぞれを接近方向に付勢する、電気接続ユニット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電気接続ユニットであって、
前記第1接触部及び前記第2接触部は、それぞれ外側に凸をなす部分筒状に形成されている、電気接続ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の電気接続ユニットであって、
前記第1接触部の内周面は、前記第2接触部によって押された前記ピン端子を、前記第1挟持板部の長手方向において一定位置に誘い込む形状に形成されている、電気接続ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の電気接続ユニットであって、
前記第1接触部の内周面は、前記ピン端子の外形の半径よりも小さい曲率半径で凹む底面を含む、電気接続ユニット。
【請求項6】
請求項4に記載の電気接続ユニットであって、
前記第2接触部の内周面は、前記ピン端子の外形の半径よりも大きい曲率半径で凹む押付面を含む、電気接続ユニット。
【請求項7】
請求項2に記載の電気接続ユニットであって、
前記付勢部材は、前記第1挟持板部の外面側に位置する第1付勢片と、前記第2挟持板部の外面側に位置する第2付勢片と、前記第1付勢片と前記第2付勢片とを連結する連結部とを有し、
前記連結部が前記第1挟持板部及び前記第2挟持板部のそれぞれの前記他方の端部よりも該他方側に位置し、前記第1付勢片及び前記第2付勢片のそれぞれが前記連結部から前記第1接触部及び前記第2接触部に向って延出しており、
前記第1挟持板部及び前記第2挟持板部のそれぞれに係止部が形成され、前記第1付勢片及び前記第2付勢片のそれぞれに前記連結部側への抜けを防止するように前記各係止部に係止する相手側係止部が形成されている、電気接続ユニット。
【請求項8】
請求項7に記載の電気接続ユニットであって、
前記各係止部は、係止孔であり、
前記各相手側係止部は、前記第1付勢片及び前記第2付勢片のそれぞれの先端側から前記連結部に向いつつ前記各係止孔内に向かう係止片である、電気接続ユニット。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の電気接続ユニットであって、
前記連結部が、前記第1挟持板部の前記他方の端と、前記第2挟持板部の前記他方の端とに接している、電気接続ユニット。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載の電気接続ユニットであって、
前記付勢部材は、Ni-Ti合金又はNi-Ti-Cu合金である、電気接続ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気接続ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、メスピンと、形状記憶スプリングとを備えるゼロインサーションフォースコネクタを開示している。特許文献1では、形状記憶スプリングが通電加熱されると、当該形状記憶スプリングの形状回復力によってメスピンが開いた状態となる。これにより、オスピンをメスピンに挿入する際の装着力をゼロにできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気的な接続箇所において、耐振動性及び接点発熱抑制のために、接触箇所の接触圧を高めることが要請されることが考えられる。しかしながら、接触圧を高めると、接続のために要する力が大きくなり、接続作業性が悪くなる可能性がある。特許文献1に開示の技術では、オスピンの挿入作業時に形状記憶スプリングを通電によって加熱する必要があり、接続作業が面倒である。
【0005】
そこで、本開示は、接続部材とピン端子との高い接続信頼性を得つつ、接続作業を容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電気接続ユニットは、ピン端子が接続される電気接続ユニットであって、第1挟持板部と、前記第1挟持板部と対向する第2挟持板部と、前記第1挟持板部と前記第2挟持板部とを連結する連結支持部とを有する接続部材と、前記第1挟持板部と前記第2挟持板部とを接近方向に付勢する付勢部材と、を備え、前記第1挟持板部は、前記ピン端子と接する第1接触部を含み、前記第2挟持板部は、前記第1接触部とは反対側で前記ピン端子と接する第2接触部を含み、前記付勢部材は、前記第1挟持板部と前記第2挟持板部とのそれぞれを接近方向に付勢して、前記第1挟持板部と前記第2挟持板部とのそれぞれから前記ピン端子に対する接触圧を付与し、前記付勢部材は、温度上昇により、前記接触圧を高めるように形態記憶されている形状記憶合金によって構成されている、電気接続ユニットである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、接続部材とピン端子との高い接続信頼性を得つつ、接続作業を容易に行えるようにすることを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態に係る電気接続ユニットを示す斜視図である。
【
図2】
図2は実施形態に係る電気接続ユニットを示す斜視図である。
【
図3】
図3は電気接続ユニットを示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は電気接続ユニットにピン端子を接続した状態を示す正面図である。
【
図5】
図5は
図4において付勢部材の温度が上昇した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の電気接続ユニットは、次の通りである。
【0011】
(1)ピン端子が接続される電気接続ユニットであって、第1挟持板部と、前記第1挟持板部と対向する第2挟持板部と、前記第1挟持板部と前記第2挟持板部とを連結する連結支持部とを有する接続部材と、前記第1挟持板部と前記第2挟持板部とを接近方向に付勢する付勢部材と、を備え、前記第1挟持板部は、前記ピン端子と接する第1接触部を含み、前記第2挟持板部は、前記第1接触部とは反対側で前記ピン端子と接する第2接触部を含み、前記付勢部材は、前記第1挟持板部と前記第2挟持板部とのそれぞれを接近方向に付勢して、前記第1挟持板部と前記第2挟持板部とのそれぞれから前記ピン端子に対する接触圧を付与し、前記付勢部材は、温度上昇により、前記接触圧を高めるように形態記憶されている形状記憶合金によって構成されている、電気接続ユニットである。
