(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024085057
(43)【公開日】2024-06-26
(54)【発明の名称】産業機械
(51)【国際特許分類】
B29C 45/84 20060101AFI20240619BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B29C45/84
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199382
(22)【出願日】2022-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川内 亮
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM04
4F206AM05
4F206AM09
4F206AM22
4F206AR07
4F206AR16
4F206AR20
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL07
4F206JP05
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP15
4F206JP22
4F206JQ06
4F206JQ88
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】産業機械に含まれる基板の交換の有無を適切に検出することである。
【解決手段】上位基板と、上位基板と通信可能に接続された複数の下位基板とを備え、上位基板は、第1タイミングにおいて複数の下位基板の各々から、各下位基板を識別可能な識別情報を取得し、第1タイミングの後の第2タイミングにおいて複数の下位基板の各々から、各下位基板を識別可能な識別情報を取得し、各下位基板について、第1タイミングにて取得した識別情報と、第2タイミングにて取得した識別情報とが異なる場合、当該下位基板の基板交換が行われたことをユーザに通知する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位基板と、
前記上位基板と通信可能に接続された複数の下位基板とを備え、
前記上位基板は、
第1タイミングにおいて前記複数の下位基板の各々から、各下位基板を識別可能な識別情報を取得し、
前記第1タイミングの後の第2タイミングにおいて前記複数の下位基板の各々から、各下位基板を識別可能な識別情報を取得し、
各下位基板について、前記第1タイミングにて取得した識別情報と、前記第2タイミングにて取得した識別情報とが異なる場合、当該下位基板の基板交換が行われたことをユーザに通知する、産業機械。
【請求項2】
記憶装置をさらに備え、
前記上位基板は、基板交換が行われたと判断した場合、基板交換に関する情報を前記記憶装置に記憶させる、請求項1に記載の産業機械。
【請求項3】
前記産業機械は、表示装置をさらに備え、
前記産業機械には、ユーザを保護するための安全規格が予め定められており、
前記記憶装置は、前記複数の下位基板ごとに前記安全規格に関連するか否かを示す情報を記憶しており、
前記上位基板は、基板交換が行われたと判断した場合において、
交換された基板が前記安全規格に関連しないとき警告を前記表示装置に表示させ、
交換された基板が前記安全規格に関連するときは、前記産業機械の動作を停止させる、請求項2に記載の産業機械。
【請求項4】
前記上位基板は、基板交換が行われたと判断した場合において、交換された基板が前記安全規格に関連するとき、基板交換が行われたことを示す情報を前記産業機械のメーカに通知する、請求項3に記載の産業機械。
【請求項5】
前記第1タイミングは、前記産業機械の出荷時におけるタイミングであり、
前記第2タイミングは、前記産業機械へ電力が供給されたことに基づく前記産業機械の起動時におけるタイミングである、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の産業機械。
【請求項6】
前記第1タイミングは、前記産業機械へ電力が供給されたことに基づく前記産業機械の起動時におけるタイミングであり、
前記第2タイミングは、前記第1タイミングよりも後に前記産業機械へ電力が供給されたことに基づく前記産業機械の起動時におけるタイミングである、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の産業機械。
【請求項7】
前記上位基板は、
前記第1タイミングおよび前記第2タイミングにおいて、前記複数の下位基板のうちの1つから基板動作に関する検査データを受け付け、
前記第1タイミングと前記第2タイミングとで検査データが異なる場合、基板動作を補正する補正処理を実行する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の産業機械。
【請求項8】
前記産業機械は、射出成形機であり、
前記産業機械は、
金型の型締に用いられるサーボモータをさらに備え、
前記複数の下位基板は、前記サーボモータを制御する第1下位基板を含み、
前記第1下位基板は、前記上位基板からの命令に応じて前記サーボモータを制御するための第1命令を生成する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の産業機械。
【請求項9】
前記金型を覆う筐体に取り付けられた安全扉と、
前記安全扉の開閉状態を検出する開閉センサとをさらに備え、
前記複数の下位基板は、前記開閉センサの検出値を受信する第2下位基板を含み、
前記第1下位基板は、前記第2下位基板から受信した前記安全扉の開閉状態を示す情報に基づいて前記サーボモータを制御する、請求項8に記載の産業機械。
【請求項10】
前記複数の下位基板は、前記上位基板からの命令に応じて前記サーボモータを制御するための命令を生成する第3下位基板を含み、
前記第3下位基板は、前記第3下位基板によって生成された命令を前記第1下位基板に送信し、
前記第1下位基板は、前記第1下位基板によって生成された命令と前記第3下位基板によって生成された命令とが一致しない場合、前記サーボモータを停止させる、請求項8に記載の産業機械。
【請求項11】