【0012】
この電気接続ユニットによると、温度上昇前の状態でピン端子を第1挟持板部と第2挟持板部との間に挿入接続することで、当該接続作業を容易に行える。また、接続後の温度上昇により、第1接触部及び第2接触部のそれぞれからピン端子に対する接触圧が高まるため、高い接続信頼性を得ることができる。
【0013】
また、ピン端子を第1挟持板部と第2挟持板部との間に挿入すればよいので、第1挟持板部と第2挟持板部とに対するピン端子の挿入方向の自由度が高い。例えば、第1挟持板部と第2挟持板部とに交差する方向に沿ってピン端子を挿入する構成とすることができる。
【0014】
(2)(1)の電気接続ユニットであって、前記第1挟持板部は、長尺板状に形成されると共に、その長手方向中間部に前記第1接触部が形成され、前記第2挟持板部は、長尺板状に形成されると共に、その長手方向中間部に前記第2接触部が形成され、前記連結支持部は、前記第1挟持板部のうち前記第1接触部よりも一方の端側の部分と、前記第2挟持板部のうち前記第2接触部よりも一方の端側の部分とを連結し、前記付勢部材は、前記第1挟持板部のうち前記第1接触部よりも他方の端側の部分と、前記第2挟持板部のうち前記第2接触部よりも他方の端側の部分とのそれぞれを接近方向に付勢してもよい。
【0015】
付勢部材は、連結支持部による連結箇所を支点とし、ピン端子に接する第1接触部及び第2接触部を作用点として、当該支点から離れた位置で第1挟持板部と第2挟持板部とを接近方向に付勢するため、付勢部材の温度上昇時に、ピン端子に対する接触圧を効果的に高めることができる。
【0016】
(3)(1)又は(2)の電気接続ユニットであって、前記第1接触部及び前記第2接触部は、それぞれ外側に凸をなす部分筒状に形成されていてもよい。
【0017】
これにより、第1接触部と第2接触部との間で、ピン端子の位置が安定し、発熱状態が安定する。発熱状態が安定すれば、付勢部材が安定して動作することが期待される。
【0018】
(4)(2)の電気接続ユニットであって、前記第1接触部の内周面は、前記第2接触部によって押された前記ピン端子を、前記第1挟持板部の長手方向において一定位置に誘い込む形状に形成されていてもよい。
【0019】
この場合、ピン端子が第1挟持板部の長手方向において一定位置に支持され易い。これにより、第1接触部及び第2接触部がピン端子に接触する態様が安定し、通電時の発熱状態が安定する。発熱状態が安定すれば、付勢部材が安定して動作することが期待される。
【0020】
(5)(4)の電気接続ユニットであって、前記第1接触部の内周面は、前記ピン端子の外形の半径よりも小さい曲率半径で凹む底面を含んでもよい。
【0021】
このように、第1接触部の内周面が、ピン端子の外形の半径よりも小さい曲率半径で凹む底面を含む場合、ピン端子が当該第1接触部の内周面の底に向けて押されると、第1挟持板部の長手方向において一定位置に誘い込まれる。そして、ピン端子が第1挟持板部の長手方向において一定位置に支持され易い。これにより、通電時の発熱状態が安定し、付勢部材が安定して動作することが期待される。
【0022】
(6)(4)又は(5)の電気接続ユニットであって、前記第2接触部の内周面は、前記ピン端子の外形の半径よりも大きい曲率半径で凹む押付面を含んでもよい。
【0023】
この場合、第2接触部側では、ピン端子は、第2挟持板部の長手方向において位置変動が許容されやすい。このため、主として第1接触部を基準としてピン端子を位置決めすることができ、第1接触部と第2接触部との間で、ピン端子の位置が安定する。これにより、通電時の発熱状態が安定し、付勢部材が安定して動作することが期待される。
【0024】
(7)(2)から(6)のいずれか1つの電気接続ユニットであって、前記付勢部材は、前記第1挟持板部の外面側に位置する第1付勢片と、前記第2挟持板部の外面側に位置する第2付勢片と、前記第1付勢片と前記第2付勢片とを連結する連結部とを有し、前記連結部が前記第1挟持板部及び前記第2挟持板部のそれぞれの前記他方の端部よりも該他方側に位置し、前記第1付勢片及び前記第2付勢片のそれぞれが前記連結部から前記第1接触部及び前記第2接触部に向って延出しており、前記第1挟持板部及び前記第2挟持板部のそれぞれに係止部が形成され、前記第1付勢片及び前記第2付勢片のそれぞれに前記連結部側への抜けを防止するように前記各係止部に係止する相手側係止部が形成されていてもよい。
【0025】
このように、第1付勢片及び第2付勢片を連結部から第1接触部及び第2接触部に向って延出させることで、第1接触部及び第2接触部とピン端子との接触箇所近くで、第1付勢片及び第2付勢片を第1挟持板部と第2挟持板部とに接触させることができる。これにより、第1接触部及び第2接触部とピン端子との接触箇所で生じた熱が、付勢部材に効果的に伝わる。また、それぞれの係止部がそれぞれの相手側係止部に係止することで、付勢部材が脱落し難い。
【0026】
(8)(7)の電気接続ユニットであって、前記各係止部は、係止孔であり、前記各相手側係止部は、前記第1付勢片及び前記第2付勢片のそれぞれの先端側から前記連結部に向いつつ前記各係止孔内に向かう係止片であってもよい。
【0027】
この場合、それぞれの係止片が第1付勢片及び第2付勢片のそれぞれの先端側から連結部に向いつつそれぞれの係止孔内に向かうため、いずれの係止孔からも付勢部材が脱落し難い。また、各係止片が対応する係止孔内周面に接することで、第1挟持板部と第2挟持板部とから熱が効果的に付勢部材に伝わる。
【0028】
(9)(7)又は(8)の電気接続ユニットであって、前記連結部が、前記第1挟持板部の前記他方の端と、前記第2挟持板部の前記他方の端とに接していてもよい。
【0029】
これにより、第1挟持板部と第2挟持板部とから熱が連結部を介して付勢部材に伝わり易い。
【0030】
(10)(1)から(8)のいずれか1つの電気接続ユニットであって、前記付勢部材は、Ni-Ti合金又はNi-Ti-Cu合金であってもよい。
【0031】
これにより、温度上昇に伴い、形状記憶によって付勢部材を元の形状に戻すことができると共に、弾性係数を大きくして接続部材とピン端子との接触圧を高めることができる。
【0032】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の電気接続ユニットの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0033】
[実施形態1]
以下、実施形態に係る電気接続ユニットについて説明する。
図1及び
図2は電気接続ユニット20を示す斜視図である。
図3は電気接続ユニット20を示す分解斜視図である。
【0034】
電気接続ユニット20は、ピン端子10と接続される。
【0035】
例えば、電気接続ユニット20は、バスバ又は電線等の電気伝送媒体を介して第1電気機器に接続される。ピン端子10は、バスバ又は電線等の電気伝送媒体を介して第2電気機器に接続される。ピン端子10が電気接続ユニット20に接続されることで、第1電気機器と第2電気機器とが電気的に接続される。
【0036】
電気接続ユニット20とピン端子10とは、電力線を接続するための端子の組合せであってもよい。例えば、電気接続ユニット20が電源18に接続され、ピン端子10が負荷19に接続される(
図4及び
図5参照)。ピン端子10が電気接続ユニット20に接続されることで、電源18と負荷19とが電気的に接続される。この場合、電気接続ユニット20とピン端子10との接触箇所には、負荷19を動作させるのに見合った電流が流れる。負荷19の種類、例えば、負荷19がモータ等である場合には、当該接触箇所には大電流が流れる。
【0037】
上記ピン端子10は、丸棒状である。ピン端子10の先端部は、先端側に向って徐々に細くなる形状、例えば、半球状であってもよい。ピン端子10は、同径部分が連続する胴部を有する。ピン端子10は、例えば、銅又は銅合金の本体にメッキが施された部材であってもよい。ピン端子10に、電線又はバスバ等の配線が接続される。
【0038】
電気接続ユニット20は、接続部材22と、付勢部材40とを備える。接続部材22に上記ピン端子10が挿入接続される。付勢部材40は、ピン端子10に対する接続部材22の接触圧を高めるように、接続部材22を付勢する。
【0039】
接続部材22は、第1挟持板部24Aと、第2挟持板部24Bと、連結支持部30とを備える。
【0040】
第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとは板状に形成されている。第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとが対向して配置されている。第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとの間にピン端子10が挿入接続される。連結支持部30は、第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとが対向状態に保たれるように、第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとを連結している。電気接続ユニット20は、図示省略の樹脂製のハウジング内に収容された状態で、ピン端子と接続されてもよい。
【0041】
接続部材22は、例えば、1枚の金属板をプレス加工することによって形成される。接続部材22は、電流経路となる部分であるため、付勢部材40よりも導電性に優れた金属によって形成されることが好ましい。接続部材22は、例えば、銅板又は銅合金板によって形成される。接続部材22表面には、錫メッキ等のメッキが施されていてもよい。
【0042】
より具体的には、第1挟持板部24Aは、ピン端子10と接する第1接触部26Aを含む。本実施形態では、第1挟持板部24Aは、一方向に長い長方形板状に形成されている。第1挟持板部24Aの長手方向中間部に第1接触部26Aが形成されている。第1接触部26Aは、第1挟持板部24Aの長手方向中央に位置していてもよいし、いずれかの端に偏って位置していてもよい。
【0043】
第1接触部26Aは、外側に凸をなす部分筒状、ここでは、部分円筒状に形成されている。ここで外側とは、接続部材22としての外側、つまり、第2挟持板部24Bとは反対側である。つまり、第1接触部26Aは、第2挟持板部24Bとは反対側に凸をなす部分筒状に形成されている。ここで、部分筒状とは、筒の周方向の一部をなす形状であり、例えば、筒を縦割にして2等分以下の形状にした形状である。
【0044】
第1接触部26Aのうち第2挟持板部24B側の部分にピン端子10を収容可能な溝が形成される。第1接触部26Aが形成する溝の延在方向は、第1挟持板部24Aの長手方向に対して交差しており、ここでは、第1挟持板部24Aの長手方向に対して直交している。ピン端子10は、第1挟持板部24Aの長手方向に対して交差(ここでは直交)する姿勢で、第1接触部26Aが形成する溝に配置され得る。
【0045】
第2挟持板部24Bは、第1挟持板部24Aと同様構成であり、ピン端子10と接する第2接触部26Bを含む。
【0046】
第2接触部26Bは、第1挟持板部24Aに対向する位置に配置されており、第1挟持板部24Aとは反対側でピン端子と接する。つまり、第1接触部26Aと第2接触部26Bとの間にピン端子10が挟持される。
【0047】
第2接触部26Bは、外側、つまり、第1接触部26Aとは反対側に凸をなす部分筒状、ここでは、部分円筒状に形成されている。第2接触部26Bのうち第1挟持板部24A側の部分にピン端子10を収容可能な溝が形成される。第2接触部26Bが形成する溝の延在方向は、第1接触部26Aが形成する溝の延在方向に沿っている。第2接触部26Bが形成する溝は、第1接触部26Aが形成する溝に対向している。ピン端子10は、第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bの長手方向に対して交差(ここでは直交)する姿勢で、第1接触部26Aが形成する溝及び第2接触部26Bが形成する溝間に配置され得る。