前記上位基板は、前記第1タイミングおよび前記第2タイミングにおいて、前記複数の下位基板の各々から、各下位基板を識別可能な識別情報に加えて、各下位基板の製造時期を示す情報を取得する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の産業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、産業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等で用いられる産業機械として、プラスチックの樹脂等を基材とする成形品を成形する射出成形機が知られている。特許文献1(特開2018-111298号公報)には、複数の基板を含み、当該複数の基板の間でネットワークが形成されている射出成形機が開示されている。特許文献1における射出成形機では、複数の基板間の通信におけるパケットロスに着目することによって、通信異常を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような複数の基板を有する産業機械において、複数の基板ごとに産業機械から基板の取り外しが可能である。しかしながら、産業機械のユーザによって基板の交換が自由に行われると、産業機械の安全性が担保されなくなったり、誤った取り付けによる基板の劣化が促進されたりするといった不都合が生じ得る。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、産業機械に含まれる基板の交換の有無を適切に検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る産業機械は、上位基板と、上位基板と通信可能に接続された複数の下位基板とを備える。上位基板は、第1タイミングにおいて複数の下位基板の各々から、各下位基板を識別可能な識別情報を取得し、第1タイミングの後の第2タイミングにおいて複数の下位基板の各々から、各下位基板を識別可能な識別情報を取得し、各下位基板について、第1タイミングにて取得した識別情報と、第2タイミングにて取得した識別情報とが異なる場合、当該下位基板の基板交換が行われたことをユーザに通知する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る産業機械によれば、産業機械に含まれる基板の交換の有無を適切に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】産業機械の一例である射出成形機の外観図である。
【
図2】上位基板と下位基板との接続関係を説明するための図である。
【
図3】実施の形態1における識別情報の取得手順を示す第1のフローチャートである。
【
図4】記憶装置に格納された識別情報を説明するための図である。
【
図5】記憶装置に格納された安全規格の関連を示す情報を説明するための図である。
【
図6】実施の形態1における識別情報の取得手順を示す第2のフローチャートである。
【
図7】実施の形態2における識別情報の取得手順を示すフローチャートである。
【
図8】出荷検査時に下位基板の検査結果を記憶させるフローチャートである。
【
図9】出荷検査時における検査データを説明するための図である。
【
図10】出荷後の補正処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0010】
[実施の形態1]
<産業機械の構成>
以下では、実施の形態1における産業機械の一例として、射出成形機を用いて説明する。実施の形態1における産業機械は、射出成形機に限られず、たとえば、他の製造機械、検査機械、運搬機械であってもよく、より具体的には、プレス機、分析装置などであってもよい。実施の形態1の射出成形機100は、プラスチックの樹脂等を基材とする成形品を成形する。
【0011】
図1は、産業機械の一例である射出成形機100の外観図である。射出成形機100は、XY平面上に載置されている。XY平面に垂直な方向をZ軸方向とする。以下では、
図1におけるZ軸の正方向を上面側または上方、負方向を下面側または下方と称する場合がある。なお、
図1に示される射出成形機100は横型の射出成形機として示されているが、本実施の形態の射出成形機100は横型に限られず、竪型の射出成形機であってもよい。
【0012】
射出成形機100によって実行される射出成形処理は、型閉工程、射出工程、保圧工程、型開工程、冷却工程、突出工程、および可塑化工程を含む。射出成形機100は、上記の射出成形処理のサイクルを繰り返し実行する。射出成形機100は、種々の形状、材質の成形品を成形可能である。射出成形処理の内容は、成形品の形状および材質の種類に応じて異なる。
【0013】
射出成形機100は、金型を型締めする型締装置10と、射出材料を溶融して射出する射出装置20と、操作盤30とを備える。型締装置10は、ベッド11のZ軸の正方向側に配置されている。射出装置20は、基台21のZ軸の正方向側に配置されている。型締装置10は、射出装置20に対して、X軸の負方向側に配置されている。
【0014】
<型締装置>
本実施の形態の型締装置10は、固定盤12と、型締ハウジング13と、可動盤14と、タイバー15と、型締機構16と、金型17,18と、ボールねじ19と、サーボモータ80C,80Dと、ベッド11と、筐体Bx1とを備える。ベッド11は、固定盤12、型締ハウジング13、可動盤14等を保持する。型締ハウジング13および可動盤14の各々は、ベッド11上をX軸方向にスライド可能に構成されている。
【0015】
タイバー15は、固定盤12と型締ハウジング13との間に配置され、固定盤12と型締ハウジング13とを連結する。
図1における射出成形機100は、4本のタイバー15を有する。なお、射出成形機100が有するタイバー15の数は、4本に限られず、たとえば5本以上であってもよい。
【0016】
可動盤14は、固定盤12と型締ハウジング13との間でX軸方向にスライド可能に構成される。型締機構16は、型締ハウジング13と可動盤14との間に設けられる。本実施の形態における型締ハウジング13は、トグル機構を含んで構成される。なお、型締機構16は、直圧式の型締機構を含んで構成されてもよい。直圧式の型締機構とは、すなわち型締シリンダを意味する。
【0017】
サーボモータ80Cは、型締ハウジング13内に設けられている。サーボモータ80Cは、ボールねじ19を介して型締機構16を駆動させる。ボールねじ19は、サーボモータ80Cからの回転運動を直線運動に変換して型締機構16を駆動させる。金型17,18は、固定盤12と可動盤14との間に設けられている。金型17,18は、型締機構16が駆動することにより開閉される。すなわち、金型17はボールねじ19によって可動する金型であり、金型18は固定盤12によって固定されている金型である。
【0018】
金型17,18とが離れている状態から密着する状態へと移行する工程を「型閉工程」と称する。また、金型17,18とが密着している状態から離れている状態へと移行する工程を「型開工程」と称する。サーボモータ80Cは、型閉工程および型開工程に用いられるモータである。
【0019】
射出成形機100は、型開工程の後に「突出工程」と称される工程を行う。突出工程は、金型17,18内に充填された後に固化された樹脂などの射出材料を金型17から取り外す工程である。具体的には、サーボモータ80Dの回転によって図示されないピンなどが突出することによって、金型17に密着している成形品は取り外される。可動盤14内に設けられているサーボモータ80Dは、突出工程に用いられるモータである。
【0020】
筐体Bx1は、型締ハウジング13と、可動盤14と、金型17,18とを内部に格納する。筐体Bx1は、型締機構16によって駆動する可動盤14と、金型17,18などの構成にユーザが接触してしまうことを防止する。筐体Bx1には、安全扉Dr1が設けられている。筐体Bx1の外にいるユーザは、安全扉Dr1を開くことによって、筐体Bx1内部の金型17,18に直接触れることができる。
【0021】