【0048】
第2挟持板部24Bに配線接続部29Bが連なっている。ここでは、配線接続部29Bは、第2挟持板部24Bの一端に直線状に連なっている。第2挟持板部24Bと配線接続部29Bとは曲って連なっていてもよい。
【0049】
配線接続部29Bには、配線Wが接続される。配線Wは、例えば、芯線と当該芯線を覆う被覆とを有する電線である。配線Wの端部に露出する芯線が配線接続部29Bに接続される。配線Wと配線接続部29Bとの接続は、例えば、超音波接合、溶接、はんだ付等によってなされる。配線接続部29Bは、配線Wに対して圧着接続されてもよい。配線Wの端部の丸端子が配線接続部29Bにネジ止等されてもよい。配線Wは、電線で無くてもよく、例えば、バスバ等であってもよい。
【0050】
配線接続部29Bは、第1挟持板部24Aに設けられてもよい。
【0051】
連結支持部30は、第1挟持板部24Aのうち第1接触部26Aよりも一方の端側の部分と、第2挟持板部24Bのうち第2接触部26Bよりも一方の端側の部分とを連結している。第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bは、連結支持部30による支持箇所を中心として揺動し得る。このため、第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bは、連結支持部30から離れた他方の端側の部分で、距離を容易に調整し得る。
【0052】
より具体的には、連結支持部30は、第1挟持板部24Aの一方の端部の一側部と、第2挟持板部24Bの一方の端部の一側部とを連結している。連結支持部30は、第1挟持板部24Aの一方の端部の一側部から外方に出てU字状に折返して第2挟持板部24Bの一方の端部に繋がっている。
【0053】
連結支持部30のうち第2挟持板部24Bに繋がる部分は、第2挟持板部24Bの外向き面よりも外側に大きく突出している。よって、連結支持部30は、第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとの一対の外面間からはみ出て大きく曲って第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとを連結できる。連結支持部30を曲げ半径を大きくできるので、曲げ加工時等に連結支持部30が破壊され難い。
【0054】
接続部材22は、押え片23を備える。押え片23は、第1挟持板部24Aの一方の端部の他側部から外方に出てU字状に折返して第2挟持板部24Bの一方の端部の外面上に延出している。第2挟持板部24Bの一方の端部が第1挟持板部24Aの他方の端部から遠ざかる方向に移動しようとすると、押え片23が第2挟持板部24Bを第1挟持板部24Aとは反対側から押えて、当該移動を規制する。これにより、第1挟持板部24Aの一方の端部と第2挟持板部24Bの一方の端部とが一定の距離内に位置する状態に保たれ易い。
【0055】
第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bのそれぞれに係止部24Ah、24Bhが形成されている。付勢部材40の相手側係止部43A、43Bが当該係止部24Ah、24Bhに係止する。
【0056】
より具体的には、第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bのそれぞれにおいて、第1接触部26A及び第2接触部26Bよりも他方の端側に係止部24Ah、24Bhが形成されている。係止部24Ah、24Bhは、第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bの他方の端縁より第1接触部26A及び第2接触部26Bに近い。係止部24Ah、24Bhは、第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bの幅方向中央に形成されている。
【0057】
本実施形態では、係止部24Ah、24Bhは、第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bのそれぞれを厚み方向に貫通する係止孔である。よって、付勢部材40の相手側係止部43A、43Bは、係止孔としての係止部24Ah、24Bh内に嵌って当該係止部24Ah、24Bhに係止する。
【0058】
第1挟持板部24Aの他端の両角部に、その幅方向中間部よりも突出する一対の位置決め凸部27Aが形成されている(
図4参照)。第2挟持板部24Bの他端の両角部に、その幅方向中間部よりも突出する一対の位置決め凸部27Bが形成されている(
図4参照)。付勢部材40の連結部46が一対の位置決め凸部27Aの間及び一対の位置決め凸部27Bの間に配置される。
【0059】
第1挟持板部24Aのうち第1接触部26Aよりも他方の端部側の位置に、第2挟持板部24B側に突出する突部28Aが突出している。突部28Aは、第1接触部26Aと係止部24Ahとの間に位置している。ここでは、突部28Aは、第1挟持板部24Aの幅方向中央に位置している。また、突部28Aは、円状に突出している。第2挟持板部24Bのうち第2接触部26Bよりも他方の端部側の位置に、第1挟持板部24A側に突出する突部28Bが突出している。突部28Bは、突部28Aと同様構成であり、当該突部28Aと対向する位置に形成されている。突部28Aと突部28Aとが接触し合うことで、第1接触部26Aと第2接触部26Bとの最小距離と、第1挟持板部24Aの他端と第2挟持板部24Bの他端との最小距離とが、一定距離以上に保たれる。
【0060】
付勢部材40は、第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとのそれぞれを接近方向に付勢して、第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとのそれぞれからピン端子10に対する接触圧を付与する。
【0061】