すなわち、安全扉Dr1が開放状態であるときにユーザは、金型の交換、メンテナンスなどを実行できる。射出成形機100は、安全扉Dr1が開放状態であるとき、射出成形処理が実行できないように構成されている。これにより、射出成形機100では、開閉する金型17,18等にユーザが接触することを抑制することができる。安全扉Dr1には、開閉センサSd1が接続されている。開閉センサSd1は、安全扉Dr1が開放状態であるか、または閉鎖状態であるかを検出するセンサである。開閉センサSd1は、安全扉Dr1の開閉状態の検出結果を制御装置40へと出力する。
【0022】
<射出装置>
射出装置20は、シリンダ22と、スクリュ23と、駆動機構24と、ホッパ25と、射出ノズル26と、ノズルタッチ装置27と、サーボモータ80A,80Bと、ヒータH1,H2,H3と、温度センサSr1,Sr2,Sr3とを備える。
【0023】
シリンダ22は、内部に射出材料を混練するスクリュ23を有する。シリンダ22は、ノズル側とホッパ側とに端部を有する円柱形状を有する。射出成形機100は、スクリュ23を用いて「可塑化工程」と称される工程を行う。可塑化工程は、シリンダ22による加熱とスクリュ23の回転とによって、射出する樹脂を混錬する工程である。
【0024】
駆動装置24内のサーボモータ80BはX軸方向を中心軸としてスクリュ23を回転させる。すなわち、サーボモータ80Bは可塑化工程に用いられるモータである。射出成形機100は「射出工程」と称される工程と「保圧工程」と称される工程とを行う。射出工程は、可塑化工程によって可塑化された樹脂を金型17,18内へと射出する工程である。
【0025】
保圧工程とは、射出工程によって射出された樹脂を金型17,18内に保持するために圧力を加える工程である。サーボモータ80Aの駆動によって、スクリュ23はX軸方向の負方向側にスライドする。これにより、可塑化された樹脂は金型17,18内へと射出される。サーボモータ80Aは射出工程または保圧工程に用いられるモータである。
【0026】
ホッパ25は、シリンダ22のZ軸の正方向側に設けられており、可塑化前の粒形状の射出材料を格納している。ホッパ25に格納されている射出材料は、スクリュ23の駆動により、シリンダ22の内部へと運搬される。
【0027】
ヒータH1,H2,H3は、シリンダ22の一部分を覆うバンドヒータである。射出材料は、ヒータH1,H2,H3から加熱され、混練される。温度センサSr1,Sr2,Sr3は、ヒータH1,H2,H3によって加熱される領域の温度をそれぞれ測定する。温度センサSr1,Sr2,Sr3は、たとえば、熱電対である。制御装置40は、温度センサSr1,Sr2,Sr3の検出温度を取得し、取得した検出温度に基づいてヒータH1,H2,H3をそれぞれ制御する。
【0028】
混練された射出材料は、射出ノズル26へと運搬される。ノズルタッチ装置27は、射出装置20をX軸方向にスライドさせて、射出ノズル26を金型18のスプルーブッシュに接触させる。これにより、射出材料は、金型18へと注入される。
【0029】
基台21は、制御装置40と、下位基板50A,50B,50C,50Dを含む複数の下位基板を内部に有する。制御装置40は、内部に上位基板55および記憶装置DB1を含む。上位基板55は、複数の下位基板と通信可能に接続されている。複数の下位基板の各々は、たとえば、温度センサSr1、サーボモータ80D、操作盤30などの射出成形処理における特定の用途を有する装置と接続されている。
【0030】
上位基板55は、複数の下位基板を介して、射出成形機100に含まれている各種の装置を制御する。下位基板の用途および、より詳細な上位基板55と複数の下位基板との接続関係は、
図2にて説明する。
【0031】
<操作盤>
操作盤30は、射出成形処理に関連する情報を表示し、ユーザからの操作を受け付ける。操作盤30は、制御装置40と下位基板を介して電気的に接続されている。
図1の例では、操作盤30は、射出成形機100のY軸の負方向側に設けられている。ある局面では、操作盤30は、射出成形機100と別体として設けられてもよく、たとえば、射出成形機100が配置されている部屋と異なる部屋に配置されてもよい。
【0032】
操作盤30は、表示装置31と入力装置32とを備える。表示装置31は、典型的には、液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等である。入力装置32は、たとえば、複数のボタンを含んで構成され得る。ある局面では、表示装置31および入力装置32がタッチパネルとして一体的に設けられてもよい。また、操作盤30は、マイクおよびスピーカを含み、音声を用いてユーザからの操作を受け付けてもよい。
【0033】
<射出成形機内に含まれる各種基板の接続関係>
図2は、上位基板55と下位基板との接続関係を説明するための図である。制御装置40内の上位基板55は、リング型のネットワークNW1を介して下位基板50A,50B,50Cと接続されている。さらに、下位基板50Aは、バス型のネットワークNW2を介して、下位基板50D,下位基板50E,下位基板50F,下位基板50Gと接続されている。また、下位基板50Bは、バス型のネットワークNW3を介して、下位基板50H,下位基板50I,下位基板50J,下位基板50Kと接続されている。ある局面においては、ネットワークNW1の接続形態はバス型であってもよく、ネットワークNW2,NW3の接続形態は、リング型であってもよい。また、ネットワークNW1~NW3の接続形態は、リング型、バス型以外の接続形態であってもよく、たとえば、スター型、メッシュ型であってもよい。すなわち、ネットワークNW1~NW3において、上位基板として機能する基板と、下位基板として機能する基板が存在すれば、ネットワークNW1~NW3の接続形態はどのような形態であってもよい。
【0034】
下位基板50A~50Kの各々は、独立した筐体内に格納され得る。ある局面では、下位基板50A~50Kのうちの一部の基板が同一の筐体内に格納されてもよい。たとえば、下位基板50E,50F,50Gは、いずれもサーボモータ80Dに関連するため、同一の筐体内に格納されてもよい。
【0035】
図2に示されるように射出成形機100の基台21は、1枚の上位基板55と、11枚の下位基板50A~50Kを含む。上位基板55および下位基板50A~50Kは、CPUをそれぞれ含む。当該CPUはROM(Read Only Memory)に格納されているプログラムをRAM(Random Access Memory)に展開して実行する。また、上位基板55および下位基板50A~50Kは専用のハードウェア回路を含んでもよい。すなわち、上位基板55および下位基板50A~50KはASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)により構成されてもよい。また、上位基板55および下位基板50A~50Kは、プロセッサおよびメモリ、ASIC、FPGA等を適宜組み合わせた回路によって構成されてもよい。
【0036】
記憶装置DB1は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Flash Solid State Drive)等から構成され得る。なお、記憶装置DB1は、射出成形機100内に配置されていなくてもよい。ある局面では、記憶装置DB1は、射出成形機100の製造メーカによって管理されるクラウドサーバであってもよい。