本実施形態では、付勢部材40は、第1挟持板部24Aのうち第1接触部26Aよりも他方の端側の部分と、第2挟持板部24Bのうち第2接触部26Bよりも他方の端側の部分とのそれぞれを接近方向に付勢する。すなわち、第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bの長手方向において、連結支持部30による連結位置と付勢部材40による付勢位置との間に、第1接触部26A及び第2接触部26Bが位置している。つまり、第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bのうち連結支持部30によって支持された箇所を支点、第1接触部26A及び第2接触部26Bがピン端子10を挟持している箇所を作用点、付勢部材40による付勢箇所を力点とする「第2種のてこの原理」によって、付勢部材40による付勢力を、ピン端子10に作用させることができる。
【0062】
より具体的には、付勢部材40は、第1付勢片42Aと、第2付勢片42Bと、連結部46とを有する。付勢部材40は、例えば、金属板をプレス加工等することによって形成される。
【0063】
第1付勢片42Aは、第1挟持板部24Aの外面側に配置される。第2付勢片42Bは、第2挟持板部24Bの外面側に配置される。連結部46は、第1付勢片42Aの基端部と第2付勢片42Bの基端部とを連結している。つまり、第1付勢片42Aと第2付勢片42Bとが対向し合うように、第1付勢片42Aと連結部46と第2付勢片42BとがU字状に連なっている。
【0064】
連結部46は方形板状であり、その両端に第1付勢片42A及び第2付勢片42Bが連なっている。第1付勢片42A及び第2付勢片42Bは、連結部46から遠ざかるに連れて互いに接近する方向に傾斜するように延びる。第1付勢片42A及び第2付勢片42Bの先端部は、先端側に向って互いに遠ざかるように延びるガイド部42Ag、42Bgに形成されている。
【0065】
第1付勢片42A及び第2付勢片42Bの先端部に、相手側係止部43A、43Bが形成されている。相手側係止部43A、43Bは、それぞれ係止部24Ah、24Bhに係止する部分である。
【0066】
ここでは、第1付勢片42A及び第2付勢片42Bの先端部の幅方向中間部をU字状のラインに沿って切り起すことで、相手側係止部43A、43Bが形成されている。相手側係止部43A、43Bのうち付勢片42A、42Bの先端側の部分は当該付勢片42A、42Bに連なっており、付勢片42A、42Bの基端側の部分は当該付勢片42A、42Bから分離されている。相手側係止部43A、43Bは、付勢片42A、42B先端側から連結部46に向いつつ係止孔としての係止部24Ah、24Bh内に向かうように曲げ起されている。
【0067】
上記付勢部材40は、接続部材22に対して次のように組付けられる。第1付勢片42A及び第2付勢片42Bの間に、第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bの他方の端部が挿入される。この際、第1付勢片42A及び第2付勢片42Bの先端にガイド部42Ag、42Bgが形成されているため、当該ガイド部42Ag、42Bgが第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bの先端に押しつけられると、第1付勢片42A及び第2付勢片42Bが容易に押広げられる。また、第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとが接近するように変形する。このため、第1付勢片42A及び第2付勢片42Bの間に、第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bの他方の端部が容易に挿入される。
【0068】
また、相手側係止部43A、43Bは、付勢片42A、42B先端側から連結部46に向って徐々に内側に突出するように曲げ起されている。このため、第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bが相手側係止部43A、43Bに押し当てられると、相手側係止部43A、43Bが突出量を小さくするように曲るか、第1付勢片42A及び第2付勢片42Bが押広げられる。また、第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとが接近するように変形する。このため、相手側係止部43A、43Bは、第1付勢片42A及び第2付勢片42Bの外面に容易に乗上げることができる。
【0069】
第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bの他端が連結部46に近づくと、相手側係止部43A、43Bが係止孔としての係止部24Ah、24Bh内に嵌り込む。相手側係止部43A、43Bの先端が係止孔としての係止部24Ah、24Bhのうち挟持板部24A、24Bの先端寄りの面に当接するので、連結部46側への抜けを防止するように相手側係止部43A、43Bが係止部24Ah、24Bhに係止する。
【0070】
この状態では、連結部46は、第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bのうち他方の端部より外側に位置する。好ましくは、連結部46は、第1挟持板部24Aの他方の端と、第2挟持板部24Bの他方の端とに接する。例えば、連結部46は、位置決め凸部27A、27Bの間の端面27AF、27BFに接する。
【0071】
第1付勢片42A及び第2付勢片42Bは、連結部46の両端から第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bの外側を通り、第1接触部26A及び第2接触部26Bに向って延出する。第1付勢片42A及び第2付勢片42Bのうち先端寄りの部分、ここでは、ガイド部42Ag、42Bgの基端に連なる部分が第1接触部26A及び第2接触部26Bよりも他方の端寄りの部分に押付けられる。
【0072】
第1付勢片42Aと第2付勢片42Bとの最小間隔は、例えば、第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとにおける接触箇所の外面間距離よりも小さい。よって、上記のように、付勢部材40が接続部材22に装着された状態では、第1付勢片42Aと第2付勢片42Bとの距離を大きくするように付勢部材40が弾性変形している。付勢部材40が元の形状に戻ろうとする弾性力によって、第1付勢片42Aが第1挟持板部24Aを第2付勢片42B側に押し、第2付勢片42Bが第2挟持板部24Bを第1挟持板部24A側に押している。これにより、第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとが互いに近づく方向に付勢され、ピン端子10に対する第1接触部26A及び第2接触部26Bの接触圧が付与される。これにより、ピン端子10に対して第1接触部26A及び第2接触部26Bが押付けられることで、接続部材22とピン端子10との間で導通が得られる。
【0073】
付勢部材40は、温度上昇により、ピン端子10に対する第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bの接触圧を高めるように形態記憶されている形状記憶合金によって構成されている。
【0074】
接触圧が高まる前の温度は、例えば、ピン端子10を接続部材22に接続する作業がなされる温度であり、例えば、常温に属する温度である。常温は、例えば、摂氏25度±15度である。以下、温度について言及がある場合、摂氏温度による温度である。
【0075】
接触圧が高まる温度は、ピン端子10を接続部材22に接続する作業がなされる温度よりも高い温度である。接触圧が高まる温度は、例えば、常温を超える温度であってもよい。接触圧が高まる温度は、例えば、本電気接続ユニット20の使用環境温度に、ジュール熱等による加熱の影響が加味された温度であってもよい。接触圧が高まる温度は、例えば、50度以上の温度であってもよい。
【0076】
つまり、付勢部材40は、25度±15度の温度範囲から50度以上への温度上昇により、接触圧を高めるように形態記憶されていてもよい。
【0077】
形態記憶は、温度上昇により、形状変化して又は物性値が変化することで、前記接触圧を高めるように形態記憶されていればよい。
【0078】
例えば、付勢部材40の第1付勢片42Aと第2付勢片42Bとのの最小間隔を想定する。例えば、上記第1付勢片42Aのうちガイド部42Agの基端に連なる部分と第2付勢片42Bのうちガイド部42Bgに連なる部分とを結ぶ最短距離が最小間隔である。接触圧が高まる前の温度における最小間隔よりも、接触圧が高まった後における最小間隔が小さくなるように形状記憶されていることが考えられる。つまり、温度上昇によって、最小間隔が小さくなるように、付勢部材40が形状記憶されている。
【0079】
また、例えば、付勢部材40は、温度上昇によって物性値の一例である弾性係数が大きくなって、バネ荷重を高めることができるように、形態記憶されていてもよい。
【0080】
形状記憶合金は、例えば、Ni-Ti合金又はNi-Ti-Cu合金であってもよい。Ni-Ti合金又はNi-Ti-Cu合金であれば、25度±15度の温度範囲から50度以上に温度変化することで、形状変化し、さらに、弾性係数を高めるように、形態記憶することができる。これにより、温度上昇によって、付勢部材40が第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとを互いに近づく方向に付勢する力を高めることができる。
【0081】
なお、形状記憶合金は、Ni-Ti合金又はNi-Ti-Cu合金以外の合金であってもよい。
【0082】
付勢部材40は、ピン端子10と、当該ピン端子10を挟む第1挟持板部24A及び第2挟持板部24Bとの外側に位置するため、主たる導電路としての役割が期待される部分ではない。このため、付勢部材40については、導電性よりも、バネ性及び形状記憶機能に鑑みた材質を選定することができる。これに対して、ピン端子10及び接続部材22については、バネ性は無くてもよいので、導電性等に鑑みた材質を選定することができる。
【0083】
図4は電気接続ユニット20にピン端子10を接続した状態を示す正面図である。ピン端子10の外形が2点鎖線で示されている。
【0084】
第1接触部26A及び第2接触部26Bは、部分筒状に形成されている。ピン端子10が第1接触部26Aと第2接触部26Bとの間に挿入された状態で、ピン端子10の外周の1部が、第1接触部26Aが形成する溝内に収まると共に、ピン端子10の外周の他の一部が第2接触部26B内に収まった状態となっている。
【0085】
第1接触部26Aの内周面は、第2接触部26Bによって押されたピン端子10を、第1挟持板部24Aの長手方向において一定位置に誘い込む形状に形成されているとよい。
【0086】
例えば、第1接触部26Aの内周面は、ピン端子10の外形の半径よりも小さい曲率半径で凹む底面26Afを含んでもよい。本実施形態では、第1接触部26Aの内周面のうち最も深い部分に位置する底面26Afは、ピン端子10の外形の半径よりも小さい曲面形状に形成されている。第1接触部26Aの内周面のうち底面26Afの両隣の部分は、底面26Afから徐々に広がりつつ第2挟持部26B側に向う。第1接触部26Aの内周面のうち底面26Afの両隣の部分は、曲面であってもよいし、平面であってもよい。本実施形態では、第1接触部26Aの内周面のうち底面26Afの両隣の部分は、底面26Afよりも大きい曲率半径で曲る曲面に形成されている。第1接触部26Aの内周面によって形成される溝幅は、ピン端子10の外径よりも大きい。
【0087】
そして、ピン端子10が第1接触部26Aに押されると、ピン端子10が、第1接触部26Aの内周面のうち底面26Afの両隣の部分に押付けられ、それらの間で底面26Afに最も近づく一定位置に位置決めされる。
【0088】
第1接触部26Aの内周面のうち底面26Afの両隣の部分が曲面であれば、それらの部分が平面である場合と比較して、ピン端子10に対する接触面積を大きくすることができる。
【0089】
第2接触部26Bの内周面は、ピン端子10の外形の半径よりも大きい曲率半径をなしつつ凹む押付面26Bfを含む。例えば、第2接触部26Bの幅方向中間部が部分的に第1接触部26A側に変形するように加工されることで、押付面26Bfが形成される。
【0090】