【0037】
下位基板50Cは、操作盤30と接続されている。上位基板55は、下位基板50Cを介して、表示装置31に表示するデータを操作盤30へ出力する。操作盤30は、下位基板50Cを介して、入力装置32に入力されたデータを上位基板55へ出力する。
【0038】
下位基板50Dは、温度センサSr1と接続されている。下位基板50Dは、温度センサSr1から受信するアナログ形式の検出値をデジタル形式の検出値に変換する。すなわち、下位基板50Dの用途は、温度センサの検出値のA/D変換である。下位基板50Dは変換後のデジタル形式の検出値を下位基板50Aへと送信する。
【0039】
下位基板50Eは、開閉センサSd1と接続されている。下位基板50Eは、開閉センサSd1から安全扉Dr1(
図1参照)の開閉状態を示す検出値を受信する。下位基板50Eは、安全扉Dr1の開閉状態を示す検出値を下位基板50Fへと出力する。下位基板50Eの用途は、安全扉Dr1の開閉状態の検出である。なお、下位基板50Eは、本開示における「第2下位基板」に対応し得る。
【0040】
下位基板50Fは、サーボモータ80Dを制御する基板である。下位基板50Fの用途は、サーボモータの制御である。下位基板50Fは、サーボアンプを制御することによってサーボモータの動作を制御する。なお、下位基板50Fは、本開示における「第1下位基板」に対応し得る。
【0041】
下位基板50Fは、上位基板55からの命令に応じてサーボモータ80Dを制御するための命令を生成する。下位基板50Fは、下位基板50Eから安全扉Dr1が開放状態であることを示す検出値を受け付けた場合、サーボモータ80Dを停止させる。これにより、射出成形機100では、開放状態の安全扉Dr1を介してユーザが金型17,18に接触することを抑制できる。
【0042】
下位基板50Gは、下位基板50Fの出力の異常判定を行う基板である。下位基板50Fは、下位基板50Fと同様に、上位基板55からの命令に応じてサーボモータ80Dを制御するための命令を生成する。下位基板50Gは、生成した命令を下位基板50Eに送信する。下位基板50Gの用途は、他の基板の出力の異常判定である。なお、下位基板50Gは、本開示における「第3下位基板」に対応し得る。
【0043】
下位基板50Eは、下位基板50E自身がサーボモータ80Dを制御するために生成した命令と、下位基板50Gによって生成された命令とが一致するか判断する。下位基板50Eは、命令が一致する場合、問題が生じていないとして生成した命令に従ってサーボモータ80Dを制御する。一方で、下位基板50Eは、下位基板50E自身がサーボモータ80Dを制御するために生成した命令と、下位基板50Gによって生成された命令とが一致しない場合、問題が生じているとしてサーボモータ80Dを停止させる。
【0044】
実施の形態1における射出成形機100において、下位基板50Fは、下位基板50E,50Gから受け付けた情報に基づいて、サーボモータ80Dを駆動させるか否かを判断する。このように、サーボモータ80Dの正常な動作を担保して、ユーザの安全を保護するサーボモータ80Dの条件は、安全規格と称される。安全規格は、産業機械の種類ごとに、たとえば政府が制定した団体等によって定められる。
【0045】
安全規格が満たされていない製品は、販売が許可されない場合がある。下位基板50A~50Kのうち、安全規格に関連する基板と、安全規格に関連しない基板が存在する。下位基板50A~50Kが安全規格に関連するか否かは、基板の用途に応じて定められている。下位基板50E,50F,50Gは、安全規格に関連する基板である。射出成形機100の製造メーカは、射出成形機100の出荷時において、下位基板50E,50F,50Gに定められた安全規格が満たされているか否かを確認した後に射出成形機100を出荷する。
【0046】
下位基板50Aは、上位基板55と下位基板50Dとの間で情報を中継する基板である。下位基板50Aの用途は、基板間における情報の中継である。ネットワークNW1とネットワークNW2とは、異なる通信規格を有する。下位基板50Aは、ネットワークNW1とネットワークNW2との通信規格に合わせて情報を変換し、上位基板55と下位基板50Dと情報の送受信を行う。下位基板50B,50Cの用途は、下位基板50Aと同様に基板間における情報の中継である。
【0047】
下位基板50H,50I,50Jは、サーボモータ80A,80B,80Cをそれぞれ制御する基板である。すなわち、下位基板50H,50I,50Jの用途は、下位基板50Fと同様に、サーボモータの制御である。
【0048】
下位基板50Kは、サーボモータ80Cに供給される電圧値を検出する基板である。すなわち、下位基板50Kの用途は、電圧値の検出である。
図2では、下位基板50Kの電圧値の検出の対象がサーボモータ80Cだけである例が示されているが、サーボモータ80A,80B,80Dに供給される電圧値をさらに検出してもよい。また、
図2では、射出成形機100が11枚の下位基板50A~50Kを有する例について説明したが、ある局面では、射出成形機100は、11枚よりも多くの下位基板を有していてもよい。
【0049】
上位基板55は、ユーザからの入力に基づいて、各下位基板50A~50Kに対して命令を出力し、サーボモータ80A~80Dなどの装置を制御して射出成形処理を実行する。射出成形処理中において上位基板55は、各下位基板50A~50Kから取得した射出成形処理に関連する情報を記憶装置DB1に記憶させる場合がある。実施の形態1における射出成形機100では、射出成形処理に関連する情報に加えて、下位基板50A~50Kの識別情報を取得して、当該識別情報を記憶装置DB1に記憶させる。
【0050】
以下では、下位基板50A~50Kを識別するための識別情報について説明する。下位基板50A~50Kの各々は、メモリを有する。下位基板のメモリには、基板の用途を示す情報とシリアル番号とが記憶されている。シリアル番号は、各下位基板を識別するため下位基板ごとに下位基板の製造メーカによって付与された固有の番号である。
【0051】
実施の形態1では、シリアル番号は、基板の用途ごとに連続して付与されている。同じ用途を有する複数の下位基板内に、同一のシリアル番号を有する基板は存在しない。一方で、異なる用途を有する複数の下位基板内に、同一のシリアル番号を有する基板は存在し得る。たとえば、射出成形機100には、基板の用途が電圧値の検出であってシリアル番号として「01」が付されている基板と、基板の用途が基板間における情報の中継であってシリアル番号として「01」が付されている基板とが含まれ得る。
【0052】
射出成形機100では、基板の用途を示す情報とシリアル番号を取得できれば、複数の下位基板50A~50Kのうちから1つの基板が一意に特定される。実施の形態1では、複数の下位基板50A~50Kを識別するための識別情報とは、基板の用途を示す情報とシリアル番号とから構成される。
【0053】
上位基板55は、ネットワークNW1~NW3を介して下位基板50A~50Kにアクセスすることによって、下位基板50A~50Kの各々から基板の用途を示す情報とシリアル番号とを取得できる。実施の形態1の射出成形機100は、下位基板50A~50Kの各々の識別情報を取得することによって、下位基板50A~50Kを管理する。実施の形態1の下位基板50A~50Kが有するメモリには、基板の用途を示す情報とシリアル番号とに加えて、ソフトウェアのバージョンを示す情報と、ハードウェアのバージョンを示す情報と、下位基板の製造時期を示す情報とが記憶されている。
【0054】
図3は、実施の形態1における識別情報の取得手順を示す第1のフローチャートである。射出成形機100では、射出成形機100が出荷される際において
図3に示されるフローチャートが実行される。より具体的には、射出成形機100を製造するメーカの作業員は、射出成形機100を出荷する際に、射出成形機100が正常な状態で動作するか否かを検査する。以下では、この出荷する際の検査を単に「出荷検査」と称する。製造メーカの作業員は、出荷検査時に
図3に示されるフローチャートを実行させるためのプログラムを上位基板55に実行させる。
【0055】
制御装置40の上位基板55は、ネットワークNW1~NW3を介して接続されている複数の下位基板50A~50Kの各々から識別情報を取得する(ステップS110)。すなわち、ステップS110において上位基板55は、下位基板50A~50Kの各々から、射出成形機100内部に格納されている下位基板50A~50Kを識別可能な情報を取得し、当該識別可能を記憶装置DB1に記憶させる。
図4は、記憶装置DB1に格納された識別情報を説明するための図である。基板種類は、上述した下位基板の用途を示す情報である。
【0056】
ここで、
図2および
図4を参照して下位基板50A~50Kの基板の種類とシリアル番号について具体的に説明する。基板種類「A」は、下位基板の用途がサーボモータを制御することを示す。基板種類「A」のシリアル番号「01」によって識別される基板は、下位基板50Fである。基板種類「A」のシリアル番号「02」によって識別される基板は、下位基板50Hである。基板種類「A」のシリアル番号「03」によって識別される基板は、下位基板50Iである。基板種類「A」のシリアル番号「04」によって識別される基板は、下位基板50Jである。
【0057】
基板種類「B」は、下位基板の用途が他の基板の出力の異常検出であることを示す。基板種類「B」のシリアル番号「01」によって識別される基板は、下位基板50Gである。基板種類「C」は、下位基板の用途が安全扉Dr1の開閉状態の検出であることを示す。基板種類「C」のシリアル番号「01」によって識別される基板は、下位基板50Eである。基板種類「D」は、下位基板の用途が温度センサの検出値のA/D変換であることを示す。基板種類「D」のシリアル番号「01」によって識別される基板は、下位基板50Dである。
【0058】
基板種類「E」は、下位基板の用途が電圧値の検出であることを示す。基板種類「E」のシリアル番号「01」によって識別される基板は、下位基板50Kである。基板種類「F」は、下位基板の用途が基板間の情報の中継であることを示す。基板種類「F」のシリアル番号「01」によって識別される基板は、下位基板50Aである。基板種類「F」のシリアル番号「02」によって識別される基板は、下位基板50Bである。基板種類「F」のシリアル番号「03」によって識別される基板は、下位基板50Cである。
【0059】
このように、上位基板55は、基板種類とシリアル番号とを含む識別情報を用いて複数の下位基板50A~50Kのうちから一意に1つの下位基板を特定可能である。
図4に示されているように、記憶装置DB1には、各下位基板50A~50Kのソフトウェア、ハードウェアのバージョンを示す情報、および製造時期を示す情報が記憶されている。実施の形態1では、各基板の製造時期が記憶装置DB1に記憶されている。これにより、
図1に示す射出成形機100では、特定の製造時期の基板が射出成形機100にて使用されているか否かを容易に把握することができる。たとえば、基板を製造するメーカから特定の製造時期の基板回収が要求された場合に、射出成形機100の製造メーカおよびユーザは、特定の製造時期の基板が射出成形機100にて使用されているか否かを容易に把握できる。このように、記憶装置DB1には、射出成形機100が出荷検査時に上位基板55によって下位基板50A~50Kに関する情報が書き込まれている。
【0060】
上位基板55は、下位基板の識別情報を取得したときに、初めて認識する識別情報であった場合、使用開始日として初めて認識した日時を記憶装置DB1に記憶させてもよい。これにより、上位基板55は、各下位基板が射出成形機100による使用が開始された日時を管理することができる。
【0061】
図5は、記憶装置DB1に格納された安全規格の関連を示す情報を説明するための図である。
図5に示されているように、記憶装置DB1には基板種類ごとに安全規格に関連するか否かを示す情報が格納されている。基板種類「A」,「B」,「C」は、安全規格と関連を有し、基板種類「D」,「E」,「F」は安全規格と関連を有さない。
図5に示される情報は、
図1に示す射出成形機100の製造メーカによって射出成形機100の出荷検査時に予め入力される。
【0062】
図6は、実施の形態1における識別情報の取得手順を示す第2のフローチャートである。なお、識別情報の取得手順を示す第2のフローの説明では、
図2についても適宜参照する。
図6のフローチャートは、
図1に示す射出成形機100がユーザに出荷された後に、射出成形機100に電力が供給されて射出成形機100が起動するごとに上位基板55によって実行される。
【0063】
上位基板55は、ネットワークNW1,NW2,NW3を介して接続されている複数の下位基板50A~50Kの各々から識別情報を取得する(ステップS210)。すなわち、上位基板55は、
図3におけるステップS110の処理と同様に、下位基板50A~50Kの各々から、射出成形機100内部に格納されている下位基板50A~50Kを識別可能な情報を取得し、記憶装置DB1に格納する。具体的には、上位基板55は、各下位基板のメモリにアクセスして、基板の用途を示す情報とシリアル番号とを取得する。
【0064】
上位基板55は、出荷検査時の状態から交換された下位基板が存在するか否かを確認する(ステップS220)。具体的には、上位基板55は、
図3におけるステップS110で取得した識別情報と、
図6におけるステップS210で取得した識別情報とを比較する。ステップS110で取得した識別情報とステップS210で取得した識別情報とが一致する場合、上位基板55は、交換された基板は存在しないと判断して(ステップS220でNO)処理を終了する。
【0065】
ステップS110で取得した識別情報とステップS210で取得した識別情報とが一致しない場合、上位基板55は、交換された下位基板が存在すると判断し(ステップS220でYES)、基板交換が行われたことをユーザに通知し、基板交換に関する情報を保存する(ステップS230)。具体的には、上位基板55は、表示装置31に基板交換が行われたことを表示する。これにより、射出成形機100のユーザは、電力の供給を停止してから電力の供給を再開するまでの間に下位基板が交換されたことを認識することができる。上位基板55は、交換される前の基板と交換された後の基板との識別情報を記憶装置DB1に書き込む。これにより、射出成形機100では、基板交換が行われた履歴を記憶装置DB1に残すことができる。