上記のように、ピン端子10は、第1接触部26Aの内周面に対して2箇所で接触して一定位置に案内される。これに対して、ピン端子10は、押付面26Bfに対して1箇所で接触しており、しかも、押付面26Bfの曲率半径は、ピン端子10の外形の半径よりも大きい。このため、ピン端子10は、押付面26Bf上を滑って移動し得る。
【0091】
よって、第1接触部26Aと第2接触部26Bとの間でピン端子10が挟持されると、第1接触部26Aによって接続部材22の長手方向における位置決めがなされる。ピン端子10は、第1接触部26Aによって位置決めされた位置で、第2接触部26Bに接触し得る。押付面26Bfは、ピン端子10の外形の半径よりも大きい曲率半径で凹むように曲っているため、当該押付面が平面である場合と比較して、ピン端子10に対する接触面積を大きくできる。
【0092】
仮に、第2接触部が、第1接触部26Aと同様の位置決め機能を有していると、第1挟持板部と第2挟持板部との間で、ピン端子を位置決めする位置がズレてしまう可能性がある。この場合、ピン端子は、両方の位置決め位置の間でがたつく可能性があり、ピン端子を安定して位置で支持できない可能性がある。
【0093】
本実施形態では、第1接触部26Aに主たる位置決め機能を持たせ、第2接触部26Bに当該第1接触部26Aによる位置決め位置に追随する機能を持たせていると把握できる。
【0094】
本電気接続ユニット20の挙動について説明する。
【0095】
上記組立て後の状態が初期状態である。なお、温度上昇前(例えば、常温)であれば、第1付勢片42Aと第2付勢片42Bとが、温度上昇後よりも大きく開いていることが考えられる。このため、第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとも大きく開いており、ピン端子10は第1接触部26Aと第2接触部26Bとの間に容易に挿入され得る。
【0096】
ピン端子10が第1接触部26Aと第2接触部26Bとの間に挿入されると、第1接触部26Aの内周面と第2接触部26Bの内周面との間にピン端子10が挟込まれる。この際、第1接触部26Aと第2接触部26Bとが互いに離れる方向に押広げられる。この際、第1接触部26Aと第2接触部26Bとには、付勢部材40の付勢力F1に応じた力F2が作用している(
図4参照)。上記のように、作用点である第1接触部26Aと第2接触部26Bは、力点である付勢部材40の付勢箇所よりも、支点である連結支持部30に近い。このため、「第2種のてこの原理」によって、付勢部材40による付勢力F1は、より大きい力F2となってピン端子10に作用することができる。なお、上記力F2には、第1接触部26A及び第2接触部26B自体のバネ荷重による付勢力が加わることも考えられる。ピン端子10の挿入作業時においては、上記力F2に応じた接触圧が作用している。このため、接続部材22とピン端子10との間には、付勢力F1に応じた力F2に比例する摩擦力が作用する。
【0097】
付勢力F1は、温度上昇後の付勢力F3よりは小さい。このため、ピン端子10を接続するために要する力を小さくできる。また、接続作業時に接触圧を小さくすることによって、ピン端子10及び接続部材22のめっき摩耗を抑制できる。これにより、ピン端子10及び接続部材22との接続状態において、酸化防止、耐食防止といっためっきの機能が発揮され、高い接続信頼性が得られる。
【0098】
なお、ピン端子10の挿入作業が終った状態においても、常温であれば、ピン端子10と接続部材22との間には、力F1に応じた接触圧が作用している。
【0099】
電気接続ユニット20が電気回路の中継接続箇所として用いられる場合、接続部材22及びピン端子10の一方に電源18が電気的に接続され、他方に負荷19が電気的に接続されていると考えることができる。このため、電流が接続部材22とピン端子10とに流れる。
【0100】
電流が接続部材22とピン端子10とに流れると、ジュール熱によって接続部材22及びピン端子10が温度上昇する。接続部材22とピン端子10との接触箇所ではジュール熱によって温度上昇し易いことも考えられる。接続部材22及びピン端子10の熱が付勢部材40に伝わり、付勢部材40も温度上昇する。これにより、付勢部材40は記憶された形状に変形し、又は、付勢部材40の弾性係数等の物性値が変えられ、付勢部材40によるバネ荷重が高くなる。すると、
図5に示すように、付勢部材40による付勢力F3が、上記付勢力F1よりも大きくなる。「第2種のてこの原理」によって、付勢力F3は、より大きい力F4となってピン端子10に作用することができる。なお、上記力F4には、第1接触部26A及び第2接触部26B自体のバネ荷重による付勢力が加わることも考えられる。なお、
図5において付勢部材40が付勢力を高める前の付勢部材40及び挟持板部24A、24Bが2点鎖線で示されている。
【0101】
これにより、ピン端子10及び接続部材22との間の接触圧も大きくなる。これにより、例えば、車両等における振動条件下においても、接続部材22とピン端子10とが安定して接触した状態に保たれる。また、接続部材22とピン端子10との電気抵抗が低下し、当該接触箇所において過大に発熱することが抑制される。
【0102】
例えば、本接続部材22が電源回路又は高圧が印加される回路に適用される場合には、ジュール熱による発熱が期待される。高圧とは、例えば、60V以上であり、より好ましくは、90V以上である。
【0103】
もっとも、本電気接続ユニット20は、信号回路又は低圧が印加される回路に適用されてもよい。
【0104】
付勢部材40の温度上昇は、電気接続ユニット20及びピン端子10におけるジュール熱以外の熱によってもたらされてもよい。例えば、電気接続ユニット20周りの制御機器、駆動回路の熱、内燃機関の熱又はバッテリーの熱によって、付勢部材40が温度上昇してもよい。
【0105】
以上のように構成された電気接続ユニット20によると、温度上昇前の状態でピン端子10を第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとの間に挿入接続することで、当該接続作業を容易に行える。また、接続後の温度上昇により、第1挟持板部24A及び第2接触部26Bのそれぞれからピン端子10に対する接触圧が高まるため、高い接続信頼性を得ることができる。