【0066】
上位基板55は、交換された基板の用途が安全規格に関連するか否かを判断する(ステップS240)。上位基板55は、
図5に示される情報を用いて交換された基板の基板種類が安全規格に関連するか否かを判断する。交換された基板が安全規格に関連する場合(ステップS240でYES)、上位基板55は基板交換が行われたことを射出成形機100の製造メーカに通知する(ステップS250)。たとえば、上位基板55はインターネットを介して製造メーカが管理するサーバ等にアクセスし、基板交換に関する情報を当該サーバに書き込む。その後、上位基板55は、射出成形機100の動作を停止させる(ステップS260)。これにより、射出成形機100では、安全規格が満たされていない状態で射出成形機100が動作してしまうことを抑制できる。停止した射出成形機100の動作は、射出成形機100の製造メーカの作業員によって再開させることができる。これにより、実施の形態1の射出成形機100では、射出成形機100の製造メーカの作業員により修理の目的にて基板交換が行われたときには、修理を行った作業員自身が射出成形機100の停止状態を解除することによって、迅速に射出成形機100の状態を復帰させることができる。
【0067】
交換された基板が安全規格に関連しない場合(ステップS240でNO)、上位基板55は、保証に関する警告を表示装置31に表示させる(ステップS270)。射出成形機100の製造メーカは、出荷検査時の状態において射出成形機100が正常に動作することを保証する。下位基板50A~50Kのいずれかが交換された場合、射出成形機100の製造メーカは、出荷検査時における基板と異なる基板が使用されていることから、射出成形機100が正常に動作することを保証できなくなる。そのため、上位基板55は、ステップS240にて射出成形機100の製造メーカによる保証が無効になることをユーザに通知する。ステップS270にて警告を受けたユーザは、再度保証が有効となる方法について射出成形機100の製造メーカに問い合わせることができる。なお、上位基板55は、ステップS270において、保証に関する警告ではなく、異なる基板が使用されているため射出成形機100が正常に動作できない可能性があることを警告してもよい。
【0068】
このように、実施の形態1における射出成形機100では、複数の下位基板50A~50Kのうちのいずれかが交換された場合に、ユーザに対して基板交換が行われたことを通知し、射出成形機100の動作の停止または保証に関する警告を行う。これにより、実施の形態1の射出成形機100では、産業機械に含まれる基板の交換の有無を適切に検出できる。すなわち、実施の形態1の射出成形機100では、安全規格を満たしていない状態で射出成形機100が動作してしまうという不都合および保証が無効となった状態で射出成形機100が使用されてしまうという不都合が発生することを抑制できる。
【0069】
[実施の形態2]
実施の形態1では、出荷検査時の基板構成を基準として基板交換を検出する例について説明した。実施の形態2では、起動ごとに基板構成を記憶装置DB1に保存し、記憶装置DB1に保存されている最新の基板構成と比較することによって基板交換が行われたか否かを検出する構成について説明する。実施の形態2では、実施の形態1と同様の構成についての説明を繰り返さない。
【0070】
図7は、実施の形態2における識別情報の取得手順を示すフローチャートである。
図7のフローチャートは、射出成形機100に電力が供給されて射出成形機100が起動するごとに上位基板55によって実行される。
図7のフローチャートでは、
図6のフローチャートに対してステップS210とステップS220との間にステップS300が追加されている。
【0071】
以下では、実施の形態2における射出成形機100がユーザへ出荷された後の初回起動時の処理について説明する。射出成形機100がユーザに出荷された後の初回起動時において、上位基板55は、ネットワークNW1,NW2,NW3を介して接続されている複数の下位基板50A~50Kの各々から識別情報を取得する(ステップS210)。
図7においても、上位基板55は、下位基板50A~50Kの各々から、射出成形機100内部に格納されている下位基板50A~50Kを識別可能な情報を取得し、当該識別可能を記憶装置DB1に記憶させる。上位基板は、記憶装置DB1に過去に取得した識別情報が記憶されているか否かを判断する(ステップS300)。
【0072】
初回起動時において記憶装置DB1には、初回起動よりも前に取得された下位基板の識別情報が記憶されていない場合が考えられる。もしくは、故障、人的ミスなどが発生することよって記憶装置DB1の過去のデータが消失してしまう場合が考えられる。下位基板が交換されたか否かを判断するための比較対象となる識別情報が存在せず、上位基板55は処理を終了する(ステップS300でNO)。
【0073】
続いて、実施の形態2における射出成形機100がユーザに出荷された後の2回目以降の起動時処理について説明する。2回目以降の起動時において、上位基板55は、ネットワークNW1,NW2,NW3を介して接続されている複数の下位基板50A~50Kの各々から識別情報を取得する(ステップS210)。上位基板は、記憶装置DB1に過去に取得した識別情報が記憶されているか否かを判断する(ステップS300)。
【0074】
2回目以降の起動時には記憶装置DB1には、下位基板が交換されたか否かを判断するための比較対象となる識別情報が記憶されている。上位基板55は、記憶装置DB1に過去の識別情報が記憶されていると判断する(ステップS300でYES)。上位基板55は、前回起動時のステップS210にて取得した下位基板の識別情報と、今回起動時のステップS210で取得した下位基板の識別情報とを比較して、基板交換が行われた否かを判断する(ステップS220)。ステップS220以降の処理は、
図6におけるステップS230~270と同様であるため、説明を繰り返さない。
【0075】
このように実施の形態2では、射出成形機100が起動したタイミングにおける下位基板の識別情報と、当該タイミングより前の起動時における下位基板の識別情報とを比較する。射出成形機100の下位基板を交換するためには、射出成形機100のユーザは、射出成形機100の電源供給を一時的に停止する必要がある。
【0076】
実施の形態2の射出成形機100では、電源供給が開始されるタイミングにおいて基板交換が行われたか否かを判断することにより、基板交換が行われたことを迅速に検出することができる。実施の形態2の射出成形機100においても、実施の形態1と同様に、産業機械に含まれる基板の交換の有無を適切に検出できる。すなわち、実施の形態2の射出成形機100では、安全規格を満たしていない状態で射出成形機100が動作してしまうという不都合および、保証が無効となった状態で射出成形機100が使用されてしまうという不都合の発生を抑制できる。
【0077】
このように、実施の形態2の射出成形機100では、出荷検査時の基板構成と、起動ごとの基板構成とが記憶装置DB1に順次保存されていくことになる。これにより、実施の形態2の射出成形機100のユーザは、各基板の交換履歴を容易に追跡できる。すなわち、射出成形機100にて使用される基板のトレーサビリティが向上する。また、実施の形態2の射出成形機100では、各基板の交換履歴をユーザに把握させることによって、各基板の寿命予測、部品の発注タイミングの管理等の各基板の保守業務を支援できる。
【0078】
しかしながら、起動ごとに基板構成を記憶装置DB1に記憶させると記憶装置DB1内のデータ使用容量が増大し得る。このため、記憶装置DB1に記憶される基板構成の数に上限が設定されていてもよい。たとえば、記憶される基板構成の数の上限が2つである場合、記憶装置DB1には、最新の基板構成および当該最新の基板構成の1つ前に記憶された基板構成だけが保存される。
【0079】
すなわち、制御装置40は、射出成形機100の起動ごとに、最も古い基板構成を示すデータを削除し、新たに取得した最新の基板構成を示すデータを記憶装置DB1内に記憶させる。換言すれば、制御装置40は、記憶装置DB1内に記憶されている基板構成を更新する。この場合、制御装置80は、最新の基板構成と当該最新の基板構成の1つ前に記憶された基板構成とを比較することによって、基板交換が行われたか否かを検出する。このようにすることで、射出成形機100では、記憶装置DB1におけるデータ使用容量の増大を抑制できる。
【0080】
[実施の形態3]
実施の形態1,2では、射出成形機100に電源供給されたタイミングにて基板交換が行われた否かを検出する例について説明した。実施の形態3では、射出成形機100のメンテナンス時に下位基板の動作状態を補正する構成について説明する。実施の形態3では、実施の形態1と同様の構成についての説明を繰り返さない。
【0081】
図8は、出荷検査時に下位基板の検査結果を記憶させるフローチャートである。射出成形機100を製造するメーカの作業員は、射出成形機100の出荷検査時において
図8に示されるフローチャートを実行するためのプログラムを制御装置40の上位基板55に実行させる。
【0082】
制御装置40の上位基板55は、製造メーカの作業員に対して、下位基板の出荷検査時における検査データの入力を要求する(ステップS410)。検査データとは、下位基板が正常に動作するか否かの検査結果を示すデータである。上位基板55は、表示装置31に下位基板の検査データの入力を促す文章などを表示させる。射出成形機100の製造メーカの作業員は、検査データの入力の要求に応じて、下位基板の検査を行う。製造メーカの作業員は、検査結果を、出荷検査時の検査データとして射出成形機100に入力する。
【0083】
上位基板55は、出荷検査時における検査データを受け付けたか否かを判断する(ステップS420)。出荷検査時における検査データを受け付けていない場合(ステップS420でNO)、上位基板55は、処理をステップS410へ戻す。出荷検査時における検査データを受け付けた場合(ステップS420でYES)、上位基板55は、受け付けた検査データを記憶装置DB1に出荷検査時の検査データとして書き込む(ステップS430)。
【0084】
図9は、出荷検査時における検査データを説明するための図である。
図9では、出荷検査時の検査データの一例を説明するため、用途が電圧値の検出である下位基板50Kに関する記憶装置DB1内のデータが示されている。以下では、下位基板50Kに対する検査について説明する。
【0085】
射出成形機100の製造メーカの作業員は、たとえば、試験用の電力線に100Vの電圧を印加し、当該電力線に流れた電圧の値を下位基板50Kに検出させる。製造メーカの作業員は、下位基板50Kが100Vから所定の範囲内の電圧を検出するとき、下位基板50Kは正常に動作していると判断する。製造メーカの作業員は、下位基板50Kの検出結果が100Vから所定の範囲よりも外れた電圧値を検出するとき、下位基板50Kが不良であると判断する。
図9には、良品の下位基板50Kにおける検査データが示されており、100Vの電圧に対する検出結果が100Vであったことが示されている。
【0086】
下位基板50Kの検出結果は、下位基板50Kの劣化により、実際の電圧値から徐々に乖離し始める場合がある。射出成形機100の製造メーカの作業員または射出成形機100のユーザは、射出成形機100の出荷後、下位基板50Kの検査を行う。出荷検査時の検査と同様に、下位基板50Kを試験用の電力線に接続し、当該電力線に100Vの電圧を印加し、当該電力線に流れた電圧の値を下位基板50Kに検出させる。射出成形機100の製造メーカの作業員または射出成形機100のユーザは、検出結果を射出成形機100に入力する。仮に検出結果が80Vである場合、下位基板50Kの劣化により、実際の電圧値の80%に相当する値が検出結果として検出されている。
【0087】
上位基板55は、出荷検査時の検査データと出荷後の検査データとを比較して、劣化による検出値の低下を補正するための補正値を決定する。上位基板55は、1.25倍を補正値として決定し、今後、下位基板50Kによって検出された値に補正値を乗算することによって、出荷検査時と同様の検出値を取得する。以下では、出荷検査時の検査データへ補正するために補正値を決定することを「補正処理」と称する。これにより、実施の形態3の射出成形機100では、下位基板50Kに劣化が生じた場合であっても、出荷後に検査が行われることによって下位基板50Kの劣化による誤検出の発生を抑制することができる。
【0088】
図10は、出荷後の補正処理を説明するためのフローチャートである。上位基板55は、射出成形機100に電力が供給されたことに基づいて、
図10のフローチャートを実行する。上位基板55は、検査データを受け付けたか否かを判断する(ステップ510)。すなわち、射出成形機100の製造メーカの作業員または射出成形機100のユーザによって、下位基板の検査が行われたか否かを判断する。検査データを受け付けていない場合(ステップS510でNO)、上位基板55は、射出成形機100を電源オフ状態にする命令を受け付けたか否かを判断する(ステップS540)。
【0089】
射出成形機100を電源オフ状態にする命令を受け付けた場合(ステップS540でYES)、上位基板55は処理を終了する。射出成形機100を電源オフ状態にする命令を受け付けていない場合(ステップS540でNO)、上位基板55は、処理をステップS510に戻す。
【0090】
ステップS510にて検査データを受け付けた場合(ステップS510でYES)、上位基板55は、出荷検査時の検査データから変化が生じているか否かを判断する(ステップS520)。すなわち、上位基板55は、
図8のステップS420の処理で受け付けた検査データと、
図10のステップS510の処理で受け付けた検査データとを比較する。出荷検査時の検査データから変化が生じていない場合(ステップS520でNO)、上位基板55は、補正処理は不要であるため、処理をステップS540へ進める。
【0091】