【0106】
また、ピン端子10を第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとの間に挿入すればよいので、第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとに対するピン端子の挿入方向の自由度が高い。例えば、第1挟持板部24Aと第2挟持板部24Bとに交差する方向に沿ってピン端子10を挿入する構成とすることができる。例えば、ピン端子10の接続方向と、電気接続ユニット20からの配線Wの引出方向が交差する場合、特に直交する場合においても、電気接続ユニット20自体に曲げ箇所を設定することなく、容易に対応することができる。
【0107】
また、ピン端子10の挿入対象となる接続部材22を筒形状に形成しなくてもよいので、構成の簡易化が可能となる。
【0108】
また、常温に戻ると、上記接触圧が相対的に低い状態に戻るため、接続部材22に対するピン端子10の挿脱を伴うメンテナンスが容易に実施され得る。
【0109】
例えば、耐振動性及び接点における発熱抑制のために、端子のバネ荷重を高くすることが想定される。この場合、接続のために要する力が大きくなり、接続作業性が悪化する可能性がある。接続作業性を高めるために、てこの原理を利用したレバーを組込んだり、ボルトの締付け力を利用したりする構成が考えられる。これらの場合、重量化、大型化及び複雑化する可能性がある。
【0110】
本電気接続ユニット20によると、重量化、大型化及び大型化を抑制しつつ、接続作業の容易化及び接続信頼性の向上が可能となる。なお、電気接続ユニット20において、上記レバー又はボルトを利用した接続構造が適用されてもよい。
【0111】
また、連結支持部30は、挟持板部24A、24Bのうち接触部26A、26Bよりも一方の端側の部分を連結し、付勢部材40は、挟持板部24A、24Bのうち接触部26A、26Bよりも他方の端側の部分を接近方向に付勢する。このため、付勢部材40は、連結部による連結箇所を支点とし、ピン端子10に接する接触部26A、26Bを作用点として、当該支点から離れた位置で挟持板部24A、24Bを接近方向に付勢する。これにより、温度上昇時において、ピン端子10に対する接触圧を効果的に高めることができる。
【0112】
また、接触部26A、26Bは、外側に凸をなす部分筒状に形成されているため、それらの間で、ピン端子10の位置が安定する。接触部26A、26Bがピン端子10に安定して接するため、通電時の発熱状態が安定する。これにより、付勢部材40が安定して上記発熱による挙動を実現することができる。
【0113】
また、第1接触部26Aの内周面は、ピン端子10を第1挟持板部24Aの長手方向において一定位置に誘い込む形状に形成されている。このため、接触部26A、26Bがピン端子10に接触する態様が安定し、通電時の発熱状態が安定する。これにより、付勢部材40が安定して上記挙動を実現する。
【0114】
例えば、第1接触部26Aの内周面が、ピン端子10の外形の半径よりも小さい曲率半径で凹む底面26Afを含む場合、ピン端子10が当該第1接触部26Aの内周面の底に向けて押されると、第1挟持板部24Aの長手方向において一定位置に誘い込まれる。
【0115】
また、第2接触部26Bの内周面は、ピン端子10の外形の半径よりも大きい曲率半径で凹む押付面26Bfを含めば、第2接触部26B側では、ピン端子10は、第2挟持板部24Bの長手方向において位置変動が許容されやすい。このため、主として第1接触部26Aを基準としてピン端子10を位置決めすることができ、接触部26A、26Bの間で、ピン端子10の位置が安定する。
【0116】
また、付勢部材40の連結部46が挟持板部24A、24Bのそれぞれの他方の端部より外側に位置し、付勢片42A、42Bのそれぞれが連結部46から接触部26A、26Bに向って延出している。このため、接触部26A、26Bとピン端子10との接触箇所近くで、付勢片42A、42Bを挟持板部24A、24Bに接触させることができる。これにより、接触部26A、26Bとピン端子10との接触箇所で生じた熱が、40付勢部材に効果的に伝わる。また、係止部24Ah、24Bhが相手側係止部43A、43Bに係止することで、付勢部材40が接続部材22から脱落し難い。
【0117】
係止部24Ah、24Bhが係止孔であり、相手側係止部43A、43Bが付勢片42A、42Bの先端側から連結部46に向いつつ係止部24Ah、24Bh内に向かう形状であると、相手側係止部43A、43Bが係止部24Ah、24Bhから脱落し難い。また、相手側係止部43A、43Bが係止部24Ah、24Bhの孔内周面に接することで、挟持板部24A、24Bの熱が効果的に付勢部材40に伝わる。
【0118】
また、連結部46が挟持板部24A、24Bの他方の橋に接していると、挟持板部24A、24Bの熱が連結部46を介して付勢部材40に伝わり易い。
【0119】
また、付勢部材40は、Ni-Ti合金又はNi-Ti-Cu合金であれば、温度上昇によって、形状記憶により元の形状に戻すことができると共に、弾性係数を大きくして板状接続部材と相手側板状接続部材との接触圧を高めることができる。
【0120】
[変形例]
上記実施形態においてピン端子は丸棒状でなく、細長い板状、楕円棒状、角棒状であってもよい。第1接触部及び第2接触部は、部分円筒状で無くてもよく、平たい形状、部分楕円筒状、部分角筒状であってもよい。
【0121】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0122】
10 ピン端子
18 電源
19 負荷
20 電気接続ユニット
22 接続部材
23 押え片
24A 第1挟持板部
24Ah、24Bh 係止部
24B 第2挟持板部
26A 第1接触部
26Af 底面
26B 第2接触部
26Bf 押付面
27A、27B 位置決め凸部
27AF、27BF 端面(他方の端)
28A、28B 突部
29B 配線接続部
30 連結支持部
40 付勢部材
42A 第1付勢片
42Ag、42Bg ガイド部
42B 第2付勢片
43A、43B 相手側係止部
46 連結部