出荷検査時の検査データから変化が生じている場合(ステップS520でYES)、上位基板55は、補正処理を実行する(ステップS530)。これにより、実施の形態3の射出成形機100では、下位基板に劣化が生じている場合、出荷検査時と同様の値が検出できるように補正することができる。なお、実施の形態3においては、用途が電圧値の検出である下位基板について説明したが、補正処理は、入力を受け付けて出力を行う基板であれば、上述にて説明した他の用途の下位基板に対しても適用され得る。たとえば、温度センサの検出値のA/D変換する基板において、入力されるアナログ値に対して出力するデジタル値が補正され得る。
【0092】
実施の形態3においても、実施の形態1の射出成形機100と同様に、産業機械に含まれる基板の交換の有無を適切に検出することである。すなわち、実施の形態3の射出成形機100では、射出成形機100が起動するタイミングにおいて基板交換がされたか否かを検出することによって、安全規格を満たしていない状態で射出成形機100が動作してしまうという不都合および保証が無効となった状態で射出成形機100が使用されてしまうという不都合が発生することを抑制できる。
【0093】
[付記]
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0094】
(第1項) 産業機械は、上位基板と、上位基板と通信可能に接続された複数の下位基板とを備える。上位基板は、第1タイミングにおいて複数の下位基板の各々から、各下位基板を識別可能な識別情報を取得し、第1タイミングの後の第2タイミングにおいて複数の下位基板の各々から、各下位基板を識別可能な識別情報を取得し、各下位基板について、第1タイミングにて取得した識別情報と、第2タイミングにて取得した識別情報とが異なる場合、当該下位基板の基板交換が行われたことをユーザに通知する。
【0095】
第1項の産業機械によれば、産業機械に含まれる基板の交換の有無を適切に検出できる。
【0096】
(第2項) 第1項における産業機械は、記憶装置をさらに備える。上位基板は、基板交換が行われたと判断した場合、基板交換に関する情報を記憶装置に記憶させる。
【0097】
第2項の産業機械によれば、基板交換に関する情報を記憶装置に記憶させることによって、基板交換が行われた後に基板交換されたことをユーザに認識させることができる。
【0098】
(第3項) 第2項において、産業機械は、表示装置をさらに備える。産業機械には、ユーザを保護するための安全規格が予め定められている。記憶装置は、複数の下位基板ごとに安全規格に関連するか否かを示す情報を記憶している。上位基板は、基板交換が行われたと判断した場合において、交換された基板が安全規格に関連しないとき警告を表示装置に表示させ、交換された基板が安全規格に関連するときは、産業機械の動作を停止させる。
【0099】
第3項の産業機械によれば、安全規格に関わるか否かに応じて、基板交換による不都合の発生を抑制することができる。
【0100】
(第4項) 第3項において、上位基板は、基板交換が行われたと判断した場合において、交換された基板が安全規格に関連するとき、基板交換が行われたことを示す情報を産業機械のメーカに通知する。
【0101】
第4項の産業機械によれば、産業機械の出荷後においても、産業機械のメーカに対して基板の交換を認識させることができる。
【0102】
(第5項) 第1項~第4項のいずれか1項において、第1タイミングは、産業機械の出荷時におけるタイミングであり、第2タイミングは、産業機械へ電力が供給されたことに基づく産業機械の起動時におけるタイミングである。
【0103】
第5項の産業機械によれば、出荷時の基板構成を基準とし、出荷時の基板構成の状態から基板交換がされたか否かを検出できる。
【0104】
(第6項) 第1項~第4項のいずれか1項において、第1タイミングは、産業機械へ電力が供給されたことに基づく産業機械の起動時におけるタイミングであり、第2タイミングは、第1タイミングよりも後に産業機械へ電力が供給されたことに基づく産業機械の起動時におけるタイミングである。
【0105】
第6項の産業機械によれば、産業機械が起動するごとに電力の供給が断たれる前の構成を基準として基板交換が行われた否かを検出できる。
【0106】
(第7項) 第1項~第6項のいずれか1項において、上位基板は、第1タイミングおよび第2タイミングにおいて、複数の下位基板のうちの1つから基板動作に関する検査データを受け付け、第1タイミングと第2タイミングとで検査データが異なる場合、基板動作を補正する補正処理を実行する。
【0107】
第7項の産業機械によれば、出荷された後においても、出荷時と同様に基板を動作させることができる。
【0108】
(第8項) 第1項~第7項のいずれか1項において、産業機械は、射出成形機であり、産業機械は、金型の型締に用いられるサーボモータをさらに備える。複数の下位基板は、サーボモータを制御する第1下位基板を含み、第1下位基板は、上位基板からの命令に応じてサーボモータを制御するための第1命令を生成する。
【0109】
第8項の産業機械によれば、サーボモータを有する射出成形機における基板交換を適切に検出することができる。
【0110】
(第9項) 第8項において、金型を覆う筐体に取り付けられた安全扉と、安全扉の開閉状態を検出する開閉センサとをさらに備える。複数の下位基板は、開閉センサの検出値を受信する第2下位基板を含み、第1下位基板は、第2下位基板から受信した安全扉の開閉状態を示す情報に基づいてサーボモータを制御する。
【0111】
第9項の産業機械によれば、サーボモータを制御するための複数の下位基板を有する射出成形機における基板交換を適切に検出することができる。
【0112】
(第10項) 第8項において、複数の下位基板は、上位基板からの命令に応じてサーボモータを制御するための命令を生成する第3下位基板を含み、第3下位基板は、第3下位基板によって生成された命令を第1下位基板に送信し、第1下位基板は、第1下位基板によって生成された命令と第3下位基板によって生成された命令とが一致しない場合、サーボモータを停止させる。
【0113】
第10項の産業機械によれば、サーボモータを制御するための複数の下位基板を有する射出成形機における基板交換を適切に検出することができる。
【0114】
(第11項) 第1項~第10項のいずれか1項において、上位基板は、第1タイミングおよび第2タイミングにおいて、複数の下位基板の各々から、各下位基板を識別可能な識別情報に加えて、各下位基板の製造時期を示す情報を取得する。
【0115】
第11項の産業機械によれば、産業機械に含まれる下位基板の製造時期をユーザに認識させることができる。
【符号の説明】
【0116】
10 型締装置、11 ベッド、12 固定盤、13 型締ハウジング、14 可動盤、15 タイバー、16 型締機構、17,18 金型、19 ボールねじ、20 射出装置、21 基台、22 シリンダ、23 スクリュ、24 駆動機構、25 ホッパ、26 射出ノズル、27 ノズルタッチ装置、30 操作盤、31 表示装置、32 入力装置、40 制御装置、50A~50K 下位基板、55 上位基板、80A~80D サーボモータ、100 射出成形機、Bx1 筐体、DB1 記憶装置、Dr1 安全扉、H1~H3 ヒータ、NW1~NW3 ネットワーク、Sd1 開閉センサ、Sr1,~Sr3 温度センサ。